JP5948143B2 - ハイブリッドコードの製造方法、ゴム−コード複合体の製造方法、及びタイヤの製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、レーヨンは製造工程で二硫化炭素を排出し、環境負荷が非常に高いため、環境負荷の少ない原材料で製品を製造したいという現代のニーズに合わない。
従って、環境負荷が高いにもかかわらず、一部タイヤにはレーヨンが用いられているのが現状である。
一般的に、初期弾性率と切断伸度は、トレードオフの関係にあり、リヨセルに十分な初期弾性率を付与すると、切断伸度が低くなり、逆に、十分な切断伸度を付与すると、初期弾性率が低くなる。
例えば、特許文献1に記載されているリヨセルは、切断伸度が十分ではない。
かかるランフラットタイヤを用いて走行し、ランフラット走行(パンク走行)によりタイヤが高温になると、上述したような強力保持率の低い合成繊維を用いた骨格材では、タイヤの変形が大きなものとなり、サイド補強ゴム層の発熱が大きくなる傾向がある。
更に、ランフラット走行時には、サイド補強ゴム層の発熱によりタイヤ温度が高温なものとなり、熱可塑性を有する合成樹脂は溶融する場合が多い。
また、ナイロンやPET等の合成繊維は、初期弾性率が低いため、かかる合成繊維を用いて得られるタイヤは、操縦安定性に劣っている。
しかしながら、精製セルロース繊維は、熱収縮応力が低いため、ランフラットタイヤにおいて、かかる精製セルロース繊維を用いることによるランフラット走行距離の向上効果は見込めず、未だ改良の余地がある。
(1)イオン液体を含む液体に多糖類原料を溶解してなる多糖類溶解液を、固形化液体に接触させて、多糖類を紡糸してなる精製多糖類繊維と、
前記精製多糖類繊維とは異なる材質の繊維と、を撚り合わせてハイブリッドコードを得る工程を有し、
前記精製多糖類繊維は、25℃における伸びが0.6〜0.9%である場合の初期弾性率Er(%)と切断伸度EB(%)の関係が下記式(1)を満たすことを特徴とするハイブリッドコードの製造方法。
(3)前記異なる材質の繊維は、180℃での熱収縮応力が0.20cN/dtex以上の有機繊維である(1)又は(2)のハイブリッドコードの製造方法。
(4)前記イオン液体は、カチオン部とアニオン部からなり、前記カチオン部は、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、アンモニウムイオン、及びフォスフォニウムイオンからなる群から選ばれる一種以上である(1)〜(3)のいずれかのハイブリッドコードの製造方法。
(5)前記カチオン部が下記一般式(1)で表されるイミダゾリウムイオンである(4)のハイブリッドコードの製造方法。
(6)前記アニオン部がクロライドイオン、ブロマイドイオン、ホルメートイオン、アセテートイオン、プロピオネートイオン、L−ラクテートイオン、メチルカーボネートイオン、アミノアセテートイオン、アミノプロピオネートイオン、ジメチルカルバメートイオン、ハイドロゲンスルフェートイオン、メチルスルフェートイオン、エチルスルフェートイオン、メタンスルフォネートイオン、ジメチルホスフェートイオン、ジエチルホスフェートイオン、メチルホスフォネートイオン、ホスフィネートイオン、チオシアネートイオン、及びジシアナミドイオンからなる群から選ばれる一種以上である(4)又は(5)のハイブリッドコードの製造方法。
(7)前記イオン液体が1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジエチルホスフェートである(1)〜(6)のいずれかのハイブリッドコードの製造方法。
(8)総繊度が1000〜10000dtexである(1)〜(7)のいずれかのハイブリッドコードの製造方法。
(9)(1)〜(8)のいずれかのハイブリッドコードの製造方法の工程で得られた前記ハイブリッドコードと、ゴム材料と複合材料化する工程を有するゴム−コード複合体の製造方法。
(10)加硫後の前記ゴム−コード複合体から抜き出した前記ハイブリッドコードの180℃における熱収縮応力(cN/dtex)が0.10cN/dtex以上である(9)のゴム−コード複合体の製造方法。
(11)(9)又は(10)のゴム−コード複合体を用いて、タイヤを製造する工程を有するタイヤの製造方法。
(12)カーカスに前記ゴム−コード複合体を用いた(11)のタイヤの製造方法。
(13)ランフラットタイヤの製造方法である(11)又は(12)のタイヤの製造方法。
また、本発明のハイブリッドコード及びゴム−コード複合体は、タイヤに用いられた場合に、ランフラット耐久性及び操縦安定性をタイヤに付与することができる。
さらに、本発明のタイヤは、本発明のゴム−コード複合体を用いたものであるため良好なタイヤ性能を有する。
本発明に用いられる精製多糖類繊維は、イオン液体を含む液体に多糖類原料を溶解してなる多糖類溶解液を、前記多糖類溶解液以外の液体である固形化液体に接触させて、前記多糖類を紡糸してなるものである。
本発明において、紡糸方法は、湿式紡糸又は乾湿式紡糸であることが好ましい。
前記湿式紡糸又は乾湿式紡糸の紡糸法は、特に限定されず、公知の紡糸法により多糖類を紡糸することができる。
植物由来のセルロース原料としては、木材、綿、麻、その他の草本類等の未加工の天然植物由来のセルロース原料や、パルプ、木材粉、紙製品等の予め加工処理を施された植物由来の加工セルロース原料が挙げられる。
動物由来のセルロース原料としては、ホヤ由来のセルロース原料が挙げられる。
微生物由来のセルロース原料としては、Aerobacter属、Acetobacter属、Achromobacter属、Agrobacterium属、Alacaligenes属、Azotobacter属、Pseudomonas属、Rhizobium属、Sarcina属等に属する微生物の産生するセルロース原料が挙げられる。
再生セルロース原料としては、上記のような植物、動物、又は微生物由来のセルロース原料を、ビスコース法等の公知の方法により再生したセルロース原料が挙げられる。
なかでも、本発明において用いられるセルロース原料としては、イオン液体に良好に溶解するパルプが好ましい。
なかでも、本発明に用いられるイオン液体のカチオン部の好ましいものとしては、含窒素芳香族カチオン、アンモニウムイオン、フォスフォニウムイオンが挙げられる。
なかでも、含窒素芳香族カチオンとしては、イミダゾリウムイオン、ピリミジニウムイオンが好ましく、下記一般式(C3)で表されるイミダゾリウムイオンがより好ましい。
炭素数1〜10のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよく、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。
直鎖状のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
分岐鎖状のアルキル基としては、具体的には、1−メチルエチル基、1,1−ジメチルエチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基などが挙げられる。
環状のアルキル基としては、単環式基であっても、多環式基であってもよい。具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等の単環式基、ノルボルニル基、アダマンチル基、イソボルニル基等の多環式基が挙げられる。
R5〜R6におけるアルキル基の炭素数は、1〜8であることが好ましい。
炭素数2〜10のアルケニル基としては、炭素数2〜10のアルキル基において、炭素−炭素間の一つの単結合を二重結合に置換したものが例示でき、好ましい例としては、ビニル基、アリル基等が挙げられる。尚、二重結合の位置は特に限定されない。
R5〜R6におけるアルケニル基の炭素数は、2〜8であることが好ましい。
また、R5〜R6は、それぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
炭素数1〜10のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよく、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。ここで、直鎖状、分岐鎖状、環状のアルキル基としては、上記R5〜R6のアルキル基と同様のものが挙げられる。
R7〜R9におけるアルキル基の炭素数は、1〜6であることが好ましく、1〜3であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
また、R7〜R9は、それぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
炭素数1〜30の炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。
脂肪族炭化水素基は、飽和炭化水素基(アルキル基)であることが好ましく、該アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよい。
直鎖状のアルキル基としては、炭素数が1〜20であることが好ましく、炭素数が1〜16であることがより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基等が挙げられる。
分岐鎖状のアルキル基としては、炭素数が3〜30であり、炭素数が3〜20であることが好ましく、炭素数が3〜16であることがより好ましい。具体的には、1−メチルエチル基、1,1−ジメチルエチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基などが挙げられる。
環状のアルキル基としては、炭素数が3〜30であり、炭素数が3〜20であることが好ましく、炭素数が3〜16であることがより好ましく、単環式基であっても、多環式基であってもよい。具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等の単環式基、ノルボルニル基、アダマンチル基、イソボルニル基等の多環式基が挙げられる。
芳香族炭化水素基は、炭素数が6〜30であることが好ましく、具体的には、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、ビフェニル基、トリル基等のアリール基や、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等のアリールアルキル基が挙げられる。
ここで、一般式「R4P+」中の複数のRは、それぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
また、R31〜R34は、それぞれ同じであっても、異なっていてもよいが、入手の容易さから、R31〜R34の3つ以上が同じであることが好ましい。
式(C1)で表されるカチオン部の好ましい具体例を、下記式(C2)として示す。
ハロゲンイオンとしては、クロライドイオン、ブロマイドイオン、ヨウダイドイオンが挙げられ、クロライドイオン、ブロマイドイオンが好ましい。
カルボキシレートイオンとしては、ホルメートイオン、アセテートイオン、プロピオネートイオン、ブチレートイオン、ヘキサノエートイオン、マレエートイオン、フマレートイオン、オキサレートイオン、L−ラクテートイオン、ピルベートイオン、メチルカーボネートイオン、アミノアセテートイオン、アミノプロピオネートイオン、ジメチルカルバメートイオンが挙げられ、ホルメートイオン、アセテートイオン、プロピオネートイオン、L−ラクテートイオン、メチルカーボネートイオン、アミノアセテートイオン、アミノプロピオネートイオン、ジメチルカルバメートイオンが好ましい。
スルフェートイオンとしては、ハイドロゲンスルフェートイオン、メチルスルフェートイオン、エチルスルフェートイオン、n−プロピルスルフェートイオン、n−ブチルスルフェートイオンが挙げられ、ハイドロゲンスルフェートイオン、メチルスルフェートイオン、エチルスルフェートイオンが好ましい。
スルフォネートイオンとしては、メタンスルフォネートイオン、トルエンスルフォネートイオン、ベンゼンスルフォネートイオン等が挙げられ、メタンスルフォネートイオンが好ましい。
ホスフェートイオンとしては、下記一般式(A1)で表されるものが挙げられる。
R25と、R26とは、同じであっても異なっていてもよい。
また、ジシアナミドイオンが挙げられる。
好ましいイオン液体としては、1−アリル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(AmimCl)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(C2mimAc)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジエチルホスフェート(C2mimDEP、C2mim(EtO)2PO2)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムメチルホスホネイト(C2mimMEP、C2mim MeOHPO2)、又は1−エチル−3−メチルイミダゾリウムホスフィネイト(C2mim H2PO2)等が挙げられ、より好ましくは1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジエチルホスフェートが挙げられる。
なかでも、有機溶媒としては、アミド系溶媒、スルホキシド系溶媒、ニトリル系溶媒、環状エーテル系溶媒、及び芳香族アミン系溶媒からなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
スルホキシド系溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンスルホキシド等が挙げられる。
ニトリル系溶媒としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等が挙げられる。
環状エーテル系溶媒としては、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、1,3,5−トリオキサン等が挙げられる。
芳香族アミン系溶媒としては、ピリジン等が挙げられる。
また、有機溶媒の使用量は特に限定されるものではないが、多糖類原料1質量部に対して、1〜30質量部であることが好ましく、1〜25質量部であることがより好ましく、3〜20質量部であることが特に好ましい。上記範囲とすることにより、適度な粘度の多糖類溶解液とすることができる。
上記のような有機溶媒を、イオン液体と併せて用いることにより、多糖類原料の溶解性がより向上するため好ましい。
イオン液体を含む液体と、多糖類原料とを接触させる方法は、特に限定されるものではなく、例えば、イオン液体を含む液体に多糖類原料を添加してもよいし、多糖類原料にイオン液体を含む液体を添加してもよい。
溶解の際に加熱を行う場合、加熱温度は、30〜200℃であることが好ましく、70〜180℃であることがより好ましい。加熱を行うことにより、セルロース等を含む多糖類原料の溶解性がさらに向上するため好ましい。
攪拌の方法は、特に限定されるものではなく、攪拌子、攪拌羽根、攪拌棒等を用いてイオン液体を含む液体と多糖類原料とを機械的に攪拌してもよく、イオン液体を含む液体と多糖類原料とを密閉容器に封入し、容器を振とうすることにより攪拌してもよい。攪拌の時間は、特に限定されるものではなく、多糖類原料が好適に溶解されるまで行うことが好ましい。
なかでも、有機溶媒とイオン液体とを予め混合して混合液を製造しておくことが好ましい。この際、有機溶媒とイオン液体とが均一に混合されるよう、70〜180℃において5〜30分程度加熱しながら攪拌し、イオン液体を含む液が均一になるまで混合しておくことがより好ましい。
この様にして得られた、イオン液体を用いた多糖類溶解液は、必要に応じてカーボンナノチューブ、クレイ、シリカ等の充填剤や界面活性剤、老化防止剤等の添加物を含んでも良い。
乾湿式紡糸とは、一般的に紡糸口金から一旦気体中に吐出された多糖類溶解液を、固形化液体を保持する固形化槽中に導入して、多糖類を紡糸する方法であり、湿式紡糸とは、固形化槽中に配した紡糸口金から吐出された多糖類を紡糸する方法である。
固形化槽とは、多糖類を固形化させるための前記固形化液体が保持された浴槽を意味する。かかる固形化液体としては、水、極性溶媒、及び上述したイオン液体からなる群から選ばれる一種以上が好ましく挙げられる。
極性溶媒としては、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸、1−ブタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、エタノール、メタノール、ギ酸等が挙げられる。
本発明のハイブリッドコードは、上述した精製多糖類繊維を、該精製多糖類繊維とは異なる材質の繊維と、を撚り合わせてなる。
精製多糖類繊維における熱収縮応力の低さを補う観点から、前記異なる材質の繊維は、180℃での熱収縮応力が0.20cN/dtex以上の有機繊維であることが好ましく、ナイロン又はポリケトンがより好ましく、ナイロンが特に好ましい。尚、本発明に用いられるナイロンの製造方法については定法に従う。
本発明のハイブリッドコードは、精製多糖類繊維と、該精製多糖類繊維とは異なる材質の繊維と、を撚り合わせてなることにより、高い熱収縮応力を具備する。従って、本発明のハイブリッドコードは、リヨセルとナイロンを撚り合わせてなるハイブリッドコードと比較して高剛性であり、かつ耐疲労性に優れている。更に、本発明のハイブリッドコードを用いたタイヤは、ランフラット走行時に、サイドウォール部やカーカスが高温になったとしても高い熱収縮応力により撓みを抑制することができる。
また、カーカスプライやバンドプライの少なくとも一方に精製多糖類繊維を使用してもよいが、カーカスプライやバンドプライの両方に使用することもできる。
撚り係数Ntは、以下の式で求まる。
ρ:コード比重(g/cm3)
N:撚り数(回/10cm)
本発明のハイブリッドコードをRFL(resolcin−formalin−latex)等の一般的な接着剤に浸漬して、ディップ処理し、乾燥工程及びベーキング工程からなる熱処理を行う。このようにして作製したディップコードをコーテイングゴムでトッピングし、ゴム−コード複合体を作製する。
前記合成ゴムとしては、例えば、イソプレン、ブタジエン、クロロプレン等の共役ジエン化合物の単独重合体であるポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリクロロプレンゴム等;前記共役ジエン化合物とスチレン、アクリロニトリル、ビニルピリジン、アクリル酸、メタクリル酸、アルキルアクリレート類、アルキルメタクリレート類等のビニル化合物との共重合体であるスチレンブタジエン共重合ゴム(SBR)、ビニルピリジンブタジエンスチレン共重合ゴム、アクリロニトリルブタジエン共重合ゴム、アクリル酸ブタジエン共重合ゴム、メタアクリル酸ブタジエン共重合ゴム、メチルアクリレートブタジエン共重合ゴム、メチルメタアクリレートブタジエン共重合ゴム等;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類とジエン化合物との共重合体〔例えばイソブチレンイソプレン共重合ゴム(IIR)〕;オレフィン類と非共役ジエンとの共重合体(EPDM)〔例えばエチレン−プロピレン−シクロペンタジエン三元共重合体、エチレン−プロピレン−5−エチリデン−2−ノルボルネン三元共重合体、エチレン−プロピレン−1,4−ヘキサジエン三元共重合体〕;さらに、これら各種ゴムのハロゲン化物、例えば塩素化イソブチレンイソプレン共重合ゴム(Cl−IIR)、臭素化イソブチレンイソプレン共重合ゴム(Br−IIR)等;ノルボルネンの開環重合体が挙げられる。
上記の合成ゴムにシクロオレフィンを開環重合させて得られるポリアルケナマー〔例えばポリペンテナマー〕、オキシラン環の開環重合によって得られるゴム〔例えば硫黄加硫が可能なポリエピクロロヒドリンゴム]、ポリプロピレンオキシドゴム等の飽和弾性体をブレンドすることができる。
また、本発明で使用するゴム組成物には、例えばパラフィン系、ナフテン系、又は芳香族系プロセスオイル、エチレン−α−オレフィンのコオリゴマー、パラフィンワックス、流動パラフィン等の鉱物油;ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油等の植物油等のオイルが配合されてもよい。
さらに、本発明で使用するゴム組成物には、常法に従い、目的、用途などに応じてカーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、クレイ、マイカ等の充填剤;亜鉛華、ステアリン酸等の加硫促進助剤;老化防止剤等の、通常ゴム業界で使用される配合剤が添加されてもよい。
この熱収縮応力が0.10cN/dtex以上であることにより、本発明のゴム−コード複合体を用いたタイヤは、ランフラット耐久性により優れたものとなる。
本発明のタイヤは、上述したゴム−コード複合体を用いたものである。該タイヤはランフラットタイヤであることが好ましい。
本発明のタイヤの実施形態について、説明する。本実施形態のタイヤは、左右一対のビード部、及びビード部からタイヤ径方向外側に延びる左右一対のサイドウォール部と、左右一対のサイドウォール部に連なるトレッド部とを有する。
更に、本実施形態のタイヤは、左右一対のビード部間にわたってトロイド状に延びる少なくとも1枚のプライからなるカーカスを備える。
本発明のゴム−コード複合体に用いられる本発明のハイブリッドコードは、上述した特性を有するものであるため、かかるゴム−コード複合体を用いたカーカスは、骨格材としての機能を発揮し、高温時においてもタイヤの変形を抑制する。例えば、本発明のハイブリッドコードは、熱収縮性を具備するため、ランフラット走行時(高温下)に収縮し、剛性を高めるとともに、サイドウォール部の撓みを抑制することができる。また、通常走行時(低温下)には、本発明のハイブリッドコードが伸長して剛性を低下させ、タイヤの縦バネが低下し、操縦安定性に優れたものとなる。
更に、ランフラット走行時に、タイヤ温度が高温なものであっても、本発明のゴム−コード複合体を用いたカーカスは、ナイロンのみを用いた場合と異なり、溶融することがない。
パルプを1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジエチルホスフェート(C2mimDEP)、又はN−メチルモルフォリン−N−オキシド(NMMO)に溶解したセルロース溶解液をろ過し、脱泡した。次いで、紡糸温度に加熱後、押出機にて凝固浴中(水浴中)に押し出し、洗浄、乾燥の工程を経て、実施例1〜6、及び比較例1、3に用いられるコード材質A(精製セルロース繊維)を得た(表1参照)。
溶融紡糸の工程を経て、実施例1〜6、及び比較例2に用いられるコード材質B(ナイロン)を得た(表1参照)。
(1)原糸繊度(コード構造)
マルチフィラメントを100m採取し、130℃で30分乾燥させた後、乾燥したデシケーター中で室温になるまで放冷後、重量を測定した。10000mあたり1gが1dtexとなるため、100mの重量から繊度を算出した。
マルチフィラメント10cmあたり、4回の仮撚りをした繊維について、引張試験機を用いて、室温時(25℃)における引張試験を行った。切断伸度は、破断時の伸度であり、初期弾性率[cN/dtex・%]は、室温時(25℃)における伸びが0.6〜0.9%時の応力−歪曲線の接線の傾きから求めた。
コード材質B10cmあたり、4回の仮撚りをした繊維を180℃まで加熱した後、室温まで冷却し、再度180℃まで加熱した。この繊維の応力(cN/dtex)を測定した。
また、製品タイヤから取り出したコードの熱収縮応力も同様に測定した。
得られたマルチフィラメントを下撚りし、この下撚りしたマルチフィラメントを2本合わせて上撚りして各実施例及び比較例のコードを作製した。下撚り及び上撚りの回数を表1に示した。
各実施例及び比較例のコードをRFL(resolcin−formalin−latex)接着剤に浸漬して、ディップ処理し、乾燥工程及びベーキング工程からなる熱処理を行った。乾燥工程は150℃×150秒間、1×10−3N/dtexの張力で行った。ベーキング工程は乾燥工程と同温度、同時間、同張力で乾燥工程に引き続いて行い、ディップコードを作製した。各実施例及び比較例のコードを用いて作製した。
前記ディップコードをコーテイングゴムでカレンダーし、カーカスプライを作成した。
前記カーカスプライを用いて、通常の成型、加硫工程を経て、305/35R19のタイヤを作成した。
(1)ランフラット走行距離(指数)
各実施例及び比較例におけるランフラットタイヤをリム組みし、内圧230kPaを封入し、38℃の室内に24時間放置後、バルブのコアを抜き、内圧を大気圧にして、荷重4.17kN、速度90km/hr、40℃の条件でドラム走行テストを行った。各ランフラットタイヤの故障発生までの走行距離を測定し、比較例1におけるランフラットタイヤの故障発生までの走行距離を100として指数表示した。指数が大きいほど、故障発生までの走行距離が長く、ランフラット耐久性に優れていることを示す。
上記(1)ランフラット走行距離測定後のディップコードの状態を目視にて確認した。
各実施例及び比較例におけるランフラットタイヤを乗用車に装置し、60〜200km/時の速度で、実車フィーリングテストを実施し、(i)直進安定性、(ii)旋回安定性、(iii)剛性感、(iv)ハンドリング等の項目について、1〜10点の評点をつけ、各項目点を平均して、操縦安定性の評価とした。
尚、評価は専門のドライバー2名で行い、2名の評点の平均を求め、比較例1のコントロールタイヤを100として指数化した。指数の大きいほうが、良好な操縦安定性を示す。
製品タイヤから取り出したコードを180℃まで加熱した後、室温まで冷却し、再度180℃まで加熱した。このコードの応力(cN/dtex)を測定した。
一方、比較例1においては、式(1)の値が10.5未満であったため、操縦安定性に劣っていた。
更に、比較例1においては、コード材質Bを用いていないため、実施例と比較して製品タイヤの180℃での熱収縮応力及びランフラット耐久性に劣っていた。
また、コード材質Aを用いていない比較例2においては、ランフラット走行後のコードに溶断が観察され、操縦安定性に劣っていた。
また、コード材質Bを用いていない比較例3においては、実施例と比較して、製品タイヤの180℃での熱収縮応力及びランフラット耐久性に劣っていた。
Claims (13)
- 前記精製多糖類繊維の25℃における切断伸度EB(%)が8.8%以上である請求項1に記載のハイブリッドコードの製造方法。
- 前記異なる材質の繊維は、180℃での熱収縮応力が0.20cN/dtex以上の有機繊維である請求項1又は2に記載のハイブリッドコードの製造方法。
- 前記イオン液体は、カチオン部とアニオン部からなり、前記カチオン部は、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、アンモニウムイオン、及びフォスフォニウムイオンからなる群から選ばれる一種以上である請求項1〜3のいずれか一項に記載のハイブリッドコードの製造方法。
- 前記アニオン部がクロライドイオン、ブロマイドイオン、ホルメートイオン、アセテートイオン、プロピオネートイオン、L−ラクテートイオン、メチルカーボネートイオン、アミノアセテートイオン、アミノプロピオネートイオン、ジメチルカルバメートイオン、ハイドロゲンスルフェートイオン、メチルスルフェートイオン、エチルスルフェートイオン、メタンスルフォネートイオン、ジメチルホスフェートイオン、ジエチルホスフェートイオン、メチルホスフォネートイオン、ホスフィネートイオン、チオシアネートイオン、及びジシアナミドイオンからなる群から選ばれる一種以上である請求項4又は5に記載のハイブリッドコードの製造方法。
- 前記イオン液体が1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジエチルホスフェートである請求項1〜6のいずれか一項に記載のハイブリッドコードの製造方法。
- 総繊度が1000〜10000dtexである請求項1〜7のいずれか一項に記載のハイブリッドコードの製造方法。
- 請求項1〜8のいずれか一項に記載のハイブリッドコードの製造方法の工程で得られた前記ハイブリッドコードと、ゴム材料と複合材料化する工程を有するゴム−コード複合体の製造方法。
- 加硫後の前記ゴム−コード複合体から抜き出した前記ハイブリッドコードの180℃における熱収縮応力(cN/dtex)が0.10cN/dtex以上である請求項9に記載のゴム−コード複合体の製造方法。
- 請求項9又は10に記載のゴム−コード複合体の製造方法の工程で得られた前記ゴム−コード複合体を用いて、タイヤを製造する工程を有するタイヤの製造方法。
- カーカスに前記ゴム−コード複合体を用いた請求項11に記載のタイヤの製造方法。
- ランフラットタイヤの製造方法である請求項11又は12に記載のタイヤの製造方法。
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