JP5994210B2 - ボールねじのナットの製造方法 - Google Patents
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Description
このようなボールねじのナットの表面を、侵炭焼入れによって硬化させる場合、熱処理に伴う歪みの増大に伴って、前記ナットの転動溝の研削仕上げを行う際の加工取り代が大きくなり、結果として加工能率が低くなる問題があった。
特許文献1には、ナット全体を所定温度まで外径側から低周波コイルで加熱した後に、ナット内径側に配置された高周波コイルでナット内径を加熱して、転動溝に沿う均一な硬化層を形成することが開示されている。
そこで、本発明は上記の問題点に着目してなされたものであり、その目的は、表面硬化のための熱処理による熱変形を最小限に保ち、コストや手間をさらに低減したボールねじのナットの製造方法、及びその製造方法によって製造されるボールねじのナットを提供することにある。
また、前記貫通孔が前記ナットに形成されていないので、前記ナットの冷却時にも前記
ナットを均一に冷却することもでき、結果として、前記ナットの熱変形を最小限に抑えることができる。
上記課題を解決するための本発明の請求項2に係るボールねじのナットの製造方法は、請求項1に記載のボールねじのナットの製造方法において、前記コイルが前記転動溝に沿った形状であることを特徴としている。
図1に示すように、本実施形態に使用する金型50は、ナット素材10を保持する凹部21を有する素材ホルダ20と、ナット素材10の内部に配置するカムスライダ30及びカムドライバ40とを備えている。
カムスライダ30は、図2(a)及び(b)に示すように、外周面31と軸方向に平行な平面32を有する略半円柱状部材であって、外周面31をなす円の径は、ナット素材10の内周面11をなす円11aの径より僅かに小さい。カムスライダ30の平面32には、径方向の中央部に、軸方向に延びる斜面33が形成されている。この斜面33は、軸方向一端(上端)の凹部34の底面ライン34aと、平面32の下端をなすライン32dを結ぶ平面に相当する。また、ボール戻し経路をなすS字状凹部15に対応するS字状凸部35が、カムスライダ30の外周面31に形成されている。
カムドライバ40は、図2(c)に示すように、長尺な板状部材であって、一方の側面41がカムスライダ30の斜面33と同じ傾斜の斜面になっている。他方の側面42は、ナット素材10の内周面11をなす円11aに沿った円周面となっている。カムドライバ40の軸方向寸法は、カムスライダ30の軸方向寸法より長い。また、カムドライバ40の厚さは、カムスライダ30の凹部34の開口幅(斜面33の両側面間の寸法)に相当する厚さより僅かに薄い。
カムスライダ30の斜面31とカムドライバ40の傾斜した側面41が、金型50のカム機構を構成する。
本発明に係るボールねじのナットの製造方法は、ナット素材10の内周面11に循環溝を形成する循環溝形成工程と、形成された循環溝の位置に基づいて内周面11に転動溝を形成する転動溝形成工程とを含む。
[ナット素材の材料]
ここで、ナット素材10の材料としては、S53C、又はSAE4150であることが好ましい。
[循環溝形成工程]
金型50を用い、以下の方法で、ナット素材10の内周面11にボール戻し経路(循環溝)をなすS字状凹部15を形成する。
接触させる。図1(a)はこの状態を示す。
よって、この実施形態の方法によれば、軸方向寸法が長く内径が小さいナットを製造する場合でも、カムドライバ4に破損を生じさせずにS字状凹部15を形成することができる。
次に、循環溝15が形成されたナット素材10の内周面11に、転動溝16を形成する。図3は、本発明に係るボールねじのナットの製造方法の一実施形態を説明する図であり、(a)は、ナット素材の切削加工の状態を示す斜視図であり、(b)は、(a)に示すナット素材と切削工具を矢印VB方向に見た図である。また、図4は、本発明に係るボールねじのナットの製造方法の一実施形態を説明する図であり、(a)は、ナット素材の切削加工後における軸線方向断面図であり、(b)は、ナット素材の切削加工後における斜視図である。
次に、ナット素材10に対して焼入れ処理を行う。この焼入れ処理では、図5に示すよ
うに、まず、コイル50の軸とナット素材10の軸とが同軸になるように、ナット素材10の内周面11にコイル50を挿入する。そして、コイル50に高周波電流(交流)を流し、ナット素材10の内周面11を加熱する。このとき、ナット素材10の外周面12も同時に冷却処理する。この冷却処理は、例えば、内周面用、外周面用の冷却水ノズルから同時に冷却水を噴射したり、加熱されたナット素材10を冷却液中に浸漬させたりして行われ、図4及び図5に示すような、外周面を冷却するための冷却水(冷却液)が内周面に接触しないようにする治具などが用いられる。また、コイル50の形状は、転動溝16に沿うように形成され、配置されることが好ましい。このように、ナット素材10には、その内周面11と外周面12とを貫通する貫通孔が形成されていないので、ナット素材10の内周面11が均一に加熱される。
また、前記貫通孔がナット素材10に形成されていないので、前記ナットの冷却時にも前記ナットを均一に冷却することもでき、結果として、前記ナットの熱変形を最小限に抑えることができる。
また、特許文献1の加熱方法をコマ式のボールねじに適用した場合、内周面に有効硬化層を形成した後、コマ孔を形成する必要があるが、本実施形態では、ナット素材に貫通孔が形成されず、転動溝及び循環溝が内周面に形成されているので、ナット素材10の加熱及び冷却に手間がかからない。したがって、加熱プロセスから冷却プロセスへの迅速な移行が可能となり、結果として、焼入れ深さをコントロールしやすくなり、前記ナットの各部の硬さを最適な値にすることができる。
以上のようにして製造されたボールねじのナット1は、内周面11に転動溝16及び循環溝15が形成されている。
そして、このナット1の内周面11の表面硬さは、HRC58〜62であり、有効硬化層の硬さがHv550以上であり、有効硬化層の深さが0.4mm以上であり、芯部の硬さがHRC40以下である。
ここで、前記「有効硬化層」とは、限界硬さ(Hv550)までの層を指し、前記「芯部」とは、肉厚中心を指す。
本発明に係るボールねじのナットの製造方法の他の実施形態として、ナット素材10の内周面11を冷却した状態で、ナット素材10の外周面12を高周波熱処理によって硬化させて有効硬化層を形成してもよい。例えば、ナット1の外周面12に、フランジ部や、ナット1を回転させるためのギア部に有効硬化層を形成したい場合、これらフランジ部やギア部に対してコイル50を配置し、コイル50に高周波電流(交流)を流して有効硬化層を形成する。これにより、ナット素材10の内周面11と外周面12とを貫通する貫通孔がナット素材10に形成されていないので、ナット素材10の内周面11と外周面12とを別個独立に焼入れできる。
10 ナット素材
11 内周面
12 外周面
15 循環溝(S字状凹部)
16 転動溝
Claims (2)
- 内周面に転動溝が形成されたナットと、外周面に転動溝が形成されたねじ軸と、ナットの転動溝とねじ軸の転動溝とで形成される軌道の間に配置されたボールと、前記ボールを前記軌道の終点から始点に戻す一以上の循環溝とを有するボールねじのナットの製造方法であって、
ナット素材の前記循環溝に対応する部分を貫通させることなく、その内周面に、前記循環溝に対応するS字凹部を形成し、
前記循環溝の形成位置に基づいて前記ナット素材の内周面に前記転動溝を形成し、
コイルの軸と前記ナット素材の軸とが同軸になるように前記ナット素材の内周面に前記コイルを挿入し、そのコイルに高周波電流を流して前記内周面を加熱すると共に、冷却水の入口と出口とが前記ナット素材の軸方向に関して互いに離間し、かつ前記ナット素材の中心に対して点対称に配置された治具と前記ナット素材の外周面との間に冷却水を通して前記ナット素材の外周面を直接冷却処理した後、前記ナットの前記内周面及び前記外周面を冷却することを特徴とするボールねじのナットの製造方法。 - 前記コイルが前記転動溝に沿った形状であることを特徴とする請求項1に記載のボールねじのナットの製造方法。
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