本発明の実施の形態について説明する。
図1から図8に示すのは、実施例の一つとして示す作物収穫機の一種である歩行型の玉葱収穫機である。本件発明では、機体の前進方向を基準として右側を左右一側、左側を左右他側と称するものとする。
図1、図2で示すとおり、メインフレーム1の後部にエンジン2とミッションケース3を内装する駆動ケース4を設け、該駆動ケース4の上部に燃料タンク5を設けるとともに、前部に分岐伝動ケース6を設ける。そして、該分岐伝動ケース6の前部に側面視「へ」の字形状の左右のハンドル支持フレーム7,7の基部を垂直姿勢で設け、該左右のハンドル支持フレーム7,7の屈曲部より上側を後上がり傾斜姿勢で配置し、該左右のハンドル支持フレーム7,7の後端部を平面視で「コ」の字形状のハンドル8で連結する。該ハンドル8は燃料タンク5よりも機体後方に突出させて配置し、該ハンドル8の左右両側にはサイドクラッチ機構(図示省略)を入切させるクラッチハンドル9,9を各々設ける。
さらに、図2で示すとおり、前記燃料タンク5の左右一側に機体の前後進及び走行速度を操作する走行操作レバー10を設けるとともに、左右他側に収穫作業の入切を切り替える作業操作レバー11を設ける。
そして、前記分岐伝動ケース6から前側上方に向かって左右の引抜駆動シャフト12,12を後下がり傾斜姿勢で設け、該左右の引抜駆動シャフト12,12の上端部に左右の引抜駆動プーリ13,13を各々装着するとともに、該左右一側の引抜駆動プーリ13よりも下側に排葉駆動プーリ14を装着する。また、前記左右の引抜駆動プーリ13,13の下部に前後方向の長辺を有する左右の引抜フレーム15,15を後上がり傾斜姿勢で各々設け、該左右の引抜フレーム15,15の前端部に左右の引抜従動プーリ16,16を各々回転自在に設ける。さらに、該左右の引抜従動プーリ16,16と左右の引抜駆動プーリ13,13の前後間に亘って複数の左右のテンションローラ17,17…を回転自在に設け、左右の引抜従動プーリ16,16と左右の引抜駆動プーリ13,13と左右のテンションローラ17,17…に玉葱の茎葉部を挟持して圃場から引き抜く左右の引抜搬送ベルト18,18を夫々巻回する。そして、前記左右の引抜フレーム15,15の上方に左右の引抜カバー19,19を左右の引抜フレーム15,15と平行姿勢、即ち傾斜角度を略同じとする後上がり傾斜姿勢で設けることにより、引抜搬送装置20が構成される。
また、前記排葉駆動プーリ14の下方に排葉フレーム21の基部側を設け、該排葉フレーム21の端部側を後側の左右一側に向けて突出させ、該排葉フレーム21の端部側に排葉従動プーリ22を回転自在に設ける。そして、該排葉駆動プーリ14と排葉従動プーリ22に排葉を引っ掛ける排葉ラグ23a…を複数設けた排葉搬送ベルト23を巻回するとともに、前記排葉フレーム21の上方に排葉カバー24を平行姿勢、即ち端部側を後側の左右一側に向けて突出させて配置することにより、排葉搬送装置25が構成される。
上記構成としたことにより、後述する切断回転刃49及び切断固定刃で切断した玉葱の茎葉部が引抜搬送装置20の終端部まで移動すると、茎葉部は排葉ラグ23a…に回収されて搬送され、機体左右一側に突出する排葉搬送装置25の搬送終端部から機外、または後述する右側駆動輪84R上に排出されるため、機体上に茎葉部が残ることが防止され、切断された茎葉部の除去作業が容易になり、メンテナンス性が向上する。
また、図1で示すとおり、前記分岐伝動ケース6の左右両側に左右の偏心カム26,26を設け、該左右の偏心カム26,26に左右の揺動ロッド27,27の後端部を各々設け、該左右の揺動ロッド27,27の前端部に上下方向に長辺を有する左右のソイラアーム28,28を各々前後回動自在に設ける。該ソイラアーム28,28の下部側には上下方向に亘って複数の取付穴28a…を形成し、該取付穴28a…の何れかに土中の玉葱に側方及び下方から接近して周辺の土を揺動して解す左右の掘起しソイラ29,29の穴部29a…を合わせ、ボルト等の固定部材29b…を介して装着する構成とする。
なお、左右の掘起しソイラ29,29は下部側を引抜搬送域R側に屈曲させ、正面視でL字形状(逆L字形状)に形成している。
さらに、前記引抜搬送装置20の前端部に設けた左右の引抜従動プーリ16,16の左右の回転軸16a,16aの上端部を左右の引抜カバー19,19を貫通させて上方に突出させ、該左右の回転軸16a,16aの上端部に左右の入力プーリ31,31を機体前側部分に内装した左右の伝動ケース34,34を後上がり傾斜姿勢で左右の引抜カバー19,19の上部に設ける。また、該左右の伝動ケース34,34の後側に左右の出力プーリ32,32を回転自在に各々内装するとともに、該左右の入力プーリ31,31と左右の出力プーリ32,32に左右の伝動ベルト33,33を各々巻回する。
そして、前記左右の出力プーリ32,32の上部側に左右の第1ユニバーサルジョイント35,35の下端部を装着し、該左右の第1ユニバーサルジョイント35,35の上端部に左右の横引起し駆動プーリ36,36を各々装着するとともに、該左右の横引起し駆動プーリ36,36を装着する左右の横引起しフレーム37,37を後上り傾斜姿勢で配置する。該左右の横引起しフレーム37,37の後上がり傾斜角度は、前記左右の引抜フレーム15,15の後上がり傾斜角度よりも大きく設定する。そして、該左右の横引起しフレーム37,37の下端部に左右の横引起し従動プーリ38,38を各々回転自在に設け、該左右の横引起し駆動プーリ36,36と左右の横引起し従動プーリ38,38の上下間に複数の横引起しテンションプーリ(図示省略)を設ける。さらに、左右の横引起し駆動プーリ36,36と左右の横引起し従動プーリ38,38と複数の横引起しテンションプーリにゴムやスポンジ等の弾性体で構成する複数の横引起しラグ39a…を等間隔に設けた左右の横引起しベルト39,39を巻回し、該左右の横引起しベルト39,39の上方に前記左右の横引起しフレーム37,37と平行姿勢で左右の横引起しカバー40,40を各々設けることにより、横引起し装置41が構成される。
なお、前記左右の横引起しベルト39,39に設けた横引起しラグ39,39…は、先端部同士が引抜搬送装置20の引抜搬送域Rに近接するとともに互いに接触しない位置に配置する。
上記構成により、横引起しラグ39a,39a同士が接触することが防止されるので、接触の衝撃で引き起こし中の茎葉部が落下することが防止され、引抜搬送装置20で確実に玉葱を圃場から引き抜くことができ、作業能率が向上する。
また、前記左右の出力プーリ32,32の下部側に左右の第2ユニバーサルジョイント42,42の上端部を設け、該第2ジョイント42,42の下端部に左右の肩揃え駆動プーリ43,43をそれぞれ設ける。そして、該左右の肩揃えプーリ43,43の上部及び下部に、左右の上部肩揃えフレーム44,44と左右の下部肩揃えフレーム45,45の前端部を設け、該左右の上部肩揃えフレーム44,44と左右の下部肩揃えフレーム45,45の後端部に左右の肩揃え従動プーリ46,46を各々回転自在に装着し、該左右の肩揃え駆動プーリ43,43と左右の肩揃え従動プーリ46,46に左右の肩揃えベルト50,50を無端状に巻回する。さらに、前記左右一側または左右他側の引抜駆動プーリ13と左右の引抜従動プーリ16の前後間に切断出力プーリ47を回転自在に設け、該切断出力プーリ47に設ける第3ユニバーサルジョイント48の下端部に玉葱の茎葉部を切断する切断回転刃49を着脱自在に設け、左右一側または左右他側の上部肩揃えフレーム44上に切断固定刃(図示省略)を着脱自在に設けることにより、引抜搬送装置20で搬送中の玉葱の上昇を下部肩揃えフレーム45,45で制限し、茎葉部の切断位置を所定位置に揃えてから切断する、肩揃え装置51が構成される。
上記構成により、切断位置が所定位置に揃えられてから茎葉部が切断回転刃49と切断固定刃に切断されるので、茎葉部が大きく切り残されて作業者が後から手作業で茎葉部を切断する作業が不要となるので、作業者の労力が軽減されるとともに、作業能率が向上する。
また、玉葱が持ち上げられ過ぎ、切断回転刃49と切断固定刃が玉葱の球形部分、所謂可食部を切断することを防止できるので、玉葱が傷付くことがなく、玉葱の商品価値が維持される。
なお、該切断固定刃は引抜搬送域R上で切断回転刃49と重なり合うことにより、玉葱の茎葉部を挟んで切断する構成となり、茎葉部を逃がすことなく切断することができるので、玉葱に茎葉部が切断されずに残り、作業者が手作業で残葉を切断する作業が不要となる。
ただし、玉葱の茎葉部切除する際、球形部分の近傍から切除すると商品価値を有する可食部が傷付き、品質や商品価値の低下を招くので、茎葉部の下端部側は僅かに切り残されるものとする。
また、切断回転刃49と切断固定刃を着脱自在に設けたことにより、玉葱の乾燥作業を吊り下げて行うときは、茎葉部を切断することなく掘り起こすことができるので、作業条件の適応性の高い作物収穫機となる。
前記肩揃え装置51の左右後部には、前記分岐伝動ケース6から駆動力を受けて回転する案内駆動プーリ52,52を設けた左右の案内駆動ケース55,55を後下がり傾斜姿勢で且つ後部側を上下回動自在に設け、該左右の案内駆動ケース55,55の後側下部に案内従動プーリ53,53を夫々回転自在に設け、該案内駆動プーリ52,52と案内従動プーリ53,53に案内ベルト54,54を巻回して、左右の案内装置56,56を形成している。
上記構成により、マルチフィルム等を畝上に敷設して玉葱を栽培しており、移植作業の際に形成する穴部の周縁部と茎葉部が絡み合い、玉葱の引抜収穫の際にマルチフィルムを一緒に持ち上げることがあっても、左右の案内装置56,56がマルチフィルム越しに玉葱に接触して後側下方に案内することができるので、玉葱が落下する際にマルチフィルムが極端に重なり合うことが防止され、マルチフィルムの除去作業が容易になるとともに、畝上に掘り起こした玉葱の回収作業が容易になる。
また、左右の案内装置56,56を後部側を上下方向に回動可能に構成したことにより、マルチフィルムを敷設しない露地栽培の玉葱を収穫するときなど左右の案内装置56,56が不要なときには案内作用部をメインフレーム1側に退避させることができるので、様々な作業条件に適応可能な作物収穫機となる。
上述のとおり、左右の案内装置56,56はマルチフィルムに接触し得るので、マルチフィルムの破損を防止すべく、左右の案内ベルト54,54はゴムよりもスポンジ等の摩擦力の弱い素材で構成することが望ましい。
前記分岐伝動ケース6の左右他側に第2分岐伝動ケース6aを設け、該第2分岐伝動ケース6aの前部から機体前方に向かって出力軸57を設け、該出力軸57の前端部に駆動力を左右他側から左右一側に向かう方向に変更するベベルケース58aを装着する。該ベベルケース58aの内部には、一対のベベルギア(図示省略)が内装されており、この一対のベベルギアを介して出力ケース57内の出力軸の駆動力を縦引起し伝動軸58に伝達する。そして、該縦引起し伝動軸58の左右一側端部と左右他側端部と左右方向の略中央部に縦引起し駆動プーリ59,59,59を各々装着し、該縦引起し駆動プーリ59,59,59の左右両側を覆う縦引起しカバー60,60,60を後上がり傾斜姿勢で且つ上下回動自在に装着する。また、該縦引起しカバー60,60,60の下端部に縦引起し従動プーリ61,61,61を各々設け、該縦引起し駆動プーリ59,59,59と縦引起し従動プーリ61,61,61に圃場に倒伏している玉葱の茎葉部を引き起こす縦引起しラグ62a…を複数設けた縦引起しベルト62,62,62を巻回して、縦引起し装置63を構成する。
なお、前記縦引起し装置63の後上がり傾斜角度は、前記横引起し装置41の後上がり傾斜角度と略同じ傾斜角度とする。これにより、縦引起し装置63が引き起こした茎葉部が縦引起しラグ62a…から離れるタイミングで横引き起こし装置41の横引起しラグ39a…に引き継がれるので、茎葉部を確実に引き起こして引抜搬送装置20の搬送始端部に案内でき、玉葱の収穫作業能率の向上が図られる。
図1、図2で示すとおり、前記縦引起し伝動軸58の左右一側端部に第4ユニバーサルジョイント64の基部側を設け、該第4ユニバーサルジョイント64の端部側を後方に向けて屈曲させて、畝引起し駆動プーリ65を装着する。そして、該畝引起し駆動プーリ65の左右両側を覆う上下方向に長辺を有する畝引起しカバー66を後上がり傾斜姿勢で且つ上下回動自在に設け、該畝引起しカバー66の下端部に畝引起し従動プーリ67を回転自在に装着する。また、該畝引起し駆動プーリ65と畝引起し従動プーリ67の前後間に複数のテンションプーリ(図示省略)を設け、畝引起し駆動プーリ65と畝引起し従動プーリ67とテンションプーリに畝引起しベルト68を巻回する。さらに、該畝引起しベルト68にはゴムやスポンジ等の弾性体で構成する複数の畝溝引起しラグ68a…を所定間隔ごとに設けることにより、機体左右一側の畝溝に垂れ下がっている玉葱の茎葉部を引き起こす畝溝引起し装置69が構成される。
さらに、前記縦引起し伝動軸58の左右一側端部で且つ第4ユニバーサルジョイント64の後方にゲージ輪昇降ケース70を設け、該ゲージ輪昇降ケース70の下部に中空の上部アーム71を設け、該上部アーム71の中空部にゲージ輪73を回転自在に装着する下部アーム72を上下動自在に設ける。また、該上部アーム71と下部アーム72にパンタグラフ機構74の上下端部を各々設けるとともに、該パンタグラフ機構74の支点軸に設けた支持ローラ74a上に前記畝引起しカバー66の左右一側に設ける受プレート66aを載置する。
そして、前記駆動ケース4に固定プレート75を設ける、該固定プレート75と前記ゲージ輪昇降ケース70の後部の間に前後長の調節が可能なターンバックル76を設け、該ターンバックル76を伸張または収縮させて前記下部アーム72を上下動させるゲージ輪調節ハンドル77を設ける。
なお、前記畝溝引起し装置69は、正面視で上端部側から下端部側に向かうほど機体左右一側に傾斜する姿勢で配置する。この構成により、畝に沿って垂れ下がっている茎葉部に畝引起しラグ68a…が接触しやすい配置となるので、畝溝に垂れ下がっている茎葉部を確実に引き起こし、ゲージ輪73に茎葉部が踏み付けられて引き起こし作業や引抜収穫作業に滞りが生じることが防止される。
また、上端部側に向かうほど畝引起しラグ68a…が機体左右一側の縦引起しベルト62に接近する構成となるので、畝溝から引き起こした茎葉部が縦引起し装置63に引き継がれやすくなり、玉葱の引抜収穫作業能率が向上するとともに、圃場に残された玉葱を作業者が拾い集める作業が省略され、作業者の労力が軽減される。
そして、前記ゲージ輪73は上下位置にかかわらず畝溝引起し装置69よりも後側に位置する構成とする。一例として、畝溝引起し装置69の後側、即ち畝溝の茎葉部の引起し作用域でない領域が、ゲージ輪73上に乗った状態としてもよい。また、前記ターンバックル76は前後端部が屈曲自在なユニバーサルジョイントを用いると、角度の変化に対応しやすく、ゲージ輪73の上下位置調節の幅が広くなる。
上記構成としたことにより、畝溝に垂れ下がっている収穫畝上の玉葱の茎葉部をゲージ輪73が踏み付ける前に引き起こすことにより、縦引起し装置63や横引起し装置41が確実に玉葱の茎葉部を引き起こすことができるので、引き起こされた茎葉部を引抜搬送装置20で挟持して土中から引き抜くことができ、作業者が手作業で残された玉葱を引き抜く作業が不要となり、作業者の労力が軽減される。
また、収穫畝上の玉葱の茎葉部と隣接畝上の玉葱の茎葉部が畝溝に垂れ下がって絡み合っていても、茎葉部同士を持ち上げて絡み合いを解くことができるので、隣接条の玉葱を半端に引き上げることが防止され、引抜搬送装置20で確実に玉葱を引き抜くことが可能になる。
そして、ゲージ輪調節ハンドル77を操作してゲージ輪73を設けた下部アーム72を上昇または下降させることにより、横引起し装置41や引抜搬送装置20の作用位置を玉葱の生育状態や畝の高さに合わせて変更することができるので、茎葉部の引き起こしや引抜搬送が確実に行われ、作業能率が向上する。
さらに、上部アーム71と下部アーム72を連結するパンタグラフ74の回動部を前後方向に摺動自在に設けたことにより、ゲージ輪73の上下位置の変更に連動して畝溝引起し装置69の作用位置が自動的に上下動されるので、畝溝引起し装置69の調節作業が不要となり、作業能率が向上する。
図1、図2で示すとおり、前記駆動ケース4の左右一側に右側出力軸78Rを設け、該右側出力軸78に走行駆動スプロケット79を装着し、該走行駆動スプロケット79を右側走行伝動ケース80Rの上端側に内装する。そして、該右側走行伝動ケース80Rを後上がり傾斜姿勢とし、機体前側に位置する右側走行伝動ケース80Rの下端側に走行従動スプロケット81を回転自在に内装し、該走行駆動スプロケット79と走行従動スプロケット81に走行伝動チェーン82を巻回する。
なお、走行伝動チェーン82の巻回域内にテンションスプロケットを設けたり、負荷がかかると走行伝動チェーン82から退避して駆動を停止させて破損を防止するクラッチ機構を設けてもよい。
また、前記走行従動スプロケット81に車軸83を装着し、該車軸83に右側駆動輪84Rを設ける。さらに、前記右側走行伝動ケース80Rの後側上端部に左右の支持プレート85、85を設け、該左右の支持プレート85、85と前記上部フレーム71の後部との間に調節ロッド86を回転自在に設け、該調節ロッド86を回転させて右側走行伝動ケース80Rの後上がり傾斜角度を変更するスイング調節ハンドル87を装着する。該調節ロッド86の前端部には、上部フレーム71を上下回動自在に取り付ける。
上記構成によれば、スイング調節ハンドル87を操作して右側走行伝動ケース80Rの後上がり傾斜角度を変更すると、右側駆動輪84Rの上下位置が変更されるため、傾斜地や畝が崩れた圃場で作業をするときは右側駆動輪84Rの上下位置を変更して機体を圃場面に対して略水平姿勢とすることができるので、玉葱の茎葉部の引き起こしや玉葱の引き抜きが確実に行われるため、抜き残した玉葱を作業者が手作業で引き抜く作業が不要となり、作業者の労力が軽減される。
また、調節ロッド86の前端部に上部フレーム71を上下回動自在に装着したことにより、スイング調節ハンドル87を操作して右側走行伝動ケース80Rを上下回動させると上部フレーム71が連動して上下回動するので、右側駆動輪84Rの上下位置に連動してゲージ輪73の接地高さを変更することができ、調節作業を容易に行えるとともに、畝溝茎葉引起し装置69や縦引起し装置63の茎葉部の引起し高さが自動的に適切な位置に調節されるので、引抜搬送作業が能率よく行われる。
一方、図2で示すとおり、機体左右他側の第2分岐伝動ケース6aの左右他側端部に左側出力軸78Lを左右方向にスライド自在に設け、該第2分岐伝動ケース6aの後部に取付プレート88を設け、該取付プレート88と駆動ケース4とでトレッド調節シリンダ89の固定側89aを支持する。そして、前記左側出力軸78Lに走行駆動スプロケット79を装着し、該走行駆動スプロケット79を左側走行伝動ケース80Lの上部に内装する。さらに、該左側走行伝動ケース80Lを後上がり傾斜姿勢とし、機体前側に位置する左側走行伝動ケース80Lの下端側に走行従動スプロケット81を回転自在に内装し、該走行駆動スプロケット79と走行従動スプロケット81に走行伝動チェーン82を巻回する。また、前記走行従動スプロケット81に車軸83を装着し、該車軸83に左側駆動輪84Lを設ける。
そして、前記トレッド調節シリンダ89の移動側89bを該左側走行伝動ケース80Lの上端部に連結し、トレッド調節シリンダ89を伸張させると移動部89bと左側伝動軸78Lが左右他側方向に移動して左側走行伝動ケース80Lがメインフレーム1から離間し、右側駆動輪84Rと左側駆動輪84Lの左右間隔が広くなる構成とする。一方、前記トレッド調節シリンダ89を収縮させたときは、移動部89bと左側伝動軸78Lが左右一側方向に移動して左側走行伝動ケース80Lがメインフレーム1に接近し、右側駆動輪84Rと左側駆動輪84Lの左右間隔が狭くなる構成とする。
上記構成により、畝の左右幅に合わせて左側駆動輪84Lの左右位置を変更することができるので、畝の左右幅の異なる圃場で作業をするときに左側駆動輪84Lを畝上を移動させる必要が無く、安定した姿勢で玉葱の引抜収穫作業が行え、作業能率が向上する。
また、機体を軽トラック等の荷台に積み込むときや、倉庫等に収容する際には左右の駆動輪84L,84Rの左右間隔を限界まで狭くすることにより、機体の左右幅を短くすることができるので、機体の積み込み作業や収納作業が能率よく行える。
なお、前記右側駆動輪84Rの内周部には、隣接条から垂れ下がっている玉葱の茎葉部がスポークや車軸83に絡み付くことを防止するホイールカバー84aを着脱自在に設けると、茎葉部が絡み付いて隣接条の玉葱を引き抜いてしまい、引抜搬送装置20で引抜収穫できなくなることが防止され、作業能率が向上する。
また、図5、図6で示すとおり、前記メインフレーム1の左右一側で且つ右側駆動輪84Rの上方に、排葉搬送装置25の終端部から落下してくる茎葉部を受ける駆動輪カバー90を設ける構成としてもよい。該駆動輪カバー90の後部側には右側駆動輪84Rに沿う円弧部90aを構成し、該円弧部90aよりも前側には平坦部90bを形成する。
上記構成により、排葉搬送装置25から排出される茎葉部を駆動輪カバー90の平坦部90bに載置する、または円弧部90aに沿って畝溝に落下させることができるので、茎葉部が右側駆動輪84Rの車軸83やスポークに絡み付くことが防止され、過負荷により駆動が停止することがなく作業能率が向上するとともに、絡み付いた茎葉部を除去する作業が不要となり、メンテナンス性が向上する。
また、平坦部90bに茎葉部を載置することにより、切断された茎葉部をまとめて回収することができるので、切断した茎葉部を集める作業が容易になり、作業者の労力が軽減されるとともに、作業能率が向上する。
なお、切断した茎葉部を圃場内で生分解させて肥料とするときは、作業者が平坦部90bに載った茎葉部を円弧部90a側に移動させたり、掴んで圃場に撒いたりすればよい。
前述のとおり、本件の作物収穫機には左右の掘起しソイラ29,29が設けられており、玉葱の収穫時には畝の端からこの左右の掘起しソイラ29,29を進入させ、玉葱の左右両側及び下方から振動を与えて周囲の土を解す構成としている。しかしながら、上述した本件の作物収穫機では、左右の駆動輪84L,84Rの間隔は4条分並べて玉葱を植えている畝の左右幅に対応可能であるものの、引抜搬送装置20は1または2条分の玉葱を収穫するものであるので、畝上にマルチフィルムを敷設しているときは、畝側の掘起しソイラ29を土中に進入させることができない。マルチフィルムを除去すれば畝側の掘起しソイラ29の進入も可能となるが、伸びた茎葉部を切除することなくマルチフィルムを除去することはきわめて困難である。
図8(a)は、マルチフィルムを敷設したままで玉葱の引抜収穫を行う際に用いられる従前のL字型ソイラ200であり、畝端部、即ち機体左右一側に取り付け、刃部200aをマルチフィルムよりも下方から畝内に進入させ、玉葱の左右一側及び下方から振動を与えて土を解すものである。しかしながら、このL字型ソイラを用いるときは、一旦左右の掘起しソイラ29,29を取り外してから装着する必要があり、換装作業に多くの時間と作業者の労力を要している。
上記の問題を解消すべく、図1、図3、図4、図6、図7及び図8(b)〜(d)で示すとおり、マルチフィルムを敷設した圃場で引抜収穫作業を行うときは、まず機体左右他側の掘起しソイラ29を取り外す。そして、機体左右一側の掘起しソイラ29の刃部に、中空の延長ソイラ刃91を装着し、ボルトとナット等の固定部材で固定する。この延長ソイラ刃91の左右長さは、従前のL字型ソイラ200の刃部200aの左右長さと同程度の長さとする。
上記構成としたことにより、左右一側の掘起しソイラ29を取り外すことなくマルチフィルム敷設時の引抜収穫作業に対応することができるので、換装作業に要する時間や労力が短縮される。
上記構成により、マルチフィルムを避けて玉葱の周囲の土を解すことができる。しかしながら、マルチフィルムの左右端部が畝を形成する土に強固に抑えられていると、玉葱が十分に持ち上げられず、引き抜きや茎葉部の切断の妨げになることがある。また、玉葱を回収する際にはマルチフィルムを除去する必要があるが、土に押さえられていると除去作業に要する労力が増大する。
上記の問題を解決すべく、図7で示すとおり、取り外した左右他側の掘起しソイラ29を、刃部29dを左右一側方向に向けて左右一側の掘起しソイラ29に装着する構成とするとよい。
上記構成により、左右他側の掘起しソイラ29の刃部29dが畝の端部で且つマルチフィルムの端部近傍の土を解すことにより、マルチフィルムを押さえている土を崩すことができるので、マルチフィルムの除去が容易に行えるため、作業能率が向上するとともに、作業者の労力が軽減される。
また、図3、図4や図7で示すとおり、左右他側の掘起しソイラ29の刃部29dに、延長ソイラ刃91よりも下方で土中に進入する刃部を前端部に備え、該刃部の後側に板状の連結部を備え、該連結部から後端部に亘って円弧状に屈曲した案内部を備えるマルチ剥離ソイラ92を装着する構成としてもよい。
しかしながら、玉葱を4条に亘って植えており、先に収穫する2条においては、マルチフィルムを持ち上げると未収穫側の玉葱が一緒に持ち上がり、引抜搬送装置20で挟持することができなくなるおそれがある。
これを防止すべく、図6,図7で示すとおり、機体左右他側の縦引起しカバー60の左右他側の下端部にマルチカッタ93を回転自在に装着し、接地抵抗によって回転してマルチフィルムを切断する構成とすると、マルチフィルムを持ち上げても未収穫側の2条のマルチフィルムは持ち上がらなくなる。
なお、該マルチカッタ93は上方に退避可能に構成し、マルチフィルムを敷設していない圃場やマルチフィルムの切断を行いたくないときには非作用状態とすることができる構成とする。
上記構成により、マルチフィルムを後側上方に案内することができるので、引抜搬送装置20が玉葱を土中から引き抜く際にマルチフィルムが抵抗となることが防止され、玉葱が土中に残ることが無く、作業者が残った玉葱を回収する必要が無く、作業者の労力が軽減される。
また、マルチフィルムとともに未収穫側の玉葱が持ち上がることを防止できるので、引抜搬送装置20で確実に玉葱を引抜収穫することができ、作業能率が向上する。
なお、左右の掘起しソイラ29,29の刃部29dを前後両方に形成すると、左右の区別がなくなるため、メンテナンス等の際に両方の掘起しソイラ29,29を外した際に組み付け間違いとなることがなく、作業能率が向上する。
また、組み付け方向を決めておき、前方として用いていた側の刃部29dが擦り減ったときは、左右の掘起しソイラ29,29を各々反転させて逆側に取り付ければ即座に土中進入作用を得ることができるので、左右の掘起しソイラ29,29の耐久性が向上する。
次に、マルチフィルムを敷設しない露地栽培における実施例を説明する。
図5〜図7で示すとおり、前記下部アーム72の下端部に二股形状の取付ステー72aを設け、該取付ステー72aの左右内側にゲージ輪73を設けるとともに、左右外側にゲージ輪73の前側を覆うゲージ輪カバー94を設ける。該ゲージ輪カバー94はゲージ輪73の車軸73aを回動軸として上下方向に回動可能に構成する。
なお、ゲージ輪カバー94の後端部側は取付ステー72aの左右幅と略同じ幅、即ちゲージ輪73の左右幅よりも広く構成し、前端部に向かうほど先細りとなる形状とするとともに、側面視では前面を円弧状に形成する。
また、前記縦引起しカバー60,60,60の下端部に回動プレート95,95,95を各々上下回動自在に設け、機体左右他側と機体左右中央の回動プレート95,95の前端部に分草バー96,96を各々機体前側に向けて突出させて設ける。さらに、機体左右一側の回動プレート95の前端部に、該分草バー96,96よりも前後方向に長い第2分草バー97を機体前側に向けて突出させて設ける。
なお、前記回動プレート95,95,95の後端部にはボルト等の固定部材98,98,98を設け、回動プレート95,95,95が前方または後方に回動し切った位置で固定可能に構成すると良い。
上記構成により、畝溝に垂れ下がっている玉葱の茎葉部をゲージ輪カバー94で掻き分けながら進むことができるので、いっそう茎葉部をゲージ輪73が踏み付けることが防止され、茎葉部の引き起こし作業や引抜収穫作業が正常に行われるため、作業能率が向上するとともに、圃場に残った玉葱を手作業で回収する必要が無くなる。
また、縦引起し装置63で茎葉部を引き起こす前に分草バー96,96と第2分草バー97とで圃場面に伏せている茎葉部を持ち上げて案内することができるので、茎葉部の引き起こしが確実に行われ、玉葱の引抜収穫作業能率が向上する。
さらに、第2分草バー97を分草バー96,96よりも長く構成したことにより、畝溝引起し装置69やゲージ輪カバー94が持ち上げた茎葉部をいち早く引き継ぐことができるので、いっそう茎葉部の引き起こし作業が確実に行われる。
そして、ゲージ輪カバー94を回動可能に構成するとともに、回動プレート95,95,95を回動可能に構成したことにより、マルチフィルムを敷設した圃場で作業するときは、ゲージ輪カバー94と分草バー96,96と第2分草バー97を圃場面から退避した位置に移動させておくことができるので、着脱作業が不要となり、作業能率が向上する。
特に、複数の圃場を持っているときは、圃場ごとの換装作業が不要となるため、作業能率の向上だけでなく作業者の労力や作業時間が大きく軽減される。