JP5984970B2 - シート処理装置及び画像形成装置 - Google Patents

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Description

本発明は、綴じ処理機能を有するシート処理装置及び画像形成装置に関する。
従来、複写機やプリンタ等の画像形成装置により画像が形成されたシートを綴じ合わせる装置として、複数枚のシートからなるシート束を金属針等の綴じ部材を用いて綴じる綴じ処理を行うステイプル装置が広く用いられている。ステイプル装置によって針で綴じ処理されたシート束の各シートを読み取り原稿として使用する場合、シート束を綴じている針を取り除く必要がある。また、針で綴じ処理されたシート束をリサイクルする場合にも、環境保護の観点から、シート束を綴じている針を取り除き、シートと針を分別して回収しなければならない。綴じ処理に用いられた針は使用後に廃棄されるため、資源の再利用という観点からは課題があった。
そこで、針等の綴じ部材を使用せず、原稿としての再利用時やリサイクル時の手間を軽減するシート綴じ装置が提供されている(例えば、特許文献1参照)。このようなシート綴じ装置では、針が用いられないため、針を廃棄することもない。このシート綴じ装置では、画像形成装置から搬送されてきたシートを複数枚束ねて整合しシート束とした後に、シート束の一部に凹凸を形成する凸部と凹部を有する歯型を、シートに対して押圧する構成である。このシート綴じ装置は、このようにシート束を押圧することで、シート束の互いの繊維を絡み合わせて綴じ処理を行う。
特開2004−155537号公報
上述した従来の針無し綴じ方式を画像形成装置に適用した場合、凸部及び凹部を有する歯型をシート束に対して押圧する駆動源にアクチュエータを用いて押圧動作を自動化する構成が想定される。針無し綴じ処理では、綴じ処理後のシート束の品質を維持する上で、綴じ部の保持力が維持され、綴じ部の破れ等が発生しないようにするために、シート束に一定の押圧力を安定して与えることが重要となる。一定の押圧力をアクチュエータで実現する場合、アクチュエータの駆動電流値を所定値に制御することでアクチュエータの出力トルクを制御することが可能となる。上記の所定値は、アクチュエータが出力可能な最大出力トルクに応じた駆動電流の値より小さい値が選択される。これは、綴じ処理に必要な押圧力は、シート束の枚数や種類によってそれぞれ所定の範囲を持っているためである。
しかし、シート束に加えられる必要な押圧力が低い条件の場合には、アクチュエータは、綴じ処理動作中にわたって通常よりも低い駆動電流値で制御される。この場合、アクチュエータの起動時に発揮できる出力トルクも綴じ処理動作中と同様に低い値に制限されるため、アクチュエータの起動に要する時間が長くなり、綴じ処理動作全体の時間が長くなってしまう。これにより、針無し綴じ処理に要する時間が長くなるため、搭載されるシート処理装置や画像形成装置の全体の生産性を低下させてしまうという課題がある。
本発明は、このような状況のもとでなされたものであり、綴じ処理を行う際の品質を向上させ、綴じ処理の生産性を向上することを目的とする。
上述した課題を解決するために、本発明は以下の構成を備える。
(1)シート束を押圧することにより綴じ処理を行う綴じ手段と、シート束を押圧するために前記綴じ手段を駆動するモータと、前記モータの速度を検出する速度検出手段と、前記モータの駆動電圧を検出する電圧検出手段と、前記綴じ手段が前記シート束を押圧していない状態で前記モータの駆動を開始する時の駆動電流を第1の値に設定し、前記綴じ手段が前記シート束を押圧している期間における前記駆動電流の上限値を前記第1の値以下の第2の値に設定する制御手段と、を有し、前記制御手段は、前記モータの駆動中で且つ前記綴じ手段がシート束を押圧していない期間で前記速度検出手段により検出される速度と前記電圧検出手段により検出される電圧とに基づいて前記モータの駆動電流の上限値を決定し、決定した上限値が前記第1の値以下の場合に、該決定した上限値を前記第2の値として設定することを特徴とするシート処理装置。
(2)シートに像形成する像形成手段と、前記像形成手段により像形成されたシートが積載される積載手段と、前記(1)に記載のシート処理装置と、を有し、前記シート処理装置が前記積載手段に積載された複数のシートからなるシート束を押圧することにより綴じ処理を行うことを特徴とする画像形成装置。
本発明によれば、綴じ処理を行う際の品質を向上させ、綴じ処理の生産性を向上することができる。
実施の形態の画像形成装置及びシート処理装置の構成を示す図 実施の形態の針無し綴じ装置の構成を示す図 実施の形態の画像形成装置及びシート処理装置のブロック図 実施の形態の画像形成装置側及びシート処理装置側の処理を示すフローチャート 実施の形態のシート処理装置の針無し綴じ処理を示すフローチャート 実施の形態の針無し綴じ処理時の動作シーケンスを示すタイムチャート 実施の形態の出力トルク特性とモータ異常判定域を示す図 実施の形態のリミット電流信号と駆動電流の関係を示す図及び起動時間と駆動電流の関係を示す図
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳しく説明する。
(画像形成装置)
図1(a)は実施の形態の画像形成システムとしての画像形成装置及びシート処理装置の概略断面図である。なお、図1(a)は、画像形成装置1の正面(前面)が手前になる場合の図である。画像形成装置1は、画像読取部2と画像形成部3、シート処理装置50から構成されている。操作部40から、又はパーソナルコンピュータ(以下、PCとする)等の外部機器からネットワークを介して、ユーザによる画像形成装置1へのジョブの設定が行われる。設定されたジョブがコピー動作であれば画像読取部2からの画像データ、プリント動作であればPCからネットワーク経由で送信された画像データに基づき、画像形成処理及びシート後処理を行う。
画像読取部2について説明する。画像読取部2の上部には固定して設けられた透明ガラス板からなる原稿台4が設けられている。原稿Dは、原稿台4の所定の位置に画像面を下向きにして載置され、原稿台カバー5により押圧固定される。原稿台4の下側には原稿Dを照明するランプ6と、照明した原稿Dの光像を、撮像素子を有する画像処理ユニット7に導くための反射ミラー8、9、10とからなる光学系が設けられている。なお、ランプ6及び反射ミラー8、9、10は所定の速度で移動して原稿Dを走査し画像データを画像形成部3へ送信する。
画像形成部3は、感光ドラム11と、一次帯電ローラ12と、ロータリ現像ユニット13と、中間転写ベルト14と、転写ローラ15と、クリーナ16等を備えている。感光ドラム11は、画像データに基づいてレーザユニット17からレーザ光が照射され、感光ドラム11の表面に静電潜像が形成される。一次帯電ローラ12は、レーザ光照射前に感光ドラム11の表面を均一に帯電する。ロータリ現像ユニット13は、感光ドラム11の表面に形成された静電潜像にマゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各色トナーを付着させ、トナー像を形成する。以下、色を特定する場合には、符号にM、C、Y、Kの記号を添えて表記する。感光ドラム11の表面に現像されたトナー像が中間転写ベルト14に転写され、転写位置において中間転写ベルト14のトナー像を転写ローラ15によってシートPに転写する。クリーナ16は、トナー像を転写した後、感光ドラム11に残留したトナーを除去する。
ロータリ現像ユニット13によって感光ドラム11に現像されたトナー像は、中間転写ベルト14に転写される。中間転写ベルト14上のトナー像は、転写ローラ15によってシートPに転写される。シートPは、用紙カセット18aから供給されるようになっている。また、シートPは手差しトレイ18bから供給されることもある。シートPの搬送方向における画像形成部3の下流側(以下、単に下流側という)には定着器19が設けられており、定着器19は、搬送されてきたシートP上のトナー像に定着処理を行う。定着器19においてトナー像が定着されたシートPは、排出ローラ対21によって、画像形成装置1から下流側のシート処理装置50に排出される。なお、シートPが排出ローラ対21によって排出される部分を排紙部という。
(シート処理装置)
次にシート処理装置50について説明する。図1(a)に示すように、シート処理装置50は、画像形成装置1の排紙部に設けられ、図示しない信号線を介して画像形成装置1と通信を行うことにより、画像形成装置1と協働して動作する。ここで、図1(b)は画像読取部2を外してシート処理装置50を上から見た図であり、図1(a)に記載されている部材の一部を省略して描画している。また、図1(b)における下側が図1(a)で示した画像形成装置1の前面側(手前側)となる。また、図1(b)の黒太矢印は、破線で示すシート束Sの綴じ処理後の搬送方向を示している。
シート処理装置50は、画像形成装置1から排出された複数枚のシートPを束ねてシート束Sとし、針等の綴じ部材を使用せずにシート束Sの互いの繊維を絡み合わせることで綴じ処理を行う、針無し綴じ装置52を有している。針無し綴じ装置52は、シート束Sの一部にエンボス状の凹凸を形成する、対向して設けられた凸部と凹部を有する歯型(上歯97及び下歯98、図2参照)を備えている。針無し綴じ装置52は、画像形成装置1から搬送されてきたシートPを複数枚束ねて整合してシート束Sとした後に、凸部と凹部の歯型の間に挿入されたシート束Sを挟む。そして、針無し綴じ装置52は、凸部と凹部の歯型の間に挟まれたシート束Sに対して歯型を押圧し、シート束Sの互いの繊維を絡み合わせることで、綴じ処理を行う。以降、針等の綴じ部材を使用せずシート束Sの互いの繊維を絡み合わせることで綴じを行う綴じ処理を、「針無し綴じ」処理と記載する。
シート処理装置50は、搬送部58にて画像形成装置1から排出されたシートPを受け取った後に、シートPの搬送速度を画像形成装置1内における搬送速度よりも加速させる加速搬送を行う。そして、シート処理装置50は、シートPが搬送部58から搬送されてきた後に、パドルローラ59を回転駆動し処理トレイ57へシートPを積載させる。シート処理装置50は、更に戻しローラ60によってシートPの後端を後端整合板62へ突き当てることにより積載される複数のシートPの後端を揃える後端整合処理を行う。
用紙センサ56は、処理トレイ57上のシートPの有無を検出するセンサである。処理トレイ57内で後端整合処理された複数のシートPからなるシート束Sは、整合板64、65により用紙幅方向の位置整合が行われ、処理トレイ57上にスタックされる。なお、用紙幅方向とは、シートPの搬送方向に直交する方向である。シート処理装置50はこれら一連の動作を繰り返す。針無し綴じ処理が指定されたジョブでは、指定された枚数分のシートPが処理トレイ57上にスタックされた後、針無し綴じ装置52が図1(b)に示す位置に綴じ処理を行う。即ち、針無し綴じ装置52は、シート束Sの後端の角部の一方側に綴じ処理を行う。なお、針無し綴じ処理を行う位置は、図1(b)に示す位置に限定されない。針無し綴じ装置52による綴じ処理が完了した後、束押し出し部材61によってシート束Sの後端側が押し出されるように、処理トレイ57の底面に沿ってシート束Sが排紙トレイ63へ排出される。
(針無し綴じ装置)
図2を用いて、針無し綴じ装置52の詳細な構成について説明する。図2(a)は針無し綴じ装置52が綴じ動作を行っていない待機状態を示しており、図2(b)は綴じ動作状態を示している。針無し綴じ装置52において、針無し綴じモータ75(以下、単にモータという)(図中、Mと記す)の出力軸は、ギアからなる減速機構91を介してカム回転軸94へ接続されている。本実施の形態では、モータ75はDCブラシ付きモータを使用している。モータ75の出力軸には、単位時間当たりの回転数である回転速度を計測するための速度検出手段であるエンコーダセンサ90が設けられている。エンコーダセンサ90は光学式センサであり、モータ75の出力軸上の円盤に設けられたスリットを検出して、モータ75の回転速度に応じて周期が変動するパルス信号を出力する。即ち、後述するCPU162(図3参照)は、エンコーダセンサ90から入力されたパルス信号に基づいて、モータ75の回転速度を検出することができる。なお、本実施の形態では、モータ75の出力軸上に設けられた円盤は、スリット数が18スリット/周で構成される。
カム92は、カム回転軸94の回転によってコロ93を介して上アーム95を動作させる。上アーム95には、シート束Sの一方の面を押圧する第一の押圧部である上歯97が取り付けられており、上アーム95はアーム軸96を中心に揺動を行う。また、下アーム99はシート処理装置50の筐体フレームに固定されており、下アーム99には、上歯97に対向して設けられ、シート束Sの他方の面を押圧する第二の押圧部である下歯98が取り付けられている。なお、上述した歯型の凸部、凹部は、上歯97、下歯98に対応するが、どちらが凸部であっても凹部であってもよい。また、本実施の形態では、下アーム99がシート処理装置50の筐体フレームに固定されている構成であるが、上アーム95が筐体フレームに固定されている構成としてもよい。また、上アーム95及び下アーム99ともに、筐体フレームに固定されない構成としてもよい。
下アーム99に取り付けられた下歯98と上アーム95に取り付けられた上歯97とが、シート束Sを挟んで噛み合い、シート束Sを加圧する。加圧されたシート束Sの各シートPの表面は、噛み合った上歯97及び下歯98により引き延ばされることによって繊維が露出する。そして、上歯97及び下歯98により更に加圧されることによって、シートP同士の繊維が互いに絡み合い、シート束Sの締結が行われる。このため、ステイプル針等の綴じ部材を使用しないでシート束Sを締結することができる。
処理トレイ57へシート束Sをスタックしているときは、カム92は図2(a)に示す位置にあり、この位置をカム92の下死点とする。カム92が下死点に位置するとき、基準センサ76は、上アーム95を検出している。なお、基準センサ76は、上アーム95を検出しているときに、CPU162へオン信号を出力する。即ち、図2(a)に示すカム92が下死点にある状態が、モータ75による駆動開始前の状態(初期状態)である。図2(a)に示すように、カム92が下死点に位置するときは上歯97と下歯98の間に空間が生じ、この空間へのシート束Sの進入が可能となる。カム92は、例えば液滴形状であり、コロ93が図2(a)に示すZ部(太線部)と接している間は、モータ75がカム92を駆動させていても、モータ75にかかる負荷は無視できる程度に小さい状態となっている。なお、コロ93がZ部と接している間、モータ75に負荷がかからない状態となるように、カム92の形状を構成してもよい。Z部は、カム92の下死点からカム92の外周において所定稜線距離(図2(a)太線部)に沿った領域となっている。モータ75がカム92の駆動を開始すると、カム回転軸94はX方向(反時計回り方向)に回転する。カム92の回転に伴い上アーム95が動き始め、基準センサ76は上アーム95を検出しなくなる。しかし、コロ93がZ部と接している間は、モータ75にかかる負荷は無視できる程度の負荷となっている。コロ93がZ部と接している期間では、上歯97がシート束Sを押圧していない。このように、カム92のZ部は、モータ75への負荷が非常に小さくなる形状となっており、モータ75のトルクは、減速機構91を介して略無負荷に構成される。
針無し綴じ装置52の綴じ動作が開始され、カム92がモータ75の駆動によりカム回転軸94を中心にX方向へ更に回転する。このように、カム92のカム回転軸94がX方向に回転を継続すると、コロ93とカム92との接触部分がZ部の領域から外れ、モータ75にかかる負荷が増加する。そして、図2(b)に示すような位置関係となったとき、上歯97と下歯98が噛み合う。なお、カム92が図2(b)の位置にあるとき、この位置を上死点とする。このとき、上歯97と下歯98との間に生じる圧力は、モータ75の駆動電流を調整することによって所定の圧力で噛み合いを行うように制御される。その後、モータ75がカム回転軸94を中心にY方向(時計回り方向)へ逆回転して、カム92が再び図2(a)に示す下死点に到達すると、基準センサ76が上アーム95を検出する。後述するCPU162は、基準センサ76により上アーム95を検出すると、モータ75の駆動を停止し、カム92は回転を停止する。
(画像形成装置及びシート処理装置の制御ブロック)
次に図1(a)で示したシート処理装置50を有する画像形成装置1の制御ブロックを、図3を用いて説明する。画像形成装置1は、画像形成装置1を制御するCPU161、ROM165、RAM166及び操作部40を有する。ROM165は、画像形成装置1を制御するためのプログラムやデータ等が格納されている。RAM166は、CPU161が画像形成装置1を制御する際に、処理データの読み書きを行うために使用される。操作部40はユーザからの画像形成装置1及びシート処理装置50による後処理方法の設定を受け付ける。本実施の形態では、後処理方法として、針無し綴じ処理の実施を選択することが可能となっている。CPU161は、操作部40と通信を行うことによって、ユーザが操作部40を操作することにより設定した情報(設定情報ともいう)を認識することが可能である。一方、シート処理装置50は、シート処理装置50を制御する制御手段であるCPU162、ROM167、RAM168を有している。CPU162は、画像形成装置1のCPU161と通信を行うことにより、互いの状態を検知することができる。ROM167は、シート処理装置50を制御するためのプログラムやデータ等が格納されている。RAM168は、CPU162がシート処理装置50を制御する際に、処理データの読み書きを行うために使用される。
モータ75、エンコーダセンサ90、基準センサ76は、針無し綴じ装置52に設けられている(図2参照)。基準センサ76は、上アーム95がシート束Sの受け入れ位置にいるとき(図2(a)の状態)を基準位置として検出し、上アーム95を検出したことをCPU162へ通知する。CPU162は、基準センサ76によって上アーム95が基準位置にあるか否かを検出する。CPU162は、駆動回路82にモータ駆動信号を出力することにより、駆動回路82を介してモータ75の駆動/停止を制御し、針無し綴じ装置52による綴じ処理を実施する。また、CPU162は、モータ75の駆動を制御する際に、モータ75の回転方向を指示することができる。駆動電圧Vは、駆動回路82に入力され、モータ75を駆動するための電源として使用される。駆動電圧Vは、変換回路102により電圧レベルを変換された後、CPU162に電圧Vmとして入力され、CPU162は、入力された電圧Vmによって駆動電圧Vの電圧レベルを検出している。即ち、CPU162は、電圧検出手段としても機能する。シャント抵抗器R1は、駆動回路82とグランド間に挿入され、モータ75の駆動電流Iの検出に使用される。
電流制限回路100は比較器を有しており、CPU162から入力されたリミット電流信号と、シャント抵抗器R1に流れる電流に応じた電圧とを比較している。尚、シャント抵抗R1に流れる電流はモータ75の駆動電流Iである。CPU162から入力されるリミット電流信号は、アナログの可変電圧信号であり、モータ75の駆動電流Iを、所定時間、所定値に維持するための信号である。ここで、所定時間とは、上歯97及び下歯98によって押圧されたシート束Sにおいて、シート同士の締結に要する時間に応じた時間である。電流制限回路100は、シャント抵抗器R1からの電圧信号とリミット電流信号とを比較し、モータ75の駆動電流Iがリミット電流信号に応じた所定値となるよう駆動回路82を制御する。このため、電流制限回路100は電流制御手段として機能しているともいえる。また、電流制限回路100は、モータ75の駆動電流Iがリミット電流信号(電圧信号)に応じた所定値(電流値)に達した時点で、CPU162へリミット検知信号を出力する。即ち、電流制限回路100は電流検出手段として機能する。
モータ75が駆動されると、エンコーダセンサ90によりモータ75の回転速度に比例した周波数のパルス信号がCPU162へ入力される。CPU162は、エンコーダセンサ90から入力されたパルス信号のエッジ間隔を不図示のタイマにより計測することで、モータ75の回転速度を算出する。
(画像形成装置側の処理)
画像形成装置1からのジョブの情報(以下、ジョブ情報とする)に応じたシート処理装置50の針無し綴じ装置52を使用した針無し綴じ制御シーケンスについて説明する。図4(a)は画像形成装置1のCPU161が実行する制御のフローチャート、図4(b)はシート処理装置50のCPU162が実行する制御のフローチャートである。
画像形成装置1に電力が投入される(電源オン)と、画像形成装置1のCPU161は、以下の制御を開始する。ステップ(以下、Sとする)501でCPU161は、初期化動作を実施した後に、画像形成装置1をスタンバイ状態として待機させる。ここで、スタンバイ状態とは、操作部40や外部機器からジョブを受け付けるために待機している状態で、ジョブを受け付けたら画像形成動作をすぐに実行できる状態である。S502でCPU161は、操作部40又はネットワークを介してジョブを受け付けたか否かを判断する。S502でCPU161は、ジョブを受け付けていないと判断した場合はS501の処理に戻る。即ち、CPU161は、ジョブを受け付けるまではスタンバイ状態を継続する。なお、ジョブを受け付けない状態が一定時間継続した場合は、画像形成装置1及びシート処理装置50がスタンバイ状態から省電力状態に移行する構成でもよい。
S502でCPU161は、ジョブを受け付けたと判断した場合、S503で、受け付けたジョブ情報をシート処理装置50内のCPU162へ通知し、CPU162からジョブ情報に応じた受付待機時間を受信する。ここで、受付待機時間とは、シート処理装置50が画像形成装置1からシートPを受け取ると後処理動作を開始することが可能な状態となるまでに必要とされる所定の時間である。なお、CPU161は、不図示のタイマをリセットしてスタートさせておく。S504でCPU161は、S503でCPU162から受信した受付待機時間が経過したか否かを、不図示のタイマを参照することにより判断する。S504でCPU161は、受付待機時間が経過していないと判断した場合はS504の処理を繰り返す。S504でCPU161は、受付待機時間が経過したと判断した場合は、S505の処理に進む。S505でCPU161は、用紙カセット18aからシートPを給送し、搬送路上を搬送させて、シートPへ画像が転写されるタイミングをとるための待機位置であるレジストレーション位置にてシートPを待機させる。S506でCPU161は、画像形成動作を行い、画像形成タイミングに同期してレジストレーション位置からシートPの搬送を再開させる。即ち、転写位置においてシートP上にトナー画像が転写され、定着器19により未定着のトナー画像がシートPに定着された後に、シートPがシート処理装置50へ排出される。
S507でCPU161は、ジョブ情報に従い所定枚数が完了(ジョブ完了)したか否かを判断し、ジョブが完了していないと判断した場合S505の処理に戻る。S507でCPU161は、ジョブが完了したと判断した場合、S508で次のジョブがあるか否か、即ち、次のジョブを受け付けて、次のジョブが待機されている状態か否かを判断する。S508でCPU161は、次のジョブがあると判断した場合は、S503の処理に戻り、次のジョブがないと判断した場合は、S501の処理に戻る。
(シート処理装置側の処理)
次に図4(b)を用いてシート処理装置50のCPU162の制御フローチャートを説明する。画像形成装置1へ電源が投入されると、シート処理装置50へも画像形成装置1から電力が供給される(電源オン)。電力が供給されるとCPU162が起動され、CPU162はS601以降の処理を開始する。S601でCPU162は、シート処理装置50の初期化動作を実施した後にスタンバイ状態で待機する。S602でCPU162は、画像形成装置1のCPU161からジョブ情報が通知された(ジョブ情報を受け付けた)か否かを判断する。S602でCPU162は、ジョブ情報を受け付けていないと判断した場合はS601の処理に戻る。S602でCPU162は、ジョブ情報を受け付けたと判断した場合、S603の処理に進む。S603でCPU162は、CPU161から受け付けたジョブ情報に応じて、シート処理装置50が画像形成装置1からシートPを受け取り可能となるまでの所定の受付待機時間を、画像形成装置1のCPU161へ通知する。なお、画像形成装置1のCPU161側の処理は、上述した図4(a)のS503の処理に対応している。
S604でCPU162は、画像形成装置1において画像形成が完了したシートPが排紙されることにより、シートPをシート処理装置50が受け取り、シート処理装置50により後処理動作を行う。ここで、シート処理装置50により行われる後処理動作は、次のような動作である。CPU162は、搬送部58にてシートPの搬送速度を加速させて搬送した後に、パドルローラ59を駆動して回転させ、シートPを処理トレイ57へ掻き込む。そして、CPU162は、処理トレイ57上の複数のシートPを、戻しローラ60によって後端整合板62へ突き当てるように搬送し、複数のシートPの後端を揃える後端整合動作を行う。また、CPU162は、後端整合動作を行った後に、整合板64、65により複数のシートPの用紙幅方向の位置を整合させ、処理トレイ57にスタックする。
S605でCPU162は、処理トレイ57にジョブで指定された枚数のシートPがスタックされたか否かを判断し、スタックされていないと判断した場合はS604の処理に戻る。なお、CPU162は、搬送路上に設けられた不図示のセンサにより、処理トレイ57に排出されるシートの枚数をカウントし、カウント値に基づいて指定された枚数のシートPがスタックされたか否かを判断する。このセンサは、画像形成装置1、シート処理装置50のどちらの搬送路上に設けられていてもよい。S605でCPU162は、処理トレイ57にジョブで指定された枚数のシートPがスタックされたと判断した場合、S606の処理に進む。S606でCPU162は、受け付けたジョブ情報に基づいて、針無し綴じ処理が指定されているか否かを判断し、針無し綴じ処理が指定されていないと判断した場合はS608の処理に進む。S606でCPU162は、針無し綴じ処理が指定されていると判断した場合、S607で針無し綴じ処理を実施する。S607で実施される針無し綴じ処理については、図5を用いて後述する。S608でCPU162は、束だし部材61によって処理トレイ57にスタックされたシート束Sの後端側を押し出して、排紙トレイ63へ排出する。S609でCPU162は、ジョブ情報に基づいて、指定された所定部数の後処理動作が完了(以下、ジョブ完了とする)したか否かを判断し、ジョブが完了していないと判断した場合はS604の処理に戻る。S609でCPU162は、ジョブが完了したと判断した場合S601の処理に戻る。
(針無し綴じ処理)
次に、シート処理装置50のCPU162による針無し綴じ処理を、図5のフローチャートを用いて説明する。また、図6は針無し綴じ処理時におけるシート処理装置50の各部の信号を示すタイムチャートである。ここで、図6の(a)は、「下死点」、「綴じ動作点(上死点)」等、図2で説明したカム92の位置を示している。図6の信号(b)は、モータ75のモータ駆動信号を示している。信号(b)において、CW(clock wise;時計回り方向)は正回転を、BRAKEは回転の停止を、CCW(counter clock wise;反時計回り)は逆回転を、STOPは駆動の停止を、それぞれ示している。このように、本実施の形態では、CWを正回転、CCWを逆回転として説明する。図6の波形(c)は、モータ75の駆動電流I[A]の波形を示しており、RAM168に記憶されている所定値Iaに応じた電流値をA1、また、リミット電流値をILとして破線で示している。図6の波形(d)は、モータ75を駆動するための駆動電圧V[V]の波形を示している。図6の波形(e)は、エンコーダセンサ90により検出したモータ75の単位時間(秒)当たりの回転数[rps]を示している。図6の波形(f)は、CPU162が電流制限回路100に出力するリミット電流信号[V]を示している。図6の波形(g)は、基準センサ76からCPU162に出力される検出信号[V]を示している。図6の波形(h)は、電流制限回路100からCPU162に出力されるリミット検知信号[V]を示している。図6の横軸はいずれも時間である。
CPU162は図4(b)のS607で針無し綴じ処理を実行する。図5のS701でCPU162は、リミット電流信号Ilim(V)を、予めROM167に記憶された所定値Ia(V)に設定し、電流制限回路100へ出力する。このため、CPU162は、電流制限回路100により制御されるモータ75の駆動電流Iを設定する設定手段としても機能している。図8(a)で説明するように、リミット電流信号Ilimを所定値Iaとしたとき、モータ75の駆動電流Iが、モータ75に流すことが可能な最大電流以下となるように、所定値Iaが決定されている。また、モータ75に流すことが可能な最大電流は、モータ75が出力することができるトルクの範囲内において最大の出力トルクに応じた駆動電流である。S702でCPU162は、針無し綴じ処理を行うために、モータ駆動信号を駆動回路82に出力し、駆動回路82によりモータ75を正回転(CW)方向に駆動する。CPU162は、モータ75を正回転方向に駆動することで、図2(a)に示すようにカム92を下死点からX方向(反時計回り方向)へ回転させる。ここで、本実施の形態では、CPU162が駆動回路82によりモータ75の駆動を開始するとき、S701で設定したリミット電流信号Iaに応じた電流値を、モータ75の駆動電流Iとしてモータ75を駆動する。
ここで、リミット電流信号Iaに応じた駆動電流Iを第1の値である電流値A1とする。図6の波形(f)に示すように、リミット電流信号Ilimを所定値Iaとすると、図6の波形(c)に示すように、モータ75の駆動電流はA1[A]となる。上述したように、リミット電流信号Ilimを所定値Iaとしたとき、所定値Iaに応じた電流値A1は、モータ75の最大出力トルクに応じた駆動電流以下となる。このため、リミット電流信号Iaに応じた電流値は、電流の上限値を決定するための電流制限値ともいうことができ、以降、駆動電流A1を電流制限値A1ともいう。このように、リミット電流信号Ilimが所定値Iaであるときの駆動電流I=A1は、駆動回路82が出力可能な最大駆動電流に応じて決定される値であり、本実施の形態では電流制限値A1を例えば3.5A(アンペア)とする。
なお、モータ75のモータとしての最大電流(ロック電流ともいう)は、後述する図8(a)に示す通り、本実施の形態では例えば4A(アンペア)とする。即ち、CPU162が電流制限回路100に対してリミット電流信号を制限しない(制限無し)場合、モータ75には、最大4Aの駆動電流まで流すことができる。なお、モータ75に流せる最大の電流値は、個々のモータによって決定される値である。ここで、図8(a)は、横軸をリミット電流信号Ilim[V]、縦軸を駆動電流I[A]としたグラフである。リミット電流信号Ilimを所定値Iaとしたとき(S701)、上述したように駆動電流IはA1(=3.5A)となる。本実施の形態では、モータ75の駆動を駆動電流I=A1[A]で開始させることによって、上述した減速機構91の有する慣性負荷に対して速やかにモータ75を起動することが可能となる。
図8(b)に駆動電流Iとモータの起動時間との関係を示す。モータの起動時間とは、モータ75が駆動を開始して安定するまでに必要な時間のことである。図8(b)は、横軸を時間[s]、縦軸を駆動電流I[A]としたグラフである。また、図8(b)において、一点鎖線は、モータ75の駆動開始時の駆動電流IがIL(=2.5A)であるときのグラフであり、起動時間はt1[s]である。図8(b)において、実線は、モータ75の駆動開始時の駆動電流IがA1(=3.5A)であるときのグラフであり、起動時間はt2[s]である。図8(b)において、破線は、モータ75の駆動開始時の駆動電流Iが最大電流(=4A)であるときのグラフであり、起動時間はt3[s]である。図8(b)に示す通り、モータ75の起動時の駆動電流Iを高く設定するほど、起動時間が短くなる(t1>t2>t3)。この理由としては、モータ75の起動時の駆動電流Iが高く設定されるほど、モータ75の出力トルクが駆動電流Iに比例して大きくなり、負荷を駆動するために要する時間が、出力トルクに反比例して短くなるためである。なお、モータ75の起動時の駆動電流I(電流制限値A1)は、電流の上限値(ロック電流(本実施の形態では4A))又は起動時間が所定時間となるような電流値のいずれでもかまわない。また、CPU162は、不図示のタイマをリセットしスタートさせておく。
S703でCPU162は、不図示のタイマを参照することで、計測マスク時間T1の間、モータ75の駆動電圧及び回転速度の測定を待機(ウェイト)する。S703の処理は、駆動開始直後の減速機構91が有する慣性負荷によって、モータ75の駆動電圧、回転速度が変動する期間を、計測対象から除外するために実行される。図6の波形(c)、(e)に示すように、計測マスク時間T1の期間、駆動電流I及びエンコーダセンサ90からの出力は安定していない。なお、計測マスク時間T1は、固定値又は針無し綴じ装置ごとに決定される値であり、例えばROM167に、予め記憶されているものとする。また、計測マスク時間T1は上述した起動時間以上の値に設定される。
S704でCPU162は、モータ75を駆動するための駆動電圧Vを変換回路102によって変換した電圧Vmを、複数回計測する。駆動電圧Vは少なからず変動しているため、本実施の形態では、複数回計測した電圧Vmを平均化することで、測定精度を向上させている。また、CPU162は、エンコーダセンサ90から入力されるパルス信号のエッジ間隔(即ち、周期に相当する)も複数回計測し、平均化することにより、モータ75の回転速度を算出する。CPU162がこれらの計測を行うための時間は計測時間T2である。計測時間T2は、コロ93とカム92の接触部が、カム92の回転に伴い図2(a)に示すカム92のZ部を移動していく時間と計測マスク時間T1との差よりも長くならないように設定されている。以降、コロ93がカム92のZ部を移動する時間を、移動期間という。計測時間T2は、移動期間から計測マスク時間T1を引いた時間内となるように設定されている。言い換えれば、モータ75に負荷がほとんどかからない無負荷期間内に電流の計測が行われるように計測時間T2が設定されている。即ち、モータ75が駆動中で且つ上歯97がシート束Sを押圧していない期間で電流測定が行われる。計測時間T2はROM167に記憶されている。なお、無負荷区間を規定する所定稜線距離(Z部)は、固定値又はカム92の形状に応じて設定される値となっている。このように、CPU162は、計測時間T2内に、モータの駆動電圧Vと、エンコーダセンサ90からのパルス信号の周期を計測する。なお、CPU162は、不図示のタイマをリセットしてスタートさせておき、タイマを参照することで計測時間T2を計測するものとする。図6の波形(c)、(e)に示すように、計測時間T2の期間、駆動電流I及びエンコーダセンサ90からの出力は安定している。
(トルク定数Ktの決定)
S705でCPU162は、S704で計測したエンコーダセンサ90からのパルス信号の周期と、モータ75の駆動電圧Vに応じた電圧Vmとに基づいて、トルク定数Ktを決定する。即ち、CPU162は、トルクを決定する制御手段としても機能する。以下に、CPU162によるトルク定数Ktの決定を、詳細に説明する。CPU162は、複数回計測した駆動電圧Vに応じた電圧Vmの平均値を求める。CPU162は、予めROM167に記憶された、電圧Vmとモータ駆動電圧Vとの関係を示すデータ(表1)を用いて、電圧Vmの平均値からモータ75の駆動電圧Vに変換する。表1は、左列に電圧Vm[V]の平均値を、右列に電圧Vmの平均値から変換したモータ75の駆動電圧V[V]を、それぞれ記載している。例えば、電圧Vmの平均値が1.35Vであった場合、CPU162は、モータ75の駆動電圧Vを、22.89Vに変換する。
Figure 0005984970
更にCPU162は、エンコーダセンサ90からのパルス信号の周期を複数回計測した結果も平均し、平均値Teを算出する。そして、CPU162は、予め用意された以下の式(1)を用いて、エンコーダセンサ90のパルス信号の周期の平均値Teからモータ75の回転角速度ωmを算出する。
ωm=2×π×(1÷Te[sec])÷18・・・(1)
各単位系は、ωm[rad/s]、Te[sec]である。
また、式(1)の数値18は、モータ75の出力軸上の円盤に設けられたスリット数である。
ここで、モータ75のトルク定数Ktを決定する。図7は、横軸をモータ75の駆動電流I[A]、縦軸を出力トルクTrq[Nm]とした、駆動電流と出力トルクの関係を示すグラフであり、
Trq=Kt×I
という関係が成り立つ。トルク定数Ktは、図7に示す直線の傾きに相当し、モータ75の出力トルク特性を表す。また、モータ75のトルク定数Ktは、一般的に逆起電力定数Keと等しい値となることが知られている。よって、
Kt=Ke・・・(2)
更に、逆起電力定数Keは、モータ75の電圧Vmから変換された駆動電圧V、モータ75の回転角速度ωmを用いて、以下の式(3)から算出することができる。
Ke=V÷ωm・・・(3)
よって、CPU162は、式(2)、式(3)から求められる式(4)を用いて、モータ75のトルク定数Ktを決定することができる。
Kt=Ke=V÷ωm・・・(4)
ここで、各単位系は、Kt[Nm/A]、V[V]、ωm[rad/s]である。このようにして、CPU162は、S704でのモータ75の駆動電圧Vに応じた電圧Vm、エンコーダセンサ90からのパルス信号の周期(回転速度に相当する)の計測結果に基づき、トルク定数Ktを決定する。本実施の形態では、モータ75の回転速度及び駆動電圧Vの検出結果に基づき、モータ75の出力トルク特性、即ちトルク定数Ktを決定する。そして、決定したモータ75のトルク定数Ktに基づいて、上歯97及び下歯98によるシート束Sへの押圧力が一定となるよう、モータ75の駆動電流Iを制御する。
S706でCPU162は、S705で決定したトルク定数Ktに基づき、リミット電流信号Ilimを算出し、算出したリミット電流信号Ilimを電流制限回路100に出力する。図7に示すように、針無し綴じ処理時に必要な出力トルクをTm[Nm]とすると、出力トルクTmを得るためには、駆動電流IL[A]が必要となる。なお、針無し綴じ処理時に必要な出力トルクTmは、個々の針無し綴じ装置について実験等によって予め求められた値であり、ROM167に記憶されているものとする。この駆動電流ILがリミット電流値である。CPU162は、S705で決定したトルク定数Ktから、式(5)を用いて第2の値であるリミット電流値ILを決定する。
IL=Tm÷Kt・・・(5)
各単位系は、IL[A]、Kt[Nm/A]、Tm[Nm]である。
CPU162は、決定したリミット電流値ILをRAM168に記憶し、リミット電流ILに応じたリミット電流信号Ilim(電圧信号)を電流制限回路100へ出力する。なお、リミット電流信号Ilimを、リミット電流信号Ilとする。
S707でCPU162は、S706で決定したリミット電流値ILが、駆動回路82が出力可能な駆動電流A1(本実施の形態では3.5A)以下であるか否かを判断する。S707でCPU162は、S706で決定したリミット電流値ILが駆動電流A1以下(第1の値以下)ではない、即ち、IL>A1であると判断した場合、S718の処理に進む。S718でCPU162は、モータ75のトルク定数Ktが異常な値(正常時には取り得ない値)となっていることから、モータ75が異常状態にあると判断して、画像形成装置1のCPU161へモータエラーを通知し、S714の処理に進む。このように、リミット電流値ILが駆動電流A1よりも大きい場合、モータ75の駆動を禁止する。
図7に示す出力トルクTmaxは、モータ75のバラツキも考慮した値であり、モータ75が出力し得る最大の出力トルクである。駆動電流A1は、出力トルクTrq[Nm]が、綴じ処理に必要とされる出力トルクTmと最大の出力トルクTmaxとの間の値になるように設定される電流値である。駆動電流A1(即ち、電流制限値A1)がILよりも小さくなる状況とは、図7に示すグラフの傾き(即ち、トルク定数Kt)がTm÷A1よりも小さくなる場合(Kt<Tm÷A1)である。なお、図7には、Trq=Tm/A1×Iの直線を、一点鎖線で示している。駆動電流Iと出力トルクTrqがモータ異常判定域(図7中、網掛け部分)に含まれる場合に、CPU162はモータ75の異常と判断する。なお、モータ75の異常とは、モータ75が綴じ処理に必要な出力トルクTmを出力できない状態をいう。このように、CPU162は、綴じ処理時のモータ75の駆動電流Iであるリミット電流値ILが、電流制限値A1を超えてモータ75に流れないように、制限をかけている。
S707でCPU162は、リミット電流値ILが駆動電流A1以下である(IL≦A1)と判断した場合、S708の処理に進む。S708ではCPU162は、S706で決定したリミット電流値ILに応じたリミット電流信号Ilを電流制限回路100へ出力する。即ち、本実施の形態では、シート束Sを押圧する際のモータ75の駆動電流Iを、リミット電流値IL(IL≦A1)に設定する。図6の波形(f)に示すように、計測時間T2の経過後、リミット電流信号Ilimは、リミット電流値ILに応じたリミット電流信号Ilに変更されている。S709でCPU162は、リミット検知信号を検知したか否かを判断する。前述したように、電流制限回路100は、モータ75の駆動電流Iが、CPU162から入力されたリミット電流信号Ilに応じたリミット電流値ILを超えないように、駆動回路82を制御する。モータ75は、正回転を継続することによりカム92の回転が続き、カム92が上死点に近づくにつれ、モータの駆動電流Iが増加する。モータ75の駆動電流Iがリミット電流値ILに達したとき、電流制限回路100はCPU162へリミット検知信号を出力する(図6の波形(h))。
S709でCPU162は、リミット検知信号を検知していないと判断した場合、S716の処理に進む。S716でCPU162は、S701でスタートさせたタイマを参照することにより所定時間が経過したか否かを判断する。ここで、所定時間は、綴じ処理に必要とされる時間を超える時間に設定されている。S716でCPU162は、所定時間が経過していないと判断した場合、S709の処理に戻る。S716でCPU162は、所定時間が経過したと判断した場合、モータ75が正常に駆動していない可能性が高いため、S717でタイムアウトエラーとして画像形成装置1のCPU161へ通知し、S714の処理に進む。
S709でCPU162は、リミット検知信号を検知したと判断した場合、S710の処理に進む。S710でCPU162は、一定時間駆動電流Iをリミット電流値ILに維持し、その後モータ75にブレーキをかけるように、駆動回路82にモータ駆動信号を出力し駆動回路82を介してモータ75にブレーキをかけて、モータの正回転を停止させる。このとき、シート束Sに対して上歯97と下歯98が綴じに必要な所定の圧力で噛み合いを行い、シート束Sへの針無し綴じ処理が実施される。シート束Sに対して所定の圧力を必要以上の時間かけないように、速やかにモータ75の正回転駆動が停止される。
S711でCPU162は、ROM167に記憶されている所定値Iaをリミット電流信号Ilimとして再度設定し、電流制限回路100へ出力する。このように、CPU162は、正回転、逆回転にかかわらず、モータ75を停止状態から駆動させる場合には、リミット電流値ILよりも大きい駆動電流A1でモータ75を駆動させる。図6の信号(b)に示すモータ駆動信号がCWからBRAKEに切り替わってから所定時間後、図6の波形(f)に示すようにリミット電流信号Ilimは、決定されたリミット電流値ILに応じたリミット電流信号Ilから、駆動電流A1に応じた所定値Iaに変更される。
S712でCPU162は、駆動回路82にモータ駆動信号を出力し、駆動回路82によりモータ75を逆回転(CCW)方向に駆動させ、カム92を図2(b)の矢印Y方向(時計回り方向)に回転させる。これにより、CPU162は、上歯97と下歯98をシート束Sから離間させる。電流制限回路100は、S702でモータ75を正回転方向に駆動したときと同様に、モータ75の逆回転方向への起動時の駆動電流Iを、リミット電流信号Iaに応じた駆動電流A1となるように制御する。本実施の形態では、モータ75を駆動電流I=A1で駆動することによって、減速機構91の有する慣性負荷に対して速やかに起動することが可能となる。S713でCPU162は、基準センサ76からオン信号が入力されたか否かを判断し、基準センサ76からオン信号が入力されていないと判断した場合、S713の処理に戻る。S713でCPU162は、基準センサ76からオン信号が入力されたと判断した場合、S714で駆動回路82を介してモータ75の駆動を停止させ、針無し綴じ処理を終了する。
本実施の形態では、綴じ処理を行っているときには、モータ75の駆動電流Iの制限値を、上歯97及び下歯98の押圧力に相当する出力トルクTmとなるように、リミット電流値ILとして制御する。一方、綴じ処理以外の動作を行うときには、リミット電流値IL以上の駆動電流A1として、モータ75の駆動を制御する。即ち、本実施の形態では、綴じ処理動作のシーケンスに応じてモータ75の駆動電流Iを切り替えてモータ75の制御を行う。これにより、モータ75の駆動を開始する際にはモータ75の起動時間を短くすることができ、綴じ処理動作時には綴じ処理に必要な出力トルクとなるようにモータ75の駆動電流を制御し、シート束Sに対して安定した押圧力を付与することができる。
また、S701で設定されるモータ起動時の駆動電流を、1回前の綴じ処理時に決定したリミット電流値ILに基づいて決定してもよい。この場合、起動時間が短くなるように、起動時の駆動電流はリミット電流値ILよりも大きい値が設定される。
以上、本実施の形態によれば、綴じ処理を行う際の品質を向上させ、綴じ処理の生産性を向上することができる。
[その他の実施の形態]
上述した第一の実施の形態は、モータ75の駆動開始時にモータ75の駆動電流Iを電流制限値A1とし、綴じ処理時にモータ75の駆動電流Iをリミット電流値ILとした。しかし、上述した実施の形態の構成は、モータ75の駆動開始時や綴じ処理時以外の期間において、リミット電流値ILとは異なる駆動電流I(例えば駆動電流の電流値をICとする)で駆動する場合にも適用できる。この場合、モータ75の駆動電流ICは、電流制限値A1以下となるように制御される。
また、上述した各実施の形態は、シート束Sの針無し綴じ処理を実施するたびに、モータ75の出力トルク特性であるトルク定数Ktを毎回決定する構成である。しかし、以下のいずれかのタイミングで、回転速度、駆動電圧及び駆動電流の測定、並びにトルク定数Ktの決定を実施しても、上述した実施の形態と同様の効果が得られる。例えば、次のような各構成が考えられる。
・所定部数の綴じ処理毎にトルク定数Ktを決定する構成。
・シート処理装置50又は画像形成装置1への電源投入直後で、シート処理装置50内にシート束Sがない状態で、モータ75を駆動させ、トルク定数Ktを決定する構成。
・電源投入直後の所定部数目の綴じ処理時、例えば1部目のシート束Sへの針無し綴じ処理時のみ、トルク定数Ktを決定する構成。
・画像形成装置1及びシート処理装置50の針無し綴じ処理以外の動作中に、シート束Sがない状態で、モータ75を駆動させ、トルク定数Ktを決定する構成。
また、上述した各実施の形態では、モータ75の回転速度とモータ75の駆動電圧Vに基づいてモータ75のトルク定数Ktを決定した。しかし、例えば、モータ75の駆動電流IをCPU162によって検出し、モータ75の回転速度、駆動電圧V及び駆動電流Iに基づいてトルク定数Ktを決定してもよい。
また、上述した各実施の形態では、画像形成装置1の内部に設置するシート処理装置50を例として説明を行ったが、このような構成のシート処理装置に限定されるものではない。例えば、本実施の形態の構成を、針無し綴じ装置52単体や、画像形成装置に併設して画像形成装置とは独立に使用するシート処理装置に適用しても良い。また、シート処理装置を例として説明を行ったが、シート処理装置に限定されるものではなく、画像形成装置自体に綴じ手段が搭載される装置に適用しても良い。更に、針無し綴じ装置を例として説明を行ったが、針無し綴じ装置に限定されるものではなく、他の用紙綴じ装置又は一定圧力若しくは一定トルクを加える機構に適用しても良い。
更に、上述した各実施の形態における針無し綴じ装置は、凸部と凹部を有する歯型を、シート束Sに対してDCブラシ付きモータを駆動源として押圧する構成である。一連の綴じ処理動作中にモータにほとんど負荷がかからない動作期間を設けることにより、モータの出力トルク特性であるトルク定数Ktを毎回検出することが可能となっている。これにより、綴じ動作の直前にモータの特性が把握できるため、モータの個体ばらつきだけでなく、装置が設置された周囲の温度変動や、使用時間、使用頻度等に伴う出力トルクの変動があっても、押圧力を一定に制御することが可能になる。
また、モータのトルク定数Ktを求めるための本発明の制御は、例えば、シート束Sの複数のシートPに切り込みを入れるような、半抜き綴じ方法の場合でも適用可能である。更には、通常の針等の綴じ部材を用いる綴じ方法にも適用可能である。即ち、綴じ処理にモータを用いるものであれば、適用可能である。更に、シート束Sにパンチ穴等の穴あけ処理を行う際のモータの制御に対しても適用可能である。
以上、本実施の形態によれば、綴じ処理を行う際の品質を向上させ、綴じ処理の生産性を向上することができる。
52 針無し綴じ装置
75 針無し綴じモータ
100 電流制限回路
162 CPU

Claims (9)

  1. シート束を押圧することにより綴じ処理を行う綴じ手段と、
    シート束を押圧するために前記綴じ手段を駆動するモータと、
    前記モータの速度を検出する速度検出手段と、
    前記モータの駆動電圧を検出する電圧検出手段と、
    前記綴じ手段が前記シート束を押圧していない状態で前記モータの駆動を開始する時の駆動電流を第1の値に設定し、前記綴じ手段が前記シート束を押圧している期間における前記駆動電流の上限値を前記第1の値以下の第2の値に設定する制御手段と、
    を有し、
    前記制御手段は、前記モータの駆動中で且つ前記綴じ手段がシート束を押圧していない期間で前記速度検出手段により検出される速度と前記電圧検出手段により検出される電圧とに基づいて前記モータの駆動電流の上限値を決定し、決定した上限値が前記第1の値以下の場合に、該決定した上限値を前記第2の値として設定することを特徴とするシート処理装置。
  2. 前記制御手段は、前記第1の値として、前記モータが出力できる最大のトルクに応じた駆動電流以下の値を設定することを特徴とする請求項1記載のシート処理装置。
  3. 前記制御手段は、前記決定した上限値が前記第1の値よりも大きい場合、前記モータの異常と判断することを特徴する請求項1又は請求項2に記載のシート処理装置。
  4. 前記制御手段は、前記決定した上限値が前記第1の値よりも大きい場合、前記綴じ手段の駆動を禁止することを特徴とする請求項3に記載のシート処理装置。
  5. 前記モータの駆動電流を検出する電流検出手段を有し、
    前記制御手段は、前記綴じ手段が前記シート束を押圧している期間において、前記電流検出手段により検出される駆動電流が前記第2の値になると、前記モータにブレーキをかけることを特徴とする請求項1から請求項4いずれか1項に記載のシート処理装置。
  6. 前記綴じ手段は、前記シート束の一方の面を押圧する第一の押圧部と、前記第一の押圧部に対向して設けられ、前記シート束の他方の面を押圧する第二の押圧部と、を有し、前記第一の押圧部と前記第二の押圧部により前記シート束を挟んで押圧することにより前記綴じ処理を行うことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のシート処理装置。
  7. 前記綴じ手段は、前記シート束のシート同士の繊維を絡み合わせることにより前記シート束を綴じることを特徴とする請求項6に記載のシート処理装置。
  8. 前記制御手段は、前記速度検出手段により検出される速度と前記電圧検出手段により検出される電圧とに基づいて前記モータのトルク定数を決定し、決定したトルク定数に基づいて前記モータの駆動電流の上限値を決定することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のシート処理装置。
  9. シートに像形成する像形成手段と、
    前記像形成手段により像形成されたシートが積載される積載手段と、
    請求項1から請求項8いずれか1項に記載のシート処理装置と、
    を有し、前記シート処理装置が前記積載手段に積載された複数のシートからなるシート束を押圧することにより綴じ処理を行うことを特徴とする画像形成装置。
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