以下では、本明細書に開示する発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
なお、以下に説明する実施の形態において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
また、図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
また、本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの序数は、構成要素の混同を避けるために付すものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
また、本明細書等において「上」や「下」の用語は、構成要素の位置関係が「直上」または「直下」であることを限定するものではない。例えば、「A上のB」の表現であれば、AとBとの間に他の構成要素を含むものを除外しない。
なお、本明細書中において用いられている「SOI基板」という単語は、絶縁膜の表面にシリコン薄膜が設けられた構造(Silicon On Insulator)を表す単語として用いられるが、本明細書における「SOI基板」は上述の意味に限定されず、絶縁膜(または絶縁基板)上に半導体膜が設けられた構造(Semiconductor On Insulator)を表す単語して用いており、石英基板上にシリコン薄膜が設けられた構造(Silicon On Quartz。「SOQ」と略記されることもある。)や、シリコン薄膜の代わりに窒化ガリウム(GaN)薄膜や炭化シリコン(SiC)薄膜が設けられた構造なども、本明細書中の「SOI基板」に含まれるものである。
(実施の形態1)
本実施の形態では、半導体基板と、半導体基板とは異なる熱膨張係数を有する基板を用いてSOI基板を作製するにあたり、熱膨張係数の差異に起因した剥がれや破壊の抑制されたSOI基板の作製方法および作製装置を、図1乃至図6を用いて説明する。
まず、半導体基板100を準備し、表面に絶縁膜102を形成する(図1(A)参照。)。
半導体基板100としては、例えば、単結晶シリコン基板、単結晶ゲルマニウム基板または単結晶シリコンゲルマニウム基板などの第14族元素でなる基板を用いることができる。また、窒化ガリウム、ガリウムヒ素またはインジウムリンなどの化合物半導体基板を用いることもできる。なお、市販のシリコン基板としては、直径5インチ(125mm)、直径6インチ(150mm)、直径8インチ(100mm)、直径12インチ(300mm)、直径16インチ(700mm)サイズの円形のものが代表的である。また、半導体基板100の形状は円形に限らず、例えば、矩形等に加工したものであっても良い。また、半導体基板100は、CZ(チョクラルスキー)法やFZ(フローティングゾーン)法を用いて作製することができる。
絶縁膜102としては、例えば、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜等を単層で、または積層させて形成すればよい。なお、当該膜の作製方法としては、熱酸化法、CVD法、スパッタリング法などがある。また、CVD法を用いて絶縁膜102を形成する場合、良好な貼り合わせを実現するためには、テトラエトキシシラン(略称;TEOS:化学式Si(OC2H5)4)等の有機シランを用いて酸化シリコン膜を形成することが好ましい。
なお、熱酸化処理により絶縁膜102を形成する場合、酸化性雰囲気中にハロゲンを添加して行うことが好ましい。例えば、塩素(Cl)が添加された酸化性雰囲気中で半導体基板100に熱酸化処理を行うことにより、塩素酸化された絶縁膜102を形成することができる。この場合、絶縁膜102は、塩素原子を含有する膜となる。このような塩素酸化により、後の工程にて半導体基板100と接合基板を貼り合わせた後に、接合基板から混入するNaなどの不純物を固定して、半導体基板100の汚染を防止できる。なお、絶縁膜102に含有させるハロゲン原子は塩素原子に限られない。絶縁膜102にはフッ素原子を含有させてもよい。
また、絶縁膜102の形成前に、塩酸過酸化水素水混合溶液(HPM)、硫酸過酸化水素水混合溶液(SPM)、アンモニア過酸化水素水混合溶液(APM)、希フッ酸(DHF)、フッ酸、過酸化水素水および純水の混合液(FPM)などを用いて半導体基板100の表面を洗浄しておくことが好ましい。
次に、半導体基板100の一面からイオン照射処理104を行うことにより、半導体基板100中の所定の深さに、脆化領域106を形成する(図1(B)参照。)。
照射するイオン種としては、水素イオンを用いればよい。加速された水素イオンを照射する場合は、H3 +の比率を高くすると良い。具体的には、H+、H2 +、H3 +の総量に対してH3 +の割合が50%以上(より好ましくは80%以上)となるようにする。H3 +の割合を高めることで、イオン照射の効率を向上させることができる。また、水素イオン以外に、希ガスイオンを用いることもできる。具体的には、Heイオン、Neイオン、Arイオン、KrプトンイオンまたはXeイオンを用いることができる。
脆化領域106が形成される深さは、照射するイオンの運動エネルギー、質量と電荷、入射角などによって調節することができる。また、脆化領域106は、イオンの平均侵入深さとほぼ同じ深さの領域に形成される。このため、照射するイオン種や照射条件を調整することにより、後の工程にて半導体基板100から分離する、半導体膜108の厚さを調節することができる。
なお、半導体膜108の厚さについては特に限定は無いが、分離された半導体膜108を高性能な半導体集積回路を形成する用途に用いる場合は、当該膜厚を厚くしすぎるとS値が増加する、トランジスタがノーマリーオンになるといった恐れがあるため、1nm以上200nm以下、好ましくは3nm以上100nm以下とすることが望ましい。このため、半導体基板100中における脆化領域106の形成深さが、1nm以上200nm以下、好ましくは3nm以上100nm以下程度となるように、照射するイオンの平均侵入深さを調節すればよい。
当該イオン照射処理104は、イオンドーピング装置やイオン注入装置を用いて行うことができる。特にイオン注入装置では、プラズマ中のイオン種を質量分離し、ある特定の質量のイオン種のみを半導体基板中に照射することができるため、トランジスタの特性に影響を及ぼす不純物の混入を抑制できるため望ましい。
しかし、イオンドーピング装置を用いてイオン照射処理104を行う場合においても、絶縁膜102を介してイオン照射処理104を行うことにより、トランジスタの特性に影響を及ぼす物質(例えば重金属など)をトラップすることができる。
なお、イオン照射処理104の後に結晶欠陥を回復させるための熱処理を行ってもよい。この熱処理の温度は、脆化領域106において元素集中による剥離が生じない温度とする。当該加熱温度は、半導体基板100として用いる材質や半導体基板100中に照射するイオン種などにより変化するため、実施者が実施条件を鑑みて適宜調整すればよい。例えば、100℃以上400℃未満で加熱を行えばよい。なお、上記熱処理には、拡散炉、抵抗加熱炉などの加熱炉、RTA(瞬間熱アニール、Rapid Thermal Anneal)装置、マイクロ波加熱装置などを用いることができる。
次に、接合基板110を準備する。接合基板110としては、絶縁体でなる基板を用いることができる。具体的には、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスのような電子工業用に使われる各種ガラス基板、天然石英基板、合成石英基板などが挙げられる。
また、接合基板110として、300℃以上の耐熱性を有するフィルム(例えば、ポリイミドフィルムなど)やプリプレグ(例えば、ガラス繊維にポリイミド樹脂を含浸させたものなど)などを用いたり、また、金属板や金属箔を用いることもできる。これらの基板は可撓性を有しているため、本実施の形態に記載の作製方法により作製されたSOI基板を用いた半導体装置に、可とう性を持たせることができる。
なお、接合基板110は、半導体基板100よりも大きなサイズの基板を用いることが望ましい。具体的には、接合基板110に対して半導体基板100を重なり合うことなく複数枚貼り合わせ可能な大きさであることが望ましく、より好ましくは接合基板110の面積が半導体基板100の面積の2倍より大きいことが望ましい。これにより、大面積のSOI基板を作製することが可能となり、1枚のSOI基板から多くの半導体装置を作製できるため、半導体装置のコスト低減を図ることができる。
なお、接合基板110は、表面をあらかじめ洗浄しておくことが好ましい。具体的には、接合基板110に対して、塩酸過酸化水素水混合溶液(HPM)、硫酸過酸化水素水混合溶液(SPM)、アンモニア過酸化水素水混合溶液(APM)、希フッ酸(DHF)、フッ酸、過酸化水素水、純水の混合液(FPM)等を用いて超音波洗浄を行う。このような洗浄処理を行うことによって、接合基板110表面の平坦性向上や、接合基板110表面に残存する研磨粒子や有機物などの除去などが実現される。
また、半導体基板100と接合基板110を貼り合わせる前には、貼り合わせに係る表面に対して表面処理を行うことが好ましい。表面処理としては、ウェット処理、ドライ処理、またはウェット処理とドライ処理の組み合わせ、を用いることができる。また、異なるウェット処理どうしを組み合わせて用いても良いし、異なるドライ処理どうしを組み合わせて用いても良い。これにより。半導体基板100と接合基板110との界面での接合強度を向上させることができる。
次に、半導体基板100の温度と接合基板110の温度を異なる状態として、半導体基板100と接合基板110を貼り合わせる(図1(C)参照。)。なお、「温度を異なる状態として」とは、具体的には、熱膨張係数の小さい基板の温度よりも熱膨張係数の大きい基板の温度を高くした状態のことを示すものである。
ここで、半導体基板100と接合基板110の貼り合わせを行う装置(以下、単に「貼り合わせ装置」と略記する。)および貼り合わせについての具体的な内容を、以下で説明する。
本明細書に記載するように、半導体基板100の温度と接合基板110の温度を異なる状態とするには、まず、半導体基板100を設置する設置台(以下、第1の設置台と呼称する。)または接合基板110を設置する設置台(以下、第2の設置台と呼称する。)の少なくとも一方、好ましくは両方に、設置台の温度を調整できる温度調整装置を設ける必要がある。温度調整装置としては、例えばニクロム線やタングステン線のような電気抵抗の大きな導線に電流を流すことで加熱する(抵抗加熱装置などとも言われる。)、設置台に吸収される波長の光を放出する光源を用いて加熱する(ランプ加熱装置などとも言われる。)といった各種加熱機構を用いることができる。また、温度調整装置として、例えば冷却液を循環させることで冷却する、金属の接合部に電流を流すことにより一方の金属からもう一方の金属に熱が移動するペルティエ効果を用いて冷却する(ペルティエ素子などとも言われる。)といった各種冷却機構を用いることもできる。
また、半導体基板100と接合基板110の温度が異なる状態で両基板を貼り合わせるために、第1の設置台および第2の設置台のうち少なくとも一方を、移動させる駆動装置を設ける必要がある。駆動装置としては、例えば、モーターを用いて設置台を昇降させる構造や、通電により磁力を発生する電磁石を用いて設置台を昇降させる構造などを用いればよい。
上述のような温度調整装置および駆動装置を有する貼り合わせ装置の一例を、図2に示す。なお、本実施の形態に示す貼り合わせ装置の構成では、接合基板110に対して半導体基板100を同時に9枚まで貼り合わせることが可能であるが、勿論、貼り合わせ数を限定するものではない。
図2に示す貼り合わせ装置は、第1の設置台211と、第2の設置台212と、第1の設置台211および第2の設置台212に設けられた温度調整装置220と、第1の設置台211を上下に動かす駆動装置230を有している。そして、絶縁膜102および脆化領域106を有する半導体基板100が第1の設置台211に設置され、接合基板110が第2の設置台212に設置されている。なお、第2の設置台212は、設置した接合基板110が落下しないように基板固定機構234を備えていることが望ましい。基板固定機構234としては、例えば、真空チャックなどの吸着機構を用いることができる。また、第2の設置台212の接合基板110を設置する面に、熱剥離テープ、熱剥離接着剤、UV剥離テープまたはUV剥離接着剤などの仮固定材料を設け、これを基板固定機構234としてもよい。
図2(A)は本明細書に係る貼り合わせ装置の一例を表す斜視図であり、図2(B)は図2(A)を点線で示すZ面で分断した際の断面図である。第1の設置台211は駆動装置230により、図2(B)の矢印で示すように上下方向(Z軸方向とも言える)に第1の設置台211を動かすことができる。
なお、図2(A)では、駆動装置230としてモーターを用い、軸232を介してモーターの駆動力を第1の設置台に伝え、第1の設置台を上下に動かしている。また、温度調整装置220として抵抗加熱装置を用いている。
図2における半導体基板100と接合基板110の貼り合わせ方法の流れを、図3を用いて簡潔に説明する。なお、図3の説明では、半導体基板100としてシリコン基板(熱膨張係数が接合基板110より大きい)を、接合基板110として合成石英基板(熱膨張係数が半導体基板100より小さい)を用いた場合の説明を行う。
まず、第1の設置台211に半導体基板100を、第2の設置台212に接合基板110を設置する(図3(A)参照)。第1の設置台211および第2の設置台212の材質については特段の限定はないが、温度調整装置を設ける設置台においては、熱伝導率の良い材料、例えばアルミニウム、銅、真鍮、ニッケル、タングステンなどを用いることが好ましい。これにより、設置台を効率よく加熱または冷却することができる。
なお、図3のように、接合基板110のサイズは半導体基板100よりも大きいことが好ましい。これにより、接合基板110に対して複数枚の半導体基板100を貼り合わせることができるため、大面積のSOI基板を作製することができる。
次に、第1の設置台211に設けられた温度調整装置220および第2の設置台212に設けられた温度調整装置220を用いて、接合基板110よりも半導体基板100の温度を高くする。つまり、熱膨張係数の小さい基板(接合基板110)よりも熱膨張係数の大きい基板(半導体基板100)の基板温度を高くする。これにより、半導体基板100と接合基板110を貼り合わせた後の分離加熱処理時において、半導体基板100の温度上昇量よりも接合基板110の温度上昇量の方が大きくなるため、半導体基板100の膨張量と接合基板110の膨張量の差を近づけることができる。
上述の概念を分かり易くするため、簡単な数値を用いて上述内容説明する。
例えば、半導体基板100として、一辺の長さ(L)がXmmの正方形状、熱膨張率(α1)が2.5[×10−6/K]のシリコンウエハーを用い、接合基板110として、一辺の長さ(L)がXmmの正方形状、熱膨張率(α2)が1.0[×10−6/K]の合成石英基板を用いる。
上述の半導体基板100および接合基板110を室温状態(ここでは20℃とする。)で貼り合わせ、両基板に対して400℃の加熱処理を行った場合、半導体基板100の加熱前後の温度差(ΔT1)および接合基板110の加熱前後の温度差(ΔT2)は共に380℃となる。
なお、熱膨張係数に起因する物質の変位量ΔLは概ね、ΔL=α×L×ΔTの式に従った変形量となる。
したがって、半導体基板100の変位量(ΔL1)は、ΔL1=α1×L×ΔT1であり、およそ9.50×10−2[mm]となる。また、接合基板110の変位量(ΔL2)は、ΔL2=α2×L×ΔT2であり、およそ3.80×10−2[mm]となる。このため、熱膨張係数の差異に起因した半導体基板100と接合基板110の膨張量の差は、およそ5.70×10−2[mm]程度となる。
これに対し、熱膨張係数の大きい基板の温度が熱膨張係数の小さい基板の温度よりも高くなるように、半導体基板100を、例えば予め200℃に加熱、接合基板110を、例えば予め10℃に冷却した状態で両基板を貼り合わせ、両基板に対して400℃の加熱処理を行った場合、半導体基板100の加熱前後の温度差(ΔT1)は200℃、接合基板110の加熱前後の温度差(ΔT2)は390℃となる。
したがって、半導体基板100の変位量(ΔL1)は、およそ5.0×10−2[mm]となり、接合基板110の変位量(ΔL2)は、およそ3.9×10−2[mm]となる。このため、熱膨張係数の差異に起因した半導体基板100と接合基板110の膨張量の差はおよそ1.1×10−2[mm]程度と、半導体基板100を加熱および接合基板110を冷却しない場合と比較して1/5以下の値となる。
このように、第1の設置台211に設けられた温度調整装置220、および第2の設置台212に設けられた温度調整装置220を用いて、熱膨張係数の大きい基板の温度が熱膨張係数の小さい基板の温度よりも高い状態で両基板を貼り合わせることにより、分離加熱処理を行った際の、半導体基板100の膨張量と接合基板110の膨張量の差を近づけることができる。
なお、本実施の形態では第1の設置台211に設けられた温度調整装置220および第2の設置第212に取り付けられた温度調整装置220の両方を動作させたが、片方のみを動作させてもよい。その場合、熱膨張係数の小さい基板(接合基板110)よりも熱膨張係数の大きい基板(半導体基板100)の基板温度が高くなるように、第1の設置台211に取り付けられた温度調整装置220を用いて半導体基板100を加熱する、または、第2の設置台212に取り付けられた温度調整装置220を用いて接合基板110を冷却すればよい。
また、本実施の形態では、第1の設置台211および第2の設置第212の両方に温度調整装置220が設置されているが、片側のみでもよく、温度調整装置220は、熱膨張係数の大きい基板を設置する設置台側に設ける場合は、加熱機構を有する温度調整装置220を、熱膨張係数の小さい基板を設置する設置台側に設ける場合は、冷却機構を有する温度調整装置220を設ければよい。
なお、上述のように、半導体基板100に対して加熱処理を行う場合、脆化領域106において元素集中による剥離が生じない温度(例えば、100℃以上400℃未満)を、半導体基板100に対して加える必要がある。この場合、拡散炉、抵抗加熱炉などの加熱炉、RTA(瞬間熱アニール、Rapid Thermal Anneal)装置、マイクロ波加熱装置などを用いることができる。なお、脆化領域106において元素集中による剥離が生じる温度は、半導体基板100の材質やイオン照射処理104の条件などにより変化するため、上記温度条件はあくまで一例に過ぎず、開示する発明の一態様がこれに限定して解釈されるものではない。しかし、熱膨張係数の小さい基板(接合基板110)よりも熱膨張係数の大きい基板(半導体基板100)の基板温度を50℃以上高くする、より好ましくは100℃以上高くする、更に好ましくは200℃以上高くすることが望ましい。
次に、軸232を介して駆動装置230の駆動力を第1の設置台211に伝えて第1の設置台211を移動させ、半導体基板100と接合基板110を貼り合わせる(図3(B)参照。)。半導体基板100の一部が接合基板110に接触することにより、半導体基板100と接合基板110はファンデルワールス力や水素結合などにより、貼り合わせが自発的に進行する。
本実施の形態に記載する貼り合わせ装置は、第1の設置台211が各々別の駆動装置により移動する構造であるが、複数の第1の設置台211が1つの駆動装置により移動する構造や、1つの駆動装置で全ての第1の設置台211が移動する構造としてもよい。当該構造とすることで、駆動装置230の台数を少なくすることができるため、貼り合わせ装置の製造コストを低減することができる。また、本実施の形態に記載する貼り合わせ装置は、第1の設置台211がZ軸方向に動作する構造であるが、第2の設置台212に駆動装置230を設け、第2の設置台212が移動する構造としてもよい。また、第1の設置台211および第2の設置第212の両方が移動する構造としてもよい。加えて、第1の設置台211および第2の設置台212の一方または両方は、貼り合わせ位置を調整のために前後方向や左右方向(X軸方向やY軸方向とも言える。)に動作する機構を備えていてもよい。
なお、上述のように2つ以上の第1の設置台211を1つの駆動装置230により移動する構造の場合、第1の設置台211上に設置する半導体基板100の厚さが異なっていると、特定の半導体基板100に力(駆動装置230の駆動力)が集中してしまい、特定の半導体基板が破壊する可能性がある。このため、2つ以上の第1の設置台211を1つの駆動装置230により移動させる場合は、図4に示すように、軸232の一部に可動部236を設けることが好ましい。可動部236としては、例えば、図4(A)に示すように油圧シリンダーや空気圧シリンダーなどの各種シリンダーを用いることができる。また、図4(B)のように、軸232の一部にウレタン、スポンジ、ゴム(天然ゴム、合成ゴムなど)またはバネなどの弾性体を挟んで用いることもできる。
上述の貼り合わせ装置を用いて半導体基板100と接合基板110を貼り合わせることにより、半導体基板100の温度と接合基板110の温度を異なる状態、具体的には、熱膨張係数の小さい基板の温度よりも熱膨張係数の大きい基板の温度を高くした状態で貼り合わせることができるため、後の工程で行う分離加熱処理時において、半導体基板100の温度上昇量よりも接合基板110の温度上昇量の方が大きくなるため、半導体基板100の膨張量と接合基板110の膨張量の差を近づけることができる。したがって、半導体基板100と接合基板110の熱膨張係数の差異に起因した基板の剥がれや破壊を抑制することができる。
なお、本実施の形態では、半導体基板100を接合基板110に対して平行な状態で貼り合わせているが、例えば図5(A)に示すように、半導体基板100を接合基板110に対して傾斜角を持たせた状態で貼り合わせてもより。ここで、上述の「半導体基板100を、接合基板110の設置角度に対して傾斜角を持たせた状態で貼り合わせる」とは、図5(B)に示すように、接合基板110のX軸およびY軸の、Z軸方向への傾きを0度と規定した場合において、半導体基板100のX軸が、Z軸方向に0度より大きく3度より小さい範囲、好ましくは0.01度以上2度以下の範囲で傾きを有している状態(図5(B)の左図に概念模式図を示す。)、または、半導体基板100のY軸が、Z軸方向に0度より大きく3度より小さい範囲、好ましくは0.01度以上2度以下の範囲で傾きを有している状態(図5(B)の右図に概念模式図を示す。)の少なくともいずれかを満たしていることが望ましい。このように貼り合わせることにより、半導体基板100と接合基板110の間に空気層(エアボイドなどとも言われる。)が混入することを抑制できる。
また、半導体基板100と接合基板110の貼り合わせに際し、半導体基板100と接合基板110の接触箇所を始点とする自発的な貼り合わせが始まった後は、第1の設置台の移動(つまり、第1の設置台211と第2の設置台212を近づける動作)を停止することが望ましい。これは、自発的な貼り合わせ開始後に第1の設置台211の移動を続けると、接合基板110に対して半導体基板100が強く押し当てられ、半導体基板100と接合基板110の自発的な貼り合わせが阻害されたり、半導体基板100と接合基板110の間に空気層(エアボイドなどとも言われる。)が混入するなどの恐れがあるためである。
なお、貼り合わせの前に、半導体基板100および接合基板110の少なくともいずれかに対して予めプラズマ処理を行うことが好ましい。これにより、半導体基板100と接合基板110の接合強度を増加させることができるため、熱膨張係数の際に起因した、半導体基板100と接合基板110の剥がれを抑制することができる。特に、半導体基板100または接合基板110のいずれかに一方または両方を加熱した状態で貼り合わせる場合、半導体基板100と接合基板110の接合強度が加熱により低下するため、予めプラズマ処理を行うことが好ましい。なお、プラズマ処理は、例えば、He、Ar、Kr、Xeなどの希ガス、酸素、酸化窒素、アンモニア、窒素、水素などのガスおよびこれらの混合ガスを用いて行うことができる。特に、酸素ガスやアルゴンガスなどを用いることが好ましい。
次に、半導体基板100が貼り合わされた接合基板110を第2の設置台212から外し、半導体基板100に対して分離加熱処理を行う。これにより、脆化領域106に元素集中が生じ、半導体基板100が容易に分離できる状態となる。なお、分離加熱処理は、半導体基板100として用いる材質や半導体基板100中に照射するイオン種などにより変化するため、実施者が実施条件を鑑みて適宜調整すればよい。例えば、半導体基板100としてシリコンウエハーを用いる場合は、一例として400℃以上600℃以下で加熱を行えばよい。
なお、半導体基板100と接合基板110の接合強度を増加させるため、貼り合わせ後から分離加熱処理を行うまでの間に、半導体基板100と接合基板110の接合強度を高めるため、半導体基板に対して加熱処理(当該加熱処理を、以下では「接合加熱処理」と記載することもある。)を行うことが好ましい。なお、接合加熱処理は100℃以上400℃未満、好ましくは100℃以上350℃以下の温度で行うことが望ましい。
接合加熱処理および分離加熱処理には、拡散炉、抵抗加熱炉などの加熱炉、RTA(瞬間熱アニール、Rapid Thermal Anneal)装置、マイクロ波加熱装置などを用いることができる。
このように、本実施の形態に記載のとおり、半導体基板100と接合基板110を貼り合わせる間に予め、熱膨張係数の小さい基板(接合基板110)よりも熱膨張係数の大きい基板(半導体基板100)の基板温度が高くした状態で両基板を貼り合わせ、その後、半導体基板100に対して分離加熱処理を行うことにより、接合基板110から半導体基板100を分離する前に両基板が剥がれてしまう、熱歪みにより基板が破壊する、といった現象を抑制できる。
そして、接合基板110から半導体基板100を分離することにより、半導体基板100より分離された半導体膜108が、絶縁膜102を介して接合基板110上に転載される(図1(D)参照。)。
なお、半導体基板100から半導体膜108を分離した後に、半導体膜108が転載された接合基板110を、100℃以上接合基板110の歪点以下の温度で熱処理を行い、半導体膜108中に残存する水素の濃度を低減させてもよい。
以上の工程により、半導体基板と、半導体基板とは異なる熱膨張係数を有する基板を用いてSOI基板を作製するにあたり、熱膨張係数の差異に起因した剥がれや破壊の抑制された高品位なSOI基板120を作製することができる(図1(E)参照。)。
なお、図1では、接合基板110に対して半導体基板100を1枚貼り合わせ、加熱処理および分離をする説明を行ったが、図2などのように接合基板110に対して複数枚の半導体基板100を貼り合わせ、加熱処理および分離をしてSOI基板を作製してもよい。これにより、接合基板110上には絶縁膜102を介して複数の半導体膜108が形成され、1枚の接合基板110から、より多くの半導体装置を作製することができる、つまり、1枚の基板からの取り数が増加するため、半導体装置のコスト低減を図ることができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1にて記載した方法とは異なる方法を用いて半導体基板100の膨張量と接合基板110の膨張量の差を近づけ、熱膨張係数の差異に起因した剥がれや破壊の抑制されたSOI基板の作製方法を説明する。
まず、実施の形態1にて説明した図1(A)および図1(B)、ならびに当該図面の説明に対応する実施の形態1の内容を参酌して、絶縁膜102および脆化領域106を備えた半導体基板100を作製する。そして、図3(A)に示すように、貼り合わせ装置の第1の設置台211に半導体基板100を設置し、第2の設置台212に接合基板110を設置する。なお、ここで用いる貼り合わせ装置は、実施の形態1にて説明した貼り合わせ装置と同じものを用いることができる。
次に、第1の設置台211に設けられた温度調整装置220、および第2の設置台212に設けられた温度調整装置220を用いて、半導体基板100および接合基板110の温度が共に室温よりが高くなるように、両基板を加熱する。これにより、半導体基板100と接合基板110を貼り合わせた後の分離加熱処理時において、半導体基板100および接合基板110の温度上昇量は、両基板を室温から加熱する場合と比較して小さくなる。このため、分離加熱処理を行った際における、半導体基板の膨張量と接合基板の膨張量の差を近づけることができる。
上述の概念を分かり易くするため、簡単な数値を用いて上述内容説明する。
例えば、半導体基板100として、一辺の長さ(L)がXmmの正方形状、熱膨張率(α1)が2.5[×10−6/K]のシリコンウエハーを用い、接合基板110として、一辺の長さ(L)がXmmの正方形状、熱膨張率(α2)が1.0[×10−6/K]の合成石英基板を用いる。
上述の半導体基板100および接合基板110を室温状態(ここでは20℃とする。)で貼り合わせ、両基板に対して400℃の加熱処理を行った場合、半導体基板100の加熱前後の温度差(ΔT1)および接合基板110の加熱前後の温度差(ΔT2)は共に380℃となる。
なお、熱膨張係数に起因する物質の変位量ΔLは概ね、α×L×ΔTの式に従った変形量となる。
したがって、半導体基板100の変位量(ΔL1)は、およそ9.50×10−2[mm]となり、接合基板110の変位量(ΔL2)は、およそ3.80×10−2[mm]となる。このため、熱膨張係数の差異に起因した半導体基板100と接合基板110の膨張量の差(ΔL1−ΔL2)は、およそ5.70×10−2[mm]程度となる。
これに対し、半導体基板100および接合基板110を予め150℃に加熱した状態で貼り合わせ、両基板に対して400℃の加熱処理を行った場合、半導体基板100の加熱前後の温度差(ΔT1)および接合基板110の加熱前後の温度差(ΔT2)は共に250℃となる。
したがって、半導体基板100の変位量(ΔL1)は、およそ6.25×10−2[mm]となり、接合基板110の変位量(ΔL2)は、およそ2.50×10−2[mm]となる。このため、熱膨張係数の差異に起因した半導体基板100と接合基板110の膨張量の差(ΔL1−ΔL2)は、およそ3.75×10−2[mm]程度と、室温から加熱した場合の膨張量の差(ΔL1−ΔL2)の6割強の値となる。
このように、半導体基板100および接合基板110を貼り合わせる前に、第1の設置台211に設けられた温度調整装置220、および第2の設置台212に設けられた温度調整装置220を用いて両基板の温度を予め室温よりが高くすることにより、分離加熱処理を行った際における、半導体基板100の膨張量と接合基板110の膨張量の差を近づけることができる。
以下の工程については、実施の形態1にて説明した図1(D)および図1(E)、ならびに当該図面の説明に対応する実施の形態1の内容を参酌することで、熱膨張係数の差異に起因した剥がれや破壊の抑制された高品位なSOI基板120を作製することができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1に記載の方法により作製したSOI基板を用いた半導体素子について記載する。
図6に、実施の形態1の方法により作製したSOI基板120を用いた半導体素子の一例として、トランジスタ720の構造を示す。
トランジスタ720は、基板700上に設けられた下地膜701と、下地膜701上に設けられた、ソース領域またはドレイン領域として機能する低抵抗領域702aおよび低抵抗領域702aに挟まれたチャネル形成領域702bを有する半導体層702と、低抵抗領域702aおよびチャネル形成領域702b上に設けられたゲート絶縁膜704と、ゲート絶縁膜704上に設けられゲート電極706と、ゲート絶縁膜704およびゲート電極706上に設けられた第1の絶縁膜708および第2の絶縁膜710と、ゲート絶縁膜704、第1の絶縁膜708および第2の絶縁膜710に形成された開口部を介して低抵抗領域702aと電気的に接続された、ソース配線またはドレイン配線として機能する配線層712を備えている。
SOI基板120を用いてトランジスタ720を作製する方法としては、まず、実施の形態1に記載の方法により作製したSOI基板120の半導体膜108を、フォトリソグラフィ法やエッチング法などの公知の技術を用いて島状に加工して、下地膜701上に半導体層702を形成する(図7(A)参照。)。なお、SOI基板120の接合基板110が本実施の形態の基板700に相当し、また、SOI基板120の絶縁膜102が本実施の形態の下地膜701に相当する。なお、下地膜701は、基板700から半導体層702にナトリウム等のトランジスタの特性に悪影響を及ぼす不純物の拡散を抑制する機能を有している。
次に、半導体層702に対して、n型の導電性を付与する不純物元素や、p型の導電性を付与する不純物元素を、イオン注入法などの公知の技術を用いて半導体層702に添加する。半導体層702がシリコンである場合、n型の導電性を付与する不純物元素としては、例えば、リン(P)やヒ素(As)などを用いることができる。また、p型の導電性を付与する不純物元素としては、例えば、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)などを用いることができる。
次に、半導体層702を覆うゲート絶縁膜704を、CVD法やスパッタリング法などの公知の技術を用いて形成する(図7(B)参照。)。ゲート絶縁膜704は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化イットリウム、ハフニウムシリケート(HfSixOy(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSixOy(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムアルミネート(HfAlxOy(x>0、y>0))等を含む単層構造または積層構造とすることが望ましい。なお、ゲート絶縁膜704の厚さは、例えば、1nm以上200nm以下、好ましくは10nm以上100nm以下とすればよく、例えばゲート絶縁膜704として、CVD法により酸化窒化シリコンと窒化酸化シリコンの積層膜を50nm厚さで形成して用いればよい。
次に、ゲート絶縁膜704上に、スパッタリング法や蒸着法などの公知の技術を用いて導電層を形成した後に、フォトリソグラフィ法やエッチング法などの公知の技術を用いて導電層をパターン形成し、ゲート電極706を形成する(図7(C)参照。)。ゲート電極706に用いる導電層としては、アルミニウム、銅、チタン、タンタルおよびタングステン等の金属材料や、当該金属材料の窒化物を用い、単層または複層にて形成することができる。また、多結晶シリコンなどの半導体材料を用いて導電層を形成しても良い。なお、ゲート電極の厚さは、例えば、10nm以上1000nm以下、好ましくは50nm以上500nm以下とすればよく、例えばゲート電極706として、スパッタリング法によりタンタルと銅とチタンの積層膜を300nmの厚さで形成して用いればよい。
次に、ゲート電極706をマスクとして、イオン注入法などの公知の技術を用いて半導体層702に対して一導電型を付与する不純物元素を添加し、低抵抗領域702aおよびチャネル形成領域702bを形成する(図7(D)参照。)。例えば、n型トランジスタを形成するためには、リン(P)やヒ素(As)などの不純物元素を添加すればよく、p型トランジスタを形成するためには、硼素(B)やアルミニウム(Al)やガリウム(Ga)などの不純物元素を添加すればよい。なお、不純物元素を添加した後には、活性化のための熱処理を行ってもよい。
次に、スパッタリング法やCVD法やスピンコート法などの公知の技術を用いて、ゲート絶縁膜704およびゲート電極706を覆うように第1の絶縁膜708および第2の絶縁膜710を形成する(図8(A)参照。)。第1の絶縁膜708および第2の絶縁膜710としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム等の無機絶縁材料を含む材料を用いることができる。また、第1の絶縁膜708および第2の絶縁膜710として、ポリイミド、アクリル等の有機絶縁材料を用いることも可能である。なお、第1の絶縁膜708および第2の絶縁膜710の厚さは、例えば、100nm以上5000nm以下、好ましくは300nm以上3000nm以下とすればよく、例えば第1の絶縁膜708として、CVD法により酸化シリコン膜を300nmの厚さで形成した後に、第2の絶縁膜710として、スピンコート法によりポリイミド樹脂を1000nmの厚さで形成して用いればよい。
次に、ゲート絶縁膜704、第1の絶縁膜708および第2の絶縁膜710に、フォトリソグラフィ法やエッチング法などの公知の技術を用いて、低抵抗領域702aに到達する開口部を形成する。
次に、当該開口部を覆う状態に、スパッタリング法や蒸着法などの公知の技術を用いて導電層を形成した後に、フォトリソグラフィ法やエッチング法などの公知の技術を用いて導電層をパターン形成して配線層712を形成する。配線層712を形成するための導電層としては、ゲート電極706と同様の方法および材料を用いることができる。なお、導電層の厚さは、例えば100nm以上1000nm以下、好ましくは200nm以上800nm以下とすればよく、例えば導電層として、スパッタリング法によりアルミニウムをチタンで挟んだ積層構造を500nmの厚さで形成して用いればよい。
以上の工程により、トランジスタ720を形成することができる(図8(B)参照。)。実施の形態1にて作製したSOI基板120を用いたトランジスタ720は、チャネル領域が形成される活性層(半導体層とも言う。)として単結晶構造の半導体膜を用いることができるため、移動度が高く、且つ安定した電気特性を有するトランジスタとすることができる。また、実施の形態1にて記載した貼り合わせ方法を用いることにより、単結晶半導体基板と、単結晶半導体とは異なる熱膨張係数を有する基板(例えば、ガラス基板などの安価で且つ大型化が可能な基板)を貼り合わせた、大型のSOI基板を作製することができるため、1枚の基板に対してより多くのトランジスタを形成することができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態4)
本明細書等に開示する半導体装置は、さまざまな電子機器(遊技機も含む)に適用することができる。電子機器としては、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等のカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。上記実施の形態で説明した液晶表示装置を具備する電子機器の例について説明する。
図9(A)は、携帯型のパーソナルコンピュータであり、筐体1011、筐体1012、第1の表示部1013a、第2の表示部1013bなどによって構成されている。筐体1011と筐体1012の内部には、様々な電子部品(例えば、CPU、MPU、記憶素子など。)が組み込まれている。また、第1の表示部1013aと第2の表示部1013bには、画像を表示するために必要な電子回路(例えば、駆動回路や選択回路など。)が搭載されている。これら電子部品や電子回路の中に、上述の実施の形態で示した半導体装置を適用することにより、信頼性の高い携帯型の情報端末とすることができる。なお、先の実施の形態に示す半導体装置は、筐体1011、筐体1012の少なくとも一に設けられていればよい。
なお、第1の表示部1013aおよび第2の表示部1013bの少なくとも一方は、タッチ入力機能を有するパネルとなっており、例えば図9(A)の左図のように、第1の表示部1013aに表示される選択ボタン1014により「タッチ入力」を行うか、「キーボード入力」を行うかを選択できる。選択ボタンは様々な大きさで表示できるため、幅広い世代の人が使いやすさを実感できる。ここで、例えば「タッチ入力」を選択した場合、図9(A)の右図のように第1の表示部1013aにはキーボード1015が表示される。これにより、従来の情報端末と同様に、キー入力による素早い文字入力などが可能となる。
また、図9(A)に示す携帯型の情報端末は、図9(A)の右図のように、筐体1011と筐体1012を分離することができる。これにより、筐体1011を壁に掛けて大人数で画面情報を共有しながら、筐体1012で画面情報をコントロールするといった操作が可能となり、非常に便利である。なお、当該装置を使用しない場合は、第1の表示部1013a及び第2の表示部1013bが向かい合うように、筐体1011および筐体1012を重ねた状態とすることが好ましい。これにより、外部より加わる衝撃などから第1の表示部1013a及び第2の表示部1013bを保護することができる。第1の表示部1013aもタッチ入力機能を有するパネルとし、持ち運びの際、さらなる軽量化を図ることができ、一方の手で筐体1012を持ち、他方の手で操作することができるため非常に便利である。
図9(A)は、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報を操作又は編集する機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有することができる。また、筐体の裏面や側面に、外部接続用端子(イヤホン端子、USB端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成としてもよい。
また、図9(A)に示す携帯型の情報端末は、無線で情報を送受信できる構成としてもよい。無線により、電子書籍サーバから、所望の書籍データなどを購入し、ダウンロードする構成とすることも可能である。
さらに、図9(A)に示す筐体1011や筐体1012にアンテナやマイク機能や無線機能を持たせ、携帯電話として用いてもよい。
図9(B)は、電子書籍1020の一例を示している。例えば、電子書籍1020は、筐体1021および筐体1023の2つの筐体で構成されている。筐体1021および筐体1023は、軸部1022により一体とされており、該軸部1022を軸として開閉動作を行うことができる。このような構成により、紙の書籍のような動作を行うことが可能となる。
筐体1021には表示部1025が組み込まれ、筐体1023には表示部1027が組み込まれている。表示部1025および表示部1027は、続き画面を表示する構成としてもよいし、異なる画面を表示する構成としてもよい。異なる画面を表示する構成とすることで、例えば右側の表示部(図9(B)では表示部1025)に文章を表示し、左側の表示部(図9(B)では表示部1027)に画像を表示することができる。上述の実施の形態で示した半導体装置を適用することにより、信頼性の高い電子書籍1020とすることができる。
また、図9(B)では、筐体1021に操作部などを備えた例を示している。例えば、筐体1021において、電源1026、操作キー1028、スピーカー1029などを備えている。操作キー1028により、頁を送ることができる。なお、筐体の表示部と同一面にキーボードやポインティングデバイスなどを備える構成としてもよい。また、筐体の裏面や側面に、外部接続用端子(イヤホン端子、USB端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成としてもよい。さらに、電子書籍1020は、電子辞書としての機能を持たせた構成としてもよい。
また、電子書籍1020は、無線で情報を送受信できる構成としてもよい。無線により、電子書籍サーバから、所望の書籍データなどを購入し、ダウンロードする構成とすることも可能である。
図9(C)は、スマートフォンであり、筐体1030と、ボタン1031と、マイクロフォン1032と、タッチパネルを備えた表示部1033と、スピーカー1034と、カメラ用レンズ1035と、を具備し、携帯型電話機としての機能を有する。実施の形態1または2で示した半導体装置を適用することにより、信頼性の高いスマートフォンとすることができる。
表示部1033は、使用形態に応じて表示の方向が適宜変化する。また、表示部1033と同一面上にカメラ用レンズ1035を備えているため、テレビ電話が可能である。スピーカー1034及びマイクロフォン1032は音声通話に限らず、テレビ電話、録音、再生などが可能である。
また、外部接続端子1036はACアダプタ及びUSBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能であり、充電及びパーソナルコンピュータなどとのデータ通信が可能である。また、外部メモリスロット(図示せず)に記録媒体を挿入し、より大量のデータ保存及び移動に対応できる。
また、上記機能に加えて、赤外線通信機能、テレビ受信機能などを備えたものであってもよい。
図9(D)は、デジタルビデオカメラであり、本体1041、表示部1042、操作スイッチ1043、バッテリー1044などによって構成されている。上述の実施の形態で示した半導体装置を適用することにより、信頼性の高いデジタルビデオカメラとすることができる。
図9(E)は、テレビジョン装置1050の一例を示している。テレビジョン装置1050は、筐体1051に表示部1053が組み込まれている。表示部1053により、映像を表示することが可能である。また、ここでは、スタンド1055により筐体1051を支持した構成を示している。上述の実施の形態で示した半導体装置を適用することにより、信頼性の高いテレビジョン装置1050とすることができる。
テレビジョン装置1050の操作は、筐体1051が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機により行うことができる。また、リモコン操作機に、当該リモコン操作機から出力する情報を表示する表示部を設ける構成としてもよい。
なお、テレビジョン装置1050は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
本実施例では、半導体基板100として単結晶シリコンウエハー(結晶方位:(100)、厚み:0.7mm、形状:一辺126.6mm略四角形、熱膨張係数:2.551[×10−6/K](20℃)〜4.335[×10−6/K](727℃))を、接合基板110として合成石英基板(厚み:1.1mm、一辺が126.6mmの略四角形、熱膨張係数:0.55[×10−6/K](20℃〜320℃))を用い、基板に対して温度調整処理を行わずに両基板を貼り合わせたサンプル(以下、サンプルAと略記する。)および温度調整処理を行って両基板を貼り合わせたサンプル(以下、サンプルBと略記する。)を作製し、両サンプルに対して加熱処理(分離加熱処理)を行った場合において、温度調整処理の有無により、どの程度の温度まで半導体基板と接合基板の剥がれ、半導体基板または接合基板の破壊などが発生することなく加熱することができるかについて調査を行った。
<SOI基板の作製方法>
まず、単結晶シリコンウエハーに対し熱酸化処理を行うことにより、単結晶シリコンウエハーの表面に酸化シリコン膜を形成した。酸化シリコン膜は、HClを3%含有させた酸素雰囲気中において950℃の加熱処理を行うことにより、100nmの厚さで形成した。
次に、酸化シリコン膜を介して単結晶シリコンウエハー中に加速された水素イオンを照射することにより、単結晶シリコンウエハー中に脆化領域を形成した。水素イオンの照射は、イオンドーピング装置を用いた。ソースガスとしては100%の水素ガスを用い、水素ガスを励起してプラズマを生成した。生成されたプラズマには3種類のイオン種(H+、H2 +およびH3 +)が含まれている。3種のイオン種を分離せずに電界で加速し、単結晶シリコンウエハーに照射した。また、水素ガスの流量は50sccm、加速電圧は50kV、電流密度は6.35μA/cm2、ドーズ量は2.9×1016ions/cm2とした。
次に、シリコンウエハーに対して洗浄処理を行った。洗浄処理は、アルカリ薬液を用いて60secの洗浄を行い、その後IPA(Isopropyl Alcohol)を用いてシリコンウエハーを乾燥させた。
次に、単結晶シリコンウエハーと合成石英基板を貼り合わせた。なお、当該貼り合わせは、両基板に対して温度調整を行わずに貼り合わせたもの(以下、サンプルAと呼称する。)、温度調整処理として、大気雰囲気下において単結晶シリコンウエハーを抵抗加熱装置の設置されたステージに設置して200℃に加熱し、合成石英基板は室温状態(約20℃)として両基板を貼り合わせたもの(以下、サンプルBと呼称する。)の2種類を作製した。
上述の工程により作製した、サンプルAおよびサンプルBを、加熱機構を備えたステージを有する反り量測定装置(ケーエルエー・テンコール株式会社、TencorFLX−2320)を用い、ステージ温度を室温から7℃/minステップで温度を上昇させながら、サンプルAおよびサンプルBの反り量の推移を測定した。なお、反り量測定装置へのサンプルの設置は、熱膨張係数の大きいシリコンウエハーが下に(つまり、加熱ステージに接した状態。)、熱膨張係数の小さい合成石英基板が上となる状態設置した。また、シリコンウエハーと合成石英基板の貼り合わせは、両基板の4隅が概ね一致する状態に貼り合わせた。
サンプルAおよびサンプルBの基板温度と反り量の関係を図10に示す。図10の横軸は基板加熱温度、縦軸は基板の反り量である。基板の反り量は、反り量測定装置のステージに対して、サンプルの形状が平行な状態である場合、その値は0[μm]となる。そして、サンプルがU字状態に変形した場合はマイナスの値となり、逆U字状態に変形した場合はプラスの値となる。なお、図10において、サンプルBはシリコンウエハーと合成石英基板を200℃で貼り合わせているため、基板温度が200℃程度で、反り量は概ね0[μm]となる。そして、基板温度がそれより低い温度範囲ではシリコンウエハーの収縮により、反り量はプラスの値となっている。
サンプルAでは、基板温度が200℃程度まではサンプルの反り量は概ね直線的にマイナス方向(サンプルがU字状態に変形する方向)に大きくなっていくが、基板温度が200℃程度になると、シリコンウエハーの膨張量に対して合成石英基板の膨張量が追従することができなくなり、シリコンウエハーの膨張を合成石英基板が抑制しようとする力が強く働き始めるため、基板温度が増加しても基板の反り量はほぼ横ばい状態で推移する。そして、基板温度が350℃程度になると、サンプルの反り量が一気に0[μm]となる。これは、シリコンウエハーと合成石英基板の接合力よりも、シリコンウエハーと合成石英基板の膨張量の差により生じる力が大きくなったため、シリコンウエハーと合成石英基板が分離したものある。
シリコンウエハーに照射した水素イオンを、脆化領域に元素集中させ、脆化領域において容易に分離できる状態とするためには、400℃程度の温度で加熱することが必要となる。しかしながら、上述のように温度調整処理を行わずにシリコンウエハーと合成石英基板を貼り合わせた場合、基板温度が350℃程度で両基板が分離してしまう。
これに対しサンプルBでは、基板温度が300℃程度まではサンプルの反り量が概ね直線的にマイナス方向(サンプルがU字状態に変形する方向)に大きくなり、その後、460℃程度まではシリコンウエハーと合成石英基板が剥がれることなくサンプルを加熱することができる。このため、シリコンウエハーと合成石英基板が剥がれることなく分離加熱処理を行うことができる。
以上の結果より、半導体基板の熱膨張係数と接合基板の熱膨張係数の差が大きい場合においても、半導体基板と接合基板の貼り合わせを行う前に、両基板に対して温度調整処理を行うことにより、基板の剥がれや破壊などを抑制してSOI基板を作製することができる。