JP5998511B2 - ボールねじの製造方法 - Google Patents
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Description
そこで、本発明は上記のような従来技術が有する問題点を解決し、ボールねじをさらに低コストで製造することができるボールねじの製造方法を提供することを課題とする。
前記加工工具は前記凸部を複数個有し、1回の前記操作により複数の前記窪みを形成し、複数の前記窪みを形成する前記操作を複数回行うことにより、前記ねじ溝を形成してもよいし、あるいは、前記加工工具は前記凸部を1個有し、1回の前記操作により1個の前記窪みを形成し、1個の前記窪みを形成する前記操作を複数回行うことにより、前記ねじ溝を形成してもよい。
前記回転部材を円盤状部材とし、前記円盤状部材の周縁部を前記ナットの内周面に押圧してもよいし、あるいは、前記回転部材を球状部材とし、前記球状部材を前記ナットの内周面に押圧してもよい。
〔第一実施形態〕
図1は、本発明の一実施形態であるボールねじの断面図(軸方向に沿う平面で切断した断面図)である。
図1に示すように、ボールねじ1は、螺旋状のねじ溝3aを外周面に有するねじ軸3と、ねじ軸3のねじ溝3aに対向する螺旋状のねじ溝5aを内周面に有するナット5と、両ねじ溝3a,5aにより形成される螺旋状のボール転走路7内に転動自在に装填された複数のボール9と、ボール9をボール転走路7の終点から始点へ戻し循環させるボール循環路11と、を備えている。
なお、ねじ軸3,ナット5,及びボール9の材質は特に限定されるものではなく、一般的な材料を使用可能であり、例えば金属(鋼等),セラミック,樹脂があげられる。
このようなボールねじ1は、ボール9を介してねじ軸3に螺合されているナット5とねじ軸3とを相対回転運動させると、ボール9の転動を介してねじ軸3とナット5とが軸方向に相対移動するようになっている。そして、ボール転走路7とボール循環路11により無端状のボール通路が形成されており、ボール9がボール通路内を無限に循環するようになっているため、ねじ軸3とナット5とは継続的に相対移動することができる。
次に、ボール循環路11について、図1〜3を参照しながら詳細に説明する。ボール循環路11は、ナット5の内周面に一体的に形成されている。詳述すると、ナット5の円柱面状の内周面の一部を鍛造等の塑性加工により凹化させて形成した凹溝22を、ボール循環路11としている(軸方向に直交する平面で切断したナット5の部分断面図である図2を参照)。よって、チューブ式,コマ式等のボール循環形式の場合とは異なり、ボール循環路11を構成する別部材は取り付けられていない。
このような本実施形態のボールねじ1の用途は特に限定されるものではないが、自動車部品,位置決め装置,機械等に好適に使用可能である。
まず、図示しない円柱状の鋼製素材を冷間鍛造等の塑性加工により加工し、ナット5と略同一形状(略円筒形状)のブランク21を得た(粗成形工程)。このとき、塑性加工により、ブランク21の外周面にフランジも形成される。
凹溝22を形成する方法の具体例としては、以下のようなものがあげられる。すなわち、凹溝22に対応する形状の凸部を有する金型(図示せず)を、例えば円筒形状の受型(図示せず)の内部に収容されたブランク21内に挿入し、ブランク21の内周面に金型の凸部を接触させ、ブランク21の内周面に向かって金型を強く押圧することにより塑性加工(鍛造)して、凹溝22を形成することができる。
ねじ溝5aを形成する方法の具体例としては、以下のようなものがあげられる。すなわち、ねじ溝5aの形状に対応する線状形状でねじ溝5aよりも短い凸部31を有する金型30(本発明の構成要件である加工工具に相当する)をブランク21内に挿入し、ブランク21の内周面に金型30の凸部31を接触させ、ブランク21の内周面に向かって金型30を強く押圧することにより塑性加工(鍛造)する。すると、ブランク21の内周面に、凸部31の形状に対応する形状の窪み33が形成される。
また、凹溝22を形成した後にねじ溝5aを形成してもよいが、これとは逆に、ねじ溝5aを形成した後に凹溝22を形成してもよい。
さらに、窪み33を形成する金型30は、図4に示すように、カムドライバ(図示せず)と、凸部31を有するカムスライダ35と、を有するカム機構の金型でもよい。カムスライダ35は略棒状の部材であり、一端に凸部31を備え、他端に傾斜面37を備えている。そして、カムスライダ35は、その凸部31をブランク21の内周面に向けて配置されている。一方、カムドライバは、カムスライダ35の傾斜面37に対向する傾斜面を備えている。カムスライダ35とカムドライバは、ブランク21の略軸方向(ブランク21の軸方向から若干傾斜した方向)に延びる傾斜面で相互に接触しており、両傾斜面が金型30のカム機構を構成している。
このようにして製造されたボールねじ1は、前述したように、ナット5のねじ溝5a及びボール循環路11を構成する凹溝22がいずれも、ナット5の内周面の一部を塑性加工により凹化させて形成したものであるので、切削加工によりねじ溝5aを形成する従来のボールねじと比べて、生産性が高いことに加えて製造コストが低い。
さらに、上記のような塑性加工でねじ溝5aを形成すると、ねじ溝5aを形成した際に生じた余肉が移動して、径方向内方に突出する突起がねじ溝5aの周囲に生じる場合がある。すなわち、ナット5の内周面のうちねじ溝5aの両縁部に、ねじ溝5aに沿う線状の突起が生じる場合がある。この突起により、ボール9がねじ溝5aに保持されやすくなるため、ねじ軸3のねじ溝3aの深さを浅くすることが可能である。一方、ブランク21の外周面のうちねじ溝5aを形成する部分に対応する部分に、予め凹部を形成しておき、塑性加工でねじ溝5aを形成した際に生じた余肉が流れ込む逃げ部を設けておけば、上記突起は生じにくい。この場合には、ボールねじ1が低トルク化される、潤滑油を保持しやすくなるなどのメリットがある。
本発明に係るボールねじの製造方法の第二実施形態を、図6〜8を参照しながら説明する。図6は、第二実施形態の製造方法を説明する断面図(軸方向に沿う平面で切断した断面図)である。また、図7は、第二実施形態の製造方法の第一の溝加工工程を説明する図であり、図8は、第二実施形態の製造方法の第二の溝加工工程を説明する図である。
第二実施形態のボールねじの製造方法の構成、動作、及び作用効果等には、第一実施形態と同様の部分もあるので、同様の部分の説明は省略し、異なる部分のみ説明する。なお、図6〜8においては、図1〜5と同一又は相当する部分には、図1〜5と同一の符号を付してある。
まず、第一実施形態と同様にして製造したブランク21の内周面の一部を冷間鍛造等の塑性加工により凹化させて、ボール転走路7の終点と始点を連通するボール循環路11をなす例えば略S字状の凹溝22と、ねじ溝5aを形成するための複数の窪み33のうち一部とを形成した(第一の溝加工工程)。
この第二の溝加工工程において使用する金型30は、図8に示すように、ねじ溝5a(窪み33)を形成するための凸部31を4個有する。凸部31の形状は、ねじ溝5aの形状に対応する線状形状でねじ溝5aよりも短い。詳述すると、略円柱状の部材に、第一実施形態と同様のカムスライダが4個設けられており、各カムスライダが凸部31を有している。そして、これら4個のカムスライダは、それぞれ90°の位相差を有しつつ周方向に等配に配置されているとともに、軸方向位置がそれぞれ異なっている。
この4個の窪み33により、第一の溝加工工程において形成されていた凹溝22及び窪み33が全て線状に連続されて、ねじ溝5aとなる。すなわち、3個の窪み33を形成する操作(第一の溝加工工程)と4個の窪み33を形成する操作(第二の溝加工工程)とを続けて行うことによってねじ溝5aが形成され、図5と同様の完全に閉じた1つの回路が凹溝22とねじ溝5aとにより形成された。なお、第二の溝加工工程において使用する金型30に設けられる凸部31の個数が4個に限定されないことは勿論である。また、本実施形態においては、第一の溝加工工程及び第二の溝加工工程の2回の操作で全ての窪み33を形成したが、3回以上の操作で形成してもよい。
さらに、完全に閉じた1つの回路によって構成されるボール通路は、ブランク21の内周面に1個形成してもよいし、軸方向に複数個並べて形成してもよい。ボール通路を複数個形成する場合には、前述の第一の溝加工工程及び第二の溝加工工程を異なる軸方向位置でそれぞれ行えばよい。あるいは、図9に示すような金型30を用いれば、各ボール通路に対応する凸部31が異なる軸方向位置に設けられているので、加工を施す軸方向位置を変える作業を行うことなく、複数のボール通路を同時に形成することができる。図9には、一例として、ボール通路を軸方向に2個並べて形成する場合に使用する金型を示す。図9に示す金型30を用いる方法は、各ボール通路間のピッチが比較的大きいボールねじの製造に好適である。
本発明に係るボールねじの製造方法の第三実施形態を、図10を参照しながら説明する。第三実施形態のボールねじの製造方法の構成、動作、及び作用効果等には、第一実施形態と同様の部分もあるので、同様の部分の説明は省略し、異なる部分のみ説明する。なお、図10においては、図1〜5と同一又は相当する部分には、図1〜5と同一の符号を付してある。
第一及び第二実施形態においては、ねじ溝形成工程で使用する金型30は凸部31を有するものであったが、第三実施形態においては、金型30は円盤状のローラー45(本発明の構成要件である円盤状部材に相当する)を有している。
まず、第一実施形態と同様にして粗成形工程及びボール循環路形成工程を行い、凹溝22を有するブランク21を得た。次に、金型30を用いて、ブランク21の内周面の一部を冷間鍛造等の塑性加工により凹化させて、ボール循環路11(凹溝22)の両最端部と接続するように螺旋状のねじ溝5aを形成した(ねじ溝形成工程)。
この金型30は、ねじ又はボールねじを介して駆動装置39で駆動することにより、ブランク21の周方向に回転しつつブランク21の軸方向に移動することが可能となっている。駆動装置39としては、例えばサーボモータ、ロータリーアクチュエータ、回転式油圧シリンダがあげられる。よって、駆動装置39を駆動すれば、ねじ又はボールねじの機能により、金型30を周方向に回転移動させつつ、回転角に対応するリード量だけ軸方向に移動させることができる。よって、金型30を前記のように移動させつつローラー45を回転させて塑性変形を行えば、螺旋状のねじ溝5aを形成することができる。ただし、金型30は移動させず、ブランク21の方を移動させてもよい。
なお、凹溝22を形成した後にねじ溝5aを形成してもよいが、これとは逆に、ねじ溝5aを形成した後に凹溝22を形成してもよい。
本発明に係るボールねじの製造方法の第四実施形態を説明する。第四実施形態のボールねじの製造方法の構成、動作、及び作用効果等は、第三実施形態とほぼ同様であるので、同様の部分の説明は省略し、異なる部分のみ説明する。
第三実施形態においては、ねじ溝形成工程で使用する金型30はローラー45を有するものであったが、第四実施形態においては、金型30はボール(本発明の構成要件である球状部材に相当する)を有している。
まず、第一実施形態と同様にして粗成形工程及びボール循環路形成工程を行い、凹溝22を有するブランク21を得た。次に、図示しないボールを有する金型30を用いてブランク21の内周面の一部を冷間鍛造等の塑性加工により凹化させて、ボール循環路11(凹溝22)の両最端部と接続するように螺旋状のねじ溝5aを形成した(ねじ溝形成工程)。
なお、凹溝22を形成した後にねじ溝5aを形成してもよいが、これとは逆に、ねじ溝5aを形成した後に凹溝22を形成してもよい。
3 ねじ軸
3a ねじ溝
5 ナット
5a ねじ溝
7 ボール転走路
9 ボール
11 ボール循環路
21 ブランク
22 凹溝
30 金型
31 凸部
33 窪み
41 凸部
45 ローラー
Claims (3)
- 螺旋状のねじ溝を外周面に有するねじ軸と、前記ねじ軸のねじ溝に対向するねじ溝を内周面に有するナットと、前記両ねじ溝により形成される螺旋状のボール転走路に転動自在に装填された複数のボールと、前記ボールを前記ボール転走路の終点から始点へ戻し循環させるボール循環路と、を備え、前記ナットの内周面に形成された凹溝により前記ボール循環路が構成されているボールねじを製造する方法であって、前記ナットの内周面の一部を塑性加工により凹化させて前記ねじ溝及び前記凹溝を形成し、
加工工具が有する凸部を前記ナットの内周面に押圧することにより塑性加工して前記ナットの内周面に窪みを形成する操作を複数回行い、前記操作を複数回行うことにより形成される複数の前記窪みを線状に連続させて前記ねじ溝を形成することを特徴とするボールねじの製造方法。 - 前記加工工具は前記凸部を複数個有し、1回の前記操作により複数の前記窪みを形成し、複数の前記窪みを形成する前記操作を複数回行うことにより、前記ねじ溝を形成することを特徴とする請求項1に記載のボールねじの製造方法。
- 前記加工工具は前記凸部を1個有し、1回の前記操作により1個の前記窪みを形成し、1個の前記窪みを形成する前記操作を複数回行うことにより、前記ねじ溝を形成することを特徴とする請求項1に記載のボールねじの製造方法。
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