本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
図1は、本発明のワイヤレス電力伝送装置S1の好適な一実施形態を負荷RLとともに示す回路構成図である。ワイヤレス電力伝送装置S1は、図1に示されるように、ワイヤレス受電装置100と、ワイヤレス給電装置200と、を有する。
ワイヤレス給電装置200は、電源装置20と、給電コイルユニット210を有する。電源装置20は、給電コイルユニット210に交流電力を供給する。電源装置20としては、交流電力を出力する回路構成であれば特に制限されず、スイッチングコンバータやスイッチングインバータ等のスイッチング電源装置が挙げられる。
給電コイルユニット210は、給電コイルL1と、給電側共振コンデンサC1を有する。給電コイルL1は、複数の細い導体素線を撚りあわされたリッツ線又は単線を用いて形成されている。給電コイルL1としては、平面コイルやソレノイドコイル等が挙げられる。給電コイルL1は、給電側共振コンデンサC1とともに給電側LC共振回路を形成している。
ワイヤレス受電装置100は、受電コイルユニット110と、整流回路10と、遮断素子SWと、クランプ回路11と、電圧検出手段12と、異常検出手段13と、制御回路14を有する。給電コイルユニット210と受電コイルユニット110は磁気的に結合しており、電源装置20により給電コイルユニット210に交流電力が印加され、近接電磁界効果によって受電コイルユニット110に誘導起電力が励起される。すなわち、給電コイルL1から受電コイルL2にワイヤレスにて交流電力が送電される。
受電コイルユニット110は、受電コイルL2と、受電側共振コンデンサC2を有する。受電コイルL2は、給電コイルL1からの電力をワイヤレスにて受電可能に構成され、複数の細い導体素線を撚りあわされたリッツ線又は単線を用いて形成されている。受電コイルL2としては、平面コイルやソレノイドコイル等が挙げられる。受電コイルL2は、受電側共振コンデンサC2とともに受電側LC共振回路を形成している。
整流回路10は、受電コイルL2が受電した電力を整流して負荷RLに出力する。整流回路10としては、例えば、半波整流回路や全波整流回路が挙げられる。本実施形態においては、整流回路10は、4つのダイオード(整流素子)D1〜D4がフルブリッジ接続されたブリッジ型回路と、このブリッジ型回路に並列に接続された平滑コンデンサC3から構成されている。平滑コンデンサC3は、整流された電圧を平滑して直流電圧を生成する。
遮断素子SWは、整流回路10と負荷RLとの間に配設されている。具体的には、遮断素子SWの制御端子(図示しない)には制御回路14(後述する)から制御信号SLが供給され、遮断素子SWの一端(入力端子)が平滑コンデンサC3の一端に、他端が負荷RLに接続されている。遮断素子SWは、ワイヤレス受電装置100が負荷RLに出力する電力を遮断する機能を有するものであれば特に制限されず、例えば、リレースイッチやFETスイッチ等が挙げられる。
クランプ回路11は、遮断素子SWの入力端子に接続されている。クランプ回路11は、直列接続された抵抗RCとスイッチング素子Q1を有する。スイッチング素子Q1は、FET(Field Effect Transistor)から構成されている。具体的には、スイッチング素子Q1のゲートには制御回路14(後述する)から制御信号SQ1が供給され、ドレインが抵抗RCの一端に、ソースが負荷RLの一端に接続されている。抵抗RCの他端は、遮断素子SWの入力端子に接続される。
抵抗RCは、負荷RLの抵抗値よりも高い抵抗値を有すると好ましい。この場合、抵抗RCが整流回路10の出力両端に接続された際に、整流回路10に入力される電力が下がり、確実に整流回路10の保護を行うことができる。
電圧検出手段12は、抵抗RCとスイッチング素子Q1との間の電圧値を検出する。この電圧検出手段12により検出される電圧値VCを読み取ることで、電力が整流回路10から負荷RLへ供給されていることを確認できる。また、電圧検出手段12は、予め設定された基準電圧値と検出した電圧値VCと比較して、検出した電圧値VCが基準電圧値を下回ると、出力信号SVを制御回路14(後述する)に送信する。電圧検出手段12としては、分圧回路や電圧検出トランス等が挙げられる。
異常検出手段13は、ワイヤレス受電装置100の異常を検出して異常状態を示す信号SEを制御回路14(後述する)に送信する。過電流を検出する場合、異常検出手段13は、カレントトランスや電流センサ等から構成され、整流回路10と負荷RLとの間に接続される。そして、異常検出手段13は、負荷RLに流れる電流値を検出して、予め設定された基準電流値と比較して基準電流値を超えた場合に異常状態を示す信号SEを制御回路14に送信する。過電圧を検出する場合、異常検出手段13は、分圧回路や電圧検出トランス等から構成され、整流回路10と負荷RLとの間に接続される。そして、異常検出手段13は、負荷RLに印加される電圧値を検出して、予め設定された基準電圧値と比較して基準電圧値を超えた場合に異常状態を示す信号SEを制御回路14に送信する。過温度を検出する場合、異常検出手段13は、サーミスタ等から構成され、整流回路10に接続される。そして、異常検出手段13は、整流回路10のダイオードD1〜D4の温度を検出して、予め設定された基準温度と比較して基準温度を超えた場合に異常状態を示す信号SEを制御回路14に送信する。なお、異常検出手段13は、これら過電流、過電圧、過温度を検出する検出手段を全て備えていてもよく、いずれかの検出手段のみ備えていてもよい。
制御回路14は、遮断素子SWとスイッチング素子Q1の動作を制御する。すなわち、制御回路14は、遮断素子SWの導通・非導通状態を制御するとともに、スイッチング素子Q1の導通・非導通状態を制御する機能を有する。より具体的には、制御回路14は、異常検出手段13から送信された異常状態を示す信号SEを受信したとき、スイッチング素子Q1のゲートに制御信号SQ1を供給してスイッチング素子Q1を導通状態に制御する。また、電圧検出手段12が検出した電圧値VCが予め設定された基準電圧値を下回ったとき、遮断素子SWに制御信号SLを供給して遮断素子SWを非導通状態に制御して電力を遮断する。
次に、図2を参照して、本実施形態に係るワイヤレス電力伝送装置S1の具体的な動作について詳細に説明する。ここで、図2中の(A)は、異常検出手段が出力する異常状態を示す信号SEの電圧波形を表している。(B)は、制御信号SQ1の電圧波形を表している。(C)は、異常検出手段13が検出する電圧値VCを表している。(D)は、電圧検出手段12が出力する出力信号SVの電圧波形を表している。(E)は、制御信号SLの電圧波形を表している。なお、異常検出手段13としては、過電圧を検出する検出手段を用いている。
まず、異常検出手段13が検出する電圧値VCが正常の場合(タイミングt1までの期間)、制御回路14は、図2に示すように、制御回路14からスイッチング素子Q1へ供給する制御信号SQ1の電位をLowに制御する(図2(B))。すなわち、スイッチング素子Q1は非導通状態が維持される。このとき、制御回路14から遮断素子SWへ供給される制御信号SLの電位はHighに制御する(図2(E))。すなわち、遮断素子SWは導通状態が維持される。このように、遮断素子SWが導通状態となっているため、受電コイルL2が受電した交流電力は整流回路10によって直流電力に整流され負荷RLに供給される。
タイミングt2において、異常検出手段13がワイヤレス受電装置100の過電圧を検出すると、制御回路14に異常状態を示す信号SEが送信される(図2(A))。タイミングt3において、制御回路14は、この異常状態を示す信号SEを受信すると、スイッチング素子Q1へ供給される制御信号SLの電位をHighに制御する(図2(B))。すなわち、スイッチング素子Q1を導通状態に制御する。これにより、クランプ回路11が動作することとなり、抵抗RCによって電力が消費され、抵抗RCとスイッチング素子Q1との間の電圧値が下がる(図2(C))。ここで、電圧検出手段12によって抵抗RCとスイッチング素子Q1との間の電圧値VCが検出されており、この検出された電圧値VCと予め設定された基準電圧値を比較する動作が行われている。
タイミングt4において、電圧検出手段12によって検出された電圧値VCが基準電圧値を下回ると、出力信号SVが制御回路14に送信される(図2(D))。制御回路14は、この出力信号SVを受信すると、図2に示すように、制御回路14から遮断素子SWへ供給される制御信号SLの電位をLowに制御する(図2(E))。すなわち、遮断素子SWを非導通状態に制御する。これにより、負荷RLは、ワイヤレス受電装置100から切り離されることとなる。これら一連の制御を行うことによって大電力投入時に異常が発生しても整流回路10と負荷RLを保護することができる。
以上のように、本実施形態に係るワイヤレス電力伝送装置S1では、制御回路14が異常検出手段13から送信された異常状態を示す信号SEを受信したとき、スイッチング素子Q1を導通状態に制御し、電圧検出手段12が検出した電圧値VCが予め設定した基準電圧値を下回ったとき、遮断素子SWを非導通状態に制御して電力を遮断している。そのため、大電力投入時に異常が発生しても、無負荷状態とはならず、抵抗RCとスイッチング素子Q1間の電圧が十分に低下してから負荷RLへの電力を遮断することができる。したがって、大電力投入時に異常が発生した際の回路を構成する部品の破損が防止され、安全性を高めることができる。
ここで、図3、図4を参照して本実施形態の変形例に係るワイヤレス電力伝送装置S2、S3について説明する。図3は、本実施形態の変形例に係るワイヤレス電力伝送装置S2を負荷RLとともに示す回路構成図である。図4は、本実施形態の変形例に係るワイヤレス電力伝送装置S3を負荷RLとともに示す回路構成図である。
図3に示された変形例では、遮断素子SW1、SW2は、受電コイルL2と整流回路10との間に配設され、クランプ回路11は、遮断素子SW1、SW2の入力端子に接続されている。本変形例では、遮断素子SW1、SW2とクランプ回路11が受電コイルL2と整流回路10との間に配置されていることとなる。電圧検出手段12は、クランプ回路11の抵抗RCとスイッチング素子Q1との間の電圧値VCを検出する。
本変形例によれば、制御回路14が異常検出手段13から送信された異常状態を示す信号SEを受信したとき、スイッチング素子Q1を導通状態に制御し、電圧検出手段12が検出した電圧値VCが予め設定した基準電圧値を下回ったとき、遮断素子SW1、SW2を非導通状態に制御して電力を遮断している。そのため、大電力投入時に異常が発生しても、無負荷状態とはならず、抵抗RCとスイッチング素子Q1間の電圧が十分に低下してから負荷RLへの電力を遮断することができる。したがって、大電力投入時に異常が発生した際の回路を構成する部品の破損が防止され、安全性を高めることができる。
図4に示された変形例では、ワイヤレス給電装置200は、ワイヤレス給電装置200の動作を制御する制御回路21を備え、制御回路14は、さらにワイヤレス給電装置200の動作を制限する給電動作制限信号SSをワイヤレス給電装置200に送信する機能を有している。本変形例では、制御回路14は、遮断素子SWを非導通状態に制御した後、ワイヤレス給電装置200の制御回路21に無線通信を使用して給電動作制限信号SSを送信する。制御回路21は、この給電動作制限信号を受信すると、電源装置20の出力を停止させ、ワイヤレス給電装置200の給電動作を停止させる。
本変形例によれば、負荷RLへの電力を遮断してから給電動作を停止させているため、安全に給電動作を停止させることができる。
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
本実施形態においては、給電コイルL1が給電側共振コンデンサC1とともに給電側LC共振回路を構成し、受電コイルL2が受電側共振コンデンサC2とともに受電側LC共振回路を構成した、いわゆる磁場の共振現象を利用した構成を対象として説明したが、これに限られない。例えば、給電コイルL1と受電コイルL2とが磁場結合(誘導結合)する電磁誘導を利用した構成にも適用できる。