JP5402584B2 - 炭素長繊維強化ポリアミド複合材料 - Google Patents
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Description
繊維の絡み合いが起こらないように、繊維のロービングを単繊維状に開繊した後、ポリアミド樹脂を含浸して、強化繊維とポリアミド樹脂からなる一軸のテープ状プリプレグを予備成形した後、加熱圧縮成形する方法も開示された(例えば、非特許文献2参照)。しかし、一般のポリアミド樹脂の場合、絶乾状態では、高い剛性や強度が得られるが、空気中の水分を吸湿しやすく、多湿状態では、剛性や強度が著しく低下して、目的とする構造材の要求には未達であった。
また更に機械特性・導電性・成形性のよい炭素繊維強化樹脂についても特開2004−107626(特許文献3)などに開示された。しかし、オキシアルキレン基を有するジアミンとジカルボン酸の塩とアミノ酸、ラクタムおよび/またはジアミンとジカルボン酸塩を含む共重合体を炭素繊維に付着させることにより一般的な熱可塑性樹脂複合材との界面状態を改善した物性改良であり、結晶化速度が遅く成形生産性の低いことが重要な問題であるテレフタルアミド共重合体を母相とした炭素繊維強化材の成形性改善や結晶化促進による耐熱性改善には、無効であった。
また、繊維強化樹脂複合材料の製造に際して、高周波誘導加熱装置を用いて、含浸させながら熱プレス後、冷プレスすることで生産性を高める方法が、特開2008−254437(特許文献4)に開示されている。しかし、結晶性熱可塑性樹脂を母相とする複合材料では、樹脂の冷却固化よりも結晶化による固化が律速であることから、生産性を高める効果が小さく、また異常に急速冷却した場合、樹脂の結晶化の進行が不十分となり、強度や剛性、また耐熱性が十分得られないものであった。
すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
1.重量平均繊維長30mm以上の炭素長繊維(A)100質量部に対して、ヘキサメチレンテレフタルアミド成分を50モル%以上含むヘキサメチレンテレフタルアミド共重合体(B)30〜250質量部、タルク、クレイ、周期表第1a属金属含有の有機化合物から選ばれた少なくとも一種以上の結晶核剤(C)0.01〜10質量部を含有することを特徴とする炭素長繊維強化ポリアミド複合材料。
2.さらに(D)成分として、周期表第2a属、周期表第3属、周期表第4属から選ばれた少なくとも1種以上の金属の高級脂肪酸塩(D)0.01〜5質量部を含有することを特徴とする1.に記載の炭素長繊維強化ポリアミド複合材料。
3.溶融状態からの降温結晶化温度が180〜270℃であることを特徴とする1.又は2.のいずれかに記載の炭素長繊維強化ポリアミド複合材料。
4.表面温度が160〜280℃の金型により成形するスタンピング成形用であることを特徴とする1.2.3.のいずれかに記載の炭素長繊維強化ポリアミド複合材料。
本発明には、重量平均繊維長が30mm以上、好ましくは33mm以上、更に好ましくは100mm以上の炭素長繊維や連続繊維が使用される。重量平均繊維長が30mm未満では、構造材としての強度が未達となり、好ましくない。機械物性上は連続繊維が好ましいが、成形時の金型内における流動性が必要なことからプリプレグとしてより短く切断されたものが使用される。炭素繊維としては、製造法に特に制限されないが、ポリアクリロニトル繊維やセルロース繊維などの繊維を空気中で200〜300℃にて処理した後、不活性ガス中で1000〜3000℃以上で焼成され炭化製造された引っ張り強度20t/cm2以上、引っ張り弾性率200GPa以上の炭素繊維が好ましい。本発明に使用される単繊維径は、特に制限されないが、複合化の製造ライン工程から3〜25μmが好ましく、特に4〜15μm好ましい。3μm未満では、含浸や脱泡が難しく、25μmを超えると、比表面積が小さくなり、複合化の効果が小さくなり好ましくない。本発明に使用される炭素繊維は、空気や硝酸による湿式酸化、乾式酸化、ヒートクリーニング、ウイスカライジングなどによる接着性改良のための処理されたものが好ましい。また本発明の複合材料製造に使用される炭素繊維は、作業工程の取り扱い性から、100℃以下で軟化する集束剤により集束されていることが好ましい。集束フィラメント数には特に制限ないが、1000〜30000フィラメント、好ましくは、3000〜25000フィラメントが好ましい。本発明に使用される炭素繊維の集束剤は特に限定されないが、炭素繊維と母相のヘキサメチレンテレフタルアミド共重合体に高い接着力を有するウレタン系やエポキシ系集束剤が好ましい。
テレフタル酸アミド共重合体の分子量は特に限定されないが、25℃において測定した98質量%硫酸の0.05g/l濃度における相対粘度が1.8〜2.8の範囲にあるやや低分子量のものが、炭素繊維への含浸性から好ましい。
結晶核剤の有効性は、示差走査熱量計(DSC)を使用して、ISO11357−3に準じて、溶融は、溶融状態である330℃から20℃/分で冷却した場合、結晶化発熱のピーク温度は180〜270℃が好ましい態様であり、200〜260℃にあることが更に好ましい態様である。このピーク温度は、結晶核剤の種類、分散状態による表面積、配合量に制御される。結晶化温度が高いと、溶融状態からの冷却過程における結晶化が速く進行し、早期に結晶化することにより、180℃以下好ましくは150℃以下まで冷却されれば脱型が可能であり、短時間で固化するので成形時間を短縮することが出来る。テレフタル酸アミド共重合体のガラス転移点の80℃以下の金型温度を使用した場合、分子の凍結固化は速く進行するがこの場合結晶化の程度は極めて低く、結晶化度が不十分のため使用時変形が起こりやすく本来の耐熱性を有しないので好ましくない。このように、本来の高い耐熱性を有する成形品が、高い生産性で成形できることが本発明の特徴である。
本発明により得られた成形品が、飛躍的に高い荷重たわみ温度や特に80℃を超える温度において高い曲げ強度や比強度が得られる理由は、炭素長繊維複合材料を成形して得られた成形品において、ヘキサメチレンテレフタルアミド共重合体が十分結晶化しており、そのガラス転移点を超えても結晶が物理的な架橋点の作用によるもので、架橋点が流動や変形を抑制し、高い弾性率を保持するためと考察される。本発明の複合材料を成形して得られた成形品の荷重たわみ温度は、好ましくは1.82MPaの荷重下で120℃〜280℃、さらに好ましくは、150℃〜270℃である。また、曲げ強さは、好ましくは400MPaを超える。
本発明の複合材料の製造法は特に限定されない。例えば、ヘキサメチレンテレフタルアミド共重合体の融点以上に温度調節されたスクリュータイプ押出機のホッパーにヘキサメチレンテレフタルアミド共重合体と結晶核剤などを所定割合に予備混合して供給する。溶融樹脂をギアポンプの回転数にて計量して、樹脂の融点以上に温度調節された含浸用押出機の上流に供給する。一方、ロービング状の炭素繊維を拡張開繊し、含浸用押出機の下流に供給する。下流先端に開口部を絞ったスリットダイを備えた含浸用押出機中で樹脂圧により、炭素繊維ロービングに樹脂を含浸・脱泡する。下流開口部から吐出されたテープ状の炭素繊維とヘキサメチレンテレフタルアミド共重合体からなる複合材料を冷却してかせに巻き取る。さらに、このテープ状複合材料を30mm以上にカットすることや、テープ状複合材料をカットせずに織物状に織って成形用に提供される。また、樹脂の融点以上に温度調節されたスクリュータイプ押出機の上流ホッパーにヘキサメチレンテレフタルアミド共重合体と結晶核剤などを所定割合に予備混合して供給する。下流の出口ダイにロービング状炭素繊維を供給して、繊維の送り速度と樹脂の吐出量を調節して、所定の繊維含有率からなるストランド状の炭素繊維の樹脂被覆材を得る。このストランドを冷却してかせに巻き取る。このストランドを30mm以上にカットするか、織物状に織って成形用に提供される方法などが上げられる。
本発明の複合材は、赤外線加熱や高周波加熱して、樹脂を加熱溶融して、圧縮成形機の好ましくは、ヘキサメチレンテレフタルアミド共重合体の結晶化温度より高い160〜280℃金型に供給して、賦形冷却後脱型して構造材の部品が成形される。
(測定方法)
(1)炭素繊維の重量平均繊維長
複合材料または複合成形品の微小片を、2枚のスライドグラス板間で溶融し、厚さ0.05mm程度のフイルム状とする。マイクロスコープ(キーエンス社製)を使用して、透過光により倍率100倍にて限定視野内に各繊維の重心(長さの中心)が存在する繊維の長さを、100本〜200本を測定して、0.1mm間隔のヒストグラムを作成する。クラスの中央値(Xi)と頻度(fi)から次式により求めた。
X=ΣfiXi2/ΣfiXi
(2) 相対粘度
JIS K6920−2:2000に準じて、25℃の恒温水槽中で、ポリアミド樹脂の98%硫酸の0.1%溶液について、オストワルド粘度計を使用して、溶液の落下秒数と溶媒の落下秒数から求めた。
(実施例 1〜20)
ヘキサメチレンテレフタルアミド共重合体、結晶核剤、離型剤を表1に示した質量部に配合して、265℃に温度調節されたスクリュー式押し出し機のホッパーに投入した。また表1にし示した炭素繊維のロービングを100質量部になる速度で拡張開繊して押出機のダイヘッドに供給した。幅10mm・高さ0.2mmのダイから含浸被覆されたテープ状プリプレグを水槽に浸漬して固化した後、枷に巻き取った。
成形性や物性評価は次のように行った。
(1)離型性
テープ状プリプレグを100mmにカットして15枚重ねて、IRヒータにより、240℃に予熱した後、温度120〜260℃のある温度に温度調節された12X150X3mmの金型にセットして、5分間30MPa圧縮保持した。金型を圧縮成形機から取り出した。1〜30分のある時間放冷後、金型を開き、成形品の離型性を評価した。判断基準は、次のようにした。○:成形品が変形することなく取り出せる。△:成形品がやや変形するが取り出せる。×:成形品に突き出しピンが刺さり離型できない。
(2)荷重たわみ温度
上述の成形品を、デシケータ中で23℃にて48時間保管後、東洋精機社製HDT&VSPT TESTERを使用して、ISO75−2に準じて、フラットワイズにて、1.82MPa荷重下の荷重たわみ温度を測定した。
(3)降温結晶化温度
上述の試験の表層から試料10mgをDSC用サンプル容器に採取し、SEIKO INSTRUMENTS製SSC5200型DSCを使用して、ISO11357−3に準拠し、窒素40ml/min流動下で270℃から10℃/minで降温し、発熱がピークを示す温度を測定した。
(3)曲げ特性
また、得られた成形品を、デシケータ中で23℃にて48時間保管後、ISO178に準拠した3点曲げ試験機(オリエンテック社製テンシロン4L型)を使用して、スパン長120mm、クロスヘッド速度1mm/minによる曲げ強度、及び15×20×3mmの試験片を使用してISO14130に準じて、スパン長10mm・クロスヘッド速度1mm/minとして層間せん断強度を測定した。
本発明の目的のひとつである軽量性は、圧縮成形して得られた成形品をアルキメデスの原理により比重を測定し、曲げ強度の比強度により評価した。
ポリアミド樹脂、結晶核剤、離型剤の種類や配合比を表2に示したように変更した以外は、実施例と全く同様にプリプレグを作製した後、テストピースを成形した。得られた試験片について,実施例と全く同様に曲げ強度と層間せん断強度を測定した。得られた試験データを表2に合わせて示した。
PA6T/6:PA 6T/6(東洋紡績製、TY502NZ、相対粘度2.5)
PA6T/66:PA 6T/66(東洋紡績製試作品、 PA6T/66=65/35(モル比)、相対粘度2.4)
PA6T/6I:PA 6T/6I(東洋紡績製試作品、PA6T/6I=40/60(モル比、相対粘度2.6)
T842:PA6 (東洋紡績製、 T842,相対粘度2.2)
炭素繊維:帝人社製東邦テナックス IMS40(単繊維径6.4μm、6000フィラメント)
MW5000:タルク (林化成製、ミクロンホワイト)平均粒径 4μm
ASP200:クレイ(林化成製、カオリンASP200)平均粒径 0.5μm
1707:Na塩アイオノマー(三井化学製、ハイミラン)
SiO2:シリカ(林化成製、ハイシレックス)平均粒径15μm)
St−Mg:ステアリン酸マグネシュウム(淡南化学製)
CAV102:モンタン酸カルシュウム塩(クラリアント製)
St−Al:ステアリン酸アルミニュウム(ナカライテスク製)
St−Zn:ステアリン酸亜鉛(ナカライテスク製)
St−A:ステアリン酸(ナカライテスク製)
Claims (4)
- 重量平均繊維長30mm以上の炭素長繊維(A)100質量部に対して、ヘキサメチレンテレフタルアミド成分を50モル%以上含むヘキサメチレンテレフタルアミド共重合体(B)30〜250質量部、タルク、クレイ、周期表第1a属金属含有の有機化合物から選ばれた少なくとも一種以上の結晶核剤(C)0.01〜10質量部を含有することを特徴とする炭素長繊維強化ポリアミド複合材料。
- さらに(D)成分として、周期表第2a属、周期表第3属、周期表第4属から選ばれた少なくとも1種以上の金属の高級脂肪酸塩(D)0.01〜5質量部を含有することを特徴とする請求項1に記載の炭素長繊維強化ポリアミド複合材料。
- 溶融状態からの降温結晶化温度が180〜270℃であることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の炭素長繊維強化ポリアミド複合材料。
- 表面温度が160〜280℃の金型により成形するスタンピング成形用であることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3のいずれかに記載の炭素長繊維強化ポリアミド複合材料。
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