JP5470785B2 - ポリアミド樹脂 - Google Patents

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Description

本発明は、新規なポリアミドに関するものであり、特に優れた成形加工性を有し、高い耐熱性、低吸水性、耐薬品性、優れた機械的性能等を有するポリアミドに関するものである。詳しくは特定のポリアミド原料を用いて、特性の熱的性質を有するポリアミド樹脂であり、自動車部品、電気・電子機器部品、機械部品等の産業、工業および家庭用品に好適に使用できるポリアミド樹脂に関する。
ナイロン6やナイロン66に代表される結晶性のポリアミド樹脂は、靭性、耐化学薬品性、電気特性等の優れた特性や、溶融成形加工の容易性から、衣料等の繊維用途やエンジニアリングプラスチックとして自動車部品、機械部品、電機・電子機器部品等の用途に幅広く使用されている。しかし、耐熱性不足や、吸水の影響による寸法安定性不良、機械的強度不足により、当該用途での使用範囲が制限されるという課題がある。特に近年、金属部品代替が進む自動車部品用途や、急速な半導体技術の進展に伴う、表面実装技術(SMT)関連の電気・電子機器部品用途においては、その要求性能は高く、従来のポリアミド樹脂の使用が困難であることが多い。このように耐熱性、寸法安定性、機械的性能に優れたポリアミド樹脂が望まれている。
その中で、メタキシリレンジアミンとアジピン酸から得られる芳香族化合物を含む脂肪族ポリアミド(以下、ナイロンMXD6ということがある)は、従来のポリアミド樹脂に比べて高い強度、高い弾性率、低吸水性という特長を有しており、金属代替や、軽量・小型化を要求される自動車部品や電気・電子機器部品への利用が進められている。また高いガスバリア性能を有することから、食品包材等のガスの透過を嫌う内容物の包装への利用も進められている。
ナイロンMXD6の結晶化速度は、ナイロン6やナイロン66と比較し遅い。それゆえ、ナイロンMXD6単独では、射出成形の際に金型内で結晶化し難く、薄肉成形が困難であったり、得られる成形品の変形や機械強度の低下等の問題が発生し易い。そのためナイロンMXD6を成形材料として用いるためには、高結晶化速度であるナイロン66やタルク粉末を配合して結晶化速度を増大させたり、金型温度を高くしたりして成形性を改良する必要がある(特許文献1)。しかしながら、ナイロン66を配合した場合、ナイロンMXD6単独の場合に比べて吸水環境での物性変化が大きくなり、タルク粉末を配合した場合、機械強度が低下するため、配合量に制限があった。
これを改善するために、ポリアミド分子鎖中に剛直な分子構造を導入することで結晶性を高めるべく、ジアミン成分にパラキシリレンジアミンを15〜65モル%、ジカルボン酸成分にテレフタル酸等の芳香族カルボン酸を20〜55モル%共重合させる樹脂組成(特許文献2)が紹介されている。しかしパラキシリレン組成比を高めることで結晶性は高まるが、融点が過度に上昇するために溶融重合時や溶融加工時に熱劣化を引き起こすおそれがあるために変性量に制限があることや、芳香族ジカルボン酸の組成比を高めると過度に溶融粘度が上昇するため成形加工性が低下する課題がある。
一方、アジピン酸と1,4−ブタンジアミンから得られる全脂肪族ポリアミド(以下ナイロン46ということがある)は、高い融点と結晶化度、および比較的低い溶融粘度を有するため耐熱性、薄肉や小型部品用途に良好な成形性を示すものであるが、吸水率が高く、寸法安定性不良等の実使用条件下での諸物性の変動が課題となっている。また、テレフタル酸と1,6−ヘキサメチレンジアミンから得られる半芳香族ポリアミド(以下ナイロン6Tということがある)は、ポリマーの分解温度を超える370℃付近に融点があるために、溶融重合、溶融成形が困難であり、実用に耐えるものではない。そのために、アジピン酸やイソフタル酸、ε―カプロラクタム等を30〜40モル%程度共重合することにより、ポリアミドとして実使用可能な温度領域である320℃程度まで低融点化した組成(特許文献3、特許文献4)で実用化されている。しかしながら、共重合させることで結晶化速度、到達結晶化速度の低下を招き、その結果、高温下での剛性、耐薬品性、寸法安定性などの諸物性が低下するだけでなく、成形サイクルの延長に伴う生産性の低下も懸念される。また、溶融滞留時に粘度低下し易いので成形性にも難点がある。テレフタル酸と1,9−ノナメチレンジアミンおよび2−メチル−1,8オクタメチレンジアミンから得られる半芳香族ポリアミド(以下ナイロン9Tということがある)(特許文献5)は、上記半芳香族ポリアミドであるナイロン6Tに比べて高い結晶化速度と到達結晶化度および低吸水性を有して実用化されているが、上記問題と同様に共重合による諸物性への影響と、芳香族ジカルボン酸を主成分とする影響として溶融流動性が低下することや金型温度を非常に高くする必要があるため成形が容易でなく、生産性の低下が懸念される。
特許文献6には、ジアミン成分としてパラキシリレンジアミンとそれより少ないメタキシリレンジアミンを使用し、ジカルボン酸成分として炭素数が11以上の直鎖脂肪族ジカルボン酸を使用したポリアミドが開示されている。しかし当該文献では、パラキシリレンジアミンとセバシン酸以下の炭素鎖数の直鎖脂肪族ジカルボン酸からなるポリアミドでは融点と分解点が近接するため、加工性に乏しく、実用性はないものと考えられている。
特公昭54−32458号公報 特許第3456501号公報 特公昭64−11073号公報 特公平3−56576号公報 特許第3242781号公報 特公昭47−15106号公報
本発明は上記の課題を解消し、特に優れた成形加工性を有し、かつ高い耐熱性、低吸水性、耐薬品性、優れた機械的性能等を有するポリアミド樹脂を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、特定のポリアミド原料由来の構成単位からなり、特定の特性の熱的性質を有するポリアミド樹脂は、特に優れた成形加工性を有し、高い耐熱性、低吸水性、耐薬品性、優れた機械的性能を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、ジアミン成分に由来する構成単位の70モル%以上がパラキシリレンジアミンに由来し、かつジカルボン酸成分に由来する構成単位の70モル%以上が炭素数6〜18の脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂であって、示差走査熱量計(DSC)測定における融点(Tm)が270〜300℃(543〜573K)、融解熱量が60J/g以上かつ、降温結晶化温度(Tcc)と融点(Tm)の温度差が(式1)を満たすポリアミド樹脂に関するものであり、上記ポリアミドは特に優れた成形加工性を有し、高い耐熱性、低吸水性、優れた機械的性能を有する。
20≦(Tm−Tcc)≦40・・・(式1)
本発明のポリアミド樹脂は、特に優れた成形加工性を有し、高い耐熱性、低吸水性、耐薬品性、優れた機械的性能を有する。よって、耐熱性、高い結晶化速度、到達結晶化度や低吸水が要求される小型、薄肉の成形品や耐熱性能や剛性が要求される自動車の前照灯反射板やエンジン周辺部品等の自動車部品等に特に好適に用いることが出来る他に、フィルム、シート、チューブや繊維の形態に成形加工可能であり、産業、工業および家庭用品に好適に用いることが出来る。
本発明のポリアミド樹脂は、ジアミン成分に由来する構成単位の70モル%以上がパラキシリレンジアミンに由来するものであり、かつジカルボン酸成分に由来する構成単位の70モル%以上が炭素数6〜18の脂肪族ジカルボン酸に由来するものである。該ポリアミド樹脂は、パラキシリレンジアミンを70モル%以上含むジアミン成分と、炭素数6〜18の脂肪族ジカルボン酸を70モル%以上含むジカルボン酸成分を重縮合させることにより得られる。
本発明のポリアミド樹脂に用いる原料のジアミン成分としては、パラキシリレンジアミンを70モル%以上含むものであり、好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90%以上含むものである。ジアミン成分中のパラキシリレンジアミン濃度が高い程、得られるポリアミドは高融点で高い結晶性を示し、耐熱性、耐薬品性等に優れるポリアミド樹脂として、本発明の目的とする用途に好適に用いることが出来る。ジアミン成分中のパラキシリレンジアミン濃度が70モル%未満の場合、耐熱性、耐薬品性の性状が低下するため、好ましくない。
本発明のポリアミド樹脂に用いるジアミン成分のうち、パラキシリレンジアミン以外に使用できるジアミンとして、メタキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナンメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン等、あるいはこれらの混合物が例示できるが、これらに限定されるものではない。
本発明のポリアミド樹脂に用いる原料のジカルボン酸成分としては、炭素数6〜18の脂肪族ジカルボン酸を70モル%以上含むものであり、好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90%以上含むものである。炭素数6〜18の脂肪族ジカルボン酸を70モル%以上とすることで溶融加工時の流動性や高い結晶性、低吸水率を実現し、耐熱性、耐薬品性等に優れるポリアミド樹脂として、本発明の目的とする用途に好適に用いることが出来る。炭素数6〜18の脂肪族ジカルボン酸としては、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、2,4−ジメチルグルタル酸、3,3−ジメチルグルタル酸、3,3−ジエチルコハク酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸等を例示できる。この中でアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸が好ましく、この中でもアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸が更に好ましく使用できる。本発明のポリアミド樹脂に用いる炭素数6〜18の脂肪族ジカルボン酸に代えて炭素数が6より小さいものを用いた場合、カルボン酸の融点、沸点が低いために重縮合反応時に反応系外に留去されてモルバランスが崩れやすいだけでなく、得られたポリアミドの熱安定性も低くなるため好ましくない。炭素数が18を越えて大きいものを用いた場合は性状の安定したポリアミド樹脂が得られるが、融点が低くなるため目的とする耐熱性が得られなくなるため好ましくない。
ジカルボン酸のその他成分として30モル%未満で使用できるジカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸等が例示できるが、これらに限定されるものではない。
また、本ポリアミドの重縮合時に分子量調節剤として、ポリアミドの末端アミノ基またはカルボキシル基と反応性を有する単官能性の化合物を少量添加してもよい。例えばモノカルボン酸として、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、ナフタレンカルボン酸等を加えてもよい。またモノアミンや無水フタル酸等の酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化合物、モノエステル化合物、モノアルコール化合物を用いてもよい。
また、本ポリアミドの重縮合時に分子量調節剤を用いる場合、好適な使用量については、用いる分子量調節剤の反応性や沸点、反応条件等により異なるものとなるが、通常、原料ジアミン、ジカルボン酸に対して0.1〜10%程度である。
本発明のポリアミド樹脂は、示差走査熱量計(DSC)測定における融点(Tm)が270〜300℃(543〜573K)、融解熱量が60J/g以上かつ、降温結晶化温度(Tcc)と融点(Tm)の温度差が(式1)を満たすものである。
20≦(Tm−Tcc)≦40・・・(式1)
一般にDSC測定により得られるTmとTccの温度差が小さい程、結晶化速度は大きくなる傾向にある。また、一般に高分子材料のTm、Tccは、構成原料の構造に大きく影響されるものであるが、高分子材料の合成方法や熱履歴等の製造、加工条件によっても異なる性状を示す場合がある。Tmは270〜300℃、好ましくは275〜300℃、さらに好ましくは280〜300℃の範囲となる。上記範囲とすることで、良好な耐熱性を有するポリアミド樹脂を得ることができる。本発明のような耐熱性能の高いポリアミド樹脂は融点が高いため、溶融重合温度や溶融加工温度も必然的に高くなる。そのため溶融重合製造の方法や熱履歴によってTm、Tccや融解熱量、結晶化熱量の性状が異なるものとなる。本発明のポリアミド樹脂は、上記熱的性質を示すものであり、優れた成形加工性、高い耐熱性、低吸水性、耐薬品性、優れた機械的性能を有する。
融解熱量を60J/g以上とすることで、得られる成形品を高い結晶化度のものとすることが可能となる。成形品を高い結晶化度とするためには、溶融樹脂を降温する際の結晶化熱量も50J/g以上であることが好ましい。成形品の結晶化度を高めることで、ポリアミド樹脂の融点近傍までの耐熱性が得られることや機械的性能、耐薬品性、耐吸水性も向上するため好ましい。
本発明のポリアミド樹脂は、融点より10〜20℃高い温度にて30分間溶融滞留した時の溶融粘度保持率が(式2)を満たすものであることが好ましい。
0.7<(a)/(b)<1.3・・・(式2)
(a)溶融滞留30分後の溶融粘度(Pa・s)
(b)溶融開始から2.5分経過後の溶融粘度(Pa・s)
上記(式2)を満たすより好ましい温度範囲は融点より10〜30℃高い温度であり、さらに好ましくは融点より10〜40℃高い温度、さらに好ましくは融点より10〜50℃高い温度である。
溶融粘度の測定方法は特に制限されるものではないが、例えば、フローテスターやキャピログラフ(東洋精機製)を用いて測定する場合、装置シリンダーが所定温度に保たれた状態で、測定試料をシリンダー内に仕込み、溶融予熱2.5分直後に測定した結果(a)と、シリンダー内に仕込みピストンを載せて溶融相は空気に触れない状態で30分保持した後に測定した結果(b)を比較する方法が挙げられる。ここでの測定は同温度、同剪断速度での溶融粘度(Pa・s)にて行い、測定温度は当該ポリアミド樹脂の融点より10〜50℃高い温度、剪断速度は10〜3,000/sの範囲で比較することが好ましい。
上記(式2)で示す溶融滞留時の溶融粘度保持率が0.7以下や1.3以上となる場合、押出や射出成形等の溶融加工時の粘度が不安定となり、成形性の悪化や成形品の性能も不安定となるため好ましくない。(式2)を満たすポリアミド樹脂を製造する好適な方法は、原料ジカルボン酸成分、およびジアミン成分の仕込み比、重合触媒、分子量調節剤を適宜選択し、重合温度が低く、重合時間が短くなる条件を選択する。
本発明のポリアミド樹脂は、濃硫酸溶液(1g/100mL濃度)、25℃での相対粘度(以下単に相対粘度と称することがある)が好ましくは1.80〜4.20であり、より好ましくは1.90〜3.50、さらに好ましくは2.00〜3.00である。相対粘度が1.80以上であると本発明のポリアミド樹脂からなる成形品の機械的強度が充分なものとなり、耐吸水性、耐薬品性、耐熱労化性も改善される。また、相対粘度を1.80〜4.20とすることで、溶融粘度を良好な値とすることができ、成形性が良好となる。
上記特性を有する本発明のポリアミド樹脂は、溶融状態における重縮合、もしくは一旦溶融状態で重縮合して低粘度ポリアミドを得た後、固相状態で加熱処理するいわゆる固相重合により得ることができる。
特に本発明のポリアミド樹脂は、溶融重合や溶融成形加工時において高温条件となるため、ポリアミド分子が損傷を受けたり、非直鎖の分子成長等の異常反応(3次元ポリマー化)が起こり、着色劣化物やゲル等が生成しやすく、Tm、Tcc、融解熱量や結晶化熱量の性状も変化し易い。該現象を抑制するための製造条件等は特に限定されるものではないが、得られるポリアミド樹脂のモルバランスを若干カルボン酸過剰とするように仕込みのジアミン/ジカルボン酸比をずらすこと、分子量調節剤としてモノカルボン酸を添加することや、重合反応温度や溶融加工温度の低下、重合反応時間や溶融加工時の装置内滞留時間の短縮などが効果的である。
溶融状態における重縮合方法は特に限定されるものではないが、ジアミン成分とジカルボン酸成分とのナイロン塩の水溶液を加圧下で加熱し、水および縮合水を除きながら溶融状態で重縮合させる方法、ジアミン成分を溶融状態のジカルボン酸に直接加えて、常圧または水蒸気加圧雰囲気下で重縮合する方法を例示できる。この場合、反応系を均一な液状状態で保つために、ジアミン成分を溶融ジカルボン酸相に連続的に加え、その間、反応温度が生成するオリゴアミドおよびポリアミドの融点よりも下回らないように反応系を昇温しつつ、重縮合が進められる。その他重合条件は特に限定されないが、原料ジカルボン酸成分、およびジアミン成分の仕込み比、重合触媒、分子量調節剤を適宜選択し、重合温度を低く、重合時間を短くなるようにすることで、上記の特性、特に熱的性質を制御したポリアミド樹脂を製造することができる。
また、更にポリアミド樹脂の分子量を高める必要がある場合、固相重合を行うことが好ましい。固相重合方法は特に限定されず、回分式加熱装置等を用いて不活性ガス雰囲気下、あるいは減圧下にて実施できる。
濃硫酸溶液(1g/100mL濃度)、25℃での相対粘度が1.80〜4.20のポリアミド樹脂は、溶融重合時に所定の相対粘度に到達するまで反応を継続することで容易に得ることができる。しかしながら、本発明のポリアミドは反応温度が高温であるため、溶融重合時間(反応時間)が長くなると、ポリアミド分子が損傷を受けたり、非直鎖の分子成長等の異常反応(3次元ポリマー化)が起こり、着色劣化物やゲル等が生成しやすい。特に相対粘度4.20以上になると、上記異常反応を避けることは困難となる。この着色劣化物やゲル等の多いポリアミド樹脂からなる成形品は、異常な増粘や溶融滞留時の粘度安定性が低く、成形性が著しく悪化するだけでなく、靭性が著しく低下し、耐吸水性、耐薬品性、耐熱老化性といった諸物性も低下するため好ましくない。
相対粘度が1.80以上のポリアミド樹脂を製造する好適な方法は、原料ジカルボン酸成分、およびジアミン成分の仕込み比、重合触媒、分子量調節剤を適宜選択し、重合温度が低く、重合時間が短くなる条件を選択する。また相対粘度が2.50以上のポリアミド樹脂を製造するより好適な方法は、溶融重合ポリアミド樹脂の相対粘度を2.50未満とすることで、溶融重合時に溶融状態での熱履歴の増加等に伴う着色劣化物やゲル、フィッシュアイ等の発生を抑制し、次いで、溶融重合ポリアミド樹脂を固相重合することにより、相対粘度を2.50以上とするポリアミド樹脂の製造方法である。固相重合は、溶融重合により得られる相対粘度が下記(式3)を満足するポリアミド樹脂をペレットあるいは粉末状にし、これを減圧下あるいは不活性ガス雰囲気下に、120℃以上ポリアミド樹脂の融点未満の範囲の温度に加熱することにより実施される。固相重合されたポリアミド樹脂の相対粘度は下記(式4)を満足することが好ましい。
1.50≦相対粘度<2.50 (式3)
2.50≦相対粘度≦4.20 (式4)
本発明に用いるポリアミド樹脂の水分率は0.15%以下が好ましく、より好ましくは0.1%以下である。ポリアミド樹脂の乾燥は、従来公知の方法により行うことができる。例えば、ベント付きの押出機でポリアミド樹脂を溶融押出する際にベント孔を減圧にすることでポリマー中の水分を除去する方法、ポリアミド樹脂をタンブラー(回転式真空槽)中に仕込み、不活性ガス雰囲気下または減圧下でポリアミド樹脂の融点未満の温度で加熱して乾燥する方法などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
本発明のポリアミド樹脂の実施形態の一つとして、本発明のポリアミド樹脂100重量部に、結晶化核剤0〜30重量部および無機充填物10〜150重量部を配合してなるポリアミド樹脂組成物が挙げられる。
本発明のポリアミド樹脂組成物に配合する無機充填物は、この種の組成物一般に用いられるものであれば特に制限は無く、粉末状、繊維状、粒状およびフレーク状の無機充填物もしくはそれを併用したものが使用出来る。
粉末状充填物としては、好ましくは100μm以下、更に好ましくは80μm以下の粒径を有したものであり、カオリナイト、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム等の硫酸塩、硫化物及び金属酸化物等が使用出来る。繊維状充填物としては、ガラス繊維、チタン酸カリウムや硫酸カルシウムのウィスカー、カーボン繊維及びアルミナ繊維等が使用出来る。
本発明のポリアミド樹脂組成物では、求める成形加工性に応じて結晶化核剤を使用することが出来る。結晶化核剤には一般的用いられているタルクが挙げられる。本発明のポリアミド樹脂組成物に使用出来るタルクは、好ましくは100μm以下、更に好ましくは80μm以下の粒径を有したものであり、ポリアミド樹脂100重量部に対して30重量部以下となる。タルクの配合量が30重量部を超えると成形時の樹脂の流動性の低下や得られる成形品の機械的性能が低下する等の弊害を招くため好ましくない。
本発明のポリアミド樹脂組成物に使用する無機充填物は、ポリアミド樹脂100重量部に対し、無機充填物10〜150重量部を配合される。配合割合が上記10重量部未満では、得られるポリアミド樹脂組成物成形品の強度が不足する場合がある。一方、上記150重量部を超えるとポリアミド樹脂組成物の流動性が悪化し、溶融混練、成形等が困難となる。
本発明のポリアミド樹脂製造する際に用いる重合触媒としては、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸等のリン化合物、またはそれらの塩やエステル化合物が挙げられる。塩及びエステルを形成する具体例としては、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、コバルト、マンガン、錫、タングステン、バナジウム、ゲルマニウム、チタン、アンチモンなどの金属塩、アンモニウム塩、エチルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、ヘキシルエステル、オクタデシルエステル、ステアリルエステル、フェニルエステル等を挙げることが出来る。また更に上記重合触媒が熱時劣化等により、ポリアミド樹脂中に凝集したり、異常反応を引き起こすことを抑制するために、アルカリ金属、アルカリ土類金属化合物を併せて添加することも出来る。具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウムおよび炭酸、ホウ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、クロトン酸、吉草酸、カプロン酸、イソカプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、ステアリン酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、ヒドロケイ皮酸、γ‐フェニル酪酸、p‐フェノキシ安息香酸、o−オキシケイ皮酸、o‐β‐クロルフェニルプロピオン酸、m‐クロルフェニルプロピオン酸のアルカリ金属およびアルカリ土類金属化合物が例示されるが、これら化合物に限定されるものではない。
また、本発明のポリアミド樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、他の樹脂、及び、顔料、染料、滑剤、艶消剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、離型剤等の添加剤等が含まれていてもよい。他の樹脂が含まれている場合、その量は、通常、0〜20重量%である。また、添加剤等が含まれている場合の量は、通常、0〜5重量%である。
本発明のポリアミド樹脂には、射出成形、ブロー成形、押出成形、圧縮成形、延伸、真空成形などの成形法が適用できる。エンジニアリングプラスチックとして成形体のみならず、フィルム、シート、中空容器、繊維、チューブ等の形態にも成形可能であり、産業資材、工業材料、家庭用品などに好適に使用することが出来る。
以下、実施例、比較例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。尚、本実施例及び比較例で採用した評価法は以下の通りである。
(1)ポリアミドの末端アミノ基、末端カルボキシル基濃度
末端アミノ基濃度([NH2]μeq/g)
ポリアミド0.05〜0.5gを精秤し、フェノール/エタノール=4/1容量溶液30ccに20〜50℃で攪拌溶解した。完全に溶解した後、攪拌しつつN/100塩酸水溶液で中和滴定して求めた。
末端カルボキシル基濃度([COOH]μeq/g)
ポリアミド0.05〜0.5gを精秤し、ベンジルアルコール30ccに窒素気流下160〜180℃で攪拌溶解した。完全に溶解した後、窒素気流下80℃以下まで冷却し、攪拌しつつメタノールを10cc加え、N/100水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定して求めた。
(2)相対粘度
ポリアミド1gを精秤し、96%硫酸100mlに20〜30℃で攪拌溶解した。完全に溶解した後、速やかにキャノンフェンスケ型粘度計に溶液5ccを取り、25℃の恒温漕中で10分間放置後、落下速度(t)を測定した。また、96%硫酸そのものの落下速度(t0 )も同様に測定した。tおよびt0 から次式(イ)により相対粘度を算出した。
相対粘度=t/t0 (イ)
(3)DSC(示差熱走査熱量計)
試料の融点、結晶化温度及び融解、結晶化熱量については、JIS K−7121、K−7122に準じて行った。装置は島津製作所製DSC−60を使用した。
各試料をDSC測定パンに仕込み、窒素雰囲気下にて昇温速度10℃/分で、融点より30℃高い温度まで昇温し、急冷する前処理を行った後に測定を行った。
測定条件は、昇温速度10℃/分で、融点より20℃高い温度にて3分保持した後、降温速度−5℃/分で100℃まで測定を行った。
実施例表中では、吸熱の相転移である融解熱量を負の値として表記した。またガラス転移点については、相転移中間点の温度を示した。
(4)溶融粘度、溶融粘度保持率
測定装置は、(株)東洋精機製のキャピログラフD−1を使用し、ダイ:1mmφ×10mm長さ、見かけのせん断速度100/sec、測定温度300℃、サンプル水分1000ppm以下の条件で測定した。
(5)水分率(重量%)
水分率の測定は、三菱化学社製カールフィッシャー微量水分測定装置(CA−05型)および気化装置(VA−05型)を用い、融点直下温度で30分の気化条件で水分量を定量し、水分率を求めた。
(6)黄色度:YI
JIS K−7105に準じた。測定装置は、日本電色工業社製の曇価測定装置(型式:COH−300A)を使用した。
(7)成形品の機械的性能
射出成形機(ファナック100α)にて融点より20℃高い温度にて溶融し、射出圧力600kgf/cm2、射出時間1.0sec、金型温度80℃の条件で射出成形片を得た。得られた射出成形片は160℃、1時間熱風乾燥機中にてアニール処理を施した後、絶乾状態で以下の試験を行った。
Figure 0005470785
(8)吸水物性
(7)と同様の条件で射出成形機にて作製した2インチ×3mm厚円盤型の試験片を絶乾状態の重量を秤量した後、常圧沸騰水に浸漬し、経時的な重量変化を測定する。重量変化がなくなった時点での吸水率を平衡吸水率とした。また、(7)で作製した引張試験片を同様の条件で沸騰水に浸漬した後に引張試験を実施し、絶乾状態からの強度、弾性率の保持率を求めた。
〔実施例1〕
撹拌機、分縮器、冷却器、温度計、滴下槽および窒素ガス導入管を備えたジャケット付反応缶に、精秤したアゼライン酸11.294kg(60.00mol)を入れ、十分窒素置換し、さらに少量の窒素気流下で170℃まで昇温し、アゼライン酸を溶解させ均一な流動状態とした。これに、パラキシリレンジアミン8.172kg(60.00mol)を撹拌下に160分を要して滴下した。この間、反応系内圧は常圧とし、内温を連続的に290℃まで昇温させ、またパラキシリレンジアミンの滴下とともに留出する水は分縮器および冷却器を通して系外に除いた。パラキシリレンジアミン滴下終了後、290℃の液温を保持して10分間反応を継続した。その後、反応系内圧を600mmHgまで10分間で連続的に減圧し、その後、20分間反応を継続した。この間、反応温度を300℃まで連続的に昇温させた。反応終了後、反応缶内を窒素ガスにて0.2MPaの圧力を掛けポリマーを重合槽下部のノズルよりストランドとして取出し、水冷後ペレット形状に切断し、16kgの溶融重合品のペレットを得た。得られたペレットを熱媒加熱の外套を有するタンブラー(回転式の真空槽)に、室温で仕込んだ。タンブラーを回転しながら槽内を減圧状態(0.5〜10Torr)とし、流通熱媒を160℃まで加温し、ペレット温度140℃まで昇温してその温度で5時間保持した。その後、再び窒素を導入して常圧にし、冷却を開始した。ペレットの温度が70℃以下になったところで、槽からペレットを取り出しポリアミド1(以後PA1と略す)を得た。PA1の性状を分析した結果、融点270℃、融解熱量83J/g、(Tm−Tcc)=27℃であり、本発明の要件を満たす性状のポリマーが得られた。その性状および成形品の評価結果を表2に示す。PA1は高い結晶性を示し、かつ良好な色調、溶融滞留時の溶融粘度保持率が高く、またその成形品は、良好な機械強度を有し、耐熱性、耐吸水物性も良好であった。
〔実施例2〕
ジカルボン酸成分にセバシン酸12.135kg(60.00mol)を用いた以外は、実施例1と同様の条件でポリアミドを合成し、ポリアミド2(以後PA2と略す)を得た。PA2の性状を分析した結果、融点281℃、融解熱量74J/g、(Tm−Tcc)=30℃であり、本発明の要件を満たす性状のポリマーが得られた。その性状および成形品の評価結果を表2に示す。PA2は高い結晶性を示し、かつ良好な色調、溶融滞留時の溶融粘度保持率が高く、またその成形品は、良好な外観、機械強度を有し、耐熱性、耐吸水物性も良好であった。
〔実施例3〕
ジカルボン酸成分にセバシン酸12.099kg(59.82mol)を用い、タンブラーの熱媒流通温度を220℃まで高めて、減圧条件下でペレット温度を150℃を超えて200℃まで4時間程度かけて昇温した以外は、実施例1と同様の条件でポリアミドを合成し、ポリアミド3(以後PA3と略す)を得た。PA3の性状を分析した結果、融点280℃、融解熱量76J/g、(Tm−Tcc)=30℃であり、本発明の要件を満たす性状のポリマーが得られた。その性状および成形品の評価結果を表2に示す。PA3は高い結晶性を示し、かつ良好な色調、溶融滞留時の溶融粘度保持率が高く、またその成形品は、良好な外観、機械強度を有し、耐熱性、耐吸水物性も良好であった。
〔実施例4〕
ジアミン成分の90mol%をパラキシリレンジアミンとし、10mol%をメタキシリレンジアミンとした以外は、実施例2と同様の条件でポリアミドを合成し、ポリアミド4(以後PA4と略す)を得た。PA4の性状を分析した結果、融点271℃、融解熱量69J/g、(Tm−Tcc)=39℃であり、本発明の要件を満たす性状のポリマーが得られた。その性状および成形品の評価結果を表2に示す。PA4は高い結晶性を示し、かつ良好な色調、溶融滞留時の溶融粘度保持率が高く、またその成形品は、良好な外観、機械強度を有し、耐熱性、耐吸水物性も良好であった。
〔比較例1〕
ジカルボン酸成分の60mol%をセバシン酸とし、40mol%をアジピン酸とした以外は、実施例2と同様の条件でポリアミドを合成し、ポリアミド5(以後PA5と略す)を得た。PA5の性状を分析した結果、融点259℃、融解熱量51J/g、(Tm−Tcc)=41℃であり、融点、融解熱量およびTm−Tccが本発明の要件を満たさないポリマー性状であった。その性状および成形品の評価結果を表2に示す。PA5は良好な色調、溶融滞留時の溶融粘度保持率は高いが、結晶性が低く、金型から排出された成形片は、表層が透明な外観であり結晶化が充分に進行していないことが確認された。成形品の機械強度、耐熱性、耐吸水物性が不十分であった。
〔比較例2〕
撹拌機、分縮器、冷却器、温度計、滴下槽および窒素ガス導入管を備えたジャケット付反応缶に、セバシン酸4.045kg(20.00mol)、パラキシリレンジアミン2.724kg(20.00mol)、蒸留水10kgを入れ、十分窒素置換した。装置を密閉した状態で内容物を攪拌しながら230℃まで2時間かけて昇温し、反応圧力が2.5MPaに到達したら圧力を保持しつつ、3時間かけて仕込水および反応生成水を装置外に留去し、その間に反応温度を250℃まで昇温した。引き続き水を留去しつつ、反応圧力を常圧まで3時間で降下させて、その間に反応温度を290℃まで昇温した。その後、反応系内圧を600mmHgまで10分間で連続的に減圧し、その後、20分間反応を継続した。この間、反応温度を300℃まで連続的に昇温させて、実施例1と同様にペレット化して溶融重合品を得た。得られたペレットを実施例1と同様の条件で乾燥し、ポリアミド6(以後PA6と略す)を得た。PA6の性状を分析した結果、融点279℃、融解熱量57J/g、(Tm−Tcc)=32℃であり、融解熱量が本発明の要件を満たさないポリマー性状であった。その性状および成形品の評価結果を表2に示す。PA6は結晶性が低下しており、黄色度が高く、溶融滞留時の溶融粘度保持率も低いものであった。またその成形品は、機械強度が不充分であった。
〔比較例3〕
ジアミン成分の30mol%をパラキシリレンジアミンとし、70mol%をメタキシリレンジアミンとし、直鎖脂肪族ジカルボン酸成分をアジピン酸とした以外は、実施例1と同様の条件でポリアミドを合成し、ポリアミド7(以後PA7と略す)を得た。PA7の性状を分析した結果、融点259℃、融解熱量45J/g、(Tm−Tcc)=52℃であり、融点、融解熱量およびTm−Tccが本発明の要件を満たさないポリマー性状であった。その性状および成形品の評価結果を表2に示す。PA7の色調は良好であるが、結晶性が不十分であり、金型から排出された成形片は、表層が透明な外観であり結晶化が充分に進行していなかった。成形品は、耐熱性、耐吸水物性に劣るものであった。
〔比較例4〕
ジアミン成分の30mol%をパラキシリレンジアミンとし、70mol%をメタキシリレンジアミンとし、直鎖脂肪族ジカルボン酸成分の70mol%をアジピン酸とし、30mol%をテレフタル酸とした以外は、実施例1と同様の条件でポリアミドを合成し、ポリアミド8(以後PA8と略す)を得た。PA8の性状を分析した結果、融点246℃、融解熱量30J/g、(Tm−Tcc)=96℃であり、融点、融解熱量およびTm−Tccが本発明の要件を満たさないポリマー性状であった。その性状および成形品の評価結果を表2に示す。PA8は黄色度が高く、結晶性が不十分であり、金型から排出された成形片は、透明な外観であり結晶化が進行していなかった。成形品は、耐熱性、耐吸水物性に劣るものであった。
Figure 0005470785
本発明のポリアミド樹脂は、特に優れた成形加工性を有し、高い耐熱性、耐吸水性、耐薬品性、優れた機械的性能等を有するものであり、自動車部品、電気・電子機器部品、機械部品等の産業、工業および家庭用品に用いることのできるポリマー材料として非常に有用なものであり、その工業的価値は高い。

Claims (5)

  1. ジアミン成分に由来する構成単位の70モル%以上がパラキシリレンジアミンに由来し、かつジカルボン酸成分に由来する構成単位がアゼライン酸またはセバシン酸から選択される一種類に由来するポリアミド樹脂であって、示差走査熱量計(DSC)測定における融解熱量が60J/g以上かつ、降温結晶化温度(Tcc)と融点(Tm)の温度差が(式1)の範囲にあるポリアミド樹脂。
    20≦(Tm−Tcc)≦40・・・(式1)
  2. 濃硫酸溶液(1g/100mL濃度)、25℃での相対粘度が1.80〜4.20の範囲である請求項1記載のポリアミド樹脂。
  3. ジカルボン酸成分に由来する構成単位がセバシン酸である、請求項1または2に記載のポリアミド樹脂。
  4. ポリアミド樹脂の融点より10〜50℃高い温度にて30分間溶融滞留した時の溶融粘度保持率が(式2)を満たす請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド樹脂。
    0.7<(a)/(b)<1.3・・・(式2)
    (a)溶融滞留30分後の溶融粘度(Pa・s)
    (b)溶融開始から2.5分経過後の溶融粘度(Pa・s)
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のポリアミド樹脂100重量部に、結晶化核剤0〜30重量部および無機充填物10〜150重量部を配合してなるポリアミド樹脂組成物。
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