JP6007183B2 - 医療用容器 - Google Patents

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Description

本発明は、医療用容器に関する。
通常、多くの薬剤は、ゴム栓で口部が封止されたバイアル容器(薬剤収納容器)内に収納されている。薬剤には、例えば、液状の製剤と、粉末で溶解が必要な製剤とがある。前者の場合(「場合1」と言う)のバイアル容器の操作方法と、後者の場合(「場合2」と言う)のバイアル容器の操作方法とについて説明する。
[場合1]
(1)バイアル容器の口部を覆っているキャップをはずす。
(2)バイアル容器のゴム栓をアルコール綿で消毒する。
(3)採取液量よりやや少なめの空気をシリンジ内に入れる。
(4)シリンジに装着されている注射針をゴム栓に垂直に刺す。
(5)バイアル容器をシリンジごと逆さまにし、注射針の先が液面より下になるように位置を調整し、適量の液剤をシリンジに吸引する。このとき、バイアル容器内は、陰圧になっている。
(6)注射針の先が液面より上になるように位置を調整し、吸引分の空気を圧力差に任せてバイアル容器内に戻す。
(7)前記操作(5)、(6)を繰り返し、指定量の薬剤を抜き取る。
(8)薬剤採取終了後、バイアル容器内の空気を適量吸い取り、バイアル容器内を陰圧に保ち注射針を抜く。
[場合2]
(1)薬剤を溶解するための溶解液が充填されたシリンジを用意する。
(2)薬剤が収納されたバイアル容器の口部を覆っているキャップをはずす。
(3)バイアル容器のゴム栓をアルコール綿で消毒する。
(4)シリンジに装着されている注射針をゴム栓に垂直に刺す。
(5)注入する溶解液分の空気をバイアル容器内から抜き、バイアル容器内を陰圧にする。
(6)圧力差に任せて、泡が立たないようにゆっくり溶解液を注入する。
(7)溶解液を加えた後、バイアル容器とシリンジとを固定したままゆっくり振り、薬剤を溶解する。なお、溶解性の悪い薬剤の場合には、注射針を一旦抜いて振とうする。このとき、バイアル容器内を陰圧に保ち、注射針を抜くのが好ましい。
(8)薬剤が完全に溶解したことを確認し、場合1で記載したのと同様の採取方法で必要量の薬剤を採取する。
(9)薬剤規格の全量を使用しない場合は、必要な液量をシリンジの目盛りで量るが、この場合にはバイアル容器内が一時的に陽圧になることがある。このため、針穴からの薬液の漏れに注意し、注射針を抜く時にはバイアル容器内が陰圧になるように空気を適量吸い取ってから注射針を抜いていく。
そして、場合1、2のいずれも、圧力操作(場合1では操作(5)〜(7)、場合2では操作(5)や(9))が必要となり、その操作に手間がかかる。
さらに、薬剤が抗がん剤などの被曝すると危険なものの場合は、特にこの圧力操作時に注意が必要となる。圧力操作を正確に行なわなければ、例えば、注射針を抜く際にバイアル容器から薬剤が飛び散るおそれがある。この薬剤が飛び散る理由としては、バイアル容器内が陽圧となっているからである。また、針穴から薬剤が漏れるおそれがある。この薬剤が漏れる理由としては、バイアル容器内が陰圧のとき、シリンジからバイアル容器に向かって力が薬剤にかかるからである。
このような問題を解決する手段として、硬質の筒体で構成された容器本体と、容器本体の内側に配置され、可撓性を有する袋体とを備え、容器本体と袋体とで囲まれた薬剤収納空間に粉末の薬剤が収納された薬剤収納容器を用いることが知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の薬剤収納容器は、容器本体の口部に、薬剤を溶解する溶解液が充填されたシリンジを接続することができる。そして、この接続状態でシリンジに対し吐出及び吸引操作を行なうことにより、袋体が内側と外側とに反転することができ、よって、薬剤収納空間の内圧の上昇(増加)または下降(減少)を緩和することができる。これにより、上記の圧力操作を省略して、シリンジの吐出及び吸引操作を容易に行なうことができる。
また、袋体は、前記反転により、先端側に向かって膨らむ第1の状態と、基端側に向かって膨らむ第2の状態を取り得る。シリンジに薬液を吸引する際には、袋体は、第1の状態となっており、さらにこの状態では容器本体の内周部に密着している。
しかしながら、このとき、薬液には、毛細管現象(表面張力)によって、袋体と容器本体の内周部との間の僅かな隙間に入り込んだまま、吸引されずに残留してしまうものがある。その結果、目的とする量の薬液を吸引、回収することができないという問題があった。
国際公開第2010/122872号パンフレット
本発明の目的は、筒体内に充填された液体を容易かつ確実に回収することができる医療用容器を提供することにある。
このような目的は、下記(1)〜(10)の本発明により達成される。
(1) 筒状をなし、内側に内周部と、先端部に液体が出入り可能な口部と、基端部に基端開口部と、該基端開口部を囲む基端縁部と、を有する筒体と、
前記口部を封止する栓体と、
袋状をなし、前記基端縁部に密着固定されて前記基端開口部を封止する縁部と、該縁部に囲まれ、可撓性を有し、内外反転する反転部とを有する袋体と、
前記筒体と前記栓体と前記袋体とで囲まれた空間とを備え、
前記反転部は、前記口部を介して前記空間へ液体が出入りするのに伴って内外反転することにより、先端側に向かって膨らむ第1の状態と、基端側に向かって膨らむ第2の状態とを取り得、前記第1の状態および前記第2の状態のいずれの状態でも前記筒体の内周部と離間しており、
前記筒体は、内径が軸方向に沿って一定の胴部を有し、
前記第1の状態で、前記空間は、前記袋体の頂部と、前記筒体と、前記栓体とで形成される部分と、前記袋体の前記頂部よりも基端側の側面と、前記胴部とで形成される部分とを有し、
前記第1の状態で、前記空間のうちの前記袋体の前記側面と前記胴部とで形成される部分では、前記袋体の前記側面と前記胴部の前記内周部との離間距離が、軸を介して対向する位置に配置された2つの部分で同一であり、かつ、軸方向に沿って、前記縁部から遠ざかる方向に向かって漸増していることを特徴とする医療用容器。
(2) また、本発明の医療用容器では、前記第2の状態で、前記反転部の前記筒体との境界を含む先端部は、前記筒体の内周部に対して傾斜しているのが好ましい。
(3) また、本発明の医療用容器では、前記第2の状態で、前記反転部と前記筒体との境界部分は、丸みを帯びているのが好ましい。
(4) また、本発明の医療用容器では、前記筒体は、前記口部の基端側に設けられ、内径が基端方向に向かって漸増する肩部と、前記肩部の基端側に設けられ、内径が軸方向に沿って一定の胴部とを有し、
前記第1の状態で、前記空間の基端部は尖っており、かつ、前記空間の基端部の軸に直交する断面での面積は、基端方向に向かって漸減しているのが好ましい。
(5) また、本発明の医療用容器では、前記反転部は、前記第1の状態および前記第2の状態のいずれの状態でも前記縁部と反対側の中心部分が偏平形状をなし、
前記第1の状態で、前記空間の中心部分の基端面は平面であり、前記空間の側方の基端部は尖っているのが好ましい。
(6) また、本発明の医療用容器では、前記空間には、前記反転部が前記第1の状態で薬剤が予め収納されており、
前記反転部は、前記第1の状態では、前記薬剤は、前記反転部の前記空間側の面の少なくとも基端側部分に接しているのが好ましい。
(7) また、本発明の医療用容器では、前記筒体の基端部に装着され、前記反転部をその基端側から覆う保護カバーをさらに備えるのが好ましい。
(8) また、本発明の医療用容器では、前記筒体および前記保護カバーを収納し、前記保護カバーに固定された外側カバー部材を備えるのが好ましい。
(9) また、本発明の医療用容器では、前記保護カバーは、その内側と外側との間を空気が出入りする通気口を有するのが好ましい。
(10) また、本発明の医療用容器では、前記口部には、液体が充填されたシリンジが接続具を介して接続可能であり、
前記筒体は、前記口部に前記接続具が接続された際、該接続具が前記筒体の軸回りに回転するのを防止する回転防止手段を有するのが好ましい。
本発明によれば、筒体内に充填された液体を回収する回収操作を行なう際には、反転部が第1の状態となっており、容器本体の内周部と離間しているため、当該反転部と容器本体の内周部との間に間隙が形成される。これにより、液体が前記間隙を筒体の口部に向かって容易かつ確実に流下することができ、よって、当該液体を所定量十分に、容易かつ確実に回収することができる。
図1は、本発明の医療用容器(第1実施形態)の操作方法を順に示す縦断面斜視図である。 図2は、本発明の医療用容器(第1実施形態)の操作方法を順に示す斜視図である。 図3は、本発明の医療用容器(第1実施形態)の操作方法を順に示す縦断面斜視図である。 図4は、本発明の医療用容器(第1実施形態)の操作方法を順に示す縦断面斜視図である。 図5は、本発明の医療用容器(第1実施形態)の操作方法を順に示す縦断面斜視図である。 図6は、図1中のA−A線断面図である。 図7は、図3中のB−B線断面図である。 図8は、本発明の医療用容器の製造方法を順に示す縦断面斜視図である。 図9は、本発明の医療用容器の製造方法を順に示す縦断面斜視図である。 図10は、本発明の医療用容器の製造方法を順に示す縦断面斜視図である。 図11は、本発明の医療用容器の製造方法を順に示す縦断面斜視図である。 図12は、本発明の医療用容器の第2実施形態(未使用状態)を示す縦断面斜視図である。 図13は、図12に示す医療用容器の縦断面分解斜視図である。 図14は、図12に示す医療用容器におけるキャップ組立体と容器本体との係合状態を示す斜視図である。 図15は、図12に示す医療用容器からキャップを離脱させた状態を示す縦断面斜視図である。 図16は、図12に示す医療用容器の基端部付近を示す縦断面図である。
以下、本発明の医療用容器および医療用容器の製造方法を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1〜図5は、それぞれ、本発明の医療用容器(第1実施形態)の操作方法を順に示す図、図6は、図1中のA−A線断面図、図7は、図3中のB−B線断面図、図8〜図11は、それぞれ、本発明の医療用容器の製造方法を順に示す縦断面斜視図である。なお、以下では、説明の都合上、図1〜図4および図8〜図11中(図12〜図16についても同様)の下側を「基端」または「下(下方)」、上側を「先端」または「上(上方)」と言い、図5中の上側を「基端」または「上(上方)」と、下側を「先端」または「下(下方)」と言う。
図2〜図5に示すように、医療用具セット10は、医療用容器1を備えている。また、医療用具セット10は、医療用容器1の他に、シリンジ20と、接続具(アダプタ)30とを備えている。以下、各部の構成について説明する。
図1に示すように、医療用容器1は、容器本体2と、栓体3と、袋体(バルーン)4と、保護カバー5と、外側カバー部材6と、キャップ7とを備えている。また、医療用容器1には、粉末状、液体状等(本実施形態では粉末状)の薬剤Pが予め収納されている。この薬剤Pは、シリンジ20から供給された、溶解用液、希釈用液や薬液等の液体Qと混合される。この混合されたものが薬液Rとなる。
なお、薬剤Pとしては、特に限定されないが、例えば、抗がん剤、免疫抑制剤等、医療従事者が誤って触れると危険な薬剤や、抗生剤、止血剤等の使用にあたって溶解が必要な薬剤、小児用の薬剤等の希釈が必要な薬剤、ワクチン、ヘパリン、小児用の薬剤等の複数回取り分ける薬剤、タンパク製剤などの溶解時やシリンジへの吸引時に発泡しやすい薬剤、抗体医薬などの収納薬剤が少量である薬剤等が挙げられる。また、液体Qとしては、特に限定されないが、例えば、生理食塩水が挙げられる。
図1、図3〜図5、図8〜図11に示すように、容器本体2は、両端がそれぞれ開口した円筒体で構成された部材である。容器本体2は、その内径の大きさの大小によって、先端側から順に口部21と肩部22と胴部(内径一定部)23とに分けることができる。
口部21は、その内径が軸方向に沿って一定であり、胴部23の内径よりも小の部分である。図3〜図5に示すように、口部21には、接続具30を装着することができ、この接続具30を介してシリンジ20が接続される。そして、この接続状態でシリンジ20を操作することにより、口部21を介して、シリンジ20からの液体Qが流入したり(図4参照)、薬液Rがシリンジ20に向かって流出したりする(図5参照)。
また、口部21の外周部には、その周方向に沿った2つのリング状の突部211、212が突出形成されている。突部211と突部212とは、容器本体2の軸方向に沿って離間して配置されている。また、突部211と突部212との間には、容器本体2の周方向に等間隔に複数のリブ(図示せず)が設けられている。なお、この「離間」は、容器本体2成型時に口部21付近でのヒケ(変形)を防止するのに寄与する。
肩部22は、その内径が基端方向に向かって漸増した部分である。図2に示すように、この肩部22の外周部には、回転防止突起24が上方に向かって突出形成されている。この回転防止突起24は、接続具30の軸回りの位置を規制して、口部21に接続具30が接続された際に当該接続具30が容器本体2の軸回りに回転するのを防止する回転防止手段として機能する。回転防止突起24は、上方から見た形状が多角形状をなし、外側に向かって突出した8つの角部241と、内側に向かって引込んだ8つの角部242とを有し、角部241と角部242とが容器本体2の軸回りに交互に配置されている。
胴部23は、その内径が軸方向に沿って一定であり、口部21の内径よりも大の部分である。胴部23の基端側には、基端開口部261と、基端開口部261を囲む基端縁部25とが形成されている。なお、基端縁部25は、胴部23の周方向に沿ったリング状のフランジ形状をなしている。また、基端縁部25の外周には、基端縁部25と垂直に基端方向に突出し、基端縁部の外周全体を覆う基端外周部262が形成されている。
なお、容器本体2や、その他、保護カバー5、外側カバー部材6、キャップ7の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール等のビニル系樹脂や、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン6・12等のポリアミド、その他の熱可塑性樹脂のような樹脂材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、特定の波長をカットするために、構成材料に遮光用添加剤を加えたものを使用しても良い。また、薬剤Pの吸着を防ぐために、容器本体2の内面には、テフロン(「テフロン」は登録商標)やフッ素コートなどのコーティングを施しても良い。なお、これらの部材は、それぞれ、内部の視認性を確保するために、透明性を有している。
容器本体2の口部21には、弾性材料で構成された栓体3が装着されている。これにより、口部21を液密に封止することができる。
図1、図3〜図5、図10および図11に示すように、栓体3は、円板で構成された天板31と、天板31の基端面311から突出した一対の脚部32と、天板31と一対の脚部32の間に設けられた筒状部33とを有している。
一対の脚部32は、互いに離間して対向配置された板片で構成されている。また、脚部32の外側の面321は、それぞれ、口部21の内周部に沿った円弧状をなしている(図7参照)。一対の脚部32が容器本体2の口部21に挿入されると、後述する仮打栓状態において、栓体3が口部21から離脱するのが確実に防止される。
そして、一対の脚部32が容器本体2の口部21にさらに深く挿入されると、筒状部33は、口部21の内周面に密着する。これにより、口部21が液密的に封止される。
また、容器本体2の口部21は、栓体3ごとアルミニウムなどからなる本体キャップ11で覆われている。本体キャップ11は、口部21の突部212に係合している。これにより、栓体3が口部21から離脱するのがより確実に防止される。
栓体3を構成する弾性材料としては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムのような各種ゴム材料や、スチレン系、ポリオレフィン系等の各種熱可塑性エラストマーが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。
図1、図3〜図5、図8〜図11に示すように、袋体4は、袋状、すなわち、本実施形態では外力を付与しない自然状態でカップ状(お椀状)をなす部材である。そして、医療用容器1では、袋体4と容器本体2と栓体3とで薬剤を収納するための空間12が画成される。この空間12には、薬剤Pが予め収納されている。
袋体4は、縁部41と、縁部41で囲まれた反転部42とを有する。
図1に示すように、縁部41は、容器本体2の基端に形成されている基端縁部25に密着固定される部分である。この縁部41は、反転部42が袋状になった袋体4の開口部の縁を外側に折り返すように基端縁部25に支持されている。これにより、袋状になった反転部42に対し袋(反転部42)の内側と外側と(以下単に「内外」と言う)を、すなわち、表裏を反転させる方向(容器本体2の軸に対して直交する方向)に向かって広げられる力が作用し、当該反転部42が安定して容易に反転することができるものとなる。
なお、容器本体2に、後述する保護カバー5や冷却用治具80が装着されていない未装着状態の場合、袋体4の容器本体2との融着部となる縁部41を、容器本体2の基端外周部262で保護することができる。例えば、前記未装着状態の容器本体2をテーブル(台)に直接載置したとしても、容器本体2は、基端外周部262でテーブルと接することとなるため、袋体4の融着部(縁部41)を保護することができる。また、テーブルに載置された容器本体2がテーブル上を移動したとしても、同様に、袋体4の融着部を保護することができ、当該融着部が損傷を受けるのを防止することができる。
このような袋体4は、可撓性を有するシート材を、例えば金型を用いて、加熱して変形させることにより得られる。成形方法としては、真空成形、圧空成形などが適しており、特にプラグアシスト法による真空成形が好ましい。また、このシート材(袋体4)の厚さtとしては、特に限定されず、反転部42は、例えば、0.03〜0.5mmであるのが好ましく、0.05〜0.3mmであるのがより好ましい。さらに、袋体4の縁部41は、例えば、0.05〜0.7mmであるのが好ましく、さらに0.07〜0.4mmであるのが好ましい。また、シート材としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン樹脂、これらのポリオレフィン樹脂を含むブレンド樹脂や共重合樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−ポリ塩化ビニリデン共重合体等の単層フィルム、これらのフィルムにアルミニウム、シリカ等を蒸着した単層フィルム、これらの単層フィルムと他のフィルムやアルミ箔等の金属箔とを積層した多層フィルムなどが挙げられ、特に水蒸気バリア性や酸素バリア性が高いものが好ましい。このようなシート材により、後述するように確実に反転(内外反転)する袋体4を確実に成形することができる。
なお、縁部41に対する容器本体2の基端縁部25の固定方法としては、特に限定されず、例えば、融着(熱融着、高周波融着、超音波融着、レーザー融着等)による方法、接着(接着剤や溶媒による接着)による方法等が挙げられ、これらのうちでも融着による方法が好ましい。
図3〜図5に示すように、反転部42は、容器本体2の口部21を介して液体Qが空間12に流入したり、薬液Rが空間12から流出したりすることにより、反転する部分である。この反転より、シリンジ20の吐出及び吸引操作をした際、空間12の内圧の急激な変化を緩和することができ、よって、その吐出及び吸引操作を容易に行なうことができる。
また、反転部42は、反転するため、先端側に向かって膨らむ第1の状態(図1、図3、図5参照)と、基端側に向かって膨らむ第2の状態(図4参照)とを取り得る。なお、図1に示す空間12に薬剤Pが予め収納された未使用状態では、反転部42は、第1の状態となっている。
また、反転部42は、第1の状態では容器本体2の胴部23内に位置し、第2の状態では容器本体2の基端開口部261から突出する。
そして、反転部42は、第1の状態および第2の状態のいずれの状態でも、その空間12側の空間側面421が容器本体2の内周部2aと離間する。このときの離間距離dは、容器本体2の軸方向に沿って、縁部41から遠ざかる方向、すなわち、第1の状態では先端方向、第2の状態では基端方向に向かって漸増している。
なお、反転部42は、空間側面421の表面積全体のうちの90%が容器本体2の内周部2aと離間しているのが好ましく、95〜100%が容器本体2の内周部2aと離間しているのがより好ましい。
反転部42が以上のような構成となっていることにより、空間12内の薬液Rをシリンジ20に吸引して回収操作を行なう際には、反転部42が第1の状態となっており(図5参照)、当該反転部42の空間側面421と容器本体2の内周部2aとの間は、容器本体2の口部21に向かって広がっている。これにより、薬液Rがこれらの間を口部21に向かって容易かつ確実に流下することができ、よって、当該薬液Rを所定量十分に、容易かつ確実に回収することができる。
ここで、薬液Rを回収する際に仮に反転部42の空間側面421と容器本体2の内周部2aとが当接して(密着して)いたとすると、薬液Rには、毛細管現象によって、反転部42の空間側面421と容器本体2の内周部2aとの間に入り込んだまま、吸引されずに残留してしまうものがある。この場合、薬液Rを所定量回収することができない、すなわち、回収される薬液Rは前記残留量分だけ不足している。
従って、反転部42と容器本体2と離間していることにより、薬液Rの回収率が向上することとなる。
例えば、シリンジ20から液体Qを空間12内に10cc充填したとする。この充填量は、回収操作で回収したい薬液量となる。前記液体Qの充填により、反転部42は、第1の状態から第2の状態へ反転して、液体Qの充填量(10cc)分だけ膨らむ。そして、振とう操作により、薬剤Pと液体Qとを混合した後、回収操作を行なう。この回収操作により、反転部42は、第2の状態から第1の状態へ反転して、前記充填量分、すなわち、回収したい(目的となる量)薬液量の分だけもとの状態に戻ることができ、このとき、容器本体2から離間している。これにより、目的量の薬液Rを容易かつ確実に回収することができる。
また、図1に示す未使用状態では、薬剤Pは、第1の状態の空間側面421全体と接しており、反転部42が第1の状態から反転した際、反転部42と薬剤Pとの間に空隙が生じる。これにより、シリンジ20から空間12へ液体Qを充填した際、反転部42と薬剤Pとの間の空隙に液体Qが入り込むため、当該液体Qと薬剤Pとの接触面積をできる限り広く確保することができる。よって、液体Qと薬剤Pと混合が十分かつ確実に行なわれ、液体Qによる薬剤Pの溶解に要する時間を短くする効果を得ることができる。
仮に薬剤Pが図1中の二点鎖線(仮想線L)の位置までしかない(反転部42の全表面、すなわち、空間側面421全体と接していない)場合でも、反転部42が反転した際には、薬剤Pとの間に空隙が生じるため、液体Qと薬剤Pとの接触面積接触面積が大きくなる。つまり、第1の状態において、薬剤Pが空間側面421の少なくとも基端側部分と接していれば、同じ効果を得ることができる。
反転部42は、第1の状態および第2の状態のいずれの状態でも縁部41と反対側の中心部分、すなわち、第1の状態では頂部422となり、第2の状態では底部423となる部分が偏平形状をなす。このような偏平形状をなす部分が形成されることにより、容器本体2を大きくすることなく、未使用状態(第1の状態)での空間12の容量を増やすことができる。さらに、扁平な頂部422の厚みをその周囲の部分よりも厚く、一定にすることにより、反転部42が、第1の状態から第2の状態へ反転する際、頂部422の周囲から反転するため、反転部42を均質に反転することができる。
図1、図3〜図5に示すように、容器本体2の基端部には、保護カバー5が装着されている。保護カバー5は、カップ状をなし、袋体4の反転部42をその基端側から覆う部材である。これにより、反転部42が第2の状態になった際、当該反転部42がさらに膨らもうとしても、その膨らみを規制することができ、よって、反転部42が過剰に膨らんだ場合の破裂を確実に防止することができる(図4参照)。このように保護カバー5は、反転部42を保護するものである。
なお、図4に示すように、反転部42が第2の状態になった際、通常は、反転部42と保護カバー5の内側の面54とは、離間している、すなわち、これらの間には、間隙53が形成されている。これにより、反転部42が保護カバー5の内周部に接するのをできる限り防止することができる。なお、間隙53の大きさは、特に限定されないが、例えば、0.5〜2.0mmであるのが好ましく、0.5〜1.5mmであるのがより好ましい。
保護カバー5の先端外周部には、その周方向に沿ったリング状の第1のフランジ51と第2のフランジ52とが突出形成されている。第1のフランジ51は、第2のフランジ52よりも基端側に位置している。また、第1のフランジ51の外径は、第2のフランジ52の外径よりも大きい。
そして、第1のフランジ51は、容器本体2の基端外周部262の基端面26と接している。なお、第1のフランジ51と基端面26とは、接着や融着で固定されていても良い。
一方、第2のフランジ52は、容器本体2の基端縁部25との間で袋体4の縁部41を挟持する挟持部として機能する。この挟持により、容器本体2の基端縁部25の縁部41に対する固定を補強することができる。
保護カバー5の底部55付近には、その壁部を貫通した通気口56が複数(図6に示す構成では6つ)形成されている。これらの通気口56は、保護カバー5の軸回りに等角度間隔に配置されている。このような通気口56により、空気が保護カバー5の内側と外側との間を出入りすることができる。これにより、袋体4の反転部42が第1の状態から第2の状態になるときに袋体4と保護カバー5との間の空気が押し出され、その逆では袋体4と保護カバー5との間に空気が吸引されることとなり、よって、当該反転部42が容易かつ確実に反転することができる。
なお、前記押し出された空気は、容器本体2の基端外周部262の外周面に形成された複数本の溝27(図6参照)を介して、大気中に開放される。図6に示す構成では、溝27は、6本形成され、これら溝27は、容器本体2の軸回りに等角度感覚に配置されている。
また、保護カバー5の底部55の外周側には、その周方向に沿ったリング状の第3のフランジ57が突出形成されている。
図1に示すように、第2のフランジ52と第3のフランジ57との間には、複数枚(例えば本実施形態では3枚)の羽部59が形成されている。これらの羽部59は、保護カバー5の周方向に沿って等間隔に配置されている。
外側カバー部材6は、両端がそれぞれ開口した筒体で構成された部材である。外側カバー部材6は、その内側に容器本体2や保護カバー5のほとんどの部分を収納することができる。これにより、薬剤Pが、医療従事者が誤って触れると危険な薬剤である場合において、かかる薬剤Pが例えば医療用容器1の製造中に、容器本体2の外面に付着したとしても、外側カバー部材6で容器本体2が覆われるため、周囲の汚染を防止することや、医療従事者の安全性を確保することができる。また、外側カバー部材6により、医療用容器1を、従来のバイアル容器と同じように把持することができる。
また、外側カバー部材6の基端面61は、保護カバー5の第3のフランジ57に接合されている。この接合方法としては、特に限定されず、例えば、融着による方法、接着による方法等が挙げられる。なお、第3のフランジ57は、外側カバー部材6の基端側内周面との嵌合により、外側カバー部材6の基端に接合されていても良い。
外側カバー部材6の内周部には、その軸方向の途中に、内径が急峻に変化した段差部67が形成されている(図1参照)。この段差部67に容器本体2の基端縁部25が係合することにより、容器本体2の外側カバー部材6内での軸方向の位置決めがなされる。
また、図6に示すように、外側カバー部材6の内周部には、平面部63が複数(図6に示す構成では外側カバー部材6の周方向に等間隔に3つ)形成されている。各平面部63は、それぞれ、容器本体2の基端外周部262の外周面に複数(図6に示す構成では容器本体2の周方向に等間隔に3つ)形成された平面部28、および保護カバー5の羽部59の外周面に当接することができる。これにより、容器本体2および保護カバー5が外側カバー部材6に対しその軸回りに回動するのが確実に防止される。このように回動が規制されることにより、外側カバー部材6を把持して、容器本体2に装着された接続具30にシリンジ20を螺合により接続する際、その接続操作を容易に行なうことができる。
図6に示すように、外側カバー部材6の段差部67より先端側の内周面には、複数(例えば図6に示す構成では3つ)のリブ68が突出形成されている。これらのリブ68は、外側カバー部材6の周方向に沿って等間隔に配置されている。そして、各リブ68は、それぞれ、容器本体2の外周面をその外側から支持している。これにより、外側カバー部材6内において、容器本体2がその径方向にガタつくのを防止することができる。
外側カバー部材6の先端外周部には、雄ネジ62が形成されている。この雄ネジ62は、キャップ7と螺合することができる。
図1に示すように、キャップ7は、天板71と、天板71の縁部から基端方向に向かって突出した壁部72とで構成されている。
壁部72の内周部には、雌ネジ73が形成されている。この雌ネジ73と外側カバー部材6の雄ネジ62とが螺合することにより、キャップ7が外側カバー部材6に対し着脱自在に装着される。
図3に示すように、シリンジ20は、薬剤Pと混合される液体Qが予め充填されたシリンジである。このシリンジ20は、外筒201を有している。外筒201は、有底筒状をなし、その底部に先端方向に管状に突出した口部202が形成されている。
また、シリンジ20は、外筒201内で液密に摺動し得るガスケット(図示せず)と、このガスケットに連結され、当該ガスケットを外筒201内で移動操作するプランジャ(図示せず)とを有している。そして、プランジャを押圧操作することにより、ガスケットで液体Qを口部202から排出させることができる。
また、口部202の外周側には、リング状のロック部材(ロックアダプタ)203が口部202と同心的に配置されている。ロック部材203の内周部には、接続具30と螺合する雌ネジ204が形成されている。この螺合により、シリンジ20と接続具30とが接続される。なお、ロック部材203は、口部202と一体的に形成されていてもよいし、口部202と別体で構成されていてもよい。ロック部材203が口部202と別体で構成されている場合、当該ロック部材203は、口部202の軸方向に沿って移動可能に支持されていてもよいし、口部202の軸回りに回動可能に支持されていてもよい。
このようなシリンジ20は、接続具30を介して、医療用容器1と接続される。
図2〜図5、図7に示すように、接続具30は、本体部40と、瓶針50と、弁体60と、キャップ70とを有している。
本体部40は、容器本体2の口部21に装着される装着部401と、弁体60が設置される弁体設置部402とを有している。
装着部401は、筒状をなし、容器本体2の口部21にその外側から嵌合することができる。
また、装着部401の内周部には、外側に向かって凹んだ複数(図2、図7に示す構成では4つ)の角部403が形成されている。これらの角部403は、装着部401の軸回りに等角度間隔に配置されている。なお、各角部403の両側には、それぞれ、内側に向かって突出した角部405が形成されている(図7参照)。
そして、図7に示すように、装着部401が容器本体2の口部21に装着された際には、4つ角部403は、それぞれ、容器本体2の回転防止突起24の8つの角部241のうちの4つの角部241に嵌まり込む(挿入される)。これにより、接続具30が容器本体2の軸回りに回転するのが確実に防止され、当該接続具30にシリンジ20を螺合により接続する操作を容易に行なうことができる。なお、装着部401が容器本体2の口部21に装着されるときに、装着部401の角部405と容器本体2の角部241とが当接(当たった)としても、その当接により、角部405が角部241に案内されて、装着部401がその軸回りに回転する。この回転により、前述のように、4つ角部403は、それぞれ、容器本体2の回転防止突起24の8つの角部241のうちの4つの角部241に確実に嵌まり込むこととなる。これにより、接続具30が容器本体2の軸回りに回転するのを防止することができる。
さらに、図3〜図5に示すように、装着部401の内周部には、各角部403の先端側直近に、それぞれ、爪404が突出形成されている。各爪404は、それぞれ、装着部401が容器本体2の口部21に嵌合した際に、口部21の突部212に係合する。これにより、接続具30が容器本体2から不本意に離脱するのを確実に防止することができる。
図2に示すように、装着部401には、隣接する角部403同士の間の部分に、それぞれ、その軸方向に沿って延在するスリット406が形成されている。これにより、装着部401は、口部21に装着される過程で爪404が口部21の突部211や突部212を乗り越える際に、径方向に広がる。これにより、装着部401の装着操作を容易に行なうことができる。
また、各スリット406の基端部には、その幅が基端側に向けて広がる拡幅部407が形成されている。各拡幅部407には、それぞれ、装着部401の角部403と係合していていない、回転防止突起24の角部241が入ることができる。
弁体設置部402は、装着部401よりも小さい筒状をなし、その内側に弁体60を挿入することができる。
瓶針50は、装着部401と同心的に配置されている。この瓶針50は、医療用容器1の栓体3の天板31を刺通可能な鋭利な針先501を有している。また、瓶針50は、中空針であり、その側面に開口する少なくとも1つ(本実施形態では2つ)の側孔502を有している。
弁体60は、筒状をなす弾性体で構成され、先端側の頭部601と、基端側の胴部602とに分けることができる。頭部601は、自己閉塞するスリット603が形成された天板604を有している。接続具30にシリンジ20が接続されると、シリンジ20の口部202が天板604を押圧して変形させ、これにより、スリット603が開く。この状態で、シリンジ20の吐出または吸引操作を行なうと、弁体60と瓶針50とを介して、シリンジ20と医療用容器1との間で液体の行き来を行なうことができる。
また、頭部601からシリンジ20を離脱させると、天板604に対する押圧力が解除され、これにより、スリット603が閉じる。
胴部602は、蛇腹状をなし、頭部601を先端方向に付勢する付勢部として機能する。これにより、シリンジ20が離脱した状態では、頭部601は、キャップ70に対し所定の位置に留まることができる。
キャップ70は、弁体60を覆う筒状の部材である。このキャップ70は、基端内周部が本体部40の弁体設置部402の外周部と接合されている。また、キャップ70の先端外周部で、前記所定位置にある弁体60の頭部601の天板604を圧縮することができる。これにより、スリット603が確実に閉じることとなる。
また、キャップ70の外周部には、雄ネジ701が形成されている。雄ネジ701には、シリンジ20のロック部材203の雌ネジ204が螺合することができる。
次に、医療用具セット10(医療用容器1)の操作方法について、図1〜図5を参照しつつ説明する。
[1] まず、図1に示すように、空間12に薬剤Pが予め収納された未使用状態の医療用容器1を用意する。そして、この医療用容器1からキャップ7を取り外す。この取り外し操作は、キャップ7と外側カバー部材6との螺合を解除することにより、行なわれる。
[2] 次に、図2に示すように、キャップ7が外された医療用容器1を、容器本体2の口部21が上方を向くように、例えばテーブル(図示せず)上に載置する。その後、接続具30を、容器本体2の口部21にその上側から接近させて装着する。このとき、容器本体2の回転防止突起24の4つの角部241と、接続具30の本体部401の4つの角部403とが嵌り合い、接続具30の容器本体2に対する回転が規制される。
[3] 次に、図3に示すように、医療用容器1(容器本体2の口部21)に装着された接続具30にシリンジ20を接続する(以下この状態を「接続状態」と言う)。この接続操作は、接続具30のキャップ70の雄ネジ701と、シリンジ20のロック部材203の雌ネジ204とを螺合させることにより、行なわれる。また、この接続操作を行なう際、前述したように接続具30の容器本体2に対する回転が規制されているため、その操作を確実に行なうことができる。なお、医療用容器1では、外側カバー部材6と容器本体2との回転も防止されているため、外側カバー部材6を把持して、前記接続操作を行なうことができる。
また、接続状態では、前述したように接続具30の弁体60のスリット603が開状態となる。
[4] 次に、接続状態でシリンジ20のプランジャを押圧操作して、図4に示すように、シリンジ20から医療用容器1の空間12内に液体Qを供給する。この液体Qは、弁体60、瓶針50を流下して、当該瓶針50の側孔502を介して空間12内に流入する。これにより、液体Qと薬剤Pとが混合し合い、薬液Rが生成され始める。
また、袋体4の反転部42は、空間12内に流入した液体Qにより押圧されて第2の状態となるため、空間12の容積が増大し、プランジャの押圧操作による空間12の内圧の過剰な上昇を緩和することができる。これにより、従来、粉末で溶解が必要な薬剤が収納されているバイアル容器で必要であった、注入する溶解液分の空気をバイアル容器内からシリンジに吸引する圧力操作を省略することができる。
その後、振とう操作を行うことにより、液体Qに薬剤Pを完全に溶解させ、薬液Rが生成する。この際、前述したように、反転部42と薬剤Pとの間に液体Qが入り込んで、液体Qと薬剤Pとの接触面積が広くなり、液体Qと薬剤Pと混合が十分かつ確実に行なわれるため、この振とう操作の時間を短くすることができる。
[5] 次に、接続状態のまま、図5に示すように、医療用容器1を上下反転させる。そして、シリンジ20のプランジャに対する引張り操作を行ない、薬液Rをシリンジ20に回収する。このとき、薬液Rとともに袋体4の反転部42が引張られて第1の状態となる。このとき、前述したように空間側面421と内周部2aとが離間しているため、反転部42の空間側面421と容器本体2の内周部2aとの間を、薬液Rが容器本体2の口部21に向かって容易かつ確実に流下することができ、よって、当該薬液Rを容易かつ確実に回収することができる。また、反転部42が第1の状態に戻るため、吸引操作時に容器本体2(空間12)内が陰圧となるのを防止することができる。これにより、従来、粉末で溶解が必要な薬剤が収納されているバイアル容器で必要であった、シリンジに吸引した薬液分の空気を、シリンジからバイアル容器内に戻す圧力操作を省略することができる。
なお、容器本体2に予め薬液Rが充填されている場合には、未使用状態で反転部42が第2の状態となっている。これにより、薬液Rをシリンジ20に回収する際、反転部42が第1の状態となるため、吸引操作時に容器本体2(空間12)内が陰圧となるのを防止することができ、シリンジに吸引した薬液分の空気を、シリンジからバイアル容器内に戻す圧力操作を省略することができる。
次に、医療用容器1を製造する方法(医療用容器の製造方法)について、図8〜図11を参照しつつ説明する。この製造方法は、[1]準備工程と、[2]収納工程(第1の工程)と、[3]打栓工程と、[4]生成工程(第2の工程)と、[5]組立工程とを有する。なお、以下の各工程は、例えば、アイソレータ内等の無菌環境下で行われる。
また、[1]準備工程〜[4]生成工程までは、冷却用治具80を用いる。まず、この冷却用治具80について説明する。
冷却用治具80は、第1の状態の袋体4に着脱自在に装着されるものである。冷却用治具80は、第1の状態での袋体4の反転部42の形状に対応した、すなわち、カップ状をなすカップ状部801と、カップ状部の基端外周部に突出形成され、その周方向に沿ったリング状のフランジ802とで構成されている。
冷却用治具80が袋体4に装着された際には、カップ状部801が袋体4の反転部42にその基端側から接し、フランジ802は、第1の構造体101を載せるための台となる。そして、この状態の冷却用治具80は、反転部42を介して後述する液状組成物Sを冷却することができる。
また、冷却用治具80は、金属製の部材で構成されている。この金属材料としては、特に限定されず、例えば、ステンレス鋼、アルミニウムやアルミニウム合金等を用いることができる。このような金属材料を用いることにより、冷却用治具80は、熱伝導性に優れたものとなり、液状組成物Sを確実に冷却することができる。
前述したように、医療用容器1を製造する方法は、[1]準備工程と、[2]収納工程と、[3]打栓工程と、[4]生成工程と、[5]組立工程とを有する。
[1]準備工程
図8に示すように、容器本体2と袋体4とが接合された第1の構造体101を用意する。この第1の構造体101では、袋体4は、第1の状態となっている。
そして、第1の構造体101の下側から冷却用治具80を挿入し、装着する。これにより、袋体4は第1の状態が維持される。
その後、冷却用治具80が装着された第1の構造体101を、凍結乾燥用のステージ90に載置する。
[2]収納工程
次に、図9に示すように、第1の構造体101での空間12に、薬剤Pを含む液状組成物Sを無菌的に供給する。これにより、液状組成物Sが空間12に収納される。
[3]打栓工程
次に、図10に示すように、栓体3を用意し、当該栓体3を容器本体2の口部21に挿入して、第1の構造体101を第2の構造体102とする。
なお、栓体3の挿入の程度としては、栓体3の筒状部33が口部21内に挿入されていない程度である。これにより、第2の構造体102は、容器本体2の口部21が栓体3で未だ液密に封止されていない仮打栓状態となる。
[4]生成工程
次に、図11に示すように、第2の構造体102をステージ90および冷却用冶具80ごとチャンバー内に入れ、ステージ90を冷却用治具80ごと冷却しながら、チャンバー内の気圧を真空ポンプにより下げる。これにより、液状組成物Sが凍結乾燥されて、薬剤Pが生成される。
その後、栓体3を、その天板31の基端面311が容器本体2の先端面29に当接するまで押し込む。これにより、第2の構造体102は、容器本体2の口部21が栓体3で液密的に封止された本打栓状態となる。
なお、冷却用治具80は、カップ状部801が袋体4の反転部42の全体にわたって接している。これにより、反転部42、冷却用治具80を介して、液状組成物Sから熱を急激に吸熱することができ、冷却効率が向上する。よって、凍結乾燥時間を短縮することができ、また、生成される薬剤Pでは結晶状態が安定する。
また、従来のように、有底筒状の容器に液状組成物Sを収納して、ステージ90で凍結乾燥した場合、当該容器は、その平坦な底部がステージ90と接しているのみである(このときの接触面積をaとする)。これに対し、本製造方法では、冷却用治具80を介して、カップ状の反転部42とステージ90とが接することができるため、その接触面積が、従来の接触面積aに対して1.2〜3倍増加する。これによっても冷却効率が向上する。
[5]組立工程
次に、第2の構造体102から冷却用治具80を取り外し、当該第2の構造体102に対し、本体キャップ11、保護カバー5、外側カバー部材6、キャップ7を適宜順番に組み立てる。これにより、図1に示す医療用容器1が得られる。
<第2実施形態>
図12は、本発明の医療用容器の第2実施形態(未使用状態)を示す縦断面斜視図、図13は、図12に示す医療用容器の縦断面分解斜視図、図14は、図12に示す医療用容器におけるキャップ組立体と容器本体との係合状態を示す斜視図、図15は、図12に示す医療用容器からキャップを離脱させた状態を示す縦断面斜視図、図16は、図12に示す医療用容器の基端部付近を示す縦断面図である。
以下、これらの図を参照して本発明の医療用容器および医療用容器の製造方法の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、保護カバー、外側カバー部材、キャップの各構成がそれぞれ異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
図12、図13に示すように、医療用容器1Aでは、キャップ7A(上側キャップ)は、下側キャップ8とともにキャップ組立体13を構成している。
キャップ7Aは、基端側内周面の雌ネジ73の他に、雌ネジ73と反対側の部分、すなわち、基端側外周面に雄ネジ74が形成されている。
下側キャップ8は、両端がそれぞれ開口した円筒体で構成されている。この下側キャップ8の先端部には、キャップ7Aの壁部72の厚さ分だけの段差が生じるように段差部81が形成されている。下側キャップ8は、段差部81を介して、それよりも先端側の縮径部82と、基端側の大径部83とに分けられる。そして、縮径部82の外周部の段差部81付近には、雄ネジ821が形成されている。大径部83の外周部の段差部81付近にも、雄ネジ831が形成されている。
そして、キャップ7Aの雌ネジ73と、下側キャップ8の雄ネジ821とを螺合させることができる。これにより、キャップ7Aと下側キャップ8とが組み立てられた組立状態となり、キャップ組立体13が構成される。この組立状態のキャップ組立体13では、キャップ7Aの雄ネジ74と、下側キャップ8の雄ネジ831とで、連続した雄ネジが形成される。
図13、図14に示すように、下側キャップ8の大径部83の基端部には、容器本体2と係合し得る複数(本実施形態では3つ)の係合片84が設けられている。各係合片84は、それぞれ、弾性変形可能である。また、各係合片84の端部には、それぞれ、基端側に向かって突出した爪841が形成されている。一方、容器本体2には、基端縁部25の先端面の3つの平面部28とつながる部分にそれぞれ係合片84の爪841に係合する凹部281が設けられている。
図12、図13、図15に示すように、外側カバー部材6Aは、有底筒状をなす部材で構成されている。この外側カバー部材6Aの先端内周部には、雌ネジ64が形成されている。雌ネジ64は、組立状態のキャップ組立体13での、キャップ7Aの雄ネジ74と、下側キャップ8の雄ネジ831とに一括して螺合することができる(図12参照)。
なお、外側カバー部材6Aでは、前記第1実施形態の外側カバー部材6と異なり、段差部67およびリブ68の形成が省略されている。
図12に示す状態の医療用容器1Aを得るには、図13に示すように、容器本体2と栓体3と袋体4と保護カバー5Aと外側カバー部材6Aとが組み立てられた状態の構造体103と、組立状態のキャップ組立体13とを用意する。そして、キャップ組立体13を構造体103に挿入すると、構造体103の外側カバー部材6Aの雌ネジ64が、キャップ組立体13の下側キャップ8の雄ネジ831、キャップ7Aの雄ネジ74に順に螺合していく。また、これに伴って、下側キャップ8の各係合片84は、それぞれ、容器本体2の基端縁部25で一旦押圧され手先端側に曲げられるが、爪841が基端縁部25にある凹部281に到達すると、基端縁部25からの押圧力が解除されて、爪841が凹部281に係合することとなる。
このような組立操作により医療用容器1Aが得られる。この医療用容器1Aでは、下側キャップ8を介して、容器本体2と外側カバー部材6Aとが連結、固定される。そして、キャップ7Aを取り外すために当該キャップ7Aを回転操作すると、その回転力が下側キャップ8にも伝達されるが、下側キャップ8は前述したように係合片84で容器本体2の凹部281と係合しているため回転せず、キャップ7Aのみが取り外される。その後、前記第1実施形態と同様に医療用容器1Aを操作することができる。
なお、下側キャップ8の内周面には、第1実施形態の外側カバー部材6の内周面と同様のリブ68が形成されていても良い。これにより、下側キャップ8内において、容器本体2がその径方向にがたつくことを抑えることができる。
また、図12、図13、図15に示すように、医療用容器1Aでは、保護カバー5Aは、両端がそれぞれ開口した円筒体で構成されている。保護カバー5Aの基端面58は、外側カバー部材6Aの底部65から離間している。この保護カバー5Aの基端面58と外側カバー部材6Aの底部65との間の間隙66を介して、空気が保護カバー5Aの内側と外側との間を出入りすることができる。これにより、袋体4の反転部42が第1の状態から第2の状態になるときに空気が押し出され、その逆では空気が吸引されることとなり、よって、当該反転部42が容易かつ確実に反転することができる。
図16に示すように、外側カバー部材6Aの底部65には、保護カバー5Aの基端面58に当接する複数(例えば3つ)の突部651が先端方向に向かって突出している。突部651がそれぞれ保護カバー5Aの基端面58に当接することにより、間隙66の大きさ(ギャップ長)が規制され、間隙66を確実に確保することができる。
以上、本発明の医療用容器および医療用容器の製造方法を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、医療用容器を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
また、本発明の医療用容器および医療用容器の製造方法は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
本発明の医療用容器は、筒状をなし、内側に内周部と、先端部に液体が出入り可能な口部と、基端部に基端開口部と、該基端開口部を囲む基端縁部と、を有する筒体と、前記口部を封止する栓体と、袋状をなし、前記基端縁部に密着固定されて前記基端開口部を封止する縁部と、該縁部に囲まれ、可撓性を有し、内外反転する反転部とを有する袋体と、前記筒体と前記栓体と前記袋体とで囲まれた空間とを備え、前記反転部は、前記口部を介して前記空間へ液体が出入りするのに伴って内外反転することにより、先端側に向かって膨らむ第1の状態と、基端側に向かって膨らむ第2の状態とを取り得、前記第1の状態および前記第2の状態のいずれの状態でも前記筒体の内周部と離間している。
そのため、筒体内に充填された液体を回収する回収操作を行なう際には、反転部が第1の状態となっており、容器本体の内周部と離間しているため、当該反転部と容器本体の内周部との間に間隙が形成される。これにより、液体が前記間隙を筒体の口部に向かって容易かつ確実に流下することができ、よって、当該液体を所定量十分に、容易かつ確実に回収することができる。
従って、本発明の医療用容器は、産業上の利用可能性を有する。
10 医療用具セット
1、1A 医療用容器
2 容器本体
2a 内周部
21 口部
211、212 突部
22 肩部
23 胴部(内径一定部)
24 回転防止突起
241、242 角部
25 基端縁部
26 基端面
261 基端開口部
262 基端外周部
27 溝
28 平面部
281 凹部
29 先端面
3 栓体
31 天板
311 基端面
32 脚部
321 面
33 筒状部
4 袋体(バルーン)
41 縁部
42 反転部
421 空間側面
422 頂部
423 底部
5、5A 保護カバー
51 第1のフランジ
52 第2のフランジ
53 間隙
54 内側の面
55 底部
56 通気口
57 第3のフランジ
58 基端面
59 羽部
6、6A 外側カバー部材
61 基端面
62 雄ネジ
63 平面部
64 雌ネジ
65 底部
651 突部
66 間隙
67 段差部
68 リブ
7、7A キャップ
71 天板
72 壁部
73 雌ネジ
74 雄ネジ
8 下側キャップ
81 段差部
82 縮径部
821 雄ネジ
83 大径部
831 雄ネジ
84 係合片
841 爪
11 本体キャップ
12 空間
13 キャップ組立体
101 第1の構造体
102 第2の構造体
103 構造体
20 シリンジ
201 外筒
202 口部
203 ロック部材(ロックアダプタ)
204 雌ネジ
30 接続具(アダプタ)
40 本体部
401 装着部
402 弁体設置部
403 角部
404 爪
405 角部
406 スリット
407 拡幅部
50 瓶針
501 針先
502 側孔
60 弁体
601 頭部
602 胴部
603 スリット
604 天板
70 キャップ
701 雄ネジ
80 冷却用治具
801 カップ状部
802 フランジ
90 ステージ
d 離間距離
L 仮想線
P 薬剤
Q 液体
R 薬液
S 液状組成物
t 厚さ

Claims (10)

  1. 筒状をなし、内側に内周部と、先端部に液体が出入り可能な口部と、基端部に基端開口部と、該基端開口部を囲む基端縁部と、を有する筒体と、
    前記口部を封止する栓体と、
    袋状をなし、前記基端縁部に密着固定されて前記基端開口部を封止する縁部と、該縁部に囲まれ、可撓性を有し、内外反転する反転部とを有する袋体と、
    前記筒体と前記栓体と前記袋体とで囲まれた空間とを備え、
    前記反転部は、前記口部を介して前記空間へ液体が出入りするのに伴って内外反転することにより、先端側に向かって膨らむ第1の状態と、基端側に向かって膨らむ第2の状態とを取り得、前記第1の状態および前記第2の状態のいずれの状態でも前記筒体の内周部と離間しており、
    前記筒体は、内径が軸方向に沿って一定の胴部を有し、
    前記第1の状態で、前記空間は、前記袋体の頂部と、前記筒体と、前記栓体とで形成される部分と、前記袋体の前記頂部よりも基端側の側面と、前記胴部とで形成される部分とを有し、
    前記第1の状態で、前記空間のうちの前記袋体の前記側面と前記胴部とで形成される部分では、前記袋体の前記側面と前記胴部の前記内周部との離間距離が、軸を介して対向する位置に配置された2つの部分で同一であり、かつ、軸方向に沿って、前記縁部から遠ざかる方向に向かって漸増していることを特徴とする医療用容器。
  2. 前記第2の状態で、前記反転部の前記筒体との境界を含む先端部は、前記筒体の内周部に対して傾斜している請求項1に記載の医療用容器。
  3. 前記第2の状態で、前記反転部と前記筒体との境界部分は、丸みを帯びている請求項1または2に記載の医療用容器。
  4. 前記筒体は、前記口部の基端側に設けられ、内径が基端方向に向かって漸増する肩部と、前記肩部の基端側に設けられ、内径が軸方向に沿って一定の胴部とを有し、
    前記第1の状態で、前記空間の基端部は尖っており、かつ、前記空間の基端部の軸に直交する断面での面積は、基端方向に向かって漸減している請求項1ないし3のいずれか1項に記載の医療用容器。
  5. 前記反転部は、前記第1の状態および前記第2の状態のいずれの状態でも前記縁部と反対側の中心部分が偏平形状をなし、
    前記第1の状態で、前記空間の中心部分の基端面は平面であり、前記空間の側方の基端部は尖っている請求項1ないし4のいずれか1項に記載の医療用容器。
  6. 前記空間には、前記反転部が前記第1の状態で薬剤が予め収納されており、
    前記反転部は、前記第1の状態では、前記薬剤は、前記反転部の前記空間側の面の少なくとも基端側部分に接している請求項1ないし5のいずれか1項に記載の医療用容器。
  7. 前記筒体の基端部に装着され、前記反転部をその基端側から覆う保護カバーをさらに備える請求項1ないし6のいずれか1項に記載の医療用容器。
  8. 前記筒体および前記保護カバーを収納し、前記保護カバーに固定された外側カバー部材を備える請求項7に記載の医療用容器。
  9. 前記保護カバーは、その内側と外側との間を空気が出入りする通気口を有する請求項7または8に記載の医療用容器。
  10. 前記口部には、液体が充填されたシリンジが接続具を介して接続可能であり、
    前記筒体は、前記口部に前記接続具が接続された際、該接続具が前記筒体の軸回りに回転するのを防止する回転防止手段を有する請求項1ないし9のいずれか1項に記載の医療用容器。
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