JP5948147B2 - 精製多糖類繊維の製造方法、精製多糖類繊維、繊維−ゴム複合体、及びタイヤ - Google Patents
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Description
しかし、ビスコースレーヨンは製造工程で二硫化炭素を排出し、環境負荷が非常に高いため、環境負荷の少ない原材料で製品を製造したいという現代のニーズに合わない。
従って、環境負荷が高いにもかかわらず、一部タイヤにはビスコースレーヨンが用いられているのが現状である。
セルロース原料を溶融又は溶解するためには、セルロースの1繰り返し単位あたりに3箇所ある水酸基の分子内及び分子間の水素結合を断つ必要がある。ビスコースレーヨンの製造においては、二硫化炭素によって水酸基を化学修飾し、水素結合を断つことができるため、セルロース原料を溶融または溶解することができる。このように、水酸基を化学修飾することにより紡糸し、その後水酸基を再生したセルロース繊維は、一般に再生セルロースと呼ばれる。
更に、繊維の使用量を低減できることにより、タイヤ製造に必要な物質及びエネルギーを低減することができる。
更に、本発明者は、固形化液体中のイオン液体の濃度が繊維の成形性と密接に関係していることも見出した。
(1)イオン液体を含む液体に多糖類原料を溶解してなる多糖類溶解液を、イオン液体を含む固形化液体に接触させて、多糖類を湿式紡糸又は乾湿式紡糸する精製多糖類繊維の製造方法であって、前記固形化液体における前記イオン液体の濃度が20重量%〜70重量%であり、前記イオン液体は、別途、精製多糖類繊維を製造したときに用いられた固形化液体からのリサイクル品を含み、前記イオン液体のリサイクル率が90重量%以上であることを特徴とする精製多糖類繊維の製造方法。
(2)前記固形化液体における前記イオン液体の濃度が50重量%以下である(1)の精製多糖類繊維の製造方法。
(3)前記イオン液体のリサイクル率が93重量%以上である(1)又は(2)の精製多糖類繊維の製造方法。
(4)前記固形化液体を保持した固形化槽を複数用い、多糖類を紡糸する工程の上流から下流に向けて、保持した前記固形化液体中のイオン液体の濃度が順次低くなるように、前記複数の固形化槽を配置し、最上流の前記固形化槽を用いて、前記多糖類溶解液中の多糖類を紡糸して、精製多糖類繊維の中間体を得て、該中間体を下流に向けて順次、残りの前記固形化槽を用いて紡糸して、精製多糖類繊維を得る(1)〜(3)のいずれか一つの精製多糖類繊維の製造方法。
(5)前記多糖類がセルロースである(1)〜(4)のいずれか一つの精製多糖類繊維の製造方法。
(6)前記固形化液体が前記イオン液体と、水及び/又は有機溶媒と、からなる(1)〜(5)のいずれか一つの精製多糖類繊維の製造方法。
(7)前記有機溶媒が極性溶媒である(6)の精製多糖類繊維の製造方法。
(8)すべての前記固形化液体の温度が5〜60℃である(1)〜(7)のいずれか一つの精製多糖類繊維の製造方法。
(9)すべての前記固形化槽における前記多糖類又は前記中間体の滞留時間が300秒以下である(1)〜(8)のいずれか一つの精製多糖類繊維の製造方法。
(10)スプレードライ法を用いて、前記固形化液体から前記イオン液体をリサイクする工程を有する(1)〜(9)のいずれか一つの精製多糖類繊維の製造方法。
(11)前記多糖類溶解液におけるイオン液体と、前記固形化液体中におけるイオン液体が同じ種類である(1)〜(10)のいずれか一つの精製多糖類繊維の製造方法。
(12)前記多糖類溶解液におけるイオン液体及び前記固形化液体中におけるイオン液体は、それぞれ、カチオン部とアニオン部から成り、前記カチオン部は、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、アンモニウムイオン、及びフォスフォニウムイオンからなる群から選ばれる一種以上である(1)〜(11)のいずれか一つの精製多糖類繊維の製造方法。
(13)前記カチオン部がイミダゾリウムイオンである(12)の精製多糖類繊維の製造方法。
(14)前記カチオン部が下記一般式(C1)で表されるイミダゾリウムイオンである(13)の精製多糖類繊維の製造方法。
(16)前記リン原子を含む化合物が、下記一般式(C2)で表されるホスフィネートイオン、ホスフェートイオン、及びホスホネイトイオンのいずれかである(15)の精製多糖類繊維の製造方法。
(18)(1)〜(17)のいずれか一つの精製多糖類繊維の製造方法を用いて製造したことを特徴とする精製多糖類繊維。
(19)強力TBが5.1cN/dtex以上である(18)の精製多糖類繊維。
(20)強力TBが5.4cN/dtex以上である(18)又は(19)の精製多糖類繊維。
(21)(18)〜(20)のいずれか一つの精製多糖類繊維と、ゴム材料とを複合化してなることを特徴とする繊維−ゴム複合体。
(22)(21)の繊維−ゴム複合体を用いたことを特徴とするタイヤ。
(23)前記繊維−ゴム複合体をカーカスプライ、ベルトプライ、又はベルト保護層として用いた(22)のタイヤ。
また、本発明の精製多糖類繊維及びゴム−繊維複合体は、強力に優れているため、利用価値が高い。
さらに、本発明のタイヤは、本発明のゴム−繊維複合体を用いたものであるため良好なタイヤ性能を有する。
まず、本発明の精製多糖類繊維の製造方法について説明する。
植物由来のセルロース原料としては、木材、綿、麻、その他の草本類等の未加工の天然植物由来のセルロース原料や、稲わら、バガス、パルプ、木材粉、木材チップ、紙製品等の予め加工処理を施された植物由来の加工セルロース原料が挙げられる。
天然植物としては、針葉樹、広葉樹、単子葉植物、双子葉植物、竹等が挙げられる。
動物由来のセルロース原料としては、ホヤ由来のセルロース原料が挙げられる。
微生物由来のセルロース原料としては、Aerobacter属、Acetobacter属、Achromobacter属、Agrobacterium属、Alacaligenes属、Azotobacter属、Pseudomonas属、Rhizobium属、Sarcina属等に属する微生物の産生するセルロース原料が挙げられる。
再生セルロース原料としては、上記のような植物、動物、又は微生物由来のセルロース原料を、ビスコース法等の公知の方法により再生したセルロース原料が挙げられる。
なかでも、本発明におけるセルロース原料としては、イオン液体に良好に溶解するパルプが好ましい。
なかでも、本発明のイオン液体のカチオン部の好ましいものとしては、含窒素芳香族イオン、アンモニウムイオン、フォスフォニウムイオンが挙げられる。
なかでも、含窒素芳香族カチオンとしては、イミダゾリウムイオン、ピリミジニウムイオンが好ましく、イミダゾリウムイオンがより好ましく、下記一般式(C3)で表されるイミダゾリウムイオンが特に好ましい。
炭素数1〜10のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよく、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。
直鎖状のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
分岐鎖状のアルキル基としては、具体的には、1−メチルエチル基、1,1−ジメチルエチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基などが挙げられる。
環状のアルキル基としては、単環式基であっても、多環式基であってもよい。具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等の単環式基;ノルボルニル基、アダマンチル基、イソボルニル基等の多環式基が挙げられる。
R6〜R7におけるアルキル基の炭素数は、1〜8であることが好ましい。
炭素数2〜10のアルケニル基としては、炭素数2〜10のアルキル基において、炭素−炭素間の一つの単結合を二重結合に置換したものが例示でき、好ましい例としては、ビニル基、アリル基等が挙げられる。尚、二重結合の位置は特に限定されない。
R6〜R7におけるアルケニル基の炭素数は、2〜8であることが好ましい。
また、R6〜R7は、それぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
炭素数1〜10のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよく、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。ここで、直鎖状、分岐鎖状、環状のアルキル基としては、上記R6〜R7のアルキル基と同様のものが挙げられる。
R8〜R10におけるアルキル基の炭素数は、1〜6であることが好ましく、1〜3であることがより好ましく、更にR8〜R10は水素原子であることが最も好ましい。
また、R8〜R10は、それぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
従って、R1がメチル基であり、R3がエチル基であることが特に好ましい。
また、R2は多糖類の溶解性に影響することから、水素原子であることが好ましい。
従って、上記式(C1−1)〜(C1−3)の中でも、式(C1−1)で表される1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオンが好ましい。
炭素数1〜30の炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。
脂肪族炭化水素基は、飽和炭化水素基(アルキル基)であることが好ましく、該アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよい。
直鎖状のアルキル基としては、炭素数が1〜20であることが好ましく、炭素数が1〜16であることがより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基等が挙げられる。
分岐鎖状のアルキル基としては、炭素数が3〜30であり、炭素数が3〜20であることが好ましく、炭素数が3〜16であることがより好ましい。具体的には、1−メチルエチル基、1,1−ジメチルエチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基などが挙げられる。
環状のアルキル基としては、炭素数が3〜30であり、炭素数が3〜20であることが好ましく、炭素数が3〜16であることがより好ましく、単環式基であっても、多環式基であってもよい。具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等の単環式基、ノルボルニル基、アダマンチル基、イソボルニル基等の多環式基が挙げられる。
芳香族炭化水素基は、炭素数が6〜30であることが好ましく、具体的には、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、ビフェニル基、トリル基等のアリール基や、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等のアリールアルキル基が挙げられる。
ここで、一般式「R4P+」中の複数のRは、それぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
また、R11〜R14は、それぞれ同じであっても、異なっていてもよいが、入手の容易さから、R11〜R14の3つ以上が同じであることが好ましい。
式(C4)で表されるカチオン部の好ましい具体例を、下記式(C5)として示す。
ハロゲンイオンとしては、クロライドイオン、ブロマイドイオン、ヨウダイドイオンが挙げられ、クロライドイオンが好ましい。
カルボキシレートイオンとしては、ホルメートイオン、アセテートイオン、プロピオネートイオン、ブチレートイオン、ヘキサノエートイオン、マレエートイオン、フマレートイオン、オキサレートイオン、レクテートイオン、ピルベートイオン等が挙げられ、ホルメートイオン、アセテートイオン、プロピオネートイオンが好ましい。
中でも、アニオン部がリン原子を含む化合物を有することが好ましく、下記一般式(C2)で表されるホスフィネートイオン、ホスフェートイオン、ホスホネイトイオンのいずれかであることがより好ましい。
R15と、R16とは、同じであっても異なっていてもよい。
アニオン部がリン原子を含む化合物を有するイオン液体は、アニオン部をカルボキシレートイオンとした場合と比較して、多糖類の分子量が低下しにくく、耐熱性が高い(すなわち、高温下において熱分解しにくい)。このため、上記イオン液体を用いて多糖類を紡糸する際に、紡糸温度を高くすることができる。その結果、より高い紡糸温度における精製多糖類繊維の生産性を確保することができる。例えば、アニオン部をカルボキシレートイオンとした場合、紡糸温度が130℃以上という条件下において、多糖類を紡糸する生産性が低下してしまう。しかしながら、アニオン部がリン原子を含む化合物である場合、紡糸温度が150℃という高熱条件下であっても、多糖類紡糸の生産性を維持することができる。
したがって、アニオン部としてリン原子を含む化合物を用いることにより、精製多糖類繊維を連続的に生産するために必要なイオン液体量、イオン液体の生産に必要な物質及びエネルギーの増加を防ぐことができる。
好ましいイオン液体としては、1−アリル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(AmimCl)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(C2mimAc)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジエチルホスフェート(C2mimDEP)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムメチルホスホネイト(C2mimMEP)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(C4mimAc)、又は1−エチル−3−メチルイミダゾリウムホスフィネート(C2mim HPO)等が挙げられる。
繊維中の多糖類の分子量低下を抑制する観点から、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(C2mimAc)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジエチルホスフェート(C2mimDEP)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムメチルホスホネイト(C2mimMEP)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムホスフィネート(C2mim HPO)がより好ましく、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジエチルホスフェート(C2mimDEP)が特に好ましい。
粘度が高いイオン液体を用いた場合、多糖類原料をイオン液体に溶解することが困難となる。多糖類原料の溶解が困難な場合、溶け残った多糖類原料が大量に生じるため、紡糸時にフィルターの目詰まりが生じる。その結果、生産性が低下する。また、上記した溶け残った多糖類原料は、繊維中に混入すると繊維の破壊核となる。その結果、繊維の品質が低下する。一方、粘度が低いイオン液体を用いた場合、多糖類原料をイオン液体に溶解する際、多糖類原料がイオン液体へよく浸透する。このため、イオン液体に多糖類を容易に溶解することができる。
なかでも、有機溶媒としては、アミド系溶媒、スルホキシド系溶媒、ニトリル系溶媒、環状エーテル系溶媒、及び芳香族アミン系溶媒からなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
スルホキシド系溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンスルホキシド等が挙げられる。
ニトリル系溶媒としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等が挙げられる。
環状エーテル系溶媒としては、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、1,3,5−トリオキサン等が挙げられる。
芳香族アミン系溶媒としては、ピリジン等が挙げられる。
また、有機溶媒の使用量は特に限定されるものではないが、多糖類原料1質量部に対して、1〜30質量部であることが好ましく、1〜25質量部であることが好ましく、3〜20質量部であることがより好ましい。上記範囲とすることにより、適度な粘度の多糖類溶解液とすることができる。
上記のような有機溶媒を、イオン液体と併せて用いることにより、多糖類原料の溶解性がより向上するため好ましい。
イオン液体を含む液体と、多糖類原料とを接触させる方法は、特に限定されるものではなく、例えば、イオン液体を含む液体に多糖類原料を添加してもよいし、セルロース原料にイオン液体を含む液体を添加してもよい。
溶解の際に加熱を行う場合、加熱温度は、30〜200℃であることが好ましく、70〜180℃であることがより好ましい。加熱を行うことにより、多糖類原料の溶解性がさらに向上するため好ましい。
攪拌の方法は、特に限定されるものではなく、攪拌子、攪拌羽根、攪拌棒等を用いてイオン液体を含む液体と多糖類原料とを機械的に攪拌してもよく、イオン液体を含む液体と多糖類原料とを密閉容器に封入し、容器を振とうすることにより攪拌してもよい。また、イオン液体を含む液体と多糖類原料とを一軸又は複数軸を有する押出機や混練機などによって溶解させてもよい。攪拌の時間は、特に限定されるものではなく、多糖類原料が好適に溶解されるまで行うことが好ましい。
なかでも、有機溶媒とイオン液体とを予め混合して混合液を製造しておくことが好ましい。この際、有機溶媒とイオン液体とが均一に混合されるよう、70〜180℃において5〜30分程度加熱しながら攪拌し、イオン液体を含む液体が均一になるまで混合しておくことが好ましい。
前記湿式紡糸又は乾湿式紡糸の紡糸法は、特に限定されず、公知の紡糸法により多糖類を紡糸することができる。
乾湿式紡糸とは、一般的に紡糸口金から一旦気体中に吐出された多糖類溶解液を、固形化液体を保持する固形化槽中に導入して、多糖類を紡糸する方法であり、湿式紡糸とは、固形化槽中に配した紡糸口金から吐出された多糖類を紡糸する方法である。
固形化槽とは、多糖類を固形化させるための前記固形化液体が保持された浴槽を意味する。
この内外の構造の差を少なくするためには、多糖類の固形化速度をコントロールする必要がある。固形化速度が速すぎる場合には、繊維の構造は、スキン−コア構造となり、固形化速度が遅すぎる場合には、多糖類の固形化が不完全なものとなる。
本発明においては、固形化液体が上述したイオン液体を含むことにより、多糖類の固形化速度をコントロールすることができる。多糖類溶解液におけるイオン液体と、前記固形化液体中におけるイオン液体は同じ種類であることが好ましい。
本発明において、イオン液体のリサイクル率とは、本発明の精製多糖類の製造方法に用いられたイオン液体の全重量における、別途、精製多糖類繊維を製造したときに用いられたイオン液体のリサイクル品の重量比をいう。
固形化液体におけるイオン液体の濃度の下限値は、20重量%である。本発明において、固形化液体におけるイオン液体の濃度が20重量%未満の場合には、別途、精製多糖類繊維を製造したときに用いられた固形化液体からのイオン液体の回収の際に、リサイクル率が非常に低下することを明らかにした。
固形化液体におけるイオン液体の濃度の上限値は、70重量%であり、50重量%が好ましく、40重量%がより好ましく、30重量%が特に好ましい。
固形化液体中におけるイオン液体の濃度が高くなるほど、繊維の断面形状が真円からずれていき、繊維の真円性が劣るものとなる。これは、繊維の製造工程で、繊維が十分に固形化される前に、繊維がローラー等に触れ、つぶれた形状になるためである。断面形状が真円から外れると、繊維内で応力集中が生じるため、繊維の強力は低下する。
以下、図1を参照しながら本発明の精製多糖類繊維の製造方法の一実施形態を説明する。
先ず、上述したイオン液体に溶解してなる多糖類溶解溶液が、押出機1に配した紡糸口金2から吐出される。押出機1は、1軸押出機又は2軸押出機のどちらでもよい。紡糸口金2から吐出された多糖類溶解液が、最上流の固形化槽である第一の固形化槽5中の第一の固形化液体6と接触することにより、多糖類は紡糸され、多糖類繊維の中間体7となる。中間体7は、該中間体7の走行方向を変えるために配されたローラー3と接触した後に、引き取りローラー4と接触し、下流の固形化槽である第二の固形化槽15に送られる。
第三の固形化槽25が保持する第三の固形化液体26中のイオン液体の濃度は、第二の固形化槽15が保持する第二の固形化液体16中のイオン液体の濃度より低くなるように設定されており、中間体7aは、第三の固形化槽25中の第三の固形化液体26と接触することにより、さらに紡糸(固定化)され、中間体7bとなる。中間体が複数の固形化槽中の固形化液体と接触し、徐々に紡糸(固定化)されることにより、最終的に繊維の内外で構造に差異の少ない精製多糖類繊維が製造される。
固形化液体におけるイオン液体の濃度が、70重量%より大きい場合、固形化槽における多糖類又は中間体の滞留時間を大幅に長くしないと繊維を成形することができない。
本実施形態においては、繊維の強力を維持する観点から、すべての固形化槽における多糖類又は中間体の滞留時間が300秒以下であることが好ましい。
また、カーカスプライ、ベルトプライ及びベルト保護層の少なくとも一方にゴム−繊維複合体を使用してもよいが、カーカスプライやベルトプライ又はベルト保護層の両方に使用することもできる。
撚り係数tanθは、以下の式で求まる。
前記精製多糖類繊維をRFL(resolcin−formalin−latex)等の一般的な接着剤に浸漬して、ディップ処理し、乾燥工程及びベーキング工程からなる熱処理を行う。このようにして作製したディップコードをコーテイングゴム等のゴム材料と複合化し、繊維−ゴム複合体を作製する。
前記合成ゴムとしては、例えば、イソプレン、ブタジエン、クロロプレン等の共役ジエン化合物の単独重合体であるポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリクロロプレンゴム等;前記共役ジエン化合物とスチレン、アクリロニトリル、ビニルピリジン、アクリル酸、メタクリル酸、アルキルアクリレート類、アルキルメタクリレート類等のビニル化合物との共重合体であるスチレンブタジエン共重合ゴム(SBR)、ビニルピリジンブタジエンスチレン共重合ゴム、アクリロニトリルブタジエン共重合ゴム、アクリル酸ブタジエン共重合ゴム、メタアクリル酸ブタジエン共重合ゴム、メチルアクリレートブタジエン共重合ゴム、メチルメタアクリレートブタジエン共重合ゴム等;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類とジエン化合物との共重合体〔例えばイソブチレンイソプレン共重合ゴム(IIR)〕;オレフィン類と非共役ジエンとの共重合体(EPDM)〔例えばエチレン−プロピレン−シクロペンタジエン三元共重合体、エチレン−プロピレン−5−エチリデン−2−ノルボルネン三元共重合体、エチレン−プロピレン−1,4−ヘキサジエン三元共重合体〕;さらに、これら各種ゴムのハロゲン化物、例えば塩素化イソブチレンイソプレン共重合ゴム(Cl−IIR)、臭素化イソブチレンイソプレン共重合ゴム(Br−IIR)等、ノルボルネンの開環重合体が挙げられる。
上記の合成ゴムにシクロオレフィンを開環重合させて得られるポリアルケナマー〔例えばポリペンテナマー〕、オキシラン環の開環重合によって得られるゴム〔例えば硫黄加硫が可能なポリエピクロロヒドリンゴム]、ポリプロピレンオキシドゴム等の飽和弾性体をブレンドすることができる。
また、本発明で使用するゴム組成物には、例えばパラフィン系、ナフテン系、芳香族系プロセスオイル、エチレン−α−オレフィンのコオリゴマー、パラフィンワックス、流動パラフィン等の鉱物油;ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油等の植物油などのオイルを配合してもよい。
さらに、本発明で使用するゴム組成物には、常法に従い、目的、用途などに応じてカーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、クレイ、マイカ等の充填剤;亜鉛華、ステアリン酸等の加硫促進助剤;老化防止剤等の、通常ゴム業界で使用される配合剤を添加してもよい。
セルロースを、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(C2AmimAc)、1−アリル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(AminCl)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジエチルホスフェート(C2mimDEP)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムホスフィネート(C2mim HPO)、又は1−エチル−3−メチルイミダゾリウムメチルホスホネイト(C2mimMEP)に溶解した多糖類溶解液を紡糸温度に加熱後、押出機にて、上記いずれかのイオン液体を所定の濃度で含む固形化槽中に押し出し、所定時間滞留させ、洗浄、乾燥の工程を経て、表1〜3に示す実施例1〜16、比較例1〜3のマルチフィラメント(繊維)を得た。
尚、マルチフィラメント(繊維)の製造条件の詳細については、表1〜3に示す。
繊維を100m採取し、130℃で30分乾燥させた後、乾燥したデシケーター中で室温になるまで放冷後、重量を測定した。10000mあたり1gが1dtexとなるため、100mの重量から繊度を算出した。
10cmあたり、4回の仮撚りをした繊維について、引張試験機を用いて、25℃、55%RH条件で引張試験を行った。強力は、破断強力を繊度で除したものであり、切断伸度は、破断時の伸度である。
実施例1〜16、比較例1〜3のマルチフィラメント(繊維)において、作製に用いたイオン液体の全重量における、別途、精製多糖類繊維を製造したときに用いられたイオン液体のリサイクル品の重量比をリサイクル率とした。
得られたマルチフィラメントを下撚りした後、前記マルチフィラメントを2本合わせて上撚りしてコードを作製した。下撚り及び上撚りの回数を表1〜3に示した。
前記コードをRFL(resolcin−formalin−latex)接着剤に浸漬して、ディップ処理し、乾燥工程及びベーキング工程からなる熱処理を行った。乾燥工程は160℃×150秒間、1×10−3N/dtexの張力で行った。ベーキング工程は乾燥工程と同温度、同時間、同張力で乾燥工程に引き続いて行い、ディップコードを作成した。
前記ディップコードをコーテイングゴムでカレンダーし、カーカスプライ材を作製した。
前記コーテイングゴムでトッピングしたディップコードを用いて、通常の成型、加硫工程を経て、275/35R19のタイヤを作成した。
(1)ドラム耐久性
各実施例及び比較例におけるタイヤを25±2℃の室内でJIS規格の最大空気圧に調整してから24時間放置後、空気圧の再調整を行い、JIS規格の最大荷重の2倍の荷重をタイヤに負荷し、直径約1.9mのドラム上で速度70km/hで走行テストを行った。
この際の故障発生までの走行距離を測定し、比較例1のタイヤの故障発生までの走行距離を100として指数表示した。指数の大きい方が故障発生までの走行距離が長く、高荷重時の耐久性に優れていることを示す。
一方、第一の固形化槽中の第一の固形化液体におけるイオン液体の濃度が20重量%を未満の比較例1〜2においては、スプレードライの特性上、イオン液体は物理的に損失するため、リサイクル率が90%未満であり、かつ、強力の高い精製多糖類繊維が得られず、それを用いたタイヤは、タイヤ特性に劣っていた。
また、1段目の固形化槽中の固形化液体におけるイオン液体の濃度が70重量%を超えている比較例3においては、精製多糖類繊維を成形することができなかった。
Claims (23)
- イオン液体を含む液体に多糖類原料を溶解してなる多糖類溶解液を、イオン液体を含む固形化液体に接触させて、多糖類を湿式紡糸又は乾湿式紡糸する精製多糖類繊維の製造方法であって、
前記固形化液体における前記イオン液体の濃度が20重量%〜70重量%であり、前記イオン液体は、別途、精製多糖類繊維を製造したときに用いられた固形化液体からのリサイクル品を含み、前記イオン液体のリサイクル率が90重量%以上であることを特徴とする精製多糖類繊維の製造方法。 - 前記固形化液体における前記イオン液体の濃度が50重量%以下である請求項1に記載の精製多糖類繊維の製造方法。
- 前記イオン液体のリサイクル率が93重量%以上である請求項1又は2に記載の精製多糖類繊維の製造方法。
- 前記固形化液体を保持した固形化槽を複数用い、多糖類を紡糸する工程の上流から下流に向けて、保持した前記固形化液体中のイオン液体の濃度が順次低くなるように、前記複数の固形化槽を配置し、
最上流の前記固形化槽を用いて、前記多糖類溶解液中の多糖類を紡糸して、精製多糖類繊維の中間体を得て、該中間体を下流に向けて順次、残りの前記固形化槽を用いて紡糸して、精製多糖類繊維を得る請求項1〜3のいずれか一項に記載の精製多糖類繊維の製造方法。 - 前記多糖類がセルロースである請求項1〜4のいずれか一項に記載の精製多糖類繊維の製造方法。
- 前記固形化液体が前記イオン液体と、水及び/又は有機溶媒と、からなる請求項1〜5のいずれか一項に記載の精製多糖類繊維の製造方法。
- 前記有機溶媒が極性溶媒である請求項6に記載の精製多糖類繊維の製造方法。
- すべての前記固形化液体の温度が5〜60℃である請求項1〜7のいずれか一項に記載の精製多糖類繊維の製造方法。
- すべての前記固形化槽における前記多糖類又は前記中間体の滞留時間が300秒以下である請求項1〜8のいずれか一項に記載の精製多糖類繊維の製造方法。
- スプレードライ法を用いて、前記固形化液体から前記イオン液体をリサイクする工程を有する請求項1〜9のいずれか一項に記載の精製多糖類繊維の製造方法。
- 前記多糖類溶解液におけるイオン液体と、前記固形化液体中におけるイオン液体が同じ種類である請求項1〜10のいずれか一項に記載の精製多糖類繊維の製造方法。
- 前記多糖類溶解液におけるイオン液体及び前記固形化液体中におけるイオン液体は、それぞれ、カチオン部とアニオン部から成り、前記カチオン部は、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、アンモニウムイオン、及びフォスフォニウムイオンからなる群から選ばれる一種以上である請求項1〜11のいずれか一項に記載の精製多糖類繊維の製造方法。
- 前記カチオン部がイミダゾリウムイオンである請求項12に記載の精製多糖類繊維の製造方法。
- 前記アニオン部がリン原子を含む化合物を有する請求項12〜14のいずれか一項に記載の精製多糖類繊維の製造方法。
- 前記多糖類溶解液におけるイオン液体及び/又は前記固形化液体中におけるイオン液体が、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジエチルホスフェートである請求項1〜16のいずれか一項に記載の精製多糖類繊維の製造方法。
- 請求項1〜17のいずれか一項に記載の精製多糖類繊維の製造方法を用いて製造したことを特徴とする精製多糖類繊維。
- 強力TBが5.1cN/dtex以上である請求項18に記載の精製多糖類繊維。
- 強力TBが5.4cN/dtex以上である請求項18又は19に記載の精製多糖類繊維。
- 請求項18〜20のいずれか一項に記載の精製多糖類繊維と、ゴム材料とを複合化してなることを特徴とする繊維−ゴム複合体。
- 請求項21に記載の繊維−ゴム複合体を用いたことを特徴とするタイヤ。
- 前記繊維−ゴム複合体をカーカスプライ、ベルトプライ、又はベルト保護層として用いた請求項22に記載のタイヤ。
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