JP5978371B2 - コアシェル粒子及び導体形成用組成物 - Google Patents
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Description
これらの製造方法によって製造された粒子では、上述したチタン酸バリウムなどの金属酸化物が凝集する虞がある。金属酸化物粒子が凝集すると、金属粒子の表面全体に亘って均質に金属酸化物粒子を被覆させることが難しくなる。
(1)コアとなる金属粒子とシェル源の金属酸化物粒子とが分散したスラリー状の噴霧液を用意すること;
(2)噴霧液を噴霧し、該噴霧された液滴を加熱して噴霧乾燥を行うこと;および
(3)噴霧乾燥後に上記コアシェル粒子を捕集すること;
を包含している。ここで、本発明は、上記噴霧乾燥にあたり、該噴霧液中の金属粒子の表面電荷と金属酸化物粒子の表面電荷とが互いに異符号となるような液性の状態で噴霧液が提供されることを特徴とする。
本発明のコアシェル粒子の製造方法では、上記噴霧乾燥にあたり、噴霧液中の金属粒子の表面電荷と金属酸化物粒子の表面電荷とが互いに異符号となるような液性の状態で噴霧液が提供されることを特徴とする。本発明によると、噴霧乾燥中での金属粒子と金属酸化物粒子との表面電荷が互いに異符号になっているので、噴霧液中で金属粒子と金属酸化物粒子とがお互いに引き寄せ合う。この結果、噴霧乾燥を行う前の噴霧液の液中で、金属粒子の表面に好適に金属酸化物の付着を生じさせることができる。このため、かかる噴霧液を噴霧乾燥すると、金属粒子の表面全体に亘って金属酸化物粒子が均質に被覆された好適なコアシェル粒子を得ることができる。
かかる態様によれば、噴霧乾燥にあたり、該噴霧液中の金属粒子の表面電荷と金属酸化物粒子の表面電荷とが互いに異符号となる好ましい液性の状態の噴霧液を容易に提供することができる。
金属粒子と金属酸化物粒子は、噴霧されて液滴となった噴霧液中で分散する。この際、各々の粒子が十分に分散するまでにはある程度の時間を要する。上記態様によれば、各々の粒子が液滴中で十分に分散してから液滴が乾燥されるので、好適なコアシェル粒子をより効率よく作製することができる。
かかる態様によれば、金属粒子の表面に金属酸化物粒子が緻密に配置されやすくなるので、より好適なコアシェル粒子を作製することができる。
なお、本明細書中において「平均粒子径」は、電子顕微鏡による観察(例えば走査型電子顕微鏡の画像処理)を行うことによって測定、算出した平均粒子径をいう。
かかる態様によれば、ニッケル粒子の表面全体に亘ってチタン酸バリウム粒子が均質に被覆されたNi/BTコアシェル粒子を得ることができる。
また、上記噴霧液を用意するにあたり、金属粒子100質量部に対して、上記金属酸化物粒子が1質量部〜200質量部の割合で含まれているとよく、より好ましくは1質量部〜100質量部、さらに好ましくは1質量部〜50質量部(例えば3質量部〜30質量部、特には3質量部〜25質量部)の割合で含まれているとよい。
なお、噴霧液は、上述のように各材料から調整することによって用意してもよいし、所望の条件で予め調製されたものを購入するなどの方法で用意してもよい。
なお、本明細書中における「粒子の表面電荷」とは、粒子自体の表面に帯電している電気のみを指すものではなく、粒子と分散媒との界面付近に形成された電気二重層のすべり面の電荷(その電位を「ゼータ電位」として表すことができる。)を含む概念である。
これに対して、ここで開示されるコアシェル粒子の製造方法では、図3に示すように、ニッケル粒子Nの表面電荷Neがプラスになり、チタン酸バリウム粒子BTの表面電荷BTeがマイナスになるように噴霧液の液性を調整する。これによって、噴霧液中でニッケル粒子Nとチタン酸バリウム粒子BTとがお互いに引き寄せ合い、ニッケル粒子N表面の露出した箇所にチタン酸バリウム粒子BTが付着する。この場合、噴霧乾燥を行う前にニッケル粒子Nの表面がチタン酸バリウム粒子BTに覆われているので、噴霧乾燥することによってニッケル粒子Nの表面をチタン酸バリウム粒子BTが均質に被覆した好適なコアシェル粒子を製造することができる(図4参照)。
例えば、金属粒子としてニッケル粒子(以下、Ni粒子)、金属酸化物粒子としてチタン酸バリウム微粒子(以下、BT微粒子)を用いた場合、噴霧液のpHはアルカリ性(例えばpH8〜pH12、好ましくはpH9〜pH11、より好ましくはpH10程度)に調整するとよい。これによって、Ni粒子のゼータ電位がプラスになり、BT微粒子のゼータ電位がマイナスのまま維持することができる。
なお、かかるpH調整の方法は、特に制限されず、例えば、共アルカリ性の溶液(例えば、アンモニア水など)を分散媒に加えるとよい。
これらの中でも、コア粒子となる金属粒子としてニッケル粒子を用い、該ニッケル粒子の表面の少なくとも一部を被覆するシェルとしてチタン酸バリウム粒子を用いてなるNi/BTコアシェル粒子は、積層セラミックコンデンサの内部電極用ペーストに好ましく用いることができる。
また、かかるコアシェル粒子の粒径は、100nm〜1000nm、好ましくは、200nm〜800nm、典型的には400nm程度が好ましい。
また、後に実施例にて詳しく説明するが、かかるNi/BTコアシェル粒子では、Ni粒子の表面がBT微粒子によって均質に被覆されているので、熱機械分析(TMA)に基づく熱収縮率の挙動がBT微粒子(チタン酸バリウム粒子)と実質的に同じであるという特徴を有している。
上記有機ビヒクルは、有機バインダ及び有機溶剤などから構成されている。ここで、上記有機ビヒクルの構成成分として使用され得る有機バインダは、焼成時の脱バインダ処理(典型的には酸化雰囲気中での250℃〜500℃の加熱処理)によって蒸発除去(脱脂)することができるものを好ましく用いることができる。かかる観点から有機バインダには、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系高分子や、ポリブチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート等のアクリル系樹脂や、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルブラチール等を好適に用いることができる。
一方、上記有機ビヒクルの他の構成成分として使用され得る有機溶剤には、例えば、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のエステル系溶剤や、ブチルカルビトール等のエーテル系溶剤や、エチレングリコールおよびジエチレングリコール誘導体、トルエン、キシレン、ミネラルスピリット、ターピネオール等の高沸点有機溶媒等を用いることができる。
また、上記導体ペーストには、必要に応じて界面活性剤、消泡剤、可塑剤、増粘剤、酸化防止剤、分散剤、重合禁止剤などの各種添加剤や、種々の酸化ガラス粉末を副成分として適宜添加することができる。これらの添加物は、従来の導体ペーストを調整する際に用いるものであればよく、詳細な説明は省略する。
図5に示すように、かかる積層セラミックコンデンサ200は、上記導体形成用組成物(導体ペースト)を用いてなる内部電極層220および誘電体層(セラミック層)210を交互に積層、焼成してなる電子部品本体250と、該電子部品本体250の外側に設けられた外部電極230とから構成されている。このとき、誘電体層210は、上述したコアシェル粒子の金属酸化物粒子で用いた金属酸化物(例えばチタン酸バリウムやチタン酸ストロンチウムなど)を好ましく用いることが好ましい。
かかる積層セラミックコンデンサ200を構築するプロセスの概略を以下に述べる。先ず、上述の導体ペーストを、誘電体材料からなるグリーンシート上に塗布(印刷、転写を含む)する。
かかる導体ペースト塗布グリーンシートを複数枚作製した後、これらを積層、圧着することによって未焼成の積層チップを作製する。次いで、該積層チップを乾燥させた後に、所定の加熱条件(最高焼成温度が概ね1000℃〜1400℃、好ましくは1000℃〜1300℃、より好ましくは1000℃〜1200℃)で所定時間(最高焼成温度を維持する時間としては、例えば、10分〜2時間程度)加熱(焼成)する。これによって、内部電極層220と誘電体層210とが交互に積層した積層セラミックコンデンサ200の電子部品本体250が作成される。そして、この電子部品本体250の所望の箇所に外部電極形成用のペースト(上記導体ペーストと同じものでもよい)を塗布し、該外部電極形成用のペーストを焼成することによって外部電極230を形成する。このようにして、本発明の積層セラミックコンデンサ200を構築することができる。なお、上述した積層セラミックコンデンサ200の構築プロセスは、特に本発明を特徴付けるものではないため、詳細な説明を省略している。
輸送管22は、図6に示すように、内部空洞を有した筒状の部品であり、長手方向における一端が上記超音波噴霧器12に接続されている。特に限定するものではないが、輸送管22の長さtとしては、0.8m〜3m程度のものが適当であり、例えば1.2m〜2、0m程度のものを好ましく用いることができる。また、輸送管22の内径rとしては、5mm〜50mm程度のものが適当であり、例えば10mm〜20mm程度のものを好ましく用いることができる。
ヒータ24は、輸送管22の周方向を覆うように配置されている。このため、ヒータ24が発熱することによって、輸送管22の内部空洞が加熱される。また、図6に示す噴霧乾燥装置100では、ヒータ24は複数のヒータ部24a〜24eから構成されており、ヒータ部24a〜24eは輸送管22の長手方向に沿って連続して配置されている。複数のヒータ部24a〜24eのうち、第1ヒータ部24aは噴霧乾燥炉20(輸送管22)の入口側に配置されており、以下、噴霧乾燥炉20の出口側に向かって第2ヒータ部24b、第3ヒータ部24c、第4ヒータ部24d、第5ヒータ部24eの順に連続して配置されている。上記複数のヒータ部24a〜24eには電気加熱装置などを用いることができ、それぞれのヒータ部24a〜24eが独立して制御できるものであることが好ましい。これによって、噴霧乾燥炉20内部(輸送管22の内部空洞)の炉内温度を調整することができる。
また、より好ましい態様では、噴霧乾燥を行う際に、上記ヒータ部24a〜24eのそれぞれを独立して制御し、噴霧乾燥炉20内部の温度を、噴霧乾燥炉20の上流側からから下流側に向かって段階的に昇温させるとよい。この場合、噴霧液滴L2は、上述のように設定された噴霧乾燥炉20の内部を、低温側から高温側に向けて輸送されながら加熱される。これによって、各粒子が噴霧液滴L2中で十分に分散してから液滴を乾燥することができる。
平均粒子径が約100nmのNi粒子を、分散液全体に対して47質量%の割合になるように酢酸ブチル分散媒に分散さてなるNi粒子分散液を用意した。そして、この47質量%Ni粒子分散液に、酢酸ブチル分散媒をさらに加え、0.3質量%Ni粒子分散液を調製した。一方、上記平均粒子径が約20nmのチタン酸バリウム微粒子(以下、BT微粒子と称する。)を、分散液全体に対してBT微粒子が50質量%の割合になるように酢酸ブチル分散媒に分散させた50質量%BT微粒子分散液を用意した。そして、この50質量%BT微粒子分散液に酢酸ブチル分散媒をさらに加え、0.3質量%BT微粒子分散液を調製した。
次に、Ni粒子100質量部に対してBT微粒子が10質量部の割合で含まれるように、0.3質量%Ni粒子分散液と0.3質量%BT微粒子分散液とを混ぜ合わせ、噴霧液を調製した。
加えて、噴霧液中のNi粒子の表面電荷とBT微粒子の表面電荷とが互いに異符号となるように噴霧液のpHを調整した。ここでは、エタノールに溶かしたアンモニア水を噴霧液に添加し、調製時にpH6だった噴霧液のpHを約10に調整した。
次に、上述した図6に記載の噴霧乾燥装置100を用いて、上記噴霧液を噴霧乾燥した。ここでは、噴霧部10の超音波噴霧器12を用いて、周波数1.7MHzの超音波によって噴霧液を霧化した。そして、ガス供給ユニット14から超音波噴霧器12にキャリアーガス(N2ガス、流速0.5l/min)を供給して、噴霧液滴を噴霧乾燥炉20内に噴霧した。そして、キャリアーガスとともに噴霧された噴霧液滴を、筒形状の噴霧乾燥炉20の上流側(即ち第1ヒータ部24a側)から下流側(即ち第5ヒータ部24e側)に向かって流動させた。この際、上流側から下流側に向かって、100℃から500℃までの範囲で段階的に昇温するように、噴霧乾燥炉20の各ヒータ24a〜24eの加熱温度を予め設定した。具体的には、噴霧液が噴霧部10から噴霧される前に、噴霧乾燥炉20の第1ヒータ部24aを100℃、第2ヒータ部24bを200℃、第3ヒータ部24cを300℃、第4ヒータ部24dを400℃、第5ヒータ部24eを500℃に設定しておいた。このように、段階的に昇温する環境下で噴霧液滴を熱処理することによって噴霧液滴中の分散媒を蒸発させ、コア粒子となるNi粒子と、Ni粒子の表面を被覆するシェルとなるBT微粒子とからなるNi/BTコアシェル粒子を生成した。
最後に、噴霧乾燥炉20内で生成したNi/BTコアシェル粒子をフィルタ30で捕集した。以下、上述した製造プロセスで得られたNi/BTコアシェル粒子をサンプル1とする。
ここでは、Ni粒子100質量部に対してBT微粒子が25質量部の割合で含まれるように、0.3質量%Ni粒子分散液と0.3質量%BT微粒子分散液とを混ぜ合わせ、噴霧液を調製した。そして、調製した噴霧液をpH10になるように調整した後に、上記サンプル1と同様のプロセスで噴霧乾燥し、Ni/BTコアシェル粒子を生成した。以下、この製造プロセスで得られたNi/BTコアシェル粒子をサンプル2とする。
ここでは、上記サンプル1と同様の製造プロセスで噴霧液を調製し、調製した噴霧液を噴霧乾燥した。ただし、ここでは、噴霧液のpHを調整せず、噴霧液をpH6のまま噴霧乾燥した。以下、かかる製造プロセスで得られたNi/BTコアシェル粒子をサンプル3とする。
ここでは、Ni粒子100質量部に対してBT微粒子が25質量部の割合で含まれるように噴霧液を調製した。なお、ここでも噴霧液のpH調整を行っておらず、pH6の噴霧液を噴霧乾燥した。そして、その他の条件を上記サンプル1の製造プロセスと同じ条件に設定して、Ni/BTコアシェル粒子を生成した。以下、かかる製造プロセスで得られたNi/BTコアシェル粒子をサンプル4とする。
ここでは、Ni粒子100質量部に対してBT微粒子が40質量部の割合で含まれるように噴霧液を調製した。なお、ここでも噴霧液のpH調整を行っておらず、pH6の噴霧液を噴霧乾燥した。そして、その他の条件を上記サンプル1の製造プロセスと同様の条件に設定して、Ni/BTコアシェル粒子を生成した。以下、かかる製造プロセスで得られたNi/BTコアシェル粒子をサンプル5とする。
ここでは、Ni粒子100質量部に対してBT微粒子が50質量部の割合で含まれるように噴霧液を調製した。なお、ここでも噴霧液のpH調整を行っておらず、pH6の噴霧液を噴霧乾燥した。そして、その他の条件を上記サンプル1の製造プロセスと同様の条件に設定して、Ni/BTコアシェル粒子を生成した。以下、かかる製造プロセスで得られたNi/BTコアシェル粒子をサンプル6とする。
ここでは、Ni粒子100質量部に対してBT微粒子が100質量部の割合で含まれるように、噴霧液を調製した。なお、ここでも噴霧液のpH調整を行っておらず、pH6の噴霧液を噴霧乾燥した。そして、その他の条件を上記サンプル1の製造プロセスと同様の条件に設定して、Ni/BTコアシェル粒子を生成した。以下、かかる製造プロセスで得られたNi/BTコアシェル粒子をサンプル7とする。
ここでは、0.3質量%Ni粒子分散液を用意し、上述したNi/BTコアシェル粒子の製造プロセスと同様の条件で噴霧乾燥し、Ni粒子を得た。なお、ここでもpH調整を行っておらず、pH6のNi粒子分散液を噴霧乾燥した。以下、かかる製造プロセスで得られたNi粒子をサンプルAとする。
ここでは、0.3質量%BT微粒子分散液を用意し、サンプル1と同様の条件で噴霧乾燥し、BT微粒子を得た。なお、ここでもpH調整を行っておらず、pH6のBT微粒子分散液を噴霧乾燥した。以下、かかる製造プロセスで得られたBT微粒子をサンプルBとする。
上述の製造プロセスを経て得られたサンプル1〜7およびサンプルA、Bを走査型電子顕微鏡(FE−SEM、日立製作所、S3100H、S5000)で観察した。観察結果のSEM写真を図7〜15に示す。図7はサンプル1、図8はサンプル2、図9はサンプル3、図10はサンプル4、図11はサンプル5、図12はサンプル6、図13はサンプル7、図14はサンプルA、図15はサンプルBのSEM写真である。
図14及び図15を観察すると、SEM写真において、相対的に粒径が大きな粒子がNi粒子であり、粒径が小さな粒子がBT微粒子であることが確認できる。また、特に限定するものではないが、観察したNi/BTコアシェル粒子の形状が球形に近く、Ni粒子の表面にBT微粒子が緻密に配置されているほど、Ni粒子の表面にBT微粒子が好適に被覆されたNi/BTコアシェル粒子となる傾向にある。
さらに、図8に示すように、サンプル2も好適なNi/BTコアシェル粒子が作製されていた。このサンプル2とサンプル1とを比較すると、サンプル2の方がより好適なNi/BTコアシェル粒子であった。このことから、噴霧液の液性をアルカリ性に調整した上で、Ni粒子に対するBT微粒子の割合を多くすると、さらに好適なNi/BTコアシェル粒子を作製できると解される。
次に、上述の製造プロセスを経て得られたサンプル2とサンプル4に対して、XRDを行い、各々のサンプルのXRDにおけるピークを調べた。図16はサンプル2及びサンプル4のXRD結果を示している。また、図16にはサンプルA(Ni粒子)、サンプルB(BT微粒子)のXRD結果も併せて記載している。なお、発明者による事前の検討によって、好適なコアシェル粒子のXRD結果では、44.4°と52°に現れるNi粒子特有のピークが見られず、BT微粒子特有のピークのみが見られることが分かっている。これはNi粒子に達したX線がBT微粒子との境界で屈折して弱められるためと考えられる。
さらに、サンプル2およびサンプル4の前駆物質である噴霧液のゼータ電位を測定した。ここでは、ゼータ電位測定装置(Malvern Instruments Ltd, Zetasizer, Nano series, ZEN2600)を用いてサンプル2、4の表面電荷を測定し、レーザードップラー電気泳動法を用いて各々のサンプルのゼータ電位を測定した。レーザードップラー電気泳動法とは、測定対象の粒子の分散液に電場をかけた際の、粒子の移動度、電場の強さ、分散液の粘度、誘電率を測定し、測定結果からゼータ電位を測定する方法である。各サンプル2、4の上記測定の結果を図17、図18に示す。図17は、サンプル4の噴霧液中におけるNi粒子及びBT微粒子のゼータ電位の測定結果を示している。一方、図18は、サンプル2の噴霧液におけるNi粒子及びBT微粒子のゼータ電位の測定結果を示している。なお、図17及び図18において、横軸はゼータ電位を示しており、縦軸は1秒当たりのキロカウント単位での光子数を表す強度を示している。
次に、サンプル1を用いて作製したペースト1の熱収縮挙動を測定した。当該ペースト1には、粉体としてサンプル1が62.5質量%含まれており、溶質の有機ビヒクルが37.5%(エチルセルロース1.5%、ターピネオール36%)含まれている。また、このペースト1は、上述の各材料を秤量し、対向衝突分散機を用いて混練することによって作製されている。
また、ペースト1との比較対象として、粉体に上記サンプルA(Ni粒子)を用いて作製したペースト2と、Ni粒子とBT微粒子とを混ぜ合わせた粉体(個別の粉体を混ぜ合わせたものであり、Ni/BTコアシェル粒子ではない。)を用いて作製したペースト3を上記TMA収縮挙動測定に提供した。また、上記TMA収縮挙動測定には、チタン酸バリウムからなる誘電体も提供した。
また、サンプルA(Ni粒子)を含むペースト2(P2)は、250℃付近から収縮し始め、600℃付近で急激に収縮した。ペースト2の厚み方向の長さは、600℃付近で約11%収縮した。
また、Ni粒子とBT微粒子とを混ぜ合わせたペースト3(P3)は、250℃付近で一度収縮(約2%)し、その後800℃付近に至るまでほとんど収縮しなかった。そして、750℃を超えると急激に収縮し、1250℃に達した際には約10%収縮した。
12 超音波噴霧器
14 ガス供給ユニット
20 噴霧乾燥炉
22 輸送管
24 ヒータ
24a〜24e 各ヒータ部
30 フィルタ
100 噴霧乾燥装置
200 積層セラミックコンデンサ
210 誘電体
220 内部電極層
230 外部電極
250 電子部品本体
BT チタン酸バリウム粒子
BTe チタン酸バリウム粒子の表面電荷
L1 噴霧液
L2 噴霧液滴
N ニッケル粒子
Ne ニッケル粒子の表面電荷
Claims (5)
- コア粒子となるニッケル粒子と、該ニッケル粒子の表面を粒子状のチタン酸バリウムで直接被覆したシェルとから構成されるSEM観察に基づく粒径が100nm〜1000nmであるコアシェル粒子と、分散媒体とを含む、ペースト状の導体形成用組成物であって、
前記コアシェル粒子のX線回折測定(XRD)において、44.4°および52°のニッケル粒子特有のピークが認められないことを特徴とする、ペースト状導体形成用組成物。 - コア粒子となるニッケル粒子と、該ニッケル粒子の表面を粒子状のチタン酸バリウムで直接被覆したシェルとから構成されるSEM観察に基づく粒径が100nm〜1000nmであるコアシェル粒子と、分散媒体とを含む、ペースト状の導体形成用組成物であって、以下の条件:
前記導体形成用組成物から直径が4mmであり、厚みが1.5〜2.0mmである円柱形の測定対象を形成し、95%N2と5%H2からなるガス雰囲気下に該測定対象を配置し、10℃/minで昇温した際の該測定対象の厚み方向の長さの変化を測定する;
で行う熱機械分析(TMA)による収縮挙動測定において、
前記測定対象は0℃から250℃付近に至るまで1%の熱収縮率を上回る熱収縮が認められないことを特徴とする、ペースト状導体形成用組成物。 - 前記の条件で行う熱機械分析(TMA)による収縮挙動測定において、
前記測定対象は800℃を超えた温度域において1%の熱収縮率を上回る熱収縮が認められることを特徴とする、請求項2に記載のペースト状導体形成用組成物。 - 前記の条件で行う熱機械分析(TMA)による収縮挙動測定において、
前記測定対象は0℃から1250℃に達した際にも熱収縮率が約6%であることを特徴とする、請求項2又は3に記載のペースト状導体形成用組成物。 - 請求項1〜4の何れか一項に記載のペースト状導体形成用組成物の焼成体からなる内部電極層を備える積層セラミックコンデンサ。
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