JP5850298B2 - 炭素長繊維強化ポリアミド樹脂複合材料 - Google Patents
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Description
繊維の絡み合いが起こらないように、繊維のロービングを単繊維状に開繊した後、ポリアミド樹脂を含浸して、強化繊維とポリアミド樹脂からなる一軸のテープ状プリプレグを予備成形した後、加熱圧縮成形する方法も開示された(例えば、非特許文献2参照)。しかし、一般のポリアミド樹脂の場合、絶乾状態では、高い剛性や強度が得られるが、空気中の水分を吸湿しやすく、多湿状態では、剛性や強度が著しく低下して、目的とする構造材の要求には未達であった。
すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
1.重量平均20mm以上の炭素長繊維(A)100質量部に対して、ポリアミド6(B)30〜200質量部、アミド結合1個当りベンゼン環を0.2〜0.5個を含有する1種以上のポリアミド樹脂(C)3〜100質量部を含有することを特徴とする炭素長繊維強化ポリアミド樹脂複合材料。
2.アミド結合1個当りベンゼン環を0.2〜0.5個を含有するポリアミド樹脂(C)が、ポリメタキシリレンアジパミド及び/またはポリメタキシリレンアジパミド共重合体を含有することを特徴とする1.に記載の炭素繊維強化ポリアミド樹脂複合材料。
3.アミド結合1個当りベンゼン環を0.2〜0.5個を含有するポリアミド樹脂(C)が、テレフタルアミド共重合体を含有することを特徴とする1.、2.に記載の炭素繊維強化ポリアミド樹脂複合材料。
4.1.〜3.のいずれか記載の炭素長繊維強化ポリアミド樹脂複合材料からなる、スタンピング成形用プリプレグ。
本発明には、重量平均繊維長が20mm以上、好ましくは25mm以上、更に好ましくは100mm以上の炭素長繊維や連続繊維が使用される。重量平均繊維長が20mm未満では、構造材としての強度が未達となり、好ましくない。機械物性上は連続繊維が好ましいが、成形時の金型内における適度な流動性が必要であることからプリプレグとして特定長さに切断されたものが使用されることもある。炭素繊維としては、特に製造法に制限されないが、ポリアクリロニトル繊維やセルロース繊維などの繊維を空気中で200〜300℃にて処理した後、不活性ガス中で1000〜3000℃以上で焼成され炭化製造された引張り強度20t/cm2以上、引張り弾性率200GPa以上の炭素繊維が好ましい。本発明に使用される単繊維径は、特に制限されないが、複合化の製造ライン工程から3〜25μmが好ましく、特に4〜15μmが好ましい。3μm未満では、含浸や脱泡が難しく、25μmを超えると、比表面積が小さくなり、複合化の効果が小さくなり好ましくない。本発明に使用される炭素繊維は、空気や硝酸による湿式酸化、乾式酸化、ヒートクリーニング、ウイスカライジングなどによる接着性改良のための処理されたものが好ましい。また本発明の複合材料製造に使用される炭素繊維は、作業工程の取り扱い性から、100℃以下で軟化する集束剤により集束されていることが好ましい。集束フィラメント数には特に制限ないが、1000〜30000フィラメント、好ましくは、3000〜25000フィラメントが好ましい。本発明に使用される炭素繊維の集束剤は特に限定されないが、炭素繊維と母相のポリアミド樹脂に高い接着力を有するウレタン系やエポキシ系集束剤が好ましい。
また重量平均20mm以上の炭素長繊維(A)100質量部当り、(B)と(C)成分の合計は、33〜300質量部、好ましくは、35〜250質量部、特に40〜200質量部が好ましい態様である。33質量部未満では、含浸性が低下し、空隙率が高くなり高い曲げ強度が得られないので好ましくない。また300質量部を超えると、炭素長繊維分率が25質量%未満となり、高い曲げ強度が得られないので好ましくない。
樹脂成分として、300mgをヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)と重水素化ベンゼン(C6 D6 )の等量混合溶媒3mlに溶解して液温50℃で13C−NMRの測定をする。その結果得られた13C−NMRスペクトルより、芳香族系ポリアミド樹脂のアミド結合中のNH基の隣のメチレン基の炭素(α)に起因する吸収[40.6〜40.8ppm]のピーク強度(Iα)(重ベンゼンの3本の13Cのピークのうちの中央のピークを128.0ppmとした。)から求められる。
また重水素化蟻酸/重水素化クロロホルム(4/1)に溶解し、50℃においてヴァリアン社Unity−500NMR分光器を用いて、H-NMR測定を行った。6.8ppm−8ppmに現れるメタキシリレンジアミンユニットの芳香環上プロトンのピーク強度から求められる。
本発明の複合材料の製造法は特に限定されない。例えば、構成するポリアミド樹脂の最も高い融点以上に温度調節されたスクリュータイプ押出機のホッパーにポリアミド樹脂および/またはポリアミド樹脂共重合体を所定割合に予備混合して供給する。溶融樹脂をギアポンプの回転数にて計量して、樹脂の融点以上に温度調節された含浸用押出機の上流に供給する。一方、ロービング状の炭素繊維を拡張開繊し、含浸用押出機の下流に供給する。下流先端に開口部を絞ったスリットダイを備えた含浸用押出機中で樹脂圧により、炭素繊維ロービングに樹脂を含浸・脱泡する。下流開口部から吐出されたテープ状の炭素繊維とポリアミド樹脂からなる複合材料を冷却してかせに巻き取る。さらに、このテープ状複合材料を20mm以上にカットすることや、テープ状複合材料をカットせずに織物状に織って成形用に提供される。また押出機下流の出口ダイにロービング状炭素繊維を供給して、繊維の送り速度と樹脂の吐出量を調節して、所定の繊維含有率からなるストランド状の炭素繊維の樹脂被覆材を得る。このストランドを冷却してかせに巻き取る。このストランドを20mm以上にカットするか、織物状に織って成形用に提供される方法などが上げられる。
実施例 1〜11(実施例6〜8は参考例である)
ポリアミド樹脂を表1に示した質量部に配合し、シリンダー温度が280℃に温度調節された2軸スクリュー式押し出し機(東芝機械社製TEM35)のホッパーに投入し、溶融混練し、ノズルから押し出されたストランドを水冷後、ペレタイズして、母相となるポリアミド樹脂ペレットを得た。
得られたペレットを100℃にて17時間真空乾燥後、シリンダー温度を280℃に温度制御した2軸押し出し機(日本製鋼所製TEX30)のホッパーに投入し、溶融し、時間当たり一定質量部を押出した。一方、表1に示した炭素繊維のロービングを100質量部になる速度で拡張開繊して押出機のダイヘッドに供給した。幅10mm・高さ0.2mmのダイから含浸被覆されたテープ状プリプレグを引き抜いて固化した後、枷に巻き取った。
テープ状プリプレグを、繊維軸を1方向に揃えて、間隔200mm,幅150mmの枷に巻き取り12層重ねた。これをIRヒータにより、280℃に予熱した後、温度200℃に温度調節された200mm×150mm×2mmの金型にセットして、5分間30MPa圧縮保持した。金型を圧縮成形機から取り出した。30分放冷後、金型を開き、厚さ約2mmの平板を得た。さらに同様に繰り返して、繊維が一軸配向した平板(UD材)を得た。
また、回転刃をセットとしたテープカッターを使用して、枷に巻き取ったテープ状プリプレグを一定長さにカットして短冊を得た。得られた短冊を200mm×150mm×10mmのキャビティ中にランダムに散布し、その上に195mm×145mm×6mmのステンレス板2枚を載せ、上下版共280℃に温度調節したハンドプレスにセットした。3分後から上下版の間隔を狭めていき20秒後に3MPaの圧力を2分掛けた後、キャビティにステンレス板を載荷した状態で取り出した後、表面温度が80℃になるまで放冷し、繊維が擬似等方性に配向した平板(RS材)を取り出した。
得られたUD平板とRS平板それぞれの中央部から、繊維軸方向に10mm×100mmに5本切り出し0度方向曲げ試験用テストピースを得た。また別の平板から、繊維軸と直交する方向に10mm×100mmに5本切り出し、90度曲げ試験用テストピースを得た。
母相となるポリアミド樹脂ペレットを100℃にて17時間真空乾燥後、シリンダー温度を280℃に温度制御した射出成形機(東芝機械製IS80)と、これにセットされた50℃に温度調節したISO294−1に準拠したテストピース金型を使用して、ISO1874−2に規定されたPA6の成形条件にて多目的試験片を得た。これを、23℃に温度調節された試験室中のデシケータに48時間保管した。
23℃に温度調節された試験室中に設置された、万能引っ張り試験機(島津製作所製オートグラフAG1)を使用し、デシケータ中に保管しておいた絶乾状態のテストピースについて、ISO527−1,2に準拠して5mm/minにて引っ張り試験を行なった。荷重―変位曲線のピーク値から引っ張り降伏強度を測定した。
(2)降温結晶化温度
上述の曲げ試験片テストピースの表層から試料10mgをDSC用サンプル容器に採取し、SEIKO INSTRUMENTS製SSC5200型DSCを使用して、ISO11357−3に準拠し、窒素40ml/min流動下で300℃まで20℃/minで昇温し、300℃にて5分保持後、10℃/minで降温し、発熱がピークを示す温度を測定し、結晶化温度とした。
(3)炭素繊維の重量平均繊維長
複合材料または複合成形品の微小片を、2枚のスライドグラス板間で溶融し、厚さ0.05mm程度のフイルム状とする。マイクロスコープ(キーエンス社製)を使用して、透過光により倍率100倍にて限定視野内に各繊維の重心(長さの中心)が存在する繊維の長さを、100本〜200本を測定して、0.1mm間隔のヒストグラムを作成する。クラスの中央値(Xi)と頻度(fi)から次式により求めた。
X=ΣfiXi2/ΣfiXi
(4)曲げ特性
スタンピング成形して得られた平板から、繊維軸方向と繊維軸に垂直方向にそれぞれ切削して得た曲げテストピースを、デシケータ中で23℃にて48時間保管後、ISO178に準拠した3点曲げ試験機(オリエンテック社製テンシロン4L型)を使用して、スパン長80mm、クロスヘッド速度1mm/minによる曲げ試験を行ない、次式により、〇度方向曲げ強度と90度方向曲げ強度を算出した。
σ=3PL/ 2bd2
ここで、σ:曲げ強度(MPa)、L:スパン長(m)、b:幅(m)、d:厚さ(m)、P:最大荷重(N)
ポリアミド樹脂の種類と配合比および繊維含有率を表2のように変更した以外は、表2に示した実施例と全く同様にプリプレグを作製した後、テストピースを成形した。得られた試験片について,実施例と全く同様に0度方向曲げ強度と90度方向曲げ強度を測定した。得られた試験データを表2に合わせて示した。
T802:PA6(東洋紡績製試作品、R/M=0、相対粘度2.5)
T842:PA6(東洋紡績製、R/M=0、相対粘度2.2)
T600:PAMXD6(東洋紡績製、 R/M=0.5、相対粘度2.2)
TYB:PA6T/XX (東洋紡績製試作品、R/M=0.3、相対粘度2.5)
TYG:PA6T/6I(東洋紡績製試作品、R/M=0.5、相対粘度2.8)
炭素繊維:帝人社製東邦テナックス IMS40(単繊維径6.4μm、6000フィラメント)
Claims (3)
- 重量平均20mm以上の炭素長繊維(A)100質量部に対して、ポリアミド6(B)30〜200質量部、アミド結合1個当りベンゼン環を0.2〜0.5個を含有する1種以上のポリアミド樹脂(C)5〜80質量部を、(B)成分に対する(C)成分の比(B/C)が9/1〜7/3の配合比で含有し、(B)と(C)からなるポリアミド樹脂の引っ張り降伏強度が85〜120MPaである、炭素長繊維強化ポリアミド樹脂複合材料からなる、スタンピング成形用プリプレグ。
- アミド結合1個当りベンゼン環を0.2〜0.5個を含有するポリアミド樹脂(C)が、ポリメタキシリレンアジパミド及び/またはポリメタキシリレンアジパミド共重合体を含有することを特徴とする請求項1に記載のスタンピング成形用プリプレグ。
- アミド結合1個当りベンゼン環を0.2〜0.5個を含有するポリアミド樹脂(C)が、テレフタルアミド共重合体を含有することを特徴とする請求項1、または請求項2に記載のスタンピング成形用プリプレグ。
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