JP5785035B2 - トウモロコシ種皮由来の食物繊維を含有する固形製剤 - Google Patents

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本発明は、滑沢剤の添加を必要としない錠剤、錠菓、カプセル剤に関する。
錠剤、錠菓は、一般的に原料を粉体のまま若しくは顆粒として打錠機にかけて圧縮成型して製造する。カプセル剤は粉末状態の原料を造粒して、これを顆粒化した後、硬質カプセルに充填する。
錠剤を打錠する際の脱型の工程で錠剤の杵先からの剥離が生じるキャッピング、打錠中に粉末が杵先へ付着し杵離れが悪く、錠剤表面に傷がつくスティッキング、錠剤と臼の摩擦が大きく打錠後の錠剤の離型性が悪くなるバインディングを生じることがあり、品質管理上問題となる。これらがひどくなると打錠を継続して実施できなくなる場合もある。またカプセル剤の場合は充填装置に顆粒が付着することによってスティッキングを起こす。
錠剤、錠菓を打錠する際の障害となるキャッピング、スティッキング、バインディングおよびカプセル剤のスティッキングの発生を防止するために、結着剤や滑沢剤が使用されている。通常滑沢剤には、従来から、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、シュガーエステルなどの食品添加物系のものが使用されている。
しかし、タルクは、食品への使用量に際しては使用基準があり、また滑沢剤としての効果も小さいためあまり用いられないのが現状である。ステアリン酸マグネシウムは、少量の使用で滑沢剤としての効果を発揮することができるが、長い間食品添加物として認められていなかったが現在では、その用途が保健機能食品に限って使用出来る事となったが、用途が限定されるという問題がある。最近の天然物志向の流れからできるだけ合成物質を使用しないようにしてほしいという消費者からの強い要求がある。
このため、また、天然系滑沢剤として食品添加物との製剤品が市販されている。またいくつかの提案がなされている。たとえば卵殻粉末(特許文献1:特開平10−225285公報)、豆類や種子の胚芽部の粉砕物(特許文献2:特開2007−320856号公報)、植物抽出多糖類(特開2002−326961号公報)を挙げることができる。しかし、現状では口解けや風味の面で問題がある。
特開平10−225285公報 特開2007−320856号公報 特開2002−326961号公報
本発明は、既存の滑沢剤を含有しない錠剤、錠菓であって打錠する際の滑沢性・結着性を高め、キャッピング、スティッキングを抑制した組成の錠剤、錠菓を提供することを課題とする。また、既存の滑沢剤を含有しないカプセル剤であって、スティッキングを抑制したカプセル剤を提供することを課題とする。
本発明は以下の構成である。
(1)トウモロコシ種皮由来の水不溶性食物繊維粉末と、造粒ずみ粒子の混合物を充填したことを特徴とするハードカプセル剤。
(2)トウモロコシ種皮由来の水不溶性食物繊維粉末のカプセル内容物当たりの含有量が1〜10重量%である(1)記載のカプセル剤。
(3)葉酸、ヘム鉄、カルシウムのいずれかを含有する(1)または(2)に記載のカプセル剤。
(4)少なくとも滑沢剤としてタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、シュガーエステルを含まない(1)〜(3)のいずれかに記載のカプセル剤。
本発明の実施により滑沢剤を含有しない錠剤、錠菓、カプセル剤が提供される。
本発明における滑沢剤とは、日本薬学会の定義に従うものとする。日本薬学会のホームページの定義は次のとおりである。
錠剤の製造に用いる医薬品添加物の一種。錠剤の原料となる粉末や顆粒に少量(1%以下)加えると、粉体表面に付着し、粉体間の付着力が弱まるため、粉体の流動性が高くなる。また、粉体の装置への付着を防ぐことにより、錠剤の製造をスムースにする。ステアリン酸マグネシウム、タルク、水素添加植物油などが用いられる。
本発明は、従来の技術とはまったく異なる技術思想の発明である。すなわち従来滑沢剤として公知の食品添加物や医薬品用添加物ではなく、トウモロコシ種皮由来の水不溶性食物繊維を製剤を調整する際に一定量配合することで滑沢剤としての機能を付与するものである。トウモロコシの種皮はコーンスターチを製造する際の廃棄物とされていたが、最近では食用食物繊維として供給されている。食物繊維やセルロースなどの多糖類は製剤技術においては結着剤として使用されることはあったが、滑沢剤としての効果はないものと考えられてきた。逆に繊維性の物質は、製剤技術上は好ましくないとされていた。本発明は、トウモロコシ種皮由来の水不溶性食物繊維以外に滑沢剤を使用しなくともスティッキングやキャッピングなどの発生しない製剤を製造することができる。
本発明においてはトウモロコシ種皮由来の水不溶性食物繊維であれば使用可能である。このトウモロコシ種皮由来の水不溶性食物繊維の粒径は特に限定するものではないが、粒径が大きいと均一に分散せず流動性及び製品の歩留まりが低下するので、好ましくは、粒径が80μm以下、さらに好ましくは50μm以下。特に好ましくは20μm以下である。
本発明に使用するトウモロコシ種皮由来の水不溶性食物繊維は、トウモロコシからコーンスターチを製造する過程で副産物として生産される。トウモロコシ穀粒をウエットミリング法(湿式亜硫酸浸漬処理法)によりでんぷん区分と蛋白区分、外皮区分、胚芽区分に分離した際の外皮区分をさらに湿式粉砕し、粗い繊維を除去して得られるものである。好ましくはJIS24メッシュ篩の通過物であり、食物繊維として市販されている。このようなトウモロコシ外皮由来水不溶性食物繊維として市販されているものとしては、日本食品化工株式会社製「セルファー」(商品名)がある。
とうもろこし外皮由来食物繊維を滑沢剤として使用する場合は打錠する成分との関係又はカプセルに充填する成分の口どけや風味を考慮して使用するトウモロコシ由来の水不溶性食物繊維を市販品から適宜選択することができる。
本発明において使用するトウモロコシ由来の水不溶性食物繊維は、医薬品、健康食品、菓子等に好適に用いられるが、特に、健康食品、菓子等口どけや風味が重要なものにより好適に用いられる。また、食物繊維として有害物質の吸着などの機能も有しており、滑沢剤としてのみでなく、さらに健康に役立つ機能を付加させることができる。製造方法としては特公平7−89886号公報に開示されているウエットミリング法やドライミリング法などを採用して製造されたものを適宜選択して使用することができる。
本発明の錠剤または錠菓、あるいはカプセル剤の製造の製造過程は、特に限定するものではない。錠剤の場合は、圧縮成型するための粉末または顆粒を製造する造粒プロセスと圧縮成型する打錠プロセスに分けられ、滑沢剤としての機能を発揮させるためには一般に造粒プロセス後に添加されるのが好ましい。添加量は特に限定するものではないが、1.0〜10.0重量%が好ましい。
本発明における打錠製造に用いる打錠機としては、上述したような原料粉体若しくは顆粒を打錠して錠剤を製造できる打錠機であれば特に制限されない。例えば、ロータリー打錠機や単発打錠機が好ましく用いられるがこれらに限られない。カプセル剤の場合も同様である。本発明の実施例、比較例を示し説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
1.葉酸含有製剤の調製と評価(粉体混合後直接打錠による評価)
各種食物繊維ならびに既存の滑沢剤と本発明に用いられるトウモロコシ種皮由来の水不溶性食物繊維について滑沢剤としての効果を比較評価した。
葉酸0.267重量部、製剤用でんぷん(パーフィラー102:フロイント産業製)99.773重量部をミクロ型透視式混合機(筒井理化学機械社)を用いて混合し、これに表1に示す各粉末を添加して混合し、単発打錠機N−30E(岡田精工社)で打錠した。打錠圧は1000Kg、錠剤重量を150ミリグラムに設定した。
かくして得られた錠剤の外観、錠剤硬度を評価した。また打錠杵への付着状態、打錠下杵/上杵の圧力比、錠剤硬度を測定し評価した。
錠剤硬度はニュースピードチェカーTS−75N型(岡田精工社製)を用いて測定した。
Figure 0005785035
上記表1に示すとおり実施例1のトウモロコシ種皮由来の水不溶性食物繊維を1%含有する錠剤は、ショ糖脂肪酸エステルや大豆粉末のような公知の滑沢剤を配合した場合と同等かそれ以上の製剤適性を示し、杵への付着やスティッキングも発生しなかった。また錠剤の口解けや味覚もなんら問題がなかった。一方、比較例3〜9の他の食物繊維を配合した製剤は打錠適性も不良であり、さらにスティッキング、キャッピングが発生した。
2.葉酸含有製剤の調製と評価(連続打錠による生産性評価)
上記表1で打錠適性が優れていると評価した実施例1、比較例2、比較例10の組成、対照として滑沢剤無添加の比較例1の各組成を実生産装置を用いて連続生産し、生産適性を評価した。なお混合機としてミクロ型透視式混合機S−3(筒井理化学機械)を用いて10分間混合し、超小型回転式錠剤機VEL20310SW4MZ(菊水製作所)を用い、打錠圧は1000Kg、錠剤重量を150ミリグラムに設定して連続生産を行った。
得られた錠剤は上記の1.と同様に下杵の付着、錠剤硬度を測定し評価した。結果を下記表2に示す。
Figure 0005785035
上記表2に示すとおり、本発明の組成は連続生産に適する製剤であった。一方公知の滑沢剤を使用した比較例2、比較例10は連続生産した場合錠剤硬度が低く、連続生産に適していないことが判明した。
3.カルシウム含有製剤の調製と評価(連続打錠による評価)
トウモロコシ種皮由来水不溶性食物繊維ならびに既存の滑沢剤をそれぞれ含有するカルシウム製剤を製造して発明の効果を評価した。
カルシウム原料としてミルクカルシウム(ミルクカルシウム−28 森永乳業)80重量%、結着剤としてアルファ化モチゴメデンプン(モチールアルファー 上越スターチ)20重量%を流動槽造粒乾燥機(FD−MP−01)を用いて造粒し、これにトウモロコシ種皮由来水不溶性食物繊維(セルファー200)10重量%をミクロ型透視式混合機(筒井理化学機械社)を用いて混合し、超小型回転式錠剤機VEL20310SW4MZ(菊水製作所)を用い、打錠圧は1000Kg、錠剤重量を250ミリグラムに設定して連続生産を行った。
同様に表3に示すショ糖脂肪酸エステル(比較例12)、部分アルファ化澱粉(PSC 旭化成ケミカルズ製、比較例13)、大豆粉末(比較例14)の公知の滑沢剤を用いて同様に連続生産を行った。得られた錠剤は上記の1.と同様に下杵の付着、錠剤硬度を測定し評価した。結果を下記表3に示す。なお下杵/上杵比は単発打錠機を用いて測定した。
Figure 0005785035
上記表3に示すとおり、本発明の組成は連続生産に適する製剤であった。
4.鉄ハードカプセル製造の際のスティッキングの発生評価
ヘム鉄(一丸ファルコス社)95重量%、澱粉(モチールアルファー 上越スターチ社)4.696重量%、ビタミンB12 1%粉末(BASF社)0.152重量%、葉酸(DSM社)0.152重量%を流動層造粒乾燥機FD−MP−01型((株)パウレック)を用いて造粒し、これにトウモロコシ種皮由来水不溶性食物繊維(セルファー200)5重量%添加しミクロ形透視式混合機S−3(筒井理化学器械(株))を用いて混合した。これをカプセル充填機:GKF400(BOSCH社(ドイツ))を用いてハードカプセルに160ミリグラム充填し、カプセル製剤を調製した(実施例3)。
同様にデキストリン5重量%又は澱粉(モチールアルファ(α化澱粉、上越スターチ(株)))5重量%を混合し、次いでカプセルに充填してカプセル製剤を調製した。
得られたカプセル製剤の表面を観察してスティッキングの状態を評価した。評価結果を書き表4に示す。
Figure 0005785035
上記表4に示すとおり本発明はカプセル製剤のスティッキングを抑制した。

Claims (4)

  1. トウモロコシ種皮由来の水不溶性食物繊維粉末と、造粒ずみ粒子の混合物を充填したことを特徴とするハードカプセル剤。
  2. トウモロコシ種皮由来の水不溶性食物繊維粉末のカプセル内容物当たりの含有量が1〜10重量%である請求項1記載のカプセル剤。
  3. 葉酸、ヘム鉄、カルシウムのいずれかを含有する請求項1または2に記載のカプセル剤。
  4. 少なくとも滑沢剤としてタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、シュガーエステルを含まない請求項1〜3のいずれかに記載のカプセル剤。
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