JP5948142B2 - コードの製造方法、ゴム−コード複合体の製造方法及びタイヤの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、コード、ゴム−コード複合体及びタイヤに関する。
セルロース繊維は、寸法安定性が良く、接着性が高く、弾性率の温度依存性(温度変化に対する、弾性率変化)が低い等の利点があり、レーヨンとして広くタイヤに用いられている。レーヨンをタイヤの補強コード層に用いることにより、高速走行時の耐久性や操縦安定性を向上させることができるため、レーヨンは、近年要求されているタイヤの高性能化に貢献している。
しかし、レーヨンは製造工程で二硫化炭素を排出し、環境負荷が非常に高いため、環境負荷の少ない原材料で製品を製造したいという現代のニーズに合わない。
上記の寸法安定性が良く、接着性が高く、弾性率の温度依存性が低いといった特徴は、繊維材料がセルロース原料であることに大きく依存している。ポリエステル、ナイロン等の合成繊維もタイヤ用補強コードとして用いられるが、セルロース繊維と同程度の寸法安定性、接着、弾性率を得ることは困難である。
従って、環境負荷が高いにもかかわらず、一部タイヤにはレーヨンが用いられているのが現状である。
地球の環境保全が叫ばれる昨今、化石燃料に依存しないセルロースを原材料に用いることが望まれる。上述した問題点である、レーヨンの製造で環境負荷の高い二硫化炭素を使用する必要性は、セルロースを繊維化(紡糸)する際に、溶融又は溶解することにある。セルロース原料を溶融又は溶解するためには、セルロースの1繰り返し単位あたりに3箇所ある水酸基の分子内及び分子間の水素結合を断つ必要がある。レーヨンの製造においては、二硫化炭素によって水酸基を化学修飾し、水素結合を断つことができるため、セルロース原料を溶融または溶解することができる。このように、水酸基を化学修飾することにより紡糸したセルロース繊維は、一般に再生セルロースと呼ばれる。現在、レーヨン以外のセルロース繊維がタイヤ補強用に広く用いられない理由は、工業的に成立する方法でセルロース原料を溶融、溶解することが困難な点に加えて、繊維化する際に高い強度、切断伸度を得る方法が困難な点にある。
これに対して、N−メチルモルフォリン−N−オキシド(NMMO)を溶媒として用いた精製セルロース繊維(以下、リヨセルということもある。)の製造方法によれば、セルロース自体の化学修飾を伴わず、二硫化炭素を排出せずにセルロース原料を溶解することが可能であり、この方法で製造されたセルロース溶解液を用いて、セルロースを乾湿式紡糸して得られるリヨセルは、環境負荷が少ないという点および化学修飾された水酸基が残留しない点で優れている(特許文献1参照)。
しかしながら、リヨセルは、十分な強力と切断伸度の両立が得られず、タイヤの骨格材としての機能が不十分である。
一般的に、強力と切断伸度は、トレードオフの関係にあり、リヨセルに十分な強力を付与すると、切断伸度が低くなり、逆に、十分な切断伸度を付与すると、強力が低くなる。
例えば、特許文献1に記載されているリヨセルは、切断伸度が十分ではない。
更に、リヨセルは、撚糸収束性に劣るため、撚糸により強力を大きく喪失している。そのため、撚糸後の強力利用率は70%程度であり、未だ改善の余地がある。
一方、数種類のイオン液体がセルロースを効率よく溶解することが報告されている(特許文献2〜4参照)。イオン液体によるセルロースの溶解は溶媒和によるものであり、精製セルロース繊維の製造工程で二硫化炭素の様な有害物質を排出しない。前記精製セルロース繊維の製造は、溶解されたセルロースを水、アルコール、又は水とイオン液体の水溶液中を通すことで容易に達成される。このようなイオン液体を用いたセルロース繊維の紡糸は、特許文献5、6に報告されている。
特開2006−188806号公報 米国特許第1943176号明細書 特開昭60−144322号公報 特許第4242768号公報 米国特許出願公開第2008/0269477号明細書 中国特許第101328626号明細書
よって、イオン液体を用いて、強力及び切断伸度が両立する精製セルロース繊維の製造方法が望まれる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、二硫化炭素排出を抑制した環境負荷の少ない原材料を用いて製造された精製多糖類繊維を撚り合わせてなるコードであって、タイヤに用いた場合に、耐久性及び耐外傷性をタイヤに付与することができるコード、ゴム−コード複合体及びタイヤ特性に優れたタイヤを提供することを目的とする。
(1)イオン液体を含む液体に多糖類原料を溶解してなる多糖類溶解液を、固形化液体に接触させて、多糖類を紡糸してなる精製多糖類繊維を撚り合わせて、コードを得る工程を有し、
前記精製多糖類繊維は、25℃における強力TB(cN/dtex)と切断伸度EB(%)の関係が下記式(1)及び下記式(2)を満たし、かつ、前記コードの強力をCT(cN/dtex)としたときの撚糸後強力利用率(CT/TB)が70%以上であることを特徴とするコードの製造方法
Figure 0005948142
Figure 0005948142
(2)前記精製多糖類繊維は、25℃における強力TBが3.8cN/dtex以上である(1)のコードの製造方法
(3)前記精製多糖類繊維は、25℃における強力TBが5.4cN/dtex以上である(1)又は(2)のコードの製造方法
(4)前記精製多糖類繊維は、25℃における切断伸度EB(%)が8.8%以上である(1)〜(3)のいずれか一つのコードの製造方法
(5)前記精製多糖類繊維は、25℃における切断伸度EB(%)が10.0%以上である(1)〜(4)のいずれか一つのコードの製造方法
(6)前記イオン液体は、カチオン部とアニオン部からなり、前記カチオン部は、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、アンモニウムイオン、及びフォスフォニウムイオンからなる群から選ばれる一種以上である(1)〜(5)のいずれか一つのコードの製造方法
(7)前記カチオン部が下記一般式(1)で表されるイミダゾリウムイオンである(6)のコードの製造方法
Figure 0005948142
[式中、Rは、シアノ基、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数2〜4のアルケニル基を示し、Rは、水素原子又はメチル基を示し、Rはシアノ基、炭素数1〜8のアルキル基、又は炭素数2〜8のアルケニル基を示す。]
(8)前記アニオン部がクロライドイオン、ブロマイドイオン、ホルメートイオン、アセテートイオン、プロピオネートイオン、L−ラクテートイオン、メチルカーボネートイオン、アミノアセテートイオン、アミノプロピオネートイオン、ジメチルカルバメートイオン、ハイドロゲンスルフェートイオン、メチルスルフェートイオン、エチルスルフェートイオン、メタンスルフォネートイオン、ジメチルホスフェートイオン、ジエチルホスフェートイオン、メチルホスフォネートイオン、ホスフィネートイオン、チオシアネートイオン、及びジシアナミドイオンからなる群から選ばれる一種以上である(6)又は(7)のコードの製造方法
(9)前記イオン液体が1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジエチルホスフェートである(1)〜(8)のいずれか一つのコードの製造方法
(10)(1)〜(9)のいずれか一つのコードの製造方法の工程で得られたコードと、ゴム材料とを複合化する工程を有することを特徴とするゴム−コード複合体の製造方法
(11)(10)のゴム−コード複合体の製造方法の工程で得られたゴム−コード複合体を用いて、タイヤを製造する工程を有することを特徴とするタイヤの製造方法
(12)前記ゴム−コード複合体をカーカスプライとして用いた(11)のタイヤの製造方法
本発明によれば、二硫化炭素等の有害物質を生じることがないため、環境負荷を低減することができる。
また、本発明のコード及びゴム−コード複合体は、タイヤに用いた場合に、耐久性及び耐外傷性をタイヤに付与することができる。
さらに、本発明のタイヤは、本発明のゴム−コード複合体を用いたものであるため良好なタイヤ性能を有する。
本実施形態のタイヤを例示する概略断面図である。
[精製多糖類繊維]
本発明に用いられる精製多糖類繊維は、イオン液体を含む液体に多糖類原料を溶解してなる多糖類溶解液を、前記多糖類溶解液以外の液体である固形化液体に接触させて、前記多糖類を紡糸してなるものである。
本発明に用いられる多糖類原料(多糖類を含む原料)における多糖類としては、セルロース;エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、カチオン化セルロースなどのセルロース誘導体;アラビアガム;κ−カラギーナン、ι−カラギーナン、λ−カラギーナンなどのカラギーナン;グアガム;ローカストビーンガム;ペクチン;トラガント;トウモロコシデンプン;リン酸化デンプン;キサンタンガム、デキストリン等の微生物系多糖類が挙げられ、セルロースが好ましく用いられる。
本発明において、紡糸方法は、湿式紡糸又は乾湿式紡糸であることが好ましい。
前記湿式紡糸又は乾湿式紡糸の紡糸法は、特に限定されず、公知の紡糸法により多糖類を紡糸することができる。
本発明において、セルロース原料は、セルロースを含むものであれば特に限定されず、植物由来のセルロース原料であってもよく、動物由来のセルロース原料であってもよく、微生物由来のセルロース原料であってもよく、再生セルロース原料であってもよい。
植物由来のセルロース原料としては、木材、綿、麻、その他の草本類等の未加工の天然植物由来のセルロース原料や、パルプ、木材粉、紙製品等の予め加工処理を施された植物由来の加工セルロース原料が挙げられる。
動物由来のセルロース原料としては、ホヤ由来のセルロース原料が挙げられる。
微生物由来のセルロース原料としては、Aerobacter属、Acetobacter属、Achromobacter属、Agrobacterium属、Alacaligenes属、Azotobacter属、Pseudomonas属、Rhizobium属、Sarcina属等に属する微生物の産生するセルロース原料が挙げられる。
再生セルロース原料としては、上記のような植物、動物、又は微生物由来のセルロース原料を、ビスコース法等の公知の方法により再生したセルロース原料が挙げられる。
なかでも、本発明において用いられるセルロース原料としては、イオン液体に良好に溶解するパルプが好ましい。
本発明において、セルロース等を含む多糖類原料を、イオン液体を含む液体に溶解する前に、イオン液体への溶解性を向上させる目的で多糖類原料に前処理を施すことができる。前処理として具体的には、乾燥処理や、粉砕、摩砕等の物理的粉砕処理や、酸又はアルカリを用いた化学的変性処理等を行うことができる。これらはいずれも常法により行うことができる。
本発明において、イオン液体とは、100℃以下で液体であり、且つ、イオンのみからなり、カチオン部またはアニオン部、或いはその両方が有機イオンから構成される溶媒をいう。
前記イオン液体は、カチオン部とアニオン部からなるものが好ましく、イオン液体のカチオン部としては、特に限定されるものではなく、一般的にイオン液体のカチオン部に用いられるものでよい。
なかでも、本発明に用いられるイオン液体のカチオン部の好ましいものとしては、含窒素芳香族カチオン、アンモニウムイオン、フォスフォニウムイオンが挙げられる。
含窒素芳香族カチオンとして、具体的には、例えばピリジニウムイオン、ピリダジニウムイオン、ピリミジニウムイオン、ピラジニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピラゾニウムイオン、オキサゾリウムイオン、1,2,3−トリアゾリウムイオン、1,2,4−トリアゾリウムイオン、チアゾリウムイオン、ピペリジニウムイオン、ピロリジニウムイオン等が挙げられる。
なかでも、含窒素芳香族カチオンとしては、イミダゾリウムイオン、ピリミジニウムイオンが好ましく、下記一般式(C3)で表されるイミダゾリウムイオンがより好ましい。
Figure 0005948142
[式中、R〜Rは、それぞれ独立に、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数2〜10のアルケニル基であり、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜10のアルキル基である。]
式(C3)中、R〜Rは、それぞれ独立に、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数2〜10のアルケニル基である。
炭素数1〜10のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよく、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。
直鎖状のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
分岐鎖状のアルキル基としては、具体的には、1−メチルエチル基、1,1−ジメチルエチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基などが挙げられる。
環状のアルキル基としては、単環式基であっても、多環式基であってもよい。具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等の単環式基、ノルボルニル基、アダマンチル基、イソボルニル基等の多環式基が挙げられる。
〜Rにおけるアルキル基の炭素数は、1〜8であることが好ましい。
炭素数2〜10のアルケニル基としては、炭素数2〜10のアルキル基において、炭素−炭素間の一つの単結合を二重結合に置換したものが例示でき、好ましい例としては、ビニル基、アリル基等が挙げられる。尚、二重結合の位置は特に限定されない。
〜Rにおけるアルケニル基の炭素数は、2〜8であることが好ましい。
また、R〜Rは、それぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
式(C3)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜10のアルキル基である。
炭素数1〜10のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよく、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。ここで、直鎖状、分岐鎖状、環状のアルキル基としては、上記R〜Rのアルキル基と同様のものが挙げられる。
〜Rにおけるアルキル基の炭素数は、1〜6であることが好ましく、1〜3であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
また、R〜Rは、それぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
式(C3)で表されるイミダゾリウムイオンの好ましい具体例を、下記式(1)として示す。
Figure 0005948142
[式中、Rは、シアノ基、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数2〜4のアルケニル基を示し、Rは、水素原子又はメチル基を示し、Rはシアノ基、炭素数1〜8のアルキル基、又は炭素数2〜8のアルケニル基を示す。]
また、式(1)で表されるイミダゾリウムイオンの好ましい具体例を、下記式(1−1)〜(1−3)として示す。
Figure 0005948142
フォスフォニウムイオンとしては、「P」を有するものであれば特に限定されるものではなく、好ましいものとして具体的には、一般式「R(複数のRは、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜30の炭化水素基である。)」で表されるものが挙げられる。
炭素数1〜30の炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。
脂肪族炭化水素基は、飽和炭化水素基(アルキル基)であることが好ましく、該アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよい。
直鎖状のアルキル基としては、炭素数が1〜20であることが好ましく、炭素数が1〜16であることがより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基等が挙げられる。
分岐鎖状のアルキル基としては、炭素数が3〜30であり、炭素数が3〜20であることが好ましく、炭素数が3〜16であることがより好ましい。具体的には、1−メチルエチル基、1,1−ジメチルエチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基などが挙げられる。
環状のアルキル基としては、炭素数が3〜30であり、炭素数が3〜20であることが好ましく、炭素数が3〜16であることがより好ましく、単環式基であっても、多環式基であってもよい。具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等の単環式基、ノルボルニル基、アダマンチル基、イソボルニル基等の多環式基が挙げられる。
芳香族炭化水素基は、炭素数が6〜30であることが好ましく、具体的には、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、ビフェニル基、トリル基等のアリール基や、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等のアリールアルキル基が挙げられる。
ここで、一般式「R」中の複数のRは、それぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
なかでも、フォスフォニウムカチオンとしては、下記式(C1)で表されるカチオン部が好ましい。
Figure 0005948142
[式中、R31〜R34は、それぞれ独立に、炭素数1〜16のアルキル基である。]
式(C1)中、R31〜R34は、それぞれ独立に、炭素数1〜16のアルキル基である。 炭素数1〜16のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよく、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。ここで、直鎖状、分岐鎖状、環状のアルキル基としては、上記同様のものが挙げられる。
また、R31〜R34は、それぞれ同じであっても、異なっていてもよいが、入手の容易さから、R31〜R34の3つ以上が同じであることが好ましい。
なかでも、本発明において、R31〜R34のアルキル基としては、炭素数1〜14の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基がさらに好ましく、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が特に好ましい。
式(C1)で表されるカチオン部の好ましい具体例を、下記式(C2)として示す。
Figure 0005948142
本発明おいては、前記カチオン部は、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、アンモニウムイオン、及びフォスフォニウムイオンからなる群から選ばれる一種以上であることがより好ましい。
本発明において、アニオン部としてハロゲンイオン、カルボキシレートイオン、スルフェートイオン、スルフォネートイオン、ホスフェートイオン、ホスホネイトイオン、ホスフィネイトイオンが挙げられる。
ハロゲンイオンとしては、クロライドイオン、ブロマイドイオン、ヨウダイドイオンが挙げられ、クロライドイオン、ブロマイドイオンが好ましい。
カルボキシレートイオンとしては、ホルメートイオン、アセテートイオン、プロピオネートイオン、ブチレートイオン、ヘキサノエートイオン、マレエートイオン、フマレートイオン、オキサレートイオン、L−ラクテートイオン、ピルベートイオン、メチルカーボネートイオン、アミノアセテートイオン、アミノプロピオネートイオン、ジメチルカルバメートイオンが挙げられ、ホルメートイオン、アセテートイオン、プロピオネートイオン、L−ラクテートイオン、メチルカーボネートイオン、アミノアセテートイオン、アミノプロピオネートイオン、ジメチルカルバメートイオンが好ましい。
スルフェートイオンとしては、ハイドロゲンスルフェートイオン、メチルスルフェートイオン、エチルスルフェートイオン、n−プロピルスルフェートイオン、n−ブチルスルフェートイオンが挙げられ、ハイドロゲンスルフェートイオン、メチルスルフェートイオン、エチルスルフェートイオンが好ましい。
スルフォネートイオンとしては、メタンスルフォネートイオン、トルエンスルフォネート、ベンゼンスルフォネート等のイオンが挙げられ、メタンスルフォネートイオンが好ましい。
ホスフェートイオンとしては、下記一般式(A1)で表されるものが挙げられる。
Figure 0005948142
[式中、R25及びR26はそれぞれ独立に水素原子、又はアルキル基である。]
式(A1)中、R25及びR26はそれぞれ独立に水素原子、又はアルキル基であり、アルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよいが、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であることが好ましい。R25及びR26のアルキル基の炭素数は、1〜10であることが好ましく、1〜6であることがより好ましく、1〜4であることがさらに好ましく、工業上の理由から炭素数1又は2のアルキル基であることが特に好ましい。
25と、R26とは、同じであっても異なっていてもよい。
これらのホスフェートイオンの中で、ジメチルホスフェートイオン、ジエチルホスフェートイオンが好ましい。
ホスホネイトイオンとしては、下記一般式(A2)で表されるものが挙げられる。
Figure 0005948142
[式中、R25は上記と同様である。]
式(A2)中、R25は、式(A1)中のR25と同様である。
これらのホスホネイトイオンの中で、メチルホスホネイトイオンが好ましい。
ホスフィネイトイオンは、下記一般式(A3)で表される。
Figure 0005948142
また、その他のアニオン部として擬ハロゲンイオンも挙げられる。擬ハロゲンイオンは、ハロゲンイオンの特性に類似した特性を有する。擬ハロゲンイオンとしては、シアネートイオン、オキソシアネートイオン、チオシアネートイオン、セレノシアネートイオンが挙げられる。
また、ジシアナミドイオンが挙げられる。
本発明においては、前記アニオン部がクロライドイオン、ブロマイドイオン、ホルメートイオン、アセテートイオン、プロピオネートイオン、L−ラクテートイオン、メチルカーボネートイオン、アミノアセテートイオン、アミノプロピオネートイオン、ジメチルカルバメートイオン、ハイドロゲンスルフェートイオン、メチルスルフェートイオン、エチルスルフェートイオン、メタンスルフォネートイオン、ジメチルホスフェートイオン、ジエチルホスフェートイオン、メチルホスフォネートイオン、ホスフィネートイオン、チオシアネートイオン、ジシアナミドイオンからなる群から選ばれる一種以上であることがより好ましい。
本発明におけるイオン液体は、上述したようなカチオン部とアニオン部とから構成される。カチオン部とアニオン部との組合せは、特に限定されるものではなく、多糖類原料を好適に溶解しうるものを一種以上選択することができる。
好ましいイオン液体としては、1−アリル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(AmimCl)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(C2mimAc)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジエチルホスフェート(C2mimDEP、C2mim(EtO)PO)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムメチルホスホネイト(C2mimMEP、C2mim MeOHPO)、又は1−エチル−3−メチルイミダゾリウムホスフィネイト(C2mim HPO)等が挙げられ、より好ましくは1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジエチルホスフェートが挙げられる。
本発明において、イオン液体の使用量は特に限定されるものではないが、多糖類溶解液における多糖類原料の濃度としては、3〜30質量%であることが好ましく、5〜25質量%であることがより好ましい。多糖類原料の濃度が低すぎる場合、固形化過程で抜けるイオン液体が多く、緻密な繊維となり難く、強力を出し難い。一方、多糖類原料の濃度が高すぎる場合、多糖類原料を完全に溶解することができない。
本発明において、セルロース等を含む多糖類原料を溶解する液体は、上記イオン液体を含むものである。上記液体は、イオン液体以外の液体成分を含有していてもよいし、含有していなくてもよい。イオン液体以外の液体成分として具体的には、有機溶媒が挙げられる。
有機溶媒としては、イオン液体以外のものであれば特に限定されるものではなく、イオン液体との相溶性や、粘性等を考慮して適宜選択することができる。
なかでも、有機溶媒としては、アミド系溶媒、スルホキシド系溶媒、ニトリル系溶媒、環状エーテル系溶媒、及び芳香族アミン系溶媒からなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
アミド系溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドン、1−ビニル−2−ピロリドン等が挙げられる。
スルホキシド系溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンスルホキシド等が挙げられる。
ニトリル系溶媒としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等が挙げられる。
環状エーテル系溶媒としては、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、1,3,5−トリオキサン等が挙げられる。
芳香族アミン系溶媒としては、ピリジン等が挙げられる。
これらの有機溶媒を用いる場合、イオン液体と有機溶媒との配合質量比は、6:1〜0.1:1であることが好ましく、5:1〜0.2:1であることがより好ましく、4:1〜0.5:1であることがさらに好ましい。上記範囲とすることにより、多糖類原料を膨潤しやすい溶媒とすることができる。
また、有機溶媒の使用量は特に限定されるものではないが、多糖類原料1質量部に対して、1〜30質量部であることが好ましく、1〜25質量部であることが好ましく、3〜20質量部であることがより好ましい。上記範囲とすることにより、適度な粘度の多糖類溶解液とすることができる。
上記のような有機溶媒を、イオン液体と併せて用いることにより、多糖類原料の溶解性がより向上するため好ましい。
本発明において、セルロース等を含む多糖類原料を、イオン液体を含む液体に溶解する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、イオン液体を含む液体と、多糖類原料とを接触させ、必要に応じて加熱や攪拌を行うことにより、多糖類溶解液を得ることができる。
イオン液体を含む液体と、多糖類原料とを接触させる方法は、特に限定されるものではなく、例えば、イオン液体を含む液体に多糖類原料を添加してもよいし、多糖類原料にイオン液体を含む液体を添加してもよい。
溶解の際に加熱を行う場合、加熱温度は、30〜200℃であることが好ましく、70〜180℃であることがより好ましい。加熱を行うことにより、セルロース等を含む多糖類原料の溶解性がさらに向上するため好ましい。
攪拌の方法は、特に限定されるものではなく、攪拌子、攪拌羽根、攪拌棒等を用いてイオン液体を含む液体と多糖類原料とを機械的に攪拌してもよく、イオン液体を含む液体と多糖類原料とを密閉容器に封入し、容器を振とうすることにより攪拌してもよい。攪拌の時間は、特に限定されるものではなく、多糖類原料が好適に溶解されるまで行うことが好ましい。
また、イオン液体を含む液体が、イオン液体に加えて有機溶媒を含む場合、有機溶媒とイオン液体とは、予め混合しておいてもよく、イオン液体と多糖類原料とを混合した後に、有機溶媒を添加して溶解してもよく、有機溶媒と多糖類原料とを混合した後に、イオン液体を添加して溶解してもよい。
なかでも、有機溶媒とイオン液体とを予め混合して混合液を製造しておくことが好ましい。この際、有機溶媒とイオン液体とが均一に混合されるよう、70〜180℃において5〜30分程度加熱しながら攪拌し、イオン液体を含む液が均一になるまで混合しておくことが好ましい。
この様にして得られた、イオン液体を用いた多糖類溶解液は、必要に応じてカーボンナノチューブ、クレイ、シリカ等の充填剤や界面活性剤、老化防止剤等の添加物を含んでも良い。
上記のようにして得られた多糖類溶解液を、前記多糖類溶解液以外の液体である固形化液体に接触させて、多糖類を固形化して、乾湿式紡糸、湿式紡糸等の公知の紡糸法により多糖類を紡糸することができる。
乾湿式紡糸とは、一般的に紡糸口金から一旦気体中に吐出された多糖類溶解液を、固形化液体を保持する固形化槽中に導入して、多糖類を紡糸する方法であり、湿式紡糸とは、固形化槽中に配した紡糸口金から吐出された多糖類を紡糸する方法である。
固形化槽とは、多糖類を固形化させるための前記固形化液体が保持された浴槽を意味する。かかる固形化液体としては、水、極性溶媒、及び上述したイオン液体からなる群から選ばれる一種以上が好ましく挙げられる。
極性溶媒としては、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸、1−ブタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、エタノール、メタノール、ギ酸等が挙げられる。
このようにして得られた精製多糖類繊維は、25℃における強力TB(cN/dtex)と切断伸度EB(%)の関係が下記式(1)及び下記式(2)を満たし、かつ、精製多糖類繊維を撚り合わせてなるコードの強力をCT(cN/dtex)としたときの撚糸後の強力利用率(CT/TB)が70%以上である。
Figure 0005948142
Figure 0005948142
25℃における強力TBは、3.8cN/dtex以上であることが好ましく、5.4cN/dtex以上であることがより好ましい。また、25℃における切断伸度EB(%)が8.8%以上であることが好ましく、10.0%以上であることがより好ましい。
式(1)を満たさない精製多糖類繊維を用いたコードは、タイヤの強度を保つことができない。
また、式(2)を満たす精製多糖類繊維は、生産時に糸切れなどのトラブルがほとんどなく生産性が高い一方、式(2)を満たさない精製多糖類繊維は、少量ならば生産可能であるが、糸切れ等のトラブルが多く、生産性が極めて低く、大量生産は困難である。
[コード]
本発明のコードは、上述した精製多糖類繊維を撚り合わせてなる。
このような強力及び切断伸度に優れた本発明のコードをカーカスプライ、ベルトプライ、又はベルト保護層に使用することで、高性能のタイヤを得ることができる。なかでも、本発明のコードをカーカスプライに使用することが好ましく、これにより耐圧性や耐サイドカット性に優れたタイヤを得ることができる。
また、カーカスプライ、ベルトプライ、及びベルト保護層の少なくとも一つに精製多糖類繊維を使用してもよいが、カーカスプライやベルトプライ又はベルト保護層の両方に使用することもできる。
前記精製多糖類繊維から作製される本発明のコードとしては、撚りを加えた1本のフィラメント束からなる片撚り構造、下撚りした2本以上のフィラメント束を上撚りにて合わせた複数本撚り構造が好ましく採用される。
上述したように、コードの強力をCT(cN/dtex)としたときの撚糸後の強力利用率(CT/TB)は70%以上である。このように、イオン液体を用いて製造した精製多糖類繊維は、従来のNMMOを用いて製造した精製多糖類繊維よりも撚糸収束性がよいため、コードを製造したときの強力利用率に優れている。本発明によれば、強力利用率の向上により、コード製造時の精製多糖類繊維の使用量を減らすことができ、環境負荷が少ない。また、本発明のコードをタイヤに用いた場合には、タイヤを軽量化することができる。更に、従来の製造方法を用いて製造した精製多糖類繊維と同量の精製多糖類繊維を用いる場合には運転安全性を向上させることができる。
コード1本当たりの繊度としては、1000〜10000dtexが好ましく、1400〜6000dtexがより好ましい。1400dtex未満のコードを用いると、タイヤ強度を保つためにカーカスの枚数を増やす必要があり、タイヤ製造のコストアップにつながる。10000dtexを超えるコードを用いるとカーカス層の厚さが必要以上に増加してしまい、タイヤ重量の増加を招く。
コードの撚り係数Ntは、0.20〜1.00が好ましく、0.40〜1.00がより好ましい。撚り係数Ntが0.20以上の場合、かかるコードは耐疲労性及び耐久性に優れている。
撚り係数Ntは、以下の式で求まる。
Figure 0005948142
D:コードの総繊度(dtex)
ρ:コード比重(g/cm
N:撚り数(回/10cm)
本発明のコードのカーカスプライにおける打ち込み数は、35〜60(本/50mm)が好ましい。打ち込み数が35(本/50mm)以上の場合、カーカス強度が不足することなく耐久性に優れる。
[ゴム−コード複合体]
本発明のコードをRFL(resolcin−formalin−latex)等の一般的な接着剤に浸漬して、ディップ処理し、乾燥工程及びベーキング工程からなる熱処理を行う。このようにして作製したディップコードをコーテイングゴムでトッピングし、ゴム−コード複合体を作製する。即ち、本発明のゴム−コード複合体は、本発明のコードと、ゴム材料とを複合化してなる。
本発明のゴム−コード複合体におけるゴムは、例えば、天然ゴム(NR)、炭素−炭素二重結合を有する合成ゴム、又はこれらの2種以上をブレンドしたゴム組成物から得られる。
前記合成ゴムとしては、例えば、イソプレン、ブタジエン、クロロプレン等の共役ジエン化合物の単独重合体であるポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリクロロプレンゴム等;前記共役ジエン化合物とスチレン、アクリロニトリル、ビニルピリジン、アクリル酸、メタクリル酸、アルキルアクリレート類、アルキルメタクリレート類等のビニル化合物との共重合体であるスチレンブタジエン共重合ゴム(SBR)、ビニルピリジンブタジエンスチレン共重合ゴム、アクリロニトリルブタジエン共重合ゴム、アクリル酸ブタジエン共重合ゴム、メタアクリル酸ブタジエン共重合ゴム、メチルアクリレートブタジエン共重合ゴム、メチルメタアクリレートブタジエン共重合ゴム等;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類とジエン化合物との共重合体〔例えばイソブチレンイソプレン共重合ゴム(IIR)〕;オレフィン類と非共役ジエンとの共重合体(EPDM)〔例えばエチレン−プロピレン−シクロペンタジエン三元共重合体、エチレン−プロピレン−5−エチリデン−2−ノルボルネン三元共重合体、エチレン−プロピレン−1,4−ヘキサジエン三元共重合体〕;さらに、これら各種ゴムのハロゲン化物、例えば塩素化イソブチレンイソプレン共重合ゴム(Cl−IIR)、臭素化イソブチレンイソプレン共重合ゴム(Br−IIR)等;ノルボルネンの開環重合体が挙げられる。
上記の合成ゴムにシクロオレフィンを開環重合させて得られるポリアルケナマー〔例えばポリペンテナマー〕、オキシラン環の開環重合によって得られるゴム〔例えば硫黄加硫が可能なポリエピクロロヒドリンゴム]、ポリプロピレンオキシドゴム等の飽和弾性体をブレンドすることができる。
本発明で使用するゴム組成物には、硫黄、有機硫黄化合物、その他の架橋剤が、上記ゴム組成物100質量部に、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは1〜5質量部配合されてもよく、また加硫促進剤がゴム組成物100質量部に、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.5〜5部配合されてもよい。この場合、加硫促進剤の種類は限定されないが、ジベンゾチアジルサルファイド(DM)、ジフェニルグアニジン(D)などを用いることで加硫時間を短くすることができる。
また、本発明で使用するゴム組成物には、例えばパラフィン系、ナフテン系、又は芳香族系プロセスオイル、エチレン−α−オレフィンのコオリゴマー、パラフィンワックス、流動パラフィン等の鉱物油;ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油等の植物油等のオイルが配合されてもよい。
さらに、本発明で使用するゴム組成物には、常法に従い、目的、用途などに応じてカーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、クレイ、マイカ等の充填剤;亜鉛華、ステアリン酸等の加硫促進助剤;老化防止剤等の、通常ゴム業界で使用される配合剤が添加されてもよい。
本発明のゴム−コード複合体を用いてカーカスプライを作製することが好ましく、前記ゴム−コード複合体を用い、通常の成型、加硫工程を経ることで、タイヤ特性に優れたタイヤを作製できる。
[タイヤ]
本発明のタイヤの実施形態について、図1を用いて説明する。本実施形態のタイヤ1は、図1に示すように、左右一対のビード部2、及びビード部2からタイヤ径方向外側に延びる左右一対のサイドウォール部3と、左右一対のサイドウォール部3に連なるトレッド部4とを有する。
更に、本実施形態のタイヤ1は、左右一対のビード部2,2間にわたってトロイド状に延びる少なくとも1枚のプライからなるカーカス5を備える。
本実施形態のタイヤ1において、カーカス5に本発明のゴム−コード複合体が用いられる。本発明のコードは、上述したように、前記式(1)及び前記式(2)を満たし、撚糸後強力利用率(CT/TB)が70%以上であるため、強力に優れている。
そして、かかるゴム−コード複合体を用いたカーカス5は、強度に優れ、骨格材としての機能を発揮し、タイヤに耐圧性及び耐外傷性を付与する。
従って、本実施形態のタイヤ1は、耐久性及び耐外傷性に優れている。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[マルチフィラメントの作製]
パルプを1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(C2AmimAc)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジエチルホスフェート(C2mimDEP)、又はN−メチルモルフォリン−N−オキシド(NMMO)に溶解したセルロース溶解液をろ過し、脱泡した。次いで、紡糸温度に加熱後、押出機にて凝固浴中(固形化槽中)に押し出し、洗浄、乾燥の工程を経て、実施例1〜6、及び比較例1〜4に用いられるマルチフィラメント(精製セルロース繊維)を得た(表1参照)。
各実施例及び比較例に用いられるマルチフィラメントの性状を、以下の試験方法で測定し、結果を表1に示した。
(1)原糸繊度
マルチフィラメントを100m採取し、130℃で30分乾燥させた後、乾燥したデシケーター中で室温になるまで放冷後、重量を測定した。10000mあたり1gが1dtexとなるため、100mの重量から繊度を算出した。
(2)強力及び切断伸度(TB及びEB)
10cmあたり、4回の仮撚りをしたマルチフィラメントについて、引張試験機を用いて、引張試験を行った。強力は、破断強力を繊度で除したものであり、室温時(25℃)におけるものを測定した。切断伸度は、破断時の伸度である。
[コードの作製]
得られたマルチフィラメントを下撚りし、この下撚りしたマルチフィラメントを2本合わせて上撚りして各実施例及び比較例のコードを作製した。下撚り及び上撚りの回数を表1に示した。
各実施例及び比較例のコードの性状を、以下の試験方法で測定し、結果を表1に示した
(1)コード繊度
各実施例及び比較例のコードを100m採取し、130℃で30分乾燥させた後、乾燥したデシケーター中で室温になるまで放冷後、重量を測定した。10000mあたり1gが1dtexとなるため、100mの重量から繊度を算出した。
(2)強力(CT)
各実施例及び比較例のコードについて、引張試験機を用いて、引張試験を行った。強力は、破断強力を繊度で除したものであり、室温時(25℃)におけるものを測定した。
(3)撚糸後強力利用率(CT/TB)
上記コード強力CTの上記原糸強力TBに対する割合(%)を求めた。
イオン液体を用いて得られた精製多糖類繊維を撚り合わせてなる実施例1〜6のコードは、NMMOを用いて得られた精製多糖類繊維を撚り合わせてなる比較例1〜2のコードと比較して強力に優れていることが確認された。
[ディップコードの作製]
各実施例及び比較例のコードをRFL(resolcin−formalin−latex)接着剤に浸漬して、ディップ処理し、乾燥工程及びベーキング工程からなる熱処理を行った。乾燥工程は150℃×150秒間、1×10−3N/dtexの張力で行った。ベーキング工程は乾燥工程と同温度、同時間、同張力で乾燥工程に引き続いて行い、ディップコードを作成した。
[カーカスプライの作製]
前記ディップコードをコーテイングゴムでカレンダーし、カーカスプライを作成した。
各実施例及び比較例のコードを用いて作製したコードの性状を、以下の試験方法で測定し、結果を表1に示した。
(1)カーカス強度(N/mm)
カーカス強度はコード強力と打ち込み数を乗ずることにより算出した。
表1に示されるように、式(1)及び式(2)を満たし、撚糸後強力利用率(CT/TB)が70%以上である実施例1〜6のコードを用いたカーカスの強度は、6500N/50mm以上と、高いものであった。
一方、式(1)を満たさず、撚糸後強力利用率(CT/TB)が70%未満の比較例1〜2のコードを用いたカーカスの強度は、実施例に比較して低いものであった。
更に、実施例4〜6のコードに用いられる精製多糖類繊維は、25℃における強力TBが5.4cN/dtex以上であり、かつ、25℃における切断伸度EB(%)が8.8%以上である。そのため、実施例4〜6のコードを用いたカーカスの強度は、7700N/50mm以上と、一層高いものであった。
[タイヤの作製]
前記カーカスプライを用いて、通常の成型、加硫工程を経て、195/65R15のタイヤを作成した。
各実施例及び比較例におけるタイヤの性状を、以下の試験方法で測定し、結果を表1に示した。
(1) タイヤ内圧充填安全率(指数)
各実施例及び比較例におけるタイヤをリム組みし、該タイヤ内に水を充填してその破壊水圧を測定した。比較例2のタイヤの破壊水圧を100として指数表示した。指数が大きいほど、破壊水圧が高く、耐圧性に優れていることを示す。
表1に示されるように、式(1)及び式(2)を満たし、撚糸後強力利用率(CT/TB)が70%以上である実施例1〜6のコードを用いたタイヤの内圧充填安全率は、式(1)を満たさず、撚糸後強力利用率(CT/TB)が70%未満の比較例1〜2のコードを用いたタイヤの内圧充填安全率と比較して高いものであった。
更に、上述したように実施例4〜6のコードに用いられる精製多糖類繊維は、25℃における強力TBが5.4cN/dtex以上であり、かつ、25℃における切断伸度EB(%)が8.8%以上である。そのため、実施例4〜6のコードを用いたタイヤの内圧充填安全率は、一層高いものであった。
また、式(2)を満たさない比較例3〜4においては、繊維生産時に糸切れが多発し、生産性が極めて低いため、タイヤ製造に必要な量のマルチフィラメントを作製することができなかった。
Figure 0005948142
以上の結果から、本発明のコードは、カーカス強度が高いことから、それを用いた本発明のタイヤは、耐久性に優れていることが明らかである。また、本発明のタイヤは、内圧充填安全率が高いことから、サイドカットなどの耐外傷性に優れていることが明らかである。
1…タイヤ、2…ビード部、3…サイドウォール部、4…トレッド部、5…カーカス。

Claims (12)

  1. イオン液体を含む液体に多糖類原料を溶解してなる多糖類溶解液を、固形化液体に接触させて、多糖類を紡糸してなる精製多糖類繊維を撚り合わせてードを得る工程を有し、
    前記精製多糖類繊維は、25℃における強力TB(cN/dtex)と切断伸度EB(
    %)の関係が下記式(1)及び下記式(2)を満たし、かつ、
    前記コードの強力をCT(cN/dtex)としたときの撚糸後強力利用率(CT/T
    B)が70%以上であることを特徴とするコードの製造方法
    Figure 0005948142
    Figure 0005948142
  2. 前記精製多糖類繊維は、25℃における強力TBが3.8cN/dtex以上である請求項1に記載のコードの製造方法
  3. 前記精製多糖類繊維は、25℃における強力TBが5.4cN/dtex以上である請求項1又は2に記載のコードの製造方法
  4. 前記精製多糖類繊維は、25℃における切断伸度EB(%)が8.8%以上である請求項1〜3のいずれか一項に記載のコードの製造方法
  5. 前記精製多糖類繊維は、25℃における切断伸度EB(%)が10.0%以上である請求項1〜4のいずれか一項に記載のコードの製造方法
  6. 前記イオン液体は、カチオン部とアニオン部からなり、前記カチオン部は、イミダゾリ
    ウムイオン、ピリジニウムイオン、アンモニウムイオン、及びフォスフォニウムイオンか
    らなる群から選ばれる一種以上である請求項1〜5のいずれか一項に記載のコードの製造方法
  7. 前記カチオン部が下記一般式(1)で表されるイミダゾリウムイオンである請求項6に
    記載のコードの製造方法
    Figure 0005948142
    [式中、Rは、シアノ基、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数2〜4のアルケニル基を示し、Rは、水素原子又はメチル基を示し、Rはシアノ基、炭素数1〜8のアルキル基、又は炭素数2〜8のアルケニル基を示す。]
  8. 前記アニオン部がクロライドイオン、ブロマイドイオン、ホルメートイオン、アセテートイオン、プロピオネートイオン、L−ラクテートイオン、メチルカーボネートイオン、アミノアセテートイオン、アミノプロピオネートイオン、ジメチルカルバメートイオン、ハイドロゲンスルフェートイオン、メチルスルフェートイオン、エチルスルフェートイオン、メタンスルフォネートイオン、ジメチルホスフェートイオン、ジエチルホスフェートイオン、メチルホスフォネートイオン、ホスフィネートイオン、チオシアネートイオン、及びジシアナミドイオンからなる群から選ばれる一種以上である請求項6又は7に記載のコードの製造方法
  9. 前記イオン液体が1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジエチルホスフェートである
    請求項1〜8のいずれか一項に記載のコードの製造方法
  10. 請求項1〜9のいずれか一項に記載のコードの製造方法の工程で得られたコードと、ゴム材料とを複合化する工程を有することを特徴とするゴム−コード複合体の製造方法
  11. 請求項10に記載のゴム−コード複合体の製造方法の工程で得られたゴム−コード複合体を用いて、タイヤを製造する工程を有することを特徴とするタイヤの製造方法
  12. 前記ゴム−コード複合体をカーカスプライとして用いた請求項11に記載のタイヤの製造方法
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