JP5993749B2 - 半導体装置のゲート駆動回路およびそれを用いた電力変換装置 - Google Patents
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Description
インバータ回路には、半導体スイッチング素子であるSi-IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor;絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)31(または33)、およびこれに逆並列接続した還流ダイオード32(または34)を1つの単位(アーム)とし、上側アームと下側アームを最小の一対として組み込まれる。これまで、還流ダイオード32、34にはSiのpnダイオードが用いられてきた。高耐圧分野において、一般的にpnダイオードにおいては、高濃度のp+と低濃度のn-から成るp+/n-接合が形成される。このため、導通状態においては、電子および正孔がそれぞれ多数キャリアおよび過剰少数キャリアとして電流通電に寄与する。この過剰少数キャリアの存在により、導通状態におけるアノード・カソード間の電圧降下である順電圧降下(VF)が低くなるという、バイポーラ素子の利点が生ずる。
過剰少数キャリアは、導通状態から電圧が逆方向に印加されるブロッキング状態へのスイッチングにおいては、残留キャリアとなり、pnダイオードに見られるリカバリ電流の原因となる。リカバリ電流はダイオード自身のスイッチング損失であるリカバリ損失を生じるとともに、対アームIGBTのターンオン電流に重畳し、IGBTのターンオン損失を増大させる。インバータを高効率化するためには、スイッチング損失は小さい方が好ましいため、リカバリ電流が生じるpnダイオードより、SBDの方が適していると言える。
しかしながら、リカバリ電流の存在は、LCR回路のスイッチング時における電圧、電流の振動を抑制するという効果を有する。このような振動には、下側IGBT31を例に考えると、配線による浮遊インダクタンス(L)と微小な抵抗(R)が関係する。IGBT31自身は等価的に容量(C)となる。リカバリ電流は大きな抵抗として作用するため、ダイオード34は容量として作用する他に、減衰抵抗としても作用することになる。これにより、IBGT31がターンオンした場合、pnダイオードの場合は振動が殆ど発生しないという利点を有する。
これに対しSBDの場合は、リカバリ電流が存在しないために、減衰抵抗の小さなLCR回路におけるスイッチングとなり、ターンオン時に激しい電圧、電流の振動(リンギング)が発生する。以下、図を用いてリンギングについて説明する。
図7は下側IGBT31のスイッチング動作を説明するための回路ブロック図であり、破線741はIGBT31の動作を制御するための、従来のゲート駆動回路を示す。IGBT31には、還流ダイオード32が逆並列に接続される。また、IGBT31のゲートとゲート駆動回路741の出力との間には、ゲート抵抗411が接続されている。外部から入力されるPWM信号に従って、駆動ロジック711からは、ターンオン用のnpnトランジスタ521とターンオフ用のpnpトランジスタ511を相補的にオン・オフさせるための信号が出力される。
図8に、駆動ロジック711のターンオン時の出力を示す。PWM信号に従い、時刻t0に駆動ロジック711の出力信号1Aはオフから、オンに変化する。駆動ロジックからオン信号が出力されると、pnpトランジスタ511はオフとなり、同時にnpnトランジスタ521がオンとなる。これにより端子751の電圧であるゲート駆動回路の出力電圧は、ターンオン用の電源62の電圧となる。但し、出力電圧の時間変化率はターンオン用ゲート抵抗441の大きさで調整される。
図9にIGBT31のターンオン時における、コレクタ-エミッタ間電圧Vce、コレクタ電流Ic、ゲート-エミッタ間電圧Vge、ゲート電流Igの波形を示す。ゲート-エミッタ間には、時刻t0のターンオン開始によりIGBT31のゲート-エミッタ間容量を充電するために、大きなIgが流れる。Vgeは閾値電圧Vthを超えるまでほぼ一定の変化率で上昇する。Vge>VthとなるとIGBTのチャネルが開くため、Icが流れ出し、Vceの低下が始まる。
ゲート-エミッタ間が充電されると、次にゲート-コレクタ間の充電期間に移行する。Igはピークを終了して一定値が流れるようになり、Vgeも一定となる。チャネルが開くのでIcは急激に上昇する。この状態がLCR回路においてスイッチをオンさせたことに対応し、Icはピークを生じた後に、図9に示したように、短周期の激しい振動を生ずる。Icの振動はダイオード34のアノード電流にも同様に発生する。アノード電流が変化するとインダクタンスにより電圧を発生する。すなわち、図10に示すように、ダイオード34のカソード-アノード間に激しい振動が生ずることになる。これが還流ダイオードにSBDを用いたことによるリンギングである。
(実施形態1)
図4は、本発明の実施形態1である電力変換装置例(インバータ装置)の1相分およびゲート駆動回路の概略構成を示す。図4において、31が絶縁ゲート(例えば、MOSゲート)によってスイッチング動作するIGBTであり、32がIGBTと対となる逆並列接続された還流ダイオードとなるSiC-SBDである。33は対アームのIGBTである。なお、IGBTとダイオードの逆並列回路をアームと称し、図4中、上側および下側の各アームをそれぞれ上アームおよび下アームと称する。
通常のターンオフ動作においては、ターンオフ用の外部抵抗43により、急激な電流・電圧の変化が防止される。本実施例では、外部抵抗43の値は5Ωとしている。この場合、外部抵抗43の存在により、出力端子75の電圧低下速度が抑えられてしまう。そのため本実施形態では、外部抵抗43と並列にnMOSFET53を接続している。
通常のターンオフ動作の場合はnMOSFET53をオンさせず、ターンオンの途中においてのみオンするように、駆動ロジックからは、pnpトランジスタ用とは独立のオン・オフ信号が入力される。これにより、外部抵抗43を介さずにゲート電源61と接続されるので、出力端子75の出力電圧を急速に−10Vまで低下させることができる。この結果Cgeの放電が始まり、Igを負にすることができる。現在の時刻がt1に対応するか否かは、本実施形態では、Vge,Ig検出回路72によりIgを検出し、ピークを終了してほぼ平坦部に移行する時刻であるか否かにより判定する。
なお、時刻t1については、Vge,Ig検出回路72によりVgeを検出し、ほぼ平坦部に移行する時刻であるか否かにより判定しても良い。また、Vce,Ic検出回路73によりVceまたはIcを検出して、Vceの下降開始時点あるいはIcの上昇開始時点をt1と判定しても良い。
耐圧3300V、電流1200Aのパワー半導体モジュールの場合、図7に示した従来のゲート駆動回路ではターンオン外部抵抗441に3Ω程度を用いているが、図9及び図10に示したような激しいリンギングが発生する。これに対し本実施形態では、ターンオン途中にCgeを放電させることにより、ターンオン外部抵抗42が0.5Ωと従来例より小さいにもかかわらず、Icの上昇率が抑えられ、かつピークも小さくすることができる。これにより、ダイオード34のカソード-アノード間電圧Vka波形においても、図10に示した従来例で見られたような激しい振動を抑制することができる。図3に本実施形態で得られたVka波形を示すように、振動は存在するものの、電源電圧Vccを上回るような振動ピークはなくなる。
Cgeの放電はターンオフ動作させることと同じであるため、放電期間においてVceは減少から増加に転じる。そのためIcがピークを過ぎた後、駆動ロジック71の出力信号がオンになるようにする。すなわちCgeを再充電させる。このようなゲート制御により、Vceは再度減少する波形になる。ターンオン外部抵抗42が小さいために、Vceの減少は速く、これによりターンオン損失の増大を効果的に抑制することができる。放電期間はターンオン損失の増分をどこまで許容するかで設定されることから、再充電時刻を設定するための、専用の検出回路は必須ではなく、事前に所定の値に設定することで対応できる。
放電期間である時刻t1とt2の間で、Vgeの波形が減少しないのは、放電期間が短いためにチャネルが閉じないためである。放電の影響は、放電期間で上昇率が低減する程度である。
(実施形態2)
前述した実施形態1は、放電開始時刻t1と放電期間t1〜t2が好適に設定できる場合である。実際には、検出精度が関係するため、好ましいタイミングからのズレが生じる場合がある。本実施形態2は、以下に説明するように、検出精度と振動ピークの関係について考慮したものである。なお、本実施形態2では、実施形態1における振動ピークが従来比1/3を条件としている。
図12は、放電開始時刻t1とターンオン開始時刻t0との時間差をパラメータとした場合における、放電期間の設定値とダイオード34の電圧の振動ピークの関係について本発明者が検討した結果を示す。放電期間100nsで比較すると、t1とt0の時間差が好適値の一例である515nsから±10nsずれた場合、振動ピーク電圧は800V±20%となる。好適には、600〜700Vまで低減可能であるのに対し、実際には1000V近い値になる。しかしながら、従来条件からは45%程度低減できる。但し、±10nsの検出精度が好ましい。
放電期間の設定値は、ターンオン損失の増分をどこまで許容するかで設定される。図13に示すように、ターンオン損失は放電期間に対し単調に増加する。振動抑制を優先する場合は、放電期間をより長く設定すればよく、本実施形態の100nsに限定されない。
(実施形態3)
本実施形態では、充電期間と放電期間における駆動ロジックの出力信号を、幅Δpwの多パルスで構成する。なお、本実施形態では、Δpwは1nsとする。
図5は、本実施形態における駆動ロジックの出力信号波形である。実施形態1と同様に、図5に示す駆動ロジック71の出力信号に応じて、ゲート駆動回路74の出力端子75にIGBTをゲート制御するための電圧が出力される。
(実施形態4)
本実施形態は、実施例1で説明したゲート駆動回路を、パワー半導体モジュールおよびインバータ装置などの電力変換装置に適用したものである。
32、34 SiC-SBD
41、43 ゲート抵抗
51 pnpトランジスタ
52 npnトランジスタ
53、82、84 nチャネルMOSFET
81、83 pチャネルMOSFET
71、711 駆動ロジック
72 Vge,Ig検出回路
73 Vce,Ic検出回路
74 ゲート駆動回路
Claims (7)
- スイッチングを制御するためのゲートを備える半導体スイッチング素子と、該半導体スイッチング素子に逆並列に接続されたダイオードとを有する半導体装置を駆動するゲート駆動回路において、
前記半導体スイッチング素子のターンオン期間が、前記ゲートの初期充電期間、放電期間および再充電期間から成り、上記放電期間に前記半導体スイッチング素子の主電流が増加する
ことを特徴とするゲート駆動回路。 - 請求項1において、
前記ゲートに流れるゲート電流が、前記初期充電期間においては正であり、前記放電期間においては負であり、前記再充電期間では正である
ことを特徴とするゲート駆動回路。 - 請求項1または請求項2において、
前記ゲート駆動回路の出力電圧が、前記初期充電期間においては正であり、前記放電期間においては負であり、前記再充電期間では正である
ことを特徴とするゲート駆動回路。 - 請求項3において、
前記出力電圧が、前記初期充電期間における正から前記放電期間における負に反転する時刻は、前記ゲートの電圧が閾値電圧を越える時刻より遅い
ことを特徴とするゲート駆動回路。 - 請求項4において、
前記半導体スイッチング素子のターンオン時の主電流が増加している期間において、前記出力電圧が、前記放電期間における負から前記再充電期間における正に反転する
ことを特徴とするゲート駆動回路。 - 請求項1〜5のいずれか1項において、
前記ゲート駆動回路が、少なくとも前記半導体スイッチング素子のゲート電圧を規定するためのトランジスタと、該トランジスタを制御するための駆動ロジックとを含んで構成されており、かつ該駆動ロジックの出力電圧が、前記初期充電期間及び前記放電期間において、複数のパルス電圧からなる
ことを特徴とするゲート駆動回路。 - スイッチングを制御するためのゲートを備える半導体スイッチング素子と、ダイオードとが逆並列に接続されたアームと、前記半導体スイッチング素子を制御するゲート駆動回路とを備える電力変換装置において、
前記ゲート駆動回路が請求項1〜6のいずれか1項に記載のゲート駆動回路である
ことを特徴とする電力変換装置。
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