JP5955188B2 - 食品用の高油脂ペーストの押出造粒方法 - Google Patents

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本発明は、食品油脂を高含有した顆粒を効率的に押出造粒する方法に関する。
一般に、水分や油脂を多く含むペーストは、ベタツキが強く造粒することは難しい。特に油脂を多く含む場合、例え造粒したとしても油脂が浸みだしてしまい、乾燥しても流動性の悪い顆粒となってしまうという課題があった。粉末油脂等を使用することで、流動性の良い顆粒を作ることは可能であるが、油脂の含有量が多い粉末油脂は、通常は、油脂を乳化した状態で担持させたものである。そのため、十分な油脂の風味を感じにくく、食品としては、乳化していない油脂を用いた方が好ましい。
現在までのところ、乳化していない油脂の含有量が多くても流動性に優れた油脂含有粒状製品としては、特許文献1に開示されたものがある。
特開2012−000104号公報
前述のように、乳化していない油脂を多く含み、かつ流動性の良い顆粒は、特許文献1以前には知られていなかった。
しかし、特許文献1の顆粒は、確かに油脂の含有量が高く、風味も良好ではあるが、もっぱら流動層造粒にて油脂を噴霧して造粒するものであるので、油脂の流動層造粒装置、特にバグフィルター部への付着などが発生してしまい、製造効率に課題があった。一方、押出造粒により製造しようとした場合、特許文献1の技術を用いても、押出後に付着性が強く、綺麗な造粒物が得られなかった。
従って、本発明は、より効率よく油脂含有量の多い顆粒の押出造粒方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の水分と油脂量に調整したペーストに特定の嵩密度を持つセルロースを加えることにより、効率的に押出造粒が可能であり、さらに乾燥時にも油脂の浸み出しを抑制できることを見出し、本発明を成すに至った。すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)固形分100質量部に対して、水分を5〜20質量部、食用油脂を10〜30質量部含む混合物であって、且つ該混合物の固形分100質量部中に、嵩密度が0.1〜0.45g/cmのセルロースを1〜15質量部含む混合物を押出造粒し、乾燥することを特徴とする顆粒の製造方法。
(2)セルロースが結晶セルロースである(1)に記載の顆粒の製造方法。
(3)水分が請求項1に記載の範囲になる量の生味噌及び、食用油脂としてラードを使用した(1)又は(2)のいずれかに記載の顆粒の製造方法。
本発明により、食品用の高油脂の顆粒を効率的に製造できる。
本発明は、固形分100質量部に対して、水分を5〜20質量部、食用油脂を10〜30質量部含む混合物であって、且つ該混合物の固形分100質量部中に、嵩密度が0.1〜0.45g/cmのセルロースを1〜15質量部含む混合物を押出造粒し、乾燥することを特徴とする顆粒の製造方法に関する。以後、各項目について詳細に説明する。
<押出時の水分>
押出時の組成物の水分は、固形分100質量部に対して、5〜20質量部が良い。5質量部未満の場合、押出物がパサパサの状態で、造粒が不十分になることがある。逆に水分が20質量%を超えると、押出物のベタツキが強く押出後に付着を起こしてしまう場合がある。好ましくは10〜18質量部である。水分を上記範囲にするために水そのものを添加する方法もあるが、例えば生味噌などの水分含有量の高いもので、上記範囲にすることも出来る。特に生味噌は、水分が多く、べたつきやすいため、一般的には造粒が難しいが、本発明では生味噌を多く含んだ混合物も押出造粒することが可能である。
<押出時の油脂含有量>
押出時に含む食用油脂は、固形分100質量部に対して、10〜30質量部が良い。10質量部未満では、一般的に押出造粒が可能な領域であり、油脂を多く含んでも効率的に押出造粒できて、しかも油の浸みだしが少ないという本発明の効果は不明瞭になる。食用油脂が30質量部を超える場合、油の浸みだしを十分に防止することは困難となる。好ましくは15〜25質量部である。用いる食用油脂に特に制限はなく、動物性油脂、植物性油脂、あるいはそれらの水素添加油脂であっても良い。ラードや牛脂は常温で液体上でないため、顆粒を長期保存しても浸みだしにくく、好ましい食用油脂である。
<セルロース>
本発明で言うセルロースとは草木類や微生物などから得られる粒径が0.1〜200μmのセルロースのことであり、最も一般的なものとしては木材パルプを機械的若しくは化学的に処理して得られる粉末セルロースや結晶性セルロースなどが挙げられる。例えば、KC−フロック W−50,KC−フロック W−100(G)、KCフロック W−200(G)、KCフロック W−250、KCフロック W−300G,KCフロック W−400G(いずれも製品名、日本製紙ケミカル株式会社)が挙げられる。
結晶性セルロースとしては、例えば、セオラス FD−101、セオラス FD−301、セオラス ST−02、セオラス ST−100、セオラス FD−F20,セオラス UF−F711、セオラス UF−F702(いずれも製品名、旭化成ケミカルズ株式会社)、エンデュランスMCC VE−050(製品名、FMCバイオポリマー社製)などが挙げられる。特に、本発明ではセルロース系粉末のなかでも極めて純度が高く、好食感である結晶性セルロースを用いることが好ましい。結晶性セルロースとは、例えば木材パルプ、精製リンターなどのセルロース系素材を、酸加水分解、アルカリ酸化分解、酵素分解などにより解重合処理して得られる平均重合度30〜400、結晶性部分が10%を超えるものをいう。
<セルロースの嵩密度>
本発明のセルロースの嵩密度は0.1〜0.45g/cmのものが良い。0.1g/cm未満では、粉舞が激しく、作業性が著しく低下する場合がある。0.45g/cmを超えると、油脂の浸みだしを十分に抑制できない場合がある。好ましくは0.12〜0.30/cmである。
本発明は、固形分100質量部に対して、水分を5〜20質量部、食用油脂を10〜30質量部含む混合物であって、且つ該混合物の固形分100質量部中に、嵩密度が0.1〜0.45g/cmのセルロースを1〜15質量部含む混合物とすることにより、押出造粒を効率的に行うことが出来るというものである。
<押出造粒>
本発明でいう押出造粒とは、可塑性を持った原材料を、押出機構部によって、多数の孔を有するダイ、スクリーン面に押し付けて孔より押出して成型する造粒方法のことである。造粒径は特に制限はないが、本発明の顆粒は、スープのもとやふりかけ等の食品での使用が代表的な目的であるため、食感や分散性などの観点からは1〜5mmが好ましい。用いる押出造粒機の種類に特に制限はなく、例えば、スクリュー型押出造粒機、ロール型押出造粒機、ブレード型押出造粒機、自己成型型押出造粒機、ラム型押出造粒機を使用することが出来る。操作の簡便性からは、バケット式のブレード型押出造粒機が好ましい。
<乾燥>
本発明の押出後の乾燥方法に関しては、特に制限はなく一般的な乾燥方法で良い。例えば、棚段乾燥機、流動層乾燥機、振動式乾燥機などを用いて乾燥できる。乾燥条件等は一般的な条件で十分である。
<その他成分>
本発明の混合物には、食品に使用可能なものであれば、水分、食用油脂、セルロース以外に含まれるものに特に制限はない。必要に応じて香料、増粘剤、澱粉類などの1種類又は2種類以上を含んでいても構わない。
増粘剤としては、カラギナン、グァーガム、タマリンドシードガム、キサンタンガム、カラヤガム、アラビアガム、ガディガム、タラガム、ローカストビーンガム、サイリウムシードガム、カルボキシメチルセルロース塩、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸プロピレングリールエステルなどが挙げられる。
澱粉類としては例えば、とうもろこし澱粉(コーンスターチ)、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉や、前記の生澱粉を加工した加工澱粉(アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、酢酸澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシプロピル化澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、リン酸架橋澱粉、焙焼デキストリン、酸処理澱粉、アルカリ処理澱粉、漂白澱粉)などが挙げられる。
調味料としては、例えば、食塩、醤油、ソース、ケチャップ、マヨネーズ、酢、味噌、化学調味料、はちみつ、ブドウ糖、果糖、乳糖、砂糖、異性化糖、麦芽糖、ステビア、トレハロース、オリゴ糖(例えば、フラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、セロオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マンナンオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、乳果オリゴ糖など)、糖アルコール(例えばソルビトール、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、還元パラチノースなど)、アセルファムK、ネオテーム、スクラロース、水飴、還元水飴、コショウ、クミン、山椒、唐辛子などの香辛料、出汁調味料(例えば、かつお出汁、昆布出汁、チキンコンソメ、ビーフコンソメ、ポークコンソメなど)、グルタミン酸ナトリウム、タンパク分解物、エキス類(例えば、チキンエキス、ビーフエキス、ポークエキス、エビエキス、カニエキス)などが挙げられる。
<本発明の利用>
本発明で製造された顆粒は、乳化していない油脂を多く含み風味が良好なため、粉末調味料、粉末飲料、粉末スープ、ふりかけなどの食品として最も好適に利用できる。
実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、これらによって本発明は何ら制限されるものではない。
<セルロースの嵩密度の測定方法>
25cmの金属容器を使用し、粉体試料を定量フィーダーを用いて2〜3分かけて当該容器に粗充填し、粉体層上面をへらのような硬い板で水平になるようにならし、その重量を読み取り、これを容積で割った値である。
<評価方法>
■押出時の長さ
混合物を押出造粒した際の、スクリーン孔から出てきた押出物の長さを
下記の基準で評価した。
○(良) :押出物が3mm未満の長さで切れる。
△(可) :3mm以上、5mm未満の長さで切れる。
×(不可):5mmを超える押出物が存在する。
■押出時のベタツキ
○(良) :押出しされたもの同士の付着はほとんどない。
△(可) :一部、押出されたもの同士の付着があるが、すぐに解れる。
×(不可):押出されたもの同士で付着し、解れにくい。
■乾燥時の油の浸みだし
棚段乾燥機に布を敷き、そこに顆粒を広げて乾燥した。乾燥時の布への
油染みを観察した。
○(良) :油の浸みだしはマダラである。
×(不可) :布の一面に油が浸みだしている。
■乾燥後の硬さ
○(良) :乾燥することにより、固い顆粒となる。
×(不可):乾燥しても柔らかく、手で軽く触るだけで変形する。
[実施例1、2、比較例1〜3]
表1の組成に従って、実施例1,2および比較例1〜3の試作を行った。ラード、生味噌以外の粉末原料をあらかじめ粉混ぜし、それを2軸の混合器に仕込んだ。そこにあらかじめ60℃で加熱溶解したラードを加えて、2分間混合した。そこに生味噌を加えて、さらに3分間混合した。得られた混合物をバケット式のブレード型押出造粒機に仕込み、スクリーン径2mmφ、ブレード回転数100rpmで押出造粒した。得られた造粒物を棚式乾燥にて60℃で4時間乾燥した。実施例1の乾燥後の顆粒の見かけ比重は0.43g/cm、実施例2では0.55g/cm、比較例1は0.54g/cm、比較例2では0.55g/cm、比較例3では0.58g/cmであった。乾燥後の顆粒の水分は、実施例1が1.9%、実施例2は2.6%、比較例1が2.4%、比較例2は2.9%、比較例3は3.0%であった。
Figure 0005955188
試作の評価結果を表2に示す。
Figure 0005955188
実施例1および実施例2は油脂の浸み出しも少なく良好に押出造粒が可能であった。一方、本発明のセルロースをコーンスターチに置き換えた比較例1では押出時に若干、ベタツキが強く、乾燥時に油の浸み出しが激しかった。本発明のセルロースを乳糖に置き換えた比較例2では、押出時のベタツキが強く、押出物が長くなってしまった。さらに押出後の造粒物同士が付着して塊が生じた。加えて、乾燥時に油の浸み出しが多く、乾燥しても固くならなかった。比較例3では嵩密度が0.46のセルロースを使用したため、乾燥時の油の浸み出しが多かった。
本発明により、乳化していない油脂を多く含み、風味が良好な顆粒の押出造粒による製造が実施できるため、食品製造業に好適に利用できる。

Claims (3)

  1. 固形分100質量部に対して、水分を5〜20質量部、食用油脂を10〜30質量部含む混合物であって、且つ該混合物の固形分100質量部中に、嵩密度が0.1〜0.45g/cm3のセルロースを1〜15質量部含む混合物を押出造粒し、乾燥することを特徴とする顆粒の製造方法。
  2. セルロースが結晶セルロースである請求項1に記載の顆粒の製造方法。
  3. 水分が請求項1に記載の範囲になる量の生味噌及び、食用油脂としてラードを使用した請求項1又は請求項2のいずれかに記載の顆粒の製造方法。
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