JP6757168B2 - L−アスコルビン酸製剤及びその製造方法 - Google Patents
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一方、アルコルビン酸類は、その安全性や優れた還元性、入手の容易性等の理由から、酸化防止剤として、あるいはパン類の品質改良剤などとしても用いられている。
<1> 融点が100℃以上の長鎖脂肪酸の金属塩の少なくとも1種によりL−アスコルビン酸又はその塩が被覆されていることを特徴とするL−アスコルビン酸製剤である。
<2> 前記長鎖脂肪酸の金属塩が、ラウリン酸カルシウム、リシノール酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、及びステアリン酸マグネシウムからなる群から選択される1種以上である前記<1>に記載のL−アスコルビン酸製剤である。
<3> 前記L−アスコルビン酸又はその塩が顆粒状である前記<1>又は<2>に記載のL−アスコルビン酸製剤である。
<4> 粉末状又は顆粒状の融点が100℃以上の長鎖脂肪酸の金属塩の少なくとも1種と、粉末状又は顆粒状のL−アスコルビン酸又はその塩とを、前記長鎖脂肪酸の金属塩の融点未満の温度で接触させ、前記L−アスコルビン酸又はその塩を前記長鎖脂肪酸の金属塩で被覆する工程を含むことを特徴とするL−アスコルビン酸製剤の製造方法である。
<5> 撹拌しながら、前記長鎖脂肪酸の金属塩の少なくとも1種と、前記L−アスコルビン酸又はその塩とを20℃以上100℃未満の温度で接触させる前記<4>に記載の製造方法である。
<6> 前記長鎖脂肪酸の金属塩の少なくとも1種と、前記L−アスコルビン酸又はその塩との質量比が、1:100〜1:1の範囲である前記<4>又は<5>に記載の製造方法である。
<7> 前記長鎖脂肪酸の金属塩が、ラウリン酸カルシウム、リシノール酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、及びステアリン酸マグネシウムからなる群から選択される1種以上である前記<4>〜<6>のいずれかに記載の製造方法である。
本発明のL−アスコルビン酸製剤は、融点が100℃以上の長鎖脂肪酸の金属塩(以下、「長鎖脂肪酸の金属塩」と称することがある)の少なくとも1種によりL−アスコルビン酸又はその塩が被覆されている。
前記L−アスコルビン酸類としては、食品用酸化防止剤やベーカリー製品などの食品に使用できるもの(グレード)であれば、特に制限はなく、適宜選択することができる。
前記L−アスコルビン酸塩としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などが挙げられる。
前記L−アスコルビン酸類は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記L−アスコルビン酸類は、市販品を使用することができる。また、前記L−アスコルビン酸類として、これらを高含有する素材(例えばアセロラやレモンの果汁を濃縮・固形化したもの)を使用することができる。
本発明において、平均粒径とは、マイクロトラック粒径分布計を用いるマイクロトラック法により乾式で測定して得られた平均粒径をいう。マイクロトラック法は粒度の頻度からその分布を測定するが、粒径の頻度とは、粒径分布を解析し、計算した「検出頻度割合」である。
前記L−アスコルビン酸類は、融点が100℃以上の長鎖脂肪酸の金属塩の少なくとも1種により被覆されている。
前記長鎖脂肪酸の金属塩としては、融点が100℃以上の長鎖脂肪酸の金属塩であれば、特に制限はなく、適宜選択することができるが、食品等の水の存在下や加熱条件下において、より優れた徐放性の性能を示す点で、融点が120℃以上の長鎖脂肪酸の金属塩が好ましく、具体的にはラウリン酸カルシウム、リシノール酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、及びステアリン酸マグネシウムからなる群から選択される1種以上がさらに好ましく、ステアリン酸カルシウムが特に好ましい。
前記長鎖脂肪酸の金属塩は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記長鎖脂肪酸の金属塩は、市販品を使用することができる。
前記長鎖脂肪酸の金属塩の少なくとも1種と、前記L−アスコルビン酸類との質量比としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、通常1:100〜1:1であり、1:100〜1:2が好ましく、1:20〜1:2がより好ましい。前記質量比が、好ましい範囲内であると、食品等の水の存在下において、また加熱条件下において、より優れた徐放性の性能を示す点で、有利である。
前記その他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、澱粉、穀粉、セルロース等の賦形剤、その他の食品用酸化防止剤(例えばビタミンE、二酸化硫黄、コーヒー豆抽出物、クロロゲン酸、緑茶抽出物カテキン類、ローズマリー抽出物等)、アミラーゼ類(例えばαアミラーゼ、βアミラーゼ、グルコアミラーゼ等)、セルラーゼ・ヘミセルラーゼ、プロテアーゼ、グルコースオキシダーゼ、カタラーゼ、トランスグルタミナーゼ等の各種酵素類、乳化剤、セルロース類(カルボキシメチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース)、増粘多糖類(グアガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、タマリンドガム、グルコマンナン、アルギン酸塩、アルギン酸エステル、ペクチン又はこれらの部分分解物)などが挙げられる。また、未被覆のL−アスコルビン酸類を含んでいてもよい。
前記その他の成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記その他の成分は、市販品を使用することができる。
前記その他の成分の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
本発明のL−アスコルビン酸製剤の製造方法は、被覆工程を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
前記被覆工程は、粉末状又は顆粒状の融点が100℃以上の長鎖脂肪酸の金属塩の少なくとも1種と、粉末状又は顆粒状のL−アスコルビン酸類とを、前記長鎖脂肪酸の金属塩の融点未満の温度で接触させ、前記L−アスコルビン酸類を前記長鎖脂肪酸の金属塩で被覆する工程である。
前記融点が100℃以上の長鎖脂肪酸の金属塩は、上記した本発明のL−アスコルビン酸製剤の融点が100℃以上の長鎖脂肪酸の金属塩の項目に記載したものと同様である。
前記長鎖脂肪酸の金属塩の形状は、粉末状又は顆粒状である。
前記粉末状又は顆粒状の長鎖脂肪酸の金属塩の大きさとしては、特に制限はなく、適宜選択することができる。
前記L−アスコルビン酸類は、上記した本発明のL−アスコルビン酸製剤のL−アスコルビン酸類の項目に記載したものと同様である。
前記L−アスコルビン酸類の形状は、粉末状又は顆粒状である。
前記L−アスコルビン酸類の形態としては、固形であれば特に制限はなく、適宜選択することができるが、長鎖脂肪酸の金属塩による被覆性や食品等の水の存在下や加熱条件下において、より優れた徐放性の性能を示す点で、微粉状乃至顆粒状であることが好ましく、主として顆粒状であるのがより好ましい。具体的には、平均粒径が約30〜800μmの範囲であることが好ましく、平均粒径が約100〜500μmの範囲であることがより好ましい。
前記粉末状又は顆粒状の長鎖脂肪酸の金属塩の少なくとも1種と、粉末状又は顆粒状のL−アスコルビン酸類とを接触させる温度(品温)としては、前記長鎖脂肪酸の金属塩の融点未満の温度であれば、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば20℃以上100℃未満の温度が挙げられるが、40〜90℃が好ましく、50〜80℃がより好ましい。
前記粉末状又は顆粒状の長鎖脂肪酸の金属塩の少なくとも1種と、前記粉末状又は顆粒状のL−アスコルビン酸又はその塩とを接触させる方法としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、両者を撹拌し、接触させる方法などが挙げられる。
前記被覆工程により、前記L−アスコルビン酸類は、前記長鎖脂肪酸の金属塩の少なくとも1種により被覆される。
なお、前記被覆は、本発明のL−アスコルビン酸製剤の項目に記載したように、前記L−アスコルビン酸類の表面の少なくとも一部が被覆されていればよく、全体が被覆されていてもよい。また、前記被覆には、前記L−アスコルビン酸類の表面に前記長鎖脂肪酸の金属塩の少なくとも1種が付着している態様も含まれる。
前記装置の条件としては、特に制限はなく、適宜選択することができる。
前記その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、その他の成分の添加・配合工程などが挙げられる。
前記その他の成分の添加・配合工程は、前記被覆工程の前であってもよいし、後であってもよいが、前記L−アスコルビン酸製剤の製造や、目的や用途に応じたL−アスコルビン酸製剤の設計の容易性のため、前記被覆工程の後に行うことが好ましい。
コーティング装置として温度調節機能付ユニバーサルミキサーを用い、これに、ステアリン酸カルシウム(融点:147℃〜149℃)と、L−アスコルビン酸粉末(平均粒径:約40μm)とを質量比が1:10となるように混合したものを投入し、アジテーター回転数 120rpm、チョッパー回転数 1,800rpmの条件下にて、品温が68℃に達するまで混合し、ステアリン酸カルシウムで被覆されたL−アスコルビン酸を得た。
実施例1において、L−アスコルビン酸粉末(平均粒径:約40μm)に代えて、L−アスコルビン酸顆粒(平均粒径:約300μm)を用いた点以外は、実施例1と同様にして、ステアリン酸カルシウムで被覆されたL−アスコルビン酸を得た。
実施例1において、L−アスコルビン酸粉末に代えて、L−アスコルビン酸ナトリウム顆粒(平均粒径:約350μm)を用いた点以外は、実施例1と同様にして、ステアリン酸カルシウムで被覆されたL−アスコルビン酸ナトリウムを得た。
実施例1において用いた未被覆のL−アスコルビン酸粉末を比較例1とした。
実施例3において用いた未被覆のL−アスコルビン酸ナトリウム粉末を比較例2とした。
実施例2において、ステアリン酸カルシウムに代えて、親油性ショ糖脂肪酸エステル(融点:60℃)を用いた点以外は、実施例2と同様にして、親油性ショ糖脂肪酸エステルで被覆されたL−アスコルビン酸を得た。
実施例2において、ステアリン酸カルシウムに代えて、親水性ショ糖脂肪酸エステル(融点:60℃)を用いた点以外は、実施例2と同様にして、親水性ショ糖脂肪酸エステルで被覆されたL−アスコルビン酸を得た。
実施例2において、ステアリン酸カルシウムに代えて、パーム硬化油(融点:60℃)を用い、L−アスコルビン酸とパーム硬化油との質量比が2:8となるように混合した点以外は、実施例2と同様にして、パーム硬化油で被覆されたL−アスコルビン酸を得た。
実施例1〜3及び比較例1〜5で製造したL−アスコルビン酸類をパン類の品質改良剤として用い、中種法によりプルマン型食パンを製造した。配合及び工程は、以下のとおりである。
<配合>
中種 本捏
・ 小麦粉(強力粉) 70.0質量部 30.0質量部
・ 生イースト 3.0質量部 −
・ 品質改良剤 表1参照 −
・ 砂糖 − 5.0質量部
・ 食塩 − 2.0質量部
・ 脱脂粉乳 − 2.0質量部
・ 油脂(ショートニング) − 5.0質量部
・ 水 40.0質量部 28.0質量部
中種 本捏
・ ミキシング L2分M2分 L1分M3分↓M3分H2分
・ 捏上温度 24℃ 28℃
・ 発酵温度 28℃ 28℃
・ 発酵(フロア)時間 4時間 15分
・ 分割重量 − 220g×6
・ ベンチ時間 − 17分
・ 成型 − ロール成型
・ ホイロ条件 − 35℃、相対湿度85%
・ ホイロ時間 − 50分
・ 焼成条件 − 210℃、40分
なお、上記工程において、Lは低速、Mは中速、Hは高速を表し、↓は油脂の添加を表す。
前記食パンの製造工程及び得られた食パンについて、以下の評価基準により、5名により評価した。その平均点を表2に示す。
[評価基準]
3点:生地の伸展性が良好である。
2点:生地にややしまりがあり、伸展性がやや劣る。
1点:生地にしまりがあり、伸展性が劣る。
[評価基準]
3点 : タテ目で全体的に伸びがあり、目が細かい。
2点 : タテ目だがやや目が粗い。
1点 : タテ目ではなく、目が粗い。
[評価基準]
3点 : ソフトでしっとりとした食感である。
2点 : やや弾きがあるか、やや硬い食感である。
1点 : 弾きがあり硬い食感である。
したがって、本発明のL−アスコルビン酸製剤は、食品等の水の存在下及び加熱条件下において徐放性の性能を示すことが確認された。
実施例2において、ステアリン酸カルシウムと、L−アスコルビン酸顆粒との質量比が1:4となるように混合した点以外は、実施例2と同様にして、ステアリン酸カルシウムで被覆されたL−アスコルビン酸を得た。
実施例2において、ステアリン酸カルシウムと、L−アスコルビン酸顆粒との質量比が1:20となるように混合した点以外は、実施例2と同様にして、ステアリン酸カルシウムで被覆されたL−アスコルビン酸を得た。
実施例4(試験例2−1)又は実施例5(試験例2−2)のステアリン酸カルシウムで被覆されたL−アスコルビン酸を小麦粉に対して50ppmで添加した点以外は、試験例1と同様にして、中種法によりプルマン型食パンを製造した。
次いで、試験例1と同じ評価基準により、製パン性、パンの内相、及び食感を評価した。その結果を下記の表3に示す。
Claims (2)
- ステアリン酸カルシウムによりL−アスコルビン酸又はその塩が被覆されており、
前記ステアリン酸カルシウムと、前記L−アスコルビン酸又はその塩との質量比が、1:20〜1:2の範囲であり、前記L−アスコルビン酸又はその塩が平均粒径100〜500μmの範囲の顆粒状であることを特徴とするL−アスコルビン酸製剤。 - 粉末状又は顆粒状のステアリン酸カルシウムと、平均粒径100〜500μmの範囲の顆粒状のL−アスコルビン酸又はその塩とを、質量比が、1:20〜1:2の範囲で、撹拌しながら40〜90℃で接触させ、前記L−アスコルビン酸又はその塩を前記ステアリン酸カルシウムで被覆する工程を含むことを特徴とするL−アスコルビン酸製剤の製造方法。
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