JP5976615B2 - 車両の車体構造および車体の製造方法 - Google Patents
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Description
これらの文献では、車体の前室と乗員室とを仕切るトーボードパネルとしてのダッシュパネルの幅方向両側に、一対のAピラーを接合する。トーボードパネルと一対のAピラーとを接合することにより、乗員室を画成できる。
そして、このようにトーボードパネルの左右に一対のAピラーを接合するようにすることで、トーボードパネルを有する車体のセンタストラクチャの側面に、Aピラーを有する車体のサイドストラクチャを重ねて接合でき、車体の製造が容易になる。
ところで、現在の衝突安全基準ではテスト対象とされていないが、自動車などの車両では、高速走行する対向車と衝突する可能性がある。このような衝突では強い衝撃により、車両の前輪が車体から脱落し、脱落した前輪が、トーボードパネルなどに押し込まれる可能性がある。
脱落した前輪がトーボードパネルに対して前から押し込まれることにより、トーボードパネルが変形し、前へ突出している接合部に対して引き剥がす力が作用する可能性がある。仮に外フランジ部が内フランジ部から剥がされると、トーボードパネルとAピラーとの間が開くことになる。
よって、たとえば、仕切りパネルに対して脱落した車輪などが前方向または後方向から押し込まれ、仮に仕切りパネルが変形するとしても、その仕切りパネルの変形により接合部に作用する力はせん断力として作用する。仕切りパネルの変形により接合部に対して、引き剥がし力が作用し難くなる。内フランジ部と外フランジ部との接合が剥離し難くなる。
また、接合部は、外向きに幅方向へ折り曲げられるため、脱落した車輪による荷重の入力方向に沿う前後方向へ延在していない。よって、接合部に対して脱落した車輪が当たるとしても、その入力により接合部自体が撓んで開いて破断する可能性は低い。
また、接合部は、たとえば車輪の前後方向に位置する部分において予め折り曲げられているので、衝突の際に接合部についての車輪が当たる部分が部分的に折れ曲がることが起きない。衝突の際に接合部が部分的に折れ曲がると、折れ曲がる部分において破断が起き易い。仮に接合部を複数の接合点でスポット溶接している場合には、1の接合点が破断すると、その周囲の接合点が連鎖的に破断し難い。本実施形態では、このような連鎖的な破断を抑制できる。
また、内フランジ部と外フランジ部とを接合して成る接合部は、外向きに折り曲げられるため、サイドパネルの前側に位置する。よって、接合部に対して脱落した車輪が当たるとしても、その入力により接合部に作用する荷重は、サイドパネルで受けることができる。その結果として、接合部の変形を抑制できる。
これらの効果により、本発明の車両の車体構造では、車両の衝突安全性能を高めることができる。
図1の自動車の車体1は、エンジン等が配置される前室2、乗員が乗車する乗員室3、荷物等を入れる後室4による3ボックス構造を有する。
一対のフロアーメンバの前端には、一対のフロントサイドメンバ14が接合される。一対のフロントサイドメンバ14は、前室2において前後に延在する。一対のフロントサイドメンバ14の間には、図示外のフロントクロスメンバが固定される。フロントクロスメンバには車軸が配置される。車軸は、車体1の幅方向に延在し、その両端に一対の前輪が取り付けられる。一対の前輪は、トーボードパネル13の前側に位置する。
複数のフロアクロスメンバ12についての車体1の幅方向両端には、一対のサイドシル15が接合される。サイドシル15とフロントサイドメンバ14およびフロアーメンバとの間には、トルクボックス16が設けられる。
Aピラー17の上下方向中央部には、フロントアッパメンバ18が接合される。フロントアッパメンバ18は、Aピラー17から前方向へ延在する。Aピラー17とフロントアッパメンバ18の下には、リインフォースメント用の補剛部材19が配置される。リインフォースメント用の補剛部材19は、Aピラー17およびフロントアッパメンバ18に接合される。Aピラー17の前端は、一対のフロントサイドメンバ14の前端とともに、ラジエタフレーム20に接合される。ラジエタフレーム20の前面には、フロントバンパビーム21が固定される。
Aピラー17には、図示外のフロントドアが開閉可能に取り付けられる。フロントドア内には、フロントドアビーム、フロントドアクロスメンバが設けられる。Bピラー22には、図示外のリアドアが開閉可能に取り付けられる。リアドア内には、リアドアビーム、リアドアクロスメンバが設けられる。
フロアパネル11の後端には、リアバルクヘッドパネル26が立設される。リアバルクヘッドパネル26により、乗員室3と後室4とが仕切られる。リアバルクヘッドパネル26についての車体1の幅方向両端縁に、一対のCピラー23が接合される。
一対のサイドシル15の後端には、一対のリアサイドメンバが接合される。一対のリアサイドメンバは、リアバルクヘッドパネル26から後方へ突出する。一対のリアサイドメンバの後端に、リアバンパービームが固定される。
なお、センタストラクチャ6またはサイドストラクチャ7における複数の骨格部材は、スポット溶接、またはレーザ溶接などによる点付け溶接により接合してよい。トーボードパネル13とAピラー17との接合も同様である。
図2には、センタストラクチャ6を構成する部材として、トーボードパネル13、ダッシュパネル27、が図示されている。ダッシュパネル27は、トーボードパネル13の上縁に接合される。これにより、乗員室3の前壁が形成される。
センタストラクチャ6は、車体1の幅方向の中央部を形成する。
図3には、サイドストラクチャ7を構成する部材として、Aピラー17、サイドシル15、フロントアッパメンバ18、リインフォースメント用の補剛部材19、が図示されている。サイドシル15の前端に、Aピラー17が立設して接合される。Aピラー17の中央部には、フロントアッパメンバ18が接合される。フロントアッパメンバ18とAピラー17との間に、リインフォースメント用の補剛部材19が接合される。
サイドストラクチャ7は、センタストラクチャ6の幅方向の側面に合わせることで、車体1の側面部を形成する。
図4には、センタストラクチャ6のトーボードパネル13の断面と、サイドストラクチャ7のAピラー17の断面と、が図示されている。
図4のAピラー17は、内側サイドパネル33、外側サイドパネル34、を有する。図4のAピラー17は、内側サイドパネル33と外側サイドパネル34とを重ねた断面構造を有する。
図4のAピラー17では、重ねられた第1外フランジ部35および第2外フランジ部36により、Aピラー17の外フランジ部32が形成される。
なお、スポット溶接などで内フランジ部31と外フランジ部32とを接合する場合、スポット溶接による複数の接合点は、一定の間隔以上毎に離散的に形成される。
これにより、センタストラクチャ6とサイドストラクチャ7とが接合され、図1の車体1が製造される。
図5において、トーボードパネル13とAピラー17との接合部37は、リインフォースメント用の補剛部材19よりも下側の部分において、車体1の幅方向外向きに折り曲げられている。前輪の後方に位置する部分において、接合部37は、車体1の幅方向外向きに折り曲げられている。
このようにリインフォースメント用の補剛部材19よりも下側の部分の範囲において接合部37を折り曲げることにより、リインフォースメント用の補剛部材19とAピラー17との接合状態に影響を与えることがない。リインフォースメント用の補剛部材19によるフロントアッパメンバ18の補剛性能を劣化させることなく、脱落した前輪が当たる可能性が高い接合部37を、外向きに折り曲げることができる。
しかも、リインフォースメント用の補剛部材19よりも下側の部分の範囲において接合部37を折り曲げることにより、脱落した前輪が押し込まれて当たる可能性が高い、前輪の後方に位置する部分において、接合部37を横向きにすることができる。
このように、少なくとも前輪43の回転中心についての後ろ側の部分において、接合部37を横向きにすることにより、脱落した前輪43が強い衝撃で当たり易い部分において、接合部37の破断を効果的に抑えることができる。
図6は、車体1の衝突形態の一例の説明図である。
図6には、図1の車体1を有する第1自動車41とともに、第2自動車42が図示されている。図6において第1自動車41の外形は点線で示されている。
第2自動車42は、たとえば停車中の第1自動車41に対して、たとえば相対時速90キロメートルで衝突する。そして、第2自動車42は、第1自動車41の一対のフロントサイドメンバ14より外側の側部に衝突する。このような衝突では、第2自動車42により、第1自動車41の前輪43が車軸から脱落し、脱落した前輪43がトーボードパネル13または接合部37に押し込まれる、可能性がある。
図7には、脱落した前輪43、トーボードパネル13、Aピラー17、およびこれらの接合部37が図示されている。
図1の車体1では、接合部37は、外向きに折り曲げられている。接合部37におけるトーボードパネル13の内フランジ部31と、Aピラー17の外フランジ部32とは、Aピラー17の前側に重なる。
接合部37に対して脱落した前輪43が押し込まれたとしても、図中に点線で示すように、接合部37の全体が後方へ向けて変形する。しかも、接合部37の後側にAピラー17が位置するため、接合部37の変形が抑えられる。接合部37において、内フランジ部31と外フランジ部32との接合が破断し難い。
その結果、乗員室3は、密閉された箱形状に維持され易い。
図1の車体1では、接合部37は、外向きに折り曲げられている。接合部37におけるトーボードパネル13の内フランジ部31と、Aピラー17の外フランジ部32とは、Aピラー17の前側に重なる。
トーボードパネル13に対して脱落した前輪43が押し込まれたとしても、その入力荷重の一部をAピラー17で受けることができる。しかも、図中に点線で示すように接合部37の内側のトーボードパネル13が後側へ変形したとしても、その変形により接合部37に作用する力は、外フランジ部32に対して内フランジ部31を幅方向へスライドさせる力として作用する。接合部37において、外フランジ部32と内フランジ部31との接合が破断し難い。
また、スポット溶接などにより外フランジ部32と内フランジ部31とを接合した場合、接合部37の強度は、外フランジ部32と内フランジ部31との間を開く方向より、外フランジ部32の接合面と内フランジ部31の接合面とに沿ってスライドする方向の方が高い。
その結果、乗員室3は、密閉された箱形状に維持され易い。
図8には、脱落した前輪43、トーボードパネル13、Aピラー17、およびこれらの接合部37が図示されている。
比較例の車体1では、トーボードパネル13の内フランジ部31と、Aピラー17の外フランジ部32との接合部37は、前に向かって延びている。センタストラクチャ6とサイドストラクチャ7とを接合しただけの場合、接合部37は、前に向かって延びる。
比較例の車体1では、接合部37は、前に向かって延びている。接合部37におけるトーボードパネル13の内フランジ部31と、Aピラー17の外フランジ部32とは、幅方向において重なる。前に向かって延びる接合部37に対して脱落した前輪43が押し込まれた場合、図中に点線で示すように、接合部37において、内フランジ部31と外フランジ部32との接合が破断する可能がある。または、接合部37自体が破断する可能性がある。内フランジ部31と外フランジ部32との接合が破断して開いた場合、乗員室3は、密閉された箱形状に維持されない。
比較例の車体1では、接合部37は、前に向かって延びている。接合部37の内側のトーボードパネル13に対して脱落した前輪43が押し込まれた場合、その入力荷重の殆どすべてはトーボードパネル13に作用する。Aピラー17には殆ど作用しない。しかも、図中に点線で示すように接合部37の内側のトーボードパネル13が後側へ変形した場合、その変形により接合部37に作用する力は、内フランジ部31を外フランジ部32から引き剥がす方向の力として作用する。スポット溶接などでは、引き剥がす方向の力に弱く、せん断方向の力に強いので、接合部37において、外フランジ部32と内フランジ部31との接合が破断する可能性がある。内フランジ部31と外フランジ部32との接合が破断して開いた場合、乗員室3は、密閉された箱形状に維持されない。
よって、たとえば、トーボードパネル13に対して脱落した車輪などが前方向または後方向から押し込まれ、仮に図7(B)のようにトーボードパネル13が変形するとしても、そのトーボードパネル13の変形により接合部37に作用する力はせん断力として作用する。図8(B)のように、トーボードパネル13の変形により接合部37に対して、引き剥がし力が作用し難くなる。内フランジ部31と外フランジ部32との接合が剥離し難くなる。
また、接合部37は、外向きに幅方向へ折り曲げられるため、脱落した前輪43による荷重の入力方向に沿う前後方向へ延在していない。よって、その入力により接合部37自体が撓んで開いて破断する可能性が殆ど無い。これに対して、接合部37が、脱落した前輪43による荷重の入力方向に沿って前後方向へ延在する場合には、図8(A)のようにその入力により接合部37自体が撓んでパンタグラフのように開いて破断する可能性がある。
また、接合部37は、たとえば前輪43の後方に位置する部分において予め全体的に折り曲げられているので、衝突の際に接合部37についての前輪43が当たる部分が部分的に折れ曲がることが起きない。衝突の際に接合部37が部分的に折れ曲がると、折れ曲がる部分において破断が起き易い。そして、接合部37を複数の接合点でスポット溶接している場合に、1の接合点が破断すると、その周囲の接合点が連鎖的に破断し難い。本実施形態では、このような連鎖的な破断を抑制できる。
また、内フランジ部31と外フランジ部32とを接合して成る接合部37は、外向きに折り曲げられるため、Aピラー17の前側に位置する。よって、接合部37に対して脱落した前輪43が当たるとしても、その入力により接合部37に作用する荷重は、Aピラー17で受けることができる。その結果として、接合部37が大きく変形しないようにできる。
これらの効果により、本発明の車両の車体構造では、車両の衝突安全性能を高めることができる。
また、本実施形態では、トーボードパネル13を有するセンタストラクチャ6とAピラー17を有するサイドストラクチャ7とを接合する場合、トーボードパネル13の内フランジ部31およびAピラー17の外フランジ部32とが共に前方向へ突出した状態で、接合する。そして、その後に接合部37を外側へ折り曲げる。
よって、センタストラクチャ6とサイドストラクチャ7とを接合するまでの車体1の製造工程には、既存の車体製造ラインをそのまま利用できる。製造工程の変更を最小限にできる。製造コストの上昇を抑えることができる。センタストラクチャ6とサイドストラクチャ7とを容易に接合できる。
よって、スポット溶接または点付け溶接を用いる既存の車体製造ラインを用いて、本実施形態の内フランジ部31と外フランジ部32とを接合できる。
しかも、接合部37は、接合後に車体1の幅方向において外向きに折り曲げられる。このため、図7に示すように接合部37に対して内フランジ部31と外フランジ部32との間を開こうとする力が作用し難い。
これに対して、図8に示す場合には、内フランジ部31と外フランジ部32との間を開こうとする力が接合部37に作用し、1つの接合点が破断することにより、スポット溶接または点付け溶接による複数の接合点がジッパのように次々と連続的に破断する可能性がある。
本実施形態では、接合部37が外向きに折り曲げられているため、スポット溶接または点付け溶接による接合部37に対して、内フランジ部31と外フランジ部32との間を開こうとする力が作用し難いため、このような連鎖的な破断が生じ難い。
この他にもたとえば、センタストラクチャ6のリアバルクヘッドパネル26と、サイドストラクチャ7のCピラー23との接合部に対して、本発明を適用してよい。該接合部を外側に折り曲げることにより、車体1の後方からの衝突の際に、リアバルクヘッドパネル26とCピラー23との接合部が破断し難くなる。
この他にもたとえば、1ボックス構造の自動車、2ボックス構造の自動車、トラック、バス、電車、航空機、などの車両において、本発明を適用してよい。特に、車体1のセンタストラクチャ6の幅方向両側に一対のサイドストラクチャ7を接合することにより製造される車両においては、本発明を好適に適用できる。
Claims (7)
- 車両の車輪を軸支可能な車体において幅方向に延在して前記車体の前室または後室と乗員室とを仕切る仕切りパネルと、
前記車体の側部において前記乗員室の前角または後角となる位置で前記仕切りパネルと接合されるサイドパネルと、
を有し、
前記仕切りパネルは、前記幅方向の端部に形成される内フランジ部を有し、
前記サイドパネルは、外フランジ部を有し、
前記仕切りパネルの前記内フランジ部と前記サイドパネルの前記外フランジ部とを接合して成る接合部は、前記サイドパネルの前に重なるように前記幅方向において外向きに折り曲げられている、
車両の車体構造。 - 前記サイドパネルは、前記乗員室の前角または後角に配置されるピラーを構成する部材である、
請求項1記載の車両の車体構造。 - 前記接合部は、前記車体に軸支される車輪の前後方向に位置する部分において、外向きに折り曲げられる、
請求項1または2記載の車両の車体構造。 - 前記接合部は、少なくとも車輸の回転中心についての前後方向の部分において、外向きに折り曲げられる、
請求項1または2記載の車両の車体構造。 - 前記仕切りパネルを有し、前記車体の幅方向の中央部を形成するセンタストラクチャと、
前記サイドパネルを有し、前記センタストラクチャの前記幅方向の側面に合わせることで、前記車体の側面部を形成するサイドストラクチャと、
を有し、
前記内フランジ部は、前記センタストラクチャにおいて、前記仕切りパネルの端部から前後方向へ突出し、
前記外フランジ部は、前記サイドストラクチャの縁部から前後方向へ突出し、
前記センタストラクチャの前記内フランジ部と前記サイドストラクチャの前記外フランジ部とを接合して成る接合部は、前記車体の幅方向において外向きに折り曲げられている、
請求項1から4のいずれか一項記載の車両の車体構造。 - 前記内フランジ部と前記外フランジ部との前記接合部は、点状の溶接部である、
請求項1から5のいずれか一項記載の車両の車体構造。 - 車両の車輸を軸支可能な車体の製造方法であって、
前記車体の前室または後室と乗員室とを仕切る仕切りパネルを有するセンタストラクチャと、前記仕切りパネルと接合されることにより前記乗員室を画成するサイドパネルを有するサイドストラクチャとを接合するために、
前記仕切りパネルの幅方向の端部において前後方向へ突出するように形成される内フランジ部と、前記サイドパネルにおいて前記乗員室の前角または後角に対応する部位に形成される外フランジ部と、を接合する工程と、
前記内フランジ部と前記外フランジ部とを接合して形成されて、前後方向へ突出する接合部を、前記車体の幅方向において外向きに、前記サイドパネルの前に重なるまで折り曲げる工程と、
を有する車体の製造方法。
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