JP5377161B2 - グレーティング構造を有する基板型光導波路デバイスの設計方法 - Google Patents

グレーティング構造を有する基板型光導波路デバイスの設計方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5377161B2
JP5377161B2 JP2009194510A JP2009194510A JP5377161B2 JP 5377161 B2 JP5377161 B2 JP 5377161B2 JP 2009194510 A JP2009194510 A JP 2009194510A JP 2009194510 A JP2009194510 A JP 2009194510A JP 5377161 B2 JP5377161 B2 JP 5377161B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
optical waveguide
grating
refractive index
pitch
waveguide device
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2009194510A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2011048016A (ja
Inventor
健 佐久間
憲介 小川
寧 官
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Fujikura Ltd
Original Assignee
Fujikura Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Fujikura Ltd filed Critical Fujikura Ltd
Priority to JP2009194510A priority Critical patent/JP5377161B2/ja
Publication of JP2011048016A publication Critical patent/JP2011048016A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5377161B2 publication Critical patent/JP5377161B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Optical Integrated Circuits (AREA)

Description

本発明は、グレーティング構造を有する基板型光導波路デバイスの設計方法に関する。
近年、光ファイバ通信システムの発展、特にエルビウム添加光ファイバ増幅器(EDFA)と高密度波長多重通信システム(DWDM)の発明により、光ファイバ通信網で伝送される情報量が急速に増大している。さらなる需要の増加に備え、多重する波長数の増加や周波数利用効率の高い変調方式などについて研究開発が進められている。DWDMシステムでは、例えば、従来用いられている分散補償光ファイバモジュールよりもさらに精密に各チャネルの波長分散及び分散スロープを補償する光分散補償器など、より高度な機能を有する光部品が必要とされる。また、光伝送路の分散特性の時間変化や経路変更に対応し得る可変光分散補償器や、偏波モード分散の補償を動的に行う偏波モード分散補償器などの研究開発も行われている。
一方、情報通信システムの規模及び設置数量の急速な拡大に伴って、コンピューターシステムやハイエンドルータなどの消費する膨大な電力が経済性のみならず環境影響の観点からも問題視されるようになりつつあり、省電力化し環境負荷を低減するグリーンICT(Information and Communication Technology)が必要とされている。ルータ等各種伝送装置を小型化することが出来れば、データセンターや通信キャリア局舎への装置収容効率が改善され、空間利用効率が良くなるばかりでなく、当該データセンターあるいは局舎のエアコン電力を大きく削減することが可能となり、省エネに貢献する。よって、各種光伝送装置に用いられる光部品についても、省電力化と小型化とが求められている。
小型かつ高機能の光部品を製造する技術として、CMOS製造工程を利用し光導波路デバイスを製造するシリコンフォトニクス技術が脚光を浴び、研究開発が進められつつある。シリコン(Si)あるいは窒化ケイ素(SiN)といった高屈折率材料を用いて光導波路を構成することにより、従来の各種シリカ(SiO)系ガラスをコア及びクラッドの主たる構成材料とする光導波路デバイスを小型化することが可能となる。また、Siに不純物元素をドープして半導体材料とすることで、外部から電圧を印加し屈折率を調整することが可能となり、光学特性可変デバイスを実現することが出来る。大規模な量産に向いた製造工程であることから、将来光部品の低価格化が期待出来る。
従来、ブラッググレーティングパターンを有する基板型光導波路デバイスとして、図28に示すように、光導波路200の側壁に設けた凸部201および凹部202のピッチPが一定な等ピッチ型グレーティング構造や、図29に示すように、光導波路300の側壁に設けた凸部301および凹部302のピッチが、P >P >P >P >P >P というように徐々に変化するチャープピッチ型グレーティング構造が知られている。
特許文献1には、光ファイバや基板型光導波路等の光導波路中に、ある一つの周期を有するブラッググレーティングが形成され、このブラッググレーティングと重なるように光導波路中にサンプリング構造が形成され、複数の波長チャネルで波長分散補償を行う波長分散補償素子が開示されている。前記サンプリング構造は、ブラッググレーティングの周期よりも長い、ある一つの周期で位相サンプリングしたパターンで構成される。位相サンプリングの各周期は、光導波路の光軸に沿った方向で複数の空間領域に分割され、隣接する空間領域が互いに接した境界ではブラッググレーティングの位相が不連続に変化する。特許文献1のFIG.1Aから1Dに示されているように、一つの空間領域内では、位相の不連続な変化は無い。
また、非特許文献1は、特許文献1の発明者らによる学術論文であり、特許文献1を補完する技術情報が開示されている。まず、中心波長において単一のチャネルのブラッググレーティングパターンを特許文献1の知見を用いて設計する。グレーティングパターンは、所望の反射及び波長分散のスペクトル特性から逆散乱法により導出される。ただし、光ファイバブラッググレーティングではグレーティングパターンを作製するために屈折率を変化させることが可能な範囲に限界があるため、その限界を超えないように上記スペクトル特性を逆フーリエ変換してアポダイズするという操作を加える。以上により、ブラッググレーティングのピッチは位置とともに連続的に変化するパターンが得られる。その後、複数チャネルのブラッググレーティングパターンを位相サンプリングにより設計する。光ファイバブラッググレーティングでは屈折率の変化範囲に制限があるため、位相サンプリングが有効としている。
特許文献2には、逆散乱問題を解いて基板型光導波路デバイスを設計し製作することにより、光分散補償器などの複雑な光学特性を有するデバイスを実現できることが開示されている。
CMOSデバイス製造技術の各テクノロジーノードにおけるフォトリソ工程の解像度は、露光装置の光源の波長の短波長化だけで決まるわけではなく、位相シフトマスクなどの解像度向上技術の導入によっても改善される。400nm以上のテクノロジーノードでは波長365nmのi線の光源が用いられていた。250nm、180nm、130nmの各テクノロジーノードでは波長248nmのKrFエキシマレーザが用いられた。現在では、波長193nmのArFエキシマレーザが導入され、さらに液浸露光技術が開発されるに至り、90nm、65nm、45nmの各テクノロジーノードが実用に供されている。
位相シフト法は、ステッパー露光装置を用いた縮小投影露光法における解像限界を向上させる方法として、従来から知られている。非特許文献2によると、位相シフト法の解像限界は通常の透過マスクによる露光法に比べて約2倍程度向上する。
従来、シリコンフォトニクス技術を利用した光ファイバ通信システム用光部品として、変調器や受発光素子の他、フォトニック結晶光導波路、シリコン細線光導波路、AWGなどの各種光受動部品が研究されている。一部ではトランシーバーモジュールの商品化の動きも見られるが、依然としてシリコンフォトニクス技術の研究はその黎明期にある。これまでの研究の多くは電子線(EB)直接描画装置によるフォトリソ工程を利用して実施されており、フォトマスクを用いたフォトリソ工程については未だ十分に知見が蓄積された状態とはなっていない。初期の比屈折率差(通称Δ)が0.3%程度のシリカガラス系基板型光導波路の製造においては、光導波路のコア幅も7μm程度と十分に太く、等倍投影のフォトマスクが用いられていた。シリコンフォトニクス技術で用いられるような高比屈折率差光導波路では、信号光が感受する実効屈折率が高くなることから、シングルモード光導波路のコア寸法はその数分の一から数十分の一となり、またフォトニック結晶光導波路やグレーティング光導波路の周期構造の間隔も大変に小さいものとなる。よって、より微細なプロセス技術が要求される。
一方で、DRAMやCPUなどの電子回路要素を集積化したLSIとは異なり、光導波路デバイスでは光導波路コアの厚さあるいはクラッドなどその周辺構造の形成に十分な厚さあるいは深さを必要とするため、必ずしも最先端の微細なプロセスが適用可能であるとは限らず、厚膜レジスト塗布が必要になるなど、旧世代のテクノロジーノードを用いる必要がある場合が少なくない。また、DRAMやCPUなどと比較して需要数量の桁違いに少ない光ファイバ通信システム用光部品では、12インチウエハを用いて大量生産する新世代のプロセスの利用が必ずしもコスト低減に直結するとは限らず、6インチウエハあるいは8インチウエハを用いて旧世代のプロセスで適量製造することがコストダウンとなる場合が多い。例えば、非特許文献3には、130nmテクノロジーノードを用いて製造された光ファイバ通信システム用シリコンフォトニクス光導波路デバイスが開示されている。130nmテクノロジーノードとは、例えば、波長248nmのステッパー露光装置を用い、位相シフトマスクを用いて解像度の向上をはかったプロセスである。
米国特許第6,707,967号明細書 特開2004−077665号公報
H. Li, Y. Sheng, Y. Li, and J.E. Rothenberg, "Phased-Only Sampled Fiber Bragg Gratings for High-Channel-Count Chromatic Dispersion Compensation," Journal of Lightwave Technology, Vol. 21, No. 9, pp.2074-2083 (2003) MARC D. LEVENSON, N. S. VISWANATHAN, ROBERT A. SIMPSON, "Improving Resolution in Photolithography with a Phase-Shifting Mask," IEEE TRANSACTIONS ON ELECTRON DEVICES, VOL.ED-29, NO.12, PP. 1828-1836, DECEMBER 1982 T. Pinguet, V. Sadagopan, A. Mekis, B. Analui, D. Kucharski, S. Gloeckner, "A 1550 nm, 10 Gbps optical modulator with integrated driver in 130 nm CMOS," 2007 4th IEEE International Conference on Group IV Photonics, 19-21 Sept. 2007
従来公知の等ピッチ型グレーティング構造やチャープピッチ型グレーティング構造では、基板型光導波路デバイスの光学特性として複数チャネルの波長分散と分散スロープを同時に補償する光分散補償特性のような高度な機能性を付与することは出来ない。また、シリコンフォトニクス技術を用いて該デバイスを製作する場合、チャープピッチ型グレーティング構造のように徐々に寸法の変化する構造は、各寸法の加工精度を管理することが容易ではなく、より工程管理の容易な構造が要望される。
特許文献1や非特許文献1に記載の位相サンプリングパターンによるグレーティング構造は、ファイバブラッググレーティング(FBG)のような実効屈折率振幅の比較的小さい光導波路でも多チャネル型の光分散補償器を実現することが出来る。しかし、光導波路の光軸に沿って屈折率が高い部分を所定の規則に従って配列するだけでは、機能性を高めるほど光導波路の長さが増大することになる。このため、高機能性デバイスの長さを短縮し小型化するという目的には適さない。
光分散補償器などの高度な機能を有する光導波路デバイスを実現するためには、特許文献2に記載されているように逆散乱法を用いて光導波路の幅の変化に基づくグレーティング光導波路を設計し、その設計に基づきシリコンフォトニクス技術を用いて基板型光導波路デバイスを実現することが好適である。しかし、特許文献2には、コアの幅の変化が極めて微細なものである場合には、X線リソグラフィを用いたLIGA(リーガ)プロセスなど特別な工程が必要となる可能性が示唆されている。
したがって、本発明は、高度な機能性を達成しつつ、長さを短縮し小型化することも可能であり、しかも製造工程における加工精度の管理を容易化できるグレーティング構造を有する基板型光導波路デバイスの設計方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明は、光導波路を構成する材料を、フォトリソグラフィー工程により形成したレジスト層を用いたエッチング工程によって加工してなるグレーティング構造を有する基板型光導波路デバイスの設計方法であって、該設計方法は、該基板型光導波路デバイスで得ようとする所望の光学特性を入力し逆散乱問題を解くことによって、実効屈折率分布を得て、該実効屈折率分布を積分により平均化し、予め求めたコア寸法と実効屈折率との関係を元にして換算することによって、前記グレーティング構造における光導波路の長手方向であるz軸に沿った光導波路のコア幅を、z軸上に間隔Δzで等間隔に配置された座標ごとに算出するものであり、該設計方法は、真空中の波長として設定された設計中心波長に対して、所定のピッチ基準値Pを設計中心波長/(参照実効屈折率×2)とし、前記フォトリソグラフィー工程及びエッチング工程が適用可能な最小ピッチをP min で表すとき、P−Δz≧P min となるように、前記Δzを設定することにより、前記座標ごとのコア幅によって表現される前記グレーティング構造のグレーティングピッチP複数の離散値をとり、かつ、前記グレーティング構造の全体にわたり、P/Δzが1より大きい整数に等しくなるように設計することを特徴とする基板型光導波路デバイスの設計方法を提供する。
本発明においては、Mを所定の1より大きい整数値とし、ΔzをP/Mとすることが好ましい。Mは、10以上が好ましく、20以上がより好ましい。
Zakharov-Shabat方程式を用いて前記逆散乱問題を解くことが好ましい。
本発明によれば、P−Δzがフォトリソグラフィー工程及びエッチング工程の適用可能な最小ピッチPmin以上となるようにΔzを小さい値に設定するので、主たるグレーティングピッチであるP、P+Δz及びP−ΔzをすべてPmin以上として設計することができる。これにより、複雑なグレーティング構造を有する基板型光導波路デバイスを安定して製造することが可能になる、
Zakharov-Shabat方程式を用いて逆散乱問題を解くことによりグレーティング光導波路を設計したので、多数のDWDMチャネルを一括して光ファイバ伝送路の群遅延分散と分散スロープを同時に補償する光分散補償器のような複雑な機能の光学特性を有する基板型光導波路デバイスを短い導波路長で小型に構成することが可能になる。
CMOS製造工程を利用したシリコンフォトニクス技術により基板型光導波路デバイスを製造出来るようにしたので、大規模な量産が可能となり、将来の低価格化が期待出来ることとなった。また、高比屈折率差光導波路構造の採用により小型のデバイスとすることができる。
光導波路コアの一部に半導体シリコンを用い、電圧印加によって光導波路の実効屈折率を調整可能とした場合には、光学特性を動的に可変可能な光デバイスを実現することができる。
Zakharov-Shabat方程式を用いて逆散乱問題を解くことによりグレーティング光導波路を設計した結果、該グレーティング光導波路は光導波路のコア幅や溝状構造の幅が不均一でありピッチがある複数の離散値となるようなものとなる。グレーティングピッチがある複数の離散値をとるということにより、チャープ型と異なり工程管理が容易になる。
(a)は基板型光導波路デバイスの第1実施形態を示すコアの部分斜視図、(b)はコアの部分上面図、(c)はコアの断面図である。 第1実施形態におけるwinおよびwoutを説明するためのコアの部分上面図である。 基板型光導波路デバイスの第2実施形態を示す断面図である。 基板型光導波路デバイスと光伝送路とを接続した形態の一例を示す説明図である。 (a)は第2実施形態におけるwinに対するneffの変化の一例を示すグラフ、(b)はwinの変化に伴うwoutの変化の一例を示すグラフである。 第2実施形態におけるneffに対するwinおよびwoutの変化を示すグラフである。 反射率スペクトルの一例を示すグラフである。 図7の一部を拡大して示すグラフである。 群遅延スペクトルの一例を示すグラフである。 図9の一部を拡大して示すグラフである。 ポテンシャル分布の一例を示すグラフである。 図11の一部を拡大して示すグラフである。 実効屈折率分布の一例を示すグラフである。 図13の一部を拡大して示すグラフである。 M=5のときのグレーティングピッチの分布の一例を示すグラフである。 図15の一部を拡大して示すグラフである。 M=10のときのグレーティングピッチの分布の一例を示すグラフである。 図17の一部を拡大して示すグラフである。 M=20のときのグレーティングピッチの分布の一例を示すグラフである。 図19の一部を拡大して示すグラフである。 M=25のときのグレーティングピッチの分布の一例を示すグラフである。 図21の一部を拡大して示すグラフである。 M=50のときのグレーティングピッチの分布の一例を示すグラフである。 図23の一部を拡大して示すグラフである。 側壁グレーティング構造の一部を例示する平面図である。 溝状グレーティング構造の一部を例示する平面図である。 (a)〜(c)は、実効屈折率分布に基いてグレーティング構造を算出するときのΔzの大小とグレーティングピッチとの関係を説明する説明図である。 従来の単一ピッチ型グレーティング構造の一例を示す上面図である。 従来のチャープ型グレーティング構造の一例を示す上面図である。
以下、本発明を好適な実施の形態に基づいて説明する。
(基板型光導波路デバイスの第1実施形態)
図1に、本発明の基板型光導波路デバイスの第1実施形態を模式的に示す。図1(a)は光導波路のコア10の一部の斜視図、図1(b)はコア10の同じ部分の上面図、図1(c)はコア10の断面図である。なお、図1(c)においては、コア10の側壁及び溝状構造に関して、図1(a)及び(b)の凹部12a,13a及び凸部12b,13bの区別なしに、符号12,13を用いている。
この基板型光導波路デバイスは、光導波路が基板上に形成された基板型光導波路デバイスである。光導波路は、基板上に形成された下部クラッドと、下部クラッド上に形成されたコアと、コアおよび下部クラッドの上に形成された上部クラッドを有する。
また、光学特性の偏波依存性の問題を解消するため、光導波路コア側壁にグレーティング構造12を有するとともにコア上部に溝状グレーティング構造13を有する。コア10の底面14は平坦である。
図2に示すように、側壁グレーティング構造12は、コアの幅woutの周期的変化としてコア10の両側壁に形成された凹部12aと凸部12bとから構成されている。コア幅woutとは、光導波路の長手方向即ち信号光の導波する方向に対して垂直であり、かつ基板に平行である方向におけるコア10の幅を言う。凹部12aではコア幅が狭く、凸部12bではコア幅が広い。
光導波路の長手方向(図1(b)の左右方向)において凹部12aが継続する距離を、凹部の幅と呼ぶ。また、光導波路の長手方向において凸部12bが継続する距離を、凸部の幅と呼ぶ。隣接する凸部と凹部とを一組とし、その凸部の幅と凹部の幅とを加算したものが、その位置におけるグレーティングピッチ(図2のP)である。
コア10の上面11には、溝状グレーティング構造13を有する。
溝状グレーティング構造13においては、側壁グレーティング構造12の凸部12bに相当する位置において、コア10を形成する材料が凸状を成し溝状構造13の幅が狭くなっていて、凸部12bと同様にして凸部13bとなっている。また、側壁グレーティング構造12の凹部12aに相当する位置において、コア10を形成する材料が凹状を成し溝状構造13の幅が広くなっていて、凹部12aと同様に凹部13aとなっている。つまり、溝状構造13の幅winとしては、凸部13bにおいて溝状構造13の幅winが狭く、凹部13aにおいて溝状構造13の幅winが広いという逆転した関係になっている。
本実施形態の基板型光導波路デバイスは、詳しくは後述するが、グレーティングピッチが逆散乱問題を解いた結果として得られる離散化したピッチのいずれかの値をとる。すなわち、本実施形態の基板型光導波路デバイスは、従来公知の等ピッチグレーティング構造、チャープピッチグレーティング構造、サンプルドグレーティング構造のいずれとも異なる。
図1(b)には、グレーティングピッチが、光導波路の長手方向の位置によってP、P+ΔP、P−ΔPのように異なる値をとることが示されている。また、コア幅wout及び溝状構造13の幅winに関しては、図1(b)には左から右に向かってコア幅wout及び溝状構造13の幅winが増大する傾向をもつ部分を示している。後述するように、同じ光導波路が、他の部分(図示略)では左から右に向かってコア幅wout及び溝状構造13の幅winが減少する傾向をもつ部分を含んでいる。
このように、グレーティングピッチPとコア幅wout及び溝状構造13の幅winとが、逆散乱問題を解いた結果として得られる複雑な変化をしているので、所望の機能性を光導波路に付与することができる。
(基板型光導波路デバイスの第2実施形態)
図3に基板型光導波路デバイスの第2実施形態の断面図を示す。この基板型光導波路デバイス20は、光学特性を可変とするための内側コア21,22と、光学特性の偏波依存性の問題を解消するための外側コア24とを備えた二重コア構造を採用している。
この二重コア構造は、基板25上に形成された下部クラッド26上に存在する。内側コア21,22は例えばシリコン(Si)から構成され、外側コア24は例えば窒化ケイ素(SiN)から構成される。
複合コアの上部および両側方は、上部クラッド27で覆われている。上部クラッド27および下部クラッド26は、二重コア構造の平均屈折率よりも低い材料から構成される。上部クラッド27の材料と下部クラッド26の材料は、同じでも異なっても構わない。
内側コア21,22は、中央ギャップ23を介して2つの部分に分けられ、それぞれがリブ21b,22bとスラブ21a,22aとを有する。
外側コア24は内側コア21,22の上に配置されている。外側コア24の屈折率は、内側コア21,22の平均屈折率よりも低い。図3には現されていないが、外側コア24の側壁24b及び上面24aの溝状構造24cには、それぞれ図1のコア10と同様な側壁グレーティング構造及び上部溝状グレーティング構造が形成されている。具体的には、外側コア24の幅woutを周期的に変化させた側壁グレーティング構造と、外側コア24の上面24aに形成された溝状構造24cの幅winを周期的に変化させた上部溝状グレーティング構造を備えている。
内側コア21,22には、不純物元素(ドーパント)のインプラント処理によってP型半導体領域及びN型半導体領域が形成されている。半導体からなる高屈折率コアに導電性を付与する不純物(ドーパント)は、母体媒質に応じて適宜選択して用いることができる。例えば、母体媒質がシリコン等のIV族半導体である場合は、P型極性を与える添加物としてホウ素(B)等のIII族元素が、また、N型極性を与える添加物としてリン(P)や砒素(As)等のV族元素が用いられる。
内側コア21,22のそれぞれには電極が接続され、外部から電圧を印加することによりキャリアプラズマ効果によって屈折率を調整可能としている。
(デバイスの使用例)
図4に、基板型光導波路デバイス101と光伝送路103,105とを接続した形態100の一例を示す。このデバイス101はグレーティング構造を有する反射型デバイスであるため、開始端が光信号の入射端であると同時に出射端となる。図4に示すように、通常はサーキュレータ102を介して入出力光ファイバを接続し、使用する。サーキュレータ102には、入射信号光を伝搬する入射用光ファイバ103と、基板型光導波路デバイス101と光サーキュレータ102とを接続する結合用光ファイバ104と、出射信号光を伝搬する出射用光ファイバ105が接続されている。
また、基板型光導波路デバイス101と結合用光ファイバ104とが光接続される箇所には、通常モードフィールドコンバーターあるいはスポットサイズコンバーターと呼ばれる入出力変換部を追加すると、結合用光ファイバ104とデバイス101との接続損失を低減できるので、好ましい。
(デバイスの設計方法)
所望の光学特性が得られるグレーティング構造を有する基板型光導波路デバイスを得るため、本発明では、該光導波路の光伝搬方向にわたるポテンシャル分布を求め、これをコアの等価屈折率分布に換算し、光導波路の寸法に変換する。ポテンシャル分布の算出は、光導波路の前方及び後方に伝搬する電力波振幅なる変数を導入した波動方程式より、例えば光導波路の等価屈折率の対数の微分から導かれるポテンシャルを有するZakharov-Shabat方程式などに帰着させ、グレーティング光導波路の反射率の強度および位相のスペクトルである複素反射スペクトルからポテンシャル関数を数値的に導く逆散乱問題として解き、所望の反射スペクトルを実現するためのポテンシャルを推測する設計法を用いて設計することが出来る。
これにより、従来公知の等ピッチグレーティング素子やチャープピッチグレーティング素子では実現出来ないような複雑な光学特性を有するブラッググレーティング素子を設計し製作することが可能となるため、例えばDWDM光ファイバ通信システムにおいて40チャネル一括で伝送線路光ファイバの波長分散と分散スロープとを同時に補償する光波長分散補償器といったような所望の光学特性を有するデバイスを実現することが出来る。
(ポテンシャル分布の設計方法)
所望の複素反射スペクトルから逆散乱問題を用いてポテンシャル分布を設計する手法は以下の通りである。
なお、後述する設計手順中の数式においては、グレーティング光導波路の長手方向、すなわち光伝搬方向をz軸として数式を示す。図1(b)の左右方向がz軸方向である。該グレーティング光導波路デバイスのグレーティング領域開始端をz=0、終了端をz最大値座標とし、z最大値がすなわちグレーティング光導波路部の領域長である。
まず、光導波路を伝搬する電磁界を、Sipeの論文(J.E. Sipe, L. Poladian, and C. Martijn de Sterke, “Propagation through nonuniform grating structures,” Journal of the Optical Society of America A, Vol. 11, Issue 4, pp. 1307-1320 (1994))を参照して、次のように定式化する。
電磁界の時間変動をexp(−iωt)と仮定すると、該光導波路の光伝搬方向をz軸として、光導波路中の電界の複素振幅E(z)及び磁界の複素振幅H(z)は、マクスウェル方程式により、次式(1)、(2)となる。
Figure 0005377161
Figure 0005377161
ただし、E(z)は電界の複素振幅、H(z)は磁界の複素振幅、iは虚数単位、ωは角周波数、μは真空の透磁率、εは真空の誘電率、neffは光導波路の実効屈折率を表す。
式(1)、(2)から結合モード方程式を構築するため、ここで、次式(3)、(4)のようにE(z)及びH(z)を進行波(前方に伝搬する電力波)振幅A(z)と後退波(後方に伝搬する電力波)振幅A(z)に変換する。該デバイスは反射スペクトルとして所望の光学特性を実現する反射型デバイスである。反射波は後退波振幅A(z)に対応する。
Figure 0005377161
Figure 0005377161
ただし、navは光導波路の参照屈折率(平均実効屈折率)であり、このnavは、neff(z)の基準となる。これらの変数A(z)及びA(z)は、clightを真空中の光速として、次式(5)、(6)を満たす。
Figure 0005377161
Figure 0005377161
ここで、波数k(z)を次式(7)で表す。ここで、clightは真空中の光速度である。
Figure 0005377161
また、式(8)のq(z)は、結合モード方程式におけるポテンシャル分布である。
Figure 0005377161
式(5)、式(6)のn(z)を式(7)、式(8)のneff(z)と同一視して代入すると、式(5)、式(6)は、式(9)、式(10)に示すZakharov-Shabat方程式に帰着される。
Figure 0005377161
Figure 0005377161
Zakharov-Shabat方程式で示された逆散乱問題を解くことは、後述するゲルファント−レヴィタン−マルチェンコ方程式を解くことであり、その手順は例えば、Frangosの論文(P.V. Frangos and D.L. Jaggard, “A numerical solution to the Zakharov-Shabat inverse scattering problem,” IEEE Transactions on Antennas and Propagation, Vol. 39, Issue. 1, pp. 74-79 (1991))に開示されている。
また、Xiaoの論文(G. Xiao and K. Yashiro, “An Efficient Algorithm for Solving Zakharov-Shabat Inverse Scattering Problem,” IEEE Transaction on Antennas and Propagation, Vol. 50, Issue 6, pp. 807-811 (2002))には、Zakharov-Shabat方程式の効率的な解法が開示されている。
本願発明のグレーティング構造を有する基板型光導波路デバイスの光学特性は、光導波路入出力端における複素反射スペクトルr(k)として、次式(11)で定義される。
Figure 0005377161
次式(12)に示すように、r(k)のフーリエ変換はこの系のインパルス応答R(z)である。
Figure 0005377161
複素反射スペクトルr(k)として波長に対する所望の群遅延特性と反射率の分布を与えることにより、これを実現するためのポテンシャル分布関数q(z)を数値的に解くことができる。
本発明では、グレーティングの振幅が変化して位相は振幅に従属して変化するという振幅変調型のグレーティングを用いた設計を行なう。そのため、設計の入力データとして用いる複素反射スペクトルにおいては、グレーティングの振幅の包絡線とグレーティングの振動の位相との分離性を高めるため、周波数の原点(すなわち0Hz)から所定の群遅延時間特性が求められる周波数領域をすべて含める。
まず、式(3)及び式(4)の解を次式(13)、(14)のように表す。
Figure 0005377161
Figure 0005377161
(z)及びA(z)はそれぞれ+z方向及び−z方向に伝搬する。式(13)及び式(14)中の積分項は反射の影響を表している。式(13)及び式(14)から、結合モード方程式が次の式(15)及び式(16)で表されるゲルファント−レヴィタン−マルチェンコ方程式に変換される。
Figure 0005377161
Figure 0005377161
ここで、正規化時間yはy=clight t (tは時間)であり、z>yである。R(z)は、波数を変数とした複素反射スペクトルr(k)の逆フーリエ変換であり、インパルス応答に相当する。R(z)を与えて式(15)及び式(16)を解くことにより、ポテンシャル分布q(z)が求められ、式(17)で与えられる。
Figure 0005377161
得られたポテンシャル分布q(z)を次式(18)に適用することで、グレーティング光導波路の実効屈折率分布neff(z)が得られる。
Figure 0005377161
本発明では、式(8)及び式(17)のポテンシャル分布q(z)を実数とする。その結果、複素反射スペクトルr(k)からインパルス応答(時間応答)R(z)へと変換するための演算は実数型となり、振幅が変化して位相が振幅に従属して変化する。
このようにして得られた実効屈折率分布neff(z)は、高屈折率値と低屈折率値とが短いピッチ(周期)で交互に現れるものであり、グレーティング光導波路構造を示すものとなっている。このグレーティング構造は、光導波路コアの側壁の凹部および凸部におけるコア幅woutに対応する、隣接する高屈折率値と低屈折率値との屈折率差が一定ではなく漸次変化する不均一なものとなっており、また屈折率の変化するピッチはある限定された離散値をとるものとなっており、従来公知の等ピッチグレーティング光導波路、チャープピッチグレーティング光導波路、サンプルドグレーティング光導波路のいずれとも一致しない新規な構造を有する。
本発明のグレーティング光導波路は、ブラッググレーティングの振幅を変化させてグレーティングパターンを形成するものであり、グレーティングの振幅の包絡線の勾配の符号が反転する振幅変調型である。サンプルドグレーティング光導波路では、符号が反転する二点間で振幅が連続的にゼロになる光導波路領域が介在するという特徴がある。これに対し、本願の振幅変調型グレーティング光導波路では、そのような構造は現れない。符号の反転は孤立した単一の座標点で生じるという階段的な急峻性あるいは不連続性を示す。つまり、あるz座標で包絡線の勾配の符号が反転するという意味である。包絡線の勾配の符号が反転する孤立した一座標点でのみ振幅がゼロとなるため、実質的には振幅が一定の区間ゼロのままとなるような領域は出現しない。これにより、サンプルドブラッググレーティングよりも導波路長を短縮することが可能となる。
包絡線の勾配の符号が反転する孤立した座標点は導波路上で複数個存在する。おのおのの座標点では、付随的に位相の不連続変化を伴う。位相が不連続変化すると局所周期(ピッチ)が変化するため、ピッチが当該座標点で対象とするスペクトルにおける中心波長を光導波路の実効屈折率の平均値navで除算した値の半分とは異なる値をとる。包絡線の勾配の符号が反転する座標点を特定する精度は、横軸にとっている導波路の座標zの離散化刻みによる。その刻みをΔzとすると、座標点を特定する精度は±Δzの範囲にある。このように、本発明の振幅変調型グレーティング光導波路には、グレーティングの振幅の包絡線の勾配の符号が反転し、その結果、ピッチが離散的に変化する座標点が存在する。
離散化したグレーティングピッチは、Δzに依存して決まるΔPにより、P±NΔPとして表すことが可能であり、Nは逆散乱問題を解く際の離散化パラメータに係る整数である。
ピッチの離散的変化は、チャープトブラッググレーティングには見られない特徴である。チャープトブラッググレーティングでは、ピッチは光導波方向に沿って連続的に変化する。チャープトブラッググレーティングでは、ブラッググレーティングの振幅も同時に変化するが、振幅の変化はアポダイズのような副次的特性の実現に利用されるにとどまり、フィルタの反射スペクトルのチャンネル数・位相特性などの主要な特性はブラッググレーティングの周波数を光の導波方向に沿って変化させることによって達成される。ここに開示した手順では、チャープ型グレーティングを構成することはできない。チャープ型グレーティングを構成するには、複素反射スペクトルr(k)から時間応答(インパルス応答)R(z)への変換を複素数型へと切り替える必要がある。その結果、式(17)により得られるポテンシャル分布q(z)は複素数となる。q(z)が複素数であると、q(z)から実効屈折率分布neff(z)を求めるにあたり、neff(z)は実数であるため、q(z)の実部のみをとることが必要である。よって、本発明の振幅変調型グレーティング構造と従来公知のチャープ型グレーティング構造とは設計方法を異にし、互いに異なる範疇に分類される。振幅変調型に相対することから、チャープ型グレーティング構造は、いわば、周波数変調型に分類される。
本発明では、他の実施例すべてを含めて、当該の複素反射スペクトルからインパルス応答への変換に用いる演算は実数型とし、振幅変調型ブラッググレーティングを対象とする。振幅変調型ブラッググレーティングを選択するための条件をまとめると、以下の二点となる。
(I) 指定するスペクトル特性の周波数範囲を原点(周波数ゼロ)から該当するスペクトルチャンネルの存在する領域まですべてを含める。
(II)上述の複素反射スペクトルからインパルス応答への変換において実数型を選択する。
実際の計算手順では、まず、グレーティング光導波路デバイスの全長を決めることにより、zの最大値を特定する。これは、例えば、光分散補償器の場合であれば、補償すべき群遅延分散値とチャネル帯域とからグレーティング光導波路で発生すべき群遅延時間の最大値が決まるので、これに真空中の光速度clightを乗じ、さらに実効屈折率の平均値navで除することで、最低限必要となる素子長を決めることが出来る。素子の全長は、これに一定の余長を追加したものとする。
z軸上で定義される各種分布関数を数値解析で取り扱うには、データを有限長にする(離散化する)ために、z軸上に等間隔に配置された点を選び、z座標を設定する。一例として、設計中心波長λを基準として素子全長を19,000λ、z軸上の間隔Δzをλ/40に設定すると、zからz760000までの760,000点について光分散補償器のポテンシャル分布q(z)を計算することとなる。
なお、ここで、設計中心波長λとは、逆散乱問題の入力データとして所望の光学特性を用意した際の波長帯域の中心付近の任意の波長であり、真空中における波長である。よって、ここで19,000λは該光導波路の「参照実効屈折率を考慮した光学距離」に相当するものであり、製造された素子の最低限必要となる素子長は、これを参照実効屈折率で除した値、すなわち19,000λ/navで表される。例えば、設計中心波長λを1,591.255nmとし、参照実効屈折率navを2.348とすると、最低限必要となる素子長は約12.9mmと求められる。
実際の計算においては、その段階に応じてzの単位を適宜換算することができる。例えば、q(z)を求めるに際してはzの単位を正規化波長としたので、後述する図11、図12の横軸は正規化波長であり、1が1λである。これに対し、neff(z)や具体的な光導波路寸法を計算する際には、その単位をmとし、真空中における波長で表された設計中心波長λや該光導波路の設計された構造に由来する参照実効屈折率navを用いて換算した。これにより、図13及び図14は横軸の単位がmmであり、また図15乃至図24は横軸の単位がnmである。
なお、一般に光学距離(光路長)は長さ(幾何距離)と媒質の屈折率との積として定義されるが、シングルモード光導波路を伝搬する信号光が感受する屈折率である実効屈折率はコア材料の屈折率、クラッド材料の屈折率と導波路の構造により決定されるものである。本明細書において、「参照実効屈折率を考慮した光学距離」とは、設計の基準となる光導波路の断面構造における実効屈折率を参照実効屈折率としたとき、長さ(幾何距離)と参照実効屈折率との積として定義される。
一例として、以下では、図3に示した第2実施形態の光導波路デバイスについて、光導波路の断面構造を設計した。
この事例では、第1及び第2のリブ21、22をシリコン(Si)、中央ギャップ23をシリカガラス(SiO)、外側コア24を窒化ケイ素(Si)、基板25をシリコン(Si)、下部クラッド26をシリカガラス(SiO)、上部クラッド27をシリカガラス(SiO)で構成し、t=250nm、t=50nm、w=280nm、w=160nm、tout=600nm、tin=100nm、下部クラッド26の厚みを2,000nm、上部クラッド27の最大厚みを2,000nmとした場合で算出した。
図5(a)には、TE型偏光(mode1)およびTM型偏光(mode2)に対する実効屈折率のwin依存性を示し、図5(b)にはwinとwoutとの関係を示す。また図6には、光導波路の実効屈折率neffに対するwinとwoutとの対応関係を示す。
これらの対応関係を得るには、溝状構造の幅winとコア幅woutの値を変化させて、それぞれの光導波路の断面構造から固有伝搬モードの電磁界分布をモードマッチング法、有限要素法、もしくはビーム伝搬法など各種方法を採用したモードソルバープログラムにより求め、その実効屈折率neffを算出することで求められる。
図5(b)に示すようにwinとwoutとの関係を与えると、図5(a)に示すように導波路の実効屈折率の偏波依存性を低減できる。TE偏光での実効屈折率を光導波路の実効屈折率とみなして、実効屈折率とwinおよびwoutとの対応を計算しプロットすると、図6が得られる。つまり、この実施形態では、あるneffに対応するwinとwoutとの組が得られ、設計されたデバイスは偏波無依存である。
実効屈折率分布neff(z)と図6とから、各z座標における溝状構造の幅winとコア幅woutを求めることが出来る。図6より、実効屈折率と構造寸法との関係を検討した範囲のおよそ中央を基準にとることによって、参照実効屈折率(平均実効屈折率)navは例えば2.348とする。
なお、本発明における参照実効屈折率は、設計前からコア寸法winとwoutを概算的に求めるために設定されるパラメータであって、任意に設定することが可能である。例えば、この事例では、図5および図6のグラフに基いて参照実効屈折率を2.348とすることにより、winは0.48μmを中心として変動し、woutは1.48μmを中心として変動することが予想される。
以下、参照実効屈折率(平均実効屈折率)navを2.348とし、中心波長λcを1,591.255nm(すなわち中心周波数188.4THz)としてL−Band用に設計して光導波路寸法を算出する。
複素反射スペクトルr(k)として与えた波長に対する所望の光学特性の一例として、反射率の分布を図7及び図8に示すとおりとし、群遅延特性を図9及び図10とした時、計算により求められたポテンシャル分布q(z)を図11及び図12に示す。
式(18)により、逆散乱問題を解いて得られたポテンシャル分布q(z)を実効屈折率分布neff(z)に換算する。これにより、図13及び図14に示した実効屈折率分布neff(z)が得られる。
さらに、実効屈折率分布neff(z)を、一定振幅が続く凸部と一定振幅が続く凹部とが急峻な変化で交互に繰り返される単純化されたグレーティング構造となるよう、積分により平均化し、予め求めた光導波路断面構造、具体的にはコア寸法と実効屈折率との関係を元に、図2に示すコア寸法(コア上部の溝状グレーティング構造の溝の幅winと、光導波路コア側壁のグレーティング構造に係るコア幅wout)に換算すると、具体的な光導波路のグレーティング構造の寸法が求められる。
図27に、実効屈折率分布からコア寸法分布を算出する平均化の概念を示す。z軸上のある区間で実効屈折率分布neff(z)が図27(a)のように与えられたとき、平均化によって図27(b)または図27(c)に示すように矩形化されたコア寸法wの分布が得られる。ここで、コア寸法wとは、溝幅winやコア幅woutを一般化したパラメータである。図27(a)〜(c)において、neffまたはwの平均値を破線で表すとき、破線より上側の部分が凸部、破線より下側の部分が凹部となる。
上述したように、実効屈折率分布neff(z)はz軸上の間隔Δzで離散化されているが、これを補間法により連続化することは可能である。しかし、凸部と凹部の間が連続的に変化すると、形状が微細に過ぎて作製できなくなる。そこで、実効屈折率分布neff(z)を所定の区間ごとに平均化してからコア寸法に換算することで、一定振幅が続く凸部と一定振幅が続く凹部とが急峻な変化で交互に繰り返される単純化されたグレーティング構造が得られる。その場合、隣接する凸部と凹部を含む幅Pがグレーティングピッチに相当することになる。このとき、コア寸法分布がΔzで離散化されているので、Pは常にΔzの整数倍となる。
なお、Δzは計算の過程において正規化波長を単位として「参照実効屈折率を考慮した光学距離」で表される場合もあるが、最終的には光導波路デバイスの実際の寸法を表す長さの単位に換算され、この段階においてPはグレーティングピッチPに等しい。
また、矩形化されたw(z)の分布を保持するデータ形式は特に限定されるものではないが、図27(b)及び図27(c)に示すように、隣接する凸部と凹部との間に共通の座標点を設けても良い。矩形化されたw(z)を表す座標点の数は、離散化されたneff(z)を表す座標点の数と同数のままでもよいし、凸部または凹部において一定振幅が続く範囲では同一のw値を重複して保持する必要がないため、座標点の数を減少させてデータを圧縮した形式としてもよい。
これにより、本発明で得られるグレーティング構造は、コア寸法wが不均一であり、グレーティングピッチPはある限定された離散値をとり、PはΔzの整数倍となる。凸部及び凹部が存在するためには、凸部の幅及び凹部の幅がそれぞれΔz以上必要なので、Pは2Δz以上、すなわちP/Δzの整数値は2以上となる必要がある。
なお、本発明の設計方法により得られるグレーティング構造において、P=2Δzとなる箇所が仮に存在したとしても、極めて低頻度で、フォトリソ工程及びエッチング工程によりそのような幅の狭い凸部または凹部を再現する必要はないと考えられる。
そして、本発明の好ましい態様で得られるグレーティング構造は、グレーティング構造の全体にわたり、各ピッチPが、(P−P)/ΔP=Nを満たすという特徴を有する。ここで、Pは所定のピッチ基準値であり、Mは所定の1より大きい整数値であり、ΔPはP/Mであり、Nは整数である。ここで、Mは、10以上が好ましく、20以上がより好ましい。
なお、Δzが計算の過程において最終的に光導波路デバイスの実際の寸法を表す長さの単位に換算された段階において、MはP/Δzに等しく、ΔzはΔPに等しい。
また、図27(b)と図27(c)との対比からも分かるように、凸部と凹部との間でコア寸法wが急峻に変化する位置は、Δzの大きさによって決まるので、Pから求められるグレーティングピッチの分布も、Δzの大きさに依存することになる。
例えば、この事例の場合、q(z)を求める過程で、「参照実効屈折率を考慮した光学距離」で表したΔzを、λ/10、λ/20、λ/40、λ/50、λ/100の5通りから選んで、すなわち、正規化波長を単位としたΔzの値を1/10、1/20、1/40、1/50、1/100から選んで、グレーティングピッチの分布を算出した。
図15及び図16には、λ/10を選択したM=5に相当するときのグレーティングピッチの分布を示し、図17及び図18には、λ/20を選択したM=10に相当するときのグレーティングピッチの分布を示し、図19及び図20には、λ/40を選択したM=20に相当するときのグレーティングピッチの分布を示し、図21及び図22には、λ/50を選択したM=25に相当するときのグレーティングピッチの分布を示し、図23及び図24には、λ/100を選択したM=50に相当するときのグレーティングピッチの分布を示す。
なお、図15〜図24は、最終的に光導波路デバイスの実際の寸法を表す長さの単位に換算したzの値を横軸に用いて示した。
図15〜図24に示すように、主たるグレーティングピッチPはいずれもP=λc/(nav×2)=339nmとなっており、Pが一番多く、続いてP±ΔPが多く、この3種類が主たるピッチであって、以降P±NΔPのNが大きくなるに従って該当するグレーティングピッチの出現頻度が減少していく傾向を示す。
このような傾向は他の設計事例(本明細書には特に示していない。)でも一般的にみられるが、例えば単チャネル光フィルタの設計事例ではほとんどすべてのグレーティングピッチがPであり、P±ΔPがわずか数個観測され、Nが2以上となるP±NΔPは出現しない、という事例もある。また、P−10ΔPは出現するがP−9ΔP、P−8ΔP、P−7ΔPが出現していないなど、一部ピッチが現れない事例もある。光分散補償器の設計事例でPが全く観測されず、P±ΔPの2種類のピッチがほぼ同数で主たるピッチとなっている事例も観測された。
なお、Pは、λcを反射中心波長とする従来公知の等ピッチ(単一ピッチ)型グレーティング構造におけるピッチPに一致する。
また、例えばq(z)を求める過程においてΔzとしてλ/40を選択した場合、すなわちM=20の場合、ΔP=P/20であり、17nmである。
図19には、P−8ΔP、P−7ΔP、P−6ΔP、P−5ΔP、P−4ΔP、P−3ΔP、P−2ΔP、P−ΔP、P、P+ΔP、P+2ΔP、P+3ΔP、P+4ΔP、P+5ΔP、P+6ΔP、P+7ΔP、P+8ΔP、P+9ΔPに対応するグレーティングピッチ203nm、220nm、237nm、254nm、271nm、288nm、305nm、322nm、339nm、356nm、373nm、390nm、407nm、424nm、441nm、457nm、474nm、491nmの存在が観測されている。P−9ΔP以下及びP+10ΔP以上のグレーティングピッチは存在していない。図20には、図19の中の7.388mm付近の拡大図を示す。この領域では多くのピッチが339nm、一部のピッチが356nmとなっている。
図25及び図26は、このM=20の場合の側壁グレーティング構造と上部溝状グレーティング構造の一例であり、図20に相当する範囲を示す。
このように、ピッチが限られた数(少ない数)の離散値を取ることは、CMOS製造工程における加工精度を維持する上で有効である。CMOS製造工程においては、DICD(Development Inspection Critical Dimension)やFICD(Final Inspection Critical Dimension)など、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて寸法測定を実施するのが一般的な工程管理手法であり、チャープ型グレーティングのように徐々に変化するピッチを有する構造ではピッチ精度を管理することは困難であるが、等ピッチ型あるいは本件発明のように少数の離散値をとる場合には工程管理が容易である。
デバイス製造工程において、シリコンフォトニクス技術により高屈折率材料をコアに用いて光部品を製造することから、従来のFTTH用光スプリッタなどと比較して、比屈折率差が高い光導波路デバイスとなり、すなわち固有伝搬モードの実効屈折率が高く、グレーティングピッチが短いものとなる。短いグレーティングピッチを有するグレーティング構造をフォトリソ工程で正しく解像し、またエッチング工程で精度良く、再現性良く、歩留まり高く微細加工するためには、その加工寸法に見合ったテクノロジーノード(世代)の装置を利用する必要がある。一方で、需要数量や厚膜エッチングの要求などにより、光部品製造では、光源波長248nmの露光装置など旧世代のテクノロジーノードを使用する必要がある場合が少なく無い。通常のバイナリ型フォトマスクに代えて位相シフト型フォトマスクを用いる、あるいは二重露光法を用いることによりフォトリソ解像度を向上させ、最小適用可能ピッチを向上させる技術もあるが、これを用いても一定の限界がある。
本発明の光導波路デバイスは、グレーティングピッチが等ピッチでもチャープ型ピッチでもなく、Δzの整数倍からなる離散値であるという特徴を有する。そして、主たるピッチはP±Δzの範囲内に含まれるので、フォトリソグラフィー工程及びエッチング工程が適用可能な最小ピッチをPminで表すとき、P−Δz≧Pminとなるように、Δzを設定することで、主たるピッチのすべてがPmin以上となり、グレーティング構造の製造が容易になる。ここでは、つまり、P−Δz以上P未満の範囲内に含まれるグレーティングピッチP(すなわち、P−Δz≦P<Pに該当するP)が、Pmin以上となるようにすれば良い。
さらに、本発明の好ましい態様においては、PがΔzの整数倍であり、P、P+ΔP、P−ΔPの3種類のピッチが主たるピッチとなる。そこで、主たるピッチのうちの最小のピッチとなるP−ΔPに注目する。このP−ΔPを出来るだけ大きくすることが、製造を容易にすることにつながる。
ところで、表1に、Intel Xeon CPU 3.06 GHzを用いて光分散補償器のポテンシャル分布q(z)を計算した際の計算時間を示す。λ/Δzで求められる分割数、すなわち2Mが増加するにつれ、計算時間は急激に増加し、例えば分割数が10から100に10倍増加すると、計算時間は66倍にも達する。設計にかかる時間は当然のことながら短い方が好ましいのであって、計算時間の観点からは分割数は少なければ少ないほど良い。
Figure 0005377161
光導波路の設計に際して、ΔPがどのようにして決まるかを考察すると、このΔPは、逆散乱問題を解いてポテンシャル分布q(z)を求める際の、横軸にとっている導波路の座標zの離散化刻みΔzに依存する。設計中心波長λを基準として素子全長を19,000λとしてポテンシャル分布q(z)を求める場合、分割数を10に設定した場合、すなわちM=5の場合は、計算に用いるz位置の離散化刻みΔzはλ/10すなわち0.1λ単位(正規化波長を単位として表したΔzでは0.1単位)である。
等ピッチのブラッググレーティングデバイスにおいてグレーティングピッチが0.5λであるように、本発明においても主たるピッチPは0.5λに相当する。これに対して、離散化ピッチとして0.4λ、0.6λ、0.3λ、0.7λといった値がさらに出現することとなる。つまり、ΔPはこの場合0.1λに相当し、zが最終的に光導波路デバイスの実際の寸法を表す長さの単位に換算された段階において、ΔP=Δzとなる。参照実効屈折率navが2.348であるとした場合、0.5λの実際のグレーティングピッチは0.5×1591.255nm/2.348=339nmとなる。また、ΔPは同様にして、67.8nmとなる。
表2に分割数ごとのΔPの値を示す。ΔPは、分割数10(M=5)、20(M=10)、40(M=20)、50(M=25)、100(M=50)のそれぞれに対して、67.8nm、33.9nm、17.0nm、13.6nm、6.78nmであり、分割数が増すごとに小さな値となっていく。
Figure 0005377161
また、表3〜表7及び表8〜表13に、分割数を10、20、40、50、100と変化させた場合の、ΔP及び光分散補償器の設計事例において出現したグレーティングピッチの値とその頻度割合を示す。表3〜表7は、P±NΔPのNが等しいものを縦に揃えて集計した表であり、表8〜表13はグレーティングピッチが等しいものを縦に揃えて集計した表である。
Figure 0005377161
Figure 0005377161
Figure 0005377161
Figure 0005377161
Figure 0005377161
Figure 0005377161
Figure 0005377161
Figure 0005377161
Figure 0005377161
Figure 0005377161
Figure 0005377161
これらの表から分かるように、主たるピッチPは分割数に関わらず同じ値であるが、P−ΔPは分割数が増すごとに大きな値となっていって、271nm、305nm、322nm、325nm、332nmとなる。フォトリソ工程及びエッチング工程においては、P−ΔPが採用するプロセス技術から考えて十分に大きな値である必要がある。また、フォトリソ工程及びエッチング工程における条件出しや工程管理の観点からは、P−ΔP及びP+ΔPがPに近い値であることが好ましい。
具体的に、光源波長248nmのステッパー露光装置を位相シフトマスクとともに用いた場合、Pの339nmには対応可能であり、またP−ΔPについて332nm、325nm、322nm程度までは条件出し等により対応可能となる見込みがあるが、305nm、271nmとなると全く解像しないか、または歩留まりが急激に低下することが懸念される。この場合、分割数は40以上が好ましいと言える。分割数の下限は採用するプロセスの微細加工能力で決まるが、一般に分割数10ではPとP−ΔPとの間に20%もの開きが生じるため不十分であると考えられ、プロセス能力が大丈夫であっても分割数を20以上としてPとP−ΔPとを近づけることが好ましい。
さらには、分割数は40以上とすることが好ましい。一般に、プロセスの適用可能限界値に対して設計では10〜15%程度のマージンを持たせることをする。そこで本発明でも、フォトリソ工程及びエッチング工程の適用可能最小ピッチがPを100%とした時の85%以下となるよう15%のマージンを設定すると、分割数を40とした場合にP−ΔPがPの95%、P−ΔPに対する90%値がPの85.5%となり、P−ΔPに対しても10%という十分なマージンを持った値となる。
また、分割数の上限について検討すると、計算速度の速いコンピュータを保有しており計算時間が問題にならない場合には、P−ΔPを大きくする目的からは分割数は大きければ大きい程良い。しかし実際には、前述した計算時間を考えると、P−ΔPが十分大きい範囲で小さな分割数とすることが好ましい。また、表3〜表7及び表8〜表13に示したように、分割数を多くするほど、基本ピッチPの割合が減少してP−ΔP及びP+ΔPなど他のピッチの割合が増加すること、また離散化したピッチの値、即ちピッチとして取り得る値の種類そのものが増加することなどから考えても、分割数は小さい方が良い。
(光導波路の製造工程の概略)
ここでは、後述する実施例1に沿って、第2実施形態に示す基板型光導波路デバイスの製造工程の概略を説明する。
第1工程として、側壁グレーティング構造用のフォトマスク、上部溝状グレーティング構造用のフォトマスクを、それぞれ用意する。
第2工程として、BOX層と呼ばれる熱酸化膜等のSiO膜とその上に形成された薄膜シリコン層とを有するSOI(Silicon on Insulator)ウエハを用意する。SOI層のシリコンをフォトリソ工程及びエッチング工程で適切にパターン形成し、シリコンリブ、シリコンスラブの形状を加工する。不純物元素(ドーパント)のインプラント処理によってP型半導体領域及びN型半導体領域を形成する。不純物元素は、母体媒質がシリコン等のIV族半導体である場合は、P型極性を与える添加物としてホウ素(B)等のIII族元素が、また、N型極性を与える添加物としてリン(P)や砒素(As)等のV族元素が用いられる。また、一部にはSOI層のシリコンに微細な溝をパターン形成してSiOを堆積させ、リーク電流を低減するナノギャップ絶縁構造としても良い。BOX層のSiO膜を光導波路の下クラッド層として用いる。SOI層は、Si/SiN二重コア構造の内側コアとして用い、外部から電圧を印加してキャリアプラズマ効果により屈折率変化を生じさせ、光学特性可変機能を実現する。
第3工程として、前記加工したSi層(場合により、ナノギャップ構造を含む)の上に、外側コアを形成するためのSiN膜を、CVD装置等を用いて所望の厚さで堆積させる。
第4工程として、フォトリソグラフィー工程により形成したレジスト層を用いたエッチング工程によって、SiN膜にグレーティング構造を微細加工する。
第5工程として、CVD装置等を用いて適切な厚さでSiOを堆積させ、上部クラッドを形成する。
第6工程として、光導波路を形成後、必要に応じ電気配線や電極パッドを形成する。
以上の第1工程から第6工程により、グレーティング構造を有する基板型光導波路を製作することが可能である。なお、通常、比屈折率差の大きい基板型光導波路デバイスの使用にあたっては、光ファイバとの光学的接続においてモードフィールド径の変換器が必要である。一般的には、上記工程に前後してモードフィールド変換部あるいはスポットサイズ変換部と呼ばれる領域を形成する工程を設け、同一基板上に当該光導波路と光学的に接続するように集積化して形成する。
(実施例1)
図3に示した構造の、シリコン(Si)を内側コア、窒化ケイ素(SiN)を外側コア、シリカガラス(SiO)をクラッドとする、基板型光導波路の光分散補償器を設計し製作した。
図3の構造に従って光導波路の断面構造を設計し、図5(a)に示すようにTE型偏光(mode1)およびTM型偏光(mode2)に対する実効屈折率のwin依存性を、図5(b)に示すようにwinとwoutとの関係を、図6に示すように光導波路の実効屈折率に対するwinとwoutとの対応関係を求めた。
光導波路構造の設計に当たり、採用した各部の材質及び寸法は、以下のとおりである。内側コア21,22をシリコン(Si)、中央ギャップ23をシリカガラス(SiO)、外側コア24を窒化ケイ素(SiN)、基板25をシリコン(Si)、下部クラッド26をシリカガラス(SiO)、上部クラッド27をシリカガラス(SiO)で構成した。また、各部寸法は、t=250nm、t=50nm、w=280nm、w=160nm、tout=600nm、tin=100nm、下部クラッド26の厚みを2000nm、上部クラッド27の最大厚み(スラブ21a,22a上の厚み)を2000nmとした。
続いて、グレーティングパターンの設計を行った。設計中心周波数を188.4THzとした。すなわち、設計中心波長は1591.255nmである。L−Bandで100GHzチャネル間隔、チャネル帯域50GHzで45チャネルにわたってITU−T G.653に規定された分散シフトシングルモード光ファイバ(DSF)100kmの群速度分散及び分散スロープを補償するものとし、補償対象光ファイバ線路の光学特性として、群速度分散 −295ps/nm、分散スロープ(Relative Dispersion Slope、RDS) 0.018/nmを想定した。チャネル帯域内での振幅強度反射率を93.5%とした。これら設定値に基づいて用意した複素反射スペクトルr(λ)の反射率スペクトルを図7及び図8に、また群遅延スペクトルを図9及び図10に示す。これを、素子全長19,000λ、Δzをλ/40に設定して、逆散乱問題を解きポテンシャル分布q(z)を求めた。結果を図11及び図12に示す。
続いて、図6で光導波路寸法を設計した実効屈折率範囲の中央付近から選択して、参照実効屈折率(平均実効屈折率)navを2.348とし、中心波長188.4THzすなわち中心波長1,591.255nmとして、ポテンシャル分布q(z)を実効屈折率分布neff(z)に変換した。
得られた実効屈折率分布neff(z)と図6のwoutとから光導波路のコア幅を決定し、この寸法で側壁グレーティング構造加工用のフォトマスクを製作した。
また、得られた実効屈折率分布neff(z)と図6のwinとから溝状構造の寸法を決定し、この寸法で上部溝状グレーティング構造加工用のフォトマスクを製作した。
これら2組のフォトマスクを用い、光導波路を製作した。ステッパー露光装置には、波長248nmのものを用いた。
(比較例1)
Δzをλ/10に設定したほかは実施例1と同様に、基板型光導波路の光分散補償器を設計し、製作を試みた。しかし、P−ΔPは271nmとなってしまい、位相シフトマスクを用いても光源波長248nmのステッパー露光装置ではピッチがP−ΔPであるグレーティング構造が解像しなかった。
10…コア、11…上面、12…側壁グレーティング構造、12a…凹部、12b…凸部、13…溝状グレーティング構造(溝状構造)、13a…凹部、13b…凸部、14…底面、20…基板型光導波路デバイス、21,22…内側コア、21a,22a…スラブ、21b,22b…リブ、23…中央ギャップ、24…外側コア、24a…上面、24b…側壁、24c…溝状構造、25…基板(支持基板)、26…下部クラッド、27…上部クラッド。

Claims (5)

  1. 光導波路を構成する材料を、フォトリソグラフィー工程により形成したレジスト層を用いたエッチング工程によって加工してなるグレーティング構造を有する基板型光導波路デバイスの設計方法であって、
    該設計方法は、該基板型光導波路デバイスで得ようとする所望の光学特性を入力し逆散乱問題を解くことによって、実効屈折率分布を得て、該実効屈折率分布を積分により平均化し、予め求めたコア寸法と実効屈折率との関係を元にして換算することによって、前記グレーティング構造における光導波路の長手方向であるz軸に沿った光導波路のコア幅を、z軸上に間隔Δzで等間隔に配置された座標ごとに算出するものであり、
    該設計方法は、真空中の波長として設定された設計中心波長に対して、所定のピッチ基準値Pを設計中心波長/(参照実効屈折率×2)とし、前記フォトリソグラフィー工程及びエッチング工程が適用可能な最小ピッチをP min で表すとき、P−Δz≧P min となるように、前記Δzを設定することにより、前記座標ごとのコア幅によって表現される前記グレーティング構造のグレーティングピッチP複数の離散値をとり、かつ、前記グレーティング構造の全体にわたり、P/Δzが1より大きい整数に等しくなるように設計することを特徴とする基板型光導波路デバイスの設計方法。
  2. Mを所定の1より大きい整数値とし、ΔzをP/Mとすることを特徴とする請求項1に記載の基板型光導波路デバイスの設計方法。
  3. Mを10以上とすることを特徴とする請求項2に記載の基板型光導波路デバイスの設計方法。
  4. Mを20以上とすることを特徴とする請求項3に記載の基板型光導波路デバイスの設計方法。
  5. Zakharov-Shabat方程式を用いて前記逆散乱問題を解くことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の基板型光導波路デバイスの設計方法。
JP2009194510A 2009-08-25 2009-08-25 グレーティング構造を有する基板型光導波路デバイスの設計方法 Expired - Fee Related JP5377161B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009194510A JP5377161B2 (ja) 2009-08-25 2009-08-25 グレーティング構造を有する基板型光導波路デバイスの設計方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009194510A JP5377161B2 (ja) 2009-08-25 2009-08-25 グレーティング構造を有する基板型光導波路デバイスの設計方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2011048016A JP2011048016A (ja) 2011-03-10
JP5377161B2 true JP5377161B2 (ja) 2013-12-25

Family

ID=43834430

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009194510A Expired - Fee Related JP5377161B2 (ja) 2009-08-25 2009-08-25 グレーティング構造を有する基板型光導波路デバイスの設計方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5377161B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6005713B2 (ja) 2014-12-15 2016-10-12 株式会社フジクラ 光導波路素子、受光装置、光通信装置、光変調器、光共振器、及び光導波路素子の製造方法
JP6019150B2 (ja) * 2015-02-24 2016-11-02 沖電気工業株式会社 光波長フィルタ

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH04157303A (ja) * 1990-10-19 1992-05-29 Omron Corp 導波型光変位センサおよび同センサのための光導波路の作製方法
JPH09325227A (ja) * 1996-06-06 1997-12-16 Fujikura Ltd 光導波路グレーティング
JP2004126172A (ja) * 2002-10-02 2004-04-22 Nippon Telegr & Teleph Corp <Ntt> グレーティング素子、マッハツェンダー干渉計及び光クロスコネクト装置
JP2009151247A (ja) * 2007-12-21 2009-07-09 Fujikura Ltd 光導波路型波長分散補償デバイスとその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2011048016A (ja) 2011-03-10

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5588794B2 (ja) グレーティング構造を有する基板型光導波路素子、波長分散補償素子および基板型光導波路素子の製造方法
JP4448199B2 (ja) 基板型光導波路素子、波長分散補償素子、光フィルタならびに光共振器、およびそれらの設計方法
JP4500886B2 (ja) 光導波路素子、波長分散補償素子およびその設計方法、光フィルタおよびその設計方法、ならびに光共振器およびその設計方法
JP4514832B2 (ja) 基板型光導波路素子、波長分散補償素子、光フィルタ、光共振器、およびそれらの設計方法
JP4603090B2 (ja) 基板型光導波路素子、波長分散補償素子およびその設計方法、光フィルタおよびその設計方法、ならびに光共振器およびその設計方法
US8227178B2 (en) Manufacturing method of planar optical waveguide device with grating structure
US8404133B2 (en) Manufacturing method of planar optical waveguide device with grating structure
JP4820918B2 (ja) グレーティング構造を有する基板型光導波路デバイスの製造方法
JP4820917B2 (ja) グレーティング構造を有する基板型光導波路デバイスの製造方法
Song et al. Enhanced silicon ring resonators using low-loss bends
Shen et al. Ultra‐Low‐Crosstalk Silicon Arrayed‐Waveguide Grating (De) multiplexer with 1.6‐nm Channel Spacing
JP5377161B2 (ja) グレーティング構造を有する基板型光導波路デバイスの設計方法
JP5337830B2 (ja) 光分散補償素子及びその設計方法
JP2017191253A (ja) 光集積回路及びその製造方法
JP2011070176A (ja) グレーティング構造を有する基板型光導波路デバイス
Song et al. Echelle diffraction grating demultiplexers with a single diffraction passband
Zhigang et al. Fabrication and Evaluation of Bragg Gratings on Optimally Designed Silicon2on2Insulator Rib Waveguides Using Electron2Beam Lithography3
JP2012022180A (ja) 光分散補償素子及びその設計方法
Zhou et al. Silicon-wires and compact multi-mode interference splitters with an uneven splitting-ratio

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20120607

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20130228

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20130702

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130805

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130827

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130924

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 5377161

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees