以下に図面を用いて本発明に係る一実施形態につき、詳細に説明する。以下では、被包装体として、4個の電池、または1個のスティックを説明するが、これは説明のための例示であって、他の物品であっても構わない。
以下で述べる材料、寸法、形状等は、説明のための例示であって、包装体に収容される被包装体の仕様、包装体の仕様に合わせ適宜変更が可能である。
以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
図1は、包装体10の正面図と側面図である。図2は、包装体10の一部の拡大図である。図1、図2には、包装体10の構成要素ではないが、包装体10が包装する対象物である被包装体8としての4個の電池が図示されている。包装体10は、被包装体8を保持して一体化され、販売等の目的のために店頭等に吊り下げて展示されるものである。
包装体10は、台紙12と、粘着層30を有し、粘着層30を台紙12の側に向けて、台紙12との間で被包装体8を保持するフィルム20と、を備え、フィルム20は、台紙12において被包装体8が配置される側の表面に粘着層30で接合される一方端部22と、台紙12の縁部で折り返され、台紙12の裏面側に粘着層30で接合される他方端部28と、一方端部22と他方端部28との間の部分であって、被包装体8の表面を覆って保持する保持部24を有する。なお、フィルム20、粘着層30の実際の厚さはかなり薄いものであるが、図1では説明のために、長さや幅に対し厚さを誇張して示してある。
被包装体8は、包装の対象となる物品である。被包装体8が複数の物品で構成されるときは、取り扱いを容易にするために、複数の物品を予めひとまとめにする処理を行うことが好ましい。ここでは、被包装体8が4個の電池で構成されているので、図2に示されるように、シュリンクフィルム9を用いて、4個の電池がまとめて一体的に覆われる。勿論、シュリンクフィルム9を用いずに、複数の物品をバラバラの状態で、台紙12とフィルム20で保持するものとしてもよい。
シュリンクフィルム9は、ポリエステル系フィルム、ポリプロピレン系フィルム、ナイロン系フィルム等について、適当な加熱条件の下で一軸方向または二軸方向に延伸したものである。このように延伸したフィルムは、延伸する際にかけた温度を超える熱量がかかると収縮する。この特性を利用し、被包装体8に緩やかに包み込んだシュリンクフィルム9に熱を加えて縮ませることで、複数の物体をひとまとめにして覆うことができる。
台紙12は、被包装体8を保持して包装体10を形成するときに、平面視で被包装体8の外形を含む大きさを有し、包装体10の全体の骨格に相当する部材である。台紙12には、被包装体8を包み込む箇所と異なる個所の一端側に、包装体10を吊り下げて展示するための吊り下げ穴14が設けられる。図1では、紙面における上下方向に包装体10を吊り下げるとして、台紙12の上側の上端部に吊り下げ穴14が設けられる場合が示されている。かかる台紙12は、一般的な厚紙、フィルム素材の厚手のシート等を用いることができる。台紙12の板厚としては、例えば、0.2mmから0.8mm程度のものを用いることができる。台紙12には、被包装体8の名称、用途、材質、使用上の注意事項、生産者、製造日付等を印刷して表示することができる。
フィルム20は、一方側の面に粘着層30が設けられるプラスチックシートである。ユーザがフィルム20を通して被包装体8を目視できるように、透明なシートを用いることができる。勿論、適当な着色、印刷等を施したシートを用いてもよい。
フィルム20の材質、厚さは、被包装体8の質量に応じて適宜選択することができる。フィルム20は、被包装体8の質量を保持する強度が必要であるので、厚さが30μmから80μm程度のプラスチックシートを用いることがよい。材質としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリプロピレンを原材料とする2軸延伸フィルムを用いることができる。
これ以外の樹脂材料のシートを用いることもできる。例えば、ポリエステル系樹脂として、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)等、ポリオレフィン系樹脂としてポリエチレン(PE)、エチレン−αオレフィン共重合体等、ポリアミド系樹脂としてナイロン−6、ナイロン−66等、また、ポリアクリルロニトリル(PAN)、ポリイミド樹脂(PI)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエーテルスルフォン(PES)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等を用いることができる。また、無延伸フィルムや一軸延伸フィルムであってもよい。
粘着層30は、フィルム20を台紙12に接合するための粘着剤の層でフィルム20に設けられる。このときに、台紙12に対しフィルム20の長手方向に沿った一方端部と他方端部とを接合し、フィルム20の一方端部と他方端部の間の部分と台紙12との間に被包装体8を挟むことで、被包装体8を保持することができる。また、粘着層30は、被包装体8とフィルム20の間に設けることで、被包装体8の周囲にフィルム20を密着させて接合する機能を有する。これによって、被包装体8がフィルム20に対し動かないように保持することができる。
粘着層30は、ユーザが被包装体8を目視できるようにフィルム20として透明なシートを用いる場合には、粘着層30も透明なものが好ましい。粘着層30としては、合成ゴム系のスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体等、アクリル樹脂系、オレフィン樹脂系、ウレタン樹脂系、紫外線硬化樹脂系、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の粘着剤を用いることができる。
粘着層30は、コーティングによって、フィルム20の一方側の面に形成することができる。粘着層30の厚さとしては、20μmから30μm程度が好ましい。
粘着層30の機能の中で、台紙12とフィルム20の間の接合機能が重要であるので、以下では、フィルム20に設けられる粘着層30について説明を続ける。
粘着層30は、台紙12とフィルム20とを接合して、被包装体8を保持する必要があるので、せん断力が0.05MPa以上0.5MPa以下で、かつ剥離強度が7N/25mm以上15N/25mm以下である材質を選定することが好ましい。
せん断力の測定は、JIS K6850(日本工業規格)で定められている接着剤−剛性被着材の引張せん断接着強さ試験方法に準拠して実施することができる。具体的には、台紙12と同じ材質のものを被着体とし、試験片として粘着層30を有するフィルム20を用いる。幅25mmの試験片を接着領域が25mm×25mmとなるように被着材に配置する。そして、試験片の接着部分に対応する箇所の上に2kgの質量を有するローラを一往復させて貼り付けを行う。貼り付け後の経過時間は30分として、その経過時間となったときに、島津製作所製オートグラフAG−I,500Nを用い、被着材と試験片の端部とを治具に固定し、テストスピード300mm/分の条件で、せん断力の測定を行う。試験片の数は3とし、試験力の平均値をせん断力とした。
剥離強度の測定は、JIS Z0237(日本工業規格)で定められている粘着テープ・粘着シート試験方法のうち、180度の角度での引き剥がし粘着力の試験方法に準拠して実施することができる。具体的には、台紙12と同じ材質のものを被着体とし、試験片として粘着層30を有するフィルム20を用いる。幅25mmの試験片を被着材に配置する。そして、試験片の接着部分に対応する箇所の上に2kgの質量を有するローラを一往復させて貼り付けを行う。貼り付け後の経過時間は30分として、その経過時間となったときに、島津製作所製オートグラフAG−I,500Nを用い、180度の角度の引き剥がし粘着力が測定されるように被着材と試験片の端部とを治具に固定し、テストスピード300mm/分の条件で、剥離強度の測定を行う。試験片の数は3とし、試験力の平均値を剥離強度とした。
粘着層30は、フィルム20の一方側の面の全面に設けられる。このように粘着層30とフィルム20とが複合構造となっているシートを粘着層付フィルムと呼ぶことができる。図1で示される粘着層30付のフィルム20は、展開すると、台紙12の幅よりやや小さい幅寸法の細長い形状を有する。このような形状は、予め、広い面積で粘着層付フィルムを形成し、これを適当な形状に打ち抜いて得ることができる。
糊抑え体40は、被包装体8と粘着層30とが当接しない部分において、粘着層30にほこりやゴミが付着するのを防止するために設けられる。糊抑え体40は、粘着層30の上に、例えば、粘着性を有していないインキをコーティングすることによって形成され、糊抑え体40が設けられた部分の粘着層30の粘着性を抑制または消失させる。図2の構成では、被包装体8である複数の電池の間が離間しているので、その部分において糊抑え体40が設けられる。糊抑え体40としては、紫外線硬化型インキ、グラビア印刷用インキ等の樹脂インキが用いられる。糊抑え体40の厚さは1μmから10μmが好ましい。
糊抑え体40は、被包装体8の外周の全面に設けるのではなく、部分的に設けない箇所を作る。図2の例では、糊抑え体40が設けられない箇所42が示されている。これによって、糊抑え体40が設けられない箇所42では粘着層30が表面に露出しており、フィルム20と被包装体8とを相互に結びつけて接合することができる。糊抑え体40が設けられる箇所では粘着層30が介在しても、その表面は部分的にまたは全面的に糊抑え体40が覆っているので、被包装体8とフィルム20の間の粘着力を小さくまたは消失させることができる。
図2に示すミシン目50は、台紙12とフィルム20で保持されている被包装体8を取り出すときにフィルム20を破りやすくするために設けられる。ミシン目50は、フィルム20の幅方向に沿って、予め定めたピッチ間隔で配置される複数の微細孔である。微細孔は、フィルム20の厚さ方向に貫通して開けられる。好ましくは粘着層30も貫通することがよい。また、フィルム20の幅方向の端部では、微細孔は、端縁を含む切れ目状とすることが好ましい。これにより、フィルム20の端部がつかみやすくなる。図2ではミシン目50の位置を被包装体8の下側に対応する箇所に設けた例を示したが、ミシン目50の位置は、これ以外の場所であっても構わない。
ミシン目50を用いることで、ユーザは、フィルム20を幅方向に沿って開封し、被包装体8を容易に取り出すことができる。ミシン目50としては、例えば、ミシン目が一列に並んで配置される方向と同じ方向に長い切れ目状の微細孔を用い、その微細孔の長さの0.2から5倍の間隔を開けて、複数の微細孔を一列に配置したものを用いることができる。
図2では、被包装体8として4個の電池がシュリンクフィルム9を用いて一体的に覆われるものとして説明した。図3は、シュリンクフィルム9を用いずに、4個の電池がバラバラの状態で、台紙12とフィルム20で保持される例を示すものである。
図3に示すミシン目52は、図2で説明したミシン目50とは別の目的で、被包装体8を構成する複数の物品を個別に取り出しやすくするために用いられる。図3は部分図のために、ミシン目52は1つしか見えていないが、複数の物品を構成する各物品ごとにミシン目52を設けることが好ましい。この場合、例えば、1つの物品の上下に一条ずつミシン目52を入れることがよい。ミシン目52の形状、配置等は、図2のミシン目50と同様とすることができる。
ここで、粘着層30付のフィルム20と台紙12を用いて、被包装体8を保持するための構成、ここでは、図1、図2の構成を形成する手順を説明する。最初に、吊り下げ穴14が上端部に設けられ、表示等の印刷がされている台紙12を準備する(台紙準備工程)。次に、台紙12の下部に被包装体8を配置する(被包装体配置工程)。
平面視で台紙12は被包装体8を含む大きさを有しているが、台紙12に被包装体8を配置するとき、平面視で被包装体8が台紙12の外形輪郭からはみ出さないようにすることがよい。これによって、被包装体8が台紙12からはみ出して不安定に保持されて配置される場合に比べ、被包装体8が台紙12の強度によって支えられ、しっかりと保持される。
特に、被包装体8と台紙12の上下方向に沿った配置関係について、被包装体8は、台紙12の下部に配置され、台紙12の下端と被包装体8の下端とが上下方向において同じ位置にあるようにする。このようにすることの効果については後述する。
被包装体8は、4個の電池が予めシュリンクフィルム9によって一体化されたものを用いる。
次に、予め糊抑え体40を設けた粘着層30付フィルム20を、粘着層30が設けられる側を台紙12の表側に向くようにし、幅を台紙12の幅の中に入るようにして、一方端部22を台紙12の表面側に押し付けて接合する(一方端部接合工程)。糊抑え体40を設ける際に、糊抑え体40を設けない箇所42は、被包装体8と当接させるために台紙12から見て被包装体8の最も高い位置にくるようにする。
そして、粘着層30付フィルム20を、被包装体8の外形に沿って押し付けるようにして沿わせ、台紙12の下端部の縁部まで覆うようにする。
粘着層30付フィルム20が台紙12の下側の縁部までくると、そこで折り返される(折り返し工程)。折り返しは、粘着層30付フィルム20の他方端部28が曲げられて、台紙12の裏面側に粘着層30が来る。粘着層30は、一方端部22のところでは、台紙12の表面側に向いていたものが、他方端部28のところでは台紙12の裏面側に向く。したがって、粘着層30付フィルム20は、一方端部22から他方端部28に来るまでに、180度曲がったことになる。そして、他方端部28を台紙12の裏面側に押し付けて接合する(他方端部接合工程)。これによって、包装体10が完成する。
ここで、上記のように、被包装体8は、台紙12の下部に配置され、台紙12の下端と被包装体8の下端とが上下方向において同じ位置にある。これにより、フィルム20の他方端部は、被包装体8の下側に沿いながら、台紙12の下部の表面に貼り付けられることなく、下端で折り返されることになる。したがって、被包装体8の下端が台紙12の下端よりも上方に配置されて、フィルム20が台紙12の下部の表面に貼り付けられる場合に比べ、フィルム20と台紙12の間に被包装体8をしっかりと保持できる。
上記では、最初に台紙12の表面側にフィルム20の一方端部22を接合し、最後に台紙の裏面側にフィルム20の他方端部28を接合したが、この順序を逆にしてもよい。すなわち、最初に台紙12の裏面側にフィルム20の他方端部28を接合し、最後に台紙の表面側にフィルム20の一方端部22を接合する順序としてもよい。
粘着層30付フィルム20は、一方端部22から他方端部28に来るまでに、被包装体8の外形に沿って曲げられる。図1、図2では、一方端部22と他方端部28との間で、被包装体8を収容するように覆う部分を保持部24として示し、台紙12の下側の縁部における折り返しの部分を折り返し部26として示した。このように、粘着層30付フィルム20が、台紙12の表面側で一方端部22が接合され、台紙12の裏面側で他方端部28が接合されることで、その中間の保持部24で、被包装体8が台紙12とフィルム20との間にしっかりと保持される。
包装体10が完成して、台紙12の吊り下げ穴14を用いて包装体10が吊り下げられると、被包装体8の質量は、粘着層30付フィルム20の折り返し部26のところに掛けられることになる。その質量によって、粘着層30付フィルム20は、折り返し部26のところで重力方向に引っ張られる。その引っ張り力は、一方端部22における台紙12に対する接合強度と、他方端部28における接合強度で支えられる。
図2で、吊り下げ状態における被包装体8の自重によって、他方端部28に加わる引っ張り力をFSとして示した。FSは、他方端部28において、フィルム20を介した粘着層30と台紙12との間をせん断するように働く。台紙12とフィルム20の間を剥離するようには働かない。したがって、FSを他方端部28の粘着層30の面積で除した値が、粘着層30のせん断力未満であれば、他方端部28は、台紙12からせん断されて分離することはない。同様に、一方端部22においても、一方端部22に加えられる引っ張り力を一方端部22の粘着層30の面積で除した値が、粘着層30のせん断力未満であれば、一方端部22は台紙12からせん断されて分離することはない。
一般的には、粘着層30を介した2つのシートの間の接合強度、図1,2の場合では台紙12とフィルム20の間の接合強度は、せん断力強度の方が剥離強度よりも大きい。つまり、剥離力が働くと容易に接合が分離するが、せん断力が働いても接合はなかなか分離しない。図1,2の構造では、台紙12とフィルム20の間の接合部である一方端部22と他方端部28には、共にせん断力が働き、剥離力が働かない。したがって、剥離力が働く構造に比べ、格段に台紙12とフィルム20の間の接合強度が大きい。そこで、粘着層30のせん断力の仕様と、一方端部22と他方端部28の粘着層30の面積を適切に設定することで、包装体10は、被包装体8をしっかりと保持することができる。なお、後述するように、従来技術の包装体の構造(図10参照)では剥離力が働く。
上記では、フィルム20の幅を台紙12の幅よりも狭く、一様な幅として説明した。図4は、上記のフィルム20の展開図を台紙12の幅と比較して示す図である。フィルム20は、幅方向に直交する長手方向に沿って、一方端部22と、一方端部22と保持部24の間で被包装体8の外形に沿って折曲がる折曲がり部23と、保持部24と、折り返し部26と、他方端部28で構成される。
図5は、被包装体8の側面も覆うことができるフィルム60の展開図である。このフィルム60は、幅方向に直交する長手方向に沿って、一方端部62と、折曲がり部63と、保持部64と、折り返し部66と、他方端部68で構成されるが、保持部64のところで、他の箇所よりも幅が広くなっており、保持部64の左右両端が張り出した張出部70,72が形成されている。張出部70,72の保持部64からの張り出しの大きさは、被包装体8の高さとほぼ同じとされる。張出部70,72は、保持部64から被包装体8の側面に向かって曲げられる。張出部70,72にも粘着層30が設けられるので、張出部70,72によって、被包装体8の側面をしっかりと覆うことができる。これによって、張出部70,72を含む保持部64は、被包装体8の台紙12の側を除く周囲を覆うことができる。
張出部70,72の保持部64からの張り出し量は、被包装体8の側面を覆って、さらに、台紙12の裏面側に折り返すことができるものとしてもよい。これによって、被包装体8をさらにしっかり保持できる。
なお、張出部70,72に適当な舌状部を設け、これを用いて張出部70,72を台紙12等に貼り付け、被包装体8をしっかりと保持するようにできる。図6は、そのようなフィルム61の展開図である。
フィルム61の張出部70には、その3辺のそれぞれに舌状部73,74,75が設けられる。舌状部73は、台紙12に貼り付けられ、舌状部74は折曲がり部63に貼り付けられ、舌状部75は折り返し部66に貼り付けられる。同様に、張出部72には、その3辺のそれぞれに舌状部76,77,78が設けられる。舌状部76は、台紙12に貼り付けられ、舌状部77は折曲がり部63に貼り付けられ、舌状部78は折り返し部66に貼り付けられる。
台紙12との間の接合強度を大きくし、さらに、フィルムの一方端部あるいは他方端部に対して剥離する方向に力がかかったときにも剥離しにくくするには、保持部からフィルムの一方端部あるいは他方端部に向かう途中に、一方端部あるいは他方端部の幅寸法よりも狭い幅の領域を設けることがよい。このようにすることで、保持部からの剥離を狭い幅の領域で一旦食い止めることができ、一方端部または他方端部における接着強度を十分に確保できる。
そのような構造で最も簡単な例は、一方端部及び他方端部の幅を保持部の幅よりも大きくするものである。図7は、台紙12との間の接合強度を大きくし、さらに、フィルムの一方端部あるいは他方端部に対して剥離する方向に力がかかったときにも剥離しにくくすることができるフィルム80の展開図である。このフィルム80は、長手方向に沿って、一方端部82と、折曲がり部83と、保持部84と、折り返し部86と、他方端部88で構成されるが、一方端部82の幅W1と、他方端部88の幅W2は、保持部84の幅W0よりも広く設定される。折曲がり部83の幅と、折り返し部86の幅を、保持部84の幅W0よりも狭く設定してもよい。
台紙12とフィルム80との間の接合強度は、粘着層30のせん断力の仕様と、一方端部82の粘着層30の面積、他方端部88の粘着層30の面積で定まる。したがって、図4の形状のフィルム20に比して、フィルム80の方が、台紙12に対する接合強度を大きくできる。なお、この場合、台紙12の幅は、W1,W2のいずれよりも広く設定される。
図8は、図7の変形例のフィルム90の展開図である。このフィルム90は、長手方向に沿って、一方端部92と、折曲がり部93と、保持部94と、折り返し部96と、他方端部98で構成されるが、一方端部92の幅W1は、保持部94の幅W0よりも広く設定される。他方端部98の幅は、保持部94の幅と同じW0である。ここで、一方端部92の長手方向は、折曲がり部93のところまで延びている。そして、折曲がり部93の部分に相当する長さの切り込み溝100,102が設けられる。切り込み溝100,102は、保持部94の幅W0の間隔を隔てて、保持部94の側から一方端部92の側に延びる。切り込み溝100,102の先端部は、適当な半径で円弧状部104,106に曲げられる。
切り込み溝100,102は、一方端部92の粘着層30の面積を大きくしながら、フィルム90を被包装体8の外形に沿って折り曲げるときに折曲がり部93が形成しやすいように設けられる。円弧状部104,106は、剥離する方向の力が加わったときに切り込み溝100,102の先端部が裂けることを抑制するために設けられる。円弧状以外の形状、例えば、切り込み溝100,102の延伸する方向と垂直方向に曲がった形状であってもよい。
なお、一方端部92の長手方向が延びる長さは、必ずしも折曲がり部93の長さと一致しなくてもよい。折曲がり部93を超えて保持部94のところまで延びてもよく、折曲がり部93の途中のところまで延びるものとしてもよい。
上記のフィルム60,61,80,90の形状は、フィルム20の改良版であるが、これらの特徴を単独で用いる他に、これらの特徴を組み合わせて用いてもよい。例えば、図8の形状に、図5の張出部70,72を付加してもよい。図7の形状に図8の切り込み溝100,102を設けてもよい。このように、フィルムの形状は、台紙12との接合面積を大きくするように、また被包装体8を十分に覆って保持するように、工夫することができる。
図9は、単一の物品で被包装体108が構成されるときの包装体110の構成を示す正面図と側面図である。ここでは、被包装体108として、単一のスティックが示されている。スティックは、リップクリームである。ここでも、粘着層30付フィルム20は、台紙12の表面側に接合される一方端部22と、保持部24と、台紙12の下側の縁部で折り返される折り返し部26と、台紙12の裏面側に接合される他方端部28を含んで構成される。図9に示されるように、台紙12は、被包装体108の配置位置を越えて、さらに下側に延びている。このようなときには、粘着層30付フィルム20は、被包装体8よりもさらに台紙12の下端側となる表面側でしっかりと押付けられて接合される。なお、複数部品、複数部品をシュリンクフィルムで一体化した図1の場合でも同様の構成とすることができるが、台紙下端と被包装体の下端とが上下方向において略同じ位置となる図1の構成の方が、台紙12の下部の表面にフィルム20が貼り付けられない分、剥離等に対して、より好ましい。
図10は、比較のために、従来技術の包装体120の構成を示す側面図である。ここでは、被包装体8は、図1の場合と同様の4個の電池である。粘着層140を備えるフィルム130は、台紙12の表面側に接合される一方端部132と、保持部134を有するが、折り返し部を有さず、他方端部136は、台紙12の表面側に接合される。
包装体120が完成して、台紙12の吊り下げ穴14を用いて包装体120が吊り下げられると、被包装体8の質量は、粘着層30付フィルム20の他方端部136のところに掛けられることになる。その質量によって、粘着層140を備えるフィルム130は、他方端部136のところで、せん断力よりはむしろ剥離力FHを受ける。粘着層を介する2つのシートの間の剥離強度は、せん断強度よりも小さいので、この剥離力FHによって、粘着層140を備えるフィルム130は、他方端部136が台紙12から剥離することが生じ得る。これに対し、図1,2の構成においては、一方端部22も他方端部28も、共にせん断力を受けるが、剥離力を受けない。したがって、一方端部22も他方端部28も台紙12から剥離することがない。この点が大きく相違する。