JP6019150B2 - 光波長フィルタ - Google Patents
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Description
本願発明は、光波長フィルタに関し、特に偏波無依存で波長選択を行う光波長フィルタに関する。
近年、加入者系光アクセスシステムは、1つの局側光回線終端装置(OLT: Optical Line Terminal)と複数の加入者側光回線終端装置(ONU: Optical Network Unit)を、光ファイバ及びスターカプラを介して接続し、OLTを複数のONUが共有する、受動光ネットワーク(PON: Passive Optical Network)通信システムが主流となっている。この通信システムでは、OLTからONUへ向けた下り通信とONUからOLTに向けた上り通信とが相互に干渉し合わないように、下り通信に使われる光信号波長と上り通信に使われる光信号波長とを違えている。
従って、下り通信と上り通信のそれぞれに使われる互いに波長の異なる光信号を分波し、かつ合波するために合分波素子が必要である。OLTやONUにおいて波長の異なる光信号を分波しかつ合波する機能を実現させるために、一般に、光波長フィルタ、フォトダイオード(PD:Photodiode)、レーザーダイオード(LD: Laser diode)が空間結合される。空間結合させるためには、光波長フィルタ、PD、LD間で光軸を合わせるためのアライメント作業が必要となるが、この光軸合わせのための作業を不要とする、導波路を利用して構成される光波長フィルタが開発されている。また、この光波長フィルタを形成するに当たり、小型化と量産性に優れることから、シリコン系素材を導波路材料として用いる技術が注目されている(例えば、特許文献1〜5参照)。
加入者系光アクセスシステムで使用可能な光波長フィルタには、マッハ-ツェンダ干渉計を利用するもの、方向性光結合器を利用するもの、あるいは導波路型光回折格子を利用するもの等が知られている。シリコン導波路で構成されるマッハ-ツェンダ干渉計を利用する光波長フィルタは、多段に接続する構成としなければならないため、素子を小型化することが難しい。また、光波長フィルタとして方向性光結合器を利用する場合は透過域内での透過率が波長依存性を有しているため、光源の波長ずれに対して脆弱である。また、方向性光結合器は、その素子長が数百μm程度になるので、この場合も素子を小型化するのが困難である。
そこで、シリコン基板を使って形成される導波路型光回折格子を利用した光波長フィルタも開示されている(非特許文献1参照)。また、多モード導波路におけるモード変換型の導波路型光回折格子を利用した光波長フィルタも開示されている(特許文献6参照)。あるいは、導波路型光回折格子と方向性光結合器を組み合わせて構成された光波長フィルタも開示されている(非特許文献2参照)。
導波路型光回折格子を利用する光波長フィルタは、ブラッグ反射率を十分大きくすれば、透過波長帯域での透過率を一定に保つことができる。そして、マッハ-ツェンダ干渉計を利用する光波長フィルタでは、素子構造部分を多段に接続しなければ実現できない単一波長光成分だけの選択機能が、導波路型光回折格子を利用する光波長フィルタでは、単一の素子構造部分で反射することで実現されるという特徴がある。
Hirohito Yamada, et. al,. "Si Photonic Wire Waveguide Devices" IEICE Transactions of Electronics vol. E90-C, No. 1, p. 59, January 2007.
Wei Shi, et. al,. "Add-Drop Filters in Silicon Grating-Assisted Asymmetric Couplers" Optical Fiber Communication Conference 2012 OTh3D.3.
しかしながら、従来の導波路型光回折格子を利用する光波長フィルタは、TM(Transverse Magnetic)波に対する回折効率(すなわちブラッグ反射率)がTE(Transverse Electric)波に対するブラッグ反射率より低いという、波長選択機能に偏波依存性がある。
このため、従来の導波路型光回折格子を利用する光波長フィルタには偏波依存性があり、TM偏波成分とTE偏波成分とが混在した光信号を処理する必要のある加入者系光アクセスシステムで利用するには対応しにくい欠点を有している。そこで、波長選択特性に偏波依存性が無い導波路型光回折格子を利用する光波長フィルタの実現が望まれる。
本願発明者は、導波路コアを導波方向に沿って左側導波路領域、中央導波路領域、右側導波路領域に三分割して考え、左側導波路領域と右側導波路領域の左右反対称の位置に導波路幅の狭い領域を設け、導波路型光回折格子を形成すれば、導波路コア中で、TM偏波成分とTE偏波成分が共通でもっている伝搬方向の電場成分を介してTM偏波成分とTE偏波成分が交換されることに着目した。そして、この導波路型光回折格子によれば、偏波無依存で波長選択が行われることを、シミュレーションを通じて確かめた。
そこで、この発明の目的は、TM偏波成分とTE偏波成分の相互偏波変換が偏波無依存で可能である導波路型の光波長フィルタを提供することにある。
本願発明の要旨によれば、上述の目的を達成するため、導波路型光回折格子を利用する光波長フィルタは、以下の特徴を具えている。
本願発明の光波長フィルタの導波路を構成する導波路コアは、導波方向に沿って左側導波路領域、中央導波路領域、右側導波路領域が設定されており、左側導波路領域の幅と右側導波路領域の幅は等しく、左側導波路領域と右側導波路領域には、周期的に抉られた箇所が設けられ、厚み方向に非対称に形成されている。また、当該抉られた箇所は、中央導波路領域を中心として左右反対称の位置に配置されている。
更に、左側導波路領域と右側導波路領域の抉られた箇所以外の箇所は、完全に除去してこの部分の厚みが0となるように形成してもよい。すなわち、上述の抉られた箇所を残して、抉られた箇所以外の箇所には導波路コアが存在しないように形成してもよい。
そして、導波路コアを取り囲むクラッド層を酸化シリコン材で形成し、導波路コアをシリコン材で形成するのが最適である。
本願発明の光波長フィルタによれば、上述したように、導波路コアの左側導波路領域と右側導波路領域にコア部分が周期的に左右反対称に一部飛び出させ、導波路の等価屈折率を周期的に変化させることによって導波路型光回折格子が構成されている。この導波路型光回折格子によって波長選択が行われる。
そして、本願発明の特徴は、左側導波路領域の幅と右側導波路領域の幅は等しく、両領域には、周期的に、中央導波路領域を中心として左右反対称の位置に抉られた箇所が設けられている。左側導波路領域と右側導波路領域の抉られた箇所以外の箇所を完全に除去して形成した場合は、左側導波路領域と右側導波路領域の幅は周期的に0となる個所が存在するが、この場合の、左側導波路領域と右側導波路領域の幅は、両領域において残存しているコア部分の幅を意味する。
本願発明の光波長フィルタの導波路コアが、上述のような構成とされているため、入力光と出力光が導波路を伝搬中にTM偏波成分とTE偏波成分が交換される。すなわち、入力光の伝搬モードがTM偏波であれば、出力光の伝搬モードはTE偏波となり、逆に入力光の伝搬モードがTE偏波であれば、出力光の伝搬モードはTM偏波となるので、TM偏波成分とTE偏波成分の相互偏波変換が偏波無依存で可能である導波路型の光波長フィルタが実現される。
以下、図を参照して、この発明の実施形態につき説明する。なお、本願発明の光波長フィルタの概略的構成を示す図1は、本願発明の実施形態に係る一構成例を示すものであり、本願発明を図示例に限定するものではない。また、以下の説明において、特定の構成素材及び設計条件等を用いることがあるが、これら構成素材及び設計条件等は好適例の一つに過ぎず、したがって、何らこれらに限定されない。
<光波長フィルタの構成>
図1を参照して、本願発明の光波長フィルタの実施形態について説明する。図1は、光波長フィルタの概略的構成を示す図である。ここで、説明の便宜上、図1に示すように、導波方向をz軸方向とし、導波路の幅方向をy軸方向、導波路の深さ方向をx軸方向と定義する。
図1を参照して、本願発明の光波長フィルタの実施形態について説明する。図1は、光波長フィルタの概略的構成を示す図である。ここで、説明の便宜上、図1に示すように、導波方向をz軸方向とし、導波路の幅方向をy軸方向、導波路の深さ方向をx軸方向と定義する。
本願発明の光波長フィルタは、図1(A)に示すように、左側導波路領域と右側導波路領域に垂直方向に周期的に抉られた箇所を設けて、これ以外の箇所は導波路の厚みをそのまま残して形成することも、あるいは図1(B)に示すように、左側導波路領域と右側導波路領域の抉られた箇所以外の箇所の厚みを0となるように形成することもできる。以後の説明の便宜上、図1(A)に示す形態とした光波長フィルタを第1の光波長フィルタと称し、図1(B)に示す形態とした光波長フィルタを第2の光波長フィルタと称する。
第1の光波長フィルタは、本願発明の光波長フィルタの導波路を構成する導波路コア1に、導波方向に沿って左側導波路領域L、中央導波路領域C、右側導波路領域Rが設定されており、左側導波路領域Lの幅と右側導波路領域Rの幅は等しく、左側導波路領域Lと右側導波路領域Rには、周期的に抉られた箇所(以後、第1の箇所3aという)が設けられ、第1の箇所3aは、中央導波路領域Cを中心として左右反対称の位置に配置されている。左側導波路領域Lと右側導波路領域Rの第1の箇所3a以外の箇所である第2の箇所3bの導波路の厚みは、中央導波路領域Cの導波路の厚みと等しくしてある。
第2の光波長フィルタは、左側導波路領域Lと右側導波路領域Rの第2の箇所3bが、完全に除去されてこの部分の厚みが0となるように形成されている。すなわち、第1の箇所3aを残して、第2の箇所3bには導波路コアが存在しないように形成されている。
第1及び第2の光波長フィルタは、シリコン基板5上に、導波路型光回折格子パターン構造体(導波路コア1)が形成されることによって形成されている。すなわち、導波路コア1をクラッド層2が囲っている。
第1及び第2の光波長フィルタは、後述するように、SOI(Silicon on Insulator)基板を利用すれば容易に形成できる。この場合、第1の光波長フィルタは、シリコン基板5上に、導波路コア1を取り囲むクラッド層2を酸化シリコン材で形成し、導波路コア1をシリコン材で形成することになる。もちろん、シリコン材で導波路コア1を形成し、酸化シリコン材でクラッド層2を形成する以外に、導波路コア1の屈折率に比べてクラッド層2の屈折率が小さいという条件を満たす素材を選択して、構成してもよい。
第1及び第2の光波長フィルタを作製するに当たっては、導波路コア1の底面とシリコン基板5の上面との距離を、1μm以上に設定すると、導波路コア1を伝搬する光がシリコン基板5に染み出すことを有効に防止できる。
図1では、TM偏波が導波路型光回折格子に入力されて(入力光4a)、ブラッグ反射されてTE偏波として出力される(出力光4b)様子を示している。あるいは、TE偏波が導波路型光回折格子に入力されて(入力光4a)、ブラッグ反射されてTM偏波として出力される(出力光4b)様子を示していると想定してもよい。
入力光4aをTM偏波とし、回折されて出力される出力光4bをTE偏波とする利用形態としても、あるいは入力光4aをTE偏波とし、出力光4bをTM偏波とする利用形態としてもよい。入力光4aと出力光4bが互いに同一の伝搬モードとなるようにするには、導波路コア1の左右に設ける凸部(第1の光波長フィルタでは第1及び第2の箇所4a,4b、第2の光波長フィルタでは第1の個所3a)は左右反対称の形態とすればよい。
入力光4aの偏波方向と出力光4bの偏波方向とが互いに直交する直交偏波の関係となるようにするには、導波路コア1の左側導波路領域Lと右側導波路領域Rがx軸方向(導波路コアの厚み方向)に非対称となっていることが必要である。この条件を満たすために、第1の光波長フィルタにあっては、図1(A)に示すように左側導波路領域Lと右側導波路領域Rに周期的に抉られた第1の箇所3aが設けられ、第2の光波長フィルタにあっては、図1(B)に示すように第1の箇所3aをそのままとして、更に第2の箇所3bの厚みが0となるように除去されて形成されている。
一般に、導波路を伝搬する光の伝搬ベクトルの方向は、導波路の中心方向とは一致せず、一定の角度で傾いている。従って、導波路を伝搬するTE偏波及びTM偏波の振動方向を示す振幅ベクトルは、導波方向をz軸方向にとった場合、x軸成分、y軸成分の外にz軸成分を有している。
すなわち、入力光4aと出力光4bが互いに同一の伝搬モードであって、導波路コア1の両側(左側導波路領域Lと右側導波路領域R)の深さ方向(x軸方向)に非対称となるように形成されていて、導波路コア1の左側導波路領域Lと右側導波路領域Rがx軸方向に非対称となっていることによって、TM偏波成分とTE偏波成分が共通でもっている伝搬方向の電場成分(z軸方向成分)を介してTM偏波成分とTE偏波成分が交換される。そして、このような構成とすることによって、導波路型光回折格子において、伝搬するTM偏波成分とTE偏波成分の重なり積分で与えられる回折効率を大きくすることができる。すなわち、TM偏波である入力光4aに対して出力光4bはTE偏波となり、TE偏波である入力光4aに対して出力光4bはTM偏波となる。つまり、入力光の偏波に対して出力光の偏波は直交偏波となり、入力光の偏波方向に依存せず同一の強度の出力光が得られることとなる。このことから、偏波無依存で波長分離が可能である光波長フィルタが実現される。
更に、第1の光波長フィルタでは、左側導波路領域Lと右側導波路領域Rに抉られた第1の箇所3aを設け、第2の箇所3bの導波路の厚みが中央導波路領域Cの厚みと等しく設定している。また、第2の光波長フィルタでは、第1の箇所3aの導波路の厚みを第1の光波長フィルタの場合と等しくして、第2の箇所3bの部分の厚みが0となるように設定している。
第1の箇所3aの中央導波路領域Cの導波路の厚みから抉る掘り込みの深さDを小さく形成するほど製造プロセスが容易である。一方、掘り込みの深さDを浅くすると、導波路コア1に励起される伝搬モードが多数発生し、分離されて出力される出力光の波長及び伝搬モードに複数の雑音成分(選択されるべき波長及び伝搬モード以外の光成分)を含み、波長選択が十分行われない恐れが生じる。
図1(A)に示す第1の光波長フィルタによれば、掘り込みの深さDを80 nmのときにも、良好に波長選択が行えることを、後述するシミュレーションによって確かめた。また、図1(B)に示す第2の光波長フィルタによれば、第2の箇所3bは、完全に除去されてこの部分の厚みが0となるように形成される。このようにすることによって、左側導波路領域Lと右側導波路領域Rにおける等価屈折率が小さくなるようにしている。なお、このシミュレーションにおいては、波長が1. 5μmの波長成分を分離フィルタリングすることを前提にして行っている。
導波路コア1を伝搬する光は、中央導波路領域Cを伝搬する光電場成分が感応する屈折率よりも、左側導波路領域L及び右側導波路領域Rを伝搬する光電場成分が感応する屈折率が実質的に小さい。一方、1次伝搬モードの光電場分布は導波路コアの両側面で強く導波路コアの中心で弱い、これに対して基本伝搬モードの光電場分布は、導波路コアの中心で強く、導波路コアの両側面で弱い。このため1次伝搬モードの等価屈折率は、基本伝搬モードの等価屈折率より低い。したがって、TM偏波成分の基本伝搬モードに対する等価屈折率よりも、TE偏波成分の1次伝搬モードに対する等価屈折率が小さくなる。その結果、TE偏波成分の基本伝搬モードからTE偏波成分の1次伝搬モードへの回折波長と、TE偏波成分の基本伝搬モードからTM偏波成分の基本伝搬モードへの回折波長との波長差を大きくすることができる。
第2の光波長フィルタでは、第2の箇所3bが完全に除去されてこの部分の厚みが0となるように形成される。このため、中央導波路領域Cを伝搬する光電場成分が感応する屈折率と、左側導波路領域L及び右側導波路領域Rを伝搬する光電場成分が感応する屈折率との差異をより効果的に大きくされている。したがって、波長選択性に優れる光波長フィルタとなる。第2の箇所3bの厚みが0となるように形成することによって、TM偏波成分の基本伝搬モードに対する等価屈折率よりも、TE偏波成分の1次伝搬モードに対する等価屈折率がより効果的に小さくできる。そのため、TE偏波成分の基本伝搬モードからTE偏波成分の1次伝搬モードへの回折波長が、TE偏波成分の基本伝搬モードからTM偏波成分の基本伝搬モードへの回折波長から離れるという効果が得られる。したがって、第2の光波長フィルタによれば、より一層、光波長フィルタとしての波長選択性機能を向上させることが可能となる。
以上説明したように、第1及び第2の光波長フィルタによれば、出力される出力光は雑音成分(選択されるべきブラッグ反射光以外の波長成分)が少なくすぐれた波長選択性が実現される。
ここで、説明の便宜上、本願発明の光波長フィルタの構成要素として光回折格子を具える導波路コア1を説明する場合はこれを導波路型光回折格子パターン構造体と表記し、波長分離する機能を実現する光波長フィルタの機能を説明する場合は導波路型光回折格子と表記する場合もあるが、共に実質的には同一のものを指し示している。
導波路型光回折格子を伝搬するTE偏波及びTM偏波のz軸方向成分を介して、TE偏波とTM偏波をカップリングさせることができる位相整合条件(ブラッグ反射条件)は、以下に示す式(1)によって与えられる。
2π/Λ=4π[n(e)+n(m)]/λ (1)
ここで、Λは光回折格子の周期、λはブラッグ反射される光の真空中での波長、n(e)、n(m)は、それぞれTE偏波、TM偏波に対する等価屈折率である。
2π/Λ=4π[n(e)+n(m)]/λ (1)
ここで、Λは光回折格子の周期、λはブラッグ反射される光の真空中での波長、n(e)、n(m)は、それぞれTE偏波、TM偏波に対する等価屈折率である。
第1の光波長フィルタへの入出力光に対するTE偏波、TM偏波に対する等価屈折率は、伝搬モードが基本伝搬モードであるか高次伝搬モードであるかによって異なるが、入出力光の伝搬モードに対応させて、式(1)が満足されるように設定すれば、偏波無依存で波長分離が可能である光波長フィルタが実現される。
導波路型光回折格子パターン構造体(導波路コア1)の導波路幅等によって等価屈折率は調整可能であるので、等価屈折率n(e)、n(m) が式(1)を満たすように、導波路型光回折格子パターン構造体の導波路幅を決定することが可能である。したがって、TE偏波に対してもTM偏波に対しても等しい波長のブラッグ反射光が得られる導波路型光回折格子パターン構造体の導波路幅を設定すれば、図1に示す第1及び第2の光波長フィルタを偏波無依存の光波長フィルタとして構成することができる。
<第1及び第2の光波長フィルタの動作シミュレーション>
次に、シミュレーションによって、第1及び第2の光波長フィルタの特性を検証したので、その結果について説明する。シミュレーションは、FDTD法(Finite-difference time-domain method; FDTD method)によって光電場の強度分布を求めることによって行った。シミュレーションを実行するに当たっては、導波路コア1の厚み、光回折格子の周期等の値を適宜設定することによって、この発明の光波長フィルタの特性が明瞭となるようにした。
次に、シミュレーションによって、第1及び第2の光波長フィルタの特性を検証したので、その結果について説明する。シミュレーションは、FDTD法(Finite-difference time-domain method; FDTD method)によって光電場の強度分布を求めることによって行った。シミュレーションを実行するに当たっては、導波路コア1の厚み、光回折格子の周期等の値を適宜設定することによって、この発明の光波長フィルタの特性が明瞭となるようにした。
このシミュレーションでは、導波路コア1の中央導波路領域Cの厚みは300 nm、左側導波路領域Lと右側導波路領域Rの幅はそれぞれ150 nm、中央導波路領域Cの幅は300 nm、第1の箇所3aの掘り込みの深さDは80 nm、第2の箇所3bの厚みは、第1の光波長フィルタでは300 nm、第2の光波長フィルタでは0 nmであるとした。導波路コア1の屈折率は3.48、クラッド層2の屈折率は1.46とした。また導波路型光回折格子の全長は100μm、光回折格子の周期Λは300 nmであるとした。
図2を参照して、シミュレーション結果について説明する。図2において、(A)は第1の光波長フィルタ、(B)は第2の光波長フィルタに対するシミュレーション結果を示す図である。図2は光波長フィルタにTE偏波成分とTM偏波成分とを含む入力光を入力して得られるブラッグ反射光であるTE偏波成分及びTM偏波成分の強度、及び入力側とは反対側から透過する透過光強度について示す。図2の横軸は波長をμm単位で目盛ってあり、縦軸は出力光強度をdB目盛で示してある。
図2では、ブラッグ反射光であるTE偏波成分の出力光4bを曲線(a)で示し、TM偏波成分の出力光4bを曲線(b)で示してある。曲線(a)及び曲線(b)はともに、波長が1.5μmの近傍にピークをもっている。すなわち、このピーク波長が光波長フィルタで選択された波長である。
図2(A)及び(B)において、曲線(b)の波長が1.4μmの近傍の上向きの矢印(↑)で示す位置の極小(波長dip)は、TE偏波成分の基本伝搬モードからTE偏波成分の1次伝搬モードへの回折成分である。第1の光波長フィルタよりも第2の光波長フィルタのほうが波長dipの位置がより短波長側にあり、TE偏波成分の基本伝搬モードからTE偏波成分の1次伝搬モードへ回折してきた成分がより確実に出力光4bから分離でき、高性能であることがわかる。
<光波長フィルタの製造方法>
第1及び第2の光波長フィルタを構成する導波路型光回折格子パターン構造体は、例えば、SOI基板を入手して、以下の工程によって形成できる。SOI基板は、広く市販品として入手可能であり、シリコン基板に酸化シリコン層、及びこの酸化シリコン層上に導波路の厚みの寸法に等しい厚みのシリコン層が形成されている。
第1及び第2の光波長フィルタを構成する導波路型光回折格子パターン構造体は、例えば、SOI基板を入手して、以下の工程によって形成できる。SOI基板は、広く市販品として入手可能であり、シリコン基板に酸化シリコン層、及びこの酸化シリコン層上に導波路の厚みの寸法に等しい厚みのシリコン層が形成されている。
SOI基板の酸化シリコン層上に形成されているシリコン層に対して、上述の導波路型光回折格子パターン構造体を残してドライエッチングを行い、他の部分のシリコン層を取り除く。
第1と第2の光波長フィルタを作製するに当たっては、共通のプロセスが使用できる。導波路コア1の形成は、2回に分けてドライエッチングを行う。段差を形成したのち、別のパターンで底まで掘り込む。工程の順番は逆で合っても良い。
導波路型光回折格子パターン構造体の形成に引き続いて、この構造体を導波路コア1として取り囲む酸化シリコン層を、化学気相成長(CVD: Chemical Vapor Deposition)法等によって形成し、引き続き酸化シリコン層を研磨して、シリコン導波路の上面(中央導波路領域Cの上面)を露出させる。この工程の後、CVD法等によって導波路コア1を取り囲む酸化シリコン層を形成し、この酸化シリコン層の上面が平坦になるように研磨し、この酸化シリコン層を追加のクラッド層として形成する。この追加のクラッド層が形成された段階で、図1に示すように、導波路コア1をクラッド層2で完全に囲み、光波長フィルタが完成する。
以上説明したように、第1及び第2の光波長フィルタを構成する導波路型光回折格子パターン構造体は、SOI基板を用いて周知のエッチング処理、CVD法等によって形成することが可能であるので、量産性に優れ低コストで簡便に形成することが可能である。
1:導波路コア
2:クラッド層
3a:第1の箇所
3b:第2の箇所
4a:入力光
4b:出力光
5:シリコン基板
L:左側導波路領域
C:中央導波路領域
R:右側導波路領域
2:クラッド層
3a:第1の箇所
3b:第2の箇所
4a:入力光
4b:出力光
5:シリコン基板
L:左側導波路領域
C:中央導波路領域
R:右側導波路領域
Claims (4)
- 導波路型の光波長フィルタであって、
当該光波長フィルタの導波路を構成する導波路コアは、導波方向に沿って左側導波路領域、中央導波路領域、右側導波路領域が設定されており、
前記左側導波路領域の幅と前記右側導波路領域の幅は等しく、
前記左側導波路領域と前記右側導波路領域には、前記中央導波路領域を中心として左右反対称の位置に周期的に抉られた箇所が設けられ、
当該抉られた箇所は、前記導波路コアが、当該導波路コアの上面から下面に向かって厚み方向に抉られ、前記下面の側に偏ってコアが残存するように厚み方向に非対称とされた導波路型光回折格子パターン構造体として形成されている
ことを特徴とする光波長フィルタ。 - 更に、前記左側導波路領域と前記右側導波路領域の前記抉られた箇所以外の箇所は、完全に除去されて当該部分の厚みが0となるように形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の光波長フィルタ。 - 前記導波路型光回折格子パターン構造体は、Λを当該導波路型光回折格子パターン構造体の光回折格子としての周期、λをブラッグ反射される光の真空中での波長、n(e)、n(m)を、それぞれTE(Transverse Electric)偏波、TM(Transverse Magnetic)偏波に対する等価屈折率として、
2π/Λ=4π[n(e)+n(m)]/λ
で与えられる関係を満足するように設定されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光波長フィルタ。 - 前記導波路コアを取り囲むクラッド層は酸化シリコン材で形成され、
前記導波路コアはシリコン材で形成されている
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光波長フィルタ。
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