JP6007206B2 - 深色処理布の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、深色処理布の製造方法に関する。更に詳しくは、染色布が深色化樹脂の被覆によって深色化された深色処理布の製造方法に関する。
旧来より、染色された布の色彩を維持しつつ、深みある色感へと加工する要求がある。通常の染色では、染料濃度を増すに従い、得られる染色布の彩度及び濃度は増す。しかしながら、染料濃度が所定濃度に達すると、それ以上に染料濃度を上げても、染色布の彩度及び濃度が上がらなくなり、染色効果としては飽和する。また、有彩色ではその染色効果として飽和した染料濃度から更に、染料の濃度を増すと染色布の色は次第にくすみを帯びるようになる。その為、染色のみによって深みある色感を得るには限界があることが知られている。
この問題に対して、従来、色彩を維持しながら深みある色感を得る方法として深色化という処理方法が知られている。深色化処理には様々な方法が含まれるが、そのなかには、光学的に低屈折率を示す樹脂を、繊維表面に付着させて表面反射を抑制する方法が知られている。このような深色化処理に関する技術としては、下記特許文献1−3に開示された技術が知られている。尚、獣毛繊維をオゾン処理する技術に関しては、下記特許文献4−5に開示された技術が知られている。
特開平11−269771号公報 特開2006−200098号公報 特開2004−360137号公報 特開2001−164460号公報 特開2003−293258号公報
上記特許文献1には、所定の深色化樹脂を利用した深色化処理方法であって、羊毛繊維に利用できる方法が開示されている。上記特許文献2には、深色化樹脂を利用する際に、深色化剤を配合した処理液のpH制御によって最適化された方法であって、羊毛繊維に利用できる方法が開示されている。しかしながら、これら特許文献1及び2では、処理を施す布の前処理等については何ら言及されていない。
また、上記特許文献3には、カチオン系重合体樹脂を用いて前処理した後、染色を行い、その後、深色化処理を行うことで、当該前処理を行わない場合に比べて深色特性が向上されるという方法が開示されている。しかしながら、上記特許文献3の方法は、繊維に対する前処理としてカチオン系重合体樹脂を被覆した上で、更に、深色化樹脂に被覆するものである。このような方法では、複数層の樹脂被覆を要するため、獣毛繊維を利用した布では、獣毛繊維が本来有する有意な特性を大幅に低下させてしまうおそれがある。
更に、上記特許文献4には、獣毛繊維に対してオゾンの超微細気泡を含む処理液を吹き付けて、獣毛繊維の表皮組織の化学的改質を行うことによって、抗ピリング性(毛玉化され難くい特性)を向上させる方法が開示されている。また、上記特許文献5には、獣毛繊維の防縮性及び抗ピリング性を向上させる目的でオゾン処理を行うための処理装置が開示されている。しかしながら、特許文献4及び特許文献5には、抗ピリング性にオゾン処理が寄与されることが示されているものの、深色化における効果については何ら検討がなされていない。
本発明は、上記状況に鑑みてなされたものであり、オゾン処理を施したうえで染色を行い、その後、深色化処理した布であって、従来に比べて優れた深色性が得られる深色処理布の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は以下の通りである。
請求項1の深色処理布の製造方法は、獣毛繊維を含む布を、水溶性の酸化剤が溶解された酸化剤水溶液に接触させる予備酸化工程と、
予備酸化された布を、オゾンがバブリングされている処理液に接触させるオゾン処理工程と、
オゾン処理された布を、還元剤を溶解した還元剤溶液に浸漬する還元処理工程と、
還元処理された布を染色して染色布とする染色工程と、
前記染色布を構成する前記獣毛繊維の表面を深色化樹脂で被覆する深色化工程と、を備えることを要旨とする。
請求項2の深色処理布の製造方法は、請求項1に記載の深色処理布の製造方法において、前記酸化剤水溶液の酸化剤の濃度が、1〜150g/Lであることを要旨とする。
請求項3の深色処理布の製造方法は、請求項2に記載の深色処理布の製造方法において、前記酸化剤が、過硫酸水素カリウムであることを要旨とする。
請求項4の深色処理布の製造方法は、請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の深色処理布の製造方法において、前記染色工程における前記染色が、反応性染色又は酸性媒染染色であることを要旨とする。
請求項5の深色処理布の製造方法は、請求項1乃至4のうちのいずれかに記載の深色処理布の製造方法において、前記染色工程における前記染色の色が、黒色、赤色又は紫色であることを要旨とする。
請求項6の深色処理布の製造方法は、請求項1乃至5のうちのいずれかに記載の深色処理布の製造方法において、前記布は、編織布であり、
前記編織布に含まれる獣毛繊維の質量割合が、前記編織布全体100質量%に対して50質量%以上であることを要旨とする。
請求項7の深色処理布の製造方法は、請求項1乃至6のうちのいずれかに記載の深色処理布の製造方法において、前記深色化樹脂は、被覆前の染色布表面の反射率に対して、被覆後の染色布表面の反射率を小さくする樹脂であることを要旨とする。
本深色処理布は、オゾンがバブリングされている処理液に対して布を接触後、染色した染色布を深色処理した深色処理布である。このような深色処理布では、従来品に比べて優れた深色性が得られる。即ち、特に小さな明度L*値を得ることができる。
上記深色処理布において、布が編織布であり、編織布に含まれる獣毛繊維の質量割合が50質量%以上である場合には、深色処理による深色化効果をより十分に得ることができる。
本発明の深色処理布の製造方法は、獣毛繊維を含む布を、オゾンがバブリングされている処理液に接触させるオゾン処理工程と、
オゾン処理された布を染色して染色布とする染色工程と、
前記染色布を構成する前記獣毛繊維の表面を深色化樹脂で被覆する深色化工程と、を備える。
本方法では、上記各工程を所定の順序で備えることによって、従来品に比べて優れた深色性を有した深色処理布を製造できる。即ち、特に小さな明度L*値の深色処理布を製造できる。
本方法において、オゾン処理工程前に、布を酸化剤水溶液に接触させる予備酸化工程を備える場合には、予備酸化工程を備えない場合に比べて、更に、優れた深色性を得ることができる。
本方法において、布が編織布であり、編織布に含まれる獣毛繊維の質量割合が50質量%以上である場合には、深色処理による深色化効果をより十分に得ることができる。
本発明の衣服によれば、従来品に比べて優れた深色性を有した衣服とすることができる。即ち、特に従来品に比べて小さな明度L*値を有した生地を用いた衣服を得ることができる。
実験例5に係る電子顕微鏡による拡大画像である。 実験例1に係る電子顕微鏡による拡大画像である。 実験例30に係る電子顕微鏡による拡大画像である。 実験例31に係る電子顕微鏡による拡大画像である。 実験例6に係る電子顕微鏡による拡大画像である。 実験例7に係る電子顕微鏡による拡大画像である。 実験例8に係る電子顕微鏡による拡大画像である。 実験例9に係る電子顕微鏡による拡大画像である。 実験例10に係る電子顕微鏡による拡大画像である。 実験例11に係る電子顕微鏡による拡大画像である。
[1]深色処理布
本深色処理布は、染色布を構成する獣毛繊維の表面が深色化樹脂によって被覆された深色処理布であって、
獣毛繊維は、縦皺状の表面凹凸を有し、スケールを構成する松笠状に配置された鱗片を有さないことを特徴とする。
本発明で用いる布の形態等は限定されず、どのような布を利用してもよい。例えば、編織布であってもよく、不織布であってもよく、更には、その他の形態の布であってもよい。これらのなかでは、編織布が好ましい。編織布としては、織布(織形成された布)、編布(編形成された布)、及びその他の編織布が挙げられる。これらのなかでは、織布が好ましい。更に、用いる布の目付等も特に限定されないが、80〜500g/m程度の布が扱い易く好適であり、更には100〜400g/m、特に150〜300g/mの布であることが好ましい。
また、本発明で用いる布には、前述のように少なくとも獣毛繊維が含まれる。後述するオゾン処理は、獣毛繊維に対して作用するため、獣毛繊維が含まれた布では、オゾン処理が施されていない布に比べて優れた深色化作用が得られる。
獣毛繊維としては、ウール、カシミア、モヘア、キャメル、アルパカ、リャマ、ビクーナ、グアナコ、アンゴラ等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
布に含まれる獣毛繊維は、どのような形態で布に含まれてもよいが、通常、布を構成する糸として含まれる。この糸は、獣毛繊維のみから形成された獣毛繊維糸であってもよく、獣毛繊維と他繊維との両方が含まれた獣毛繊維混合糸であってもよい。
混合糸である場合、その糸の形態は特に限定されず、例えば、混紡糸及び交撚糸等が含まれる。更に、他繊維を芯糸として利用し、芯糸の周囲を獣毛繊維で覆った被覆糸や飾り糸(意匠撚糸)等が含まれる。これらの各種の糸は1種のみを利用してもよく2種以上を併用してもよい。
布を構成する糸に含まれる獣毛繊維は、その割合が多いもの程、本発明では好適である。具体的には、糸に含まれる獣毛繊維の質量割合が、糸全体100質量%に対して30質量%以上(100質量%以下)であることが好ましい。この範囲では、オゾン処理を施した布を利用することによる深色化効果をより確実に享受できる。この獣毛繊維の質量割合は、50質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましい。
また、布全体に対しては、布全体100質量%に対して、30質量%以上(100質量%以下)の獣毛繊維が含まれることが好ましく、50質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましい。
布を構成する糸は、上述の獣毛繊維を含む糸のみから構成されてもよいし、獣毛繊維を含む糸と獣毛繊維を含まない糸とが併用されてもよい。即ち、編織布としては、獣毛繊維を含む糸と獣毛繊維を含まない糸とが併用された交織布、及び、獣毛繊維を含む糸と獣毛繊維を含まない糸とが併用された交編布が含まれる。
また、獣毛繊維を含まない繊維(前述の芯糸として利用される他繊維を含む)としては、獣毛繊維以外の生物に由来の繊維、合成繊維、半合成繊維、再生繊維等が挙げられる。
上記のうち、他の生物に由来する繊維としては、シルク等の蚕から採取される繊維、綿、麻、フラックス等の植物に由来する繊維が挙げられる。また、合成繊維としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ウレタン繊維等が挙げられる。更に、半合成繊維としては、アセテート繊維が挙げられる。また、再生繊維としてはレーヨンが挙げられる。これらの獣毛繊維を含まない繊維は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
染色においては、各種の染料を用いることができ、その種類は特に限定されない。染料としては、酸性染料、媒染染料、反応染料、塩基性染料、金属錯塩染料、直接染料、バット染料、硫化染料、分散染料等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらのなかでは、獣毛繊維に対する染着性及び耐久性の観点から、酸性染料、媒染染料、反応染料、塩基性染料、金属錯塩染料等が好ましい。更に、これらのなかでも、酸性染料と媒染染料との両方の特性を有した酸性媒染染料及び反応性染料がより好ましい。
上記酸性染料は、−SO 基及び−COO基等の酸性基を有する染料である。また、媒染染料は、Cr、Al、Fe及びSn等の金属元素を含んだ媒染剤を用いて、染料と不溶性錯塩を形成する染料である。更に、酸性媒染染料は、これらの両方の特性を併せ持つ染料をいう。本発明では、酸性媒染染料は、Cr媒染を利用した酸性媒染染料を用いることが好ましい。
一方、上記反応染料は、獣毛繊維との間で共有結合を形成して染着する染料である。即ち、反応染料は、通常、獣毛繊維が有する−NH基、−OH基及び−SH基等の基に対して結合し得る反応性基を構造内に有する。
また、オゾン処理については、後に詳述するが、オゾンがバブリングされている処理液に染色前の布を接触させる処理である。この処理を行うことで、その理由は定かではないものの、オゾン処理を施さない場合に比べて深色化が著しく向上される。このオゾン処理は、スケール処理方法として利用されているが、同様のスケール処理方法として知られている塩素化処理を施した場合に比べても、優れた深色性を得ることができる。
本深色処理布に用いられる深色化樹脂は、被覆前の染色布表面の反射率に対して、被覆後の染色布表面の反射率を小さくする樹脂である。具体的には、黒色に染色された染色布に対する深色化樹脂は、可視光の全波長域(例えば、波長400−700nm)の光に対する反射率を小さくできる樹脂であることが好ましい。また、その他の有彩色(赤、青、緑、黄等)に染色された染色布に対する深色化樹脂は、可視光域の光に対する最大吸収波長域での反射率を小さくできる樹脂であることが好ましいが、上記の黒色の場合と同様に、可視光の全波長域の光に対する反射率を小さくできる樹脂を用いることもできる。
このような深色化樹脂としては、通常、屈折率が1.50以下の樹脂が利用される。具体的には、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられる。
上記のうち、フッ素系樹脂は、フルオロアルキル基を有する樹脂である。即ち、アルキル基中の水素原子がフッ素原子により1つ又は2つ以上置換された構造を有する基を有する樹脂である。フルオロアルキル基としては、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基等のフルオロメチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、テトラフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基等のフルオロエチル基等が挙げられる。これらのフルオロアルキル基は、1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
また、フッ素系樹脂の骨格構造をなす構成単位は特に限定されないが、例えば、アクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸等の不飽和有機酸、エチレン、ブテン、2−メチル−1−プロペン、3−メチル−1−ペンテン、ブタジエン及びイソプレン等の脂肪族ビニル化合物、スチレン及びジビニルベンゼン等の芳香族ビニル化合物等に由来する構成単位が挙げられる。これらの構成単位は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
上記のうち、シリコーン系樹脂は、シロキサン結合の主骨格を持つポリシロキサン化合物である。具体的には、ポリジメチルシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、及びこれらの各種変性物が挙げられる。このうち、変性物としては、アミノ変性物、エポキシ変性物、ポリエーテル変性物、アルキル変性物、フルオロアルキル変性物、カルボキシル変性物等が挙げられる。これらのポリシロキサン化合物は、1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
上記のうち、アクリル系樹脂は、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらのエステル誘導体に由来する構成単位を有する樹脂である。このアクリル系樹脂は、その他にも、エチレン、ブテン、2−メチル−1−プロペン、3−メチル−1−ペンテン、ブタジエン及びイソプレン等の脂肪族ビニル化合物、スチレン及びジビニルベンゼン等の芳香族ビニル化合物等に由来する構成単位を含むことができる。これらの構成単位は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
ウレタン系樹脂は、ウレタン結合の主骨格を持つポリウレタン化合物である。例えば、ポリオールとポリイソシアネートとの反応物として得ることができる。このうちポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、エポキシ変性ポリオール、アクリル変性ポリオール、シリコーン変性ポリオール等が挙げられる。
[2]深色処理布の製造方法
本発明の深色処理布の製造方法は、予備酸化工程と、オゾン処理工程と、還元処理工程と、染色工程と、深色化工程と、を備えることを特徴とする
上記「オゾン処理工程」は、獣毛繊維を含む布を、オゾンがバブリングされている処理液に接触させる工程である。
この工程で用いる処理液には、オゾンがバブリングされていればよく、その液媒の種類は限定されない。例えば、水、アルコール系液媒、その他の有機液媒等を用いることができるが、なかでも水が安全性の面から好ましい。
この工程では、通常、オゾン発生器を用いて発生させたオゾンを処理液中に引き込んで、処理液をオゾンでバブリングした状態を形成する。そして、オゾンがバブリングされている処理液と布(染色前の布)とを接触させる。処理液と布との接触方法は特に限定されず、例えば、布に対して処理液を吹き付けてもよく、布を処理液に浸漬してもよく、更には、その他の方法で接触させてもよい。これらのなかでは、布を処理液に浸漬する方法が好ましい。即ち、布をオゾンがバブリングされている処理液に浸漬して、布と処理液とを接触させる工程であることが好ましい。
更に、処理液に浸漬した布は、そのまま静置してもよいが、処理液を流動させる、又は、布を処理液内で動かす、ことにより、布と処理液とをより積極的に接触させることが好ましく、更には、布の一面側から他面側へと処理液が液圧によって通過できる程度に、布又は処理液のうちの少なくとも一方を動かすことが好ましい。
また、オゾンのバブリングに際しては、処理液内での気泡径をより小さくするために、破泡を施すことができる。即ち、例えば、オゾンを引き込んだ処理液を、ラインミキサへ通過させた後、ラインミキサを通過した処理液と布とを接触させることができる。このようにすることで、ラインミキサ内で破泡されてより小さな気泡径となったオゾンと布とを接触させることができる。更に、処理液内に複数の系統からオゾンを引き込み、引き込んだオゾンの噴出流を相対させることで、オゾンの気泡同士を処理液内で衝突せしめ、オゾンの気泡を破泡させることができる。このようにした場合にも、上記と同様に破泡されたより小さな気泡径となったオゾンと布とを接触させることができる。
このオゾン処理工程では、布とオゾン処理液との接触条件については特に限定されないが、温度0〜90℃の処理液を用いることが好ましい。この処理液の温度は、更に0〜60℃がより好ましく、10〜40℃が特に好ましい。加えて、処理液のpHは12以下が好ましく、6以下が好ましく、1〜2がより好ましい。
また、処理液に対するオゾンガスの導入量は特に限定されないが、処理液1Lに対して、0.005〜1L/分とすることが好ましい。この導入量は、更に0.01〜0.1L/分がより好ましく、0.01〜0.05L/分が特に好ましい。
更に、オゾン処理液と布との接触時間は特に限定されないが、0.5〜120分とすることが好ましい。この接触時間は、更に1〜30分がより好ましく、1〜5分が特に好ましい。
このオゾン処理工程に先立って、オゾン処理工程前に、布に含まれる獣毛繊維を予備的に酸化する予備酸化工程を備えることができる。即ち、本方法では、予備酸化工程と、オゾン処理工程と、をこの順に備えることができる。
予備酸化工程を備えることで、その後のオゾン処理工程において、オゾンが的確に獣毛繊維に対して作用するように促がすことができる。即ち、布には、獣毛繊維以外に酸化剤を消費する不純物が付着されている。そのため、予備酸化工程を行うことで、これらの不純物を予め酸化させておくことができ、オゾン処理工程において、オゾンを不純物が消費してしまうことを抑制できる。従って、予備酸化工程を設けることで、オゾン処理工程における処理結果を安定させることができる。
加えて、予備酸化工程を行うことで、その後のオゾン処理工程において、獣毛繊維表面のスケールによって形成される凹凸を効果的に小さくできる。このスケールとは、獣毛繊維の表面に松笠状に配置されている複数の鱗片(図7参照)である。スケールは、獣毛繊維の毛根側で他のスケールと重なって配置される一方、毛先側ではその端縁が獣毛繊維の表面に開放されている(露出されている)。そのため、未処理の獣毛繊維表面は、スケールの毛先側の端縁に起因して規則的な凹凸を有している。即ち、この凹凸が、前述のスケールによって形成される凹凸である。本発明では、オゾン処理工程のみでは、このスケールによる凹凸を十分に小さくすることが困難であるが、予備酸化を行うことでこのスケールによって形成されている凹凸を効果的に小さくできる。そして、スケールによる凹凸を小さくすることによって、得られる明度(L*)の値を小さく抑制できる。即ち、より優れた深色性を得ることができる。
本発明では、後述の実施例(実験例1と7、実験例9と10、実験例12と14、実験例15と16、実験例17と18、実験例20と21、実験例23と24、実験例26と27、の各対比、)において示すように、例えば、スケール処理方法として、従来、知られた塩素化処理を用いて酸化処理を行い、酸化処理された布を染色し、その後、深色化処理を行って深色処理布を得ることもできる。しかしながら、このようにして得られた深色処理布に比べても、オゾン処理を行った布を利用して得た深色処理布の方が深色性に優れる。同じ酸化処理であっても、塩素化処理に比べて、オゾン処理を経た方が深色性が向上される理由は定かではない。
しかしながら、後述の実施例において示すように、オゾン処理を行った場合には(実験例5(図1)、実験例1(図2))、塩素化処理を行った場合(実験例7(図6))に比べて、スケールによる凹凸がより小さくなる現象が認められる。
更に、予備酸化工程を行ったうえでオゾン処理を行った場合(実験例1(図2)、実験例30(図3)、実験例31(図4))では、オゾン処理のみを行った場合(実験例5(図1))に比べて、更にスケールによる凹凸が小さくなる現象が認められる。
そして、スケールによる凹凸が小さい実験例では、その凹凸が大きい実験例に比べて、深色性が向上される現象が認められる。
即ち、塩素化処理された実験例7(L*=11.09)に比べて、オゾン処理された実験例5(L*=9.35)及び実験例1(L*=9.24)は、スケールによる凹凸が小さく、L*値も小さくなっている。同様に、予備酸化工程を行っていない実験例5(L*=9.35)に比べて、予備酸化工程を行った実験例1(L*=9.24)、実験例29(L*=9.28)、実験例30(L*=9.06)では、スケールによる凹凸が小さく、L*値も小さくなっている。これらの結果から、酸化処理のなかでも、スケールによる凹凸をより小さくできる方法を選択することで、効果的に深色性を向上させられるものと考えられる。
但し、後述の実施例に示すように、過度な予備酸化を行った後に、オゾン処理を行うと、スケールの凹凸をほとんど消失させることができる(実験例31(図4))。しかしながら、このスケールの凹凸が除去される程度にまで、酸化が進行すると獣毛繊維の表面は合成繊維に匹敵する程に滑らかな表面となる。このような過度に滑らかな表面を形成した場合には、得られる深色処理布の深色性は、適度に予備酸化を行った場合(実験例1(図2)、実験例5(図1)及び実験例30(図3))に比べて低下してしまう。そのため、予備酸化は、行わないよりも行った方が好ましく、更に、過度に行うよりは適度な酸化で留めることが好ましい。
適度な酸化か否かは、獣毛繊維の種類や、その形態等によって様々であるが、スケールに起因しない獣毛繊維の表面凹凸が残存される程度であることが好ましい。即ち、スケールに起因する大きな凹凸はできるだけ小さくしつつ、スケールに起因しない小さな凹凸は残存させることが好ましい。この制御は、予備酸化工程における酸化剤水溶液の濃度によって調整できる。
予備酸化工程では、水溶性の酸化剤を溶解した酸化剤水溶液と、布と、を接触させて、布を構成している獣毛繊維を予備酸化する。前述のオゾン処理工程で利用されるオゾンは、水溶性の酸化剤に比べると一般により強い酸化作用を有する。しかしながら、水にほとんど溶解されないため、オゾン処理工程では、獣毛繊維の表面において強い酸化が起こると考えられる。これに対して、予備酸化工程は、水に溶解された酸化剤を利用するため、酸化剤を繊維内部にまで容易に浸透させることができる。そして、オゾン処理に比べると、水溶性の酸化剤による酸化は緩やかに進行されるものの、獣毛繊維の内部にまで酸化を及ぼすことができると考えられる。即ち、オゾン処理工程も予備酸化工程もいずれも酸化工程とみなすことができるが、これらの各工程が獣毛繊維に及ぼす作用・効果は異なっている。
尚、予備酸化工程では、酸化剤水溶液との接触後に、酸素を含む環境中(大気中など)に曝すことや、加温することで、獣毛繊維の予備酸化を促すことができる。
上記酸化剤水溶液を構成する溶媒には少なくとも水が含まれるが、必要に応じて、アルコール等の水と混和可能な他溶媒等を含むこともできる。酸化剤水溶液には、通常、溶媒全体100質量%に対して50質量%以上の水が含まれる。
また、水溶性の酸化剤としては、過硫酸、過硫酸塩、過酸化水素、過酢酸、過酢酸塩、過蟻酸、過蟻酸塩等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
これらの酸化剤のなかでは、過硫酸塩が好ましい。過硫酸塩としては、過硫酸水素カリウム、過硫酸水素ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらのなかでも過硫酸水素カリウムが好ましい。
また、酸化剤として、過硫酸水素カリウムを用いる場合、過硫酸水素カリウムの濃度は、処理浴中で反応を完了させる場合には0.1〜20g/Lが好ましく、0.5〜10g/Lがより好ましく、1〜3g/Lが特に好ましい。酸化剤水溶液との接触後に大気中に曝す場合には5〜200g/Lが好ましく、10〜150g/Lがより好ましく、30〜100g/Lが特に好ましい。
更に、酸化剤水溶液の温度は、0〜80℃が好ましく、5〜60℃がより好ましく、10〜50℃が特に好ましい。
更に、オゾン処理工程後には、還元処理工程を備えることができる。即ち、本方法では、予備酸化工程と、オゾン処理工程と、還元処理工程と、をこの順に備えることができる。
還元処理工程では、還元剤を溶解した還元剤溶液に布を浸漬して、布を構成している獣毛繊維を還元処理することができる。
還元剤溶液を構成する溶媒は特に限定されないが、通常、水を用いる。また、還元剤としては、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、チオ硫酸塩等を用いることができる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
これらの還元剤のなかでは、亜硫酸塩が好ましい。亜硫酸塩としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸カルシウムが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらのなかでも亜硫酸ナトリウムが好ましい。
亜硫酸ナトリウムを用いる場合、還元剤溶液の濃度は特に限定されないが、例えば、1〜80g/Lとすることができる。この濃度は5〜40g/Lとすることが好ましい。また、還元剤溶液の温度は、0〜90℃が好ましく、10〜80℃がより好ましい。
上記「染色工程」は、オゾン処理された布を染色して染色布とする工程である。染色工程は、上述に例示した各種染料を各々に適した条件で染色を行うことができる。それらのなかでも、酸性媒染染料及び反応染料が好ましいことは前述の通りである。即ち、酸性媒染染色又は反応性染色を行うことが好ましい。
酸性媒染染色を行う場合の媒染剤としては、水に溶解可能な金属塩(水溶性金属塩)が好ましい。このような金属塩はイオン性塩であってもよく錯塩であってもよい。これらは単独で用いてもよく併用してもよい。
上記金属塩を構成する塩基としては、各種の無機酸及び有機酸に由来する塩基を用いることができる。これらは単独で用いてもよく併用してもよい。このうち、無機酸としては、硫酸、塩酸、硝酸等が挙げられ、有機酸としては、酢酸、コハク酸等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく併用してもよい。錯塩の配位子としては、エチレンジアミン四酢酸等が挙げられる。
更に、金属塩を構成する金属元素としては、Cr、Fe、Cu、Al、Ti、Sn等が挙げられ、なかでもCrが好ましい。これらは単独で用いてもよく併用してもよい。
また、染色工程では、染色に際しては、浸染、捺染、その他の方法等のどのような方法を利用してもよい。更に、布と媒染剤との接触、及び、布と染料との接触は、いずれを先に行ってもよい。即ち、媒染は先媒染で行ってもよく後媒染で行ってもよい。
上記「深色化工程」は、染色布を構成する前記獣毛繊維の表面を深色化樹脂で被覆する工程である。通常、深色化樹脂を含んだ深色化剤を、適した濃度となるように水を媒体に用いて希釈して、深色化処理液を調合し、この深色化処理液に浸漬して行う。浸漬された布には、深色化樹脂が被覆されることとなる。
更に、獣毛繊維に被覆された深色化樹脂を、獣毛繊維の表面に定着させるため、深色化工程は定着工程を含むことができる。深色化樹脂の定着は用いる深色化樹脂の特性に合わせて適宜の方法とすることが好ましいが、例えば、加熱により定着することができる。
尚、上記深色化処理液には、深色化樹脂以外にも、各種添加剤を添加することができる。添加剤としては、深色性向上剤、架橋剤、堅ろう度向上剤、消泡剤、キレート剤、均染剤、安定剤、無機塩等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
更に、深色化処理液のpH調整の目的で、各種の水溶性の酸及び塩基を配合することができる。水溶性の酸としては、蟻酸、酢酸及びマレイン酸等の有機酸、塩酸、硫酸等の無機酸が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
また、水溶液の塩基としては、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、アンモニア等の無機塩基、及び、アルキルアミン、アルカノールアミン等の有機塩基が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
[3]深色処理布を用いた衣服
本衣服は、前述の本深色処理布を用いたことを特徴とする。具体的には、各種の礼装、喪装等において利用される衣服が挙げられる。即ち、礼服、喪服等が含まれる。これらの衣服のなかでも、特にフォーマル用途に適する。即ち、フォーマル衣服とすることができる。フォーマル衣服には、礼服、喪服等が含まれる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
[1]深色処理布の製造
下記の各種の布(C1−C6)を用い、表1−表3に記載した各種の組合せの処理(予備酸化工程、オゾン処理工程、還元処理工程、塩素化処理工程、染色工程)を施し、実験例1−31の深色処理布を得た。その結果を表1−表3に示す。
〈1〉上記表1−表3で利用した布種類
C1:羊毛87質量%とポリエステル(原着糸)13質量%とを含む織布(経糸50番手
単糸、緯糸50番手単糸の平織り、目付165g/m
C2:羊毛99質量%とナイロン(原着糸)1質量%とを含む織布(経糸60番手双糸、
緯糸60番手双糸の綾織り、目付225g/m
C3:羊毛95質量%とシルク(原着糸)5質量%とを含む織布(経糸72番手双糸、緯
糸72番手双糸の綾織り、目付230g/m
C4:羊毛のみからなる織布(経糸72番手双糸、緯糸72番手双糸の綾織り、目付19
5g/m
C5:羊毛99.7質量%と炭素繊維0.3質量%とを含む織布(経糸72番手双糸、緯糸48番手単糸の綾織り、目付235g/m
C6:羊毛77質量%とポリエステル(原着糸)23質量%とを含む織布(経糸70番手
単糸、緯糸70番手単糸の平織り、目付170g/m
〈2〉上記表1−3で利用した工程
(1)予備酸化工程
過硫酸水素カリウム及び界面活性剤を含む酸化剤水溶液を調製し、表1−3に示す種類の布をこの酸化剤水溶液で予備酸化した。表1−3には、予備酸化工程を行った実験例には「○」と示し、予備酸化工程を行っていない実験例には「−」と示した。
尚、表1及び表2の実験例は、いずれも、1.5g/L濃度の過硫酸水素カリウム及び0.2g/L濃度の界面活性剤を含む水溶液を酸化剤水溶液として調製した。そして、酸化剤水溶液の量が布重量:酸化剤水溶液重量の比において1:20となるように調整し、液温度50℃で布を40分間浸漬した。
また、表3の実験例29−31では、各々、実験例29では50g/L濃度、実験例30では100g/L濃度、実験例31では200g/L濃度、の過硫酸水素カリウム及び2g/L濃度の界面活性剤を含む水溶液を酸化剤水溶液として調製した。そして、液温度20℃で布を2秒間浸漬した後、布に含まれた酸化剤水溶液をロールで絞った。
(2)オゾン処理工程
硫酸を用いてpH1.6以下に調整した水溶液に布(予備酸化工程を行った布、又は、予備酸化工程を行っていない布)を浸漬した。そして、100g/mの濃度に調整したオゾンガスをバブリングしたオゾン処理水を1.5L/分の流量で布(巾50cm)に3.5分間吹き付けた。次いで、同様に裏面にも3.5分間、オゾン処理液を吹き付けた。その後、布を水洗した。また、表1−3には、オゾン処理工程を行った実験例には「○」と示し、オゾン処理工程を行っていない実験例には「−」と示した。
(3)還元処理工程
20g/L濃度の亜硫酸ナトリウムを含む水溶液を還元剤溶液として調製した。更に、還元剤溶液の量が、布重量:溶液重量の比において1:20となるように調整して、温度50℃に調温した還元剤溶液中に布を20分間浸漬した。その後、還元剤溶液から引き上げた布を水洗した。更に、水洗後、80質量%酢酸を2g/L濃度となるように調製した酢酸溶液に布を浸漬して、中和処理を行った後、更に布を水洗した。また、表1−3には、還元処理工程を行った実験例には「○」と示し、還元処理工程を行っていない実験例には「−」と示した。
(4)塩素化処理工程
塩素化処理溶液(次亜塩素酸ナトリウム、硫酸、浸透剤及び水を含み、有効塩素濃度50g/L)に布を通したのちロールで絞り、その後、すすぎ洗いを行った。次いで、布を、亜硫酸水素ナトリウム水溶液に通して脱塩素及び中和を行った後、水洗し、乾燥させた。表1−3には、塩素化処理工程を行った実験例には「○」と示し、塩素化処理工程を行っていない実験例には「−」と示した。
(5)染色工程
下記の酸性金属媒染染色又は反応性染色のいずれかを行った。即ち、
酸性金属媒染染色は、浸染処理により行った。即ち、染料及び染色助剤(pH調整剤及び均染剤)を溶解した染色溶液に、布重量:染色溶液の質量比が1:20となるように、布を浸漬した。そして、1℃/分の昇温速度で染色溶液を加温し40分間ボイルした。その後、染色溶液の温度が70℃となるまで冷却した後、重クロム酸カリウムを染料に対して0.2質量%加えた。次いで、更に20分染色溶液をボイルしてクローミング(クロム媒染)した。
反応性染色は、浸染処理により行った。即ち、染料及び染色助剤(pH調整剤及び均染剤)を溶解した染色溶液に、布重量:染色溶液の質量比が1:20となるように布を浸漬した。そして、1℃/分の昇温速度で染色溶液を加温し60分間ボイルした。その後、染色溶液の温度が80℃となるまで冷却した後、炭酸アンモニウムを布重量に対して5質量%加え、染色溶液の温度が80℃のまま20分処理し、染料を布に結合させて染色を行った。
また、表1−3には、酸性金属媒染染色を行った実験例には「D1」と示し、反応性染色を行った実験例には「D2」と示した。更に、表1及び表3の実験例は全て黒色の染色を行ったが、表2には染色した色を各々示した。
(6)深色化工程
染色された染色布に対して、以下の手順で深色化処理を施した。即ち、深色化剤(深色化樹脂を含む)、安定剤、架橋剤、浸透剤及び水を含む深色化処理溶液に、上記(5)の染色工程で染色した染色布を浸漬した後、液中から引き上げてロールで深色化処理溶液を絞った。この作業を2度行い、染色布に深色化処理液を染み込ませたのち、乾燥及び熱処理を行った。乾燥条件は130℃で4分、熱処理条件は170℃で1分とした。
尚、深色化工程は、全ての実験例に対して行ったため、表1−3には工程の有無の記載を省略した。
〈3〉実験例の評価
(1)深色性の評価
JIS Z8729(色の表示方法−L*、a*、b*表色系、及び、L*、u*、v*表色系)に準拠し、測色計(Macbeth社製 型式「Color−EYE3000」)を用いて深色性の程度を表わす値として明度L*を計測した。この際の光源はC光源を利用し、視野角は10度とした。このL*値は小さいほど深色性に優れていることを示す。
(2)電子顕微鏡による拡大撮影
電子顕微鏡により、下記の各種状態における獣毛繊維を拡大して撮影した画像を得た。得られた画像を、各々図1−10に示した。
尚、図1−7は2000倍の拡大画像であり、図8−10は1000倍の拡大画像である。
図1は、実験例5の布に含まれた獣毛繊維の状態であって、予備酸化工程を行わず、オゾン処理工程及び還元処理工程を行ったあと、染色工程を行う前の状態の獣毛繊維の状態を示す画像である。尚、図1中に認められる繊維はいずれも獣毛繊維である。
図2は、実験例1の布に含まれた獣毛繊維の状態であって、予備酸化工程、オゾン処理工程及び還元処理工程を行ったあと、染色工程を行う前の状態の獣毛繊維の状態を示す画像である。尚、図1中に認められる繊維はいずれも獣毛繊維である。
図3は、実験例30の布に含まれた獣毛繊維の状態であって、予備酸化工程(10質量%濃度)、オゾン処理工程及び還元処理工程を行ったあと、染色工程を行う前の状態の獣毛繊維の状態を示す画像である。尚、図3中に認められる繊維はいずれも獣毛繊維である。
図4は、実験例31の布に含まれた獣毛繊維の状態であって、予備酸化工程(20質量%濃度)、オゾン処理工程及び還元処理工程を行ったあと、染色工程を行う前の状態の獣毛繊維の状態を示す画像である。尚、図4の中心部に写し出された手前2本の繊維のうち、上側に位置した繊維はポリエステル繊維であり、下側に位置した繊維は獣毛繊維である。
図5は、実験例6の布に含まれた獣毛繊維の状態であって、予備酸化工程(10質量%濃度)を行い、オゾン処理工程を行わず、還元処理工程を行ったあと、染色工程を行う前の状態の獣毛繊維の状態を示す画像である。尚、図5中に認められる繊維はいずれも獣毛繊維である。
図6は、実験例7の布に含まれた獣毛繊維の状態であって、塩素化処理工程を行ったあと、染色工程を行う前の状態の獣毛繊維の状態を示す画像である。尚、図6中に認められる繊維はいずれも獣毛繊維である。
図7は、実験例8の布に含まれた獣毛繊維の状態であって、予備酸化工程、オゾン処理工程、還元処理工程、染色工程の一切を行っていない状態の獣毛繊維の状態を示す画像である。尚、図7の中心部に写し出された手前2本の繊維のうち、上側に位置した繊維は獣毛繊維であり、下側に位置した繊維はポリエステル繊維である。
図8は、実験例9の布に含まれた獣毛繊維の状態であって、予備酸化工程、オゾン処理工程、還元処理工程、染色工程、深色化処理工程の全てをこの順に行った状態の獣毛繊維の状態を示す画像である。
図9は、実験例10の布に含まれた獣毛繊維の状態であって、塩素化処理工程、染色工程、深色化処理工程をこの順に行った状態の獣毛繊維の状態を示す画像である。
図10は、実験例11の布に含まれた獣毛繊維の状態であって、予備酸化工程、オゾン処理工程及び還元処理工程を行わず、染色工程及び深色化処理工程のみをこの順に行った状態の獣毛繊維の状態を示す画像である。
〈4〉実験例の効果
(1)実験例1−4から、概して獣毛繊維の量が多く含まれていれば、高い深色効果が得られることが分かる。
(2)実験例5−8から、いずれの酸化処理を施さない実験例8に比べて、いずれかの酸化処理を施した例の方が深色性が向上されることが分かる。また、塩素化処理に比べて、オゾン処理を行った深色処理布では、より優れた深色性が得られることが分かる。更に、予備酸化処理とオゾン処理とを比較した場合には、オゾン処理の方が深色性に大きく寄与していることが分かる。更に、予備酸化処理とオゾン処理とを併用することによって著しく優れた深色性が得られることが分かる。
(3)実験例9−11、実験例12−14、実験例15−16から、いずれかの酸化処理を施した例の方が深色性が向上されることが分かる。また、塩素化処理に比べて、オゾン処理を行った深色処理布では、より優れた深色性が得られることが分かる。更に、染色工程では、酸性金属媒染染色(D1)及び反応性染色(D2)のいずれの染色方法においても、優れた深色化効果が得られていることが分かる。
(4)実験例17−19、実験例20−22、実験例23−25、実験例26−28から、無彩色だけでなく、有彩色においても高い深色化効果が得られることが分かる。
(5)表3からは、予備酸化工程を行うことで、深色性が向上されることが分かる。その一方で、予備酸化工程における酸化剤の濃度を次第に大きくしてゆくと、20質量%までは深色化効果が増大するものの、20質量%を超えると深色化効果が飽和することが分かる。
オゾン処理を行わなくとも、予備酸化工程のみを用いて獣毛繊維を酸化させれば、結果として深色処理布の深色性を向上させることが可能である。しかしながら、予備酸化工程で用いる酸化剤は、その酸化作用がオゾンに比べて弱く、またオゾンに比べて水に対する溶解度が大きい。そのため獣毛繊維表面を十分に酸化させると、獣毛内部まで浸透、拡散し、結果的に獣毛繊維内部まで酸化が及び、繊維が傷んでしまう。即ち、生地を傷めてしまう。このため、予備酸化工程のみで酸化を行うことは現実的には難しいと考えられる。
これに対して、オゾン処理は酸化速度が速く、水への溶解は無視し得る程に小さいため、獣毛繊維内部に至る酸化は抑制しつつ、獣毛繊維表面を十分に酸化させることができると考えられる。
従って、少なくともオゾン処理工程を用いて、獣毛繊維を酸化したうえで、染色及び深色化処理を行うことが好ましいといえる。更には、予備酸化工程とオゾン処理工程とを併用することで、これらの特性を相乗的に機能させることができることが分かる。
電子顕微鏡のデータから、予備酸化を行うことで、その後のオゾン処理において、獣毛繊維表面を覆うスケールの凹凸がより効果的に小さくされていることが分かる。即ち、オゾン処理のみではスケールによる凹凸は大きくは変化しないが、予備酸化を行うことでこのスケールによる凹凸を小さくすることができる。
そして、予備酸化における酸化処理が過度に進行すると、その後にオゾン処理を行うと、獣毛繊維の表面が、合成繊維の表面のように凹凸が極めて少なくなってしまう。このような表面になると、獣毛繊維表面の凹凸に起因した反射光を分散させる効果が抑制されて、結果的に明度L*が大きくなってしまうのではないかと考えられる。このため、予備酸化は適度な範囲で行うことが好ましい。具体的には、過硫酸カリウムを利用する範囲においては、濃度を20質量%未満に抑えることが好ましい。
また、オゾン処理を行った実験例1(図2)及び実験例5(図1)の獣毛繊維は、オゾン処理工程を行っていない実験例6の獣毛繊維(図5)及び何ら処理を施していない実験例8の獣毛繊維(図5)に比べて、スケールの概形が不明確になっており、スケールによる凹凸が小さくなっているのが分かる。
更に、実験例30(図3)の獣毛繊維は、予備酸化工程を行っていない実験例5(図1)の獣毛繊維に比べて、更にスケールの概形が不明確になり、スケールによる凹凸がほとんど消失しているのが分かる。
また、実験例31(図4)の獣毛繊維は、予備酸化工程における酸化剤水溶液の濃度が高いため、その濃度が低い実験例30(図3)の獣毛繊維に比べて、スケールによる凹凸とともに、その他の微細な凹凸もほとんど消失しているのが分かる。
更に、この実験例6(図5)の獣毛繊維は、オゾン処理工程を行っていないために、スケールによる凹凸が明確であることが分かる。しかしながら、予備酸化工程は行っているために、獣毛繊維に縦皺状の微細な凹凸が形成されていることが分かる。
また、この実験例8(図7)の獣毛繊維は、何ら処理を施していない獣毛繊維であるため、スケールの形状も、スケールによる凹凸も、明確であることが分かる。
更に、実験例11(図10)の獣毛繊維は、予備酸化工程、オゾン処理工程及び還元処理工程を行わず、染色工程及び深色化処理工程のみを行ったものである。そのため、獣毛繊維の表面にはスケールの形状が明確に浮き上がっており、スケールによる凹凸も明確である。そして、深色化樹脂は、このスケールの先端部分に引っかかるようにして付着しているが、獣毛繊維のその他の部分を覆っていないことが分かる。
また。実験例10(図9)の獣毛繊維は、塩素化処理工程、染色工程及び深色化処理工程を行ったものである。塩素化処理を行うことによって、獣毛繊維の表面に深色化樹脂が十分、均一に付着されていることが分かる。
更に、実験例9(図8)の獣毛繊維は、予備酸化工程、オゾン処理工程、還元処理工程、染色工程及び深色化処理工程の全てを行ったものである。これらの処理を行うことによって、獣毛繊維の表面に深色化樹脂が十分、均一に付着されていることが分かる。
上記実験例9及び実験例10では、いずれの獣毛繊維においても、深色化樹脂が十分、均一に付着されているものの、その明度L*を実測すると、表1に示すように、大きな差を生じており、実験例10ではL*=10.13であるのに対して、実験例9ではL*=9.33と非常に小さい値になっている。
尚、本発明においては、上記の具体的実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。

Claims (7)

  1. 獣毛繊維を含む布を、水溶性の酸化剤が溶解された酸化剤水溶液に接触させる予備酸化工程と、
    予備酸化された布を、オゾンがバブリングされている処理液に接触させるオゾン処理工程と、
    オゾン処理された布を、還元剤を溶解した還元剤溶液に浸漬する還元処理工程と、
    還元処理された布を染色して染色布とする染色工程と、
    前記染色布を構成する前記獣毛繊維の表面を深色化樹脂で被覆する深色化工程と、を備えることを特徴とする深色処理布の製造方法。
  2. 前記酸化剤水溶液の酸化剤の濃度が、1〜150g/Lである請求項1に記載の深色処理布の製造方法。
  3. 前記酸化剤が、過硫酸水素カリウムである請求項2に記載の深色処理布の製造方法。
  4. 前記染色工程における前記染色が、反応性染色又は酸性媒染染色である請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の深色処理布の製造方法。
  5. 前記染色工程における前記染色の色が、黒色、赤色又は紫色である請求項1乃至4のうちのいずれかに記載の深色処理布の製造方法。
  6. 前記布は、編織布であり、
    前記編織布に含まれる獣毛繊維の質量割合が、前記編織布全体100質量%に対して50質量%以上である請求項1乃至5のうちのいずれかに記載の深色処理布の製造方法。
  7. 前記深色化樹脂は、被覆前の染色布表面の反射率に対して、被覆後の染色布表面の反射率を小さくする樹脂である請求項1乃至6のうちのいずれかに記載の深色処理布の製造方法。
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