ところで、上記特許文献2のように、クローラの左右外側にそれぞれ補助輪を設けたものでは、機体(収穫機)の傾動時に補助輪が接地することでそれ以上の傾動を阻止し得るが、補助輪は接地後に接地摩擦により回転するものの接地当初は非回転状態であるので、接地当初に抵抗がかかり、その接地抵抗が違和感となるという問題があった。
他方、この種の収穫機において、クローラ12として、弾性材(ゴム)からなる無端帯状の弾性帯体13を使用したものでは、例えば地面にコブ状の隆起部があって該弾性帯体13が該隆起部上に乗り上げる度にその乗り上げ部分の弾性帯体13が弾性変形する(上側に撓む)ようになる。そして、このようにクローラ12の弾性帯体13が繰り返して(頻繁に)弾性変形するものでは、その弾性変形(及びその後の復元)によって弾性帯体13にダメージ力が付加されることになり、該弾性帯体13の耐久性を損ねる原因になるという問題もある。
そこで、本願発明は、走行装置として幅が狭く且つ作業車の中央付近に1列のみのクローラを使用した圃場走行作業車であっても、該クローラの左右外側にそれぞれ補助輪を設けることで作業車が左右に所定角度以上、傾動しないようにする一方、該補助輪をクローラに関連づけて有効に機能させ得るようにすることを目的としてなされたものである。
本願発明は、上記課題を解決するための手段として次の構成を有している。尚、本願発明は、圃場面を走行しながら農作業が行えるようにした圃場走行作業車を対象にしたものであるが、本願で適用できる圃場走行作業車としては、例えば(一例として)圃場面を走行させながら圃場に植生している作物を順次自動で収穫し得るようにした収穫機がある。そして、本願の圃場走行作業車については、以下の説明では単に作業車と表現したり、あるいは収穫機と表現することがある。
[本願請求項1の発明]
この請求項1の圃場走行作業車は、添付図面に例示するように、作業車の機体フレーム2の下部に設けた走行装置1により圃場面Gを走行させ得るようにしたものである。
そして、請求項1の圃場走行作業車では、走行装置1として、無端帯状の弾性帯体13を循環駆動させ得るようにしたクローラ12を採用している。
ところで、作物が平地栽培されている圃場では、走行装置1としてクローラ12を採用することが多いが、走行装置1にクローラ12を使用する場合は、作物を一度に収穫し得る幅が作業車(収穫機)の幅よりかなり狭い場合(例えば図2の幅M=約30cm程度)には、クローラを左右に間隔をもって2列状態で設けた収穫機は使用不可である。つまり、2列状態のクローラを使用した収穫機では、左右のクローラ間の間隔が広くなるので、収穫幅(図2の幅M)の外側(植生部A2)にある未収穫作物をクローラで踏み付けてしまうので使用不可となる。
このような事情により、本願では、走行装置1となるクローラ12は、作業車(収穫機)の左右幅の略中央に位置させた状態で一列だけ設置している。尚、この場合のクローラ12の幅は、例えば1回当たりの収穫幅(図2の幅M=30cm程度)よりかなり細幅(例えば10〜12cm程度の幅)のものが使用される。ところで、このように、細幅で1列だけのクローラ12を使用したものでは、作業車(収穫機)を自立させるのに左右のバランスが不安定となって左右に傾動し易くなる。
そこで、本願の作業車では、クローラ12の左右各側に、地面に接地し得る左右の補助輪61,61を左右外向きに突出する状態で取付けているとともに、該各補助輪61,61の下面をクローラ12の下面とほぼ同じかそれより僅かに上位置となる高さに設定している。尚、左右の各補助輪61,61の各下面をクローラ12の下面と同じにすると、地面の凹凸によってクローラ12下面が十分に接地しない場合が生じるので、各補助輪61,61の各下面高さはクローラ12の下面より僅かに(例えば1cm程度)上位置とするのが好ましい。
左右の各補助輪61,61のそれぞれ外向き突出長さは、図3に示すように、該両補助輪61,61の外端間の幅Wが、1回当たりの収穫部分(図2の幅M)の外側にある未収穫列(植生部A2)の作物に届かない(踏み付けない)範囲でかなり長くまで突出させている。例えば、図3のWの幅を35cm程度に設定できる。
又、この請求項1の作業車では、上記各補助輪61,61は、それぞれ共通軸64に対して、軸方向外側位置で地面に接触する接地輪62と、軸方向内側位置で上記弾性帯体13の下面走行部の上面13aに摺接する帯体摺接輪63とを両輪62,63が供回りする状態で取付けているとともに、帯体摺接輪63が弾性帯体13の下面走行部の上面13aに摺接して回転することで、接地輪62が帯体摺接輪63と供回りするようにしている。
各補助輪61,61における接地輪62と帯体摺接輪63との大きさは、接地輪62が帯体摺接輪63よりやや大径となっていて、接地輪62の周面長さが帯体摺接輪63の周面長さより長くなっている。従って、クローラ12の駆動時には、帯体摺接輪63の周面速度(弾性帯体13の走行速度と同じ)より接地輪62の周面速度がやや速くなる。
この請求項1の作業車(収穫機)は、次のような各機能を有している。
まず、この請求項1の作業車は、収穫すべき作物の1回当たりの収穫幅Mが比較的狭いものに使用される関係で、比較的狭幅のクローラ12を収穫機中央付近に1列だけ使用している。そして、このように1列のクローラ12だけで作業車を自立させようとすると、左右のバランスが不安定となるが、この請求項1の作業車では、クローラ12の左右にそれぞれ補助輪61,61を設けているので、この収穫機が左又は右に所定小角度(例えば角度3〜4°程度の安定姿勢)だけ傾動したときに、その傾動側の補助輪61が接地して、それ以上の傾動を阻止し得るようになっている。
又、各補助輪61,61のそれぞれ軸方向内側位置にある各帯体摺接輪63,63がクローラ12の弾性帯体13の下面走行部上面13aに摺接しているので、この作業車が走行中には、クローラの弾性帯体13が循環駆動される(弾性帯体13の下面走行部が後方移動する)ことにより、該弾性帯体13の下面走行部上面13aに摺接している各帯体摺接輪63,63が進行方向側に連続回転せしめられ、このとき各補助輪61,61の軸方向外側にある各接地輪62,62も各帯体摺接輪63,63と供回り(進行方向側に回転)する。
そして、走行状態で作業車が左又は右に傾動すると、その傾動側の補助輪61の接地輪62が接地するが、そのとき該接地輪62は進行方向側にしかも進行速度より速い周面速度で回転しながら地面に接触するので、補助輪61の接地抵抗(接地輪62で地面の土を前方に押す作用)は全く発生しない。
又、左右の補助輪61,61の各帯体摺接輪63,63がそれぞれ弾性帯体13の下面走行部上面13aに摺接している(上から押さえている)ので、例えば地面にコブ状の隆起部があって弾性帯体13が該隆起部上に乗り上げても、帯体摺接輪63が対応する付近では弾性帯体13が弾性変形しない(上側に撓まない)ようになっている。
[本願請求項2の発明]
ところで、本願の作業車(収穫機)で栽培作物を収穫する際には、収穫機の前端部下面を圃場面Gに近接(又は軽く接触)させた状態で前進走行させるが、圃場面Gに凹凸があると、その凹凸部にクローラ12が乗り上げたときに収穫機の前端部が圃場面Gから浮き上がることがある。そして、このように、収穫作業中に収穫機の前端部の圃場面Gから浮き上がると、作物の収穫作業中に悪影響を及ぼすことがある(例えば、作物の根の掘り起こしに失敗したり根より上の茎部を切断したりすることが起こる)。
そこで、本願請求項2の発明は、上記請求項1の圃場走行作業車において、機体フレーム2の前端部の下面に、作業車走行時に圃場面G付近の土中に侵入した状態で進行して作業車前部の浮き上がりを防止する浮き上がり防止手段25を設けていることを特徴としたものである。
この請求項2で採用する浮き上がり防止手段25は、圃場面G付近の土中(例えば地表面から3〜5cm程度の深さ)に侵入した状態で作業車とともに進行するものであって、土中に埋もれている部分が、機体フレーム2の前部側が浮き上がろうとするときの抵抗になるようにしたものである。例えば、この浮き上がり防止手段25は、機体フレーム2の前端部下面から薄板状(土中進行時の抵抗が小さいもの)の支持材を縦向き姿勢で垂下させ、その支持材の下端部に所定小面積の薄板材を略水平向き姿勢で取付けたものや、機体フレーム2の前端部下面から垂下させた薄板材(土中進行時の抵抗が小さいもの)の下部を横向き方向に折曲したもの、等が採用可能である。尚、この浮き上がり防止手段25の設置箇所は、機体フレーム2の前端部下面における1カ所でも左右に離間した2カ所でもよい。
[本願請求項1の発明の効果]
請求項1の発明の圃場走行作業車は、次のような効果がある。
(1) 走行装置1として細幅で1列だけのクローラ12を使用したものであっても、該クローラ12の左右外側にそれぞれ補助輪61,61を突出状態で取付けているので、作業車の左右バランスが崩れて該作業車が左右いずれかの方向に傾動しようとしても、その傾動側の補助輪61が接地することで、作業車のそれ以上の傾動を阻止することができる。
(2) 各補助輪61,61として、地面に接触する接地輪62とクローラ12の弾性帯体13の下面走行部上面13aに摺接する帯体摺接輪63とを両輪62,63が供回りする状態で取付けたものを採用しているので、作業車走行中はクローラの弾性帯体13が循環駆動しているのに伴って、左右の各補助輪61,61のそれぞれ接地輪62,62が常時進行方向側に回転している。従って、接地輪62の接地時に、その接地抵抗(接地輪62で地面の土を前方に押す作用)は全く発生しない(ハンドルが接地側にとられることがない)ので、違和感なしに運転を継続できる。
(3) 左右の補助輪61,61の各帯体摺接輪63,63がそれぞれクローラの弾性帯体13の下面走行部上面13aに摺接している(上から押さえている)ので、例えば地面にコブ状の隆起部があって弾性帯体13が該隆起部上に乗り上げても、弾性帯体13が弾性変形しない。従って、弾性帯体13に対する耐久性が向上する。
[本願請求項2の発明の効果]
この請求項2の圃場走行作業車では、機体フレーム2の前端部下面に浮き上がり防止手段25を設けているので、作業車走行時に該浮き上がり防止手段25が圃場面の土中を進行することで、作業車前部の浮き上がり抵抗となる。
従って、この請求項2の圃場走行作業車では、上記請求項1の各効果に加えて、作業車走行時において、浮き上がり防止手段25により作業車を常時安定姿勢で走行させることができる(作業車前部が不用意に浮き上がらない)という効果がある。
図1〜図8を参照して本願実施例の圃場走行作業車を説明すると、この実施例では圃場走行作業車として作物を収穫する収穫機を採用している関係で、以下の説明では本願の圃場走行作業車を収穫機と表現することがある。又、この実施例の作業車(収穫機)では、収穫すべき作物Pとしてネギを採用している関係で、以下の説明では、作物をネギということがある。尚、図1〜図6には第1実施例を示し、図7〜図8には第1実施例における浮き上がり防止手段の変形例(第2実施例)を示している。
[図1〜図6の第1実施例]
図1〜図6に示す実施例の収穫機は、走行装置1上に機体フレーム2を取付け、該機体フレーム2の前部に圃場に植生しているネギPの根Paを掘り出す掘出し装置3を設け、機体フレーム2上に一連の搬送装置4を設け、該搬送装置4の終端部(後搬送部4Bの終端部)の直下に収納容器7を設けて構成している。
この実施例の収穫機では、走行装置1や各種駆動部(掘出し装置3や搬送装置4等)の動力源としてバッテリ10を採用している。このバッテリ10は、走行装置1の左右各外側に1つずつ(合計2個)設置している。
走行装置1には、クローラ12を使用している。このクローラ12は、後述する理由により収穫機中央部に1列だけ設置している(図3参照)。このクローラ12は、後側の大径の駆動輪(スプロケット)14と前側の小径の従動輪(アイドラー)15間に弾性材(ゴム)からなる無端帯状の弾性帯体13を巻掛けたものである。そして、このクローラ12は、走行部フレーム11に支持されていて、走行用モータ16(バッテリ10から給電される)によって駆動されるようになっている。
機体フレーム2は、前部が下方で後部が上方に向けて傾斜する姿勢で走行装置1側の走行部フレーム11に支持されている。
掘出し装置3は、機体フレーム2の前部下面において、圃場面Gから若干深さ部分(ネギPの根部Paの深さ程度)を掘り起こしてネギPの根部Paを掘り出す(引き抜き易くする)ものである。そして、この掘出し装置3は、収穫機を走行装置1により前進させながら、掘起こし爪31を作動棒32を介して収穫用モータ22(後述する)で前後揺動させることで、圃場に植生しているネギPの根部Paを順次掘出し得る(ネギPを容易に引き抜き得る程度まで土をほぐす)ようになっている。
ところで、栽培作物がホウレン草やコマツ菜のように、根を切断して収穫するものでは、上記掘出し装置3(掘起こし爪31)に代えて根切断装置(カッター)を使用するが、この場合の根切断装置のカッターは、圃場面Gから若干深さ部分を進行し、茎部を残して根の付け根部分を切断するようになっている。
搬送装置4は、前搬送部4Aとそれに続く後搬送部4Bとを有している。この前搬送部4Aと後搬送部4Bは、機体フレーム2の上に、前部が低く後部が高くなる傾斜姿勢で設置されている。尚、前搬送部4Aの終端部と後搬送部4Bの始端部とは、収穫機の前後長さのほぼ中間位置で上下に重合させていて、前搬送部4Aで搬送されてくるネギPを該前搬送部4Aの終端部から後搬送部4Bの始端部に移乗させ得るようになっている。
前搬送部4Aは、図2に示すように、2本1組の帯ベルトからなる挟持ベルト42を左右に2セット並置したものが採用されている。
他方、後搬送部4Bも、図2及び図3に示すように、2本1組の帯ベルトからなる挟持ベルト52を左右に2セット並置したものが採用されている。
又、この後搬送部4Bは、後述するように鉛直姿勢で搬送されてくるネギ(図1のP1〜P3)の姿勢を後傾させる(符号P4の姿勢)ための姿勢傾動装置5を兼用している。即ち、この実施例では、姿勢傾動装置5として、後搬送部4Bとなる上挟持ベルト52とその直下に並設した下挟持ベルト53とを有している。そして、図1に示すように、上挟持ベルト52がネギP3の上半部を挟持する一方、下挟持ベルト53が該ネギP3の下半部を挟持するとともに、下挟持ベルト53の搬送スピードを上挟持ベルト52の搬送スピードよりやや遅く設定している。従って、後搬送部4B側に移乗されたネギが図1の符号P3の位置まで移動したときに上下の挟持ベルト52,53の速度差によって、ネギがP3で示す鉛直姿勢からP4で示す後傾姿勢に変化するようになっている。
上記掘出し装置3と上記前搬送部4Aと上記後搬送部4Bは、共通の収穫用モータ22で駆動される。即ち、収穫用モータ22を作動させると、それぞれの動力伝達部材(プーリやベルト等)を介して、掘出し装置3の作動棒32を押し引き作動させる(掘起こし爪31が前後揺動する)とともに、各挟持ベルト42,52,53のプーリをそれぞれ回転させる(挟持部分の帯ベルトが前部下方から後部上方に向けて走行する)ようになっている。尚、上挟持ベルト52と下挟持ベルト53との速度差は、該各ベルトを駆動するプーリ径を変化させることで、同一駆動系の動力伝達部材で発生させ得るようにしている。
前搬送部4Aの前端部には、図1及び図2に示すように、圃場に植生しているネギPを掻き分けて各挟持ベルト42,42の始端部に導くためのデバイダ23,23・・が設けられている。このデバイダ23,23は、所定間隔をもった2つ1組を1セットとして構成されていて、左右各側の挟持ベルト42,42の始端部より前方に突出する状態で取付けられている。そして、この各デバイダ23,23は、圃場の各ネギPを掻き分けてそれぞれ挟持ベルト42,42の始端部に挟み込ませ得るようになっている。
各デバイダ23,23・・の下部には、図1、図5及び図6に示すように、収穫機の前進走行時に圃場面G上に接地して滑動する滑動台24が取付けられている。この滑動台24は、図5及び図6に拡大図示するように、左右に細幅(例えば15〜20mm幅)の断面U型(上方が開口するコ型)で前後に所定長さ(例えば80〜100mm長さ)を有したものであり、収穫機の前進走行時に機体フレーム2の前部が圃場面下に沈まないようにするためのものである。
走行部フレーム11には、左右のハンドル棒18,18が固定されている。この各ハンドル棒18,18の先端側は、収穫機の上部後方にまで延出されていて、ハンドル棒先端部のグリップ部19,19付近には各種の操作部が設けられている。
収納容器7は、後搬送部4Bの終端部の直下位置に設置されていて、後搬送部4Bの終端部から放出される各ネギP4を順次落下・収納し得るものである。
この収納容器7は、図1〜図3に示すように、底面板71と前面板72と左右の各側面板73,73とを有し、上面側と後面側をそれぞれ開放させたものである。
そして、この収納容器7は、ガイド装置8によって上下動自在にガイドされた状態で設置されている一方、上方付勢手段9により上方に付勢された状態で支持されているが、それらの構成について説明する。
ガイド装置8は、図1及び図3に示すように、収納容器7の左右各側面板73,73をそれぞれガイドするもので、ガイド板80に上下2箇所のガイド溝(上ガイド溝81と下ガイド溝82)を形成している。ガイド板80に形成している上ガイド溝81と下ガイド溝82は、図1に示すように、同一直線状で下方が後方に角度約60°程度傾斜する姿勢で形成されている。
他方、収納容器7の左右各側面板73,73の外面には、ガイド装置8の上ガイド溝81と下ガイド溝82にそれぞれ嵌合する上下2つ(左右併せて4つ)のローラ74,75を取付けている。
そして、この収納容器7側の左右各側面板73,73にある上下2つのローラ74,75(左右一対ある)をガイド装置8(左右一対ある)の上ガイド溝81と下ガイド溝82にそれぞれ嵌合させることにより、収納容器7を上下各ガイド溝81,82の長さ方向(上下方向)に移動させ得るようになっている。
又、この収納容器7は、上方付勢手段9により上方に付勢された状態で支持されているが、この実施例では上方付勢手段9としてコイルバネを使用している。この上方付勢手段(コイルバネ)9は、左右一対使用されていて、それぞれ左右のガイド板80,80と収納容器7の各側面板73,73との間に介設されている。
そして、この上方付勢手段(コイルバネ)9,9は、収納容器7内にネギP5が堆積すると、そのネギ群の重量に比例した高さずつ収納容器7が下動するのを許容するような上方付勢力に設定されている。即ち、この上方付勢手段9,9は、収納容器7内に収納されたネギ群の重量に比例して該収納容器7内のネギ群の上面高さを一定に維持する下動量となるような付勢力で収納容器7を支持している。
このように、収納容器7内に収納されたネギ群の重量に比例して、該収納容器7を下動させるようにすると、収納容器7内のネギ群の上面高さをほぼ一定に維持できるので、後搬送部4Bの終端部から放出されるネギP4の収納容器7内までの落下距離が常に一定となり、落下側ネギが堆積されたネギ群に対して根部の位置が前後にずれたり、各ネギの向き(平行度)が乱れたりすることはほとんど起きない。
上記ガイド装置8に、収納容器7がガイド装置8の最下端位置まで降下した状態で、収納容器7の姿勢を底面板71の前方下向き傾斜角度が水平側に緩くなるように変更させ得るガイド部83を設けている。このガイド部83は、下ガイド溝82の下端部に前方に向けて屈曲ガイド溝を連続させたものである。そして、収納容器7が最下動状態(上側ローラ74が上ガイド溝81の下端部に位置している)で、該収納容器7を前方側に回動させると、下側ローラ75が屈曲ガイド溝83に沿って符号75′の位置まで前側に移動していき、それによって収納容器を符号7′(図1)で示すように底面板の傾斜角度を水平側に緩くなるように変更させ得るようになっている。尚、収納容器が図1の鎖線図示状態(符号7′)では、底面板の傾斜角度が約25°程度になっていて、収納容器7′内のネギが不用意に脱落しないとともに、収納容器7′内からネギ群を取り出し易い状態となる。
ところで、この実施例の収穫機において、走行装置1としてクローラ12を1列だけ使用したのは、次の理由によるものである。
即ち、この実施例のように、栽培作物がネギPの場合は、図2及び図3に示すように、圃場に条間Bが例えば15cm内外の間隔で種を筋撒き状に植え付けて育成する。そして、この実施例の収穫機では、一度に隣り合う2条の植生部(例えば符号A1,A1の2列)ずつ収穫するようにしている。そのとき、クローラ12として、左右に間隔をもった2列のものを採用すると、左右のクローラ間の間隔が広いので、収穫範囲(図2、図3に示す2条の植生部A1,A1)の外側の列の植生部A2にある未収穫の作物(ネギ)をクローラで踏み付けることになり、収穫幅を狭くする(図2の符号M)必要がある作付け態様の作物(ネギ)では、図2〜図4に示すように、クローラ12を収穫機の中央付近に1列だけ使用した収穫機で収穫作業を行う必要がある。
このような事情により、この実施例では、走行装置1となるクローラ12は、収穫機の左右幅の略中央付近に位置させた状態で一列だけ設置している。尚、この場合のクローラ12の幅は、例えば1回当たりの収穫幅(図2の幅M=例えば30cm程度)よりかなり細幅(例えば10〜12cm程度の幅)のものが使用される。
ところで、このように、細幅で1列だけのクローラ12を使用したものでは、収穫機を自立させるのに左右バランスが不安定となる。
そこで、この実施例の収穫機では、収穫機が左右に大きく傾動するのを阻止するために、クローラ12の左右各側に左右の補助輪61,61を取付けている。
この各側の補助輪61,61は、図4に拡大図示するように、それぞれ共通軸64に対して、軸方向外側位置で地面に接触する接地輪62と、軸方向内側位置でクローラ12の弾性帯体13の下面走行部上面13aに摺接する帯体摺接輪63とを両輪62,63が供回りする状態で取付けて構成している。
この各補助輪61,61は、それぞれ共通軸64の両端を門型形状の支持台65で支持している。そして、該支持台65を、取付アーム66を介して不動部(走行部フレーム11)に軸67で固定する一方、固定ボルト68で不動部(バッテリ載置台の下面)に固定することで、この各補助輪61,61をそれぞれ2点位置で不動部分(走行部フレーム11側)に支持させている。
又、各補助輪61,61は、各帯体摺接輪63,63が弾性帯体13の下面走行部の上面13aに摺接しており、この収穫機が走行中にはクローラの弾性帯体13が循環駆動しているので、各帯体摺接輪63,63が進行方向側(図1において左回転方向)に連続回転せしめられるのに伴って各接地輪62,62が各帯体摺接輪63,63と供回りするようになっている。
左右の各補助輪61,61のそれぞれ外向き突出長さは、図3に示すように、該両補助輪61,61の外端間の幅Wが、1回当たりの収穫部分(図2の幅M)の外側にある未収穫列(植生部A2)の作物に届かない(踏み付けない)範囲でかなり長くまで突出させている。例えば、図3のWの幅を例えば35cm程度としている。従って、収穫作業時に、各補助輪61,61で未収穫作物(植生部A2部分)を押し倒すことがない。尚、収穫部分の植生部A1,A1の外側直近位置にある未収穫作物(植生部A2部分)は、進行する収穫機の各バッテリ10,10の直下に位置しているが、各バッテリ設置部の底部は、地面からかなり高位置(例えば20cm程度)に離間しているので、該バッテリ設置部の直下に植生されている未収穫作物は、該バッテリ設置部の底面に接触したときに進行方向に曲がる(逃げる)ので、該未収穫作物が損傷することはない。
ところで、圃場が畝の場合には、左右の畝間の畝溝幅が例えば30〜35cm程度あり、上記のように左右の各補助輪61,61の外端間の幅W(図3)を例えば35cm程度まで狭くすると、この収穫機のクローラ12を畝溝内に進行させることができる。尚、畝溝の左右側面はそれぞれ広がり方向に傾斜しているので、クローラ12を畝溝内に進行させたときに、左右の各補助輪61,61の外端が畝溝の左右側面に接触することがあるが、園場合でも畝溝側面がひどく削られることはない。
各補助輪61,61の接地輪62と帯体摺接輪63は、帯体摺接輪63の下面がクローラ弾性帯体13の下面走行部上面13aに摺接している関係で、該帯体摺接輪63の外径より接地輪62の外径が大きくなっている。例えば、帯体摺接輪63の外径が10cm程度であるのに対して接地輪62の外径が15cm程度となっている。又、左右の補助輪61,61における各接地輪62,62の下面は、クローラ弾性帯体13の下面より僅かに上位置となる高さに設置されていて、収穫機が水平姿勢で走行する状態では、図3又は図4に示すように左右の各接地輪62,62の下面がそれぞれ地面Gから例えば1cm程度ずつ離間するようにしている。
ところで、この実施例の作業車(収穫機)で栽培作物を収穫する際には、図1に示すように収穫機の前端部下面を圃場面Gに近接(又は軽く接触)させた状態で前進走行させるが、圃場面Gに凹凸があると、その凹凸部にクローラ12が乗り上げたときに収穫機の前端部が圃場面Gから浮き上がることがある。そして、このように、収穫作業中に収穫機の前端部の圃場面Gから浮き上がると、作物の収穫作業中に悪影響を及ぼすことがある。例えば、この実施例のように、収穫作業時に掘起こし爪31で作物の根の掘起こすものでは、該根の掘起こしに失敗したり、あるいは別の収穫機のように根切断装置で根を切断するものでは、地表面近くに露出している茎部を切断してしまう(葉部がバラバラになる)等のトラブルが発生することがある。
そこで、この第1実施例(図1〜図6)の作業車(収穫機)には、機体フレーム2の前端部の下面に、作業車走行時に圃場面G付近の土中に侵入した状態で進行して作業車前部の浮き上がりを防止する浮き上がり防止手段25を設けている。
この第1実施例では、上記浮き上がり防止手段25は、図1に示すように機体フレーム2の前部にある2組(合計4つ)のデバイダ23,23・・における左右各外側に位置する2つのデバイダ23,23の直下にそれぞれ1つずつ(合計2つ)設置している。この各浮き上がり防止手段25,25は、図5及び図6に拡大図示するように、外側のデバイダ23の後面側に取付けた接地台24の下面から薄板状の支持材26を下向きに垂下させ、さらに該支持材26の下端に所定小面積の薄板材27を略水平向き姿勢で取付けたものである。
この第1実施例における各浮き上がり防止手段25,25の各種寸法及び形状は、特に限定するものではないが、概ね以下の通りである。
上記支持材26は、板厚さが3〜4mm程度の薄いものであり、下向き突出長さが30〜50mm程度であり、前後幅が20〜30mm程度である。又、この第1実施例では、該支持材26の進行側前端面26aを前方に所定角度(例えば角度60〜70°程度)下降傾斜させているとともに、該進行側前端面26aを鋭角状に尖らせて土中進行時の抵抗が小さくなるようにしている。
支持材26下方の薄板材27は、例えば、厚さが2〜3mm、幅が20〜30mm、長さが50〜60mm、程度の大きさの平板が使用できる。尚、この薄板材27は、平面視において先行側端部の幅が狭く(例えば15〜20mm幅)、後行側端部の幅が広く(例えば25〜30mm)なるような台形状に形成することができる。又、この薄板材27における先行側の所定小長さ範囲(例えば先端から10mm程度の長さ範囲)を後行側部分に対して所定小角度(例えば10°程度)だけ下向きに傾斜させている。
そして、この第1実施例の浮き上がり防止手段25は、図5及び図6に拡大図示するように、支持材26を左右各外側にある2つのデバイダ23,23における各接地台24,24の下面から溶接により垂下させている一方、該支持材26の下端部に薄板材27を略水平姿勢(前端側が僅かに下降傾斜する姿勢)で溶接して構成されている。
この第1実施例では、接地台24を上下に揺動させ得るようにすることで、該接地台24及び浮き上がり防止手段25の薄板材27を角度変化させ得るようにしている。即ち、図5に示すように、接地台24の前部をデバイダ23に軸24a(図5)で枢支して該接地台24の後部側を上下に傾動可能とする一方、該接地台24を任意の接地角度で止め具24bにより固定し得るようにしている。
そして、接地台24が図5に実線図示する圃場面Gと平行な姿勢では、浮き上がり防止手段25の薄板材27が前方に向けてごく僅かに下降傾斜する姿勢となっていて、収穫機の前進走行時に薄板材27が土中の深い側に侵入するような作用を受ける(薄板材27が浮き上がりにくくなる。他方、接地台24の後部側を図5に鎖線図示(符号24′)するように下方に傾動させると、薄板材27が鎖線図示(符号27′)するように略水平姿勢となって、該薄板材27′による土中潜行作用はほとんどなくなる。
このように、この第1実施例の浮き上がり防止手段25では、接地台24の接地角度を調整することで浮き上がり防止手段25の薄板材27が土中を進行する角度(方向)を調整できるので、収穫機の前後重量バランスや土壌の性質(軟弱度)等によって、収穫機の前部下面が圃場面Gに対して好適な接地圧で前進走行できるように調整できる。
この第1実施例(図1〜図6)の収穫機は、次のように機能する。作物収穫時には、走行装置1で収穫機を走行させながら、圃場に植生している作物Pを2条(植生部A1,A1)ずつ収穫していくが、まず、図1に示すように、機体フレーム2の前部において掘出し装置3でネギPの根部Paを掘出し(土をほぐす)、その根掘りしたネギP1を前搬送部4Aの始端部で保持して後方に搬送し、その搬送ネギを符号P2で示すように前搬送部4Aの終端部から後搬送部4Bに始端部に移乗させ、続いて後搬送部4Bにおける姿勢傾動装置5(上挟持ベルト52と下挟持ベルト53)部分で鉛直姿勢のネギP3を後傾姿勢(符号P4)にした状態で、後搬送部4Bの終端部からその直下の収納容器7内に順次落下・収納させる。又、収納容器7内に収納されたネギ群の量が増えるのに連れて(重量が重くなるのに比例して)、そのネギ群重量によって収納容器7が順次下動していき、後搬送部4Bの終端部から収納容器7内に堆積されたネギ群の上面までの落下距離を常にほぼ一定に維持するようになる。これにより、後搬送部4Bの終端部から順次収納容器7内に落下してくる各ネギP5の位置及び姿勢を順次揃えることができる。
他方、クローラ12の前進駆動中は、上記のように各補助輪61,61の帯体摺接輪63,63がクローラ弾性帯体13の下面走行部上面13aに摺接していることにより、各補助輪61,61(接地輪62も含む)がそれぞれ進行方向側(図1の左回転方向側)に連続回転している。
ところで、この収穫機による収穫作業中は、1列のクローラ12で前進走行されるが、1列のクローラ12しか接地していないと、左右のバランスが不安定となって収穫機が左又は右に傾動し易くなる。そして、収穫機が左又は右に所定小角度(例えば3〜4°程度の安定姿勢)だけ傾動したときに、その傾動側の補助輪61の接地輪62が地面に接触して収穫機の傾動力を支えるので、収穫機がそれ以上大きく傾動するのを阻止することができる。
従って、細幅で1列だけのクローラ12を使用したものであっても、収穫作業中に左右のハンドルグリップ部19をさほど強く支持しなくても収穫機が大きく傾動することがないので、傾動阻止のための注意力や支持力が不要となり、その分、収穫作業が容易に行える。又、各補助輪61,61により、収穫機が不用意に横転することがないので、安全性が向上する。
さらに、収穫機が傾動して、その傾動側の補助輪61の接地輪62が接地したときに、該接地輪62が進行方向側に回転しながら地面に接触するので、該接地輪62の接地時の接地抵抗(接地輪62で地面の土を前方に押す作用)は発生しない。特に、各補助輪61,61における接地輪62が帯体摺接輪63より大径となっていると、クローラ12の駆動時において、帯体摺接輪63の周面速度(弾性帯体13の走行速度と同じ)より接地輪62の周面速度がやや速くなり、接地輪62が接地したときの接地抵抗は全く発生しない。従って、接地輪62の接地時に、ハンドルが接地側にとられることがないので、違和感なしに運転を継続できる。
又、収穫作業中は、左右の補助輪61,61の各帯体摺接輪63,63がそれぞれクローラ弾性帯体13の下面走行部上面13aに摺接している(上から押さえている)ので、例えば地面にコブ状の隆起部があって弾性帯体13が該隆起部上に乗り上げても、弾性帯体13が弾性変形しない(上側に撓まない)ようになっている。このことは、弾性帯体13に対する耐久性が向上することを意味する。
他方、収穫機の前進走行中は、機体前部の下面にある浮き上がり防止手段25,25(薄板材27,27)が圃場面Gの下の土中を進行するので、クローラ12が圃場面Gの凹凸部分に乗り上げて、機体前部が上方に浮き上げられるような作用が発生しても、略水平向きの薄板材27が抵抗となって機体前部の浮き上がりを防止するようになる。
従って、収穫機による収穫作業時において、浮き上がり防止手段25により収穫機を常時安定姿勢(掘起こし爪31が土中に入っている状態)で走行させることができるので、機体前部の浮き上がりによるトラブルを未然に防止できる。
図7及び図8には、第1実施例の浮き上がり防止手段25の変形例(第2実施例)を示している。尚、この第2実施例における図7は第1実施例の図5に相当するものであり、同図8は同図6に相当するものである。
図7及び図8に示す第2実施例の各浮き上がり防止手段25,25も、図2における2組の各デバイダのそれぞれ外側に位置する2つのデバイダ23,23の下部に設けた各接地台24,24の下面から下方に垂下させたものである。そして、この図7及び図8の浮き上がり防止手段25は、1枚物の板材28の下部側(符号29)を内側に略「く」形に折曲させたものを使用し、該板材28の上部側を鉛直姿勢にした状態でその上端部を接地台24の下面に溶接している。尚、この板材28の進行側前端面28aも、前方に所定角度(例えば角度60〜70°程度)下降傾斜させているとともに、該進行側前端面28aを鋭角状に尖らせて、土中進行時の抵抗が小さくなるようにしている。
この第2実施例(図7及び図8)の浮き上がり防止手段25,25でも、土中進行時に各板材28,28の折曲部(横曲げ部)29,29が、機体前部が浮き上がろうとするときの抵抗となって機体前部の浮き上がりを防止するようになる。