JP5305353B2 - alpBをコードする遺伝子の機能が欠損している麹菌及びその利用 - Google Patents

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本発明は、サブチリシンリレーテッドプロテアーゼalpBをコードする遺伝子の機能を欠損した麹菌、および該麹菌を用いて麹または調味料を製造する方法に関するものである。
焼酎、清酒、みりん、味噌、醤油等の調味料の製造では、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)、アスペルギルス・アワモリ(A.awamori)、アスペルギルス・ニガー(A.niger)、アスペルギルス・オリゼー(A.oryzae)といった麹菌が用いられている。
麹菌は、各種酵素の生産に適しており、その用途に応じて、その各種酵素系の発現に適した製麹方法が採られている。例えば醤油の製造においては、蒸煮した穀類等の固体原料に麹菌の胞子を散布し、その表面で麹菌を増殖させることによって製麹を行っている。
麹の原料となる大豆、小麦、米の種類により、また、それらのα化度、水分量により、製麹中の温度、湿度、培養時間、手入れ条件、通風・換気条件等のさまざまな製麹条件を調整して、各種酵素を効率よく産生させるように管理するのが一般的である。
製麹過程において麹菌は、生育するに従い多量の胞子を着生するために、大量の胞子が空気中に飛散する。この飛散した胞子が調味料製造の作業環境を悪化させ、あるいは胞子が作業者の体内に入ることによってアレルギーを引き起こす原因物質となるおそれのあることは、従来問題とされてきた。
上記問題を解決するため、従来、集塵機を用いて胞子を空気と共に排除したり、密閉式ベルトコンベア内で麹に液体を散布するなど物理的な方法で飛散した胞子を除去する方法や、長毛の麹菌と短毛の麹菌をブレンドした種麹を用いて製麹することで分生子の着生を抑制する方法が報告されている(非特許文献1)。
しかしながら、麹の製造工程において多量の胞子が空気中に飛散する問題を解決する手段として、従来、飛散した胞子を大型換気扇、集塵機、密閉式のベルトコンベアや散水装置などの設備を用いて除去するなどの方法が知られてきたが、当該方法では、胞子を完全に除去することは不可能である上に、大型設備の導入や運転には多大なコストが必要であって、実用的な方法であるとは言えなかった。
また、長毛の麹菌と短毛の麹菌を混和して使用する方法についても、胞子の飛散を抑制することはできるものの、完全に防除することは困難であった。
一方、アスペルギルス・オリゼーなどの糸状菌は、ゲノム中にalpA、alpBと呼ばれる2種のサブチリシンリレーテッドプロテアーゼをコードする遺伝子を保持することが知られており、糸状菌においてアルカリプロテアーゼ遺伝子を欠損させると、総プロテアーゼ活性が低下し、結果、当該糸状菌を用いて異種タンパク質を合成する際にもタンパク質の分解が生じないために、遺伝子組換え等によって目的のタンパク質を高収量に獲得できるような糸状菌を作製できることが報告されている(特許文献1)。
しかしながら、記載されている遺伝子の塩基配列の比較を行ったところ、上記文献に記載の麹菌は、2種のサブチリシンリレーテッドプロテアーゼのうち、alpA遺伝子だけを欠損させたものであって、alpB遺伝子を欠損させた場合にどのような表現型を持つ糸状菌が得られるかついては、これまで全く知られていなかった。
本発明者は、alpA遺伝子の機能を欠損した麹菌株の様々な形質を検討したところ、実施例に詳述しているように、上記alpA欠損株は、親株と比較して胞子形成能がほとんど低下しておらず、また総プロテアーゼ活性も著しく低下しているものであり、醸造食品等の製造等に応用するには全く適さないものであった。
特表2000−507106
日本醸造協会誌 Vol.92 860−867、1997
このように、麹菌の胞子形成を抑制し、かつ調味料製造に影響を及ぼさない麹菌の育種に関しては、従来全く報告されていないのが現状である。そこで、本発明の目的は、製麹等の過程における麹からの胞子の飛散を効率的に抑制でき、かつ醸造食品の製造に適した麹菌を育種し、当該麹菌を用いた麹及び調味料の製造法を提供するものである。
本発明者は、麹菌の育種に関し、種々検討を重ねる過程で、麹菌ゲノム中の2種のサブチリシンリレーテッドプロテアーゼ(alpA、alpB)のサブチリシンリレーテッドプロテアーゼalpBをコードする遺伝子の機能のみを欠損させると、(1)alpAをコードする遺伝子の機能を欠損させた場合とは全く異なって、親株よりも胞子形成能が著しく低下し、調味料製造の過程において胞子をほぼ飛散することがないこと、しかも(2)当該麹菌株は、全く意外なことに親株に比べて著しく高い総プロテアーゼ活性を有しており、調味料製造においても、原料の歩留まりの向上を期待できるなど、きわめて実用的な麹菌であることを見出し、本発明を完成するに至った。
したがって、本発明は以下の通りである。
(1)ゲノムDNA中に2種のサブチリシンリレーテッドプロテアーゼ(alpA、alpB)をコードする遺伝子を保有するアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)のalpBをコードする遺伝子のみを欠損させることで、麹汁培地上で胞子を形成せず、親株に比べて総プロテアーゼ活性を向上させたアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)を用いて製麹することを特徴とする麹の製造法。
(2)ゲノムDNA中に2種のサブチリシンリレーテッドプロテアーゼ(alpA、alpB)をコードする遺伝子を保有するアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)のalpBをコードする遺伝子のみを欠損させることで、麹汁培地上で胞子を形成せず、親株に比べて総プロテアーゼ活性を向上させたアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)を用いて麹を調製し、その麹を用いて常法により仕込みし、発酵、熟成せしめることを特徴とする調味料の製造法。

本発明の麹菌は、胞子形成能が著しく低下しており、食品の醸造工程において、大規模な設備の導入を行わずとも胞子の飛散をほぼ完全に抑制できる。一方で、当該麹菌は高い総プロテアーゼ活性をも有していることから、調味料の効率的な製造に寄与し、産業上の利用可能性が非常に高いものである。また、胞子を飛散させる事がないことから、固体培養による組換えタンパク質の大量発現などを行わせる際にも、組換え遺伝子を含む胞子を管理区域外に放散させる危険性がなく、宿主菌株として安全に用いることができる。
図1は、実施例で行ったalpB遺伝子破壊ベクターの作成工程を模式的に表したものである。 図2は、育種した麹菌の生育速度を親株と比較した結果である。◆は親株、□はalpA遺伝子破壊株、△はalpB遺伝子破壊株における測定値を示す。 図3は、親株とalpA破壊株(ΔalpA)、alpB破壊株(ΔalpB)それぞれの麹菌の総プロテアーゼ活性(unit/ml)比較した結果を示す。
本発明において親株として用いられる麹菌とは、そのゲノムDNA中に2種のサブチリシンリレーテッドプロテアーゼ(alpA、alpB)をコードする遺伝子を保有する麹菌であれば、いずれも使用可能である。具体的には、焼酎、清酒、みりん、醤油、味噌等の調味料の製造に使用可能で、プロテアーゼ活性を有するアスペルギルス属に属する麹菌であれば特に限定はされず、アスペルギルス・カワチ、アスペルギルス・アワモリ、アスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・オリゼー、アスペルギルス・ソーヤ等が好ましい。中でも特に好ましいのはアスペルギルス・オリゼー、アスペルギルス・ソーヤである。さらに、上記の麹菌株を親株として、人為的に改変された遺伝子組換え株、あるいは天然に存在する変異株なども用いることができる。
本発明において、サブチリシンリレーテッドプロテアーゼをコードするalpB遺伝子は、ゲノムデータベースDOGAN(http://www.bio.nite.go.jp/dogan/MicroTop?GENOME_ID=ao)において定義される。すなわち、IDがAO090003001036である遺伝子がalpA、AO090020000517である遺伝子がalpBである。
本願発明における、サブチリシンリレーテッドプロテアーゼalpBをコードする遺伝子の機能が欠損している麹菌とは、相同組換えによる遺伝子破壊法または変異導入法によってalpBをコードする遺伝子の機能が失われた麹菌株のことを指す。
相同組み換えによる遺伝子破壊法としては、公知の方法を用いることができる。たとえば、alpB遺伝子の断片もしくはその上流・下流の領域とマーカー遺伝子とを組み合わせたDNA断片をベクターに組み込み、プロトプラスト−PEG法やエレクトロポレーション法などによってベクターを糸状菌に取り込ませ、相同組み換えによって当該DNA断片を糸状菌のゲノム中に導入する方法などを挙げられる。DNA断片を麹菌細胞中に取り込ませる他の方法としてはパーティクルガン法、アグロバクテリウム法、マイクロインジェクション法などが挙げられる。
相同組み換え法によって所期の遺伝子が麹菌に導入されたことを確認する方法としては、公知の方法を用いることができる。たとえば、遺伝子を導入する際に、親株として栄養要求性の突然変異株を、マーカー遺伝子として当該栄養要求性を補償するような機能を持つ遺伝子を用い、形質転換後に栄養要求性培地上で正常に生育した株を選抜する方法などが挙げられる。ただし、このような栄養要求性だけでは、目的とする遺伝子座が導入したマーカー遺伝子と置換されたかどうか確認できない。従って、栄養要求性に合わせて適宜PCR法、サザンハイブリダイゼーション法等を用いて、目的とする遺伝子座がマーカーによって置換されていることを確認する必要がある。
また、変異導入法としては、公知の処理方法を用いることができ、紫外線、イオンビーム、放射線等を照射させる物理的方法、エチルメタンスルホネート、N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン、亜硝酸、アクリジン色素等の変異剤を用いる化学的方法がある。特に好ましくは、紫外線を照射させる方法を挙げることができる。
上記のような遺伝子破壊法、または変異導入法によってalpB遺伝子に変異、もしくは欠損が生じ、胞子形成能が著しく低下した株をスクリーニングする方法としては、麹汁培地上で胞子を形成せず白色のコロニーを形成する株を選抜し、選抜した候補株からゲノムDNAを抽出し、シークエンス解析で確認する方法などを挙げることができる。他の方法としては、コロニーハイブリダイゼーション法等を利用することができる。
本発明において、胞子形成能の著しく低下した株とは、親株に比べて胞子数が1/10以下である麹菌株を指す。胞子数を測定する方法としては、たとえば胞子縣濁液を作成し、一定対数あたりの胞子数を血球計算盤で測定することで、プレート一枚当たりに形成された胞子数を算出するなどの方法などを挙げることができる。
また、本発明における総プロテアーゼ活性が上昇した株とは、醤油原料培地などにおいて親株に比べて総プロテアーゼ活性が1.1倍以上向上した株を指す。なお、総プロテアーゼ活性の測定方法としては、通常用いられている方法を利用することができ、たとえば「しょう油試験法」(財団法人日本醤油研究所・編集発行)に記載の方法を用いることができる。
この様にして育種した麹菌を用いた麹の製法および当該麹を用いた調味料を製造する方法としては、公知の方法を用いることができる。たとえば、調味料として醤油を製造する場合においては、通常の麹原料、たとえば撒水して蒸煮した大豆原料と炒熬割砕した小麦原料の混合物に、上記のalpB遺伝子の機能が欠損した麹菌を接種混合して麹を調製し、得られた麹を通常の仕込みタンクに適当な濃度の食塩水で仕込み、適宜撹拌しつつ3〜6ヶ月間程度発酵熟成させて醤油諸味を得、常法により圧搾、精製、必要により火入れを行い、製品醤油(生醤油あるいは火入醤油)とすればよい。
以下、実施例において本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
実施例1
(1)相同組換え法によるalpA遺伝子破壊株およびalpB遺伝子破壊株の作成
alpA、alpBそれぞれの遺伝子破壊株の単離には、まず親株として、硫酸(硫黄源)を資化することのできない栄養要求性株である麹菌アスペルギルス・オリゼーΔligD株を用いた。なお、ΔligD株は、公知文献(Fungal Genet Biol.45(2008)、878−889)に従い、アスペルギルス・オリゼーRIB40株(ATCC42149)を元に作成された株である。また、マーカー遺伝子としては、硫酸(硫黄源)を資化する機能をもつアスペルギルス・ニドランスsC遺伝子(Mol Gen Genet.1995 May 20;247(4):423−429.)を用いた。
alpAまたはalpBが相同組み換えによって欠損した株は、マーカーであるsC遺伝子が導入されることによってΔligD株の栄養要求性が回復していることから、硫黄源として硫酸塩だけが含まれる培地においても生育することができる。このことから、alpA、またはalpB遺伝子破壊株を容易に単離することができる。
(1−1)alpA遺伝子破壊株の作成
alpA遺伝子コード領域の上流領域約1.5kbp(alpA ORF上流領域)から下流領域約1.5kbp(alpA ORF下流領域)までをプライマーAとBを用いてPCR法により増幅した。PCR反応にはKOD−Plus−(東洋紡ライフサイエンス)を用い、条件は附属のプロトコルに従った。以下で行うPCR反応についても、同様の条件を用いた。該増幅産物をベクターpENTR D/TOPO(インビトロジェン)に導入し、完成したベクターをプライマーCとDを用いて再度PCR法により増幅し、増幅断片「い」を得た。
一方アスペルギルス・ニドランスのゲノムDNAを鋳型とし、sC遺伝子領域をプライマーEとFを用いてPCR法で増幅し、増幅断片「ろ」を得た。2つの増幅断片「い」と「ろ」とを、In−Fusion PCRクローニングキット(Clontech社)を用いて融合することで、alpA遺伝子破壊用コンストラクトを作成した(図1)。このベクターをNotI処理することで直鎖状のベクターとし、これをプロトプラスト−PEG法を用いて麹菌ΔligD株に導入した。
選択培地(グルコース1%、亜硝酸ナトリウム0.2%、リン酸2カリウム0.1%、硫酸マグネシウム0.05%、塩化カリウム0.5%、硫酸鉄0.001%、トレースエレメント0.1%、食塩4.68%)で生育した株を同培地に3回植え継いでalpA遺伝子破壊候補株を得た。これらの株から定法に従いゲノムDNAを抽出し、これを鋳型としてalpA遺伝子の増幅をPCR法でおこなった。alpA遺伝子が破壊されていた場合、alpA遺伝子の増幅は認められないため、増幅を認めない株を選抜してalpA遺伝子破壊株を取得した。
なお、本明細書中において「トレースエレメント」とは以下に示した組成の水溶液のことを指す。
トレースエレメント組成:硫酸鉄七水和物0.1%、硫酸亜鉛七水和物0.88%、硫酸銅五水和物0.04%、硫酸マンガン四水和物0.015%、四ホウ酸ナトリウム十水和物0.01%、七モリブデン酸六アンモニウム四水和物0.005%。
使用したプライマーの配列を表1に示した。
Figure 0005305353
(1−2)alpB遺伝子破壊株の作成
alpB遺伝子コード領域の上流領域約1.5kbp(alpB ORF上流領域)から下流領域約1.5kbp(alpB ORF下流領域)までをプライマー1と2を用いてPCR法により増幅した。該増幅断片をベクターpENTR D/TOPO(インビトロジェン)に導入し、完成したベクターを制限酵素NdeIサイト、SphIサイトを付加したプライマー3と4を用いて再度PCR法により増幅した。増幅断片を制限酵素NdeI、SphIで処理し、alpBのORF部分を欠損した直鎖状の配列(甲)を得た。
一方アスペルギルス・ニドランスのゲノムDNAを鋳型とし、sC遺伝子領域をNdeIサイト、SphIサイトを付加したプライマー5と6を用いてPCR法で増幅した後、pCRBluntベクターに導入し、NdeI、SphI処理し、sC領域断片(乙)を得た。甲と乙の各断片をDNAリガーゼを用いて融合することで、alpB遺伝子破壊用コンストラクトを作成した(図1)。このベクターをNotI処理して得られた直鎖状のベクターをプロトプラスト−PEG法を用いて麹菌ΔligD株に導入した。
選択培地(グルコース1%、亜硝酸ナトリウム0.2%、リン酸2カリウム0.1%、硫酸マグネシウム0.05%、塩化カリウム0.5%、硫酸鉄0.001%、トレースエレメント0.1%、食塩4.68%)で生育した株を同培地に3回植え継ぎ、培地上で胞子を形成せず白色のコロニーを形成する株のみを選抜してalpB遺伝子破壊候補株とした。これらの株から定法に従いゲノムDNAを抽出し、これを鋳型としてalpB遺伝子の増幅をPCR法でおこなった。alpB遺伝子が破壊されていた場合、alpB遺伝子の増幅は認められないため、増幅を認めない株を選抜してalpB遺伝子破壊株を取得した。
使用したプライマーの配列を表2に示した。
Figure 0005305353
(2)作成した遺伝子組換え株の形質の確認
上記(1)で作成したアスペルギルス・オリゼーalpA欠損株およびalpB欠損株について、胞子形成能、生育および総プロテアーゼ活性を確認した。
(2−1)胞子形成能
直径8cmのプラスチックシャーレに麹汁培地を作成し、親株と該麹菌を播種した。30℃で7日間培養した後、0.03%ツイーンを含む滅菌蒸留水20mlを加え、胞子を激しく縣濁し、ミラクロス(コスモバイオ社)でろ過することで、胞子縣濁液を得た。得られた胞子縣濁液の胞子数を血球計算盤で測定し、プレート一枚当たりに形成された胞子数を測定した。その結果、alpA遺伝子破壊株とは対照的に、alpB遺伝子破壊株はほとんど胞子を形成しないことが明らかとなった(表3)。なお表3中、ΔligDは親株、ΔalpAはalpA遺伝子破壊株、ΔalpBはalpB遺伝子破壊株をそれぞれ示す。
Figure 0005305353
(2−2)生育の確認
直径8cmのプラスチックシャーレに麹汁培地を作成し、親株と該麹菌をプレートの中央に播種した。30℃で24時間おきにコロニーの直径を測定した。その結果、親株であるΔligD株、alpA破壊株、alpB破壊株間で生育に差がないことが明らかとなった(図2)。
(2−3)製麹工程における胞子形成能の確認
脱脂大豆5gに8mlの滅菌蒸留水を散水し、5gの割砕小麦を加えてよく攪拌し、40分オートクレーブ処理を行った原料を醤油原料培地とした。該醤油原料培地1g当たり、胞子数が106個となるように該麹菌の胞子を散布し、よく攪拌して、28℃で48時間程度培養した。結果、培養した麹では、胞子の形成はほとんど観察されなかった。
(2−4)総プロテアーゼ活性の測定
上記の麹に140mlの冷水を添加しよく攪拌した後4時間放置し、これをろ紙でろ過し、酵素溶液を調整した。調整した酵素溶液を用いて総プロテアーゼ活性を測定した。測定には「しょう油試験法」(財団法人日本醤油研究所)に記載の方法を用い、以下の手順で行った。
1.5%ミルクカゼイン溶液1mlと蒸留水1mlを試験管にとり、30℃の恒温槽で5分間予熱した。5分後1mlの酵素液を加え、10分間反応を行った後、0.4Mトリクロロ酢酸溶液3mlを加え反応を停止した。さらに30℃で30分放置して、沈殿をろ紙で除いた後、ろ液2mlを取り、0.55M炭酸ナトリウム溶液5ml、Folin試薬1mlを加え30℃で30分反応させ、分光光度計で660nmの吸光度を測定した。同様の方法で、チロシン標準液を用いて検量線を作成し、1分間にチロシン1μgを遊離させる酵素量を1unitとして酵素活性を計算した。その結果、alpA破壊株は親株に比べて総プロテアーゼ活性が有意に低く、一方alpB破壊株は親株に比べて総プロテアーゼ活性が有意に高かった(表4、図3)。
Figure 0005305353
(2−5)まとめ
以上の結果より、alpBをコードする遺伝子の機能を欠損させることによって、胞子形成能が著しく低く、しかも総プロテアーゼ活性が親株に比べて高くなっている所期の麹菌を得ることができることが明かとなった。なお、上記の特性は、多少の程度の差はあるものの、取得したalpB破壊株すべてにおいて観察されたことから、alpB破壊に由来することが確認された。
実施例2
実施例1で選択したalpB破壊株を使用して醤油を製造し、醸造特性を調べた。すなわち、脱脂大豆5kgに150%散水し、2kg/cm2で13分間加圧蒸煮後、40℃に冷却したものに炒熬割砕した小麦4.8kgを混合して粉合せ原料を得、これにalpB破壊株を接種混合して小型通風製麹装置内で送風温度28℃で24時間、次いで26℃で20時間製麹して醤油麹を得た。
得られた麹10kgに24.5%食塩水15.3リットル(L)を加えて小型容器に仕込み、15℃で1ヶ月、次いで30℃で5ヶ月間発酵熟成させた。対照として、親株であるΔligD株を用いて同様にして醤油諸味を得た。得られた諸味を濾紙濾過により、液汁と固形分に分け諸味液汁を得、諸味液汁を加熱処理して醤油を得た。

Claims (2)

  1. ゲノムDNA中に2種のサブチリシンリレーテッドプロテアーゼ(alpA、alpB)をコードする遺伝子を保有するアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)のalpBをコードする遺伝子のみを欠損させることで、麹汁培地上で胞子を形成せず、親株に比べて総プロテアーゼ活性を向上させたアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)を用いて製麹することを特徴とする麹の製造法。
  2. ゲノムDNA中に2種のサブチリシンリレーテッドプロテアーゼ(alpA、alpB)をコードする遺伝子を保有するアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)のalpBをコードする遺伝子のみを欠損させることで、麹汁培地上で胞子を形成せず、親株に比べて総プロテアーゼ活性を向上させたアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)を用いて麹を調製し、その麹を用いて常法により仕込みし、発酵、熟成せしめることを特徴とする調味料の製造法。
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