JP6407390B2 - 車両の車体構造及び車体の製造方法 - Google Patents
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これらの文献では、車体の前室と乗員室とを仕切るトーボードパネルとしてのダッシュパネルの幅方向両側に、一対のAピラーを接合する。トーボードパネルと一対のAピラーとを接合することにより、乗員室を画成することができる。
トーボードパネルの左右に一対のAピラーを接合することにより、トーボードパネルを有する車体のセンタストラクチャの側面にAピラーを有する車体のサイドストラクチャを重ねて接合することができ、車体の製造が容易となる。
ところで、現在の衝突安全基準ではテスト対象とされていないが、例えば自動車等の車両では高速走行する対向車と衝突する可能性がある。このような衝突では強い衝撃により車両の前輪が車体から脱落し、脱落した前輪がトーボードパネル及び乗車空間等に対して押し込まれる可能性がある。
脱落した前輪がトーボードパネル及び乗車空間等に対して前方から押し込まれることにより、トーボードパネルが変形し、前方へ突出している内フランジ部と外フランジ部との接合部に対して引き剥がす力が作用する可能性がある。
仮に外フランジ部が内フランジ部から引き剥がされると、トーボードパネルとAピラーとの接合状態が解除され、間隙が生じることになる。
よって、本発明が解決しようとする課題は、従来よりも更に良好な衝突安全性能を有する車両の車体構造及び車体の製造方法を提供することである。
図1に示す自動車の車体1は、エンジン等が配置される前室2、乗員が乗車する乗員室3、及び、荷物等を積載する後室4を有する。つまり、自動車の車体1は、3ボックス構造を有する。
一対のフロアメンバの前端には、一対のフロントサイドメンバ14が接合される。一対のフロントサイドメンバ14は、前室2において前後方向に延在する。前室2において、一対のフロントサイドメンバ14の間には、左右方向に延在するフロントクロスメンバ(図示せず)が架け渡されるようにして固定される。フロントクロスメンバには、左右方向に延在する車軸(図示せず)が取付けられる。車軸は、両端に一対の前輪(図示せず)が装着される。一対の前輪は、トーボードパネル13の前側に配置される。また、複数のフロアクロスメンバ12の各左右両端部には、一対のサイドシル15が接合される。
トーボードパネル13の左右両端部、並びに、一対のサイドシル15及び後述の一対のAピラー17の前方下端部から、これらの部材の前方下側にかけてトルクボックス16が取付けられる。
Aピラー17における上下方向の略中央部には、フロントアッパメンバ18が接合される。フロントアッパメンバ18はAピラー17から前方向へ延在する。Aピラー17及びフロントアッパメンバ18の下方において、リインフォースメント用の補剛部材19が、Aピラー17及びフロントアッパメンバ18に接合される。Aピラー17の前端は、一対のフロントサイドメンバ14の前端と共に、ラジエータフレーム20に接合される。ラジエータフレーム20の全面には、フロントバンパビーム21が固定される。
Aピラー17には、フロントドア(図示せず)が開閉可能に取付けられる。フロントドア内には、フロントドアビーム及びフロントドアクロスメンバ等が設けられる。Bピラー22には、リアドア(図示せず)が開閉可能に取付けられる。リアドア内には、リアドアビーム及びリアドアクロスメンバ等が設けられる。
なお、車両のドアの開閉形態がフロントドア及びリアドアにおいて逆方向に回動する形態である場合、つまりいわゆる観音開きである場合、リアドアはCピラー23に取付けられることになる。
一対のサイドシル15の後端には一対のリアサイドメンバ(図示せず)が接合される。一対のリアサイドメンバは、リアバルクヘッドパネル26から後方へ突出する。一対のリアサイドメンバの後端部に、リアバンパビーム(図示せず)が固定される。
なお、センタストラクチャ6又はサイドストラクチャ7における複数の骨格部材は、スポット溶接又はレーザ溶接等による点付け溶接により接合することができる。例えば、トーボードパネル13とAピラー17との接合は、スポット溶接又はレーザ溶接等により達成される。
図2には、センタストラクチャ6を構成する部材として、トーボードパネル13及びダッシュパネル27が示されている。ダッシュパネル27は、トーボードパネル13の上縁に接合される。トーボードパネル13及びダッシュパネル27の接合体は、図1に示した車体1の前室2と乗員室3とを仕切る壁部材となる。なお、トーボードパネル13は、本発明における仕切りパネルの一例である。
センタストラクチャ6は、車体1の幅方向の略中央部に配置される。
サイドシル15の前端に、略上下方向に立設するAピラー17が接合される。Aピラー17の高さ方向の略中央部には、フロントアッパメンバ18が接合される。フロントアッパメンバ18とAピラー17との間に、リインフォースメント用の補剛部材19が接合される。
サイドストラクチャ7は、センタストラクチャ6の左右両端縁に沿って立設することにより、車体1の側面部を形成する。
図4のAピラー17は、内側サイドパネル33及び外側サイドパネル34を有する。Aピラー17は、図示しない後方において内側サイドパネル33と外側サイドパネル34とが接合されることにより、中空の角材となる。
図4に示すAピラー17においては、重ねられた第1外フランジ部35及び第2外フランジ部36により、Aピラー17の外フランジ部32が形成される。
なお、スポット溶接等で内フランジ部31と外フランジ部32とを接合する場合、スポット溶接による複数の接合点は、一定の間隔を離散的に形成される。
なお、図4(C)においては、車体1の左側接合部37に取付けられて成る構造体381を示している。もっとも、車体1の右側接合部にも同様の構造体381を取付けることができる。つまり、本実施形態においては、構造体381は、車体1の左右両側に設けることのできる一対の部材である。
以上により、センタストラクチャ6とサイドストラクチャ7とが接合され、かつ構造体381が取付けられて成る、従来よりも更に衝突安全性能が向上した車体1が製造される。
構造体を配置する工程を先ず実行する場合、具体的には、先ずセンタストラクチャ6のトーボードパネル13に近接させてサイドストラクチャ7のAピラー17を配置する。更に、内フランジ部31と外フランジ部32とを重ね合わせた状態で、センタストラクチャ6及びサイドストラクチャ7を保持する。内フランジ部31と外フランジ部32とが未接合である状態で、左右一対のサイドストラクチャ7に掛け渡すようにして横骨部材を取付ける。次いで、横骨部材に構造体を取付ける。これにより、構造体を配置する工程が完了するので、内フランジ部31と外フランジ部32とを接合して接合部37を形成することができる。
図5に示すように、トーボードパネル13とAピラー17との接合部37は、リインフォースメント用の補剛部材19よりも下側の部分において、前方に突出して露出している。なお、図5は車体の左方からの外観図であるので、トーボードパネル13よりも乗員室3側に設けられる上記構造体381は図示していない。
なお、構造体381は接合部37及びリインフォースメント用の補剛部材19に干渉しない位置に設けられるので、補剛部材19とAピラー17との接合状態に対して、構造体381が影響を与えることがない。つまり、本発明においては、補剛部材19によるフロントアッパメンバ18の補剛性能を劣化させることなく、脱落した前輪が当たる可能性が高い接合部37を覆うように構造体381を取付けることができる。
前室2には、前方に延在するフロントアッパメンバ18と、リインフォースメント用の補剛部材19とが設けられている。
乗員室3には、トーボードパネル13と、インストルメントパネル39と、ステアリングサポートビーム40と、ステアリングホイール41と、接続部材42と、構造体381とが設けられている。トーボードパネル13の後方には、乗員が操作可能な機器類を収容する領域が設けられる。インストルメントパネル39は、該領域を覆う部材であり、樹脂等によって成型されることが多い。ステアリングサポートビーム40は、インストルメントパネル39の内部に収容される部材の一つである。ステアリングサポートビーム40は、左右方向に延在し、中空の略円筒形状を成すフレーム状部材である。ステアリングサポートビーム40は、その両端部が、車体1の左右に設けられる一対のAピラー(図6には図示せず)に固定的に接続される。ステアリングホイール41は、車両の前後進時の方向を操作する部材である。ステアリングホイール41は、適宜の部材が組合されて成る接続部材42を介してステアリングサポートビーム40に接続される。図6には図示していないが、ステアリングホイール41を操作すると、車輪に操作内容が伝達され、車輪が操作内容を反映した方向に向くように、種々の連結部材が組付けられている。
なお、ステアリングサポートビーム40は、本発明における乗員室内で左右方向に延在する横骨部材の一例である。
なお、図6に示す緩衝部43は、ステアリングサポートビーム40から略鉛直に垂下しているが、本発明においてはステアリングサポートビームから前方又は後方に傾斜して延在していても良い。また、図6に示す支持部441は、緩衝部43の下端部から前方下側に傾斜して延在しているが、本発明においては端部ではなく側方から分岐するように前方水平方向に延在していても良い。また、構造体381は緩衝部43と支持部441との間で屈曲されて成る屈曲部材であるが、本発明においては緩衝部と支持部とが曲面で接続される湾曲部材であっても良い。更に、本発明においては、構造体は緩衝部43を設けること無く、ステアリングサポートビーム40等の固定物から仕切りパネルの乗員室側の面に向かって直線的に延在する棒状部材又は中空のフレーム状部材であっても良い。
支持部441の前端部は、トーボードパネル13の乗員室側の面、つまりトーボードパネル13の後方面に当接している。よって、破線で示した前輪FTが衝突時に脱落して白抜き矢印の方向に押し込まれたとしても、構造体381がトーボードパネル13を後方から支持する。
図4(C)及び図6においては、車体1の左側の構造体381のみを示しているが、右側にも同様の構造体381を取付けることができる。つまり、構造体381は、左右両側に設けられる一対の部材である。
構造体の端部と仕切りパネルの乗員室側の面とを接合する場合、構造体と仕切りパネルとの接合態様としては、衝突に係る応力が仕切りパネル及び構造体381に作用しても接合自体が破断しない又は破断し難い接合強度を有する態様であるのが好ましく、例えば車両製造時に多用される溶接等を採用することができる。
先ず、図7は、車体1の衝突形態の一例の説明図である。
図7には、図1に示した車体1を有する第1自動車51と共に、第2自動車52が示されている。図7において第1自動車51の外形は破線で示されている。
第2自動車52は、例えば停車中の第1自動車51に対して、時速90kmで前方から衝突する。第2自動車52は、第1自動車51の一対のフロントサイドメンバ14より外側、図7に示した衝突例においては左方フロントサイドメンバ14より左側に衝突する。このような衝突では、第2自動車52により、第1自動車51の前輪FTが車軸から脱落する可能性がある。前輪FTが脱落すると、脱落時に前輪FTに作用した応力が後方に向かう慣性力となる。更に、第2自動車52の車体、並びに、第2自動車52から脱落した部品及び前輪等が、第1自動車51の前輪FTを後方に押し続ける慣性力を有することもある。第1自動車51の脱落した前輪FTは、接合部37を押し潰す可能性がある。
外フランジ部32が形成されて成る内側サイドパネル33及び外側サイドパネル34を有するAピラー17は、車体1の骨格部材の一つであるので高い剛性を有する部材である。よって、外フランジ部32が前輪FTの干渉により変形及び破断したとしても、Aピラー17全体の変形及び破断等は生じ難い又は生じない。例えばAピラー17は、図8(B)に示すように、外側サイドパネル34の前面が後方に若干押し込まれる程度の変形で留まることがある。
接合部37が変形及び破断し、更にAピラー17が変形しても、脱落した前輪FTの後方に押し込まれる力が維持されている場合、トーボードパネル13に前輪FTが押し込まれる可能性がある。具体的には、図8(B)に示すように、脱落した前輪FTは、トーボードパネル13を乗員室3内に向かって押し込まれるように移動する。前輪FTが内フランジ部31を変形又は破断させつつ後方に移動し、トーボードパネル13を後方へ押し込むようにして変形させる。脱落した前輪FTの後方へ向かう力が大きい場合、図8(B)に示すように、乗員室3内に前輪FTの一部が侵入することもある。
接合部37が破断すると、乗員室3は密閉された箱形状に維持され難くなる。接合部37が破断し、更にトーボードパネル13が変形すると、乗員室3と前室2とが連通することになり、乗員室3は密閉された箱形状に維持されなくなる。
脱落した前輪FTがその慣性力、衝突物の押圧力等によって白抜きの矢印の方向へ移動する場合、前輪FTは、図9(A)に示すように接合部37に対して押し込まれる可能性がある。
図4(C)にも示したように、本実施形態においては、トーボードパネル13の後方に構造体381が設けられている。具体的には、トーボードパネル13の後方面に対して、構造体381における支持部441の前端部が当接している。
図9に示すように、接合部37には別部材を装着しておらず、接合部37が露出している。したがって、脱落した前輪FTが後方に移動すると、接合部37に対して前輪FTが直接接触する。よって、接合部37は、前輪FTから応力を直接受ける。前輪FTが大きな応力を以って押し込まれると、応力を直接受ける接合部37は後方に圧縮されて押し潰される可能性がある。
前輪FTが外側に逸れる場合は、車体1に衝突に係る応力が作用しなくなるので好ましい。
また、前輪FTが内側に逸れる場合は、従来であれば図8(B)に示すように接合部37が破断し、トーボードパネル13が乗員室3に向かって押し込まれる可能性がある。本実施形態では、構造体381がトーボードパネル13を乗員室3側から支持している。よって、前輪FTからトーボードパネル13に対して乗員室3内に向かって作用する応力は、構造体381がトーボードパネル13の後方で受けることとなる。
構造体381に対して応力が作用する場合、図6にも示したように、トーボードパネル13に近接又は接触する支持部441が応力を受ける。支持部441が応力を受けると、支持部441の後方端部から上方に延在する緩衝部43に対して応力が伝達される。支持部441に対して作用する応力は、その方向が支持部441の軸線に対して平行又は略平行である。これに対して、緩衝部43に対して作用する応力は、その方向が緩衝部43の軸線に対して直交又は略直交であり、少なくとも平行ではない。換言すると、緩衝部43に対して作用する応力の方向は、緩衝部43が後方に撓む方向である。よって、構造体381は、支持部441と緩衝部43とがそれぞれ異なる延在方向を有することにより、支持部441に作用する応力の一部を緩衝部43が撓む方向として受けることができる。緩衝部43が撓る性質を有していれば、支持部441に対して作用した応力は、緩衝部43の後方への撓りによって減衰して、ステアリングサポートビーム40等の固定物に伝達される。ステアリングサポートビーム40は、左右一対のAピラー17に固定的に取付けられることが多い。緩衝部43からステアリングサポートビーム40に対して作用する応力はAピラー17に伝達される。よって、本実施形態においては、構造体381が受ける応力は、支持部441が応力を受け、緩衝部43で減衰され、更にステアリングサポートビーム40及びAピラー17に分散される。
したがって、前輪FTによって接合部37が押し潰されたとしても、トーボードパネル13が乗員室3側に大きく変形又は破断することは無い。つまり、接合部37自体が押し潰される等して破断してしまっても、構造体381によって、特にトーボードパネル13の後方への大きな変形又は破断を防止することができるので、乗員室3が接合部37を起点とした開放状態となることはない、又はなり難い。
よって、前輪FTによって接合部37が押し潰されたとしても、トーボードパネル13が乗員室3側に大きく変形又は破断することは無い。したがって、接合部37自体が押し潰される等して破断してしまっても、構造体381によって、トーボードパネル13の後方への大きな変形又は破断を防止することができるので、接合部37を起点として乗員室3が大きく開放状態となることはない、又はなり難い。換言すると、構造体381を設けることによって、前輪FTが接合部37に直接押し込まれても、接合部37が押し潰される程度で留まり、それ以上の大きな車体1への損傷を防止することができる。
また、本実施形態では、接合部37の溶接作業、及び、構造体381の取付作業は、特殊で大型の専用装置は不要であり、通常の車両製造工程中に用いられる溶接装置等を採用することができる。特に、構造体381の取付作業は、種々の部材が組付けられて成るステアリングサポートビーム40に構造体381を付設するだけであるので、大きな作業工程の変更は不要である。また、構造体381は、インストルメントパネル39及びトーボードパネル13周辺の空いた領域に設置されるので、車体構造の大きな変更も不要である。よって、本実施形態は、既存の車体製造ラインをそのまま利用可能である。また、製造工程の変更を最小限に抑えることができる。
この他にも例えば、センタストラクチャ6のリアバルクヘッドパネル26に対して、本発明を適用しても良い。構造体を乗員室側に設けることにより、車体1の後方からの衝突の際に、リアバルクヘッドパネル26とCピラー23との接合部が後輪又は衝突物等が押し込まれることになっても、乗員室3が開放状態となり難くなる。
上述した実施形態においては、構造体381が車体1の幅方向において接合部37よりも内側に配置されていた。本発明に係る車両の車体構造において、構造体は、乗員室側から仕切りパネルを支持する限り様々な形状及び取付位置を採用することができる。図10(A)〜(C)には、本発明に係る車両の車体構造における構造体の変形例を示した。
図10(A)〜(C)に示した各実施形態と、図4(C)に示した実施形態との相違点は、構造体の形状、及び取付位置である。該相違点以外は図4(C)に示した実施形態と同一部材を用いているので、同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
具体的には、図10(A)に示す構造体382と、図4(C)に示した構造体381とは、形状は略同一である。構造体382と構造体381との相違点は、設けられる位置である。構造体381が車体1の幅方向において接合部37よりも内側に設けられていたのに対して、構造体382は車体1の接合部37の後方であって、Aピラー17の内側サイドパネル33の内側面に当接して設けられている。
本発明において構造体は、車体の幅方向において接合部よりも内側に配置される態様、及び、接合部の乗員室側であって、サイドパネルに沿って配置される態様の少なくとも一方を採用することができる。図10(A)に示す実施形態は、構造体が、接合部の乗員室側であって、サイドパネルに沿って配置される態様の一例である。なお、本発明においては、構造体がサイドパネルに沿って配置される態様には、構造体の一部とサイドパネルの一部とが当接又は接合されて成る実施形態も含まれることとする。
構造体382における支持部442は、内側サイドパネル33に沿って延在し、かつ内側サイドパネル33の乗員室3側の面に当接している。図10(A)には図示していない構造体382の後方、特に支持部442の後端部には、図6に示した実施形態と同様に緩衝部が接続され、ステアリングサポートビーム40等の固定物に取付けられている。構造体382における支持部442の前端部は、トーボードパネル13の乗員室3側の面に当接している。
更に言うと、構造体382は、構造体381と同様に、容易には大きな変形及び破断を生じない材料によって形成されるのが好ましい。つまり、構造体382は内側サイドパネル33に沿って当接する高剛性部材である。また、上述したように、Aピラー17は、車体1の骨格部材であるので、高い剛性を有する。これにより、構造体382の内側端面、特に支持部442の右側面から、Aピラー17の外側端面、特に外側サイドパネル34の左側面までが、一つの高剛性部材とみなすことができる。すなわち、図10(A)に示す実施形態は、例えば図4(C)に示す実施形態に対して、支持部442における左右方向の大きさだけ内側に拡大したAピラーが配置されている実施形態であるとみなすことができる。該実施形態は、内側に拡大したAピラーの前方正面に接合部37が配置されている状態となる。したがって、該実施形態は、例えば接合部37に対して脱落した前輪が直接押し込まれた場合に、内側に拡大したAピラーが応力を受ける。高い剛性を有するAピラー17及び構造体382が応力を受けることによって、応力の大部分はAピラー17及び構造体382に分散及び吸収される。これにより、接合部37を起点とした乗員室3の大きな開放状態は生じない又は生じ難いので好ましい。
なお、図10(A)においては、車体1の左側の構造体382のみを示しているが、右側にも同様の構造体382を取付けることができる。つまり、構造体382は、左右両側に設けられる一対の部材である。
図10(A)に示す実施形態は、脱落する前輪等の車輪が接合部に対して直接押し込まれる衝突形態が主に想定される場合に特に好適である。
具体的には、図10(B)に示す構造体383と、図4(C)に示した構造体381との相違点は、設けられる位置及び形状である。構造体381が車体1の幅方向において接合部37よりも内側に設けられていたのに対して、構造体383は接合部37の後方であって、Aピラー17の内側サイドパネル33の内側面に当接して設けられている。また、支持部の延在方向及び支持部の先端形状も異なっている。
図10(B)に示す実施形態は、構造体が、接合部の乗員室側であって、サイドパネルに沿って配置される態様の一例である。
構造体383における支持部443は、車体1の幅方向において接合部37よりも内側から接合部37に向かって延在している。支持部443の先端部には、第2支持部453が付設されている。第2支持部453は、断面略L字状の板部材であり、支持部443の前端部に固定的に取付けられている。第2支持部453は、トーボードパネル13の乗員室3側の面と、内側サイドパネル33の乗員室3側の面に当接している。接合部37は上下方向に延在するので、乗員室3側において接合部37に沿って第2支持部443が上下方向に延在するのが好ましい。これにより、脱落した前輪等が、接合部37における上下方向のどの位置に押し込まれたとしても、第2支持部453を介して構造体383が応力を受けることができる。図10(B)には図示していない構造体383の後方、特に支持部443の後端部には、図6に示した実施形態と同様に緩衝部が接続され、ステアリングサポートビーム40等の固定物に取付けられている。
更に言うと、前輪等から接合部37に対して応力が作用した場合に、構造体383の支持部443が緩衝部としての機能も発揮することができる。詳述すると、第2支持部453の後方に延在する支持部443は、上述したように車体1の幅方向において接合部37の内側から接合部37に向かって延在している。つまり、支持部443は、前後方向に対して傾斜し、かつ外側に向かって延在している。よって、接合部37に対して前輪等が直接押し込まれた場合、先ず、乗員室3内で第2支持部453が応力を受ける。第2支持部453が応力を受けると、第2支持部453が固定的に取付けられて成る支持部443に応力が伝達される。このとき、前後方向に略平行な応力が第2支持部453から支持部443に対して伝達される。支持部443が前後方向に対して傾斜しているので、支持部443に伝達された応力は、支持部443が後方に撓む方向に作用する応力と、支持部443が後方に押し込まれる方向に作用する応力と、に分かれて作用する。よって、支持部443が撓る性質を有していれば、支持部443が後方に撓む方向に作用する応力が減衰した状態で、支持部443の後端部に接続される緩衝部(図10(B)には図示せず)に対して応力が伝達される。したがって、図10(B)に示す実施形態は、支持部443が緩衝部と同様の機能を発揮し、更に支持部443に接続される緩衝部においても応力の減衰を図ることができる。第2支持部453に対して作用した応力は、支持部443及び緩衝部43の後方への撓りによって減衰した後に、ステアリングサポートビーム40等の固定物に伝達される。これにより、接合部37を起点とした乗員室3の大きな開放状態は生じない又は生じ難いので好ましい。
なお、図10(B)においては、車体1の左側の構造体383のみを示しているが、右側にも同様の構造体383を取付けることができる。つまり、構造体383は、左右両側に設けられる一対の部材である。
図10(B)に示す実施形態は、脱落する前輪等の車輪が接合部に対して直接押し込まれる衝突形態が主に想定される場合に特に好適である。
具体的には、図10(C)に示す構造体384と、図4(C)に示した構造体381との相違点は、形状である。構造体381が棒状を成す支持部441がトーボードパネル13に直接当接していたのに対して、構造体384は支持部444とトーボードパネル13との間に板状部材の第2支持部454が介設されている。
図10(C)に示す実施形態は、構造体が、仕切りパネルにおける乗員室側の面に当接又は接合し、かつ、接合部の乗員室側であって、サイドパネルに沿って配置される態様の一例である。
構造体384における支持部444は、上記構造体381の支持部441と同様に、車体1の幅方向において接合部37よりも内側に配置され、前後方向に対して平行又は略平行である。支持部444の前端部にはトーボードパネル13に沿って上下方向及び左右方向に延在する第2支持部454が付設される。第2支持部454は、トーボードパネル13の乗員室3側の面であって車体1の幅方向における接合部37よりも内側の部位から、接合部37の後方までに亘って当接している。よって、トーボードパネル13において第2支持部454が当接している範囲内に脱落した前輪FT等が押し込まれた場合に、第2支持部454が応力を受けることができる。第2支持部454が受けた応力は、支持部444に伝達される。支持部444が受けた応力は、支持部444の後端部に接続される緩衝部(図10(C)には図示せず)に伝達される。構造体384の緩衝部が受けた応力は、図4(C)及び図6に示した構造体381と同様に、緩衝部が後方に撓む応力と、ステアリングサポートビーム40等の固定物に伝達される応力とに分散される。したがって、構造体384は、図4(C)に示した実施形態に比べて、トーボードパネル13において広い範囲で応力を受けることができる。これにより、図4(C)に示した実施形態よりも、トーボードパネル13が乗員室3側に大きく変形及び破断する可能性をより一層低減することができる。つまり、接合部37を起点とした乗員室3の大きな開放状態は生じない又は生じ難いので好ましい。
なお、図10(C)においては、車体1の左側の構造体384のみを示しているが、右側にも同様の構造体384を取付けることができる。つまり、構造体384は、左右両側に設けられる一対の部材である。
図10(C)に示す実施形態は、脱落する前輪等の車輪が接合部に対して直接押し込まれる衝突形態が主に想定される場合に特に好適である。
この他にも例えば、1ボックス構造の自動車、2ボックス構造の自動車、トラック、バス、電車、航空機、などの車両において、本発明を適用することができる。特に、車体1のセンタストラクチャ6の幅方向両側に一対のサイドストラクチャ7を接合することにより製造される車両においては、本発明を好適に適用できる。
Claims (9)
- 車両の車輪を軸支可能な車体において幅方向に延在して前記車体の前室又は後室と乗員室とを仕切る仕切りパネルと、
前記車体の側部において前記乗員室の前角又は後角となる位置で前記仕切りパネルと接合されるサイドパネルと、を備え、
前記仕切りパネルは、前記幅方向の端部において前記車体の上下方向に延在する内フランジ部を有し、
前記サイドパネルは、前記上下方向に延在する外フランジ部を有し、
前記内フランジ部と前記外フランジ部とが接合されて成り、前記仕切りパネル及び前記サイドパネルによる面から前方へ突出する接合部を有し、
前記仕切りパネルの前記乗員室側に構造体を設け、
前記構造体は、前記接合部の前記乗員室側であって、前記サイドパネルに沿って配置され、
前記構造体と前記仕切りパネルとの間に板状部材が介設され、
前記板状部材は、前記幅方向における前記接合部よりも内側から前記接合部の後方までに亘って、前記仕切りパネルの前記乗員室側の面に当接する、
車両の車体構造。 - 前記幅方向において
前記構造体は、前記車輪の前後方向に位置する、
請求項1に記載の車両の車体構造。 - 前記幅方向において
前記構造体は、少なくとも前記車輪の回転中心についての前後方向に位置する、
請求項1に記載の車両の車体構造。 - 前記構造体は、前記仕切りパネルにおける前記乗員室側の面に当接する、又は接合される、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両の車体構造。 - 前記構造体は、前記幅方向において前記接合部よりも内側に配置される、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両の車体構造。 - 前記構造体は、前記乗員室内で左右方向に延在する横骨部材に接続される、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の車両の車体構造。 - 前記構造体は、緩衝部と、支持部とを有し、
前記緩衝部は、前記横骨部材から延在し、
前記支持部は、前記緩衝部の先端部から前記仕切りパネルに向かって前方に延在し、前記仕切りパネルの乗員室側に延在する、
請求項6に記載の車両の車体構造。 - 車両の車輪を軸支可能な車体の製造方法であって、
前記車体の前室又は後室と乗員室とを仕切る仕切りパネルを有するセンタストラクチャと、前記仕切りパネルと接合されることにより前記乗員室を画成するサイドパネルを有するサイドストラクチャとを接合するために、
前記仕切りパネルの幅方向の端部において前後方向へ突出するように形成される内フランジ部と、前記サイドパネルにおいて前記乗員室の前角又は後角に対応する部位に形成される外フランジ部と、を前記仕切りパネル及び前記サイドパネルによる面から前方へ突出させて接合する工程と、
前記サイドパネルに接合された前記仕切りパネルの乗員室側に、構造体を前記サイドパネルに沿って配置する工程と、を有し、
前記構造体と前記仕切りパネルとの間に板状部材が介設され、
前記板状部材は、前記幅方向における前記内フランジ部と前記外フランジ部との接合部よりも内側から前記接合部の後方までに亘って、前記仕切りパネルの前記乗員室側の面に当接する、
車体の製造方法。 - 車両の車輪を軸支可能な車体の製造方法であって、
前記車体の前室又は後室と乗員室とを仕切る仕切りパネルを有するセンタストラクチャと、前記仕切りパネルと接合されることにより前記乗員室を画成するサイドパネルを有するサイドストラクチャとを接合するために、
前記仕切りパネルの乗員室側に構造体を前記サイドパネルに沿って配置する工程と、
乗員室側に前記構造体が配置されて成る前記仕切りパネルの幅方向の端部において、前後方向へ突出するように形成される内フランジ部と、前記サイドパネルにおいて前記乗員室の前角又は後角に対応する部位に形成される外フランジ部とを、前記仕切りパネル及び前記サイドパネルによる面から前方へ突出させて接合する工程と、を有し、
前記構造体と前記仕切りパネルとの間に板状部材が介設され、
前記板状部材は、前記幅方向における前記内フランジ部と前記外フランジ部との接合部よりも内側から前記接合部の後方までに亘って、前記仕切りパネルの前記乗員室側の面に当接する、
車体の製造方法。
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