JP5978676B2 - 油脂中における糖脂質分解酵素の分散方法、油脂組成物および小麦粉製品の製造方法 - Google Patents

油脂中における糖脂質分解酵素の分散方法、油脂組成物および小麦粉製品の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5978676B2
JP5978676B2 JP2012060690A JP2012060690A JP5978676B2 JP 5978676 B2 JP5978676 B2 JP 5978676B2 JP 2012060690 A JP2012060690 A JP 2012060690A JP 2012060690 A JP2012060690 A JP 2012060690A JP 5978676 B2 JP5978676 B2 JP 5978676B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
enzyme
water
oil
glycolipid
degrading
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2012060690A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2013192473A (ja
Inventor
敦子 ▲高▼橋
敦子 ▲高▼橋
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Chemical Foods Corp
Original Assignee
Mitsubishi Chemical Foods Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Chemical Foods Corp filed Critical Mitsubishi Chemical Foods Corp
Priority to JP2012060690A priority Critical patent/JP5978676B2/ja
Publication of JP2013192473A publication Critical patent/JP2013192473A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5978676B2 publication Critical patent/JP5978676B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Immobilizing And Processing Of Enzymes And Microorganisms (AREA)
  • General Preparation And Processing Of Foods (AREA)
  • Enzymes And Modification Thereof (AREA)
  • Edible Oils And Fats (AREA)

Description

本発明は、酵素を水分散性被膜形成材でコーティングした被覆酵素剤に関する。本発明はまた、この被覆酵素剤を用いて製造された食品に関する。
酵素は、温和な条件下、特異的、選択的な反応を行う触媒として多くの分野で利用が進んでいる。食品加工においても酵素の利用は進んでおり、ベーキング分野においては、生地の取り扱いを容易にする、ベーキング後の製品の食感を改善する等の用途に、アミラーゼ、ヘミセルラーゼ等の種々の酵素が使用されている。また、ベーキングにおけるリパーゼの効果も明らかであり、例えば特許文献1では、脂質を分解して界面活性様物質を生成させ、生地の伸展性を向上させてソフト化し、風味の上昇をもたらすことが開示され、このような技術が知られている。
現在市販されている酵素の多くは粉末製品であり、使用時に水に溶解させる等の手順が必要なものが多い。又、粉末状酵素は作業中に飛散し、種類によっては人体に危害を与えるものがある。これらのことから、酵素は溶液状態として流通させて使用することが望ましいが、多くの酵素は水溶液にした場合、不安定であり、長期にわたり安定した活性を維持することが難しい。
さらに、ベーキング等の分野で使用される酵素の使用量はごく微量であり、精密天秤による計量が必要であるため、現場での作業が煩雑となる。また、ごく微量の酵素を大量の原料中に均一に分散させることは難しい。
これらのことより、ベーキング分野における酵素の利用に際しては、計量が容易で、均一に混合しやすいよう、主原料の一つに分散させたものを使用することも多い。特に油脂に分散させたものは均一混合させやすく、広く用いられている。
酵素を油脂に分散させる方法としては、アミラーゼ、プロテアーゼ、ヘミセルラーゼ、グルコースオキシダーゼといった酵素に関しては既に知られており、例えば、特許文献2〜5では、酵素含有の油脂が開示され、市販されているものもある。しかし、リパーゼをはじめとする油脂分解酵素は、油脂と混合すると保存中に油脂中のトリグリセライド等を加水分解し、遊離脂肪酸を生成させ、異臭の発生を引き起こすため、油脂に分散させることは困難であった。
特開平04−84848号公報 特開2006−6161号公報 特開平5−45号公報 特開2000−83573号公報 特開2000−135056号公報
本発明は、油脂中に分散させても、遊離脂肪酸の生成や異臭の発生の少ない、油脂分解酵素製剤を提供することを課題とする。
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、油脂分解酵素として、糖脂質分解酵素を用い、これを水分散性被膜形成材で被覆することにより、油脂中に分散させても、油脂の分解によって生じる遊離脂肪酸の量を減少させ、異臭の発生の少ない油脂を提供することができ、しかも、食品製造時に加水することにより、水分散性被膜形成材は容易に溶解し、食品製造時に必要な油脂分解活性を取り戻すことができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、油脂中に糖脂質分解酵素を分散させる方法であって、該糖脂質分解酵素を水分散性被膜形成材としてヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはゼラチンでコーティングした被覆酵素剤として油脂中に分散させることを特徴とする、油脂中における糖脂質分解酵素の分散方法、油脂中に糖脂質分解酵素を分散させた油脂組成物であって、該糖脂質分解酵素が、水分散性被膜形成材としてヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはゼラチンでコーティングした被覆酵素剤である、油脂組成物、および糖脂質分解酵素を水分散性被膜形成材としてヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはゼラチンでコーティングした被覆酵素剤を分散させた油脂を用いることを特徴とする、小麦粉製品の製造方法、に存する。
本発明によれば、糖脂質分解酵素を水分散性被膜形成材で被覆することにより、表面の滑らかな被覆酵素剤を得ることができ、この被覆酵素剤は油脂中に分散させても、油脂を分解しにくい。加えて、食品製造時に加水することにより、水分散性被膜形成材は容易に溶解し、食品製造時に必要な油脂分解活性を取り戻すことができる。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に特定はされない。
本発明は被覆酵素剤に関し、水分散性被膜形成材で酵素をコーティングした被覆酵素剤であって、該酵素が糖脂質分解酵素であることを特徴とする。
(1)酵素
油脂分解酵素とは、トリグリセライド、リン脂質、糖脂質のいずれか一種以上を分解する活性を有する酵素のことである。本発明では、油脂分解酵素の中でも、糖脂質分解活性を有する酵素を用いることを特徴とし、本発明ではこれを糖脂質分解酵素という。
糖脂質は基本骨格がスフィンゴシンであるものとグリセリンであるものがあるが、本発明で用いる酵素は、グリセリンを基本骨格とするグリセロ糖脂質を分解する活性を持つグリセロ糖脂質分解酵素が好ましく、特に、トリグリセライド、グリセロ糖脂質のエステル結合を分解する酵素を用いることが好ましい。
本発明で用いる酵素のグリセロ糖脂質分解活性は、トリグリセライド分解活性を100としたときのグリセロ糖脂質分解活性が、トリグリセライド分解活性:グリセロ糖脂質分解活性で、好ましくは100:5から100:10,000、より好ましくは100:10〜100:10,000、特に好ましくは100:100〜100:1,000であることが好ましい。
尚、本発明で用いる糖脂質分解酵素のグリセロ糖脂質分解活性は、下記の測定方法Iにより、測定することができる。
測定方法I:予め37℃に加温した4重量%Triton X−100(Sigma−Aldrich Japan株式会社製)水溶液(50ml)にジガラクトシルジアシルグリセロール(DGDG)(1.0g)を少しずつ加えて完全に溶解するまで攪拌する。この基質溶液(210μl)および400mM MOPS(ナカライテスク社製)pH6.0緩衝液(30μl)の混合液を37℃で5分間保温した後、酵素溶液(30μl)を加え、均一に分散させた後、37℃で10分間保温する。この反応液に1N塩酸(30μl)を加え酵素反応を停止させた後、20μlを別の試験管に移す。この溶液をデタミナーNEFA755(協和メディックス社製)で比色定量する。1分間に1μmolの遊離脂肪酸を生じさせる酵素量を1ユニットと定義する。
この方法に使用する装置等が存在しない場合は、同様の測定が可能なものを使用してもよい。また、測定条件は、使用する酵素に応じて適宜変更することができる。
また、本発明で用いる糖脂質分解酵素のトリグリセリド分解活性は、下記の測定方法IIにより測定することができる。
測定方法II:オリーブ油(ナカライテスク株式会社)100mgとアラビアガム(和光純薬株式会社)50mg、水10mlを加え、ブレンダー(日本精機株式会社)で10,000r.p.m.で1分間乳化する。この溶液(500μl)、400mM MOPS(ナカライテスク株式会社製)pH6緩衝液(250μl)および100mM
カルシウムクロライド溶液(50μl)の混合液を37℃で5分間保温した後、酵素溶液(100μl)を加えて均一に分散させた後、37℃で10分間保温する。この反応液に1N塩酸(100μl)を加え酵素反応を停止させた後、4重量%Triton X−100(Sigma−Aldrich Japan株式会社製)水溶液(1ml)を加えて遊離脂肪酸を溶解させ、20μlを別の試験管に移す。この溶液をデタミナーNEFA755(協和メディックス株式会社製)で比色定量する。1分間に1μmolの遊離脂肪酸を生じさせる酵素量を1ユニットと定義する。
この方法に使用する装置等が存在しない場合は、同様の測定が可能なものを使用してもよい。また、測定条件は、使用する酵素に応じて適宜変更することができる。
本発明で用いる糖脂質分解酵素は、動植物由来であっても、菌株由来であってもよい。また、遺伝子非組み換えであっても、遺伝子組み換えであってもよく、特に限定されない。該糖脂質分解酵素は、精製したものでも、していないものでもよく、特に限定されるものではないが、製品の製造に悪影響を及ぼす可能性が有る物質を排除する点で、精製されているものが好ましい。
このような糖脂質分解酵素としては、例えば、PANAMORE Golden(登録商標、DSM社製)、PANAMORE Spring(登録商標、DSM社製)、PANAMORE Lipase(登録商標、DSM社製)、BAKEZYME PH800(登録商標、DSM社製)、LipopanF(登録商標、ノボザイムズ社製)、および特開2008−206515号公報に記載の糖脂質分解酵素等が挙げられる。
本発明における酵素は粉末状態であることが好ましく、液状である場合は粉末化工程を経ることが望ましい。酵素の粉末化の方法は特に限定されないが、噴霧乾燥を行うことが望ましい。粉末化に際し、糖類、小麦等の賦形剤を使用してもよい。
粉末化された酵素の粒子径は通常50μm〜1mmであり、好ましくは100μm〜500μmである。酵素の粒子が小さすぎると静電気による機器への付着やコーティング時の流動不良が起こりやすい。また、粒子が大きすぎると、水分散性被膜形成材のコーティングにより得られた被覆酵素剤を使用する際、異物として残りやすい。
(2)水分散性被膜形成材
本発明における水分散性被膜形成材とは、フィルム形成能があり、油脂類および低水分下では溶解せず、内容物を外的環境から物理的に遮断できる材料であり、また水が加えられることにより、容易に溶解し、内容物を放出する材料を意味する。
このような水分散性被膜形成材としては、具体的には、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロースを基本骨格とするセルロース系化合物;大豆多糖類などのヘミセルロース、でんぷんおよびその誘導体、ゼラチン、ペクチン等の多糖類;アルギン酸ナトリウム;ポリビニルアルコール;ポリエチレングリコール;アクリル酸ポリマー等が挙げられる。
本発明に用いる水分散性被膜形成材は、上記の条件を備えている限り特に限定されないが、食した際の安全性の面や、水への溶解性、取り扱いやすさの面から、セルロース系化合物、多糖類を用いることが好ましく、多糖類の中では、大豆多糖類などのヘミセルロース、ゼラチンが好ましい。
後掲の実施例に示されるように、水分散性被膜形成材の種類により、被覆酵素剤に加水したときの油脂分解活性に差があるため、目的に応じて水分散性被膜形成材を選択使用することが好ましい。
酵素に対する水分散性被膜形成材の量は、通常、酵素に対して1重量%〜50重量%、好ましくは5重量%〜20重量%である。水分散性被膜形成材の量が少なすぎると被覆が不十分であることがあり、水分散性被膜形成材の量が多すぎると、加水した際に水分散性被膜形成材が溶解しない可能性がある。
(3)コーティング方法
本発明の被覆酵素剤は、糖脂質分解酵素に水分散性被膜形成材をコーティングすることにより得られる。酵素への水分散性被膜形成材のコーティングに用いる装置としては、コーティングパン、流動層型造粒機等が挙げられるが、特に限定されない。コーティングパンとしては例えばハイコーター(フロイント産業社製)、ドリアコーター(富士産業社製)等が挙げられ、流動型造粒機としては例えば、フローコーター((株)大川原製作所社製)、CFグラニュレーター(フロイント産業社製)、マルチプレックスMP(Powrex社製)等が挙げられる。
コーティングに際し、水分散性被膜形成材は溶媒に溶解して用いることが好ましい。該溶媒としては、水や有機溶媒等が挙げられるが、操作のしやすさ等の面から、水に溶解することが好ましい。
水分散性被膜形成材を水等の溶媒に溶解させて得られる水分散性被膜形成材溶液中の水分散性被膜形成材の濃度は、通常1重量%〜70重量%、好ましくは3重量%〜10重量%である。この濃度が薄すぎると所望のコーティング量を得るのに、時間がかかりすぎ、濃度が濃すぎると粘度が上がるため、水分散性被膜形成材供給ラインのつまりやコーティング不良が起こる。
コーティング時の給気温度は通常50℃〜150℃であり、好ましくは70℃〜100℃である。温度が低すぎると被覆酵素剤中の水分含量が高くなり、保存中に水分散性被膜形成材が溶解する可能性があり、温度が高すぎると酵素が失活し、活性を喪失する可能性がある。
なお、本発明の被覆酵素剤には、糖脂質分解酵素として2種以上のものが含まれていてもよく、また、水分散性被膜形成材としても2種以上のものを用いてもよい。
(4)食品
本発明の被覆酵素剤は、小麦粉製品、米粉製品、豆製品等、油脂分解酵素により改良が期待できる製品の改良剤としての用途に用いることができるが、小麦粉中の油脂すなわちトリグリセライド、糖脂質、リン脂質を油脂分解酵素によって分解することで、特に小麦粉製品の改良が期待できるため、中でも本発明の被覆酵素剤を用いて小麦粉製品を製造することが好ましい。本発明において小麦粉製品とは、小麦粉を含有する製品(通常は食品)であり、特に小麦粉を主成分として含有する食品であって、具体的には、パン、洋菓子、和菓子、麺類等の小麦粉を主成分として含有する食品である。
本発明の被覆酵素剤の上記食品への添加方法は特に限定されず、製造時にその他の原料とともに直接添加してもよく、また、油脂、小麦・米粉等の粉類、糖類などの低水分の原料に予め混合しておき製造時に混合してもよい。
小麦粉製品の一例としてパンを例示する。パンは例えば、小麦粉に乳成分、糖類、食塩、水、酵母等を配合し、一定時間捏ねた後に発酵させ、必要に応じて分割成型し、加熱(焼成、蒸す、茹でるおよび/又は揚げる)することにより、製造することができる。
本発明の被覆酵素剤はこれらの原料と共に直接添加することもできるが、原料中に予め混合させたものを用いて添加することもできる。原料中に予め混合する際は、油脂に混合しておくことが計量、分散性の面から好ましい。
小麦粉製品への本発明の被覆酵素剤の添加量は、小麦粉1kgに対して、グリセロ糖脂質分解活性として、通常1ユニット以上、好ましくは10ユニット以上、より好ましくは20ユニット以上であり、通常1000ユニット以下、好ましくは500ユニット以下、より好ましくは300ユニット以下である。被覆酵素剤の添加量が少ないと所望の改良剤としての効果が得られない可能性がある。
以下に、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
まず、以下の実施例および比較例で使用する酵素の分解活性を測定した。
PANAMORE Golden(登録商標、DSM社製)、リパーゼAY「アマノ」30G(天野エンザイム社製)について、トリグリセライド分解活性、グリセロ糖脂質分解活性を前述の測定方法I,IIによりそれぞれ測定し、トリグリセライド分解活性を100%としたときのグリセロ糖脂質分解活性の相対活性を算出した。結果を表1に示す。
尚、表1において、TGはトリグリセライド分解活性、DGはグリセロ糖脂質分解活性を示す。
Figure 0005978676
[実施例1]
転動流動型造粒機(マルチプレックスMP−01mini、Powrex社製)に、グリセロ糖脂質分解酵素(PANAMORE Golden(登録商標)、DSM社製)(粒子径50〜200μm程度の粉末状)250gを仕込み、80℃の温風を吹き込み流動させた。次に、水分散性被膜形成材として、5重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロース(SE−06、信越化学社製、以下「HPMC」という場合がある)水溶液500gを、底部に取り付けたノズルより、8g/分の速度で上方に噴霧し、被覆酵素剤を得た。水分散性被膜形成材の使用量は、固形分として酵素の10重量%となるようにした。
この被覆酵素剤の油脂分解度を評価した。
具体的には、油脂としてショートニング(花王社製、ニューエコナVE(L))を50℃に加熱し、液状とした。これに、被覆酵素剤を油脂に対してトリグリセライド分解活性として9ユニット/gとなるように加えて油脂組成物とし、攪拌しながら氷冷し、20℃で保存した。保存前(氷冷後)と20℃での保存4日後の油脂組成物の油脂分解度をそれぞれ以下の通り測定した。
油脂組成物0.5〜10gを三角フラスコに秤量し、50℃温浴中で溶解させた。速やかにヘキサン/イソプロパノール(1:1)溶液100mlを加えて振り、完全に油脂組成物を溶解させた。ここに1重量%フェノールフタレイン溶液を1滴滴下し、0.1mol/lの水酸化カリウム標準液で滴定し、溶液の変色が30秒間続いたときの中和点を終点とし、酸価を求めた。
酸価は、酵素による、油脂の加水分解反応により生じる遊離脂肪酸の指標となる。従って、酸価(基準油脂分析法2.3.1−1996)を測定することで、酵素による油脂の分解度を評価することができる。すなわち、酸価が高い方が、油脂分解度が高いといえる。
尚、酸価の計算には下記の式を用いた。
酸価(mg−KOH/g)=5.611×A×F/B
A:0.1mol/l水酸化カリウム標準液使用量(ml)
F:0.1mol/l水酸化カリウム標準液のファクター
B:油脂組成物採取量(g)
結果を表2に示す。
また、得られた被覆酵素剤の活性回収率を以下の式により算出した。結果を表3に示す。
活性回収率(%)=被覆酵素剤のトリグリセライド分解活性(U/g)÷(被覆前の酵素のトリグリセライド分解活性(U/g)÷1.1)×100
尚、被覆酵素剤のトリグリセライド分解活性は、前述の酵素の分解活性と同様にして測定した。
[実施例2]
水分散性被膜形成材として、5重量%のゼラチン(♯150、新田ゼラチン社製)水溶液を用い、60℃のヒーター付スターラーで攪拌しながら実施例1と同様の条件にて、被覆酵素剤を得た。
この被覆酵素剤を用いて、実施例1と同様にして油脂組成物を製造し、同様に油脂分解度(酸価)を測定した。結果を表2に示す。また、活性回収率を算出した結果を表3に示す。
[実施例3]
水分散性被膜形成材として、5重量%の大豆多糖類(ヘミロース、フロイント産業社製)水溶液を用いた以外は実施例1と同様の方法で被覆酵素剤を得た。
この被覆酵素剤を用いて、実施例1と同様にして油脂組成物を製造し、同様に油脂分解度(酸価)を測定した。結果を表2に示す。また、活性回収率を算出した結果を表3に示す。
[比較例1]
被覆酵素剤を用いず、グリセロ糖脂質分解酵素(PANAMORE Golden(登録商標)、DSM社製)をそのまま用いた以外は、実施例1と同様にして油脂組成物を製造し、同様に油脂分解度(酸価)を測定した。結果を表2に示す。
Figure 0005978676
表2より、本発明の被覆酵素剤は、油脂中で油脂を分解しにくく、安定な状態を保てることがわかった。
Figure 0005978676
表3より、被覆工程を経ても酵素活性は低下せず、安定的に維持されることがわかった。
[実施例4]
油脂としてショートニング(花王社製、ニューエコナVE(M))を50℃に加熱し、液状とした。これに、実施例1と同様にして製造した被覆酵素剤を油脂に対してトリグリセライド分解活性として9ユニット/gとなるように加えて油脂組成物とした。この油脂組成物に対し、0.5重量%の水を加え、攪拌しながら氷冷し、20℃で保存した。
保存前(氷冷後)と20℃での保存4日後の油脂組成物の油脂分解度(酸価)を実施例1と同様にして測定した。結果を表4に示す。
[実施例5]
実施例1と同様にして製造した被覆酵素剤に代えて、実施例2と同様にして製造した被覆酵素剤を用いた以外は、実施例4と同様にして油脂組成物を製造し、同様に油脂分解度(酸価)を測定した。結果を表4に示す。
[実施例6]
実施例1と同様にして製造した被覆酵素剤に代えて、実施例3と同様にして製造した被覆酵素剤を用いた以外は、実施例4と同様にして油脂組成物を製造し、同様に油脂分解度(酸価)を測定した。結果を表4に示す。
[比較例2]
被覆酵素剤を用いず、グリセロ糖脂質分解酵素(PANAMORE Golden(登録商標)、DSM社製)をそのまま用いた以外は、実施例4と同様にして油脂組成物を製造し、同様に油脂分解度(酸価)を測定した。結果を表4に示す。
Figure 0005978676
表4の結果より、少量の水を添加した系では、水分散性被膜形成材の種類により油脂分解活性に差があり、油脂中で安定に存在した後、多少の水の存在では油脂分解活性を高めたくない場合には、水分散性被膜形成材としてHPMCやゼラチンを用いることが好ましく、少量の水でも油脂分解活性を高めたい場合は、水分散性被膜形成材として大豆多糖類を用いることが好ましいことがわかった。
[実験例1:被膜溶解性の確認]
実施例1〜3と同様にして油脂組成物を製造し、それぞれの油脂組成物に、油脂に対して10重量%の水を添加し、40℃に加温しながら攪拌して被覆酵素剤の被膜を溶解させた。被覆酵素剤の被膜が完全に溶解したことを確認するため、この被膜溶解後の油脂組成物を新たなショートニングに0.5重量%となるように混合し、20℃で1日保存した後、実施例1と同様にして油脂分解度(酸価)を測定した。
また、比較例1と同様にして油脂組成物を製造し、これをショートニングに上記と同様の割合で混合し、20℃に1日保存した後、実施例1と同様にして油脂分解度(酸価)を測定した。
被覆酵素剤の被膜が完全に溶解していれば、水分散性被膜形成材をコーティングしていない酵素を添加した比較例1の油脂組成物の場合と同等の酸価の上昇が認められることとなり、相対値は100%に近づく。
表5に、水分散性被膜形成材をコーティングしていない酵素を添加した比較例1の油脂組成物をショートニングに混合した際の酸価の上昇速度に対する、被膜溶解酵素を含む油脂組成物を混合したショートニングの酸価の上昇速度の割合を百分率で示す。
Figure 0005978676
以上の結果から、水分散性被膜形成材により形成された被膜は、油脂に対して10重量%程度の水を添加することにより、容易に溶解して酵素は活性を取り戻すことが明らかとなり、食品に使用した際に酵素としての効果を有効に発揮することが確認された。

Claims (4)

  1. 油脂中に糖脂質分解酵素を分散させる方法であって、
    該糖脂質分解酵素を水分散性被膜形成材としてヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはゼラチンでコーティングした被覆酵素剤として
    油脂中に分散させることを特徴とする、油脂中における糖脂質分解酵素の分散方法。
  2. 糖脂質分解酵素が、グリセロ糖脂質分解活性を有する酵素である、請求項1に記載の油脂中における糖脂質分解酵素の分散方法。
  3. 油脂中に糖脂質分解酵素を分散させた油脂組成物であって、
    該糖脂質分解酵素が、水分散性被膜形成材としてヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはゼラチンでコーティングした被覆酵素剤である、油脂組成物。
  4. 糖脂質分解酵素を水分散性被膜形成材としてヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはゼラチンでコーティングした被覆酵素剤を分散させた油脂を用いることを特徴とする、小麦粉製品の製造方法。
JP2012060690A 2012-03-16 2012-03-16 油脂中における糖脂質分解酵素の分散方法、油脂組成物および小麦粉製品の製造方法 Active JP5978676B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012060690A JP5978676B2 (ja) 2012-03-16 2012-03-16 油脂中における糖脂質分解酵素の分散方法、油脂組成物および小麦粉製品の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012060690A JP5978676B2 (ja) 2012-03-16 2012-03-16 油脂中における糖脂質分解酵素の分散方法、油脂組成物および小麦粉製品の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2013192473A JP2013192473A (ja) 2013-09-30
JP5978676B2 true JP5978676B2 (ja) 2016-08-24

Family

ID=49392167

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012060690A Active JP5978676B2 (ja) 2012-03-16 2012-03-16 油脂中における糖脂質分解酵素の分散方法、油脂組成物および小麦粉製品の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5978676B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
TR201905094T4 (tr) * 2015-04-30 2019-05-21 Gea Mech Equipment Italia S P A Yoğurt veya bir başka fermente edilmiş süt-bazlı ürün yapmak için yöntem.

Family Cites Families (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS615782A (ja) * 1984-06-20 1986-01-11 Hitachi Ltd 固定化酵素の安定化法
JPH0386231A (ja) * 1989-08-30 1991-04-11 Snow Brand Milk Prod Co Ltd 被覆剤でコーティングされたゲル化カプセル体の製造方法
JPH1033170A (ja) * 1996-07-26 1998-02-10 Kao Corp 酵素含有造粒物及びその製造法
US6083538A (en) * 1997-07-22 2000-07-04 Dsm N.V. Bread improving composition
JP4152477B2 (ja) * 1998-04-20 2008-09-17 花王株式会社 酵素粒子
JP2004016181A (ja) * 2002-06-20 2004-01-22 Hitachi Kiden Kogyo Ltd 酵素剤
CN101589142B (zh) * 2007-01-30 2012-06-06 三菱化学食品株式会社 甘油糖脂脂肪酶

Also Published As

Publication number Publication date
JP2013192473A (ja) 2013-09-30

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP1553840B1 (en) Encapsulated functional bakery ingredients
JPH09302379A (ja) 天然カロチノイドを包含した多芯型構造のマイクロカプセル並びに錠剤、食品用及び医薬品用配合剤
JP5249884B2 (ja) 酵素含有油中水型乳化油脂組成物
CN102150857B (zh) 油脂组合物
Haghighat-Kharazi et al. Microencapsulation of α-amylase in beeswax and its application in gluten-free bread as an anti-staling agent
JP7319272B2 (ja) 粉末化された脂肪酸グリセリドを含む組成物
JP5978676B2 (ja) 油脂中における糖脂質分解酵素の分散方法、油脂組成物および小麦粉製品の製造方法
CN102524909B (zh) 含有赤藓糖醇脂肪酸酯的抑菌组合物及其制备和应用
JP6970517B2 (ja) 菓子用生地
JP2011067195A (ja) 新規なベーキングパウダー組成物及びそれを用いた加工品
JP2009514514A (ja) 乳化剤および安定剤を含むパン改良剤
JP2003250431A (ja) 焼成食品
WO2022078823A1 (en) Nutraceutical or pharmaceutical composition comprising a modified starch
JPS63279751A (ja) 離型油
JP4242475B2 (ja) ビタミンk1組成物およびその製造法
JP2018166429A (ja) 即席麺用品質改良剤
JP5921078B2 (ja) 油脂組成物および小麦粉製品
JP7289622B2 (ja) 油脂組成物及び糖分解酵素の活性低下抑制方法
JP2790838B2 (ja) 澱粉の老化防止剤並びにこれを含む澱粉質原料及び澱粉含有食品
JP6356439B2 (ja) 食品生地練込用油脂組成物
CA2672557A1 (en) Aqueous dough conditioning composition
JP2015229648A (ja) 耐酸性錠剤
JP6757168B2 (ja) L−アスコルビン酸製剤及びその製造方法
CN104041584A (zh) 一种卵磷脂酸奶
JPS63192720A (ja) 抗菌製剤

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20150130

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20151020

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20151021

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20151218

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160412

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20160607

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20160628

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20160711

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5978676

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R360 Written notification for declining of transfer of rights

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R360

R360 Written notification for declining of transfer of rights

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R360

R371 Transfer withdrawn

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R371

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250