JP5337830B2 - 光分散補償素子及びその設計方法 - Google Patents
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Description
分散補償光ファイバモジュールは、通信波長帯域の全体を補償しようとするものであって、その群遅延スペクトルは連続的であり、いずれの波長を波長チャネルとして利用するかについての制限はない。また、各波長チャネルにおいて利用可能なチャネル帯域幅についての制限もない。ただし、波長分散補償用光ファイバでは、各種光学特性のバランスを勘案してその設計を決めるために、必ずしも補償対象とする伝送路用光ファイバの分散スロープを完全に補償できるような光学特性とすることはできず、通常は波長チャネルによって分散補償残差が生じることとなる。近年、ROADM(Reconfigurable Optical Add/Drop Multiplexer)装置などの普及により、分散補償残差の累積が問題視されるようになっている。実際に分散補償光ファイバモジュールで補償可能な波長範囲は、分散補償残差の累積に対するトレランスによって制約を受ける。
これらの光分散補償器は、分散スロープ補償まで含めて所望の光学特性とすることは困難であり、インライン型として用いた場合には、チャネルによっては大きな分散補償残差が生じる。光学特性を可変する機能を有するものが多く、単チャネル用としても多用される。
ところで、一般に光分散補償器は、分散補償量に応じた光路長を要するデバイスであることから、大きな分散量を補償しようとする場合、また広い帯域について補償しようとする場合に、長い素子長が必要となる。例えば、同一のチャネル帯域を補償する場合に、200ps/nmを補償する光分散補償器は100ps/nmを補償する光分散補償器の2倍の光路長を必要とする。また、同じ100ps/nmの波長分散を補償しようとする時、1.6nmのチャネル帯域を有する光分散補償器は0.8nmのチャネル帯域を有する光分散補償器の2倍の光路長を必要とする。2倍の光路長を必要とする場合、一般には素子内の光分散補償部の寸法が2倍必要になる。
よって、ある決められた寸法の光分散補償器でチャネル帯域を2倍、4倍に拡張しようとすると、補償可能な分散量は1/2、1/4に減少してしまうことになる。同一の分散補償量を保持したままチャネル帯域を2倍、4倍に拡張しようとすると、光分散補償素子の寸法も略2倍、略4倍に増大してしまう。しかし、一方では、上述したように小型な光分散補償器が要望されている。
このような、小型であり、広いチャネル帯域で分散を補償するという相反する要求を同時に解決し、インライン型として用いて複数の波長チャネルの波長分散を一括して補償することが可能であり、分散補償残差が小さく、安価な光波長分散補償用部品が求められていた。
本発明の光分散補償素子においては、前記複数の分散補償波長チャネル帯域は、前記光ファイバ伝送路の群遅延の波長分散が零となる零分散波長より長波長側であって、かつ前記光ファイバ伝送路の群遅延の波長分散が正となる波長領域に位置し、前記複数の分散補償波長チャネル帯域は、前記チャネル帯域幅が、長波長側の波長チャネルにおいて狭くなっており、波長が短くなるに従って広くなっていく構成とすることも可能である。
該光分散補償素子は、グレーティング構造を有するコアが基板上に形成された基板型光導波路であることも可能である。
本発明の光分散補償素子の設計方法においては、前記複数の分散補償波長チャネル帯域を、前記光ファイバ伝送路の群遅延の波長分散が零となる零分散波長より長波長側であって、かつ前記光ファイバ伝送路の群遅延の波長分散が正となる波長領域において、設定し、かつ、前記チャネル帯域幅を、長波長側の波長チャネルにおいて狭く設定し、波長が短くなるに従って広く設定していくことも可能である。
分散補償量を大きく設定する必要のある長波長側のチャネルではチャネル帯域を必要最小限とし、他のチャネルよりも狭い帯域に設定し、分散補償量の設定が小さくても良い短波長側のチャネルでは、代わりにチャネル帯域を広く設定して、中間のチャネルにおいては、長波長側から短波長側に向かって各チャネルの設定分散補償量が小さくなるのに応じて、チャネル帯域を徐々に広く設定していったことから、各チャネルの設定分散補償量に対応した、可能な限り広いチャネル帯域幅で光ファイバ伝送路の波長分散を補償するものであるような特性を有し、必要とするチャネル帯域幅の異なる複数の変調速度または変調方式に適切に対応して、光ファイバ伝送路にインライン型としても設置可能で、複数の波長チャネルを一括して補償することができ、各波長チャネルの分散補償残差をより小さくすることができる。
所望の光学特性を設計インプットとして与え、逆散乱問題解法を用いてグレーティング構造を設計することにより、離散化した複数のグレーティングピッチと不均一かつ非チャープ型のグレーティング振幅を有する光導波路部品として、光分散補償素子を実現することができる。
前記複数の分散補償波長チャネル帯域は、光ファイバ伝送路の零分散波長より長波長側であって、かつ光ファイバ伝送路の群遅延の波長分散が正となる波長領域に位置する場合、チャネル帯域幅が、長波長側の波長チャネルにおいて狭くなっており、波長が短くなるに従って広くなっていくように設定すると、そのように配置しなかった場合と比べて、光分散補償素子をより小さく構成することができる。
基板型光導波路部品として構成した場合には、より小型な光部品として光分散補償素子を実現可能であり、データセンターや通信キャリア局舎の装置収容効率を向上させ、空調電力を削減し省エネに貢献することができる。
図1に、本発明の光分散補償素子において、複数の波長チャネルのそれぞれにおいて、分散補償波長チャネル帯域のチャネル帯域幅が異なり、ps/nmを単位として表した分散補償量と、nmを単位として表したチャネル帯域幅との積が、略同一である場合の挿入損失スペクトル及び群遅延スペクトルの一例を示す。図1に示す群遅延スペクトルにおいては、それぞれの分散補償波長チャネル帯域の所定のチャネル帯域幅A乃至Fの範囲で分散補償を意図する群遅延時間を有する複数の分散補償波長チャネル帯域が、高密度波長多重通信システムの光信号の伝送を意図する波長である複数の波長チャネルに応じて分割されている。また、複数の分散補償波長チャネル帯域は、チャネル帯域幅がそれぞれ異なっている。
光分散補償素子の各分散補償波長チャネル帯域は、光ファイバ伝送路により伝送される信号が当該波長チャネルにおいて光ファイバ伝送路の波長分散(群遅延量)及び分散スロープから受けた影響を補償するために必要な群遅延時間を有する。
各波長チャネルにおいて、分散補償を意図する波長領域の両側に、分散補償を意図しないが一定の小さい挿入損失を有する波長領域を付与することが好ましい。例えば、図1では、分散補償を意図する波長領域において挿入損失を一定とするのみならず、分散補償を意図する波長領域の両側に、分散補償を意図する波長領域におけるのと概略同一の挿入損失を有する波長領域を有する。つまり、挿入損失を小さく設定した波長領域は、分散補償を意図して群遅延を設定した波長領域A乃至Fに比べて、帯域幅が広くされている。これにより、分散補償を意図する波長領域A乃至F内に挿入損失が増大した部分が発生することを抑制できる。この、分散補償を意図しないが挿入損失を小さく設定した波長領域では、群遅延量が波長にかかわらず一定であっても良い。
なお、図1は、各波長チャネルの群遅延量(単位はps)は各分散補償波長チャネル帯域内での群遅延量の傾斜を説明するものであり、ある波長チャネルと別の波長チャネルとの間の群遅延量の関係を示すものではない。
例えば、隣接する波長チャネルであり波長分散補償量はほぼ同程度である場合であっても、ある波長チャネルにおいて分散補償を意図する周波数帯域幅(例えば50GHz)が隣接波長チャネルにおいて分散補償を意図する周波数帯域幅(例えば25GHz)の2倍であるとすれば、それらの周波数帯域に対応する波長領域の帯域幅も約2倍となるため、必要となる最大の群遅延差も約2倍となる。
このような条件下では、チャネル帯域幅の広い分散補償波長チャネル帯域では、チャネル帯域幅の狭い分散補償波長チャネル帯域よりも、必要な最大の群遅延差が大きく、さらに、分散スロープに依存して、長波長側ほど必要な最大の群遅延差が大きい。
そこで、絶対値の大きい波長分散補償量を設定する必要のある長波長側の波長チャネルを、例えば、狭いチャネル帯域幅Aを有する分散補償波長チャネル帯域とし、絶対値の小さい波長分散補償量を設定すれば良い短波長側の波長チャネルを、例えば、広いチャネル帯域幅Fを有する分散補償波長チャネル帯域とし、中間の波長チャネルB〜Eにおいては、長波長側から短波長側に向かって各波長チャネルの波長分散補償量が小さくなるのに応じて、チャネル帯域幅を徐々に広く設定して、それぞれ配置することが好ましい。このように配置することによって、最大の群遅延差を略同一とすることが可能となり、光分散補償素子をより小さく構成することができる。
例えば、複数の波長チャネルのそれぞれについて、RDSに応じて変化する分散補償量と反比例するように、分散補償を意図するチャネル帯域幅を設定すると、最大の群遅延差を略同一にすることができる。さらに、伝送に用いるチャネル帯域幅は、分散補償を意図するチャネル帯域幅の範囲内で設定可能である。これにより、上述したように、最も広いチャネル帯域幅を、最も狭いチャネル帯域幅の2〜3倍またはそれ以上とすることもできる。
分散補償量と分散補償を意図するチャネル帯域幅を設定する際、最も短波長側にあるチャネルから最大群遅延差の基準を求めると、最も広いチャネル帯域の帯域幅を最初に決定することができる。その逆に、最も長波長側にあるチャネルから最大群遅延差の基準を求めると、最も狭いチャネル帯域の帯域幅を最初に決定することができる。
また、チャネル数とチャネル間隔を設定してから最大群遅延差及び各チャネル帯域の帯域幅を決定してもよく、その逆に、最大群遅延差及び各チャネル帯域の帯域幅を決定してから、それに収まるようにチャネル数とチャネル間隔を設定しても良い。
図2(a)〜(c)に、本発明の基板型光導波路部品の第1実施形態を模式的に示す。図2(a)は光導波路のコア1の一部の斜視図、図2(b)はコア1の同じ部分の上面図、図2(c)は基板型光導波路部品の断面図である。また、基板型光導波路部品の斜視図を図6に示す。なお、図2(c)においては、コア1の側壁に関して、図2(a)及び図2(b)の凹部2a及び凸部2bの区別なしに、符号2を用いている。
この基板型光導波路部品は、光導波路が基板5上に形成された基板型光導波路部品である。光導波路は、基板5上に形成された下部クラッド6と、下部クラッド6上に形成されたコア1と、コア1および下部クラッド6の上に形成された上部クラッド7を有する。
また、側壁グレーティング構造2は、コアの幅wの周期的変化としてコア1の両側壁に形成された凹部2aと凸部2bとから構成されている。コア幅wとは、光導波路の長手方向即ち信号光の導波する方向に対して垂直であり、かつ基板に平行である方向におけるコア1の幅を言う。凹部2aではコア幅が狭く、凸部2bではコア幅が広い。
コア1の上面3及び底面4は平坦である。
図2(b)には、グレーティングピッチが、光導波路の長手方向の位置によってP、P+ΔP、P−ΔPのように異なる値をとることが示されている。また、コア幅wに関しては、図2(b)には左から右に向かってコア幅wが増大する傾向をもつ部分を示している。後述するように、同じ光導波路が、他の部分(図示略)では左から右に向かってコア幅wが減少する傾向をもつ部分を含んでいる。
このように、グレーティングピッチとコア幅とが、逆散乱問題を解いた結果として得られる複雑な変化をしているので、所望の機能性を光導波路に付与することができる。
図3に、基板型光導波路部品101と光伝送路103,105とを接続した形態100の一例を示す。この基板型光導波路部品101はグレーティング構造を有する反射型デバイスであるため、開始端が光信号の入射端であると同時に出射端となる。図3に示すように、通常はサーキュレータ102を介して入出力光ファイバを接続し、使用する。サーキュレータ102には、入射信号光を伝搬する入射用光ファイバ103と、基板型光導波路部品101と光サーキュレータ102とを接続する結合用光ファイバ104と、出射信号光を伝搬する出射用光ファイバ105が接続されている。
また、基板型光導波路部品101と結合用光ファイバ104とが光接続される箇所には、通常モードフィールド変換部(モードフィールドコンバーター)あるいはスポットサイズ変換部(スポットサイズコンバーター)と呼ばれる入出力変換部を追加すると、結合用光ファイバ104と基板型光導波路部品101との接続損失を低減できるので、好ましい。
所望の光学特性が得られるグレーティング構造を有する基板型光導波路部品を得るため、本発明では、該光導波路の光伝搬方向にわたるポテンシャル分布を求め、これを光導波路の光伝搬方向にわたる等価屈折率分布に換算し、光導波路の寸法、より具体的には、コアの断面構造寸法及び長手方向寸法に変換することが好ましい。ポテンシャル分布の算出は、光導波路の前方及び後方に伝搬する電力波振幅なる変数を導入した波動方程式より、例えば光導波路の等価屈折率の対数の微分から導かれるポテンシャルを有するZakharov-Shabat方程式などに帰着させ、グレーティング光導波路の反射率の強度および位相のスペクトルである複素反射スペクトルからポテンシャル関数を数値的に導く逆散乱問題として解き、所望の反射スペクトルを実現するためのポテンシャルを推測する設計法を用いて設計することが出来る。
これにより、従来公知の等ピッチグレーティング素子やチャープピッチグレーティング素子では実現出来ないような複雑な光学特性を有するブラッググレーティング素子を設計し製作することが可能となるため、例えばDWDM光ファイバ通信システムにおいて40チャネル一括で伝送線路光ファイバの波長分散と分散スロープとを同時に補償する光波長分散補償器といったような所望の光学特性を有するデバイスを実現することが出来る。
所望の複素反射スペクトルから逆散乱問題を用いてポテンシャル分布を設計する手法は以下の通りである。
なお、後述する設計手順中の数式においては、グレーティング光導波路の長手方向、すなわち光伝搬方向をz軸として数式を示す。図2(b)の左右方向がz軸方向である。該グレーティング光導波路デバイスのグレーティング領域開始端をz=0、終了端をz最大値座標とし、z最大値がすなわちグレーティング光導波路部の領域長である。
また、Xiaoの論文(G. Xiao and K. Yashiro, “An Efficient Algorithm for Solving Zakharov-Shabat Inverse Scattering Problem,” IEEE Transaction on Antennas and Propagation, Vol. 50, Issue 6, pp. 807-811 (2002))には、Zakharov-Shabat方程式の効率的な解法が開示されている。
本設計では、グレーティングの振幅が変化して位相は振幅に従属して変化するという振幅変調型のグレーティングを用いた設計を行なう。そのため、設計の入力データとして用いる複素反射スペクトルにおいては、グレーティングの振幅の包絡線とグレーティングの振動の位相との分離性を高めるため、周波数の原点(すなわち0Hz)から所定の群遅延時間特性が求められる周波数領域をすべて含める。
離散化したグレーティングピッチは、Δzに依存して決まるΔPにより、P±NΔPとして表すことが可能であり、Nは逆散乱問題を解く際の離散化パラメータに係る整数である。
(I) 指定するスペクトル特性の周波数範囲を原点(周波数ゼロ)から該当するスペクトルチャネルの存在する領域まですべてを含める。
(II)上述の複素反射スペクトルからインパルス応答への変換において実数型を選択する。
続いて、z座標の離散化の刻みを決める。z軸上で定義される各種分布関数を数値解析で取り扱うには、データを有限長にする(離散化する)ために、z軸上に等間隔に配置された点を選び、z座標を設定する。一例として、設計中心波長λを基準として素子全長を13,200λ、z軸上の離散化刻みΔzをλ/40に設定すると、z0からz528000までの528,000点について光分散補償器のポテンシャル分布q(z)を計算することとなる。
実効屈折率分布neff(z)と図7のグラフとから、各z座標におけるコア幅wを求めることが出来る。図7より、実効屈折率と光導波路の構造寸法との関係を検討した範囲のおよそ中央を基準にとることによって、参照屈折率(平均実効屈折率)navは例えば1.95とする。また、図8には、コアの厚みtを1.0μmとした場合に求められた実効屈折率neffとコア幅wとの対応を示す。
次に、第1実施形態の基板型光導波路の製造工程について説明する。
まず、図4に示すように、コア1の材料となる高屈折率材料層1aを形成する(高屈折率材料層形成工程)。ここでは、支持基板5の上に下部クラッド6を形成した後、下部クラッド6の上に高屈折率材料層1aを形成している。支持基板5は例えばシリコンウエハであり、下部クラッド6は、CVD装置等を用いて適切な厚さで堆積させたSiO2膜である。また、高屈折率材料層1aは、光導波路コアを形成するためのSi3N4膜を、CVD装置等を用いて所望の厚さで堆積させたものである。
現像工程により得られたフォトレジストパターンを用いて高屈折率材料層1aをエッチングするエッチング工程を行い、続いて残留したフォトレジストを除去する工程を行うことにより、図5に示すように、側壁に凸部2b及び凹部2aからなるグレーティング構造2を有するコア1を形成することができる。
さらに、図6に示すように、CVD装置等を用いて適切な厚さで上部クラッド7(例えばSiO2)を堆積させる。コア1上に堆積された上部クラッド7の厚さは、下部クラッド6の上に堆積する上部クラッド7の厚さと異なることがある。必要に応じて、基板5からの高さが揃うように化学機械研磨(CMP)等により平坦化工程を行うこともできる。
図9に基板型光導波路部品の第2実施形態の断面図を示す。この実施形態では、光導波路コア側壁にグレーティング構造12を有するとともにコア上部11に溝状グレーティング構造13を有することで、偏波無依存型のデバイスとすることができる。
側壁グレーティング構造12は、コアの幅woutの周期的変化としてコア10の両側壁に形成された凹部12aと凸部12bとから構成されている。凹部12aではコア幅が狭く、凸部12bではコア幅が広い。
コア上部11の溝状グレーティング構造13においては、側壁グレーティング構造12の凸部12bに相当する位置において、コア10を形成する材料が凸状を成し溝状構造13の幅が狭くなっていて、凸部13bとなっている。また、側壁グレーティング構造12の凹部12aに相当する位置において、コア10を形成する材料が凹状を成し溝状構造13の幅が広くなっていて、凹部13aとなっている。つまり、溝状構造13の幅winとしては、凸部13bにおいて溝状構造13の幅winが狭く、凹部13aにおいて溝状構造13の幅winが広いという逆転した関係になっている。
この事例では、コア10をSi3N4膜、クラッド16,17をSiO2膜とし、図11に示す断面においてコアの厚みtoutを1.4μm、コア上部の溝深さtinを0.1μmとしたとき、図10、図11、図12に示すように、実効屈折率neffに対して適切なコア幅woutとコア上部の溝幅winとを求めることにより、偏波無依存型のデバイスを実現することができる。
図13に基板型光導波路部品の第3実施形態の断面図を示す。この基板型光導波路部品20は、光学特性を可変とするための内側コア21,22と、光学特性の偏波依存性の問題を解消するための外側コア24とを備えた二重コア構造を採用している。
この二重コア構造は、基板25上に形成された下部クラッド26上に存在する。内側コア21,22は例えばシリコン(Si)から構成され、外側コア24は例えば窒化ケイ素(Si3N4)から構成される。中央ギャップ23は、高屈折率材料とする必要はなく、シリカ(SiO2)、窒酸化シリコン(SiOxNy)あるいは窒化シリコン(SixNy)等から構成しても良い。組成比x:yは、所望の屈折率が得られるように制御することができる。
複合コアの上部および両側方は、上部クラッド27で覆われている。上部クラッド27および下部クラッド26は、二重コア構造の平均屈折率よりも低い材料から構成され、例えばシリカ(SiO2)から構成される。上部クラッド27の材料と下部クラッド26の材料は、同じでも異なっても構わない。
外側コア24は内側コア21,22の上に配置されている。外側コア24の屈折率は、内側コア21,22の平均屈折率よりも低い。図13には現されていないが、外側コア24の側壁24b及び上面24aの溝状構造24cには、それぞれ図9のコア10と同様な側壁グレーティング構造及び上部溝状グレーティング構造が形成されている。具体的には、外側コア24の幅woutを周期的に変化させた側壁グレーティング構造と、外側コア24の上面24aに形成された溝状構造24cの幅winを周期的に変化させた上部溝状グレーティング構造を備えている。
内側コア21,22は一方がN型シリコン、他方がP型シリコンからなり、金属配線を介して外部の制御回路(図示せず)と接続し、外部から電圧を印加することにより光学特性を可変としている。
分散シフト光ファイバ(DSF)100kmからなる光ファイバ伝送路のL−bandの波長分散を補償する波長分散補償素子を設計した。
設計中心周波数を188.4THz(すなわち、設計中心波長は1591.255nm)とし、該設計中心周波数・設計中心波長における波長分散補償量を−295ps/nm、分散スロープRDSを0.024/nmとし、分散補償を意図するチャネル帯域(分散補償波長チャネル帯域)及びその両側の分散補償を意図しないが一定の反射率を有する領域における反射率を0.9(反射信号の挿入損失0.5dBに相当。)に設定した。
186.2THz(1610.056nm)の第1チャネルから190.6THz(1572.888nm)の第45チャネルまですべてのチャネルについてチャネルグリッドを100GHzとした。
一方、最も長波長側にある第1チャネルにおいては、設定すべき波長分散補償量は−428ps/nmとなり、80GHzのチャネル帯域は0.692nmに相当する。このことから、チャネル帯域を第45チャネルと同一の80GHzにした場合に分散補償に必要となる最大群遅延差は、296psということになる。よって、第1チャネルにおいても第45チャネルと同じ109psを最大群遅延差とした場合には、第1チャネルの帯域は第45チャネルの帯域に対して約37%となる30GHzしか割り当てることができない。しかしながら、最も長波長側にある第1チャネルにおいても30GHzのチャネル帯域を割り当てることができれば、例えば10Gbpsの信号の伝送には十分な広さである。このようにして、各チャネルについて、第45チャネルの最大群遅延差である109psを基準とし、当該チャネルにおける所望の分散補償量の大きさ、すなわち、ps/nmを単位として表した分散補償量の設定値の絶対値と、nmを単位として表したチャネル帯域幅の設定値との積が、109psとなるように、各チャネルのチャネル帯域を決める。例えば、上述の第1チャネルの場合、nmを単位として表したチャネル帯域幅の設定値は、109psを428ps/nmで除することにより約0.255nmと求められ、約30GHz(より詳しくは29.5GHz)に相当する。
なお、本実施例では、図17及び図18に示す反射率スペクトルにおいて、反射率を0.9とする領域(分散補償を意図するチャネル帯域及びその両側の分散補償を意図しないが一定の反射率を有する領域の合計)の帯域幅が一定となるようにしているので、波長が短くなる(周波数が大きくなる)に従って分散補償を意図するチャネル帯域が広くなっていく様子は、図19及び図20に示す群遅延スペクトルから理解することができる。また、図19及び図20によれば、各チャネルの最大群遅延差が略同一であることも理解することができる。
図21及び図22のポテンシャル分布が達成している光学特性を計算した結果を、図23、図24、図25及び図26の反射率スペクトルと、図27、図28、図29及び図30の群遅延スペクトルに示す。なお、図24、図25、図26、図28、図29及び図30においては、各波長チャネルのうちで分散補償を意図する波長領域である分散補償波長チャネル帯域内を太実線で示しており、設計インプットを良く再現した設計結果が得られていることが分かる。
本実施例は、13200λの素子長で設計したので、navが1.95である実施形態であれば11mm、navが2.348である実施形態であれば9mmでこの波長分散補償素子が実現できる。
以上の結果から、DSF100kmからなる光ファイバ伝送路について、L−bandにおいて45チャネルの多数のチャネルの波長分散及び分散スロープを一括して補償することが可能であり、サーキュレータとともに用いることでインラインでの分散補償に用いることができ、30GHzから80GHzまでの異なるチャネル帯域を有する小型の波長分散補償素子を設計することができた。45チャネルのうち、一部のチャネルは広帯域であり40Gbpsなどの高速な信号を伝送可能であり、残りのチャネルも10Gbpsの信号を十分伝送可能である。
分散シフト光ファイバ(DSF)200kmからなる光ファイバ伝送路のL−bandの波長分散を補償する波長分散補償素子を設計した。
実施例2では、実施例1を若干変更して、設計中心周波数188.4THz(すなわち、設計中心波長は1591.255nm)における波長分散補償量を実施例1の2倍の、−590ps/nmとした。
なお、本実施例では、図31及び図32に示す反射率スペクトルにおいて、反射率を0.9とする領域(分散補償を意図するチャネル帯域及びその両側の分散補償を意図しないが一定の反射率を有する領域の合計)の帯域幅が一定となるようにしているので、波長が短くなる(周波数が大きくなる)に従って分散補償を意図するチャネル帯域が広くなっていく様子は、図33及び図34に示す群遅延スペクトルから理解することができる。また、図33及び図34によれば、各チャネルの最大群遅延差が略同一であることも理解することができる。
図35及び図36のポテンシャル分布が達成している光学特性を計算した結果を、図37、図38、図39及び図40の反射率スペクトルと、図41、図42、図43及び図44の群遅延スペクトルに示す。なお、図38、図39、図40、図42、図43及び図44において、太実線が分散補償を意図するチャネル帯域内を示しており、設計インプットを良く再現した設計結果が得られていることが分かる。
本実施例は、26400λの素子長で設計したので、navが1.95である実施形態であれば22mm、navが2.348である実施形態であれば18mmでこの波長分散補償素子が実現できる。
以上の結果から、DSF200kmからなる光ファイバ伝送路について、L−bandにおいて45チャネルの多数のチャネルの波長分散及び分散スロープを一括して補償することが可能であり、サーキュレータとともに用いることでインラインでの分散補償に用いることができ、30GHzから80GHzまでの異なるチャネル帯域を有する小型の波長分散補償素子を設計することができた。45チャネルのうち、一部のチャネルは広帯域であり40Gbpsなどの高速な信号を伝送可能であり、残りのチャネルも10Gbpsの信号を十分伝送可能である。
チャネル帯域幅をすべてのチャネルで一定として光分散補償素子を設計した比較例1として、分散シフト光ファイバ(DSF)100kmからなる光ファイバ伝送路のL−bandの波長分散を補償する波長分散補償素子を設計した。
設計中心周波数188.4THz(すなわち、設計中心波長は1591.255nm)における波長分散補償量を−295ps/nm、分散スロープRDSを0.024/nmとし、分散補償を意図するチャネル帯域(分散補償波長チャネル帯域)及びその両側の分散補償を意図しないが一定の反射率を有する領域における反射率を0.9(反射信号の挿入損失0.5dBに相当。)に設定した。
186.2THz(1610.056nm)の第1チャネルから190.6THz(1572.888nm)の第45チャネルまですべてのチャネルについてチャネルグリッドを100GHz、分散補償を意図するチャネル帯域を80GHz、分散補償を意図しないが反射率を規定する領域を10GHz(5GHzずつ両側)、反射率を規定しない境界領域を10GHzとした。
これらの諸光学特性を設計インプットとして、図45及び図46に示す反射率スペクトルと、図47及び図48に示す群遅延スペクトルを設計し、これを複素反射スペクトルr(k)として与えた。
図49及び図50のポテンシャル分布が達成している光学特性を計算した結果を、図51、図52、図53及び図54の反射率スペクトルと、図55、図56、図57及び図58の群遅延スペクトルに示す。なお、図52、図53、図54、図56、図57及び図58においては、各波長チャネルのうちで分散補償を意図する波長領域である分散補償波長チャネル帯域内を太実線で示しており、設計インプットを良く再現した設計結果が得られていることが分かる。
本比較例では、光ファイバ伝送路の長さ、設計中心周波数における波長分散補償量、分散スロープRDS及びチャネル数が実施例1と同じ場合に、すべてのチャネル帯域幅を一定にした条件で波長分散補償素子を実現するため、33600λの素子長で設計した。navが1.95である実施形態であれば28mm、navが2.348である実施形態でも23mmもの素子長が必要になる。
以上の結果から、DSF100kmからなる光ファイバ伝送路について、L−bandにおいて45チャネルの多数のチャネルの波長分散及び分散スロープを一括して補償するにあたり、本比較例では、実施例1の2.5倍もの素子長が必要であることがわかった。
Claims (5)
- 高密度波長多重通信システムの光ファイバ伝送路の波長分散及び分散スロープを補償する光分散補償素子であって、
光分散補償素子の群遅延スペクトルは、該システムにおいて光信号の伝送を意図する波長である複数の波長チャネルのそれぞれにおいて所定のチャネル帯域幅の範囲で分散補償を意図する群遅延時間を有する複数の分散補償波長チャネル帯域に分割され、
前記複数の分散補償波長チャネル帯域は、チャネル帯域幅がそれぞれ異なり、かつ、前記複数の分散補償波長チャネル帯域は、ps/nmを単位として表した分散補償量と、nmを単位として表したチャネル帯域幅との積が、略同一であることを特徴とする光分散補償素子。 - 前記複数の分散補償波長チャネル帯域は、前記光ファイバ伝送路の群遅延の波長分散が零となる零分散波長より長波長側であって、かつ前記光ファイバ伝送路の群遅延の波長分散が正となる波長領域に位置し、
前記複数の分散補償波長チャネル帯域は、前記チャネル帯域幅が、長波長側の波長チャネルにおいて狭くなっており、波長が短くなるに従って広くなっていくことを特徴とする請求項1に記載の光分散補償素子。 - 該光分散補償素子は、グレーティング構造を有するコアが基板上に形成された基板型光導波路であることを特徴とする請求項1または2に記載の光分散補償素子。
- 高密度波長多重通信システムの光ファイバ伝送路の波長分散及び分散スロープを補償する光分散補償素子の設計方法であって、
該光分散補償素子は、グレーティング構造を有するコアを備えた光導波路からなり、前記グレーティング構造は、前記コアの断面寸法が前記光導波路の導波方向に沿って変化することにより構成され、
該設計方法は、
コアの断面寸法を変化させた際の光導波路の断面構造と実効屈折率との関係を求める光導波路断面構造設計工程と、
設計入力パラメータとして波長分散、分散スロープ及び反射率を指定して所定の複素反射率スペクトルを算出した後、逆散乱問題解法によって前記複素反射率スペクトルを実現するための前記光導波路の導波方向に沿った実効屈折率分布を求めるグレーティングパターン設計工程と、
前記光導波路断面構造設計工程で求めた前記断面構造と実効屈折率との関係に基づいて、前記グレーティングパターン設計工程で求めた前記実効屈折率分布を、前記断面構造の前記光導波路の導波方向に沿った分布に変換することにより、該断面構造の分布からなるグレーティング構造を求めるグレーティング構造設計工程と、
を有し、
前記設計入力パラメータとして入力する波長分散、分散スロープ及び反射率を、該システムにおいて光信号の伝送を意図する波長である複数の波長チャネルのそれぞれにおいて所定のチャネル帯域幅の範囲で分散補償を意図する群遅延時間を有する複数の分散補償波長チャネル帯域に分割し、
前記複数の分散補償波長チャネル帯域は、チャネル帯域幅がそれぞれ異なり、かつ、前記複数の分散補償波長チャネル帯域を、ps/nmを単位として表した分散補償量の設定値と、nmを単位として表したチャネル帯域幅の設定値との積が、略同一となるように設定することを特徴とする光分散補償素子の設計方法。 - 前記複数の分散補償波長チャネル帯域を、前記光ファイバ伝送路の群遅延の波長分散が零となる零分散波長より長波長側であって、かつ前記光ファイバ伝送路の群遅延の波長分散が正となる波長領域において、設定し、かつ、
前記チャネル帯域幅を、長波長側の波長チャネルにおいて狭く設定し、波長が短くなるに従って広く設定していくことを特徴とする請求項4に記載の光分散補償素子の設計方法。
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