JP6100964B1 - ナット部材の加工方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 従来構造のボールねじと比べて製造が容易であり、条数の多いねじにも容易に対応できる手段を提供する。【解決手段】 ボール軌道の溝が外周面に形成されたボールねじ軸を挿通する穴を有するボールねじ用ナット部材であって、転動用のボールを受けるボール受け凹部が穴の内周に複数形成され、ボール受け凹部は、穴に挿通されるボールねじ軸のボール軌道に対応して穴の内周に離散的に配置されている。【選択図】 図3

Description

本発明は、ボールねじ用のナット部材の加工方法に関する。
従来から、直線運動と回転運動とを変換するための機械要素の1つとしてボールねじが公知である。ボールねじの構成の一例として、螺旋状のボール軌道の溝が外周面に形成されたボールねじ軸の外側に、螺旋状のボール軌道の溝が内周面に形成されたナットがはめられ、ボールねじ軸およびナットのボール軌道により形成されたボール通路に複数のボールが配設されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
上記のボールねじでは、ボール通路内のボールが外にこぼれ落ちることを抑止するために、ナットのボール軌道の両端をネジ呼び径近傍まで塞いだ構成も知られている。かかる構成の場合、ボールねじの回転によりボール通路内でボールが一方向に偏在し、ボール同士の接触抵抗でボールねじの回転が阻害されるおそれがある。
また、近年では、ボール同士の接触抵抗を低減させるために、ナットのボール軌道の両端をバイパス通路で連結し、ボールを循環させるボールねじも知られている。
特開2011−112128号公報
ボールねじのナットの内周面に連続的なボール軌道の溝を(塑性的に)加工するときには、ボール軌道の溝を成形する際に排出される金属素材の体積に比例して工具に高い荷重がかかる。そのため、ナットのネジ呼び径、リード、ピッチや、ボール軌道の径等の条件によっては、ボールねじ用のナットの製造が非常に困難となる場合も生じうる。
また、ボールねじ用のナットにおいてボール軌道のバイパス通路を形成する場合には、バイパス通路の分だけさらに加工が煩雑となる。特に、複数条のボールねじにおいてバイパス通路を形成する場合、各条でそれぞれバイパス通路を設ける必要があるため加工がさらに困難となる。一般的に、バイパス通路を設けた複数条のボールねじで3条以上の多条ねじを実現することは極めて困難である。
本発明の目的は、従来構造のボールねじと比べて製造が容易であり、条数の多いねじにも容易に対応できる手段を提供することである。
本発明の一の態様は、ボール軌道の溝が外周面に形成されたボールねじ軸を挿通する穴を有するボールねじ用ナット部材であって、転動用のボールを受けるボール受け凹部が穴の内周に複数形成され、ボール受け凹部は、穴に挿通されるボールねじ軸のボール軌道に対応して穴の内周に離散的に配置されている。
一の態様において、ボール受け凹部は、押込み加工により形成され、ボール受け凹部の周囲には、穴の非加工部分よりも隆起した隆起部が形成されてもよい。
一の態様において、ボール受け凹部は、ボールを複数の点接触で支持し、ボール受け凹部の断面は、ボール受け凹部の表面とボールとの間に空隙を有する形状に形成されてもよい。
本発明の他の態様のボールねじは、一の態様のナット部材と、ボールねじ軸と、複数のボールを備える。ボールねじ軸は、ボール軌道の溝が外周面に形成され、ナット部材の穴に挿通される。複数のボールは、ナット部材のボール受け凹部にそれぞれ配置され、ボールねじ軸のボール軌道の溝と係合転動する。
本発明のさらに他の態様のナット部材の加工方法は、穴を有する被加工部材を固定し、被加工部材の穴の内部に、ボール受け凹部に対応する形状の凸部を外周面に配列した工具を配置し、被加工部材に対して工具の軸方向位置を維持しつつ、工具の軸を中心とした回転は行わずに穴の内周に沿って工具を移動させることで凸部を穴の内周に徐々に押し当て、穴の内周面にボール受け凹部の形状を転写する。
本発明の各態様によれば、従来構造のボールねじと比べて製造が容易であり、条数の多いねじにも容易に対応できるボールねじを提供できる。
本実施形態にかかるボールねじの側面図 本実施形態にかかるボールねじの正面図 ナット部材の断面斜視図 ボール受け凹部の断面の例を示す断面拡大図 ボール受け凹部の形状例を示す図 ボール受け凹部の隆起部を示す図 本実施形態にかかるナット部材の加工方法の工具を示す図 本実施形態にかかるナット部材の加工例を示す図
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態にかかるボールねじの側面図であり、図2は、本実施形態にかかるボールねじの正面図である。図1、図2に示すボールねじ10は、棒状のボールねじ軸20と、ナット部材30と、転動用の複数のボール(鋼球)40とを有する。ボールねじ軸20およびナット部材30は、例えばベアリング鋼、ステンレス鋼などの鋼材で構成される。
ボールねじ軸20の外周面には、螺旋状のボール軌道の溝22が形成されている。ボールねじ軸20におけるボール軌道の溝幅はボール40の直径とほぼ同一であり、ボールねじ軸20の軸方向における溝22の断面形状はボール40とほぼ同じサイズの半円形状である。そのため、ボールねじ10の組み立て状態ではボール軌道の溝22の内部でボール40が転動可能となっている。また、本実施形態では、ボールねじ軸20にボール軌道の溝22が2つ形成された2条のボールねじ10の例を示す。しかし、本発明におけるボールねじ10の条数は、図面の例に限定されずに2条以外であってもよい。
ナット部材30は、ボールねじ10の組み立て状態においてボールねじ軸20に挿通され、ボールねじ軸20の回転によりボールねじ軸20の軸方向に直進運動する移動体である。ナット部材30は、ボールねじ軸20を挿通する穴32を有し、穴32の内周には、ボール40を受けるためのボール受け凹部34が複数形成されている。ボールねじ10の組み立て状態において、各々のボール受け凹部34にはボール40が1つずつ回動可能に配置される。
図3は、ナット部材30の断面斜視図である。ナット部材30の穴32に形成されるボール受け凹部34はいずれも同じ形状である。各々のボール受け凹部34は、ボールねじ軸20のボール軌道に対応するように、ボール軌道に沿って一定間隔をおいて穴32の内周に離散的に配置されている。図3では、ボールねじ軸20側の2条のボール軌道のうち、一方のボール軌道に対応する仮想的な経路中心線αを一点鎖線で示し、他方のボール軌道に対応する仮想的な経路中心線βを二点鎖線で示している。
また、本実施形態では、ナット部材30にボール受け凹部34が90°間隔で配置されている。なお、本実施形態の例では、異なる2条のボール軌道の間で、ボール受け凹部34の周方向の位相を45°ずらして配置している。
これにより、ボールねじ10の組み立て状態において、ボール受け凹部34に配置されたボール40はいずれもボールねじ軸20の溝22と係合する。そして、ボールねじ軸20が回転するときには、ボール受け凹部34のボール40が回動してボールねじ軸20の溝22と転動することで、ボールねじ軸20に対してナット部材30が軸方向に案内される。
ここで、ボールねじ10の組み立て状態では、ナット部材30側においてボール軌道上にボール40を精度よく拘束することが求められる。そのため、ボール40とボール受け凹部34との係合を重視し、経路中心線に対して直交するボール受け凹部34の幅方向長さ(w)はボール40の直径とほぼ同一の幅に設定される。また、経路中心線に対して直交するボール受け凹部34の幅方向断面は、ボール40とほぼ同じサイズの半円形を包含する形状に設定される。例えば、ボール受け凹部34の幅方向の断面形状は、図4(a)に示すようにボール40とほぼ同じサイズの半円形そのものであってもよい。または、ボール受け凹部34の幅方向の断面形状は、図4(b)に示すように上記の半円形状の空間に加えて潤滑剤のポケットまたは転動抵抗を削減する空間となる凸部35をさらに設けた形状であってもよい。
図4に示すように、ボール受け凹部34のサイズは、内側にボール40を収納するためにボール40よりもわずかに大きく設定されるため、ボール受け凹部34の曲面形状とボール40の曲面形状の間にはギャップが生じる。そのため、ボール受け凹部34にボール40を配置したときには、ボール受け凹部34の幅方向断面において、ボール40はボール受け凹部34の二点以上で点接触あるいは線接触により支持される。なお、図4では点接触でボール40が支持されるポイントをそれぞれ矢印で示している。そして、図4(a)に示すように、ボール受け凹部34の幅方向断面において、ボール受け凹部34の底面部分とボール40との間には、潤滑剤が回り込む微小な空隙が形成される。
一方、ボールねじ10の組み立て状態では、ボール軌道に沿った方向でさえあればボール受け凹部34でのボール40の移動は許容しうる。そのため、ボール受け凹部34の経路中心線方向の長さは、ボール40を1つ分収容できるサイズよりも長くしてもよい。
図5は、ボール受け凹部34の形状例を示す図である。図5(a)は、経路中心線方向の長さを幅方向長さと等しくした円形状のボール受け凹部34(ディンプル)の例を示す。図5(b)は、経路中心線方向の長さが幅方向長さよりも長い矩形状のボール受け凹部34aの例を示す。図5(c)は、経路中心線方向の長さが幅方向長さよりも長い菱形状のボール受け凹部34bの例を示す。図5(d)は、図5(c)の変形例であって、経路中心線方向の断面が矩形に形成されている例を示している。なお、ボール受け凹部34の形状は上記に限定されるものではなく、例えば、ボール受け凹部34を経路中心線方向に沿って延長する小判形状としてもよい。
また、ボール受け凹部34は、ナット部材30の穴32の内周面を工具で押圧して所望の形状に加工する押込み加工で形成される(加工方法の詳細については後述する)。そのため、図6に示すように、加工前にボール受け凹部34の位置にあった材料37は加工時に周囲に押しのけられることで、ボール受け凹部34の周囲には、穴32の非加工部分より隆起した隆起部36が形成される。
ここで、金属加工の成形時において工具にかかる荷重は、加工により元の位置から排除される金属素材の体積に比例して大きくなる。特に、従来構造のボールねじのナットのように、所定方向に延長する溝を連続的に加工する場合、溝の幅方向の形状は成形完了ともに拘束され、元の位置から排除される金属素材は工具の進行方向に逃げていくこととなる。そのため、所定方向に延長する溝を連続的に加工する場合には、工具の進行方向に排除された金属材料を逐次押し出し続ける必要があり、工具にかかる荷重はより大きなものとなる。
これに対し、本実施形態では、ナット部材30のボール受け凹部34は穴32の内周に離散的に形成されている。そのため、従来構造のボールねじのナットのように、連続的に溝を加工し続ける場合と比べて、加工時に工具が排除する金属材料の体積は少なくなるので、全体として工具への荷重は小さくなる。また、個々のボール受け凹部34の加工では、ボール受け凹部34の周囲に金属材料を押し出した段階で成形が完了し、排除された金属材料を逐次押し出し続ける必要はない。この点からも、本実施形態によれば、従来構造のボールねじのナットの加工に比べて工具への荷重は小さくなり、製造が容易となることが分かる。
次に、本実施形態のナット部材30の加工方法について説明する。
本実施形態のナット部材30の加工方法では、固定された被加工部材60の穴62の内側で、工具50を自転させずに同一水平面上で公転させることで、工具50の形状を被加工部材60に転写して、ナット部材30を製造する。なお、本実施形態の加工方法で使用する加工装置には、特許第5666041号に開示されているR−θテーブル装置を適用できる。
最初に、ナット部材30を加工する工具を説明する。図7に示すように、本実施形態の加工方法で使用される工具50は、ボール受け凹部34に対応する形状の凸部52が外周面に配列されている。工具50における複数の凸部52の配置は、それぞれボール受け凹部34の配置に対応している。また、被加工部材60の穴62に挿入できるように、凸部52も含めた工具50の外径は被加工部材60の穴62の内径よりも小さく設定されている。
次に、被加工部材60であるリングを固定する。そして、上記の工具50をリング60の穴62に挿通し、工具50を不図示の加工装置(R−θテーブル装置)に取り付ける。その後、加工装置を駆動させて、リング60の穴62にボール受け凹部34を加工する。
加工装置は、固定されたリング60に対して工具50の軸方向位置(z軸方向の位置)を維持しつつ、工具50の軸を中心とした回転は行わずに、穴62の内周に沿って同一平面(xy平面)上で工具50を移動させる。また、加工装置は、xy平面上でらせん状のスクロール軌跡を描いて広がっていくように工具50を移動させる。つまり、図8に示すように、工具50の軌道が1回転するごとに徐々に工具50の軌道が外側に移動するため、工具50の凸部52が穴62の内周に徐々に押し当てられて、穴62の内周面にボール受け凹部34の形状が転写される。このとき、ボール受け凹部34の加工が進むにつれて工具への荷重が大きくなることを考慮し、工具50の軌跡は、xy平面上でらせんの間隔が徐々に狭まるような軌跡としてもよい。以上の工程により被加工部材60に対して、一度の加工で複数のボール受け凹部34を所定の位置に形成することができる。
なお、本実施形態のナット部材30の加工方法は上記の例に限定されるものではない。例えば、ボール受け凹部34に対応した凸部形状の工具を、リング60内のボール受け凹部34の位置に個別に押し当てて、1つずつボール受け凹部34を加工してもよい。
以下、本実施形態のナット部材30およびボールねじ10の作用効果を述べる。
本実施形態のナット部材30を用いたボールねじ10では、ボールねじ軸20のボール軌道に対応するようにボール受け凹部34が穴32の内周に離散的に配置される。そして、各々のボール受け凹部34に1つずつボール40を回動可能に配置し、ボールねじ軸20のボール軌道の溝22とボール40を係合させることでボールねじ10を構成する。よって、本実施形態の構成により、ボール40の転動による準コロガリベースの低い抵抗のねじを実現できる。
特に、本実施形態では、ボール受け凹部34の位置を適宜調整するだけで、従来構造では実現が困難な複数条のボールねじにも容易に対応できる。
また、本実施形態では、ボール受け凹部34は穴32の内周に離散的に形成されるので、従来構造のボールねじのナットのように連続的な溝を加工する構成と比べると、加工時の工具への荷重は小さくなるので製造が容易である。
以上の詳細な説明により、実施形態の特徴点および利点は明らかになるであろう。これは、特許請求の範囲が、その精神および権利範囲を逸脱しない範囲で前述のような実施形態の特徴点および利点にまで及ぶことを意図するものである。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、あらゆる改良および変更に容易に想到できるはずである。したがって、発明性を有する実施形態の範囲を前述したものに限定する意図はなく、実施形態に開示された範囲に含まれる適当な改良物および均等物に拠ることも可能である。
10…ボールねじ
20…ボールねじ軸
22…溝
30…ナット部材
32…穴
34、34a、34b…ボール受け凹部
35…凸部
36…隆起部
37…排除される材料
40…ボール
50…工具
52…凸部
60…リング
62…穴

Claims (3)

  1. ボール軌道の溝が外周面に形成されたボールねじ軸を挿通する穴を有し、転動用のボールを受けるボール受け凹部が前記穴の内周に複数形成され、前記ボール受け凹部は、前記穴に挿通される前記ボールねじ軸のボール軌道に対応して前記穴の内周に離散的に配置されているナット部材の加工方法であって、
    前記穴を有する被加工部材を固定し、
    被加工部材の前記穴の内部に、前記ボール受け凹部に対応する形状の凸部を外周面に配列した工具を配置し、
    前記被加工部材に対して前記工具の軸方向位置を維持しつつ、前記工具の軸を中心とした回転は行わずに前記穴の内周に沿って前記工具を移動させることで前記凸部を前記穴の内周に徐々に押し当て、前記穴の内周面に前記ボール受け凹部の形状を転写する
    ことを特徴とするナット部材の加工方法。
  2. 請求項1に記載のナット部材の加工方法において、
    記ボール受け凹部の周囲には、前記穴の非加工部分よりも隆起した隆起部が形成されることを特徴とするナット部材の加工方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載のナット部材の加工方法において、
    前記ボール受け凹部は、前記ボールを複数の点接触で支持し、
    前記ボール受け凹部の断面は、前記ボール受け凹部の表面と前記ボールとの間に空隙を有する形状に形成されることを特徴とするナット部材の加工方法。
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