JP5850298B2 - 炭素長繊維強化ポリアミド樹脂複合材料 - Google Patents

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Description

本発明は、炭素長繊維とポリアミド樹脂からなる複合材料に関する。詳しくは、炭素長繊維と、ポリアミド6樹脂と特定量のベンゼン環を含有するポリアミド樹脂からなる複合材料に関する。更に詳しくは、座屈強度が著しく改善され高い曲げ強度や圧縮強度を有し、比強度が非常に高い構造材用複合材料に関する。
従来、電線被覆法を応用したガラス長繊維強化ポリアミド樹脂複合材料は知られていた(例えば、非特許文献1参照)。しかし、従来技術では、ガラス繊維とポリアミド樹脂からなる長繊維強化ポリアミド樹脂複合材料を射出成形して成形品を得ていた。複合化するコンパウンド化工程や射出成形工程でガラス繊維の折損が著しく、ガラス繊維の強度や弾性率への補強効果が低下し、構造材としての実用性能には不満足であった。
高強度・高剛性成形品を得るために、ガラス繊維より強度や弾性率の高い炭素繊維とポリアミド樹脂の複合材料も研究開発された。しかし、コンパウンド化工程や射出成形工程で炭素繊維が折損し、その効果は要求に大幅に未達であった。また、強化繊維の折損を避けるために、成形時のせん断応力が低い圧縮成形についても検討された。しかし、強化繊維が長くなると繊維のからみ合いが起こり、流動性が著しく低下して、大型成形品や細いリブやボス構造を有する成形品は、欠肉が起こり良好な成形品が得られなかった。
繊維の絡み合いが起こらないように、繊維のロービングを単繊維状に開繊した後、ポリアミド樹脂を含浸して、強化繊維とポリアミド樹脂からなる一軸のテープ状プリプレグを予備成形した後、加熱圧縮成形する方法も開示された(例えば、非特許文献2参照)。しかし、一般のポリアミド樹脂の場合、絶乾状態では、高い剛性や強度が得られるが、空気中の水分を吸湿しやすく、多湿状態では、剛性や強度が著しく低下して、目的とする構造材の要求には未達であった。
ポリアミド樹脂としては、吸湿率の低い、芳香族環を有するポリアミド樹脂の複合材料も、特開平05−005060(特許文献1)や特開2002−234999(特許文献2)の様に開示された。平衡吸水状態での強度や剛性低下は抑制された。また、繊維の軸方向の引張り強度は、構造材としての目標強度レベルに達した。しかし、逆に樹脂の靭性が低下するため、繊維補強効果が殆ど作用しない繊維軸に対して横方向の変形を受けた場合、強度は低下し脆性的に破壊することから、構造材としては重大な欠陥があり、要求に未達であった。また炭素長繊維強化ポリアミド6樹脂は、曲げ変形を受けた場合、圧縮側で座屈しやすく、引張り強さに比較して、曲げ強さは著しく低く、炭素繊維含有率を高くしても向上せず、曲げモードの変形を受ける構造材としての要求には大幅に未達であった。
一方、非特許文献3に開示されているように、クレー系フィラーによるポリアミド6のナノコンポジット化により、弾性率や熱変形温度が改善されることが開示されている。比弾性率が改善されるが、絶対値としての強度や弾性率の改善効果は不十分であり、本発明の目的である構造材としての要求とは大きな乖離があった。
ポリアミド6と芳香族ポリアミドを母相とし、重量繊維長が1mm〜15mmであるガラス繊維強化ポリアミド樹脂が特許文献4に、またガラス長繊維化ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートについて、重量平均繊維長と数平均繊維長の比が1.3〜3で重量平均繊維長が2.0〜15mmである繊維強化樹脂構造物が特許文献5に開示されている。特許文献4には、繊維長を限定する理由として、強化繊維が15mmを超えると成形性が低下するので好ましくないとしている。また当業界では、強化繊維を15mmより超えて長くした場合も、引っ張り変形に対する物性は向上するが、圧縮変形や曲げ変形に対する繊維の補強効果は小さく物性は殆ど向上せず、より長繊維化する効果は見出されていなかった。より細く、より弾性率が高い炭素繊維強化の場合も、この繊維長の限界はより長くなることは考えにくいことであった。
構造材の場合、曲げや圧縮変形を受ける部品も多く、曲げや圧縮変形に強い構造材用ポリアミド複合材料について、市場の高い開発要求があった。
Composites,July, 150 (1973) SPI(Society of Plastics Industry) 30th 11−C (1975) プラスチックス Vol.51(No.12),98−107(2000)
特開平05−005060号公報 特開2002−234999号公報 特開2004−39950号公報 特許第4535772号公報 特開2001−192466号公報
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、繊維軸方向およびその軸の横方向の変形に対して、共に曲げ強さや圧縮強さが飛躍的に優れた比強度の高い構造材用複合材組成物を提供することにある。
本発明者らは鋭意検討した結果、以下に示す手段により、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
1.重量平均20mm以上の炭素長繊維(A)100質量部に対して、ポリアミド6(B)30〜200質量部、アミド結合1個当りベンゼン環を0.2〜0.5個を含有する1種以上のポリアミド樹脂(C)3〜100質量部を含有することを特徴とする炭素長繊維強化ポリアミド樹脂複合材料。
2.アミド結合1個当りベンゼン環を0.2〜0.5個を含有するポリアミド樹脂(C)が、ポリメタキシリレンアジパミド及び/またはポリメタキシリレンアジパミド共重合体を含有することを特徴とする1.に記載の炭素繊維強化ポリアミド樹脂複合材料。
3.アミド結合1個当りベンゼン環を0.2〜0.5個を含有するポリアミド樹脂(C)が、テレフタルアミド共重合体を含有することを特徴とする1.、2.に記載の炭素繊維強化ポリアミド樹脂複合材料。
4.1.〜3.のいずれか記載の炭素長繊維強化ポリアミド樹脂複合材料からなる、スタンピング成形用プリプレグ。
本発明により、曲げ強度や圧縮強度が飛躍的に高く、いろいろなモードの変形を受ける構造材の要求を満たすことができる複合材料を工業的に提供することができる。本発明により得られた複合材組成物を成形して得られる成形品は、自動車のフレーム部品や機械器具の構造部材やスポーツ器具などに使用される。本発明により、いろいろな方向に変形を受けた場合も高い曲げ強度や圧縮強度を有する複合材組成物が提供される理由は、未だ明確でないが、母相を成すポリアミド樹脂の強度や剛性と共に破断伸びや靭性が高く、炭素繊維複合系に適切な物性範囲にあるためと考察される。この物性は、比較的靭性の高いポリアミド6の母相中に、比較的強度や剛性の高いアミド結合1個当りベンゼン環を0.2〜0.5個を含有する1種以上のポリアミド樹脂がナノアロイされることにより、分子補強効果を示し、高次構造が微細化できるので、高い弾性率と共に靭性も保持できる相乗効果によるものと考察される。すなわち伸びを保持して弾性率が高くなり、複合材が圧縮を受けた場合、強化材の炭素繊維の弾性率との差が小さくなることにより、炭素繊維が座屈しにくくなるため、炭素繊維の高い性能を有効に作用させて、圧縮強度や引張りと曲げの合成である曲げ強度が驚くほど改善されたものと考えられる。
以下、本発明を詳述する。
本発明には、重量平均繊維長が20mm以上、好ましくは25mm以上、更に好ましくは100mm以上の炭素長繊維や連続繊維が使用される。重量平均繊維長が20mm未満では、構造材としての強度が未達となり、好ましくない。機械物性上は連続繊維が好ましいが、成形時の金型内における適度な流動性が必要であることからプリプレグとして特定長さに切断されたものが使用されることもある。炭素繊維としては、特に製造法に制限されないが、ポリアクリロニトル繊維やセルロース繊維などの繊維を空気中で200〜300℃にて処理した後、不活性ガス中で1000〜3000℃以上で焼成され炭化製造された引張り強度20t/cm以上、引張り弾性率200GPa以上の炭素繊維が好ましい。本発明に使用される単繊維径は、特に制限されないが、複合化の製造ライン工程から3〜25μmが好ましく、特に4〜15μmが好ましい。3μm未満では、含浸や脱泡が難しく、25μmを超えると、比表面積が小さくなり、複合化の効果が小さくなり好ましくない。本発明に使用される炭素繊維は、空気や硝酸による湿式酸化、乾式酸化、ヒートクリーニング、ウイスカライジングなどによる接着性改良のための処理されたものが好ましい。また本発明の複合材料製造に使用される炭素繊維は、作業工程の取り扱い性から、100℃以下で軟化する集束剤により集束されていることが好ましい。集束フィラメント数には特に制限ないが、1000〜30000フィラメント、好ましくは、3000〜25000フィラメントが好ましい。本発明に使用される炭素繊維の集束剤は特に限定されないが、炭素繊維と母相のポリアミド樹脂に高い接着力を有するウレタン系やエポキシ系集束剤が好ましい。
本発明には、炭素繊維(A)100質量部当り、ポリアミド6(B)30〜200質量部、好ましくは50〜150質量部、さらに好ましくは70〜120質量部含有される。30質量部未満では、炭素繊維へのポリアミド樹脂の含浸が困難であり、また200質量部を超えると、炭素繊維による補強の効果が不十分となり、本発明の目的である構造部材としての要求を満たせず好ましくない。
本発明に使用されるポリアミド6樹脂は、特に限定されない。ISO11357−3に準拠し測定した融点が180℃以上、好ましくは、200℃以上を保持する範囲にあるポリアミド6共重合体は、本発明に使用される。融点が180℃未満の場合、耐熱性が低いことや剛性が低いことから好ましくない。本発明に使用される共重合成分は特に限定されない。共重合されるジアミン成分としては、パラキシリレンジアミン、メタキシリレンジアミン、フェニレンジアミン、トルエンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミンなどが例示される。これらの中では、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミンが好ましい。また、共重合されるジカルボン酸成分としては、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2−メチルテレフタル酸等が挙げられる。これらの中では、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸が好ましい。また6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、p−アミノメチル安息香酸などのアミノ酸や、ω−ラウロラクタムなどのラクタムなどが挙げられる。
また、本発明には、重量平均20mm以上の炭素長繊維(A)100質量部当り、アミド結合1個当りベンゼン環(以下において、R/Mと略す)を0.2〜0.5個を含有する1種以上のポリアミド樹脂(C)3〜100質量部、好ましくは5〜80質量部を含有する。3質量部未満では、目的とする曲げ強度や圧縮強度改善の効果が低く、好ましくない。また100質量部を超えると、改善目的とする繊維軸に対して横方向の曲げ強度や破壊伸びが低下するので好ましくない。R/Mが0.2〜0.5個を含有するポリアミド樹脂としては、原料モノマーの少なくとも一方にベンゼン環を含有する、すなわち原料モノマーに芳香族ジカルボン酸や芳香族ジアミンの1種以上を含有する。本発明には、R/Mを0.2〜0.5個を、好ましくは0.3〜0.5個を含有する1種以上のポリアミド樹脂(C)が使用される。0.2個未満では、目的とする曲げ強度や圧縮強度の改善効果が小さく好ましくない。またR/Mが0.5を超える場合、分子鎖のアミド基結合間にベンゼン環が2個結合するか、側鎖にベンゼン環が存在する場合がある。またはジアミンとジカルボン酸モノマー中のいずれかに2個以上のベンゼン環を含有する場合である。これらのいずれの場合も、結晶化速度が低下し成形性の面から好ましくない。R/Mを0.2〜0.5個を、好ましくは0.35〜0.5個を含有する1種以上のポリアミド樹脂(C)としては、ポリパラキシリレンジアジパミド、ポリメタキシリレンアジパミド、ポリフェニレンジアミンアジパミド、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド、ポリヘキサメチレンイソフタルアミドやこれらの共重合体が使用される。これらの中では、ポリメタキシリレンアジパミド、メタキシリレンアジパミド共重合体、ヘキサメチレンジアミンテレフタルアミド共重合体が好ましい態様である。これらのホモポリマーにおいては、R/Mは0.5個含有する。これらの60モル%以上と脂肪族ポリアミドからなる共重合ポリアミドは、R/Mが0.2個のベンゼン環を含有する。ヘキサメチレンテレフタルアミドとヘキサメチレンイソフタルアミド共重合体や、とパラキシリレンアジパミド共重合体の場合、共重合比によらずR/Mを0.5個含有している。構成モノマーが既知の場合、R/Mは、共重合モノマーと共重合比から算定される。構成モノマーの比が未知の場合、R/Mは、核磁気共鳴(NMR)測定により算定される。共重合成分としては、特に限定されない。ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸などが挙げられる。またジアミン成分としては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナンメチレンジアミン、フェニレンジアミンなどが挙げられる。また、6−アミノカプロン酸、11アミノウンデカンカルボン酸のようなアミノ酸や、ε−カプロラクタムや、ω―ラウロラクタムなどのラクタムも使用される。本発明の効果を発揮するために、ポリアミド6(B)との相溶性を制御することが重要であり、共重合成分としては、ε−カプロラクタムが好ましい態様である。
本発明には、重量平均20mm以上の炭素長繊維(A)100質量部当り、ポリアミド6(B)30〜200質量部とR/M0.2〜0.5個を含有する1種以上のポリアミド樹脂(C)3〜100質量部を含有する。本発明には、成分(B)と成分(C)の配合比は特に限定されないが、(B)成分に対して(C)成分の比、B/C=9/1〜7/3または3/7〜1/9が好ましい。これ以外の範囲では、強度と靭性の両立が得られないことや、結晶化速度が遅くなり、成形サイクルが長時間となり好ましくない。(B)と(C)が共存していることに特徴があり、その多少関係には特に制限されない。
また重量平均20mm以上の炭素長繊維(A)100質量部当り、(B)と(C)成分の合計は、33〜300質量部、好ましくは、35〜250質量部、特に40〜200質量部が好ましい態様である。33質量部未満では、含浸性が低下し、空隙率が高くなり高い曲げ強度が得られないので好ましくない。また300質量部を超えると、炭素長繊維分率が25質量%未満となり、高い曲げ強度が得られないので好ましくない。
本発明においては、共重合やアロイされたポリアミド樹脂成形品中におけるベンゼン環含有率は、下記のように核磁気共鳴によって検出し、配合比の既知品について同様に求めたピーク強度比の検量線から算定され、この算定値から求めた組成比でもよい。
樹脂成分として、300mgをヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)と重水素化ベンゼン(C6 6 )の等量混合溶媒3mlに溶解して液温50℃で13C−NMRの測定をする。その結果得られた13C−NMRスペクトルより、芳香族系ポリアミド樹脂のアミド結合中のNH基の隣のメチレン基の炭素(α)に起因する吸収[40.6〜40.8ppm]のピーク強度(Iα)(重ベンゼンの3本の13Cのピークのうちの中央のピークを128.0ppmとした。)から求められる。
また重水素化蟻酸/重水素化クロロホルム(4/1)に溶解し、50℃においてヴァリアン社Unity−500NMR分光器を用いて、H-NMR測定を行った。6.8ppm−8ppmに現れるメタキシリレンジアミンユニットの芳香環上プロトンのピーク強度から求められる。
(B)と(C)からなる本発明に使用されるポリアミド樹脂は、引っ張り降伏強度が80〜120MPaで有ると、本発明の効果は顕著となり好ましい。この引っ張り降伏強度は、ポリアミド樹脂中で、(B)と(C)は部分相溶し、ナノ分散系をとることにより発現する。すなわち、それぞれの結晶は分離して混在し、非結晶部は相溶した構造をとる。従って、融点は複数ある場合でも、ガラス転移点は1点であることが、伸びや靭性と弾性率が共に高くなり好ましい。引っ張り降伏強度が85MPa未満では、曲げ変形で圧縮側が座屈しやすく、結果として高い曲げ強度が得られない。またベンゼン環分率が高く120MPaを超えると伸びや靭性が低下し、結果として繊維軸の横方向の曲げ強度が低下して好ましくない。
ポリアミド6(B)成分とR/M0.2〜0.5個を含有する1種以上のポリアミド樹脂(C)が、溶融状態で部分相溶することによって、溶融状態からの降温過程の結晶化温度は、(B)や(C)の結晶化温度より低下する。本発明の効果を発揮するには、降温過程における最大結晶化ピーク温度は、170〜200℃が好ましく、175〜195℃がより好ましい態様である。170℃未満では、結晶化速度が遅く、成形サイクルが長くなり、好ましくない。また200℃を超えると、成形時、金型内で流動している過程で結晶化が開始し、成形品の欠肉や外観ムラが起こることがあり、好ましくない。本発明の効果を発揮するには、(B)と(C)が、分離しながら、別個に結晶を形成することが好ましい。これはそれぞれの結晶の完全性が高い程、母相をなす樹脂相の降伏強さが高くなるためと推察される。
本発明に使用されるポリアミド樹脂の分子量は特に限定されないが、JISK6920−2に準拠し、25℃において測定した98質量%硫酸の0.05g/l濃度における相対粘度が1.8〜2.8、好ましくは1.9〜2.65の範囲にある。やや低分子量のものが、炭素繊維への含浸性から好ましい。相対粘度が1.8未満では樹脂が脆く、本発明の効果を発揮しにくい。また2.8を超えると、溶融粘度が高くなり、炭素繊維への含浸性が低下するので好ましくない。
本発明の炭素長繊維複合材料の成形方法は限定されないが、炭素長繊維分率が高く、流動性が低いことや、成形中の炭素繊維の折損を抑制するためにスタンピング成形されることが好ましい態様である。本発明の効果を発揮するには、示差走査熱量計おける10℃/min昇温過程において、発現するピーク吸熱温度の中で、構成するポリアミド樹脂の最も高い融点に相当する温度より、5〜50℃、好ましくは、10〜40℃高い温度に加熱した後、金型に投入し、スタンピング成形することが好ましい。5℃未満では成形品の欠肉や、炭素長繊維が成形品表面に浮き出し好ましくない。また50℃を超えると、成形品にバリの発生が著しくなり二次加工が必要になるので好ましくない。
本発明の複合材料を成形して得られる肉厚2mm以上の繊維が一軸配向した成形品の繊維軸方向の曲げ強度(UD:0度曲げ強度)は1400MPa以上,好ましくは1600MPa以上あり、かつ繊維軸に対して横方向の曲げ強度(UD:90度曲げ強度)は、100MPa以上、好ましくは120MPa以上である。また擬似等方性に構成した成形品の曲げ強度(RS:曲げ強度)は、800MPa以上、好ましくは1100MPa以上である。
本発明の樹脂組成物には、上記の必須成分の他に物性改良・成形性改良、耐久性改良を目的として、滑剤、酸化防止剤、難燃剤、耐光剤、耐候剤などが配合できる。
本発明の複合材料の製造法は特に限定されない。例えば、構成するポリアミド樹脂の最も高い融点以上に温度調節されたスクリュータイプ押出機のホッパーにポリアミド樹脂および/またはポリアミド樹脂共重合体を所定割合に予備混合して供給する。溶融樹脂をギアポンプの回転数にて計量して、樹脂の融点以上に温度調節された含浸用押出機の上流に供給する。一方、ロービング状の炭素繊維を拡張開繊し、含浸用押出機の下流に供給する。下流先端に開口部を絞ったスリットダイを備えた含浸用押出機中で樹脂圧により、炭素繊維ロービングに樹脂を含浸・脱泡する。下流開口部から吐出されたテープ状の炭素繊維とポリアミド樹脂からなる複合材料を冷却してかせに巻き取る。さらに、このテープ状複合材料を20mm以上にカットすることや、テープ状複合材料をカットせずに織物状に織って成形用に提供される。また押出機下流の出口ダイにロービング状炭素繊維を供給して、繊維の送り速度と樹脂の吐出量を調節して、所定の繊維含有率からなるストランド状の炭素繊維の樹脂被覆材を得る。このストランドを冷却してかせに巻き取る。このストランドを20mm以上にカットするか、織物状に織って成形用に提供される方法などが上げられる。
本発明の複合材を、赤外線加熱や高周波加熱やハロゲン電球加熱して、樹脂を加熱溶融して、圧縮成形機にセットした、好ましくは、ポリアミド樹脂の結晶化温度より高い150〜280℃金型に供給して、賦形冷却後脱型して構造材の部品が成形される。
本発明の複合材から得られた成形部品は、自動車のフレーム、バンパーフェースバーサポート材、シャシーシェル、座席フレーム、サスペンジョン支持部、サンルーフフレーム、バンパービーム、2輪車のフレーム、農機具のフレーム、OA機器のフレーム、機械部品など高い強度と剛性の必要な部品に利用される。
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
実施例 1〜11(実施例6〜8は参考例である)
ポリアミド樹脂を表1に示した質量部に配合し、シリンダー温度が280℃に温度調節された2軸スクリュー式押し出し機(東芝機械社製TEM35)のホッパーに投入し、溶融混練し、ノズルから押し出されたストランドを水冷後、ペレタイズして、母相となるポリアミド樹脂ペレットを得た。
得られたペレットを100℃にて17時間真空乾燥後、シリンダー温度を280℃に温度制御した2軸押し出し機(日本製鋼所製TEX30)のホッパーに投入し、溶融し、時間当たり一定質量部を押出した。一方、表1に示した炭素繊維のロービングを100質量部になる速度で拡張開繊して押出機のダイヘッドに供給した。幅10mm・高さ0.2mmのダイから含浸被覆されたテープ状プリプレグを引き抜いて固化した後、枷に巻き取った。
テープ状プリプレグを、繊維軸を1方向に揃えて、間隔200mm,幅150mmの枷に巻き取り12層重ねた。これをIRヒータにより、280℃に予熱した後、温度200℃に温度調節された200mm×150mm×2mmの金型にセットして、5分間30MPa圧縮保持した。金型を圧縮成形機から取り出した。30分放冷後、金型を開き、厚さ約2mmの平板を得た。さらに同様に繰り返して、繊維が一軸配向した平板(UD材)を得た。
また、回転刃をセットとしたテープカッターを使用して、枷に巻き取ったテープ状プリプレグを一定長さにカットして短冊を得た。得られた短冊を200mm×150mm×10mmのキャビティ中にランダムに散布し、その上に195mm×145mm×6mmのステンレス板2枚を載せ、上下版共280℃に温度調節したハンドプレスにセットした。3分後から上下版の間隔を狭めていき20秒後に3MPaの圧力を2分掛けた後、キャビティにステンレス板を載荷した状態で取り出した後、表面温度が80℃になるまで放冷し、繊維が擬似等方性に配向した平板(RS材)を取り出した。
得られたUD平板とRS平板それぞれの中央部から、繊維軸方向に10mm×100mmに5本切り出し0度方向曲げ試験用テストピースを得た。また別の平板から、繊維軸と直交する方向に10mm×100mmに5本切り出し、90度曲げ試験用テストピースを得た。
(1)ポリアミド樹脂の降伏強度
母相となるポリアミド樹脂ペレットを100℃にて17時間真空乾燥後、シリンダー温度を280℃に温度制御した射出成形機(東芝機械製IS80)と、これにセットされた50℃に温度調節したISO294−1に準拠したテストピース金型を使用して、ISO1874−2に規定されたPA6の成形条件にて多目的試験片を得た。これを、23℃に温度調節された試験室中のデシケータに48時間保管した。
23℃に温度調節された試験室中に設置された、万能引っ張り試験機(島津製作所製オートグラフAG1)を使用し、デシケータ中に保管しておいた絶乾状態のテストピースについて、ISO527−1,2に準拠して5mm/minにて引っ張り試験を行なった。荷重―変位曲線のピーク値から引っ張り降伏強度を測定した。
(2)降温結晶化温度
上述の曲げ試験片テストピースの表層から試料10mgをDSC用サンプル容器に採取し、SEIKO INSTRUMENTS製SSC5200型DSCを使用して、ISO11357−3に準拠し、窒素40ml/min流動下で300℃まで20℃/minで昇温し、300℃にて5分保持後、10℃/minで降温し、発熱がピークを示す温度を測定し、結晶化温度とした。
(3)炭素繊維の重量平均繊維長
複合材料または複合成形品の微小片を、2枚のスライドグラス板間で溶融し、厚さ0.05mm程度のフイルム状とする。マイクロスコープ(キーエンス社製)を使用して、透過光により倍率100倍にて限定視野内に各繊維の重心(長さの中心)が存在する繊維の長さを、100本〜200本を測定して、0.1mm間隔のヒストグラムを作成する。クラスの中央値(Xi)と頻度(fi)から次式により求めた。
X=ΣfiXi/ΣfiXi
(4)曲げ特性
スタンピング成形して得られた平板から、繊維軸方向と繊維軸に垂直方向にそれぞれ切削して得た曲げテストピースを、デシケータ中で23℃にて48時間保管後、ISO178に準拠した3点曲げ試験機(オリエンテック社製テンシロン4L型)を使用して、スパン長80mm、クロスヘッド速度1mm/minによる曲げ試験を行ない、次式により、〇度方向曲げ強度と90度方向曲げ強度を算出した。
σ=3PL/ 2bd2
ここで、σ:曲げ強度(MPa)、L:スパン長(m)、b:幅(m)、d:厚さ(m)、P:最大荷重(N)
比較例1〜10
ポリアミド樹脂の種類と配合比および繊維含有率を表2のように変更した以外は、表2に示した実施例と全く同様にプリプレグを作製した後、テストピースを成形した。得られた試験片について,実施例と全く同様に0度方向曲げ強度と90度方向曲げ強度を測定した。得られた試験データを表2に合わせて示した。
実験に使用した原料と記号
T802:PA6(東洋紡績製試作品、R/M=0、相対粘度2.5)
T842:PA6(東洋紡績製、R/M=0、相対粘度2.2)
T600:PAMXD6(東洋紡績製、 R/M=0.5、相対粘度2.2)
TYB:PA6T/XX (東洋紡績製試作品、R/M=0.3、相対粘度2.5)
TYG:PA6T/6I(東洋紡績製試作品、R/M=0.5、相対粘度2.8)
炭素繊維:帝人社製東邦テナックス IMS40(単繊維径6.4μm、6000フィラメント)
Figure 0005850298
Figure 0005850298
本発明により、曲げ強度や圧縮強度に優れたスタンピング成形品を得ることが可能となり、プリプレグ製造法や成形法も非常に容易であることからも、構造部材やハウジングの樹脂化が可能となり、軽量化や省エネルギーの面から産業界に大きく寄与することが期待される。

Claims (3)

  1. 重量平均20mm以上の炭素長繊維(A)100質量部に対して、ポリアミド6(B)30〜200質量部、アミド結合1個当りベンゼン環を0.2〜0.5個を含有する1種以上のポリアミド樹脂(C)80質量部を、(B)成分に対する(C)成分の比(B/C)が9/1〜7/3の配合比で含有し、(B)と(C)からなるポリアミド樹脂の引っ張り降伏強度が85〜120MPaである、炭素長繊維強化ポリアミド樹脂複合材料からなる、スタンピング成形用プリプレグ。
  2. アミド結合1個当りベンゼン環を0.2〜0.5個を含有するポリアミド樹脂(C)が、ポリメタキシリレンアジパミド及び/またはポリメタキシリレンアジパミド共重合体を含有することを特徴とする請求項1に記載のスタンピング成形用プリプレグ。
  3. アミド結合1個当りベンゼン環を0.2〜0.5個を含有するポリアミド樹脂(C)が、テレフタルアミド共重合体を含有することを特徴とする請求項1、または請求項2に記載のスタンピング成形用プリプレグ。
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