JP5971909B2 - 導電性ペースト、及び該導電性ペーストを焼成して得られる接合体 - Google Patents

導電性ペースト、及び該導電性ペーストを焼成して得られる接合体 Download PDF

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Description

本発明は、半導体素子の電極端子又は回路基板の電極端子の接合等に使用される導電性ペースト、及び該導電性ペーストを焼成して得られる接合体に関する。
半導体素子の電極端子又は回路基板の電極端子の接合等に使用されるにソルダペーストは、一般にペースト状フラックスにはんだの微粒子を分散させ、はんだぬれを促進し、粘度、タック性、だれ性、乾燥速度などを調節する添加剤を加えたものであり、一般にソルダペーストに用いるフラックスとして、松脂、チキソ剤、活性剤、溶剤が挙げられる。
松脂は、フラックスの主成分となるもので、通常ロジン又はロジン誘導体(例えば、重合ロジン、ガムロジン、ウッドロジン等)であり、溶剤に溶解すると適当な粘調性と粘着性を発揮して、プリント基板に対する塗布性と保持性を向上する。松脂には、通常還元作用を有するアビエチン酸が含まれていて、はんだ付け部の清浄作用も有している。
チキソ剤は、ペースト状のフラックスと粉末はんだを混練した後にフラックスと粉末はんだが分離するのを防止する作用と、プリント基板に塗布後、塗布形状が崩れるという所謂「ダレ」を防止する作用も有している。一般にチキソ剤は、ソルダペースト用フラックス中に4〜10質量%添加して使用される。ソルダペーストのフラックスに使用するチキソ剤としては、水素添加ヒマシ油、脂肪酸アマイド、オキシ脂肪酸、等である。活性剤は、はんだ付け部に形成された酸化物を還元して清浄な金属面にし、溶融したはんだを清浄面に濡れ拡がらせるものである。前述のように松脂中にも活性作用のあるアビエチン酸が含まれているが、アビエチン酸の活性作用だけでは、はんだ付け部に強固に形成された酸化物の清浄化には充分でないため、ソルダペーストのフラックスでは別途活性作用の強い活性剤を添加する。活性剤の添加量は種類によって異なるが、一般に0.1〜2質量%である。活性剤の例としては、有機アミンハロゲン化水素酸塩、有機酸、有機アミンがある。具体例としては、ジフェニールグアニジン臭化水素酸塩、シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩、ジエチルアミン塩酸塩、アジピン酸、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン等が好適である。
溶剤は、上記松脂、チキソ剤、活性剤等の固形成分を溶解してフラックスに適当な粘調性を与えるものであり、エチレングリコールモノブチルエーテル、2メチル2,4ペンタンジオール、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコール2エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、α−ターピネオール、2エチルヘキサンジオール、カルビトール等が挙げられる。
上記フラックス成分中、松脂以外は全て水に溶解する成分、即ち吸湿する成分であるので、フラックス製造後やフラックスと粉末はんだを混練してソルダペースト製造後、フラックスやソルダペーストが大気と接していると、大気中の水分を吸湿する問題点があった。
従って、導電性ペーストを含水しないように製造し、かつ含水しない期限内に使用することが考えられていた。また、以下に記載する通り、導電性ペーストを塗布後加熱して、被接合部間を接合する際に導電性ペースト中の水、溶剤等の成分が突沸をおこすのを防止する対策が提案されている。
特許文献1には、ソルダペーストが大気中の水分を吸湿すると、はんだ付け時に吸湿した水分が突沸してソルダペーストをプリント基板の導体間、コネクター等の不要箇所に付着してしまうのを防止するために、ソルダペーストのフラックス中に合成ゼオライトを0.2〜10質量%添加することが開示されている。
特許文献2には、導電性カーボンペーストを塗布した後に、前記ペーストに含まれる溶剤を該溶剤の突沸が発生しない温度でゆっくりと揮発させ、その含有率を一定量以下にしておくことにより、導電性カーボンペーストの塗膜の表面は平坦になり、グラファイト粒子間が緻密になって塗膜の強度を高めて、その後加熱乾燥したときに溶剤の突沸やグラファイト粒子の隆起を防止することが開示されている。
特許文献3、4には、チップ素子表面の必要箇所に電極ペーストを塗布し乾燥する工程を含む電子部品の製造方法において、外部電極用電極ペーストにチップ素子をディッピングした後、120〜170℃程度の温度パターンで乾燥を行うと、該ペースト中の溶剤分が突沸してはじけ、その部分がピンホールとして残り、外観不良になるのを防止するために、予め前記電極ペーストに含まれる溶剤の沸点よりも低い温度で乾燥を行うことが開示されている。
特許文献5には、光半導体素子をパッケージ基板にはんだペーストを使用して実装する際のリフロー処理において、はんだペーストに含まれる溶剤が突沸して光半導体素子が飛ばされてしまう、所謂チップ飛びの問題を解消するために、主面上に金属からなるダイパッドを有するパッケージ基板と、前記ダイパッド上にはんだ材を介して接合された光半導体素子とを含む光半導体装置において、前記パッケージ基板の基材をセラミックスとして、前記パッケージ基板と前記ダイパッドとを貫通する複数の貫通孔を設けて、前記貫通孔の各々は、前記基材のセラミックスが露出した側壁を有する光半導体装置が開示されている。セラミック基板上のダイパッド形成部にスルーホールが設けられると、これがリフロー工程においてはんだペーストに含まれる溶剤が気化することによって発生するガスの放出経路として機能するので、チップ飛びの問題を解消することが可能となると記載されている。
特開平11−347789号公報 特開平5−256811号公報 特開平6−275460号公報 特開平6−275461号公報 特開2010−123654号公報
上記特許文献1に開示の合成ゼオライトの添加による水の突沸防止方法は、水の突沸が防止できても、合成ゼオライトの添加により被着体間の接合強度が低下するかまたフラックス残渣中に混在する問題点がある。上記特許文献2〜4に開示のペーストに含まれる溶剤を溶剤の突沸が発生しない温度でゆっくりと揮発させる手法は生産性低下の問題点がある。上記特許文献5に開示のパッケージ基板と前記ダイパッドとを貫通する複数の貫通孔を設けることにより、溶剤が気化することによって発生するガスの放出経路を形成する対応は工程が複雑になるという問題点がある。
本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、導電性ペースト中に特定の分子構造を有する突沸を抑制する溶媒、蒸発を抑制する溶媒等を配合することにより、導電性ペーストが含水していても水の存在等による突沸が生じるのを抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、以下の(1)〜(18)に記載する発明を要旨とする。
(1)金属微粒子(P)、及び分散媒(D)を含み、金属微粒子(P)と分散媒(D)のそれぞれ含有量(P/D)(質量%)が50〜90/50〜10(金属微粒子(P)と分散媒(D)の質量%の合計は100質量%)の導電性ペーストであって、
該分散媒(D)が有機溶媒(S)、及び突沸抑制溶媒(T)からなる有機分散媒(D1)であり
有機分散媒(D1)中の突沸抑制溶媒(T)の割合(T/D1)(質量%)が2〜25質量%である、
または
(2)前記分散媒(D)が有機溶媒(S)、突沸抑制溶媒(T)、及び常圧における沸点250℃以上のアルカノールアミン系化合物である蒸発抑制溶媒(U)からなる有機分散媒(D2)であり、
有機分散媒(D2)中の突沸抑制溶媒(T)の割合(T/D2)(質量%)が2〜25質量%で、
蒸発抑制溶媒(U)の割合(U/D2)(質量%)が2〜25質量%であり、
かつ有機分散媒(D2)中の突沸抑制溶媒(T)と蒸発抑制溶媒(U)の合計割合[(T+U)/D2](質量%)が35質量%以下である、
または、
(3)前記分散媒(D)が有機溶媒(S)、突沸抑制溶媒(T)、及び有機バインダ(B)からなる有機分散媒(D3)であり、
有機分散媒(D3)中の突沸抑制溶媒(T)の割合(T/D3)(質量%)が2〜25質量%で、
有機バインダ(B)の割合(B/D3)(質量%)が2〜15質量%であり、
かつ有機分散媒(D3)中の突沸抑制溶媒(T)と有機バインダ(B)の合計割合[(T+B)/D3](質量%)が35質量%以下である、
または
(4)前記分散媒(D)が有機溶媒(S)、突沸抑制溶媒(T)、常圧における沸点250℃以上のアルカノールアミン系化合物である蒸発抑制溶媒(U)、及び有機バインダ(B)からなる有機分散媒(D4)であり、
有機分散媒(D4)中の突沸抑制溶媒(T)の割合(T/D4)(質量%)が2〜25質量%で、
蒸発抑制溶媒(U)の割合(U/D4)(質量%)が2〜25質量%で、
有機バインダ(B)の割合(B/D4)(質量%)が2〜15質量%であり、
かつ有機分散媒(D4)中の突沸抑制溶媒(T)と蒸発抑制溶媒(U)と有機バインダ(B)の合計割合[(T+U+B)/D4](質量%)が35質量%以下であり、
前記有機分散媒(D1)、前記有機分散媒(D2)、前記有機分散媒(D3)および前記有機分散媒(D4)の有機溶媒(S)が
(i)常圧における沸点が100℃以上で、かつ分子中に1もしくは2以上のヒドロキシル基(−OH)を有するアルコール及び/もしくは多価アルコールからなる有機溶媒(S1)、
又は(ii)少なくとも、常圧における沸点が100℃以上で、かつ分子中に1もしくは2以上のヒドロキシル基(−OH)を有するアルコール及び/もしくは多価アルコールからなる有機溶媒(S1)5〜95体積%、並びにアミド基(−C(=O)N−)を有する有機溶媒(SA)95〜5体積%からなる有機溶媒(S2)で、
前記有機分散媒(D1)、前記有機分散媒(D2)、前記有機分散媒(D3)および前記有機分散媒(D4)の突沸抑制溶媒(T)が化学構造式内にヒドロキシル基(−OH)、及びカルボニル基(−C(=O)−)を有し、かつカルボキシル基(−COOH)を有さず、分子量が50以上で沸点が100℃以上の化合物である、ことを特徴とする導電性ペースト(以下、第1の態様ということがある)。

5)前記分散媒(D)中に更に水(W)が含有されており、分散媒(D)中の水(W)の含有量(W/D)(質量%)が0.1〜25質量%である、
ことを特徴とする前記(1)から(4)のいずれかに記載の導電性ペースト。
(6)前記有機溶媒(S1)が、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2,3−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセロール、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、トレイトール、エリトリトール、ペンタエリスリトール、ペンチトール、ヘキシトール及びイミノジエタノールの中から選択される1種又は2種以上である、ことを特徴とする前記(1)から(5)のいずれかに記載の導電性ペースト。
(7)前記有機溶媒(SA)が、N−メチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、N−メチルプロパンアミド、ホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、2−ピロリジノン、ε−カプロラクタム、及びアセトアミドの中から選択される1種又は2種以上である、ことを特徴とする前記(1)から(6)のいずれかに記載の導電性ペースト。
(8)前記突沸抑制溶媒(T)が、ヒドロキシアセトン、2−ヒドロキシプロパナールアセチルメチルカービノール、4−ヒドロキシ−2−ブタノン、3−ヒドロキシブタナール4−ヒドロキシブチルアルデヒド、乳酸エチル、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン、5−ヒドロキシペンタナール3−ヒドロキシ−2−ペンタノン、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロパナール、4−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン、メチル−2−ヒドロキシイソブチレイト、2−ヒドロキシ−3−メチルブタナール、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−3−ヘキサノン、エチル−2−ヒドロキシイソブチレイト、6−ヒドロキシ−2−ヘキサノン、4−ヒドロキシ−3−メチル−2−ペンタノン、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ペンタノン、5−ヒドロキシ−2−ヘキサノン、4−ヒドロキシヘキサナール、4−ヒドロキシメチルイソブチルケトン、6−ヒドロキシヘキサナール、及び1−ヒドロキシ−2−ヘキサノン、の中から選択される1種又は2種以上である、ことを特徴とする前記(1)から(7)のいずれかに記載の導電性ペースト。
(9)前記蒸発抑制溶媒(U)がトリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、及びN−n−ブチルジエタノールアミンの中から選択される1種又は2種以上である、ことを特徴とする前記(2)、及び(5)から(8)のいずれかに記載の導電性ペースト。
(10)前記有機バインダ(B)がセルロース樹脂系バインダ、アセテート樹脂系バインダ、アクリル樹脂系バインダ、ウレタン樹脂系バインダ、ポリビニルピロリドン樹脂系バインダ、ポリアミド樹脂系バインダ、ブチラール樹脂系バインダ、及びテルペン系バインダの中から選択される1種又は2種以上である、ことを特徴とする前記(3)から(9)のいずれかに記載の導電性ペースト。
(11)前記セルロース樹脂系バインダがアセチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ブチルセルロース、及びニトロセルロース;アセテート樹脂系バインダがメチルグリコールアセテート、エチルグリコールアセテート、ブチルグリコールアセテート、エチルジグリコールアセテート、及びブチルジグリコールアセテート;アクリル樹脂系バインダがメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、及びブチルメタクリレート;ウレタン樹脂系バインダが2,4−トリレンジイソシアネート、及びp−フェニレンジイソシアネート;ポリビニルピロリドン樹脂系バインダがポリビニルピロリドン、及びN−ビニルピロリドン;ポリアミド樹脂系バインダがポリアミド6、ポリアミド6.6、及びポリアミド11;ブチラール樹脂系バインダがポリビニルブチラール;テルペン系バインダがピネン、シネオール、リモネン、及びテルピネオールの中からそれぞれ選択される1種又は2種以上である、ことを特徴とする前記(10)に記載の導電性ペースト。
(12)前記導電性ペーストを加熱・焼結して金属多孔質体を形成する際に、分散媒(D)中にそれぞれ含有されている有機溶媒(S)、突沸抑制溶媒(T)、蒸発抑制溶媒(U)、及び有機バインダ(B)のいずれもが蒸発及び/又は熱分解する、ことを特徴とする前記(1)から(11)のいずれかに記載の導電性ペースト。
(13)前記金属微粒子(P)が、金属、合金、及び金属酸化物から選択された1種又は2種以上からなる、平均1次粒子径が1〜150nmの金属微粒子(P1)、
又は、前記金属微粒子(P1)と、平均1次粒子径が1〜10μmの金属、合金、及び金属酸化物から選択された1種又は2種以上の金属微粒子(P2)からなり、その配合割合(P1/P2)(質量%)が80〜100/20〜0(質量%の合計は100%)である、ことを特徴とする前記(1)から(12)のいずれかに記載の導電性ペースト。
(14)前記金属微粒子(P1)と金属微粒子(P2)の質量%割合(P1/P2)が80〜95/20〜5(質量%の合計は100%)である、ことを特徴とする前記(13)に記載の導電性ペースト。
(15)前記金属微粒子(P)が金、銀、銅、ニッケル、コバルトの中から選択される1種又は2種以上である、ことを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の導電性ペースト。
(16)前記導電性ペーストを昇温5℃/分で焼結する際の、示差熱測定装置を用いて測定した120〜160℃間の吸発熱差が熱伝対起電力測定値で4μV以下である、ことを特徴とする前記(1)から(15)のいずれかに記載の導電性ペースト。
(17)導電接合部材用途として用いる、ことを特徴とする前記(1)ないし(16)のいずれかに記載の導電性ペースト。
(18)前記(1)から(16)のいずれかに記載の導電性ペーストを焼成して得られる、空隙率が5〜15%であり、かつクラック及び孔径10μm以上のボイドが存在しない接合体(以下、第2の態様ということがある)。
従来の焼結用導電性ペーストは、金属微粒子、有機溶剤、及び樹脂バインダ成分(有機酸を含む)からなる成分が一般的であったが、吸湿性の有機溶剤を用いると焼結用導電性ペーストは含水により突沸が生じ易くなり、焼結で得られる接合体質が極端に悪化したり、焼結用導電性ペーストが含水するのを防止するために適用期間と保存条件に制約を受ける問題であった。本発明の導電性ペースト中の分散媒(D)に少なくとも有機溶媒(S)と突沸抑制溶媒(T)とを含有させることにより、導電性ペーストを焼成する際の突沸を顕著に抑制することが可能となり、また導電性ペーストの保存条件の制約も緩和された。また、本発明の導電性ペースト中には有機酸を添加する必要がないので、導電性ペースト焼成後に金属微粒子、接合体、基板などの腐食を抑制することが可能である。
更に、本発明の導電性ペーストを加熱・焼結する際に突沸を顕著に抑制できるので、導電性ペーストを焼結して得られる接合体の空隙率を5〜15%とすることが可能であり、また該接合体には孔径10μm以上の粗大ボイドやクラックが存在しないので、熱サイクル特性が向上すると共に接合強度に優れる。
実施例1で得られた導電性ペーストを焼成する際に得られた示差熱・熱質量測定チャートである。 比較例1で得られた導電性ペーストを焼成する際に得られた示差熱・熱質量測定チャートである。
以下に、本発明の前記〔1〕導電性ペースト(第1の態様)、〔2〕導電性ペーストの製造方法、及び〔3〕接合体(第2の態様)について説明する。
〔1〕導電性ペースト(第1の態様)
本発明の第1の態様の「導電性ペースト」は、金属微粒子(P)、及び分散媒(D)を含み、金属微粒子(P)と分散媒(D)のそれぞれの含有量(P/D)(質量%)が50〜90/50〜10(金属微粒子(P)と分散媒(D)の質量%の合計は100質量%)の導電性ペーストであって、該分散媒(D)が有機溶媒(S)、及び突沸抑制溶媒(T)からなる有機分散媒(D1)であり、
有機溶媒(S)が
(i)常圧における沸点が100℃以上で、かつ分子中に1もしくは2以上のヒドロキシル基(−OH)を有するアルコール及び/もしくは多価アルコールからなる有機溶媒(S1)、
又は(ii)少なくとも、常圧における沸点が100℃以上で、かつ分子中に1もしくは2以上のヒドロキシル基(−OH)を有するアルコール及び/もしくは多価アルコールからなる有機溶媒(S1)5〜95体積%、並びにアミド基(−C(=O)N−)を有する有機溶媒(SA)95〜5体積%からなる有機溶媒(S2)で、
突沸抑制溶媒(T)が化学構造式内にヒドロキシル基(−OH)、及びカルボニル基(−C(=O)−)を有し、かつカルボキシル基(−COOH)を有さず、分子量が50以上で沸点が100℃以上の化合物であり、
有機分散媒(D1)中の突沸抑制溶媒(T)の割合(T/D1)(質量%)が2〜25質量%である、
ことを特徴とする。
尚、本発明の導電性ペーストは、上記金属微粒子(P)と分散媒(D)からなるが、分散媒(D)中には後述する有機溶媒(S1)又は有機溶媒(S2)、突沸抑制溶媒(T)、蒸発抑制溶媒(U)、及び有機バインダ(B)以外に更に、後述する水、各種添加剤等を配合することができる。

本発明の導電性ペーストにおける金属微粒子(P)と分散媒(D)のそれぞれ含有量(P/D)(質量%)は50〜90/50〜10(質量%の合計は100質量%)である。
導電性ペーストにおける金属微粒子(P)の含有量が前記90質量%を超えると導電性ペーストが高粘度となり、加熱処理において金属微粒子(P)表面間の結合不足が生じて導電性が低下するおそれがある。一方、金属微粒子(P)の含有量が前記50質量%未満では、導電性ペーストの粘度が低下して半導体素子の電極端子又は回路基板の電極端子の接合面に塗布された導電性ペーストの形状維持が困難となるおそれがあり、また、加熱処理の際に金属多孔質体が収縮するという不具合が生ずるおそれがある。かかる観点から、導電性ペースト中の金属微粒子(P)と分散媒(D)のそれぞれの含有量(P/D)は55〜80質量%/45〜20質量%が好ましい。
本発明においては、導電性ペーストを加熱処理すると、ある温度に達すると有機溶媒(S)の蒸発、及び/又は有機溶媒(S)の蒸発と有機バインダ(B)の熱分解が進行して、金属微粒子(P)の表面同士が接触した後に、互いに結合(焼結)する原理を利用するものである。
本発明の導電性ペーストにおいて、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて消泡剤、分散剤、可塑剤、界面活性剤、増粘剤等、を有機溶媒(S)中に好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下となる範囲で配合することができる。
本発明の導電性ペーストは、例えば各成分を混合した後にボールミル等の公知の混練機、捏和機等を用いて混練することにより製造することができる。
以下に導電性ペースト中の各成分とその配合割合について説明する。
(1)金属微粒子(P)
金属微粒子(P)として、(i)金属、合金、及び金属酸化物から選択された1種又は2種以上からなる、平均1次粒子径が1〜150nmの金属微粒子(P1)、又は、(ii)前記金属微粒子(P1)及び平均1次粒子径が1〜10μmの金属、合金、及び金属酸化物から選択された1種又は2種以上の金属微粒子(P2)からなり、後者の場合その配合割合(P1/P2)(質量%)が80〜100/20〜0(質量%の合計は100%)である混合物を使用することが好ましい。前記金属として、金、銀、銅、白金、パラジウム、タングステン、ニッケル、鉄、コバルト、及びタンタルの中から選択される1種又は2種以上が挙げられるがこれらの中でも導電性、加熱処理(焼結性)、市場における入手の容易性等から、銅、金、銀、ニッケル、コバルトの中から選択される1種又は2種以上が好ましい。
(イ)金属微粒子(P1)
金属微粒子(P1)の平均一次粒子径が1〜150nmであることにより、加熱処理して得られる接合体(金属多孔質体)は、金属微粒子同士が表面で接触して形成される結果、金属多孔質体中の空孔径も小さくなり、ミクロンサイズの金属微粒子からなる金属多孔質体と比較して、熱サイクル特性が向上して優れた耐クラック性が得られる。
平均一次粒子径が1〜150nmある導電性金属微粒子(P1)の製造方法としては、特に制限はなく、例えば湿式化学還元法、アトマイズ法、めっき法、プラズマCVD法、MOCVD法等の方法を用いることができる。湿式化学還元法の例としては、金属イオンが存在する電解水溶液から、電解還元、無電解還元等の還元反応による製造方法が挙げられ、具体的には、特開2008−231564号公報に開示された方法を採用することができる。該公報に開示された製造方法を採用する際に、金属イオンの還元反応終了後に還元反応水溶液に凝集剤を添加して該水溶液から遠心分離等の操作により不純物を除去後回収された導電性金属微粒子(P1)に分散媒(D)等を混合、混練して、本発明の導電性ペーストを製造することができる。
(ロ)金属微粒子(P1)と金属微粒子(P2)からなる金属微粒子(P)
金属微粒子(P)としては、平均一次粒子径が1〜150nmの金属微粒子(P1)と、平均一次粒子径が1〜10μmの金属微粒子(P2)からなり、それぞれの配合割合(P1/P2)が80〜95質量%/20〜5質量%(質量%の合計は100質量%である)である金属微粒子(P)を使用することもできる。
金属微粒子(P)を構成する金属微粒子(P1)と金属微粒子(P2)とは同種の金属であることが好ましく、金属微粒子(P)としては導電性ペーストに含有されていて、加熱・焼結後に導電性の接合体としての機能を発揮するものであれば使用可能である。
ここで、金属微粒子(P1)の平均一次粒子径は、1〜150nmである。該平均一次粒子径が1nm未満では、焼成により均質な粒子径と空孔を有する多孔質体を形成することが困難になるおそれがある。一方、導電性ペーストを加熱処理する際に金属微粒子(P1)は平均一次粒子径が1〜10μmである金属微粒子(P2)間に存在するので、金属微粒子(P1)の平均一次粒子径が150nmを超えると、金属微粒子(P2)間に安定的に存在しづらくなり、本発明の効果を発揮できなくなる場合がある。
金属微粒子(P2)の平均一次粒子径は、1〜10μmである。金属微粒子(P2)の平均一次粒子径がかかる範囲であることにより、金属微粒子(P1)の平均一次粒子径との粒子径の差が確保できて、加熱処理する際に金属微粒子(P1)の自由な移動を効果的に抑制することができる。金属微粒子(P)中における、金属微粒子(P1)と金属微粒子(P2)との配合割合(P1/P2)は80〜95質量%/20〜5質量%である。かかる配合割合とすることにより、導電性ペーストを加熱処理して形成される,金属多孔質体からなる導電性バンプにおいて、金属微粒子(P2)が偏在することなく、分散させることが可能になる。
(2)分散媒(D)
分散媒(D)には、必須成分として、有機溶媒(S)と突沸抑制溶媒(T)が含まれ、任意成分として、蒸発抑制溶媒(U)、有機バインダ(B)等が含まれる。
分散媒(D)は、導電性ペースト中で金属微粒子(P)を均一に分散させると共に、長期間の保存安定性を可能とし、導電性ペーストを塗布又はパターニング後に基板上等で焼成して導電性の接合体等を形成する際に金属微粒子(P)の焼結を促進して突沸を抑制すると共に、導電性の高い焼結体を得ることを可能にする作用を発揮する。
(2−1)有機溶媒(S)
有機溶媒(S)は、(i)常圧における沸点が100℃以上で、かつ分子中に1もしくは2以上のヒドロキシル基(−OH)を有するアルコール及び/もしくは多価アルコールからなる有機溶媒(S1)、
又は(ii)少なくとも、常圧における沸点が100℃以上で、かつ分子中に1又は2以上のヒドロキシル基(−OH)を有するアルコール及び/もしくは多価アルコールからなる有機溶媒(S1)5〜95体積%、及びアミド基(−C(=O)N−)を有する有機溶媒(SA)95〜5体積%からなる有機溶媒(S2)である。
(イ)有機溶媒(S1)について
前記有機溶媒(S1)が、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2,3−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセロール、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、トレイトール、エリトリトール、ペンタエリスリトール、ペンチトール、ヘキシトール、及びイミノジエタノールの中から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
尚、分子中に1のヒドロキシル基(−OH)を有するアルコールとしては炭素原子数1〜12の脂肪族アルコールを挙げることができる。
有機溶媒(S1)は、導電性ペーストを長期間保存しても金属微粒子(P)が凝集するのを抑制して分散安定性を向上する作用を有する。また、有機溶媒(S1)は、金属基材等上で加熱して金属微粒子(P)を焼結させる際に、100〜150℃程度の温度で予備加熱されることにより分解し始めて水素ラジカルを発生し、金属微粒子(P)表面及び金属基材表面で還元作用を発揮してこれらの表面を活性化して焼結を促進する。
分散媒(D)を蒸発させながら有機溶媒(S1)が気化した還元性雰囲気中で金属微粒子(P)の加熱焼成を行うことにより、金属微粒子(P)の焼結体(接合体)が酸化を受けるのを抑制して、導電性の高い金属接合体を形成することが可能になる。
(ロ)有機溶媒(S2)について
有機溶媒(S2)は、少なくとも、常圧における沸点が100℃以上で、かつ分子中に1又は2以上のヒドロキシル基(−OH)を有するアルコール及び/もしくは多価アルコールからなる有機溶媒(S1)5〜95体積%、及びアミド基(−C(=O)N−)を有する有機溶媒(SA)95〜5体積%からなる。有機溶媒(S1)は、前記の通りである。 前記有機溶媒(SA)が、N−メチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、N−メチルプロパンアミド、ホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、2−ピロリジノン、ε−カプロラクタム、及びアセトアミドの中から選択される1種又は2種以上である、ことが好ましい。
導電性ペースト中に一定割合でアミド基を有する有機溶媒(SA)が存在することで、金属微粒子(P)の表面、及び他の接合端子、金属基材等における金属−アミンの過剰配位を抑制して、アミン系化合物の脱離が容易になり、150℃程度の比較的低温の加熱で接合性の高い活性度が得られて、金属微粒子(P)間の焼結、金属微粒子(P)と接合端子、金属基材等間の焼結が進行し易くなる。
また、導電性ペースト中にアミド基を有する有機溶媒(SA)が含まれることで、焼結の際に多価アルコール(S1)が熱分解により生成したケトン、アルデヒドと共沸しやすくなり、150〜300℃の低温焼結温度でも容易に除去される。これにより、有機物残留量が少なくなり、金属微粒子(P)間の接合、金属微粒子(P)と接合端子、金属基材等間の接合が強固になると共に電気抵抗と接触抵抗を低くすることができる。
(2−2)突沸抑制溶媒(T)
突沸抑制溶媒(T)は、化学構造式内にヒドロキシル基(−OH)、及びカルボニル基(−C(=O)−)を有し、かつカルボキシル基(−COOH)を有さず、分子量が50以上で沸点が100℃以上の化合物である。突沸抑制溶媒(T)を分散媒(D)中に一定割合含有させることにより、導電性ペーストを焼結する際に突沸を抑制して、接合体の体積空隙率が大きくなること等に伴う接合強度の低下を防止することが可能になる。
突沸抑制溶媒(T)中の化学構造式における、ヒドロキシル基(−OH)は水(W)や有機溶媒(S)との親和性を高めて、電離を抑制し、またカルボニル基(−C(=O)−)は、化合物の沸点を低下させると共に、蒸発潜熱を低下させる効果を発揮することが想定される。
前記突沸抑制溶媒(T)としては、ヒドロキシアセトン(分子量74、沸点146℃)、2−ヒドロキシプロパナール(分子量74)、2−ヒドロキシプロパナール(分子量74)、アセチルメチルカービノール(分子量88)、4ヒドロキシ2ブタノン(分子量88)、3−ヒドロキシブタナール(分子量88)、2−ヒドロキシ2−プロパナール(分子量88)、4−ヒドロキシブチルアルデヒド(分子量88)、乳酸エチル(分子量118、沸点155℃)、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン(分子量102)、5−ヒドロキシペンタナール(分子量102)、3−アセチル−1−プロパナール(分子量102)、3−ヒドロキシ−2−ペンタノン(分子量102)、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロパナール(分子量102)、4−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン(分子量102)、メチル2−ヒドロキシイソブチレイト(分子量102)、2−ヒドロキシ−3−メチルブタナール(分子量102)、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン(分子量116)、4−ヒドロキシ−3−ヘキサノン(分子量116)、エチル2−ヒドロキシイソブチレイト(分子量116)、6−ヒドロキシ−2−ヘキサノン(分子量116)、4−ヒドロキシ−3−メチル−2−ペンタノン(分子量116)、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ペンタノン(分子量116)、5−ヒドロキシ−2−ヘキサノン(分子量116)、4−ヒドロキシヘキサナール(分子量116)、4−ヒドロキシメチルイソブチルケトン(分子量116)、6−ヒドロキシヘキサナール(分子量116)、1−ヒドロキシ−2−ヘキサノン(分子量116)の中から選択される1種又は2種以上が挙げられる。上記化合物名の後の括弧内にはその化合物の分子量と、代表的なものの常圧における沸点を記載する。
(2−3)蒸発抑制溶媒(U)について
蒸発抑制溶媒(U)は、常圧における沸点が250℃以上のアルカノールアミン系化合物である。蒸発抑制溶媒(U)を分散媒(D)中に一定割合含有させることにより、分散媒(D)の常圧における沸点を上昇させて、突沸抑制溶媒(T)の存在と共に導電性ペーストを焼結する際に突沸を抑制して、接合体の体積空隙率が大きくなること等に伴う接合強度の低下を防止することが可能になる。
蒸発抑制溶媒(U)として、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、及びN−n−ブチルジエタノールアミンの中から選択される1種又は2種以上が例示できる。


(2−4)有機バインダ(B)について
分散媒(D)中に有機バインダ(B)を一定割合含有させることにより、導電性ペーストを半導体素子の電極端子又は回路基板の電極端子に塗布又はパターニングする際に、適度な粘調性と粘着性を発揮して塗布性と保持性を向上する。
有機バインダ(B)としては、セルロース樹脂系バインダ、アセテート樹脂系バインダ、アクリル樹脂系バインダ、ウレタン樹脂系バインダ、ポリビニルピロリドン樹脂系バインダ、ポリアミド樹脂系バインダ、ブチラール樹脂系バインダ、及びテルペン系バインダの中から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。前記セルロース樹脂系バインダがアセチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ブチルセルロース、及びニトロセルロース;アセテート樹脂系バインダがメチルグリコールアセテート、エチルグリコールアセテート、ブチルグリコールアセテート、エチルジグリコールアセテート、及びブチルジグリコールアセテート;アクリル樹脂系バインダがメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、及びブチルメタクリレート;ウレタン樹脂系バインダが2,4−トリレンジイソシアネート、及びp−フェニレンジイソシアネート;ポリビニルピロリドン樹脂系バインダがポリビニルピロリドン、及びN−ビニルピロリドン;ポリアミド樹脂系バインダがポリアミド6、ポリアミド6.6、及びポリアミド11;ブチラール樹脂系バインダがポリビニルブチラール;テルペン系バインダがピネン、シネオール、リモネン、及びテルピネオールの中からそれぞれ選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
(2−5)分散媒(D)の組成
(イ)有機分散媒(D1)について
有機分散媒(D1)中の突沸抑制溶媒(T)の割合(T/D1)(質量%)は2〜25質量%である。有機分散媒(D1)中の突沸抑制溶媒(T)の割合が前記範囲の下限未満では、導電性ペーストを加熱・焼結する際に突沸を抑制する効果が充分に発揮されないおそれがあり、一方、突沸抑制溶媒(T)の割合が前記範囲の上限を超えると突沸抑制溶媒自体の蒸発が顕著となって、吸発熱ピーク差が大きくなり導電性ペースト焼成時にクラックが生じ易くなる。
(ロ)有機分散媒(D2)について
有機分散媒(D2)中の突沸抑制溶媒(T)の割合(T/D2)(質量%)は2〜25質量%であり、
蒸発抑制溶媒(U)の割合(U/D2)(質量%)は2〜25質量%であり、
かつ有機分散媒(D2)中の突沸抑制溶媒(T)と蒸発抑制溶媒(U)の合計割合[(T+U)/D2](質量%)は35質量%以下である。
有機分散媒(D2)中の突沸抑制溶媒(T)の割合(T/D2)(質量%)が2〜25質量%については、上記有機分散媒(D1)に記載した内容と同様である。
有機分散媒(D2)中の蒸発抑制溶媒(U)の割合が前記範囲の下限未満では、蒸発を緩やかにする効果が顕著には発生せず、一方、蒸発抑制溶媒(U)の割合が前記範囲の上限を超えると蒸発抑制溶媒が顕著な蒸発をする温度で吸発熱ピーク差が大きくなりクラックが生じ易くなるおそれがある。
また、有機分散媒(D2)中の突沸抑制溶媒(T)と蒸発抑制溶媒(U)の合計割合[(T+U)/D2](質量%)を35質量%以下とすることにより、吸発熱ピーク差が大きくなるのが抑制されて蒸発が緩やかとなり焼成の際にクラックが生じにくくなる。
(ハ)有機分散媒(D3)について
有機分散媒(D3)中の突沸抑制溶媒(T)の割合(T/D3)(質量%)は2〜25質量%であり、
有機バインダ(B)の割合(B/D3)(質量%)は2〜25質量%であり、
かつ有機分散媒(D3)中の突沸抑制溶媒(T)と有機バインダ(B)の合計割合[(T+B)/D3](質量%)は35質量%以下である。
有機分散媒(D3)中の突沸抑制溶媒(T)の割合(T/D2)(質量%)が2〜25質量%については、上記有機分散媒(D1)に記載した内容と同様である。
有機分散媒(D3)の成分として有機バインダ(B)が配合されることにより、導電性ペーストの電極端子又は導電性基板表面へのパターニング性が向上すると共に、導電性ペースト焼成の際に分散媒(D)の蒸発を緩やかにする効果を発揮する。
有機分散媒(D3)中の有機バインダ(B)の割合が前記範囲の下限未満では、有機バインダ(B)の添加効果が発現せず、一方、有機バインダ(B)の割合が前記範囲の上限を超えると焼成後に残存した有機バインダがボイドを包括してしまい粗大ボイドが形成されるおそれがある。
また、有機分散媒(D2)中の突沸抑制溶媒(T)と有機バインダ(B)の合計割合[(T+B)/D3](質量%)を35質量%以下とすることにより吸発熱ピーク差が大きくなるのが抑制されて蒸発が緩やかとなるとともにバインダの効果で焼成でのクラックを生じにくくなる。
(ニ)有機分散媒(D4)について
有機分散媒(D4)中の突沸抑制溶媒(T)の割合(T/D4)(質量%)が2〜25質量%であり、
蒸発抑制溶媒(U)の割合(U/D4)(質量%)が2〜25質量%であり、
有機バインダ(B)の割合(B/D4)(質量%)が2〜15質量%であり、
かつ有機分散媒(D4)中の突沸抑制溶媒(T)と蒸発抑制溶媒(U)と有機バインダ(B)の合計割合[(T+U+B)/D4](質量%)が35質量%以下である。
有機分散媒(D3)中の突沸抑制溶媒(T)の割合(T/D2)(質量%)が2〜25質量%については、上記有機分散媒(D1)に記載した内容と同様である。
蒸発抑制溶媒(U)の割合(U/D4)(質量%)が2〜25質量%については、上記有機分散媒(D2)に記載した内容と同様である。
有機バインダ(B)の割合(B/D4)(質量%)が2〜25質量%については、上記有機分散媒(D3)に記載した内容と同様である。
また、有機分散媒(D4)中の突沸抑制溶媒(T)と蒸発抑制溶媒(U)と有機バインダ(B)の合計割合[(T+U+B)/D4](質量%)を35質量%以下とすることにより吸発熱ピーク差が大きくなるのが抑制されて蒸発が緩やかとなるとともにバインダの効果で焼成でのクラックを生じにくくなる。
〔2〕導電性ペーストの製造方法
本発明の「導電性ペースト」は、第1の態様で記載した金属微粒子(P)と、分散媒(D)とを添加して練り込むことにより製造される。
導電性ペーストの製造方法に使用する固体粒子(P)と分散媒(D)の成分と、その配合割合は第1の態様に記載した通りであり、導電性ペーストには、前記の通り必要に応じて消泡剤、分散剤、可塑剤、界面活性剤、増粘剤など公知の添加物を加えることができる。
金属微粒子(P)は、金属、合金、及び金属酸化物から選択された1種もしくは2種以上からなる、平均1次粒子径が1〜150nmの金属微粒子(P1)、又は、金属微粒子(P1)と、平均1次粒子径が1〜10μmの金属、合金、及び金属酸化物微粒子(P2)からなり、その配合割合(P1/P2)(質量%)が80〜100/20〜0(質量%の合計は100%)であることが好ましい。
平均一次粒子径1〜150nmの導電性金属微粒子(P1)は第1の態様に記載した通りであり、前述の通り、湿式化学還元法として、金属イオンが存在する電解水溶液から、電解還元、無電解還元等の還元反応による製造方法を採用することができる。又、金属微粒子(P2)を平均粒子径1〜10μmの粒子に調製するには、遊星ボールミル装置を用いて粉砕し、粒子化することができる。
導電性ペーストを製造するに際し、前記導電性金属微粒子(P1)と有機粒子(P2)とを混合後、分散媒(D)を添加してせん断応力を付加することにより、混練し、導電性ペーストを調製することができる。該せん断応力を付加する方法としては、例えば、ニーダー、三本ロール等の混練装置、密閉系で混練可能なライカイ器、捏和機等を用いることができる。混練の際、銅粉の酸化が過度に進行しないように、例えば不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
〔3〕接合体(第2の態様)
接合体(第2の態様)は、第1の態様に記載した導電性ペーストを焼成して得られる、空隙率が5〜15%であり、かつクラック及び孔径10μm以上のボイドが存在しない接合体である。本発明の接合体は、空隙率が5〜15%で、粗大ボイドやクラックが存在しないので熱サイクル特性が向上して耐クラック性、及び接合強度に優れている。また、空隙率が前記範囲の下限未満では耐クラック性の効果が顕著でなくなるおそれがあり、一方、空隙率が前記範囲の上限を超えると接合強度が低下するおそれがある。
(1)接合体の作製
第2の態様の接合体は、前記第1の態様で記載した導電性ペーストを、電子部品における半導体素子もしくは回路基板の電極端子又は導電性基板の接合面に載せた後、該導電性ペースト上に更に接合する他方の電極端子又は導電性基板の接合面を配置して加熱処理により焼結して形成された金属多孔質体からなることを特徴とする。
接合体としては、半導体素子間を接合するための導電性バンプ、半導体素子と導電性基板間を接合するための導電性ダイボンド部等の導電接合部材が挙げられるがこれらに限定されない。
導電性バンプは、導電性ペーストを電子部品における半導体素子もしくは回路基板の電極端子の接合面に載せ(塗布、印刷等も含まれる)、該導電性ペースト上に更に接合する他方の電極端子の接合面を配置した後、加熱処理、又は加圧下に加熱処理により焼結して形成される。前記接合する他方の電極端子にはワイヤボンディングを行う場合の金ワイヤ等のワイヤも含まれる。尚、前記導電性ペースト上に更に接合する他方の電極端子の接合面を配置する際に位置合わせを行うことが望ましい。
導電性ダイボンド部は、通常、導電性ペーストを電子部品における回路基板の接合面に載せ(塗布、印刷等も含まれる)、該導電性ペースト上に更に接合する他方の電極端子の接合面を配置した後、加熱処理、又は加圧下に加熱処理により焼結して形成される。
前記加圧下の加熱処理は、両電極端子間、又は電極端子と導電性基板間の加圧により接合体と、電極端子接合面又は導電性基板との接合を確実にするか、又は導電接合部材と電極端子との接合面、又は接合体と導電性基板との接合面との接合面積が大きくなり、接合信頼性を一層向上することができる。
また、接合体前躯体と半導体素子間、又は接合体前躯体と基板間を加圧型ヒートツ−ル等を用いて加圧下で焼成すると、接合部での焼結性が向上してより良好な接合部が得られる。
前記両電極端子間、又は電極端子と基板間の加圧は、0.5〜15MPaが好ましい。該加圧が0.5MPa以上の加圧で、接合面の大きなボイド形成の抑制効果が充分に発揮され、一方、15MPaを超えると導電性金属微粒子(P1)間の空隙部が圧縮されて空隙率が減少するおそれがある。また、前記電極端子の接合面の面積は.25〜400cmであることが好ましい。
導電性ペーストを半導体素子の電極端子の接合面上に載せて導電性バンプ前駆体、導電性ダイボンド部前駆体等の接合体前躯体を形成する手段としては、例えば公知のスクリーン印刷、後述するレジスト等により開口部を形成して該開口部に導電性ペーストを塗布する方法等が挙げられる。スクリーン印刷を使用する場合には、半導体素子の電極端子の接合面上に版膜(レジスト)が設けられたスクリーン版を配置して、その上に導電性ペーストを載せてスキージで該ペーストを摺動すると、導電性ペーストはレジストのない部分のスクリーンを通過して、電極端子の接合面上に転移して、導電性バンプ前駆体、導電性ダイボンド部前駆体等の接合体前躯体が形成される。導電性ペーストを充填するための開口部形成方法としては、露光・現像工程を経て感光性樹脂層にパターンを形成するフォトリソグラフィー方法、レーザー光、電子線、イオンビーム等の高エネルギー線を素子上に設けた絶縁樹脂層に照射して、加熱による溶融もしくは樹脂の分子結合を切断するアブレーションにより該樹脂層に開口部を形成する方法がある。これらの中で、実用性の点からフォトリソグラフィー法、又はレーザー光を用いたアブレーションによる開口部形成方法が好ましい。加熱処理後に、半導体素子上の電極端子と、回路基板の電極端子とが電気的接続を確保できるように接触させるための位置合わせは、例えば、半導体素子上の電極端子と、テープリール等で搬送されてきた基板の接続電極端子部とを光学装置等を用いて行うことができる。
半導体素子の電極端子面等の上に形成され、対となる端子電極と接している状態の導電性バンプ前駆体、導電性ダイボンド部前駆体等の接合体前躯体は、150〜400℃程度の温度で加熱処理(焼結)して導電性バンプ、導電性ダイボンド部等の接合体を形成し、半導体素子の電極端子等と相対する端子電極等を該導電性バンプ、導電性ダイボンド部等の接合体を介して電気的、機械的に接合する。前記導電性ペーストを焼成する際の昇温速度が10℃/分以下であることが好ましい。該昇温速度が10℃/分以下で粗大ボイドやクラックが発生するのを効果的に抑制して、空隙率が5〜15%の接合体を作製することができる。
尚、前記導電性ペーストを昇温5℃/分で焼結する際の、示差熱測定装置を用いて測定した120〜160℃間の吸発熱差は本発明の有機分散媒を使用することにより、突沸が抑制されるので熱伝対起電力測定値で4μV以下とすることが可能である。
導電性金属微粒子(P1)として平均一次粒子径が1〜150nmの粒子を使用するので、加熱により分散媒(D)が除去されれば、その表面のエネルギーによってバルク状態の金属の融点より低温で凝集して、金属微粒子表面間での結合(焼結)が進み、金属多孔質体からなる導電性バンプ、導電性ダイボンド部等の接合体が形成される。
(2)接合体
上記加熱処理により、金属微粒子(P)同士が面接触して、結合(焼結)して形成された金属多孔質体からなる導電性バンプ、導電性ダイボンド部等の接合体が形成されることで、適度な弾力性と柔らかさを有し、かつ、良好な導電性が得られる。このようにして得られる金属多孔質体からなる接合体は、空隙率が5〜15%であり、かつラック及び孔径10μm以上のボイドが存在しない均質な金属多孔質体である。
上記空隙率の測定方法は、接合体を未硬化のエポキシ樹脂溶液中に埋め込んだ後に、該エポキシ樹脂溶液を硬化させた。次に、エポキシ樹脂硬化物に埋め込まれた接合体を厚み方向に等分されるように切断後、該断面部を研磨することにより表面加工された接合体断面を電子顕微鏡で観察して、任意の断面積(10mm×10mm)当たりの空隙率を測定して求められる。
本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1〜3、及び比較例1〜3において、評価用導電性ペーストを作製しそれぞれ評価を行った。
本実施例、比較例における評価方法を以下の(イ)〜(ニ)に記載する。
(イ)吸発熱差
示差熱−熱質量同時測定(TG−DTA)装置を使用して、評価用導電性ペーストサンプルについて、ヘリウム流通下に、昇温速度5℃/分で室温から400℃までの昇温行い、TG−DTA曲線のチャートを得た。該示差熱曲線(DTA)から、120℃から160℃における吸発熱差を算出した。
評価基準は下記の通りとした。
吸発熱差が4μV未満:○
吸発熱差が4μV以上7μV未満:△
吸発熱差が7μV以上:×
(ロ)接合体の空隙率
調製した導電性ペーストを基材(銅板)上に塗工厚50μm、塗工面積10mm×10mmで塗工後、窒素雰囲気下で5℃/分の昇温速度で加熱し200℃で60分保持後、自然冷却して接合体(サイズ:10mm×10mm、厚み:15μm)を得た。
得られた接合体を未硬化のエポキシ樹脂溶液中に埋め込んだ後に、該エポキシ樹脂溶液を硬化させた。次に、エポキシ樹脂硬化物に埋め込まれた接合体の厚み方向に等分されるように切断後、該断面部をサンドペーパーを用いて手動研磨を行い、次に自動研磨装置による仕上げ研磨を行って表面加工された接合体断面を電子顕微鏡で観察して、断面積(10mm×10mm)当たりの空隙率を測定した。
評価基準は下記の通りとした。
体積空隙率が断面積当たり5〜15%:○
体積空隙率が断面積当たり15%超:×
体積空隙率が断面積当たり5%未満:×(ハ)粗大ボイドの有無
前記接合体の切断面を電子顕微鏡にて粗大ボイドの有無を観察した。
評価基準は下記の通りとした。10μm以上の粗大ボイドが観察されなかった場合:○
10μm以上の粗大ボイドが観察された場合:×
(ニ)クラックの有無
前記(ハ)で得られた切断面を電子顕微鏡にてクラックの有無を観察した。
評価基準は下記の通りとした。クラックが観察されなかった場合:○
クラックが観察された場合:×
[実施例1〜4]
実施例1において、有機溶媒としてグリセリン、突沸抑制剤としてヒドロキシアセトンをそれぞれ質量比80:20の割合で混合した有機分散媒に金属微粒子として還元水溶液中で還元生成させた銅粒子(平均一次粒子径:0.15μm)を、銅粒子質量と有機分散媒の質量比が65:35となるように添加して試料計10gを得た。該試料を、あわとり練太郎(シンキー社製)を用いて回転数2000rpmで1.5分間混練後、自動乳鉢にて10分間混練して導電性ペーストを得た。得られた導電性ペーストの示差熱−熱質量同時測定(TG−DTA)による吸発熱差の測定を行った。その測定チャートを図1に示す。
また、調製した前記導電性ペーストを上記方法で加熱・焼成後、自然冷却して接合体を得、該接合体の体積空隙率を測定した。また、該接合体における粗大ボイドとクラックの有無を観察した。
実施例2〜4において、表1に示す配合割合の導電性ペーストを調製した以外は、実施例1に記載したと同様にして、導電性ペーストを得、示差熱−熱質量同時測定(TG−DTA)による吸発熱差の測定、該接合体について、体積空隙率の測定、粗大ボイドとクラックの有無の観察を行った。
評価結果をまとめて表1に示す。
[実施例5、6]
有機溶媒(S1)としてグリセリンと、有機溶媒(SA)としてN−メチルアセトアミドからなる有機分散媒を使用して、表1に記載する配合割合に配合した以外は実施例1に記載した方法により、導電性ペーストを得た。該導電性ペーストを用いて、実施例1に記載したのと同様の評価を行った。
評価結果をまとめて表1に示す。
[実施例7、8]
有機溶媒としてグリセリン、突沸抑制剤としてヒドロキシアセトン、蒸発抑制溶媒としてブチルイミノジエタノールからなる有機分散媒を使用して、表1に記載する配合割合とした以外は実施例1に記載した方法により、導電性ペーストを得た。該導電性ペーストを用いて、実施例1に記載したのと同様の評価を行った。評価結果をまとめて表1に示す。
[実施例9、10]
有機溶媒としてグリセリン、とN−メチルアセトアミドからなる混合有機溶媒、突沸抑制剤としてヒドロキシアセトン、蒸発抑制溶媒としてブチルイミノジエタノールからなる有機分散媒を使用して、表1に記載する配合割合とした以外は実施例1に記載した方法により、導電性ペーストを得た。該導電性ペーストを用いて、実施例1に記載したのと同様の評価を行った。評価結果をまとめて表1に示す。
[実施例11、12]
有機溶媒としてグリセリン、突沸抑制剤としてヒドロキシアセトン、有機バインダとしてエチルセルロースからなる有機分散媒を使用して、表1に記載する配合割合とした以外は実施例1に記載した方法により、導電性ペーストを得た。該導電性ペーストを用いて、実施例1に記載したのと同様の評価を行った。評価結果をまとめて表1に示す。
[実施例13、14]
有機溶媒としてグリセリン、突沸抑制剤としてヒドロキシアセトン、蒸発抑制溶媒としてブチルイミノジエタノール、有機バインダとしてエチルセルロースからなる有機分散媒を使用して、表1に記載する配合割合とした以外は実施例1に記載した方法により、導電性ペーストを得た。該導電性ペーストを用いて、実施例1に記載したのと同様の評価を行った。評価結果をまとめて表1に示す。
[実施例15]
有機分散媒中に、有機溶媒としてグリセリン、突沸抑制剤としてヒドロキシアセトン、及び水を表1に示す割合になるように配合し、また銅粒子質量と有機分散媒の質量比が50:50となるように添加した以外は実施例1に記載した方法により、導電性ペーストを得た。該導電性ペーストを用いて、実施例1に記載したのと同様の評価を行った。評価結果をまとめて表1に示す。
[実施例16]
有機分散媒中に、有機溶媒としてグリセリンと、突沸抑制剤としてヒドロキシアセトンを表1に示す割合になるように配合し、銅微粒子として、平均一次粒子径150nmの銅粒子(P1)と、平均一次粒子径5.2μmの銅微粒子(P2)とをその割合(P1/P2)が90/10(質量%)となるように使用した以外は実施例1に記載した方法により、導電性ペーストを得た。該導電性ペーストを用いて、実施例1に記載したのと同様の評価を行った。評価結果をまとめて表1に示す。
[比較例1]
有機分散媒として、有機溶媒グリセリンのみを使用し、表1に記載する配合割合とした以外は実施例1に記載した方法により、導電性ペーストを得た。得られた導電性ペーストの示差熱−熱質量同時測定(TG−DTA)を行った。その測定チャートを図2に示す。
また、調製した前記導電性ペーストを上記方法で加熱・焼成後、自然冷却して接合体を得、該接合体の体積空隙率を測定した。また、該接合体における粗大ボイドとクラックの有無を観察した。
評価結果をまとめて表1に示す。
[比較例2]
有機溶媒としてグリセリンと、N−メチルアセトアミドからなる有機分散媒を使用し、表1に記載する配合割合とした以外は実施例1に記載した方法により、導電性ペーストを得た。該導電性ペーストを用いて、実施例1に記載したのと同様の評価を行った。評価結果をまとめて表1に示す。
[比較例3、4]
有機溶媒としてグリセリン、突沸抑制剤としてヒドロキシアセトンからなる有機分散媒を使用し、表1に記載する配合割合とした以外は実施例1に記載した方法により、導電性ペーストを得た。該導電性ペーストを用いて、実施例1に記載したのと同様の評価を行った。評価結果をまとめて表1に示す。
[比較例5]
有機溶媒としてグリセリン、蒸発抑制溶媒としてブチルイミノジエタノールからなる有機分散媒を使用し、表1に記載する配合割合とした以外は実施例1に記載した方法により、導電性ペーストを得た。該導電性ペーストを用いて、実施例1に記載したのと同様の評価を行った。評価結果をまとめて表1に示す。
[比較例6]
有機溶媒としてグリセリン、突沸抑制剤としてヒドロキシアセトン、蒸発抑制溶媒としてブチルイミノジエタノールからなる有機分散媒を使用し、表1に記載する配合割合とした以外は実施例1に記載した方法により、導電性ペーストを得た。該導電性ペーストを用いて、実施例1に記載したのと同様の評価を行った。評価結果をまとめて表1に示す。
[比較例7]
有機溶媒としてグリセリン、突沸抑制剤としてヒドロキシアセトン、蒸発抑制溶媒としてブチルイミノジエタノール、有機バインダとしてエチルセルロースからなる有機分散媒を使用し、表1に記載する配合割合とした以外は実施例1に記載した方法により、導電性ペーストを得た。該導電性ペーストを用いて、実施例1に記載したのと同様の評価を行った。評価結果をまとめて表1に示す。
[比較例8]
有機溶媒としてグリセリン、突沸抑制剤としてヒドロキシアセトン、蒸発抑制溶媒としてブチルイミノジエタノール、からなる有機分散媒を使用し、表1に記載する配合割合とした以外は実施例1に記載した方法により、導電性ペーストを得た。該導電性ペーストを用いて、実施例1に記載したのと同様の評価を行った。評価結果をまとめて表1に示す。
[比較例9]
有機溶媒としてグリセリン、突沸抑制剤としてヒドロキシアセトン、蒸発抑制溶媒としてブチルイミノジエタノール、有機バインダとしてエチルセルロースからなる有機分散媒を使用し、表1に記載する配合割合とした以外は実施例1に記載した方法により、導電性ペーストを得た。該導電性ペーストを用いて、実施例1に記載したのと同様の評価を行った。評価結果をまとめて表1に示す。
Figure 0005971909

Claims (13)

  1. 金属微粒子(P)、及び分散媒(D)を含み、金属微粒子(P)と分散媒(D)のそれぞれの含有量(P/D)(質量%)が50〜90/50〜10(金属微粒子(P)と分散媒(D)の質量%の合計は100質量%)の導電性ペーストであって、
    該分散媒(D)が有機溶媒(S)、及び突沸抑制溶媒(T)からなる有機分散媒(D1)であり
    有機分散媒(D1)中の突沸抑制溶媒(T)の割合(T/D1)(質量%)が2〜25質量%である、
    または
    前記分散媒(D)が有機溶媒(S)、突沸抑制溶媒(T)、及び常圧における沸点250℃以上のアルカノールアミン系化合物である蒸発抑制溶媒(U)からなる有機分散媒(D2)であり、
    有機分散媒(D2)中の突沸抑制溶媒(T)の割合(T/D2)(質量%)が2〜25質量%で、
    蒸発抑制溶媒(U)の割合(U/D2)(質量%)が2〜25質量%であり、
    かつ有機分散媒(D2)中の突沸抑制溶媒(T)と蒸発抑制溶媒(U)の合計割合[(T+U)/D2](質量%)が35質量%以下である、
    または、
    前記分散媒(D)が有機溶媒(S)、突沸抑制溶媒(T)、及び有機バインダ(B)からなる有機分散媒(D3)であり、
    有機分散媒(D3)中の突沸抑制溶媒(T)の割合(T/D3)(質量%)が2〜25質量%で、
    有機バインダ(B)の割合(B/D3)(質量%)が2〜15質量%であり、
    かつ有機分散媒(D3)中の突沸抑制溶媒(T)と有機バインダ(B)の合計割合[(T+B)/D3](質量%)が35質量%以下である、
    または
    前記分散媒(D)が有機溶媒(S)、突沸抑制溶媒(T)、常圧における沸点250℃以上のアルカノールアミン系化合物である蒸発抑制溶媒(U)、及び有機バインダ(B)からなる有機分散媒(D4)であり、
    有機分散媒(D4)中の突沸抑制溶媒(T)の割合(T/D4)(質量%)が2〜25質量%で、
    蒸発抑制溶媒(U)の割合(U/D4)(質量%)が2〜25質量%で、
    有機バインダ(B)の割合(B/D4)(質量%)が2〜15質量%であり、
    かつ有機分散媒(D4)中の突沸抑制溶媒(T)と蒸発抑制溶媒(U)と有機バインダ(B)の合計割合[(T+U+B)/D4](質量%)が35質量%以下であり、
    前記有機分散媒(D1)、前記有機分散媒(D2)、前記有機分散媒(D3)および前記有機分散媒(D4)の有機溶媒(S)が
    (i)常圧における沸点が100℃以上で、かつ分子中に1もしくは2以上のヒドロキシル基(−OH)を有するアルコール及び/もしくは多価アルコールからなる有機溶媒(S1)、
    又は(ii)少なくとも、常圧における沸点が100℃以上で、かつ分子中に1もしくは2以上のヒドロキシル基(−OH)を有するアルコール及び/もしくは多価アルコールからなる有機溶媒(S1)5〜95体積%、並びにアミド基(−C(=O)N−)を有する有機溶媒(SA)95〜5体積%からなる有機溶媒(S2)で、
    前記有機分散媒(D1)、前記有機分散媒(D2)、前記有機分散媒(D3)および前記有機分散媒(D4)の突沸抑制溶媒(T)が化学構造式内にヒドロキシル基(−OH)、及びカルボニル基(−C(=O)−)を有し、かつカルボキシル基(−COOH)を有さず、分子量が50以上で沸点が100℃以上の化合物である、
    ことを特徴とする導電性ペースト。
  2. 前記有機溶媒(S1)が、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2,3−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセロール、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、トレイトール、エリトリトール、ペンタエリスリトール、ペンチトール、ヘキシトール及びイミノジエタノールの中から選択される1種又は2種以上である、ことを特徴とする請求項1に記載の導電性ペースト。
  3. 前記有機溶媒(SA)が、N−メチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、N−メチルプロパンアミド、ホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、2−ピロリジノン、ε−カプロラクタム、及びアセトアミドの中から選択される1種又は2種以上である、ことを特徴とする請求項1または2に記載の導電性ペースト。
  4. 前記突沸抑制溶媒(T)が、ヒドロキシアセトン、2−ヒドロキシプロパナールアセチルメチルカービノール、4−ヒドロキシ−2−ブタノン、3−ヒドロキシブタナール4−ヒドロキシブチルアルデヒド、乳酸エチル、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン、5−ヒドロキシペンタナール3−ヒドロキシ−2−ペンタノン、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロパナール、4−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン、メチル−2−ヒドロキシイソブチレイト、2−ヒドロキシ−3−メチルブタナール、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−3−ヘキサノン、エチル−2−ヒドロキシイソブチレイト、6−ヒドロキシ−2−ヘキサノン、4−ヒドロキシ−3−メチル−2−ペンタノン、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ペンタノン、5−ヒドロキシ−2−ヘキサノン、4−ヒドロキシヘキサナール、4−ヒドロキシメチルイソブチルケトン、6−ヒドロキシヘキサナール、及び1−ヒドロキシ−2−ヘキサノン、の中から選択される1種又は2種以上である、ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の導電性ペースト。
  5. 前記蒸発抑制溶媒(U)がトリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、及びN−n−ブチルジエタノールアミンの中から選択される1種又は2種以上である、ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の導電性ペースト。
  6. 前記有機バインダ(B)がセルロース樹脂系バインダ、アセテート樹脂系バインダ、アクリル樹脂系バインダ、ウレタン樹脂系バインダ、ポリビニルピロリドン樹脂系バインダ、ポリアミド樹脂系バインダ、ブチラール樹脂系バインダ、及びテルペン系バインダの中から選択される1種又は2種以上である、ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の導電性ペースト。
  7. 前記導電性ペーストを加熱・焼結して金属多孔質体を形成する際に、分散媒(D)中にそれぞれ含有されている有機溶媒(S)、突沸抑制溶媒(T)、蒸発抑制溶媒(U)、及び有機バインダ(B)のいずれもが蒸発及び/又は熱分解する、ことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の導電性ペースト。
  8. 前記金属微粒子(P)が、金属、合金、及び金属酸化物から選択された1種又は2種以上からなる、平均1次粒子径が1〜150nmの金属微粒子(P1)、
    又は、前記金属微粒子(P1)と、平均1次粒子径が1〜10μmの金属、合金、及び金属酸化物から選択された1種又は2種以上の金属微粒子(P2)からなり、その配合割合(P1/P2)(質量%)が80〜100/20〜0(質量%の合計は100%)である、ことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の導電性ペースト。
  9. 前記金属微粒子(P1)と金属微粒子(P2)の質量%割合(P1/P2)が80〜95/20〜5(質量%の合計は100%)である、ことを特徴とする請求項8に記載の導電性ペースト。
  10. 前記金属微粒子(P)が金、銀、銅、ニッケル、コバルトの中から選択される1種又は2種以上である、ことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の導電性ペースト。
  11. 前記導電性ペーストを昇温5℃/分で焼結する際の、示差熱測定装置を用いて測定した120〜160℃間の吸発熱差が熱伝対起電力測定値で4μV以下である、ことを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の導電性ペースト。
  12. 導電接合部材用途として用いる、ことを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の導電性ペースト。
  13. 請求項1から12のいずれかに記載の導電性ペーストを焼成して得られる、空隙率が5〜15%であり、かつクラック及び孔径10μm以上のボイドが存在しない接合体。
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