JP5987335B2 - 炭素長繊維強化ポリアミド樹脂プレプリグ及び成形品 - Google Patents
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また、強化繊維の折損を避けるために、成形時のせん断応力が低い圧縮成形についても検討された。しかし、強化繊維が長くなると繊維のからみ合いが起こり、流動性が著しく低下して、大型成形品や細いリブやボス構造を有する成形品は、欠肉が起こり良好な成形品が得られなかった。
繊維の絡み合いが起こらないように、繊維のロービングを単繊維状に開繊した後、ポリアミド樹脂を含浸して、強化繊維とポリアミド樹脂からなる一軸のテープ状プリプレグを予備成形した後、加熱圧縮成形する方法も開示された(例えば、非特許文献3参照)。しかし、一般のポリアミド樹脂の場合、繊維束への含浸性がおとり、ボイド含有が多くなり、強度や剛性が期待値とはかけ離れた複合材となり構造材の要求には未達であった。
すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
1.ポリアミド樹脂と炭素繊維を含有してなり、該炭素繊維を40〜80質量%含有し、該ポリアミド樹脂は融解ピーク温度Tmと降温結晶化ピーク温度Tcの差が20〜60℃である炭素長繊維強化ポリアミド樹脂プリプレグ。
2.前記ポリアミド樹脂が結晶性のポリアミド樹脂共重合体を含有する1.に記載の炭素繊維強化ポリアミド樹脂プリプレグ。
3.前記ポリアミド樹脂が2種類以上の結晶性ポリアミド樹脂を含有する1.又は2.のいずれかに記載の炭素繊維強化ポリアミド樹脂プリプレグ。
4.前記ポリアミド樹脂が1種類以上の結晶性ポリアミド樹脂と1種以上の非晶性ポリアミド樹脂を含有する1.〜2.のいずれかに記載の炭素繊維強化ポリアミド樹脂プリプレグ。
5.前記ポリアミド樹脂の主成分としてポリアミド6が含有されていることを特徴とする1.〜4.のいずれか記載の炭素繊維強化ポリアミド樹脂プリプレグ。
6.ポリアミド樹脂と炭素繊維を含有してなり、該炭素繊維を40〜80質量%含有し、該ポリアミド樹脂は融解ピーク温度Tmと降温結晶化ピーク温度Tcの差が20〜60℃である炭素長繊維強化ポリアミド樹脂成形品。
7.前記ポリアミド樹脂が結晶性のポリアミド樹脂共重合体を含有する6.に記載の炭素繊維強化ポリアミド樹脂成形品。
8.前記ポリアミド樹脂が2種類以上の結晶性ポリアミド樹脂を含有する6.又は7.のいずれかに記載の炭素繊維強化ポリアミド樹脂成形品。
9.前記ポリアミド樹脂が1種類以上の結晶性ポリアミド樹脂と1種以上の非晶性ポリアミド樹脂を含有する6.〜7.のいずれかに記載の炭素繊維強化ポリアミド樹脂成形品。
10.前記ポリアミド樹脂の主成分としてポリアミド6が含有されている6.〜9.のいずれか記載の炭素繊維強化ポリアミド樹脂成形品。
また、本発明の効果により、母相の樹脂組成物の結晶化による固化速度は、繊維束への含浸前や圧縮成形時金型内で複合材が流動充填前は遅く、その後高度の結晶化が起こることから、高い流動長と高い物性を示す複合材料が提供される。本発明が可能となった理由は、未だ明確ではないが、母相の結晶化による剛性アップが抑制されるが、炭素長繊維の効果で複合系の剛性が高く保てる効果により、離型が可能となる。樹脂の固化速度抑制と繊維補強効果の組み合わせにより、相反する特性である含浸性と離型性の両立が可能になったものと考察される。
本発明により得られた炭素長繊維強化ポリアミド樹脂複合材料を成形して得られる成形品は、自動車のフレーム部品や機械器具の構造部材やスポーツ器具などに使用される。
本発明には、炭素長繊維が40〜80質量%、好ましくは45〜70質量%含有する。40質量%未満では、構造材として本発明の目的とする強度や弾性率の要求に未達となることや、結晶性が抑制された母相では離型性が劣り、このましくない。また、80質量%を超えると。含浸性や成形時の流れ性が極度に低下するので好ましくない。また炭素長繊維40〜80質量%を含有する複合材料の場合は、本発明による繊維束への樹脂含浸性や複合材の流動性の低下の抑制効果は顕著であり、本発明の効果が発揮される。本発明に使用される炭素繊維の繊維長は、7.5mm以上であれば特に限定されない。連続繊維においても本発明の含浸性改善効果が有効である。高い機械的性質、特に高い耐衝撃性が必要な場合は、長い方が好ましく。また高い流動性が必要な場合は、短い方が好ましい。本発明の効果が特に発揮する強度と成形性の両立が必要な場合には、15mm〜70mm、好ましくは25〜50mmの炭素長繊維が使用される。
本発明における融解ピーク温度とは、示差走査熱量計(DSC)を使用し、ISO11357−3に準拠して20℃/minにて測定したピーク温度である、また結晶化ピーク温度とは、DSCを使用して前記融解ピーク温度より30℃高い温度まで加熱した後、ISO11357−3に準拠して、10℃/minで降温したときのピーク発熱温度である。複数の結晶性ポリアミド樹脂からなる場合、融解熱や結晶化熱のそれぞれの中で高い方のピーク温度から求めたTmとTcの差が、20〜60℃であればよい。
これらの中で、好ましい結晶性ホモポリマーとしてはポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミドMXD6が、好ましい結晶性共重合体としては、ポリアミド6/66、ポリアミド66/6、ポリアミド66/6I,ポリアミド6T/6,ポリアミド6T/66などが上げられる。特に、加工性と物性を両立するという面からポリアミド6を含むことが好ましい。共重合することにより、融点と結晶化温度は共に低下するが、同じ共重合比では結晶化温度の方の低下が大きいから、融解ピーク温度と降温結晶化ピーク温度の差は、共重合比ほぼ1に近くなるほど大きい。
本発明に使用される融解ピーク温度Tmと降温結晶化ピーク温度Tcの差が20〜60℃であるポリアミド樹脂組成物は、結晶性のポリアミド樹脂に予め結晶核剤および/または水素結合への配位性を有する化合物を配合することで結晶化ピーク温度は調節される。
また本発明において、結晶性ポリアミドの結晶化速度を調節するために、他の結晶化速度の遅い結晶性ポリアミド樹脂や結晶性共重合ポリアミド、非晶性ポリアミド共重合体が使用することもできる。この場合、結晶化速度を調節するには、複数のポリアミド樹脂が溶融状態において部分的に相溶することが必要であると考察される。使用される非晶性ポリアミド共重合体は、溶融状態において部分相溶性があれば特に限定されない。非晶性ポリアミドとしては、例えば、ポリアミド6T/6I,ポリアミド6/66,ポリアミド6/6I、ポリアミド6I、ポリアミド6/12などが上げられる。非晶性ポリアミド共重合体としては、結晶融点を有しないので、構造材として高い機械的な耐熱性を保持するため、ガラス転移点が100℃より高い樹脂が好ましいから、ポリアミド6T/6Iのように芳香族環を含有する方が好ましい。
2種類以上のポリアミド樹脂を含有するポリアミド樹脂組成物は溶融加工時、一部アミド交換反応により共重合化することで、わずか融点降下を示すが、本発明の効果は、組成物の結晶化ピーク温度が、融点降下した融解ピーク温度から20〜60℃低温の範囲にあれば発揮される。
好ましいポリアミド樹脂組成としては、PA6+PA6T/6I,PA6+PANDT/NDI,PA6+PA6/66,PA6+PAMXD6,PA6+PA12,PA6+PA610などが例示される。これらの配合比を、融解ピーク温度と降温結晶化ピーク温度の差を20〜60℃になるように選択される。
本発明の複合材料の製造法は特に限定されない。例えば、構成するポリアミド樹脂の最も高い融点以上に温度調節されたスクリュータイプ押出機のホッパーにポリアミド樹脂および/またはポリアミド樹脂共重合体を所定割合に予備混合して供給する。溶融樹脂をギアポンプの回転数にて計量して、樹脂の融点以上に温度調節された含浸用押出機の上流に供給する。一方、ロービング状の炭素繊維を拡張開繊し、含浸用押出機の下流に供給する。下流先端に開口部を絞ったスリットダイを備えた含浸用押出機中で樹脂圧により、炭素繊維ロービングに樹脂を含浸・脱泡する。下流開口部から吐出されたテープ状の炭素繊維とポリアミド樹脂からなる複合材料を冷却してかせに巻き取る。さらに、このテープ状複合材料(プレプリグ)を20mm以上にカットすることや、テープ状複合材料をカットせずに織物状に織って成形用に提供される。また押出機下流の出口ダイにロービング状炭素繊維を供給して、繊維の送り速度と樹脂の吐出量を調節して、所定の繊維含有率からなるストランド状の炭素繊維の樹脂被覆材を得る。このストランドを冷却してかせに巻き取る。このストランドを20mm以上にカットするか、あるいは織物状に織って成形用に提供される。
(実施例 1〜10)(実施例3は参考例である)
ポリアミド樹脂を表1に示した質量部に配合し、シリンダー温度が280℃に温度調節された2軸スクリュー式押し出し機(東芝機械社製TEM35)のホッパーに投入し、溶融混練し、ノズルから押し出されたストランドを水冷後、ペレタイズして、母相となるポリアミド樹脂ペレットを得た。
得られたペレットを100℃にて17時間真空乾燥後、シリンダー温度を280℃に温度制御した2軸押し出し機(日本製鋼所製TEX30)のホッパーに投入し、溶融し、時間当たり一定質量部を押出した。一方、表1に示した炭素繊維のロービングを100質量部になる速度で拡張開繊して押出機のダイヘッドに供給した。幅10mm・高さ0.2mmのダイから含浸被覆されたテープ状プリプレグを引き抜いて固化した後、枷に巻き取った。
テープ状プリプレグを、繊維軸を1方向に揃えて、間隔200mm,幅150mmの枷に巻き取り12層重ねた。これをIRヒータにより、280℃に予熱した後、温度200℃に温度調節された200mm×150mm×2mmの金型にセットして、5分間30MPa圧縮保持した。金型を圧縮成形機から取り出した。30分放冷後、金型を開き、厚さ約2mmの平板を得た。さらに同様に繰り返して、繊維が一軸配向した平板(UD材)を得た。
また、回転刃をセットとしたテープカッターを使用して、枷に巻き取ったテープ状プリプレグを長さ40mmにカットして短冊を得た。得られた短冊を200mm×150mm×10mmのキャビティ中にランダムに散布し、その上に195mm×145mm×6mmのステンレス板2枚を載せ、上下版共280℃に温度調節したハンドプレスにセットした。3分後から上下版の間隔を狭めていき20秒後に3MPaの圧力を2分掛けた後、キャビティにステンレス板を載荷した状態で取り出した後、表面温度が80℃になるまで放冷し、繊維が擬似等方性に配向した平板(RS材)を取り出した。
得られたUD平板とRS平板それぞれの中央部から、繊維軸方向に10mm×100mmに5本切り出し0度方向曲げ試験用テストピースを得た。また別の平板から、繊維軸と直交する方向に10mm×100mmに5本切り出し、90度曲げ試験用テストピースを得た。
上述の曲げ試験片テストピースの表層から試料10mgをDSC用サンプル容器に採取し、SEIKO INSTRUMENTS製SSC5200型DSCを使用して、ISO11357−3に準拠し、窒素40ml/min流動下で350℃まで20℃/minで昇温し、ヒートフローが最大吸熱ピークを示す温度を融解ピーク温度とした。
(2)降温結晶化ピーク温度
上述の曲げ試験片テストピースの表層から試料10mgをDSC用サンプル容器に採取し、SEIKO INSTRUMENTS製SSC5200型DSCを使用して、ISO11357−3に準拠し、窒素40ml/min流動下で350℃まで20℃/minで昇温し、350℃にて0.5分保持後、20℃/minで降温し、ヒートフローが発熱ピークを示す温度を測定し、結晶化ピーク温度とした。
(3)含浸度
上記の引く抜き成形されたプリプレグテープについて、エポキシ樹脂(シェル化学社製エポン812)で包埋した。エポキシ樹脂が硬化したあと、この上面をリファインテック社製APU138型を使用して、繊維の長さ方向からみた断面を回転砥石で研磨後、キーエンス社製ディジタルマイクロスコープVH−Z100R型を使用して、300倍にて、断面を観察した。炭素繊維束の外周を結んで求めた繊維束断面積に対する、樹脂が炭素単繊維の周囲の1/2未満である炭素繊維の外周を結んで求めたボイド断面積の和をボイド率として求めた。
(4)流動性
上記の繊維が擬似等方性に配向したRS材から直径50mm、厚さ4mmの円盤を切り出した。これを予め遠赤外線ヒータで表面を260℃まで加熱した後、表面温度を180℃に調節したヒートプレスの面盤間の中央にセットし、油圧により10MPaまで加圧して、3分保持した後、成形品を取り出した。投影機を使用して成形品の投影図得た。その投影図の面積を算定し、50mmφの面積で規格化して流動面積比から流動性を評価した。
(5)離型性 (4)にて、流動性評価として円盤を3分加圧成形した後、面盤からの剥離性から離型性を次のように評価した。◎:力を加えなくても離型、○:バーで軽く押すだけで容易に離型、△:バーでせん断力をかければ離型、×:離型困難か材料破壊
(6)曲げ特性
スタンピング成形して得られた平板から、繊維軸方向と繊維軸に垂直方向にそれぞれ切削して得た曲げテストピースを、デシケータ中で23℃にて48時間保管後、ISO178に準拠した3点曲げ試験機(オリエンテック社製テンシロン4L型)を使用して、スパン長80mm、クロスヘッド速度1mm/minによる曲げ試験を行ない、次式により、〇度方向曲げ強度を算出した。
σ=3PL/ 2bd2
ここで、σ:曲げ強度(MPa)、L:スパン長(m)、b:幅(m)、d:厚さ(m)、P:最大荷重(N)
ポリアミド樹脂の種類と配合比および繊維含有率を表2のように変更した以外は、表2に示した実施例と全く同様にプリプレグを作製した後、RS板とテストピースを成形した。
実施例と全く同様に、プリプレグテープ断面のボイド率、RS板の流動面積比、0度方向曲げ強度と90度方向曲げ強度を測定した。得られた試験データを表2に合わせて示した。
PA−A:PA6(東洋紡績製、相対粘度2.5)
PA−B:PA6T/6I=50/50(東洋紡績製試作品、相対粘度2.8)
PA−C:PAMXD6(東洋紡績製、相対粘度2.2)
PA−D:PANDT/NDI= 60/40 (東洋紡績製試作品、相対粘度2.6)
PA−E:PA6/66=95/5(東洋紡績製、相対粘度2.5)
PA−F:PA66/6=85/15,(東洋紡績製試作品、相対粘度2.6)
PA−G:PA66(東洋紡績製、相対粘度2.8)
CF(炭素繊維):帝人社製東邦テナックス IMS40(単繊維径6.4μm、6000フィラメント)
Claims (8)
- ポリアミド樹脂と炭素繊維を含有してなり、該炭素繊維を40〜80質量%含有し、該ポリアミド樹脂は融解ピーク温度Tmと降温結晶化ピーク温度Tcの差が20〜60℃であり、前記ポリアミド樹脂が結晶性のポリアミド樹脂共重合体を含有することを特徴とする炭素長繊維強化ポリアミド樹脂プリプレグ。
- 前記ポリアミド樹脂が2種類以上の結晶性ポリアミド樹脂を含有することを特徴とする請求項1に記載の炭素長繊維強化ポリアミド樹脂プリプレグ。
- ポリアミド樹脂と炭素繊維を含有してなり、該炭素繊維を40〜80質量%含有し、該ポリアミド樹脂は融解ピーク温度Tmと降温結晶化ピーク温度Tcの差が20〜60℃であり、前記ポリアミド樹脂が1種類以上の結晶性ポリアミド樹脂と1種以上の非晶性ポリアミド樹脂を含有することを特徴とする炭素長繊維強化ポリアミド樹脂プリプレグ。
- 前記ポリアミド樹脂の主成分としてポリアミド6が含有されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の炭素長繊維強化ポリアミド樹脂プリプレグ。
- ポリアミド樹脂と炭素繊維を含有してなり、該炭素繊維を40〜80質量%含有し、該ポリアミド樹脂は融解ピーク温度Tmと降温結晶化ピーク温度Tcの差が20〜60℃であり、前記ポリアミド樹脂が結晶性のポリアミド樹脂共重合体を含有することを特徴とする炭素長繊維強化ポリアミド樹脂成形品。
- 前記ポリアミド樹脂が2種類以上の結晶性ポリアミド樹脂を含有することを特徴とする請求項5に記載の炭素長繊維強化ポリアミド樹脂成形品。
- ポリアミド樹脂と炭素繊維を含有してなり、該炭素繊維を40〜80質量%含有し、該ポリアミド樹脂は融解ピーク温度Tmと降温結晶化ピーク温度Tcの差が20〜60℃であり、前記ポリアミド樹脂が1種類以上の結晶性ポリアミド樹脂と1種以上の非晶性ポリアミド樹脂を含有することを特徴とする炭素長繊維強化ポリアミド樹脂成形品。
- 前記ポリアミド樹脂の主成分としてポリアミド6が含有されていることを特徴とする請求項5〜7のいずれか記載の炭素長繊維強化ポリアミド樹脂成形品。
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