JP5958646B2 - 車両用音響制御装置、車両用音響制御方法 - Google Patents

車両用音響制御装置、車両用音響制御方法 Download PDF

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Description

本発明は、車両用音響制御装置、及び車両用音響制御方法に関するものである。
特許文献1では、車両挙動の変化に伴って運転者の頭部が動くことに着目し、地図情報や車両の走行状態から運転者の頭部の動きを予測し、その動きに追従するように車室内の音場を制御することにより、所望の音響効果を保つことを提案している。
特許第4305333号公報
上記特許文献1記載の技術では、運転者の動きと、車室内における音場の動きとの整合性を図っている。しかしながら、一般に、運転者は自らの運転操作に基づいて、その後の車両挙動を想定しており、想定した車両挙動と音場の動きが整合しないと、操作フィーリングの低下を招く可能性がある。
本発明の課題は、想定される車両挙動と、車室内における音場の動きとの整合性を向上させることである。
本発明の一態様に係る車両用音響制御装置は、乗員の周囲に複数のスピーカを配置し、これら複数のスピーカを個別に駆動することで車室内の音場を制御するものである。そして、操舵操作を検出し、操舵操作に基づき推定旋回挙動を推定し、車両の旋回走行時の実旋回挙動を検出し、操舵操作を検出すると、推定旋回挙動と実旋回挙動との偏差に応じて、実旋回挙動の変化方向に車室内の音場を変化させる。
本発明によれば、推定旋回挙動と実旋回挙動との偏差に応じて、実際に車両挙動が変化する方向に、車室内の音場を変化させることにより、実際に車両挙動が変化する前に、操舵操作に応じた車両挙動の変化を演出することができる。したがって、想定される車両挙動と、車室内における音場の動きとの整合性を向上させることができる。
車両用音響制御装置の構成図である。 第1実施形態における音響制御処理の一例を示すブロック図である。 音場回転量αの設定に用いるマップの一例である。 音場回転量αの設定に用いるマップの一例である(不感帯、リミット)。 音場回転量αの設定に用いるマップの一例である(ヒステリシス)。 平面視の車室空間を模式的に示した図である。 第1実施形態における音響制御処理の一例を示すフローチャートである。 実際の車両挙動の応答差について説明したタイムチャートである。 挙動変化の認識タイミングについて説明したタイムチャートである。 仮想壁について説明した図である。 第2実施形態における音響制御処理の一例を示すブロック図である。 音場回転量αの設定に用いるマップの一例である。 音場回転量αの設定に用いるマップの一例である(不感帯、リミット)。 音場回転量αの設定に用いるマップの一例である(ヒステリシス)。 第2実施形態における音響制御処理の一例を示すフローチャートである。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
《第1実施形態》
《構成》
先ず、車両用音響制御装置の構成について説明する。
図1は、車両用音響制御装置の構成図である。
車両用音響制御装置は、自動車に搭載されており、音響機器11と、操舵角センサ12と、車輪速センサ13と、6軸モーションセンサ14と、アクセルセンサ15と、マスタバック圧力センサ16と、ナビゲーションシステム17と、サスペンションストロークセンサ18と、コントローラ21と、を備える。
音響機器11は、2チャンネル以上の音声を再生する所謂ステレオフォニック再生が可能な音声信号を出力する。この音響機器11は、例えばCDドライブ、DVDドライブ、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリドライブ、AM/FM/TVチューナ、ポータブルオーディオプレイヤ等からなる。すなわち、CDドライブ、DVDドライブ、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリドライブ等により、各種記憶媒体から音声情報を読み出したり、AM/FM/TVチューナ等を介した無線通信により、音声情報を受信したり、USBインターフェイスや無線通信モジュールを介して接続されたポータブルオーディオプレイヤから音声情報を入力したりする。音響機器11は、取得した音声信号をコントローラ21へ出力する。
操舵角センサ12は、ロータリエンコーダからなり、ステアリングシャフトの操舵角θsを検出する。この操舵角センサ12は、ステアリングシャフトと共に円板状のスケールが回転するときに、スケールのスリットを透過する光を二つのフォトトランジスタで検出し、ステアリングシャフトの回転に伴うパルス信号をコントローラ21に出力する。コントローラ21は、入力されたパルス信号からステアリングシャフトの操舵角θsを判断する。なお、は、右旋回を正の値として処理し、左旋回を負の値として処理する。
車輪速センサ13は、各車輪の車輪速度VwFL〜VwRRを検出する。この車輪速センサ13は、例えばセンサロータの磁力線を検出回路によって検出しており、センサロータの回転に伴う磁界の変化を電流信号に変換してコントローラ21に出力する。コントローラ21は、入力された電流信号から車輪速度VwFL〜VwRRを判断する。
6軸モーションセンサ14は、互いに直交する3軸(X軸、Y軸、Z軸)において、各軸方向の加速度(Gx、Gy、Gz)、及び各軸周りの角速度(ωx、ωy、ωz)を検出する。ここでは、車体前後方向をX軸とし、車体左右方向をY軸とし、車体上下方向をZ軸とする。この6軸モーションセンサ14は、加速度の場合には、例えば固定電極に対する可動電極の位置変位を静電容量の変化として検出しており、各軸方向の加速度、及び加速度と方向に比例した電圧信号に変換してコントローラ21に出力する。コントローラ21は、入力された電圧信号から加速度(Gx、Gy、Gz)を判断する。
なお、6軸モーションセンサ14は、前後方向では加速、左右方向では右旋回、上下方向ではバウンドを正の値として検出し、前後方向では減速、左右方向では左旋回、上下方向ではリバウンドを負の値として検出する。また、6軸モーションセンサ14は、角速度の場合には、例えば水晶音叉からなる振動子を交流電圧によって振動させ、そして角速度入力時のコリオリ力によって生じる振動子の歪み量を電気信号に変換してコントローラ21に出力する。コントローラ21は、入力された電気信号から角速度(ωx、ωy、ωz)を判断する。なお、6軸モーションセンサ14は、前後方向軸(ロール軸)周りでは右旋回、左右方向軸(ピッチ軸)周りでは加速、上下方向軸(ヨー軸)周りでは右旋回を正の値として検出し、前後方向軸(ロール軸)周りでは左旋回、左右方向軸(ピッチ軸)周りでは減速、上下方向軸(ヨー軸)周りでは左旋回を負の値として検出する。
アクセルセンサ15は、アクセルペダルの踏込み量に相当するペダル開度PPO(操作位置)を検出する。このアクセルセンサ15は、例えばポテンショメータであり、アクセルペダルのペダル開度PPOを電圧信号に変換してコントローラ21に出力する。コントローラ21は、入力された電圧信号からアクセルペダルのペダル開度PPOを判断する。なお、アクセルペダルが非操作位置にあるときに、ペダル開度PPOが0%となり、アクセルペダルが最大操作位置(ストロークエンド)にあるときに、ペダル開度PPOが100%となる。
マスタバック圧力センサ16は、マスタバック(ブレーキブースタ)内の圧力、つまりブレーキペダル踏力Pbを検出する。このマスタバック圧力センサ16は、マスタバック内の圧力をダイヤフラム部で受け、このダイヤフラム部を介してピエゾ抵抗素子に生じる歪みを電気抵抗の変化として検出し、圧力に比例した電圧信号に変換してコントローラ21に出力する。コントローラ21は、入力された電圧信号からマスタバック内の圧力、つまりブレーキペダル踏力Pbを判断する。
ナビゲーションシステム17は、自車両の現在位置と、その現在位置における道路地図情報を認識する。このナビゲーションシステム17は、GPS受信機を有し、四つ以上のGPS衛星から到着する電波の時間差に基づいて自車両の位置(緯度、経度、高度)と進行方向とを認識する。そして、DVD‐ROMドライブやハードディスクドライブに記憶された道路種別、道路線形、車線幅員、車両の通行方向等を含めた道路地図情報を参照し、自車両の現在位置における道路地図情報を認識しコントローラ21に出力する。なお、安全運転支援システム(DSSS:Driving Safety Support Systems)として、双方向無線通信(DSRC:Dedicated Short Range Communication)を利用し、各種データをインフラストラクチャから受信してもよい。
サスペンションストロークセンサ18は、各車輪におけるサスペンションストロークを検出する。このサスペンションストロークセンサ18は、例えばポテンショメータからなり、サスペンションリンクの回転角を電圧信号に変換してコントローラ21に出力する。具体的には、車両が静止状態にある非ストローク時に標準電圧を出力し、バウンドストローク時に標準電圧よりも小さな電圧を出力し、リバウンドストローク時に標準電圧よりも大きな電圧を出力する。コントローラ21は、入力された電圧信号から各車輪におけるサスペンションストロークを判断する。
コントローラ(ECU)21は、例えばマイクロコンピュータからなり、各センサからの検出信号に基づいて音響制御処理を実行し、アンプ(AMP)22を介してスピーカ23LFL〜23LRR、及び23UFL〜23URRを駆動する。なお、各スピーカを区別する必要のない場合は、符号を“23”として説明する。
アンプ22は、コントローラ21を介して入力される音声信号を増幅してスピーカ23に出力し、また高音域、中音域、低音域の音量を個別に調整したり、ステレオフォニック再生による音量をチャンネルごとに調整したりする。
スピーカ23は、アンプ22を介して入力される電気信号を物理的な信号に変換して音声を出力する。各スピーカ23は、車室内に設けてあり、例えばダイナミックスピーカからなる。すなわち、振動板に直結したコイルに対して電気信号を入力し、電磁誘導によるコイルの振動によって振動板を振動させることで、電気信号に応じた音声を放射する。各スピーカ23は、全帯域用のフルレンジスピーカだけではなく、低音域用のウーファ、中音域用のスコーカ、高音域用のツイータ等、2ウェイ以上のスピーカからなるマルチレンジスピーカとしてもよい。
スピーカ23の符号に付した三つの英字は、車室内の取り付け位置を表しており、一文字目は車室内の上下位置を表し、二文字目の英字は車室内の前後位置を表し、三文字目の英字は車室内の左右位置を表す。すなわち、一文字目の英字が“L”であれば車室内の下側を表し、“U”であれば車室内の上側を表す。また、二文字目の英字が“F”であれば車室内の前側を表し、“R”であれば車室内の後側を表す。また、三文字目の英字が“L”であれば車室内の左側を表し、“R”であれば車室内の右側を表す。
したがって、各スピーカ23のうち、“LFL”は車室内における下側・前側・左側に位置し、“LFR”は車室内における下側・前側・右側に位置し、“LRL”は車室内における下側・後側・左側に位置し、“LRR”は車室内における下側・後側・右側に位置する。また、“UFL”は車室内における上側・前側・左側に位置し、“UFR”は車室内における上側・前側・右側に位置し、“URL”は車室内における上側・後側・左側に位置し、“URR”は車室内における上側・後側・右側に位置する。なお、車室内における下側/上側、前側/後側、左側/右側とは、夫々、運転者のリスニングポイント、具体的には運転者の頭部(イヤーポイント)を基準とすることが好ましい。
上記が車両用音響制御装置の構成である。
次に、コントローラ21で実行する音響制御処理をブロック図に基づいて説明する。
図2は、第1実施形態における音響制御処理の一例を示すブロック図である。
音響制御処理では、音場回転量設定部31と、音声信号調整指令部32と、を備える。
音場回転量設定部31では、車両の旋回挙動を変化させる運転入力がなされた際に、実際に車両の旋回挙動が変化する方向に、車室内の音場を回転させる音場回転量αを設定する。運転入力とは、操舵角θsの変化であり、ここでは、運転者による操舵入力を想定しているが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば障害物との接触回避やレーンキープのために制御介入したり、又は自動運転したりする等、ステアリング制御を行う際のアクチュエータによる操舵入力をも含む。
ここでは、操舵角θsに基づいて操舵速度dθを算出し、この操舵速度dθに応じて音場回転量αを設定する。操舵速度dθは、操舵角θsの単位時間当たりの変化量であり、例えば操舵角θsの時間微分によって算出したり、操舵周波数のハイパスフィルタ処理により算出したりする。なお、ハイパスフィルタのカットオフ周波数は例えば0.3Hz程度である。勿論、ハイパスフィルタ処理に代えて、バンドパスフィルタ処理でもよい。そして、例えば図3〜図5に示すようなマップを参照し、操舵速度dθに応じて音場回転量αを設定する。
図3は、音場回転量αの設定に用いるマップの一例である。
このマップによれば、操舵速度dθが0から正方向に増加するほど、音場回転量αが0から正方向に増加し、操舵速度dθが0から負方向に減少するほど、音場回転量αが0から負方向に減少する。
図4は、音場回転量αの設定に用いるマップの一例である(不感帯、リミット)。
ここでは、操舵速度dθについては、0<|dθ1|<|dθ2|の関係となるdθ1及びdθ2を予め定め、音場回転量αについては、0<|αMAX|の関係となる最大回転量αMAXを予め定めている。なお、dθ1は0近傍と見なせる範囲の値に相当し、dθ2は、通常のステアリング操作で比較的早いと見なせる範囲の値に相当する。また、最大回転量αMAXは、車両毎に構造的に定まる最小旋回半径に応じて定める。そして、操舵速度dθの絶対値が0から|dθ1|の範囲にあるときには、音場回転量αが0を維持する。また、操舵速度dθの絶対値が|dθ1|から|dθ2|の範囲にあるときには、操舵速度dθが速いほど、音場回転量αが0から最大回転量αMAXの範囲で大きくなる。また、操舵速度dθの絶対値が|dθ2|よりも大きいときには、音場回転量αが最大回転量αMAXを維持する。
図5は、音場回転量αの設定に用いるマップの一例である(ヒステリシス)。
このマップは、前述した図4のマップをベースにし、操舵速度dθの絶対値が増加から減少に転じるときに、ヒステリシスを設けたものである。すなわち、操舵速度dθの絶対値を増加させていた状態から減少させると、増加から減少に転じた時点の音場回転量αを維持する。そして、操舵速度dθの絶対値の減少量が予め定めたヒステリシス量(例えばdθ1)を上回ると、音場回転量αが減少する。また、操舵速度dθの絶対値が増加から減少に転じ、0まで減少する前に再び増加に転じたときには、減少から増加に転じた時点の音場回転量αを維持する。そして、操舵速度dθの絶対値の増加量が予め定めたヒステリシス量(例えばdθ1)を上回ると、音場回転量αが増加する。
なお、単に操舵速度dθに応じて音場回転量αを設定しているが、これに限定されるものではない。例えば、操舵入力が、予め定めた操作量よりも少なかったり、予め定めた継続時間よりも短かったりしたときには、音場回転量αを0としてもよい。これにより、不必要に音場の制御がなされることを抑制する。
また、上記の操舵速度dθを操舵角θsに置換し、操舵角θsに応じて音場回転量αを設定するようにしてもよい。
上記が音場回転量αの設定である。
音声信号調整指令部32では、各スピーカ23で音声を出力している音場を、座標原点Oを中心とし、操舵方向にαだけ回転させるために、音声信号を調整する駆動指令をアンプ22へ出力する。
ここで、音場の回転について説明する。
図6は、平面視の車室空間を模式的に示した図である。
ここでは、前左のスピーカをFLとし、前右のスピーカをFRとし、これらのスピーカFL及びFRから音声を出力している音場を、座標原点Oを中心に、左方向(反時計回り)に角度αだけ回転させる場合について説明する。FL′及びFR′は、角度αだけ回転させたと仮定したスピーカ位置である。元々、前右のスピーカ位置FRから聴こえていた音声を、FR′から聴こえるようにするには、先ずベクトルOFR′を、ベクトルOFRとベクトルOFLとに分解する。そして、これらベクトルOFR及びベクトルOFLの大きさの割合に応じて、スピーカFRから出力していた音声を、スピーカFL及びFRに分配し合成する。他のスピーカも同様に分解してから、他のスピーカに分配して合成する。こうして音声信号を調整する駆動指令を生成して出力する。
上記がブロック図に基づく音響制御処理である。
次に、コントローラ21で実行する音響制御処理をフローチャート図に基づいて説明する。
図7は、第1実施形態における音響制御処理の一例を示すフローチャートである。
先ずステップS101では、操舵角θsを検出する。
続くステップS102では、例えば操舵周波数にハイパスフィルタ処理を施し、操舵速度dθ相当の値を算出する。ハイパスフィルタ処理のカットオフ周波数は例えば0.3Hz程度である。この処理では、操舵入力の定常成分を除去し、車両の旋回挙動を変化させる運転入力を抽出できればよい。
続くステップS103では、操舵速度dθに応じて音場回転量αを設定する。
続くステップS104では、各スピーカ23で音声を出力している音場を、座標原点Oを中心とし、操舵方向にαだけ回転させるために、音声信号を調整する駆動指令を生成する。
続くステップS105では、音声信号を調整する駆動指令をアンプ22に出力してから所定のメインプログラムに復帰する。
上記がフローチャートに基づく音響制御処理である。
《作用》
次に、第1実施形態の作用について説明する。
本実施形態では、平面視で乗員の周囲を囲むように、複数のスピーカ23を配置しており、これら複数のスピーカ23で、2チャンネル以上の音声をステレオフォニック再生している。そして、車両の旋回挙動を変化させる操舵入力がなされた際に、フィードフォワード制御として、実際に車両の旋回挙動が変化する方向(操舵方向)に車室内の音場を回転させる。具体的には、各チャンネルの音量配分を変化させることにより、音場を回転させる。
一般に、木が斜めに生えていると、人は道が斜面であると錯覚する傾向があり、音によっても人は自分の姿勢変化を認識することが知られている。そこで、実際に車両の旋回挙動が変化する方向に、車室内の音場を回転させると、操舵入力に応じた旋回挙動の変化を演出することができる。したがって、運転者は自らの操舵入力に基づいて旋回挙動の変化を想定しているが、その想定される旋回挙動と、音場の動きとが整合するので、操作フィーリングが向上する。
また、操舵入力がなされてから実際の車両挙動に反映されるまでには、幾らかの応答差があるが、実際に車両の旋回挙動が変化する前に、操舵入力に応じた旋回挙動の変化を演出することで、操舵入力に対する旋回挙動の応答性が向上したような感覚(印象)を乗員に(特に運転者に)与えることができる。なお、車室空間の静粛性が高いほど、上記のような音響効果が高いと考えられるため、ハイブリッド車両でのモータ走行時(EVモード)や、電気自動車等に好適である。
図8は、実際の車両挙動の応答差について説明したタイムチャートである。
ここでは、車両が略直進走行している状態からステアリング操作を開始し、車両を旋回させる場合について説明する。
ステアリング操作を開始し、操舵角θsを0から増加させた際に、これと略同時にヨーレートが発生すれば、応答差Δtは略0の理想挙動となる。しかしながら、実際の車両挙動は、操舵角θsの増加に対して、幾らかの応答差Δtが生じるものである。そこで、操舵角θsを0から増加させたときから、音場回転量αを増加させ、操舵入力に応じた旋回挙動の変化を演出することで、旋回挙動の応答性が向上したような感覚を乗員に与えることができる。
音場回転量αは、操舵速度dθに応じて設定され、操舵速度dθが速いほど、音場回転量αが大きく設定される。これは、操舵速度dθが速いほど、操舵入力から実際の車両挙動に反映されるまでの応答差が大きくなり(目立ちやすくなり)、操舵速度dθが遅いほど、操舵入力から実際の車両挙動に反映されるまでの応答差が小さくなる(目立ちにくい)からである。したがって、操舵速度dθが速いほど、音場回転量αを大きく設定することで、操舵入力に応じた旋回挙動の変化を効果的に演出することができる。
また、ステアリング操作して、一定の操舵角θsを維持(保舵)したようなときには、操舵速度dθが略0となるため、音場回転量αも略0となる。したがって、操舵入力がなされ、実際に車両の旋回挙動が変化する頃には、車室内の音場を回転させる前の、つまり通常の初期状態に復帰する。すなわち、操舵入力に対して、実際の旋回挙動が追いつく頃には、音場の回転による旋回挙動の演出を終了させる。これは、操舵入力に対して、実際の旋回挙動が既に追いついているのに、車室内の音場を回転させたままの状態にしていると、かえって不自然な演出となり、運転者に違和感を与える可能性があるからである。
また、操舵入力が、予め定めた操作量よりも少なかったり、予め定めた継続時間よりも短かったりしたときには、音場回転量αを0としてもよい。これにより、不必要に音場の制御がなされ、運転者に違和感を与えるといった事態を抑制することができる。
また、音場回転量αは、最大回転量αMAXを上限としているので、音場回転量αが不必要に大きくなり過ぎることを抑制できる。また、最大回転量αMAXは、車両毎に固有となる最小旋回半径に応じて定めているので、その車両に合った旋回挙動を演出することができる。
次に、挙動変化の認識タイミングについて説明する。
図9は、挙動変化の認識タイミングについて説明したタイムチャートである。
ここでも、車両が略直進走行している状態からステアリング操作を開始し、車両を旋回させる場合について説明する。
時点t1で、ステアリング操作を開始し、操舵角θsを0から増加させるが、この操舵入力が実際の旋回挙動に反映されるまでには、幾らかの応答差がある。すなわち、時点t1よりも後の時点t2で、ステアリング操作に応じて車両が旋回し始め、ヨーレートが発生する。本実施形態では、操舵入力がなされた時点t1で、実際に旋回挙動が変化する方向に、車室内の音場を回転させることにより、操舵入力に応じた旋回挙動の変化を演出することができる。
ここで、音場挙動の変化を聴覚によって認識するタイミングと、車両挙動の変化を視覚によって認識するタイミングとを比較する。
音場挙動を変化させ始めた時点t1から、聴覚の単純反応時間THが経過した時点t3が、音場挙動の変化を聴覚によって認識するタイミングである。また、車両挙動が変化した始めた時点t2から、視覚の単純反応時間TSが経過した時点t4が、車両挙動の変化を視覚によって認識するタイミングである。一般に、聴覚の単純反応時間THは140〜160[msec]程度であり、視覚の単純反応時間TSは180〜200[msec]程度である。したがって、車両挙動の変化タイミングよりも音場挙動の変化タイミングが早く、且つ視覚の単純反応時間よりも聴覚の単純反応時間が短いことにより、操舵入力に対する旋回挙動の応答性が向上したような感覚を乗員に効果的に与えることができる。
《応用例》
本実施形態では、音響機器11からの音声信号に基づく一次音声を調整することで、車室内の音場を制御しているが、これに限定されるものではない。例えば、平面視で車両の周囲を囲む仮想壁があると仮定し、一次音声の仮想壁からの反響音を想定して生成し、その反響音を各スピーカ23で二次音声として出力し、且つ操舵入力がなされた際に、実際に旋回挙動が変化する方向に、仮想壁を回転させるようにしてもよい。
図10は、仮想壁について説明した図である。
ここで、車室空間の中心から放射状に広がる波紋(点線)は、音響機器11からの音声信号に基づく一次音声である。また、平面視で車両の周囲を囲む四角(二重実線)は、仮想壁33である。また、仮想壁33の各辺から車室空間の中心に向かう波紋(一点鎖線)は、一次音声の仮想壁33からの反響音である。
図中の(a)は、略直進走行しており、車両を旋回させる操舵入力がなされていない状態を示し、図中の(b)は、(a)の状態から車両を旋回させる操舵入力がなされた後の状態を示す。
一次音声を各スピーカ23で出力すると共に、車両の周囲を囲む仮想壁33があると仮定し、一次音声の仮想壁33からの反響音を生成し、これを二次音声として各スピーカ23で出力すると、ホールや教会等で聴取するような音響効果を模擬的に再現することができる。したがって、単に一次音声による音場を回転させるだけでなく、この仮想壁33を回転させ、二時音声をも回転させることで、音場の回転をよりリアルに演出し、臨場感のある音響効果を得ることができる。
以上、スピーカ23LFL〜23LRR、23UFL〜23URRが「複数のスピーカ」に対応し、コントローラ21で実行する音響制御処理が「音場制御部」に対応する。
《効果》
次に、第1実施形態における主要部の効果を記す。
(1)本実施形態の車両用音響制御装置では、乗員の周囲に配置された複数のスピーカ23と、複数のスピーカ23を個別に駆動することで車室内の音場を制御するコントローラ21と、を備える。コントローラ21は、車両挙動を変化させる運転入力がなされたときに、その運転入力に応じて、実際に車両挙動が変化する方向に、車室内の音場を変化させる。
このように、実際に車両挙動が変化する方向に車室内の音場を変化させることにより、運転入力に応じた車両挙動の変化を演出するので、想定される車両挙動と、車室内における音場の動きとの整合性を向上させることができる。
(2)本実施形態の車両用音響制御装置では、複数のスピーカ23は、平面視で乗員の周囲を囲むように配置され、コントローラ21は、車両の旋回挙動を変化させる運転入力がなされたときに、実際に車両の旋回挙動が変化する方向に、車室内の音場を回転させる。
このように、車両の旋回挙動が変化する方向に車室内の音場を変化させることにより、運転入力に応じた旋回挙動の変化を演出するので、想定される旋回挙動と、車室内における音場の動きとの整合性を向上させることができる。
(3)本実施形態の車両用音響制御装置では、コントローラ21は、車両の旋回挙動を変化させる操舵速度dθが速いほど、音場の回転量αを大きくする。
このように、操舵速度dθが速いほど、音場の回転量αを大きくすることにより、操舵入力に応じた旋回挙動の変化を効果的に演出することができる。
(4)本実施形態の車両用音響制御装置では、音場を回転させる際の最大回転量αMAXは、車両毎に定まる最小旋回半径に応じて決定される。
このように、車両毎に定まる最小旋回半径に応じて、音場の最大回転量αMAXを定めることにより、その車両に合った旋回挙動を演出することができる。
(5)本実施形態の車両用音響制御装置では、コントローラ21は、2チャンネル以上の音声を再生するステレオフォニック再生が可能な音声信号によって複数のスピーカ23を駆動し、各チャンネルの音量配分を変化させることにより、音場を回転させる。
このように、各チャンネルの音量配分を変化させて音場を回転させることにより、音場の制御を容易に行うことができる。
(6)本実施形態の車両用音響制御装置では、コントローラ21は、複数のスピーカ23で一次音声を出力すると共に、平面視で車両の周囲を囲む仮想壁33があると仮定し、一次音声の仮想壁33からの反響音を想定して生成し、反響音を複数のスピーカ23で二次音声として出力する。そして、車両の旋回挙動を変化させる運転入力がなされたときに、その運転入力に応じて、実際に車両の旋回挙動が変化する方向に、仮想壁33を回転させる。
このように、旋回挙動が変化する方向に、仮想壁33を回転させることにより、音場の回転をよりリアルに演出し、臨場感のある音響効果を得ることができる。
(7)本実施形態の車両用音響制御方法では、乗員の周囲に配置した複数のスピーカ23を個別に駆動することで車室内の音場を制御する。そして、車両挙動を変化させる運転入力がなされたときに、実際に車両挙動が変化する前に、その運転入力に応じて、車室内の音場を変化させることにより、運転入力に応じた車両挙動の変化を演出する。
このように、実際に車両挙動が変化する前に、運転入力に応じて車室内の音場を変化させることにより、運転入力に応じた車両挙動の変化を演出するので、想定される車両挙動と、車室内における音場の動きとの整合性を向上させることができる。
《第2実施形態》
《構成》
本実施形態は、車両の旋回挙動を変化させる運転入力がなされたときに、規範旋回挙動と実旋回挙動との偏差に応じて、実際に旋回挙動が変化する方向に、車室内の音場を回転させるものである。すなわち、実際に旋回挙動が変化する前に、運転入力に応じた旋回挙動の変化を演出する。
装置構成は、前述した第1実施形態と同じである。
次に、コントローラ21で実行する音響制御処理をブロック図に基づいて説明する。
図11は、第2実施形態における音響制御処理の一例を示すブロック図である。
音響制御処理では、規範ヨーレート設定部41と、偏差演算部42と、音場回転量設定部43と、音声信号調整指令部44と、を備える。
規範ヨーレート設定部41では、操舵角θs及び車速Vに応じて、規範ヨーレートγを設定する。
偏差演算部42では、規範ヨーレートγから実ヨーレートωz(以下γで表す)を減算することにより、規範ヨーレートγに対する実ヨーレートγの偏差Δγを演算する。なお、偏差Δγは、規範ヨーレートγに対する実ヨーレートγの不足分(応答差)を表す。したがって、規範ヨーレートγと実ヨーレートγとが同一符号で、且つ規範ヨーレートγの絶対値よりも実ヨーレートγの絶対値の方が大きいときには、偏差Δγを0とする。よって、偏差Δγが例えば負値であっても、それは実ヨーレートγが規範ヨーレートγに追いつき、且つオーバしたという意ではなく、旋回方向が負方向であることを指す。
音場回転量設定部43では、車両の旋回挙動を変化させる運転入力がなされた際に、偏差Δγに応じて、実際に車両の旋回挙動が変化する方向に、車室内の音場を回転させる音場回転量αを設定する。運転入力とは、操舵角θsの変化であり、ここでは、運転者による操舵入力を想定しているが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば障害物との接触回避やレーンキープのために制御介入したり、又は自動運転したりする等、ステアリング制御を行う際のアクチュエータによる操舵入力をも含む。
図12は、音場回転量αの設定に用いるマップの一例である。
このマップによれば、偏差Δγが0から正方向に増加するほど、音場回転量αが0から正方向に増加し、偏差Δγが0から負方向に減少するほど、音場回転量αが0から負方向に減少する。
図13は、音場回転量αの設定に用いるマップの一例である(不感帯、リミット)。
ここでは、偏差Δγについては、0<|Δγ1|<|Δγ2|の関係となるΔγ1及びΔγ2を予め定め、音場回転量αについては、0<|αMAX|の関係となる最大回転量αMAXを予め定めている。なお、Δγ1は0近傍と見なせる範囲の値に相当し、Δγ2は、通常のステアリング操作で比較的早いと見なせる範囲の値に相当する。また、最大回転量αMAXは、車両毎に構造的に定まる最小旋回半径に応じて定める。そして、偏差Δγの絶対値が0から|Δγ1|の範囲にあるときには、音場回転量αが0を維持する。また、偏差Δγの絶対値が|Δγ1|から|Δγ2|の範囲にあるときには、偏差Δγが速いほど、音場回転量αが0から最大回転量αMAXの範囲で大きくなる。また、偏差Δγの絶対値が|Δγ2|よりも大きいときには、音場回転量αが最大回転量αMAXを維持する。
図14は、音場回転量αの設定に用いるマップの一例である(ヒステリシス)。
このマップは、前述した図13のマップをベースにし、偏差Δγの絶対値が増加から減少に転じるときに、ヒステリシスを設けたものである。すなわち、偏差Δγの絶対値を増加させていた状態から減少させると、増加から減少に転じた時点の音場回転量αを維持する。そして、偏差Δγの絶対値の減少量が予め定めたヒステリシス量(例えばΔγ1)を上回ると、音場回転量αが減少する。また、偏差Δγの絶対値が増加から減少に転じ、0まで減少する前に再び増加に転じたときには、減少から増加に転じた時点の音場回転量αを維持する。そして、偏差Δγの絶対値の増加量が予め定めたヒステリシス量(例えばΔγ1)を上回ると、音場回転量αが増加する。
なお、単に偏差Δγに応じて音場回転量αを設定しているが、これに限定されるものではない。例えば、操舵入力が、予め定めた操作量よりも少なかったり、予め定めた継続時間よりも短かったりしたときには、音場回転量αを0としてもよい。これにより、不必要に音場の制御がなされることを抑制する。
また、偏差Δγの積分により、規範ヨー角φに対する実ヨー角φの偏差Δφを演算し、上記の偏差Δγの代わりに、偏差Δφに応じて音場回転量αを設定するようにしてもよい。
また、偏差Δγに対して、車速Vや横加速度Gyに応じたゲインを乗じることにより、偏差Δγを補正してもよい。
上記が音場回転量αの設定である。
音声信号調整指令部44では、各スピーカ23で音声を出力している音場を、座標原点Oを中心とし、操舵方向にαだけ回転させるために、音声信号を調整する駆動指令をアンプ22へ出力する。
上記がブロック図に基づく音響制御処理である。
次に、コントローラ21で実行する音響制御処理をフローチャート図に基づいて説明する。
図15は、第2実施形態における音響制御処理の一例を示すフローチャートである。
先ずステップS201では、操舵角θsを検出する。
続くステップS202では、車速Vを検出する。
続くステップS203では、二輪モデルを用い、操舵角θs及び車速Vに応じて、規範ヨーレートγを設定する。
続くステップS204では、実ヨーレートγを検出する。
続くステップS205では、規範ヨーレートγに対する実ヨーレートγの偏差Δγ(=γ−γ)を演算する。
続くステップS206では、偏差Δγに応じて音場回転量αを設定する。
続くステップS207では、各スピーカ23で音声を出力している音場を、座標原点Oを中心とし、操舵方向にαだけ回転させるために、音声信号を調整する駆動指令を生成する。
続くステップS208では、音声信号を調整する駆動指令をアンプ22に出力してから所定のメインプログラムに復帰する。
上記がフローチャートに基づく音響制御処理である。
《作用》
次に、第2実施形態の作用について説明する。
本実施形態では、平面視で乗員の周囲を囲むように、複数のスピーカ23を配置しており、これら複数のスピーカ23で、2チャンネル以上の音声をステレオフォニック再生している。そして、車両の旋回挙動を変化させる操舵入力がなされた際に、フィードバック制御として、規範ヨーレートγに対する実ヨーレートγの偏差Δγを演算し、この偏差Δγに応じて、実際に車両の旋回挙動が変化する方向(操舵方向)に車室内の音場を回転させる。具体的には、各チャンネルの音量配分を変化させることにより、音場を回転させる。
一般に、木が斜めに生えていると、人は道が斜面であると錯覚する傾向があり、音によっても人は自分の姿勢変化を認識することが知られている。そこで、偏差Δγに応じて、実際に車両の旋回挙動が変化する方向に、車室内の音場を回転させると、操舵入力に応じた旋回挙動の変化を演出することができる。したがって、運転者は自らの操舵入力に基づいて旋回挙動の変化を想定しているが、その想定される旋回挙動と、音場の動きとが整合するので、操作フィーリングが向上する。
このとき、操舵入力がなされてから実際の車両挙動に反映されるまでには、幾らかの応答差があるが、実際に車両の旋回挙動が変化する前に、操舵入力に応じた旋回挙動の変化を演出することで、操舵入力に対する旋回挙動の応答性が向上したような感覚(印象)を乗員に(特に運転者に)与えることができる。なお、車室空間の静粛性が高いほど、上記のような音響効果が高いと考えられるため、ハイブリッド車両でのモータ走行時(EVモード)や、電気自動車等に好適である。
ここで、車両が略直進走行している状態からステアリング操作を開始し、車両を旋回させる場合について説明する。
ステアリング操作を開始し、操舵角θsを0から増加させた際に、これと略同時にヨーレートが発生すれば、応答差Δtは略0の理想挙動(略規範ヨーレートγ)となる。しかしながら、実際の車両挙動は、操舵角θsの増加に対して、幾らかの応答差Δtが生じるものである。そこで、操舵角θsを0から増加させ、規範ヨーレートγに対して実ヨーレートγに応答差が生じているときには、音場回転量αを増加させ、操舵入力に応じた旋回挙動の変化を演出することで、旋回挙動の応答性が向上したような感覚を乗員に与えることができる。
音場回転量αは、偏差Δγに応じて設定され、偏差Δγが大きいほど、音場回転量αが大きく設定される。このように、偏差Δγが大きいほど、音場回転量αを大きく設定することで、操舵入力に応じた旋回挙動の変化を効果的に演出することができる。また、規範ヨーレートγに対して実ヨーレートγが次第に追いつき、偏差Δγが小さくなるときに、音場回転量αが小さくされてゆく。そして、偏差Δγが解消されたときに、音場回転量αが0となる。このように、実際に車両の旋回挙動が変化し始め、応答差が解消される頃には、車室内の音場を回転させる前の、つまり通常の初期状態に復帰する。すなわち、操舵入力に対して、実際の旋回挙動が追いつく頃には、音場の回転による旋回挙動の演出を終了させる。これは、操舵入力に対して、実際の旋回挙動が既に追いついているのに、車室内の音場を回転させたままの状態にしていると、かえって不自然な演出となり、運転者に違和感を与える可能性があるからである。
また、操舵入力が、予め定めた操作量よりも少なかったり、予め定めた継続時間よりも短かったりしたときには、音場回転量αを0としてもよい。これにより、不必要に音場の制御がなされ、運転者に違和感を与えるといった事態を抑制することができる。
また、音場回転量αは、最大回転量αMAXを上限としているので、音場回転量αが不必要に大きくなり過ぎることを抑制できる。また、最大回転量αMAXは、車両毎に固有となる最小旋回半径に応じて定めているので、その車両に合った旋回挙動を演出することができる。
本実施形態において、前述した第1実施形態と共通する他の部分については、同様の作用効果が得られるものとし、詳細な説明は省略する。
《応用例》
本実施形態では、規範ヨーレートγに対する実ヨーレートγの偏差Δγに応じて、実際に車両挙動が変化する方向に、車室内の音場を変化させているが、これに限定されるものではなく、例えば第1実施形態と組み合わせて採用してもよい。すなわち、車両挙動を変化させる運転入力がなされたときに、操舵速度dθが速いほど、及び偏差Δγが大きいほど、音場の回転量αを大きくする。例えば、操舵速度dθに応じて設定した回転量αと、偏差Δγに応じて設定した回転量αとの平均値を用いたり、夫々に重み付けしてから加算したりする等して、最終的な回転量αを設定してもよい。
以上、スピーカ23LFL〜23LRR、23UFL〜23URRが「複数のスピーカ」に対応し、コントローラ21で実行する音響制御処理が「音場制御部」に対応する。また、規範ヨーレート設定部41が「旋回挙動推定部」に対応し、6軸モーションセンサ14が「実旋回挙動検出部」に対応する。
《効果》
次に、第2実施形態における主要部の効果を記す。
(1)本実施形態の車両用音響制御装置では、平面視で乗員の周囲を囲むように配置された複数のスピーカ23と、複数のスピーカ23を個別に駆動することで車室内の音場を制御するコントローラ21と、を備える。コントローラ21は、車両挙動を変化させる運転入力がなされたときに、その運転入力に応じた規範ヨーレートγを設定すると共に、実ヨーレートγを検出し、規範ヨーレートγに対する実ヨーレートγの偏差Δγに応じて、実際に車両挙動が変化する方向に、車室内の音場を変化させる。
このように、規範ヨーレートγと実ヨーレートγとの偏差Δγに応じて、実際に車両挙動が変化する方向に車室内の音場を変化させることにより、実際に旋回挙動が変化する前に、運転入力に応じた車両挙動の変化を演出することができる。したがって、想定される車両挙動と、車室内における音場の動きとの整合性を向上させることができる。
(2)本実施形態の車両用音響制御装置では、コントローラ21は、車両の旋回挙動を変化させる偏差Δγが大きいほど、音場の回転量αを大きくする。
このように、偏差Δγが大きいほど、音場の回転量αを大きくすることにより、操舵入力に応じた旋回挙動の変化を効果的に演出することができる。
(3)本実施形態の車両用音響制御装置では、音場を回転させる際の最大回転量αMAXは、車両毎に定まる最小旋回半径に応じて決定される。
このように、車両毎に定まる最小旋回半径に応じて、音場の最大回転量αMAXを定めることにより、その車両に合った旋回挙動を演出することができる。
(4)本実施形態の車両用音響制御装置では、コントローラ21は、2チャンネル以上の音声を再生するステレオフォニック再生が可能な音声信号によって複数のスピーカ23を駆動し、各チャンネルの音量配分を変化させることにより、音場を回転させる。
このように、各チャンネルの音量配分を変化させて音場を回転させることにより、音場の制御を容易に行うことができる。
(5)本実施形態の車両用音響制御装置では、コントローラ21は、複数のスピーカ23で一次音声を出力すると共に、平面視で車両の周囲を囲む仮想壁33があると仮定し、一次音声の仮想壁33からの反響音を想定して生成し、反響音を複数のスピーカ23で二次音声として出力する。そして、車両の旋回挙動を変化させる運転入力がなされたときに、偏差Δγに応じて、実際に車両の旋回挙動が変化する方向に、仮想壁33を回転させる。
このように、旋回挙動が変化する方向に、仮想壁33を回転させることにより、音場の回転をよりリアルに演出し、臨場感のある音響効果を得ることができる。
(6)本実施形態の車両用音響制御方法では、平面視で乗員の周囲を囲むように配置した複数のスピーカ23を個別に駆動することで車室内の音場を制御する。そして、車両挙動を変化させる運転入力がなされたときに、その運転入力に応じた規範ヨーレートγを設定すると共に、車両の実ヨーレートγを検出し、実際に車両挙動が変化する前に、規範ヨーレートγに対する実ヨーレートγの偏差Δγに応じて、車室内の音場を変化させることにより、運転入力に応じた車両挙動の変化を演出する。
このように、実際に車両挙動が変化する前に、規範ヨーレートγと実ヨーレートγとの偏差Δγに応じて、車室内の音場を変化させることにより、運転入力に応じた車両挙動の変化を演出するので、想定される車両挙動と、車室内における音場の動きとの整合性を向上させることができる。
以上、本願が優先権を主張する日本国特許出願P2013−091680(2013年4月24日出願)、及び日本国特許出願P2013−091681(2013年4月24日出願)の全内容は、ここに引用例として包含される。
ここでは、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく実施形態の改変は、当業者にとって自明のことである。
11 音響機器
12 操舵角センサ
13 車輪速センサ
14 6軸モーションセンサ
15 アクセルセンサ
16 マスタバック圧力センサ
17 ナビゲーションシステム
18 サスペンションストロークセンサ
21 コントローラ
22 アンプ
23 スピーカ
31 音場回転量設定部
32 音声信号調整指令部
41 規範ヨーレート設定部
42 偏差演算部
43 音場回転量設定部
44 音声信号調整指令部

Claims (8)

  1. 乗員の周囲に配置された複数のスピーカと、
    前記複数のスピーカを個別に駆動することで車室内の音場を制御する音場制御部と、
    操舵操作を検出する操舵操作検出部と、
    前記操舵操作に基づき旋回挙動を推定する旋回挙動推定部と、
    車両の旋回走行時の実旋回挙動を検出する実旋回挙動検出部と、を備え、
    前記音場制御部は、
    前記操舵操作検出部にて操舵操作を検出すると、前記旋回挙動推定部にて推定した推定旋回挙動と、前記実旋回挙動検出部にて検出した実旋回挙動との偏差に応じて、実旋回挙動の変化方向に車室内の音場を変化させることを特徴とする車両用音響制御装置。
  2. 前記音場制御部は、
    前記偏差が大きいほど、音場の変化量を大きくすることを特徴とする請求項1に記載の車両用音響制御装置。
  3. 乗員の周囲に配置された複数のスピーカと、
    前記複数のスピーカを個別に駆動することで車室内の音場を制御する音場制御部と、
    操舵操作を検出する操舵操作検出部と、を備え、
    前記音場制御部は、
    前記操舵操作検出部にて操舵操作を検出すると、実際に車両の旋回挙動が変化する前に、前記操舵操作に応じて、実旋回挙動の変化方向に車室内の音場を変化させ、実際の旋回挙動が追いつく頃には音場の変化を終了させることを特徴とする車両用音響制御装置。
  4. 前記音場制御部は、
    前記操舵操作が速いほど、音場の変化量を大きくすることを特徴とする請求項3に記載の車両用音響制御装置。
  5. 前記音場制御部が音場を変化させる際の最大変化量は、
    車両毎に定まる最小旋回半径に応じて決定されることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の車両用音響制御装置。
  6. 前記音場制御部は、
    2チャンネル以上の音声を再生するステレオフォニック再生が可能な音声信号によって前記複数のスピーカを駆動し、各チャンネルの音量配分を変化させることにより、音場を変化させることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の車両用音響制御装置。
  7. 前記音場制御部は、
    前記複数のスピーカで一次音声を出力すると共に、平面視で車両の周囲を囲む仮想壁があると仮定し、前記一次音声の前記仮想壁からの反響音を想定して生成し、前記反響音を前記複数のスピーカで二次音声として出力するものであり、
    実旋回挙動の変化方向に前記仮想壁を変化させることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の車両用音響制御装置。
  8. 乗員の周囲に配置した複数のスピーカを個別に駆動することで車室内の音場を制御するものであり、
    操舵操作を検出し、前記操舵操作に基づき推定旋回挙動を推定し、車両の旋回走行時の実旋回挙動を検出し、前記操舵操作を検出すると、前記推定旋回挙動と前記実旋回挙動との偏差に応じて、実旋回挙動の変化方向に車室内の音場を変化させることを特徴とする車両用音響制御方法。
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