JP2013244725A - 熱可塑性複合材料−金属部材接合体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】熱可塑性複合材料と金属部材とが強固に接合した接合体を製造する方法を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂をマトリックスとする繊維強化複合材料と金属部材とを接合した接合体を製造するに当り、金属部材、好ましくは金属部材表面にトリアジンチオール誘導体含有層等の有機被覆層を形成後、該金属部材と複合材料との間にホットメルト接着剤層を介在させ、加熱加圧してホットメルト接着剤を溶融させることにより金属と複合材料とを強固に接合させる。
【選択図】なし
【解決手段】熱可塑性樹脂をマトリックスとする繊維強化複合材料と金属部材とを接合した接合体を製造するに当り、金属部材、好ましくは金属部材表面にトリアジンチオール誘導体含有層等の有機被覆層を形成後、該金属部材と複合材料との間にホットメルト接着剤層を介在させ、加熱加圧してホットメルト接着剤を溶融させることにより金属と複合材料とを強固に接合させる。
【選択図】なし
Description
本発明は、熱可塑性樹脂を炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等の強化繊維で強化した熱可塑性複合材料と金属部材とが強固に接合した接合体の製造方法に関する。
熱可塑性樹脂をマトリックスとし、これを炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等の強化繊維によって強化した複合材料(本発明では「熱可塑性複合材料」と略称することがある)は、軽量で比強度、比剛性等が高く、優れた材料として各分野で重用されており、近年は、熱可塑性複合材料を金属部材と接合して使用する用途が増大している。この場合、上記複合材料と金属部材とを強固に接合するには、複合材料でマトリックスとして用いている熱可塑性樹脂そのものを金属部材の表面に対して強固に融着または接着させる必要がある。
また、熱可塑性複合材料は、熱を加えれば容易に形状が変わることから、熱硬化性樹脂をマトリックスとする複合材料に比べ極めて短い時間で射出ないしはプレス成形ができるという利点がある。したがって、熱可塑性複合材料を成形と同時または成形直後に金型内での加熱加圧によって簡便かつ強固に金属部材の表面と接合することができれば、極めて効率的に金属部材との接合体を得ることが可能と考えられる。
一般に、熱可塑性樹脂と金属部材とを樹脂の溶融によって接合する方法として、表面を微細なポーラスにしたアルミニウム材に樹脂を射出成形することにより、アンカー効果によってアルミニウムと樹脂とを接合できることが知られている(特許文献1)。また、金属表面に特定の処理を施すことにより、射出成形時等における溶融樹脂と金属とを接合性を改善する方法も提案されている(特許文献2〜4)。
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、実質上、射出成形に限られ、しかもアルミニウム以外の金属には適用困難である。一方、特許文献2〜4に記載された熱可塑性樹脂と金属との接合方法によって熱可塑性複合材料を金属部材と接合しようとしても、熱可塑性複合材料は熱可塑性樹脂が強化繊維束に「滲みこんだ」状態にあるため、その材料の表面に必ずしも均質に樹脂が存在するわけではなく、なかには樹脂の「欠乏した」部分が存在するため、充分な接合強度が発現しなかったり、接合強度が大きくばらついたりするという懸念がある。また、熱可塑性複合材料では、樹脂中に強化繊維が含まれることにより該複合材料の表面に凹凸が生ずることが避けられないため、複合材料の表面を接合すべき金属表面へ完全に密着させることが容易でなく、この点も強固な接合を困難にする要因となっている。さらに、強化繊維が炭素繊維の場合には、複合材料中の炭素繊維が金属に対していわゆる電蝕の原因となるため、樹脂が欠乏した部分においては金属に直接触れることにより金属を腐食させるという問題がある。
本発明の目的は、このような熱可塑性複合材料と金属部材とが強固に接合した接合体、すなわち繊維強化可塑性樹脂複合材料−金属部材接合体、を良好な生産性にて製造する方法を提供することにある。
本発明者らは熱可塑性複合材料と金属部材との接合性改善について鋭意研究の結果、金属部材表面に有機被覆層を形成させ、この有機被覆層と熱可塑性複合材料との間に熱可塑性樹脂からなるホットメルト接着剤層を設け、該ホットメルト接着剤を構成する組成物を溶融させることにより、複合材料と金属部材を安定的かつ強固に接合できることを見出し、本発明に到達した。
かくして本発明によれば、繊維強化可塑性樹脂複合材料−金属部材接合体は、下記(1)〜(8)の方法によって製造される。
(1)熱可塑性樹脂をマトリックスとする熱可塑性複合材料と金属部材とを接合して接合体を製造するに当り、接合すべき金属部材と熱可塑性複合材料との間にホットメルト接着剤層を介在させ、該ホットメルト接着剤層を溶融させることにより金属部材と熱可塑性複合材料とを接合させることを特徴とする熱可塑性樹脂複合材料−金属部材接合体の製造方法。
(2)金属部材表面に、予め有機被覆層を形成し、該有機被覆層と熱可塑性複合材料との間にホットメルト接着剤層を介在させ、該ホットメルト接着剤層を溶融させることにより金属部材と熱可塑性複合材料とを接合させる上記(1)の製造方法。
(3)ホットメルト接着剤層の融点が、炭素繊維複合材料におけるマトリクス樹脂の軟化点より1〜150℃低い温度である上記(1)または(2)の製造方法。
(4)ホットメルト接着剤層の目付け量が10〜500g/cm2である上記(1)〜(3)のいずれかの製造方法。
(5)ホットメルト接着剤層が、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリウレタン系のホットメルト接着剤の少なくとも1種で構成される上記(1)〜(4)のいずれかの製造方法。
(6)有機被覆層が、トリアジンチオール誘導体含有層である上記(2)〜(5)のいずれかの製造方法。
(7)金属部材の表面に有機被覆層を形成させるに先立ち、金属の表面を化合物で処理する上記(2)〜(6)のいずれかに記載の製造方法。
(8)熱可塑性複合材料と表面に有機被覆層を形成した金属部材とを、両者の間にホットメルト接着剤層を介在させて金型内にセットし、該ホットメルト接着剤を構成する組成物の溶融温度以上で加熱加圧することにより、熱可塑性複合材料を金属部材と接合した成形物とする上記(2)〜(7)のいずれかの製造方法。
(1)熱可塑性樹脂をマトリックスとする熱可塑性複合材料と金属部材とを接合して接合体を製造するに当り、接合すべき金属部材と熱可塑性複合材料との間にホットメルト接着剤層を介在させ、該ホットメルト接着剤層を溶融させることにより金属部材と熱可塑性複合材料とを接合させることを特徴とする熱可塑性樹脂複合材料−金属部材接合体の製造方法。
(2)金属部材表面に、予め有機被覆層を形成し、該有機被覆層と熱可塑性複合材料との間にホットメルト接着剤層を介在させ、該ホットメルト接着剤層を溶融させることにより金属部材と熱可塑性複合材料とを接合させる上記(1)の製造方法。
(3)ホットメルト接着剤層の融点が、炭素繊維複合材料におけるマトリクス樹脂の軟化点より1〜150℃低い温度である上記(1)または(2)の製造方法。
(4)ホットメルト接着剤層の目付け量が10〜500g/cm2である上記(1)〜(3)のいずれかの製造方法。
(5)ホットメルト接着剤層が、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリウレタン系のホットメルト接着剤の少なくとも1種で構成される上記(1)〜(4)のいずれかの製造方法。
(6)有機被覆層が、トリアジンチオール誘導体含有層である上記(2)〜(5)のいずれかの製造方法。
(7)金属部材の表面に有機被覆層を形成させるに先立ち、金属の表面を化合物で処理する上記(2)〜(6)のいずれかに記載の製造方法。
(8)熱可塑性複合材料と表面に有機被覆層を形成した金属部材とを、両者の間にホットメルト接着剤層を介在させて金型内にセットし、該ホットメルト接着剤を構成する組成物の溶融温度以上で加熱加圧することにより、熱可塑性複合材料を金属部材と接合した成形物とする上記(2)〜(7)のいずれかの製造方法。
本発明によれば、熱可塑性複合材料と金属部材とを簡易な方法で、強固かつ安定に接合することができるため、良好な接合体を得ることができる。さらに、強化繊維が炭素繊維の場合でも、熱可塑性樹脂からなるホットメルト接着剤層を介して、該ホットメルト接着剤層の溶融により複合材料と金属部材とを接合するので、炭素繊維を原因とする電蝕を同時に防止することができる。また、接合と成形とを同時にあるいは連続して同一金型内で行うこともできるので、これらを同時に行えば、所望形状に成形した熱可塑性複合材料−金属部材接合体(金属複合成形体)を少ない工程でかつ短時間で製造することが可能となる。
本発明は熱可塑性樹脂をマトリックスとする熱可塑性複合材料と金属との接合体の製造方法において、熱可塑性樹脂からなるホットメルト接着剤を巧みに利用することにより、強固な接合を実現したものである。以下、本発明の好適な実施形態について、接合に供する熱可塑性複合材料および金属部材、接合のために使用するホットメルト接着剤及び接合体を製造する方法の順に、具体的に説明する。
<熱可塑性複合材料>
本発明において接合に供する熱可塑性複合材料は、熱可塑性樹脂をマトリックスとし、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等の強化繊維を含む材料である。
本発明において接合に供する熱可塑性複合材料は、熱可塑性樹脂をマトリックスとし、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等の強化繊維を含む材料である。
上記複合材料のマトリックスとなる熱可塑性樹脂としては、ナイロン(熱溶融性ポリアミド)、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、AS樹脂、ABS樹脂等が挙げられる。なかでも、コストと物性との兼ね合いからナイロン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィドからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。また、ナイロン(以下「PA」と略記することがある)としては、PA6(ポリカプロアミド、ポリカプロラクタム、ポリε−カプロラクタムとも称される)、PA26(ポリエチレンアジパミド)、PA46(ポリテトラメチレンアジパミド)、PA66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、PA69(ポリヘキサメチレンアゼパミド)、PA610(ポリヘキサメチレンセバカミド)、PA611(ポリヘキサメチレンウンデカミド)、PA612(ポリヘキサメチレンドデカミド)、PA11(ポリウンデカンアミド)、PA12(ポリドデカンアミド)、PA1212(ポリドデカメチレンドデカミド)、PA6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、PA6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)、PA912(ポリノナメチレンドデカミド)、PA1012(ポリデカメチレンドデカミド)、PA9T(ポリノナメチレンテレフタラミド)、PA9I(ポリノナメチレンイソフタルアミド)、PA10T(ポリデカメチレンテレフタラミド)、PA10I(ポリデカメチレンイソフタルアミド)、PA11T(ポリウンデカメチレンテレフタルアミド)、PA11I(ポリウンデカメチレンイソフタルアミド)、PA12T(ポリドデカメチレンテレフタラミド)、PA12I(ポリドデカメチレンイソフタルアミド)、ポリアミドMXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。これらの熱可塑性樹脂は、必要に応じて、安定剤、難燃剤、顔料、充填剤等の添加剤を含んでも差し支えない。
一方、強化繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等の1種または2種以上が用いられ、なかでもPAN系またはピッチ系の炭素繊維が好ましい、強化繊維の形態はとくに限定されず、連続繊維、不連続繊維のいずれでもよい。
連続繊維の場合は、織物であっても、連続繊維を一方向に配列させてシート状にした、いわゆるUDシートであってもよい。UDシートの場合は、各層の繊維配列方向が互いに交差するよう多層に積層(例えば直交方向に交互に積層)したものを使用することもできる。連続繊維の繊維径は、通常、5〜20μmが適当である。
また、不連続の強化繊維を湿式抄造してシート状にしたものでもよく、不連続繊維が分散して重なるように配置しマット状にしたものであってもよい。マットとしては二次元的に等方性のランダムマットが好ましく、この場合の平均繊維径は5〜20μm、平均繊維長は5〜100mmが好ましい。ランダムマットでは強化繊維が単糸の状態で存在していてもよいが、ある本数以上の単糸が集束した繊維束と単糸またはそれに近い状態のものが所定割合で混在している等方性ランダムマットとしたものが特に好ましい。このような等方性ランダムマットおよびその製造法については、先に提案したPCT/JP2011/70314、特願2011−188768および特願2011−267159等の明細書に詳しく記載されているが、このランダムマットおよびその製造法の概要は以下のとおりである。
<好適な等方性ランダムマット>
上述した好適な等方性ランダムマットは、下記式(a)で定義される臨界単糸数以上で構成される強化繊維束(A)と臨界単糸数未満の強化繊維束(B1)および/または強化繊維単糸(B2)とが混在する等方性ランダムマットであって、該等方性ランダムマットにおける強化繊維束(A)の繊維全量に対する割合が20〜99Vol%、好ましくは30〜90Vol%、であり、さらに、上記強化繊維束(A)中の平均繊維数(N)が、下記式(b)を満たすものである。
臨界単糸数=600/D (a)
0.7×104/D2<N<6×104/D2 (b)
(ここでDは強化繊維の平均繊維径(μm)である。)
上述した好適な等方性ランダムマットは、下記式(a)で定義される臨界単糸数以上で構成される強化繊維束(A)と臨界単糸数未満の強化繊維束(B1)および/または強化繊維単糸(B2)とが混在する等方性ランダムマットであって、該等方性ランダムマットにおける強化繊維束(A)の繊維全量に対する割合が20〜99Vol%、好ましくは30〜90Vol%、であり、さらに、上記強化繊維束(A)中の平均繊維数(N)が、下記式(b)を満たすものである。
臨界単糸数=600/D (a)
0.7×104/D2<N<6×104/D2 (b)
(ここでDは強化繊維の平均繊維径(μm)である。)
〔好適な等方性ランダムマットの製造法〕
このような等方性ランダムマットは、例えば、複数の強化繊維からなるストランドを、必要に応じ繊維長方向に沿って連続的にスリットして幅0.05〜5mmの複数の細幅ストランドにした後、平均繊維長3〜100mmに連続的にカットし、カットした強化繊維束に気体を吹付けて開繊させた状態で、通気性コンベヤネット等の上に層状に堆積させることによりマットを得ることができる。この際、粒体状もしくは短繊維状の熱可塑性樹脂を強化繊維とともに通気性コンベヤネット上に堆積させるか、マット状の強化繊維層に溶融した熱可塑性樹脂を膜状に供給し浸透させることにより熱可塑性樹脂を包含する等方性ランダムマットを製造する方法により製造することもできる。この方法において、開繊条件を調整することで、強化繊維束を上記式(a)で定義される臨界単糸数以上が集束している強化繊維束(A)と臨界単糸数未満の強化繊維束(B1)および/または強化繊維単糸(B2)とが混在するように開繊し、等方性ランダムマットにおける強化繊維束(A)の強化繊維全量に対する割合を20〜99Vol%となし、かつ該強化繊維束(A)中の平均繊維数(N)が、上記式(b)を満たす等方性ランダムマットとすればよい。
このような等方性ランダムマットは、例えば、複数の強化繊維からなるストランドを、必要に応じ繊維長方向に沿って連続的にスリットして幅0.05〜5mmの複数の細幅ストランドにした後、平均繊維長3〜100mmに連続的にカットし、カットした強化繊維束に気体を吹付けて開繊させた状態で、通気性コンベヤネット等の上に層状に堆積させることによりマットを得ることができる。この際、粒体状もしくは短繊維状の熱可塑性樹脂を強化繊維とともに通気性コンベヤネット上に堆積させるか、マット状の強化繊維層に溶融した熱可塑性樹脂を膜状に供給し浸透させることにより熱可塑性樹脂を包含する等方性ランダムマットを製造する方法により製造することもできる。この方法において、開繊条件を調整することで、強化繊維束を上記式(a)で定義される臨界単糸数以上が集束している強化繊維束(A)と臨界単糸数未満の強化繊維束(B1)および/または強化繊維単糸(B2)とが混在するように開繊し、等方性ランダムマットにおける強化繊維束(A)の強化繊維全量に対する割合を20〜99Vol%となし、かつ該強化繊維束(A)中の平均繊維数(N)が、上記式(b)を満たす等方性ランダムマットとすればよい。
連続繊維が一方向配列したUDシートあるいは不連続繊維からなる抄造シート、ランダムマット等は、いずれも、熱可塑性樹脂を含む状態で、単層または複数積層して加熱加圧し、それらのシートまたはマット中に存在する熱可塑性樹脂を溶融させ繊維間に含浸させることで熱可塑性樹脂をマトリックスとする熱可塑性複合材料となる。この場合の熱可塑性樹脂は、強化繊維のシートまたはマットの製造時に供給したものでもよく、強化繊維からなるシートまたはマットの製造後に、熱可塑性樹脂からなる層を積層し加熱加圧することによってシートまたはマット中に樹脂を含浸させたものでもよい。いずれの熱可塑性複合材料も、平坦なシート状のものに限定されず、L字型、T字型、H字型、コ字型、へ字型等の断面に成形したものや、曲面を有するものでもよい。
熱可塑性複合材料における強化繊維の割合は、強化繊維100重量部に対し熱可塑性樹脂が50〜1000重量部であることが好ましい。より好ましくは、強化繊維100重量部に対し、熱可塑性樹脂50〜400重量部、更に好ましくは、強化繊維100重量部に対し、熱可塑性樹脂50〜100重量部である。熱可塑性樹脂が強化繊維100重量部に対し50重量部未満ではドライの強化繊維が増加してしまうことがある。また1000重量部を超えると強化繊維が少なすぎて構造材料として不適切となることが多い。
複合材料の形態としては、長繊維ペレット、すなわち溶融した樹脂を所定の粘度に調整し連続繊維状の強化繊維に含浸させた後切断する工程で得られるペレットを用い、射出成形機で所定の形状に成形したものでもよく、また、連続繊維のストランドを並行に引き揃えた一方向配列シート(UDシート)に熱可塑性樹脂を溶融含浸させた複合材料でもよいが、上述した二次元的に等方性のランダムマットに熱可塑性樹脂を溶融含浸させた複合材料が特に好ましい。
<金属部材>
本発明において熱可塑性複合材料と接合させる金属部材としては、具体的には、鉄、ステンレス、アルミニウム、銅、黄銅、ニッケル、亜鉛等の金属またはそれらの合金が挙げられるが、金属を構成する元素が鉄またはアルミニウムを主とするものが好ましい。ここで「主とする」とは90重量%以上を占めることを意味する。特に一般構造用圧延鋼材(SS材)、冷間圧延鋼材(SPCC材)、ハイテン材(高張力鋼材)等の鉄類や、SUS304、SUS316等のステンレス類、1000〜700番台アルミニウムおよびその合金からなるものが好適である。なお、これらの金属部材は、2種以上の金属からなるものでもよく、また、表面に金属メッキが施されたものでも差し支えない。また、その形状も、熱可塑性複合材料との接合面が確保される限り、平板状のみに限定されず、任意の形状としたものを使用することもでき、例えば、L字型、T字型、H字型、コ字型、へ字型等の断面や円筒形にした金属部材でもよく、また、曲面を有するものでもよい。
本発明において熱可塑性複合材料と接合させる金属部材としては、具体的には、鉄、ステンレス、アルミニウム、銅、黄銅、ニッケル、亜鉛等の金属またはそれらの合金が挙げられるが、金属を構成する元素が鉄またはアルミニウムを主とするものが好ましい。ここで「主とする」とは90重量%以上を占めることを意味する。特に一般構造用圧延鋼材(SS材)、冷間圧延鋼材(SPCC材)、ハイテン材(高張力鋼材)等の鉄類や、SUS304、SUS316等のステンレス類、1000〜700番台アルミニウムおよびその合金からなるものが好適である。なお、これらの金属部材は、2種以上の金属からなるものでもよく、また、表面に金属メッキが施されたものでも差し支えない。また、その形状も、熱可塑性複合材料との接合面が確保される限り、平板状のみに限定されず、任意の形状としたものを使用することもでき、例えば、L字型、T字型、H字型、コ字型、へ字型等の断面や円筒形にした金属部材でもよく、また、曲面を有するものでもよい。
<有機被覆層>
本発明では、熱可塑性複合材料と接合しようとする金属部材の表面に、接合性を付与・向上させる有機被覆層を形成し、接合に供することが好ましい。この有機被覆層として好適なものは、後述するトリアジンチオール誘導体含有層である。有機被覆層は、複合材料と接合しようとする金属部材の全面に形成するのが好ましいが、必ずしも全面である必要はない。また有機被覆の厚みもとくに制限はない。要は、十分な接合強度(接着性)が確保できる箇所および厚みにすればよい。
本発明では、熱可塑性複合材料と接合しようとする金属部材の表面に、接合性を付与・向上させる有機被覆層を形成し、接合に供することが好ましい。この有機被覆層として好適なものは、後述するトリアジンチオール誘導体含有層である。有機被覆層は、複合材料と接合しようとする金属部材の全面に形成するのが好ましいが、必ずしも全面である必要はない。また有機被覆の厚みもとくに制限はない。要は、十分な接合強度(接着性)が確保できる箇所および厚みにすればよい。
好適な有機被覆層を形成するトリアジンチオール誘導体としては、金属との化学結合が期待できる脱水シラノール含有トリアジンチオール誘導体、またはアルコキシシラン含有トリアジンチオール誘導体が好ましく挙げられる。かかるアルコキシシラン含有トリアジンチオール誘導体としては、下記一般式(1)、(2)で表される化合物、および、下記一般式(3)で表される化合物よりなる群から選ばれる1種類以上が好ましい。
〔上記一般式(1)および(2)において、式中のR1は、H−、CH3−、C2H5−、CH2=CHCH2−、C4H9−、C6H5−、C6H13−のいずれかであり、R2は、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2CH2CH2−、−CH2CH2SCH2CH2−、−CH2CH2NHCH2CH2CH2−のいずれかである。R3は、−(CH2CH2)2CHOCONHCH2CH2CH2−、または、−(CH2CH2)2N−CH2CH2CH2−であり、この場合、NとR3とが環状構造となる。式中のXは、CH3−、C2H5−、n−C3H7−、i−C3H7−、n−C4H9−、i−C4H9−、t−C4H9−、C6H5−のいずれかであり、Yは、CH3O−、C2H5O−、n−C3H7O−、i−C3H7O−、n−C4H9O−、i−C4H9O−、t−C4H9O−、C6H5O−のいずれかである。また、式中のnは1〜3の整数であり、Mは−Hまたはアルカリ金属である。〕
〔(上記一般式(3)において、R4は−S−,−O−,−NHCH2C6H4O−,−NHC6H4O−,−NHC6H3(Cl)O−,−NHCH2C6H3(NO2)O−,−NHC6H3(NO2)O−,−NHC6H3(CN)O−,−NHC6H2(NO2)2O−,−NHC6H3(COOCH3)O−,−NHC10H6O−,−NHC10H5(NO2)O−,−NHC10H4(NO2)2O−,−NHC6H4S−,−NHC6H3(Cl)S−,−NHCH2C6H3(NO2)S−,−NHC6H3(NO2)S−,−NHC6H3(CN)S−,−NHC6H2(NO2)2S−,−NHC6H3(COOCH3)S−,−NHC10H6S−,−NHC10H5(NO2)S−、または、−NHC10H4(NO2)2S−であり、M’は−Hまたはアルカリ金属、Zはアルコキシ基であり、式中のjは1〜6の整数である。〕
なお、上記一般式(1)〜(3)において、アルカリ金属とは、リチウム、ナトリウム、カリウム、 ルビジウム、セシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
本発明において特に好適に用いられるトリアジンチオール誘導体として、具体的には、優れた効果を示すアルコキシシラン含有トリアジンチオール誘導体であるトリエトキシシリルプロピルアミノトリアジンチオールモノナトリウムが挙げられ、その化学式は下記式(4)で表される。
トリアジンチオール誘導体含有層を形成する方法としては、WO2009/157445号公報に記載の方法、具体的にはアルコキシシラン含有トリアジンチオール、エタノール水溶液に浸漬した後、引き上げて加熱処理を行い、反応完結および乾燥する方法が挙げられる。また、トリアジンチオール誘導体含有層には、トリアジンチオール誘導体以外の物質が本発明の目的を損なわない範囲で含まれていてもよい。
本発明では、有機被覆層が上述したトリアジンチオール誘導体含有層であることが好ましいが、これと同等に機能を有する他の有機化合物、例えば、シランカップリング剤、水酸基やカルボキシル基等の極性官能基を有する化合物等の層であってもよい。
<金属化合物層>
本発明では、かかる有機被覆層と金属部材表面との間に、さらに、水酸化物、カルボン酸塩、リン酸塩、硫酸塩等の金属化合物層を含むことが、接合強度向上を図る上で好ましい。金属化合物層を形成する方法としては、例えばWO2009/157445号公報に記載の方法があり、例えば、金属部材を塩酸、硫酸、リン酸等の酸に浸漬する方法が挙げられる。
本発明では、かかる有機被覆層と金属部材表面との間に、さらに、水酸化物、カルボン酸塩、リン酸塩、硫酸塩等の金属化合物層を含むことが、接合強度向上を図る上で好ましい。金属化合物層を形成する方法としては、例えばWO2009/157445号公報に記載の方法があり、例えば、金属部材を塩酸、硫酸、リン酸等の酸に浸漬する方法が挙げられる。
<ホットメルト接着剤>
本発明では、熱可塑性複合材料と金属部材表面に形成した有機被覆層との間に、ホットメルト接着剤層を設け、該ホットメルト接着剤を溶融させることにより、金属表面と複合材料とを接合させる。ここで「ホットメルト接着剤」とは、常温では固形または半固形で、加熱溶融して塗布し、冷却により固化し接着が完了するものを総称する。その形状としては、フィルム状、シート状、スティック状、ペレット状、粉粒体状等で市販されているが、本発明ではいずれも使用可能である。スティック状、ペレット状、粉粒体状等のホットメルト接着剤は、予め金属部材および/または複合材料の接合すべき表面に層状に施工し、均一な厚みの層にして使用することとなる。本発明においてホットメルト接着剤を使用すると、比較的低い圧力で、かつ短時間での接合が可能となり、接合プロセスを優位に実施することができるという利点があり、複合材料と金属部材との間に上記ホットメルト接着剤層を配することにより良好な接合状態を実現することが可能である。
本発明では、熱可塑性複合材料と金属部材表面に形成した有機被覆層との間に、ホットメルト接着剤層を設け、該ホットメルト接着剤を溶融させることにより、金属表面と複合材料とを接合させる。ここで「ホットメルト接着剤」とは、常温では固形または半固形で、加熱溶融して塗布し、冷却により固化し接着が完了するものを総称する。その形状としては、フィルム状、シート状、スティック状、ペレット状、粉粒体状等で市販されているが、本発明ではいずれも使用可能である。スティック状、ペレット状、粉粒体状等のホットメルト接着剤は、予め金属部材および/または複合材料の接合すべき表面に層状に施工し、均一な厚みの層にして使用することとなる。本発明においてホットメルト接着剤を使用すると、比較的低い圧力で、かつ短時間での接合が可能となり、接合プロセスを優位に実施することができるという利点があり、複合材料と金属部材との間に上記ホットメルト接着剤層を配することにより良好な接合状態を実現することが可能である。
ここで用いるホットメルト接着剤は、加熱により溶融して金属部材の有機被覆層と接着する成分で構成されるものであり、ホットメルト接着層の融点(接着剤層全体が溶融する温度)が、炭素繊維複合材料におけるマトリクス樹脂の軟化点(樹脂が流動を開始する温度を意味し、結晶性樹脂の場合は融点を指す)より1〜150℃(好ましくは10〜100℃)低い温度であるものが好ましい。このようなホットメルト接着剤は、例えば、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、EVA系のホットメルト接着剤組成物が挙げられる。なかでも、コストと接着性能との兼ね合いから、ポリアミド系、ポリエステル系またはポリウレタン系のホットメルト接着剤組成物が好ましい。これらのホットメルト接着剤としては市販の製品も使用可能であり、例えば、日本マタイ(株)製ホットメルトフィルム「エルファンNT」、「エルファンPH」(登録商標)等が好適に使用可能である。なお、本発明では2種以上のホットメルト接着剤を併用することが可能であり、例えば、フィルム状またはシート状のホットメルト接着剤の場合は、異種のものを積層して使用することも可能であり、また、スティック状、ペレット状、粉粒体状のホットメルト接着剤の場合は、固体または溶融した状態で2種以上混合して使用することも可能である。
本発明では、ホットメルト接着剤として複合材料のマトリックスである熱可塑性樹脂と親和性のある成分を含む組成物を用いると、後述する加熱溶融によって接着剤層と複合材料のマトリックス樹脂とが互いに相溶し、全体の樹脂層が均質一体化するので好ましい。
本発明においては、ホットメルト接着剤層を目付け量にして10〜500g/cm2で使用することが好ましい。なお、ここで言う「目付け量」とは、ホットメルト接着剤層全体の目付け量、嵩密度のことであり、例えば1枚のフィルム状またはシート状のホットメルト接着剤を使用するときはそのホットメルト接着剤シートの目付け量、嵩密度と一致するが、複数枚のホットメルト接着剤フィルムまたはシートを積層してホットメルト接着剤層を形成させる場合は、積層したフィルムまたはシートの目付け量の合計となる。
ホットメルト接着剤層の合計厚みは、5μm以上5mm以下が適当であり、20μm以上4mm以下が好ましく、40μm以上3mm以下が特に好ましい。厚さ5μm以上のホットメルト接着剤層を設けることで熱融着の際に金属面と複合材料の界面に充分な樹脂を供給することができ、強化繊維が金属に接触することが防止できる。ただし、ホットメルト接着剤層の厚みが5mmを超えると、剪断的な荷重が掛かった際に接合面にモーメントが働いて全体として強度が低下することがある。
ホットメルト接着剤層は、接合に先立ち、予め金属部材および/または複合材料の表面に形成させておくことができる。シート状でないホットメルト接着剤を使用する場合は、ホットメルト接着剤の塗工機を用いて、金属部材および/または複合材料の接合すべき箇所に層状に塗工しておくことが必要となる。
<複合材料と金属部材との接合>
本発明の接合体の製造方法においては、金属表面の有機被覆層と複合材料との間に上記のホットメルト接着剤層を設け、加熱することにより、少なくともホットメルト接着剤層が溶融させるとともに、接合方向に加圧することによって金属部材と複合材料とを強固に接合させ、目的とする接合体を得る。このようにホットメルト接着剤層を溶融・接合させる手段としては、加熱加圧による方法が好ましい。加熱方法としては公知の加熱手段、例えば、外部ヒーターによる伝熱、輻射等により加熱する方法、接合する金属を電磁誘導により加熱する方法、超音波、レーザーにより加熱する方法等が適宜採用可能である。
本発明の接合体の製造方法においては、金属表面の有機被覆層と複合材料との間に上記のホットメルト接着剤層を設け、加熱することにより、少なくともホットメルト接着剤層が溶融させるとともに、接合方向に加圧することによって金属部材と複合材料とを強固に接合させ、目的とする接合体を得る。このようにホットメルト接着剤層を溶融・接合させる手段としては、加熱加圧による方法が好ましい。加熱方法としては公知の加熱手段、例えば、外部ヒーターによる伝熱、輻射等により加熱する方法、接合する金属を電磁誘導により加熱する方法、超音波、レーザーにより加熱する方法等が適宜採用可能である。
加熱温度は、ホットメルト接着剤層を構成する組成物の融点以上、分解温度以下にすることが好ましく、融点+15℃以上かつ分解温度−30℃であることがより好ましい。
加圧条件としては溶着面に0.01〜2MPa、好ましくは0.02〜1.5MPa、さらに好ましくは0.05〜1MPaの圧力をかけることが好ましい。圧力が0.01MPa未満では良好な接合力が得られないことがあり、また加熱時に複合材料がスプリングバックして形状を保持できず素材強度も低下する場合がある。また圧力が2MPaを超えると加圧部分が潰れ、形状保持が困難となったり、素材強度が低下したりすることがある。
加圧条件としては溶着面に0.01〜2MPa、好ましくは0.02〜1.5MPa、さらに好ましくは0.05〜1MPaの圧力をかけることが好ましい。圧力が0.01MPa未満では良好な接合力が得られないことがあり、また加熱時に複合材料がスプリングバックして形状を保持できず素材強度も低下する場合がある。また圧力が2MPaを超えると加圧部分が潰れ、形状保持が困難となったり、素材強度が低下したりすることがある。
金属部材表面に形成した有機被覆層と複合材料との間に配置するホットメルト接着剤層は、予めどちらか一方または双方側に形成しておくことも可能である。例えば、トリアジンチオール誘導体含有層等の有機被覆層を形成した金属部材の表面に、予めホットメルト接着剤を層状に塗工しておいてもよく、また、複合材料の製造工程中または製造後に、フィルム状またはシート状のホットメルト接着剤を複合材料表面に積層し加熱融着させてもよい。
予め金属部材の表面にホットメルト接着剤層を設けておく場合、金属部材の表面温度は、ホットメルト接着剤を構成する組成物の融点+15℃以上かつ分解温度−30℃であることが好ましい。表面温度が上記温度範囲未満であると接着剤が表面に馴染みにくい場合があり、また上記温度範囲を超えると接着剤自体の分解が進むおそれがある。上記温度を維持する時間は、複合材料と金属との本質的な接合のための時間が確保できるならば極力短いほうがよい。ホットメルト接着剤による金属との接合強度は、かかる金属表面の有機被覆層による親和性が重要であり、一般に高温によってかかる有機被覆層が変質するおそれがあるため、長時間高温にすることは好ましくない。一例として275℃での接合時間は概ね10分以下が好ましい。
また、本発明では熱可塑性複合材料の表面に予めホットメルト接着剤層を設けておくこともできる。さらに、ホットメルト接着剤がフィルム状またはシート状の場合、金属部材と複合材料の間にホットメルト接着剤層が位置するように重ね合わせて、全体を加熱加圧して熱圧着させる方法を採用することも可能である。
また、本発明では熱可塑性複合材料の表面に予めホットメルト接着剤層を設けておくこともできる。さらに、ホットメルト接着剤がフィルム状またはシート状の場合、金属部材と複合材料の間にホットメルト接着剤層が位置するように重ね合わせて、全体を加熱加圧して熱圧着させる方法を採用することも可能である。
本発明によれば、熱可塑性樹脂をマトリックスとする複合材料と金属部材とが接合された一定形状の金属複合成形体を製造する場合、成形時に金型内に金属部材の有機被覆層と複合材料との間にフィルム状またはシート状ホットメルト接着剤を配置し溶融させることにより、金属部材と複合材料との接合および成形を同時にまたは連続して行うことも可能である。このようにすれば成形と接合が短時間で完了するため、従来の熱硬化性樹脂をマトリックスとした複合材料を用いる場合に比べて工業的に極めて優位な方法である。なお、ここで言う「金属と複合材料との接合および成形を連続して行う」とは、金属部材と複合材料とを接合した後、連続して成形を行うだけでなく、複合材料を所望の形状に成形した後、連続して金属を接合させる場合も含む。
このように、本発明では熱可塑性樹脂をマトリックスとした複合材料を用いるため、プレス等の成形工程と同時に、あるいは成形工程に連続して金属部材の接合も行うことができる。例えば、金型内に有機被覆層を有する金属部材/ホットメルト接着剤/複合材料を積層状態でセットし、これをプレス成形すれば、一挙に成形と接合とを行うことが可能であるため、短時間で所望の接合体を製造することが可能となる。
熱可塑性複合材料と金属部材との接合面は、平面に限らず、曲面であってもよく、また凹凸を有する面でもよい。本発明では双方の接合面に可撓性のあるホットメルト接着剤を介在させこれを溶融させるため、接合すべき複合材料と金属部材と間に多少に隙間があっても、問題なく接合することができる。
<熱可塑性複合材料−金属部材接合体>
かくして本発明によれば、熱可塑性複合材料と金属部材とが強固に接合した接合体あるいはこれを所定形状に成形した金属複合成形体を、生産性良く短時間で製造することができる。接合体の金属と複合材料の接合強度は引っ張り試験で評価することができるが、本発明では接合強度は少なくとも5MPa以上となり、場合によっては実質50MPa程度の接合強度も実現可能である。したがって、本発明で得られる接合体および金属複合成形体は、強度が必要とされるような構造部材として好適に用いることができる。このような構造部材としては、例えば、自動車、航空機、鉄道車両、船舶等の移動体を構成する部品や構造材等が挙げられる。なお、接合体の接合箇所数に限定はなく、シングルラップによってもダブルラップによっても、接合環境により任意に選ぶことができる。なかでもダブルラップは接合面積が2倍となるため接合強度も2倍となる。
かくして本発明によれば、熱可塑性複合材料と金属部材とが強固に接合した接合体あるいはこれを所定形状に成形した金属複合成形体を、生産性良く短時間で製造することができる。接合体の金属と複合材料の接合強度は引っ張り試験で評価することができるが、本発明では接合強度は少なくとも5MPa以上となり、場合によっては実質50MPa程度の接合強度も実現可能である。したがって、本発明で得られる接合体および金属複合成形体は、強度が必要とされるような構造部材として好適に用いることができる。このような構造部材としては、例えば、自動車、航空機、鉄道車両、船舶等の移動体を構成する部品や構造材等が挙げられる。なお、接合体の接合箇所数に限定はなく、シングルラップによってもダブルラップによっても、接合環境により任意に選ぶことができる。なかでもダブルラップは接合面積が2倍となるため接合強度も2倍となる。
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、各実施例における物性測定および評価の条件は以下のとおりである。
1)接合強度
各実施例等に記載のとおりの複合材料‐金属部材接合体を5枚作成し、それぞれについて、「インストロン(登録商標)5587」万能試験機により、引っ張り速度2mm/分で引っ張り試験を行って求めた引っ張り強度の値を、当該接合体の接合強度の値とし、5枚の平均値で表した。
2)ランダムマット材の繊維束分析
参考例2Bにより得たマンダムマット材の繊維束分析は、PCT/JP2011/070314に記載した方法に準じて実施した。
1)接合強度
各実施例等に記載のとおりの複合材料‐金属部材接合体を5枚作成し、それぞれについて、「インストロン(登録商標)5587」万能試験機により、引っ張り速度2mm/分で引っ張り試験を行って求めた引っ張り強度の値を、当該接合体の接合強度の値とし、5枚の平均値で表した。
2)ランダムマット材の繊維束分析
参考例2Bにより得たマンダムマット材の繊維束分析は、PCT/JP2011/070314に記載した方法に準じて実施した。
<参考例1> 連続繊維0度90度交互積層材の炭素繊維複合材料の製造
炭素繊維(東邦テナックス製「テナックス」(登録商標)STS40−24KS(平均繊維径7μm、引張強度4000MPa)のストランドとナイロン6フィルム(ユニチカ(株)製「エンブレム」(登録商標)ON25μm厚)とを、順次積層しながら、繊維方向0度の層と90度の層が交互に配置するように64層積層し(炭素繊維64層、ナイロンフィルム65層)、これを温度260℃、圧力2MPaで、20分加熱圧縮し、繊維が0度90度交互、対称積層、炭素繊維体積率47%(質量基準の炭素繊維含有率57%)、2mm厚の複合材料を作成した。
炭素繊維(東邦テナックス製「テナックス」(登録商標)STS40−24KS(平均繊維径7μm、引張強度4000MPa)のストランドとナイロン6フィルム(ユニチカ(株)製「エンブレム」(登録商標)ON25μm厚)とを、順次積層しながら、繊維方向0度の層と90度の層が交互に配置するように64層積層し(炭素繊維64層、ナイロンフィルム65層)、これを温度260℃、圧力2MPaで、20分加熱圧縮し、繊維が0度90度交互、対称積層、炭素繊維体積率47%(質量基準の炭素繊維含有率57%)、2mm厚の複合材料を作成した。
<参考例2A> ランダム材からなる平板の炭素繊維複合材料(A)の製造
平均繊維長20mmにカットした炭素繊維(東邦テナックス(株)製「テナックス」(登録商標)STS40、平均繊維径7μm)を平均目付け540g/m2となるようランダムな配列状態でシート状に形成し、これをユニチカ(株)製KE435−POG(ナイロン6)クロスの間に、炭素繊維シート/ナイロン6クロスの繰り返し積層となるように挟みこんで、温度260℃、圧力2.5MPaでプレスし、炭素繊維体積率35%(質量基準の炭素繊維含有率45%)、厚み2mmの平板の炭素繊維複合材料(A)を作成した。
平均繊維長20mmにカットした炭素繊維(東邦テナックス(株)製「テナックス」(登録商標)STS40、平均繊維径7μm)を平均目付け540g/m2となるようランダムな配列状態でシート状に形成し、これをユニチカ(株)製KE435−POG(ナイロン6)クロスの間に、炭素繊維シート/ナイロン6クロスの繰り返し積層となるように挟みこんで、温度260℃、圧力2.5MPaでプレスし、炭素繊維体積率35%(質量基準の炭素繊維含有率45%)、厚み2mmの平板の炭素繊維複合材料(A)を作成した。
<参考例2B> ランダムマット材を用いた平板の炭素繊維複合材料(B)の製造
炭素繊維(東邦テナックス製「テナックス」(登録商標)STS40−24KS(繊維径7μmm、引張強度4000MPa)のストランドを所定の長さにカットし、次いで開繊装置(気体吹付けノズル)およびフレキシブルな輸送配管を経由して、下方吸引装置を装備した定着ネット上に堆積させ、平均繊維長、開繊度の異なるランダム材を作成した。
さらに得られたランダムマット材を参考例2Aと同様にユニチカKE435−POG(ナイロン6)クロスの間に挟みこんで温度260℃、圧力2.5MPaでプレスし、表1に示す炭素繊維体積率(Vf)の異なる厚み2mmの平板の炭素繊維複合材料(B)2種を作成した。
炭素繊維(東邦テナックス製「テナックス」(登録商標)STS40−24KS(繊維径7μmm、引張強度4000MPa)のストランドを所定の長さにカットし、次いで開繊装置(気体吹付けノズル)およびフレキシブルな輸送配管を経由して、下方吸引装置を装備した定着ネット上に堆積させ、平均繊維長、開繊度の異なるランダム材を作成した。
さらに得られたランダムマット材を参考例2Aと同様にユニチカKE435−POG(ナイロン6)クロスの間に挟みこんで温度260℃、圧力2.5MPaでプレスし、表1に示す炭素繊維体積率(Vf)の異なる厚み2mmの平板の炭素繊維複合材料(B)2種を作成した。
<参考例3> 金属表面処理
長さ100mm、幅25mm、厚み1.6mmの冷間圧延鋼板(SPCC)を濃度15.0g/L、温度60℃の水酸化ナトリウム水溶液中で60秒間脱脂を行った後、水洗を60秒行い、80℃のオーブン内で30分間乾燥した。次に、温度60℃、濃度30〜50g/L、のリン酸水溶液(水以外の成分の90%以上がリン酸)中で300秒間浸漬した後、湯洗(60℃)および水洗を各60秒間行い、リン酸金属塩、水酸化物を主成分とする金属化合物皮膜を金属板両表面上に形成した。次いで、濃度0.7g/Lのトリエトキシシリルプロピルアミノトリアジンチオールモノナトリウムのエタノール/水(体積比95/5)溶液に、金属化合物皮膜を有する上記金属板(SPCC)を室温で30分間浸漬した。その後、オーブン内で160℃、10分間熱処理した。次に、濃度1.0g/LのN,N’−m−フェニレンジマレイミドと濃度2g/Lのジクミルパーオキシドを含むアセトン溶液に室温で10分間浸漬し、オーブン内で150℃、10分間熱処理した。さらに、金属板表面全体に濃度2g/Lのジクミルバーオキシドのエタノール溶液を室温で噴霧し、風乾し、トリアジンチオール誘導体含有層を金属板表面全体に形成した。
長さ100mm、幅25mm、厚み1.6mmの冷間圧延鋼板(SPCC)を濃度15.0g/L、温度60℃の水酸化ナトリウム水溶液中で60秒間脱脂を行った後、水洗を60秒行い、80℃のオーブン内で30分間乾燥した。次に、温度60℃、濃度30〜50g/L、のリン酸水溶液(水以外の成分の90%以上がリン酸)中で300秒間浸漬した後、湯洗(60℃)および水洗を各60秒間行い、リン酸金属塩、水酸化物を主成分とする金属化合物皮膜を金属板両表面上に形成した。次いで、濃度0.7g/Lのトリエトキシシリルプロピルアミノトリアジンチオールモノナトリウムのエタノール/水(体積比95/5)溶液に、金属化合物皮膜を有する上記金属板(SPCC)を室温で30分間浸漬した。その後、オーブン内で160℃、10分間熱処理した。次に、濃度1.0g/LのN,N’−m−フェニレンジマレイミドと濃度2g/Lのジクミルパーオキシドを含むアセトン溶液に室温で10分間浸漬し、オーブン内で150℃、10分間熱処理した。さらに、金属板表面全体に濃度2g/Lのジクミルバーオキシドのエタノール溶液を室温で噴霧し、風乾し、トリアジンチオール誘導体含有層を金属板表面全体に形成した。
[実施例1]
参考例3により処理した長さ100mm、幅25mm、厚み1.6mmの冷間圧延鋼板(SPCC)を235℃まで昇温させた後、SPCCの上記処理面上に日本マタイ(株)製のフィルム状ポリアミド系ホットメルト接着剤「エルファン」(登録商標)NTを1枚設置した。また、参考例1で得られた炭素繊維複合材料を、長さ100mm、幅25mmに切り出し、80℃/5時間で乾燥処理させた。この複合材料とホットメルト接着剤層を設けたSPCCとをシングルラップで25mm×25mmの範囲で重ね合わせ、プレス成形機にて温度235℃、圧力0.3MPaにて1分間加熱加圧処理して熱可塑性複合材料とSPCCとの接合体を作成した。このような接合体を5枚作成し、引っ張り試験を行ったところ、接合強度の平均値は13MPaであった。
参考例3により処理した長さ100mm、幅25mm、厚み1.6mmの冷間圧延鋼板(SPCC)を235℃まで昇温させた後、SPCCの上記処理面上に日本マタイ(株)製のフィルム状ポリアミド系ホットメルト接着剤「エルファン」(登録商標)NTを1枚設置した。また、参考例1で得られた炭素繊維複合材料を、長さ100mm、幅25mmに切り出し、80℃/5時間で乾燥処理させた。この複合材料とホットメルト接着剤層を設けたSPCCとをシングルラップで25mm×25mmの範囲で重ね合わせ、プレス成形機にて温度235℃、圧力0.3MPaにて1分間加熱加圧処理して熱可塑性複合材料とSPCCとの接合体を作成した。このような接合体を5枚作成し、引っ張り試験を行ったところ、接合強度の平均値は13MPaであった。
[実施例2]
炭素繊維複合材料として参考例2Aで得られたランダム材をベースとする複合材料を使用した以外は、実施例1と同様の操作を実施して接合体を製造した。得られた各接合体における接合強度の平均値12MPaであった。
炭素繊維複合材料として参考例2Aで得られたランダム材をベースとする複合材料を使用した以外は、実施例1と同様の操作を実施して接合体を製造した。得られた各接合体における接合強度の平均値12MPaであった。
[実施例3]
炭素繊維複合材料として参考例2Bで得られたランダムマット材を用いた2種の複合材料(B)(試料1、試料2)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を実施して5枚の接合体を作成した。それぞれの接合体について引っ張り試験を行ったところ、各接合体の接合強度(5枚の平均値)は表1に示す結果が得られた。
炭素繊維複合材料として参考例2Bで得られたランダムマット材を用いた2種の複合材料(B)(試料1、試料2)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を実施して5枚の接合体を作成した。それぞれの接合体について引っ張り試験を行ったところ、各接合体の接合強度(5枚の平均値)は表1に示す結果が得られた。
本発明の方法により得られる熱可塑性複合材料−金属部材接合体は、接合強度に優れているため、自動車、航空機、鉄道車両、船舶、自転車等の移動体を構成する部品類、家具や建築の材料、スポーツ用品、各種機械器具の構造部材等の用途において有用である。
Claims (8)
- 熱可塑性樹脂をマトリックスとする熱可塑性複合材料と金属部材とを接合して接合体を製造するに当り、接合すべき金属部材と熱可塑性複合材料との間にホットメルト接着剤層を介在させ、該ホットメルト接着剤層を溶融させることにより金属部材と熱可塑性複合材料とを接合させることを特徴とする熱可塑性樹脂複合材料−金属部材接合体の製造方法。
- 金属部材表面に、予め有機被覆層を形成し、該有機被覆層と熱可塑性複合材料との間にホットメルト接着剤層を介在させ、該ホットメルト接着剤層を溶融させることにより金属部材と熱可塑性複合材料とを接合させる請求項1記載の製造方法。
- ホットメルト接着剤層の融点が、炭素繊維複合材料におけるマトリクス樹脂の軟化点より1〜150℃低い温度である請求項1または請求項2記載の製造方法。
- ホットメルト接着剤層の目付け量が10〜500g/cm2である請求項1〜請求項3のいずれかに記載の製造方法。
- ホットメルト接着剤層が、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリウレタン系のホットメルト接着剤の少なくとも1種で構成される請求項1〜請求項4のいずれかに記載の製造方法。
- 有機被覆層が、トリアジンチオール誘導体含有層である請求項2〜請求項5のいずれかに記載の製造方法。
- 金属部材の表面に有機被覆層を形成させるに先立ち、金属の表面を化合物で処理する請求項2〜請求項6のいずれかに記載の製造方法。
- 熱可塑性複合材料と表面に有機被覆層を形成した金属部材とを、両者の間にホットメルト接着剤層を介在させて金型内にセットし、該ホットメルト接着剤を構成する組成物の溶融温度以上で加熱加圧することにより、熱可塑性複合材料を金属部材と接合した成形物とする請求項2〜請求項7のいずれかに記載の製造方法。
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