JP6801971B2 - ベーキングパウダー組成物の製造方法 - Google Patents
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前記ベーキングパウダー組成物は、使用する食品に応じて、適宜選択して用いられている。例えば、高温で短時間の加熱による加熱調理には速効性のベーキングパウダー組成物を用いることができ、中〜長時間の加熱調理には中間性〜遅効性のベーキングパウダー組成物を用いることができる。
しかしながら、これらの提案では、焼ミョウバンと比較するとその機能は十分とは言えず、更なる改良が求められている。
<1> 炭酸水素ナトリウムと、酸性剤とを含み、
前記炭酸水素ナトリウム及び前記酸性剤の少なくともいずれかが、長鎖脂肪酸の金属塩の少なくとも1種により被覆されていることを特徴とするベーキングパウダー組成物である。
<2> 前記長鎖脂肪酸の金属塩の融点が100℃以上である前記<1>に記載のベーキングパウダー組成物である。
<3> 前記長鎖脂肪酸の金属塩が、ラウリン酸カルシウム、リシノール酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、及びステアリン酸マグネシウムからなる群から選択される1種以上である前記<1>又は<2>に記載のベーキングパウダー組成物である。
<4> 前記酸性剤が、酒石酸、フマル酸、酒石酸水素カリウム、フマル酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素カルシウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、グルコノデルタラクトン、L−アスコルビン酸又はその塩及びグルコン酸からなる群から選択される1種以上である前記<1>〜<3>のいずれかに記載のベーキングパウダー組成物である。
<5> 粉末状又は顆粒状の長鎖脂肪酸の金属塩の少なくとも1種と、粉末状又は顆粒状の炭酸水素ナトリウム及び酸性剤の少なくともいずれかとを、前記長鎖脂肪酸の金属塩の融点未満の温度で接触させ、前記炭酸水素ナトリウム及び酸性剤の少なくともいずれかを前記長鎖脂肪酸の金属塩で被覆する工程を含むことを特徴とするベーキングパウダー組成物の製造方法である。
<6> 撹拌しながら、前記長鎖脂肪酸の金属塩の少なくとも1種と、前記炭酸水素ナトリウム及び酸性剤の少なくともいずれかとを温度50℃〜90℃で接触させる前記<5>に記載の製造方法である。
<7> 前記長鎖脂肪酸の金属塩が、ラウリン酸カルシウム、リシノール酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、及びステアリン酸マグネシウムからなる群から選択される1種以上である前記<5>又は<6>に記載の製造方法である。
<8> 前記酸性剤が、酒石酸、フマル酸、酒石酸水素カリウム、フマル酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素カルシウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、グルコノデルタラクトン、L−アスコルビン酸又はその塩及びグルコン酸からなる群から選択される1種以上である前記<5>〜<7>のいずれかに記載の製造方法である。
本発明のベーキングパウダー組成物は、炭酸水素ナトリウムと、酸性剤とを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
前記炭酸水素ナトリウムとしては、ベーキングパウダー組成物に使用できるもの(グレード)であれば、特に制限はなく、適宜選択することができる。
前記炭酸水素ナトリウムは、市販品を使用することができる。
前記炭酸水素ナトリウムの前記ベーキングパウダー組成物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記酸性剤としては、特に制限はなく、通常ベーキングパウダーの成分や食品添加物として使用され得るものであれば適宜選択して用いることができ、例えば、酒石酸、酒石酸水素カリウム、フマル酸、フマル酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、ピロリン酸二水素二ナトリウム、アジピン酸、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸カルシウム、L−アスコルビン酸マグネシウム、グルコン酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、グルコノデルタラクトン、乳酸、ピロリン酸二水素カルシウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、リンゴ酸、リンゴ酸ナトリウム、リン酸三カルシウム、リン酸水素二カルシウム、リン酸水素二ナトリウム、ポリリン酸カリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、メタリン酸ナトリウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記酸性剤は、市販品を使用することができる。
前記酸性剤の前記ベーキングパウダー組成物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記炭酸水素ナトリウム及び前記酸性剤の少なくともいずれかは、長鎖脂肪酸の金属塩の少なくとも1種により被覆されている。
前記長鎖脂肪酸の金属塩としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、焼ミョウバンの挙動により近い挙動を示し、中間性〜遅効性のベーキングパウダー組成物として優れた性能を示す点で、融点が100℃以上のものが好ましく、ラウリン酸カルシウム、リシノール酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、及びステアリン酸マグネシウムからなる群から選択される1種以上がより好ましく、ステアリン酸カルシウムが特に好ましい。
前記長鎖脂肪酸の金属塩は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記長鎖脂肪酸の金属塩は、市販品を使用することができる。
前記炭酸水素ナトリウム及び酸性剤の少なくともいずれかと、前記長鎖脂肪酸の金属塩の少なくとも1種との質量比としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、通常100:1〜1:1であり、100:1〜2:1が好ましく、20:1〜2:1がより好ましい。前記質量比が、好ましい範囲内であると、焼ミョウバンの挙動により近い挙動を示し、中間性〜遅効性のベーキングパウダー組成物として優れた性能を示す点で、有利である。
前記その他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、澱粉、穀粉、セルロース等の賦形剤などが挙げられる。前記その他の成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記その他の成分は、市販品を使用することができる。
前記その他の成分の前記ベーキングパウダー組成物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記ベーキングパウダー組成物は、前記炭酸水素ナトリウムと、前記酸性剤と、必要に応じて前記その他の成分とを同一の包材に含む態様であってもよいし、前記各成分を別々の包材に入れ、使用時に混合する態様であってもよい。
前記食品としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、ドーナツ類等の揚げ菓子類、蒸しパン類、マフィン、パウンドケーキ、スポンジケーキ等のケーキ類、シュー菓子類、クッキー類、今川焼き、どら焼き等の和菓子類、天ぷら等の揚げ物類、お好み焼き、たこ焼きなどが挙げられる。これらの中でも、スポンジケーキ等の焼成時間が長い食品、天ぷら、ホットケーキ等のバッター系の食品に好適に用いることができる。
前記ベーキングパウダー組成物の使用量としては、特に制限はなく、食品に応じて適宜選択することができる。
本発明のベーキングパウダー組成物の製造方法は、被覆工程を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
前記被覆工程は、粉末状又は顆粒状の長鎖脂肪酸の金属塩の少なくとも1種と、粉末状又は顆粒状の炭酸水素ナトリウム及び酸性剤の少なくともいずれかとを、前記長鎖脂肪酸の金属塩の融点未満の温度で接触させ、前記炭酸水素ナトリウム及び酸性剤の少なくともいずれかを前記長鎖脂肪酸の金属塩で被覆する工程である。
前記長鎖脂肪酸の金属塩は、上記した本発明のベーキングパウダー組成物の長鎖脂肪酸の金属塩の項目に記載したものと同様である。
前記長鎖脂肪酸の金属塩の形状は、粉末状又は顆粒状である。
前記粉末状又は顆粒状の長鎖脂肪酸の金属塩の大きさとしては、特に制限はなく、適宜選択することができる。
前記炭酸水素ナトリウムは、上記した本発明のベーキングパウダー組成物の炭酸水素ナトリウムの項目に記載したものと同様である。
前記炭酸水素ナトリウムの形状は、粉末状又は顆粒状である。
前記粉末状又は顆粒状の炭酸水素ナトリウムの大きさとしては、特に制限はなく、適宜選択することができる。
前記酸性剤は、上記した本発明のベーキングパウダー組成物の酸性剤の項目に記載したものと同様である。
前記酸性剤の形状は、粉末状又は顆粒状である。
前記粉末状又は顆粒状の酸性剤の大きさとしては、特に制限はなく、適宜選択することができる。
前記粉末状又は顆粒状の長鎖脂肪酸の金属塩の少なくとも1種と、粉末状又は顆粒状の炭酸水素ナトリウム及び酸性剤の少なくともいずれかとを接触させる温度(品温)としては、前記長鎖脂肪酸の金属塩の融点未満の温度であれば、特に制限はなく、適宜選択することができるが、50℃〜90℃が好ましく、50℃〜80℃がより好ましい。
前記長鎖脂肪酸の金属塩の少なくとも1種と、前記炭酸水素ナトリウム及び酸性剤の少なくともいずれかとを接触させる方法としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、両者を撹拌し、接触させる方法などが挙げられる。
前記被覆工程により、前記炭酸水素ナトリウム及び酸性剤の少なくともいずれかは、前記長鎖脂肪酸の金属塩の少なくとも1種により被覆される。
なお、前記被覆は、本発明のベーキングパウダー組成物の項目に記載したように、前記炭酸水素ナトリウム及び酸性剤の少なくともいずれかの表面の少なくとも一部が被覆されていればよく、全体が被覆されていてもよい。また、前記被覆には、前記炭酸水素ナトリウム及び酸性剤の少なくともいずれかの表面に前記長鎖脂肪酸の金属塩の少なくとも1種が付着している態様も含まれる。
前記装置の条件としては、特に制限はなく、適宜選択することができる。
前記その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、固結物除去工程などが挙げられる。
前記除去の方法としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、前記混合物をふるいに通して固結物を除去する方法などが挙げられる。
コーティング装置として温度調節機能付ユニバーサルミキサーを用い、これに、フマル酸 7,200gと、ステアリン酸カルシウム(融点:177℃〜179℃) 800gとを混合したものを投入し、アジテーター回転数 400rpm、チョッパー回転数 1,800rpmの条件下にて、ジャケット温度65℃(品温59℃)で50分間混合した。
次いで、混合物をふるい(20メッシュ径)に通して固結物を除去し、ステアリン酸カルシウムで被覆されたフマル酸を得た。
被覆されていないフマル酸を比較調製例1のフマル酸とした。
調製例1において、フマル酸 7,200gと、ステアリン酸カルシウム 800gとを用いていた点を、フマル酸 7,600gと、ステアリン酸カルシウム 400gとに変えた以外は、調製例1と同様にして、ステアリン酸カルシウムで被覆されたフマル酸を得た。
調製例1において、フマル酸 7,200gと、ステアリン酸カルシウム 800gとを用いていた点を、フマル酸 5,600gと、ステアリン酸カルシウム 2,400gとに変えた以外は、調製例1と同様にして、ステアリン酸カルシウムで被覆されたフマル酸を得た。
調製例1において、フマル酸 7,200gと、ステアリン酸カルシウム 800gとを用いていた点を、フマル酸 7,200gと、ステアリン酸マグネシウム(融点:約155℃) 800gとに変えた以外は、調製例1と同様にして、ステアリン酸マグネシウムで被覆されたフマル酸を得た。
調製例1において、フマル酸 7,200gと、ステアリン酸カルシウム 800gとを用いていた点を、フマル酸 7,200gと、ステアリン酸 800gとに変えた以外は、調製例1と同様にして、ステアリン酸で被覆されたフマル酸を得た。
コーティング装置として流動層装置(MP−01CT、株式会社パウレック製)を用い、これに、フマル酸 2,700gと、ステアリン酸カルシウム 300gとを混合したものを投入し、60℃の条件下で20分間混合した。
次いで、混合物をふるい(20メッシュ径)に通して固結物を除去し、ステアリン酸カルシウムで被覆されたフマル酸を得た。
前記調製例1〜5、又は比較調製例1〜2で調製した酸性剤について、以下のようにして、ガス発生量の測定及び評価を行った。
炭酸水素ナトリウム 1gと、前記調製例1〜5、又は比較調製例1〜2で調製した酸性剤をフマル酸量で換算して0.69gとを混合し、加温された純水100mLに投入した。前記投入後4分間のガス発生量を測定した。前記純水の温度は、30℃、50℃、又は85℃とし、それぞれの温度帯でガス発生量を測定した。
なお、対照として、中間性〜遅効性の酸性剤である焼ミョウバンについて、炭酸水素ナトリウム 1gと、焼ミョウバン1.03gとを混合した以外は同様にして、ガス発生量を測定した。
結果を表2に示す。
焼ミョウバンは、中間性〜遅効性の酸性剤として知られていることから、焼ミョウバンのガス発生量に近い挙動を示しているほど、ガス発生量が抑制されており、遅効性であると判断することができる。そこで、測定したガス発生量を焼ミョウバンのガス発生量と比較した結果を表3に示す。
前記調製例1〜5、又は比較調製例1〜2で調製した酸性剤を用いてベーキングパウダーを製造し、前記ベーキングパウダーを用いてホットケーキを製造し、評価を行った。
炭酸水素ナトリウムと、前記調製例1〜5、又は比較調製例1〜2で調製した酸性剤とを質量比で、1:0.69となるように混合し、ベーキングパウダー組成物とした。なお、前記調製例1〜5、又は比較調製例1〜2で調製した酸性剤の量は、フマル酸量で換算した値である。
また、対照として、炭酸水素ナトリウムと、焼ミョウバンとを質量比で、1:1.03となるように混合し、ベーキングパウダー組成物とした。
以下の配合及び工程で、ホットケーキのタネ生地を製造した。
−配合−
・ ミックス粉 ・・・ 48.0g
・ ベーキングパウダー組成物 ・・・ 2.0g
・ 全卵 ・・・ 17.0g
・ 水 ・・・ 33.0g
なお、ミックス粉の配合は、以下のとおりである。
[ミックス粉]
・ 小麦粉(中力粉) ・・・ 100.0質量部
・ 砂糖 ・・・ 30.0質量部
・ ブドウ糖 ・・・ 10.0質量部
・ 脱脂粉乳 ・・・ 5.0質量部
・ 油脂 ・・・ 10.0質量部
−工程−
・ ミキシング時間 ・・・ 30回/20秒→30回/10秒→20回/10秒
合計80回/40秒
・ 試験区1:タネ生地を調製後、すぐに焼成する試験区(寝かし0分)
・ 試験区2:タネ生地を調製後、35℃で60分寝かしてから焼成する試験区(寝かし60分)
−体積維持率−
前記試験区1及び2のそれぞれについて、製造されたホットケーキの体積を測定し、試験区1のホットケーキの体積を100%として、試験区2のホットケーキの体積維持率を算出した。結果を表4に示す。
前記試験区2で製造されたホットケーキの食感について、10名の評価者により、以下の評価基準で評価した。各評価者による評価の平均値を表4に示す。
4点 : ソフトで乾いた食感
3点 : ソフトでやや乾いた食感
2点 : ややソフトでややくちゃつく食感
1点 : 硬くてくちゃつく食感
Claims (1)
- 粉末状又は顆粒状のステアリン酸カルシウム及びステアリン酸マグネシウムの少なくともいずれかと、粉末状又は顆粒状の炭酸水素ナトリウム及び酸性剤の少なくともいずれかとを、撹拌しながら、温度50℃〜90℃で接触させ、前記炭酸水素ナトリウム及び酸性剤の少なくともいずれかを前記ステアリン酸カルシウム及びステアリン酸マグネシウムの少なくともいずれかで被覆する工程を含み、
前記酸性剤が、酒石酸、フマル酸、酒石酸水素カリウム、フマル酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素カルシウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、グルコノデルタラクトン、L−アスコルビン酸又はその塩及びグルコン酸からなる群から選択される1種以上であり、
前記炭酸水素ナトリウム及び酸性剤の少なくともいずれかと、前記ステアリン酸カルシウム及びステアリン酸マグネシウムの少なくともいずれかとの質量比が、20:1〜2:1の範囲で接触させることを特徴とするベーキングパウダー組成物の製造方法。
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