JP6488584B2 - 炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品と金属の溶着接合体 - Google Patents
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Description
これまでは、板状や梁状の構造材として金属が使用されてきた。通常、構造体に使用されている部材としては大きな部材が多く、板状や梁状の構造の組み合わせが一般的である。目的とする部材が大きくて一体成形できない場合、これらの構造材は、いくつか組み合わせて大きな部材として使用されることが多い。金属の場合、構造材を溶接やボルトナットで構造材を接合して大きな部材を組み立ててきた。
また非構造部材においては、金属インサトートや金属アウトサートした熱可塑性樹脂の射出成形した部品や、射出成形品のボス部に金属を超音波振動によりインサートした部品が使用されている。しかし、異種材料間の接合力は弱く、接合部に凹凸を施して、機械的なアンカー効果で接合力を得ていた。
要求性能によっては、接着剤による接合がなされていた(例えば、特許文献3参照)。接着剤を使用する場合、構造用接着剤は高価であり、またその選択や工業的な使用において信頼性に課題があった。また、接着工程の生産性は低く、高い製造コストとなった。従って、異種材料を組み合わせた部材を、工業的に応用することは汎用化しなかった。
また、金属表面を予め接着層で処理して接合する方法も開示されている(特許文献4参照)。しかし、長時間を要する前処理工程が必要なことと、構造材としては、接着力が要求に未達で実用化に難があった。
ここでは、接着剤や接着層とは、被接合体の長繊維強化熱可塑性樹脂の母相をなす熱可塑性樹脂や金属ではない、第三の材料を意味する。本願発明における接着剤なしの接合は、炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品と金属成形品が直接接触した状態での接合である。
しかし、繊維強化熱可塑性樹脂成形品と金属の組み合わせからなる構造体の組み立てが、容易で短時間に、かつ信頼性の高い接合強度を有する接合方法の開発要請が根底にあった。
すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
[1] 炭素繊維と熱可塑性樹脂を構成成分とし、該炭素繊維は1000〜100000本の単繊維を含有する短冊状の繊維束を構成しており、該炭素繊維の含有率が40〜80質量%である炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品と、金属の溶着接合体であって、前記炭素繊維の長さ軸が接合面内にランダム配向しており、前記金属の少なくとも接合面の面粗度が1〜100μmであり、前記炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品と前記金属を振動溶着して得られたことを特徴とする炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品と金属の溶着接合体。
[2] 繊維束の平均長さが、15〜50mmであることを特徴とする[1]の炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品と金属の溶着接合体。
[3] 熱可塑性樹脂が、酸変性またはエポキシ変性のポリプロピレン樹脂であることを特徴とする[1]〜[2]のいずれかに記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品と金属の溶着接合体。
[4] 熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂であることを特徴とする[1]〜[2]のいずれかに記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品と金属の溶着接合体。
[5] 金属が、マグネシュウムを含有するアルミニュウム合金であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品と金属の溶着接合体。
[6] 金属が、高張力鋼であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品と金属の溶着接合体。
〔炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品の構成〕
本発明には、炭素繊維と熱可塑性樹脂を構成成分とし、該炭素繊維は1000〜100000本の単繊維、好ましくは3000〜50000本、より好ましくは8000〜30000本の単繊維を含有する短冊状の繊維束を構成しており、該炭素繊維の含有率が40〜80質量%である炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品が使用される。この炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品と金属(成形品)が接合されるが、前記炭素繊維の長さ軸は接合面内にランダム配向している。短冊状の繊維束を形成する単繊維が1000本未満では、炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品の面粗度が小さくなり、摩擦係数が小さくなり、その結果、振動溶着時の発熱が小さく、樹脂の溶融不良が起こるので好ましくない。また繊維束を形成する単繊維数が100000本を超えると、面粗度が大きくなり、摩擦係数が高すぎて、振動溶着時、成形品の相対運動がスムーズでなくなり、樹脂の溶融が不均一になるので好ましくない。
なお、本発明において、短冊状の繊維束が、炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品の屈曲部に存在する場合、その形状に合わせて屈曲してしても、短冊状と呼ぶ。また、炭素繊維の長さ軸は接合面内にランダム配向しているが、これは接合前の炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品での状態を指す。
fφ=(3<cos2φ>−1)/2 (1)
ここで、<cos2φ>は、接合面内の任意の座表軸と繊維束の長さ軸と成す角φの二乗平均である。完全一軸配向のfφは1であり、完全垂直配向のfφは−0.5、fφ=0は完全ランダムを表す。接合面をマイクロスコープで100倍程度に拡大して、任意の視野に観察される繊維束50〜100本について配向角を求めて算定される。
炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品中の炭素繊維の質量%は、プリプレグテープ作製時の炭素繊維と熱可塑性樹脂の含浸台への供給比率で調節できる。比率は、炭素繊維と熱可塑製樹脂の密度を予め測定して、これらと成形品の密度から計算で確認される。また成形品中の熱可塑性樹脂を500℃にて焼却して、その質量比率からも求められる。
使用される炭素繊維は、ポリアクリロニトル繊維や、セルロース繊維を焼成処理して得られた単繊維径が5〜12μmである炭素繊維やピッチ系の炭素繊維フィラメントを酸化処理して、サイジング剤にて1000〜100000本の単繊維を集束したものが使用される。特に、高強度のアクリルニトリル系炭素繊維が好ましい。サイジング材は、特に限定されないが、エポキシ系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系が好ましい。サイジング附着量は、作業性と開繊性が両立できるように、0.8〜5質量%が好ましい。
本発明で使用される炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品において、母相となる熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミドMXD6、ポリアミド6T共重合体、ポリアミド10T共重合体、ポリフェニレンスルフィド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチテンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ABS樹脂などが例示される。中でも、ポリプロピレン、ポリアミド6、ポリアミドMXD6,ポリアミド6T共重合体、ポリアミド10T共重合体が好ましい。更に好ましくはポリプロピレン、ポリアミド6、ポリアミドMXD6,ポリアミド10T共重合体、ポリアミド6T共重合体である。
ポリプロピレンは、炭素繊維との接着性の面から無水酸か酸変性による酸変性や、エポキシ基によるエポキシ変性されたものが好ましい。中でも、無水マレイン酸変性のポリプロピレンが特に好ましい。
炭素繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグは、以下のようにして得られる。(i)開繊した炭素繊維ロービングと溶融した熱可塑性樹脂を含浸台に供給し、出口ダイを通して引き抜くか、(ii)炭素繊維の開繊したロービングの上下を熱可塑製樹脂フイルムに挟んで含浸台に供給し、出口ダイで引き抜くか、(iii)熱可塑性樹脂を溶融押出する押出機の先端に、炭素繊維ロービングを供給して、炭素繊維ロービングを樹脂で被覆したストランドを、加熱ロールで賦形するか、(iv)炭素繊維と熱可塑性樹脂繊維を混繊して、熱可塑性樹脂を加熱賦形して、炭素繊維強化熱可塑性樹脂テープ(プリプレグテープ)が得られる。炭素繊維強化熱可塑性樹脂テープを繊維の補強効果と成形時の流動性を考慮して、適切な長さの短冊状にカットし、これを仮の容器中に無作為にばらまき、熱可塑性樹脂の融点以上に加熱圧縮した後、冷却固化して、炭素繊維束が面内にランダム配向した炭素繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグシートを得る。
図1は、炭素繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグの概観図であり、熱可塑性樹脂を含浸した炭素繊維束からなるプリプレグテープを所定の長さにカットした短冊11を、繊維軸の配向が面内ランダムになるように分散した状態である。この状態で、熱可塑性樹脂を加熱溶融して圧着することにより、炭素繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグシートが得られ、面内にランダム配向した繊維束が厚み方向に積層された形態となる。
このプリプレグシートから金型のキャビティ容積分より、僅かに多くなる分を切り出し、遠赤外線ヒーターで、熱可塑性樹脂が溶融するまで加熱溶融する。溶融したシートを、温度調節された金型のキャビティに移動して圧縮成形して成形品が得られる。
本発明に使用される金属成形品の、少なくとも接合面の面粗度は、1〜100μm、好ましくは2〜80μm、より好ましくは3〜50μmである。面粗度が、1μm未満では、振動溶着時、摩擦係数が小さく繊維強化熱可塑性樹脂の溶融不足で、溶着強度が得られない。また、100μmを超えると、振動溶着時、やはり摩擦係数が小さくなり、炭素繊維強化熱可塑性樹脂の溶融不足で、十分な溶着強度が得られないので好ましくない。前記面粗度は、接合前の金属成形品の面粗度を指す。
金属成形品の面粗度は、プレス成形に使用される板金として、予め特定の面粗度を有する板金を使用するか、任意の面粗度の板金で成形して得られた成形品の接合面をサンドペーパーやダイアモンド等の鉱物の粉末により磨き、面粗度に仕上げて接合に用いてもよい。その面粗度は、磨く粒子の大きさと磨き時間で調節できる。対象とする金属と鉱物の材質によるが、1μmの目安は#800、100μmの目安は#20である。本発明における面粗度は、JIS B0601:1994−付属書JAに準拠して、触針式表面粗さ試験機にて測定した十点平均粗さRzを意味するものである。十点平均粗さは、高い山の5点の平均と低い谷の5点の平均の和として求められる。
本発明の接合においては、接合面にエネルギーを集中する大きな突起は不要であり、平坦な接合面が好ましい。
本発明には、鋼板製、亜鉛メッキ鋼板製、スズメッキ鋼板製、マンガンやシリコンの成分を加えた引張り強度490MPa以上の高張力鋼製、アルミニュウム(1000番台)製、アルミニュウム−銅合金(2000番台)製、アルミニュウム−マンガン合金(3000番台)製、アルミニュウム−珪素合金(4000番台)製、アルミニュウム−マグネシュウム合金(5000番台)製、アルミニュウム−マグネシュウム−珪素合金(6000番台)製、アルミニュウム−亜鉛−マグネシュウム合金(7000番台)、マグネシュウム合金製の金属成形品が使用される。中でも、マグネシュウムを含有するアルミニュウム合金や高張力鋼が好ましい。更に好ましくは、5000番台、6000番台のアルムニュウム製や、合金成分を加えた鋼材で引張り強度が590MPa以上の高張力鋼製の成形品が使用される。
本発明においては、炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品と金属成形品それぞれの成形品をホルダーに保持して、接合面を密着させて、以下の条件で振動溶着により溶着接合される。面圧として、好ましくは1〜100MPa、より好ましくは5〜75MPa、さらに好ましくは10〜50MPaを負荷した状態で、接合面に沿った相対位置の振幅として、好ましくは0.2〜20mm、より好ましくは0.5〜10mm、さらに好ましくは0.8〜3mm、振動数として、好ましくは50〜1000Hz、より好ましくは100〜500Hz,さらに好ましくは150〜300Hzにて、振動時間として、好ましくは5〜300秒、より好ましくは8〜100秒、さらに好ましくは10〜50秒である。溶融に伴う成形品の位置データから接合のしろ(接合時に溶融して縮んだ量)が解る。本発明においては、しろは、0.2〜0.8mmが好ましく、特に0.3〜0.7mmが好ましい。いずれの条件も不足すると、炭素繊維強化熱可塑性樹脂が溶融不足で、高い接合強度が得られない。またいずれの条件も過剰になると、接合面に大きいバリが発生することや成形品が変形するので好ましくない。溶融接合に必要な時間、相対振動した後、面圧をかけた状態で振動を停止する。振動の停止により、熱可塑性樹脂が冷却固化した後、接合品はホルダーから取り出される。
振動溶着により接合した部分の接合強度は、接合部を含む試験体の曲げ試験による界面のせん断強度にて評価される。良好な接合強度を示す本発明による接合部材の場合、接合部の破壊は、界面剥離ではなく、接合部近傍の炭素繊維強化熱可性樹脂材料の凝集破壊がおこり、金属成形品の表面に炭素繊維強化熱可塑性樹脂の付着が観察される。
以上説明したように、本発明により炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品と金属成形品は、振動溶着により、高い接合強度を有する炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品と金属成形品が一体化した部品が製造できる。
各測定は、以下の方法で行った。
接合前の炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品の接合面をマイクロスコープで100倍に拡大して、任意の視野に観察される繊維束50本について、分度器を使用して振動溶着する時の振動方向と繊維束の長さ軸のなす角である配向角(φ)を測定し、その二乗平均(<cos2φ>)を求め、下記(1)式で算定した。
fφ=(3<cos2φ>−1)/2 (1)
完全一軸配向のfφは1であり、完全垂直配向のfφは−0.5、fφ=0は完全ランダムを表す。
金属成形品について、サンダーを掛けた後、磨き粉末は、エア噴き付けやウエスで拭き取られた。粗さが調整された接合面の粗さを、株式会社ミツトヨ製SURFTEST SV−600形を使用して、JIS B0601:1994−付属書JAに準じて、触針式により10mmトレースして、十点平均粗さRz(単位:μm)を測定した。Rzを面粗度とした。
23℃に温度調節された試験室中で、下側に支点間距離350mmとした2点の支点(15R)、可動の上側の中央に幅60mmの圧子(75R)の3点曲げ治具を装備した島津製作所製オートグラフAG−X100形に、圧子側が金属で支持側が繊維強化熱可塑性樹脂成形品となるように接合体を無効束にて支持した。クロスヘッドを5mm/分で変位して、荷重−変位関係を得て、曲げ最大荷重を求めた。
230℃、21.2N荷重下におけるマスメルトフローレートが、60.3g/10分の無水マレイン酸変性されたポリプロピレン樹脂を、シリンダー温度230℃に温度調節された押出機のホッパーに投入して、溶融した変性ポリプロピレン樹脂を含浸台に供給した。一方、東邦テナックス社製炭素繊維UTS50(12000本フィラメント)を加熱開繊して含浸台を通して、出口ダイから30m/分で引き抜き、回転ロールで厚さ0.14mm、幅15mmのテープ状に賦形した。炭素繊維強化ポリプロピレン樹脂テープ中の樹脂分率は、65質量%であった。
テープを30mmにカットして得られた短冊状の炭素繊維強化ポリプロピレン樹脂テープ416gを、縦400mm、横400mm、高さ30mmのキャビティに均一に分散した。キャビティを230℃に加熱後、1MPaのプレス圧を掛けて5分間保持した後、50℃まで冷却して、繊維長30mm、単繊維数12000本からなる繊維束が板面内にランダムに配向した厚さ2.1mmの炭素繊維強化ポリプロピレン樹脂プリプレグシートを得た。
得られた炭素繊維強化ポリプロピレン樹脂プリプレグシート中央部から縦430mm、横150mmの形状に切削して、得られたブランク材を遠赤外線加熱装置で220〜230℃に予熱した。予熱されたブランク材を130℃に温度制御されたハット形キャビティ金型にセットして、1分間3MPaの加圧下に保持した後、脱型して、図2(断面図)、図3(側面図)に示した炭素繊維強化ポリプロピレン樹脂のハット形成形品を得た。図2で21は、振動溶着の接合面となるツバ部である。また、図2、図3で、長さを表す数値の単位は、mmである。
ハット形の炭素繊維強化ポリプロピレン樹脂成形品とハット形のアルミニュウム合金成形品のツバ部のバリ取りした。その後、アルミニュウム合金のツバ部の接合面を#80サンダー処理を行い、表面を荒らした。表面の十点平均粗さRzは、5.0μmであった。
図6に繊維強化熱可塑性樹脂成形品と金属成形品の振動溶着模式図を示す。ハット形金属成形品62を下に、ハット形繊維強化熱可塑性成形品61を上の治具にセットし、ツバ部を対称に圧着して、ツバの軸方向に向かい合うように相対振動することを示している。矢印は、振動方向を表している。
図7に接合部の断面図を示す。ハット形繊維強化熱可塑性樹脂成形品71とハット形金属成形品72が振動溶着により、一体化し形成された閉断面を示している。界面には73のツバ部が溶融して接合部を形成し、一部バリとして接合面からはみ出している。
図8に接合部の側面図を示す。ハット形繊維強化熱可塑性樹脂成形品81とハット形金属成形品82が振動溶着により、一体化し形成された部材の側面図を示している。83は81のツバ部表面が溶融して形成した接合部を示している。
図9に曲げ試験の模式図を示す。一体化部品を金属成形品が下側になるように、2点の支点(91)に乗せ、上側の炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品の中央部を一定速度で圧子(92)を下降させて、荷重―変位の関係を試験している。変位と共に荷重が上昇し、接合界面に発現するせん断力で接合が破断すると荷重は低下する。
接合品の曲げ最大荷重は13.4KNであり、高い接合強度を示した。破壊は、支点付近の接合面で起こっており、接合界面のせん断破壊であった。接合部の破断面を観察したところ、アルミニュウム合金の表面に部分的に炭素繊維強化ポリプロピレン樹脂が観察された。炭素繊維強化ポリプロピレン樹脂とアルミニュウム合金という異種材の溶融接合にもかかわらず、炭素繊維強化ポリプロピレンが凝集破壊する程、高い接合力があることが分かった。
実施例1の構成要件を表1に示したようにそれぞれ変更した以外は、全く同様にして、試料作製と評価試験を行った。それぞれについて、接合強度の尺度である最大荷重を表1に合わせて示した。
なお、金属成形品のツバの接合面の面粗度は、サンドペーパーの#20〜#8000を選択して調節した。繊維束の単繊維数はプリプレグテープ作製時のロービング銘柄により、炭素繊維含有質量分率は樹脂/炭素繊維比、長さはテープのカット長を変更して試作した。
また、ポリアミド6樹脂としては、260℃、11.8Nにおけるマスフローレートが32g/10分の東洋紡製T802を、ポリアミド6T共重合体としては、東洋紡製TY502NZを使用した。アルミニュウム合金6065は、アルミニュウム−マグネシュウム−珪素合金であり、アルミニュウム合金3003は、アルミニュウム−マンガン合金であり、高張力鋼は、引張り強度が780MPaの高張力鋼を使用した。
構成要件を表2に示したように変更した以外は、実施例1と全く同様にして得られた炭素繊維強化熱可塑性樹脂のハット形成形品と金属ハット形成形品を実施例1と全く同様にして接合を試みた。
比較例3は、次のようにして成形品を得た。実施例1と全く同様にして得たプリプレグテープを外枠が長さ450mm×450mmの金属製ラップリールの長手方向にテープ幅の半分が重なるように一列に6層巻きつけ、金型にセットした。これを230℃に温度制御したプレス機の加圧盤にて、15分間、5MPaにて圧縮した後、加圧盤を開き、金型を水冷した加圧盤の間に移動して、30分間、5MPaの圧縮下で冷却した後、金型から成形品を取り出した。得られた一方向強化の成形品から150mm×430mm(繊維の長さ軸方向が150mm)を2枚切り出して、繊維長さ軸を同じ方向に重ねて、UDブランク(0度/0度)とした。得られたUDブランク材を実施例1のブランク材と同様に、予備加熱し、圧縮成形して、一方向強化の炭素繊維強化ポリプロピレン樹脂のハット形成形品を得た。
比較例4は、比較例3と全く同様にして得た一方向強化の成形品2枚から、150mm×430mm(繊維の長さ軸方向が150mm)と430mm×150mm(繊維の長さ軸方向が430mm)を切り出し、繊維長さ軸が直交するように(0度/90度)重ねて、得られたUDブランク材を実施例1のブランク材と同様に、予備加熱し、圧縮成形して、直交強化の炭素繊維強化ポリプロピレン樹脂のハット形成形品を得た。
比較例5は、次のようにして成形品を得た。230℃、21.2N荷重下におけるマスメルトフローレートが、60.3g/10分の無水マレイン酸変性されたポリプロピレン樹脂を、シリンダー温度230℃に温度調節された押出機のホッパーに投入して、溶融した変性ポリプロピレン樹脂をTダイから押し出し、チルロールで引き取り冷却して、幅22cm、厚さ約10μmのフイルムを得た。目付け36g/m2の連続炭素繊維マットの両面に、得られた変性ポリプロピレンフイルムをそれぞれ3層配置して、フッ素樹脂シートにはさみ230℃で5分プレス成形した後、成形品を取り出し、室温まで放冷して、厚さ約100μmの樹脂が含浸したプリプレグシートを得た。得られたプリプレグシートを20枚重ねて、再度230℃で5分プレスして、厚さ2mmのプリプレグシートを得た。得られたプリプレグシートから150mm×430mmの形状で切削し、ブランク材とした。実施例1のブランク材と同様に、ブランク材を予備加熱し、圧縮成形して、炭素繊維強化ポリプロピレン樹脂のハット形成形品を得た。
比較例では、炭素繊維強化熱可塑性樹脂は十分溶融せず、接合できないか、または最大荷重は低く、要求に未達であった。
21:炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品のツバ部
41:金属成形品のツバ部
61:炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品
62:金属成形品
71:炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品
72:金属成形品
73:溶着部
81:炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品
82:金属成形品
83:溶着部
91:支点
92:圧子
93:溶着試験体の溶着部
Claims (6)
- 炭素繊維と熱可塑性樹脂を構成成分とし、該炭素繊維は1000〜100000本の単繊維を含有する短冊状の繊維束を構成しており、該炭素繊維の含有率が40〜80質量%である炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品と、金属の溶着接合体の製造方法であって、
前記炭素繊維の長さ軸が接合面内にランダム配向しており、
前記金属の少なくとも接合面の面粗度が1〜100μmであり、
前記炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品と前記金属を振動溶着することを特徴とする炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品と金属の溶着接合体の製造方法。 - 繊維束の平均長さが、15〜50mmであることを特徴とする請求項1の炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品と金属の溶着接合体の製造方法。
- 熱可塑性樹脂が、酸変性またはエポキシ変性のポリプロピレン樹脂であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品と金属の溶着接合体の製造方法。
- 熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品と金属の溶着接合体の製造方法。
- 金属が、マグネシュウムを含有するアルミニュウム合金であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品と金属の溶着接合体の製造方法。
- 金属が、高張力鋼であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品と金属の溶着接合体の製造方法。
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