JP5957214B2 - コードの製造方法、繊維−ゴム複合体の製造方法、及びタイヤの製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、レーヨンは製造工程で二硫化炭素を排出し、環境負荷が非常に高いため、環境負荷の少ない原材料で製品を製造したいという現代のニーズに合わない。
従って、環境負荷が高いにもかかわらず、一部タイヤにはレーヨンが用いられているのが現状である。
セルロース原料を溶融又は溶解するためには、セルロースの1繰り返し単位あたりに3箇所ある水酸基の分子内及び分子間の水素結合を断つ必要がある。レーヨンの製造においては、二硫化炭素によって水酸基を化学修飾し、水素結合を断つことができるため、セルロース原料を溶融または溶解することができる。このように、水酸基を化学修飾することにより紡糸し、その後水酸基を再生したセルロース繊維は、一般に再生セルロースと呼ばれる。
現在、レーヨン以外のセルロース繊維がタイヤ補強用に広く用いられない理由は、工業的に成立する方法でセルロース原料を溶融、溶解することが困難な点に加えて、繊維化する際に高い強度、切断伸度を得る方法が困難な点にある。
一般的に、強力と切断伸度は、トレードオフの関係にあり、NMMOを用いて紡糸した繊維に十分な強力を付与すると、切断伸度が低くなり、逆に、十分な切断伸度を付与すると、強力が低くなる。
例えば、特許文献1に記載されているNMMOを溶媒として用いて製造された精製セルロース繊維は、切断伸度が十分ではない。さらに、NMMOは、爆発性を有しているため、生産時の安全性が低く、爆発のリスクがあるという問題も有している。
強力は、分子配向等のみでなく、内部欠陥等の複数の要因が合わさって決まる物性であり、初期弾性率と必ずしも連動して決まる物性ではない。
イオン液体は爆発性を有さないため、生産時の安全性が高い。また、イオン液体を用いたセルロースの紡糸は、NMMOを用いた場合とは異なり、老化防止剤や界面活性剤を添加することなく行うことできる。この結果、物質及びエネルギーを節約することができる。
よって、イオン液体を用いて、強力及び切断伸度が両立する精製セルロース繊維の製造方法が望まれる。
(1)イオン液体を含む液体にセルロース原料を溶解してなるセルロース溶解液を、固形化液体に接触させて、セルロースを湿式紡糸又は乾湿式紡糸して精製セルロース繊維を得る工程を有し、
前記精製セルロース繊維は、25℃における強力TB(cN/dtex)と切断伸度EB(%)が下記式(1)及び下記式(2)を満たす精製セルロース繊維の製造方法で得られた前記精製セルロース繊維を用いてコードを製造する工程を有し、前記コード1本当たりの繊度が1400〜6000dtexであることを特徴とするコードの製造方法。
(3)前記強力TBが5.4cN/dtex以上である(1)又は(2)のコードの製造方法。
(4)前記切断伸度EBが10.0%以上である(1)〜(3)のいずれかのコードの製造方法。
(5)前記イオン液体は、カチオン部とアニオン部から成り、前記カチオン部は、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、アンモニウムイオン、及びフォスフォニウムイオンからなる群から選ばれる一種である(1)〜(4)のいずれかのコードの製造方法。
(6)前記カチオン部が下記一般式(C1)で表されるイミダゾリウムイオンである(5)のコードの製造方法。
(7)前記アニオン部がリン原子を含む化合物を有する(5)又は(6)のコードの製造方法。
(8)前記リン原子を含む化合物が、下記一般式(C2)で表されるホスフィネートイオン、ホスフェートイオン、及びホスホネイトイオンのいずれかである(7)のコードの製造方法。
(9)イオン液体を含む液体にセルロース原料を溶解してなるセルロース溶解液を、固形化液体に接触させて、セルロースを湿式紡糸又は乾湿式紡糸して精製セルロース繊維を得る工程を有し、
前記精製セルロース繊維は、25℃における強力TB(cN/dtex)と切断伸度EB(%)が下記式(1)及び下記式(2)を満たす精製セルロース繊維の製造方法で得られた前記精製セルロース繊維と、ゴム材料とを複合化する工程を有する繊維−ゴム複合体の製造方法。
(11)前記強力TBが5.4cN/dtex以上である(9)又は(10)の繊維−ゴム複合体の製造方法。
(12)前記切断伸度EBが10.0%以上である(9)〜(11)のいずれかの繊維−ゴム複合体の製造方法。
(13)前記イオン液体は、カチオン部とアニオン部から成り、前記カチオン部は、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、アンモニウムイオン、及びフォスフォニウムイオンからなる群から選ばれる一種である(9)〜(12)のいずれかの繊維−ゴム複合体の製造方法。
(14)前記カチオン部が下記一般式(C1)で表されるイミダゾリウムイオンである(13)の繊維−ゴム複合体の製造方法。
(15)前記アニオン部がリン原子を含む化合物を有する(13)又は(14)の繊維−ゴム複合体の製造方法。
(16)前記リン原子を含む化合物が、下記一般式(C2)で表されるホスフィネートイオン、ホスフェートイオン、及びホスホネイトイオンのいずれかである(15)の繊維−ゴム複合体の製造方法。
(17)(9)〜(16)のいずれかの繊維−ゴム複合体の製造方法の工程で得られた前記繊維−ゴム複合体を用いて、タイヤを製造する工程を有するタイヤの製造方法。
(18)前記繊維−ゴム複合体をカーカスプライとして用いた(17)のタイヤの製造方法。
また、本発明の精製セルロース繊維及びゴム−繊維複合体は、強力及び切断伸度に優れているため、利用価値が高い。
さらに、本発明のタイヤは、本発明のゴム−繊維複合体を用いたものであるため良好なタイヤ性能を有する
本発明の精製セルロース繊維は、イオン液体を含む液体にセルロース原料を溶解してなるセルロース溶解液を、固形化液体に接触させて、セルロースを湿式紡糸又は乾湿式紡糸してなるものである。
植物由来のセルロース原料としては、木材、綿、麻、その他の草本類等の未加工の天然植物由来のセルロース原料や、パルプ、木材粉、紙製品等の予め加工処理を施された植物由来の加工セルロース原料が挙げられる。
動物由来のセルロース原料としては、ホヤ由来のセルロース原料が挙げられる。
微生物由来のセルロース原料としては、Aerobacter属、Acetobacter属、Achromobacter属、Agrobacterium属、Alacaligenes属、Azotobacter属、Pseudomonas属、Rhizobium属、Sarcina属等に属する微生物の産生するセルロース原料が挙げられる。
再生セルロース原料としては、上記のような植物、動物、又は微生物由来のセルロース原料を、ビスコース法等の公知の方法により再生したセルロース原料が挙げられる。
なかでも、本発明におけるセルロース原料としては、イオン液体に良好に溶解するパルプが好ましい。
なかでも、本発明のイオン液体のカチオン部の好ましいものとしては、含窒素芳香族イオン、アンモニウムイオン、フォスフォニウムイオンが挙げられる。
なかでも、含窒素芳香族カチオンとしては、イミダゾリウムイオン、ピリミジニウムイオンが好ましく、下記一般式(C3)で表されるイミダゾリウムイオンがより好ましい。
炭素数1〜10のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよく、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。
直鎖状のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
分岐鎖状のアルキル基としては、具体的には、1−メチルエチル基、1,1−ジメチルエチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基などが挙げられる。
環状のアルキル基としては、単環式基であっても、多環式基であってもよい。具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等の単環式基;ノルボルニル基、アダマンチル基、イソボルニル基等の多環式基が挙げられる。
R6〜R7におけるアルキル基の炭素数は、1〜8であることが好ましい。
炭素数2〜10のアルケニル基としては、炭素数2〜10のアルキル基において、炭素−炭素間の一つの単結合を二重結合に置換したものが例示でき、好ましい例としては、ビニル基、アリル基等が挙げられる。尚、二重結合の位置は特に限定されない。
R6〜R7におけるアルケニル基の炭素数は、2〜8であることが好ましい。
また、R6〜R7は、それぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
炭素数1〜10のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよく、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。ここで、直鎖状、分岐鎖状、環状のアルキル基としては、上記R6〜R7のアルキル基と同様のものが挙げられる。
R8〜R10におけるアルキル基の炭素数は、1〜6であることが好ましく、1〜3であることがより好ましく、更にR8〜R10は水素原子であることが最も好ましい。
また、R8〜R10は、それぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
炭素数1〜30の炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。
脂肪族炭化水素基は、飽和炭化水素基(アルキル基)であることが好ましく、該アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよい。
直鎖状のアルキル基としては、炭素数が1〜20であることが好ましく、炭素数が1〜16であることがより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基等が挙げられる。
分岐鎖状のアルキル基としては、炭素数が3〜30であり、炭素数が3〜20であることが好ましく、炭素数が3〜16であることがより好ましい。具体的には、1−メチルエチル基、1,1−ジメチルエチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基などが挙げられる。
環状のアルキル基としては、炭素数が3〜30であり、炭素数が3〜20であることが好ましく、炭素数が3〜16であることがより好ましく、単環式基であっても、多環式基であってもよい。具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等の単環式基、ノルボルニル基、アダマンチル基、イソボルニル基等の多環式基が挙げられる。
芳香族炭化水素基は、炭素数が6〜30であることが好ましく、具体的には、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、ビフェニル基、トリル基等のアリール基や、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等のアリールアルキル基が挙げられる。
ここで、一般式「R4P+」中の複数のRは、それぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
また、R11〜R14は、それぞれ同じであっても、異なっていてもよいが、入手の容易さから、R11〜R14の3つ以上が同じであることが好ましい。
式(C1)で表されるカチオン部の好ましい具体例を、下記式(C5)として示す。
ハロゲンイオンとしては、クロライドイオン、ブロマイドイオン、ヨウダイドイオンが挙げられ、クロライドイオンが好ましい。
カルボキシレートイオンとしては、ホルメートイオン、アセテートイオン、プロピオネートイオン、ブチレートイオン、ヘキサノエートイオン、マレエートイオン、フマレートイオン、オキサレートイオン、レクテートイオン、ピルベートイオン等が挙げられ、ホルメートイオン、アセテートイオン、プロピオネートイオンが好ましい。
中でも、アニオン部がリン原子を含む化合物を有することが好ましく、下記一般式(C2)で表されるホスフィネートイオン、ホスフェートイオン、ホスホネイトイオンのいずれかであることがより好ましい。
R15と、R16とは、同じであっても異なっていてもよい。
また、アニオン部がリン原子を含む化合物を有するイオン液体は、アニオン部をカルボキシレートイオンとした場合と比較して、繊維の分子量が低下しにくく、耐熱性が高い(すなわち、高温下において熱分解しにくい)。このため、上記イオン液体を用いてセルロースを紡糸する際に、紡糸温度を高くすることができる。その結果、より高い紡糸温度における精製セルロース繊維の生産性を確保することができる。例えば、アニオン部をカルボキシレートイオンとした場合、紡糸温度が130℃以上という条件下において、セルロースを紡糸する生産性が低下してしまう。しかしながら、アニオン部がリン原子を含む化合物である場合、紡糸温度が150℃という高熱条件下であっても、セルロース紡糸の生産性を維持することができる。
さらに、上記アニオン部がリン原子を含む化合物を有するイオン液体を再利用した場合、再利用の収率が高い。一般的に、工業的に精製セルロース繊維を製造する場合、溶解液を固形化液体中に通して繊維化する際に流出するイオン液体はリサイクルされる。イオン液体のリサイクルは蒸留等で、イオン液体以外の液体成分を揮発させて行うため、その際に、熱をかけるので、熱安定性を備えることは重要となる。イオン液体以外の液体成分を揮発させてイオン液体を再利用する場合、熱をかけるので、耐熱性はリサイクルの収率に影響を与える。したがって、精製セルロース繊維を連続的に生産するために必要なイオン液体量、イオン液体の生産に必要な物質及びエネルギーが増加することを防ぐことができる。
好ましいイオン液体としては、1−アリル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(AmimCl)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(C2mimAc)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジエチルホスフェート(C2mimDEP)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムメチルホスホネイト(C2mimMEP)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(C4mimAc)、又は1−エチル−3−メチルイミダゾリウムホスフィネート(C2mim HPO)等が挙げられる。上記したイオン液体を用いた場合、例えば1−ブチル−3−イミダゾリウムクロライドをイオン液体として用いた場合と比較して、繊維の分子量が低下することを防ぐことができる。
なかでも、有機溶媒としては、アミド系溶媒、スルホキシド系溶媒、ニトリル系溶媒、環状エーテル系溶媒、及び芳香族アミン系溶媒からなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
スルホキシド系溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンスルホキシド等が挙げられる。
ニトリル系溶媒としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等が挙げられる。
環状エーテル系溶媒としては、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、1,3,5−トリオキサン等が挙げられる。
芳香族アミン系溶媒としては、ピリジン等が挙げられる。
また、有機溶媒の使用量は特に限定されるものではないが、セルロース原料1質量部に対して、1〜30質量部であることが好ましく、1〜25質量部であることが好ましく、3〜20質量部であることがより好ましい。上記範囲とすることにより、適度な粘度のセルロース溶解液とすることができる。
上記のような有機溶媒を、イオン液体と併せて用いることにより、セルロース原料の溶解性がより向上するため好ましい。
イオン液体を含む液体と、セルロース原料とを接触させる方法は、特に限定されるものではなく、例えば、イオン液体を含む液体にセルロース原料を添加してもよいし、セルロース原料にイオン液体を含む液体を添加してもよい。
溶解の際に加熱を行う場合、加熱温度は、30〜200℃であることが好ましく、70〜180℃であることがより好ましい。加熱を行うことにより、セルロース原料の溶解性がさらに向上するため好ましい。
攪拌の方法は、特に限定されるものではなく、攪拌子、攪拌羽根、攪拌棒等を用いてイオン液体を含む液体とセルロース原料とを機械的に攪拌してもよく、イオン液体を含む液体とセルロース原料とを密閉容器に封入し、容器を振とうすることにより攪拌してもよい。また、イオン液体を含む液体とセルロース原料とを一軸又は複数軸を有する押出機や混練機などによって溶解させてもよい。攪拌の時間は、特に限定されるものではなく、セルロース原料が好適に溶解されるまで行うことが好ましい。
なかでも、有機溶媒とイオン液体とを予め混合して混合液を製造しておくことが好ましい。この際、有機溶媒とイオン液体とが均一に混合されるよう、70〜180℃において5〜30分程度加熱しながら攪拌し、イオン液体を含む液体が均一になるまで混合しておくことが好ましい。
乾湿式紡糸とは、一般的に紡糸口金から一旦気体中に吐出されたセルロース溶解液を、固形化液体を保持する固形化槽中に導入して、セルロースを紡糸する方法であり、湿式紡糸とは、固形化槽中に配した紡糸口金から吐出されたセルロースを紡糸する方法である。
固形化槽とは、セルロースを固形化させるための前記固形化液体が保持された浴槽を意味する。かかる固形化液体としては、水、極性溶媒、及び上述したイオン液体からなる群から選ばれる一種以上が好ましく挙げられる。
極性溶媒としては、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸、1−ブタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、エタノール、メタノール、ギ酸等が挙げられる。
上記式(2)におけるTB×EBの値が、80以下であることにより、繊維の連続生産性に優れ、かかる場合に、容易に繊維−ゴム複合体を作製することができる。
強力TBは、5.1cN/dtex以上が好ましく、5.4cN/dtex以上がより好ましい。強力TBは、高いほどよいが、上記のように、TB×EBの値が80以下であることが繊維の連続生産性の観点から好ましいため、その好ましい範囲は自ずと制限される。
切断伸度EBは、タイヤに用いる観点から、10%以上が好ましく、10.5%以上がより好ましい。また、切断伸度EBが大きすぎると、強力TBが低くなり、タイヤのユニフォミティが低下することから、切断伸度EBは、30%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、17%以下が特に好ましい。
このような強力及び切断伸度に優れた精製セルロース繊維を用いたゴム−繊維複合体をカーカスプライやバンドプライに使用することで、高性能のタイヤを得ることができる。なかでも、本発明のゴム−繊維複合体をカーカスプライに使用することが好ましく、耐圧性や耐サイドカット性に優れたタイヤを得ることができる。
また、カーカスプライやベルトプライ又はベルト保護層の少なくとも一方にゴム−繊維複合体を使用してもよいが、カーカスプライやベルトプライ又はベルト保護層の両方に使用することもできる。
前記精製セルロース繊維をRFL(resolcin−formalin−latex)等の一般的な接着剤に浸漬して、ディップ処理し、乾燥工程及びベーキング工程からなる熱処理を行う。このようにして作製したディップコードをコーテイングゴム等のゴム材料と複合化し、繊維−ゴム複合体を作製する。
前記合成ゴムとしては、例えば、イソプレン、ブタジエン、クロロプレン等の共役ジエン化合物の単独重合体であるポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリクロロプレンゴム等;前記共役ジエン化合物とスチレン、アクリロニトリル、ビニルピリジン、アクリル酸、メタクリル酸、アルキルアクリレート類、アルキルメタクリレート類等のビニル化合物との共重合体であるスチレンブタジエン共重合ゴム(SBR)、ビニルピリジンブタジエンスチレン共重合ゴム、アクリロニトリルブタジエン共重合ゴム、アクリル酸ブタジエン共重合ゴム、メタアクリル酸ブタジエン共重合ゴム、メチルアクリレートブタジエン共重合ゴム、メチルメタアクリレートブタジエン共重合ゴム等;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類とジエン化合物との共重合体〔例えばイソブチレンイソプレン共重合ゴム(IIR)〕;オレフィン類と非共役ジエンとの共重合体(EPDM)〔例えばエチレン−プロピレン−シクロペンタジエン三元共重合体、エチレン−プロピレン−5−エチリデン−2−ノルボルネン三元共重合体、エチレン−プロピレン−1,4−ヘキサジエン三元共重合体〕;さらに、これら各種ゴムのハロゲン化物、例えば塩素化イソブチレンイソプレン共重合ゴム(Cl−IIR)、臭素化イソブチレンイソプレン共重合ゴム(Br−IIR)等、ノルボルネンの開環重合体が挙げられる。
上記の合成ゴムにシクロオレフィンを開環重合させて得られるポリアルケナマー〔例えばポリペンテナマー〕、オキシラン環の開環重合によって得られるゴム〔例えば硫黄加硫が可能なポリエピクロロヒドリンゴム]、ポリプロピレンオキシドゴム等の飽和弾性体をブレンドすることができる。
また、本発明で使用するゴム組成物には、例えばパラフィン系、ナフテン系、芳香族系プロセスオイル、エチレン−α−オレフィンのコオリゴマー、パラフィンワックス、流動パラフィン等の鉱物油;ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油等の植物油などのオイルを配合してもよい。
さらに、本発明で使用するゴム組成物には、常法に従い、目的、用途などに応じてカーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、クレイ、マイカ等の充填剤;亜鉛華、ステアリン酸等の加硫促進助剤;老化防止剤等の、通常ゴム業界で使用される配合剤を添加してもよい。
パルプを、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(C4AmimAc)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(C2AmimAc)、1−アリル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(AminCl)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジエチルホスフェート(C2mimDEP)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムホスフィネート(C2mim HPO)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムメチルホスホネイト(C2mimMEP)、又はN−メチルモルフォリン−N−オキシド(NMMO)に溶解したセルロース溶解液を紡糸温度に加熱後、押出機にて固形化浴中に押し出し、洗浄、乾燥の工程を経て、表1に示す実施例1〜23、比較例1〜6のマルチフィラメントを得た。
繊維を100m採取し、130℃で30分乾燥させた後、乾燥したデシケーター中で室温になるまで放冷後、重量を測定した。10000mあたり1gが1dtexとなるため、100mの重量から繊度を算出した。
10cmあたり、4回の仮撚りをした繊維について、引張試験機を用いて、25℃、55%RH条件で引張試験を行った。強力は、破断強力を繊度で除したものであり、切断伸度は、破断時の伸度である。
初期弾性率は、伸びが0.5%〜0.7%時の応力−歪曲線の接線の傾きから求めた。また、初期弾性率の単位は[cN/dtex・%]であるが、本発明においては初期弾性率の単位は[cN/dtex]という表記として定義した。
得られたマルチフィラメントを下撚りした後、前記マルチフィラメントを2本合わせて上撚りしてコードを作製した。
前記コードをRFL(resolcin−formalin−latex)接着剤に浸漬して、ディップ処理し、乾燥工程及びベーキング工程からなる熱処理を行った。乾燥工程は150℃×150秒間、1×10−3N/dtexの張力で行った。ベーキング工程は乾燥工程と同温度、同時間、同張力で乾燥工程に引き続いて行い、ディップコードを作成した。
前記ディップコードをコーテイングゴムでカレンダーし、カーカスプライ材を作製した。
前記コーテイングゴムでトッピングしたディップコードを用いて、通常の成型、加硫工程を経て、225/45R17のタイヤを作成した。
(1)耐圧試験
リム組したタイヤに水を充填し、タイヤが破壊された時点での水圧で耐圧性を評価した。
タイヤを空気圧2.0kgf/cm2 にてリム組みし、無負荷の状態で試験機に固定し、先端が半球面(直径:19mm)のプランジャーピンを50±2.5mm/分でタイヤサイド部最大巾位置に垂直に押し込んでいき、プランジャーがタイヤに接してから破壊するまでのプランジャー移動量Y(cm)と、タイヤ破壊時のプランジャー押込力F(kg)より、次式
PE=1/2・Y・F(kg・cm)
に従いプランジャーエネルギー(PE)を算出し、比較例1のコントロールタイヤを100として指数化した。
タイヤを車両に装着し、高さ120mm,角部曲率半径20mmの垂直に切り立った縁石に向かって、速度15km/hで進入角度15度の方向から乗り上げた。同一テストタイヤにつきその内圧を3kg/cm2 から0.1kg/cm2 づつ下げて試験を実施し、サイド部のカットバーストが発生した内圧p(kg/cm2 )を求めた。内圧p以下では、サイド部が撓み易くすべてカットバーストが起きる。従って、内圧pが低いほど耐サイドカット性が良好であり、逆に、内圧pが高いほどカットバーストが起こり易く、耐サイドカット性が悪いと判断した。比較例1のタイヤの内圧をp0 とし、この内圧p0 に対してテストタイヤの内圧をp1とした場合に、耐サイドカット性指数(As)は式
As=p0 ÷p1 ×100
で表すことができる。かかる試験は、3本の同一タイヤについてそれぞれ行い、3本の平均された内圧pを基に耐サイドカット性指数(As)を求めた。
一方、比較例1においては、用いた精製セルロース繊維の切断伸度が低く、コード切断までのエネルギーが低いため、良好なタイヤ性能が得られなかった。比較例2においては、用いた精製セルロース繊維の強力が低く、カーカスのトータル強力が低下するため、結果として良好なタイヤ性能が得られなかった。比較例4においては、式(1)を満たさないだけでなく、切断伸度が低いため、繊維−ゴム複合体を作製可能な繊維量を生産するだけの安定性(生産性)を得ることができず、繊維−ゴム複合体及びそれを用いたタイヤを作製することができなかった。
Claims (18)
- 前記強力TBが5.1cN/dtex以上である請求項1に記載のコードの製造方法。
- 前記強力TBが5.4cN/dtex以上である請求項1又は2に記載のコードの製造方法。
- 前記切断伸度EBが10.0%以上である請求項1〜3のいずれか一項に記載のコードの製造方法。
- 前記イオン液体は、カチオン部とアニオン部から成り、前記カチオン部は、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、アンモニウムイオン、及びフォスフォニウムイオンからなる群から選ばれる一種である請求項1〜4のいずれか一項に記載のコードの製造方法。
- 前記アニオン部がリン原子を含む化合物を有する請求項5又は6に記載のコードの製造方法。
- 前記強力TBが5.1cN/dtex以上である請求項9に記載の繊維−ゴム複合体の製造方法。
- 前記強力TBが5.4cN/dtex以上である請求項9又は10に記載の繊維−ゴム複合体の製造方法。
- 前記切断伸度EBが10.0%以上である請求項9〜11のいずれか一項に記載の繊維−ゴム複合体の製造方法。
- 前記イオン液体は、カチオン部とアニオン部から成り、前記カチオン部は、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、アンモニウムイオン、及びフォスフォニウムイオンからなる群から選ばれる一種である請求項9〜12のいずれか一項に記載の繊維−ゴム複合体の製造方法。
- 前記アニオン部がリン原子を含む化合物を有する請求項13又は14に記載の繊維−ゴム複合体の製造方法。
- 請求項9〜16のいずれか一項に記載の繊維−ゴム複合体の製造方法の工程で得られた前記繊維−ゴム複合体を用いて、タイヤを製造する工程を有するタイヤの製造方法。
- 前記繊維−ゴム複合体をカーカスプライとして用いた請求項17に記載のタイヤの製造方法。
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