以下、実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、実施形態に係る識別票を含んだプリント配線板の一例を概略的に示す分解斜視図である。図2は、図1のプリント配線板のII−II線に沿った断面図である。図3は、図1に示すプリント配線板を、一部の構成要素を省略して描いた平面図である。図4は、図1に示すプリント配線板を、他の一部の構成要素を省略して描いた平面図である。図5は、図1に示すプリント配線板を、一部の構成要素を省略して描いた分解断面図である。
なお、図3では、後述するプリプレグ4a及び導体パターン6a以外の構成要素を省略している。図4では、後述するコア1、導体パターン2a及び識別票100以外の構成要素を省略している。また、図5に描いている断面は、図3及び図4に描いた構造のV−V線に沿った断面に相当している。図5では、コア1、導体パターン2a、識別票100、プリプレグ4a及び導体パターン6a以外の構成要素を省略している。
図1に示されるプリント配線板10は、コア1と、プリプレグ4a及び4bと、2つのソルダーレジスト5a及び5bと、導体パターン2a、2b、6a及び6bと、識別票100とを含んでいる。
なお、「プリント配線板」という用語は「プリント配線を形成した板」を意味する。「プリント配線」という用語は「回路設計に基づいて、部品間を接続するために導体パターンを絶縁基板の表面又は表面とその内部に、プリントによって形成する配線又はその技術」を意味する。また、「プリント回路板」という用語は「プリント回路を形成した板」を意味する。「プリント回路」という用語は「プリント配線と、プリント部品及び/又は搭載部品とから構成される回路」を意味する。
コア1は、絶縁層である。コア1は、例えば、主として不可視域の何れかの波長の光を透過させるが、可視域の何れかの波長の光を透過させてもよい。コア1としては、例えば、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸したものを使用することができる。
プリプレグ4a及び4bは、コア1を間に挟んで向き合った絶縁層である。プリプレグ4a及び4bの各々は、コア1に接着されている。プリプレグ4a及び4bのうち、少なくともプリプレグ4aは、主として不可視域の何れかの波長の光を透過させるが、可視域の何れかの波長の光を透過させてもよい。プリプレグ4a及び4bとしては、例えば、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸したものを使用することができる。
ソルダーレジスト5aは、プリプレグ4aを間に挟んでコア1と向き合っている。ソルダーレジスト5bは、プリプレグ4bを間に挟んでコア1と向き合っている。ソルダーレジスト5aはプリプレグ4aに貼り付けられており、ソルダーレジスト5bはプリプレグ4bに貼り付けられている。ソルダーレジスト5a及び5bの各々は、感光性を有している絶縁層である。これらソルダーレジスト5a及び5bは、緑、青またはその他の色に着色した層である。
なお、上記コア1並びにプリプレグ4a及び4bに変えてポリイミド等からなるフレキシブル基板を用いることもできる。
図1及び図2に示されるように、導体パターン2aは、コア1とプリプレグ4aとの間に介在している。また、図2に示されるように、導体パターン2bはコア1とプリプレグ4bとの間に介在し、導体パターン6aはプリプレグ4aとソルダーレジスト5aとの間に介在し、導体パターン6bはプリプレグ4bとソルダーレジスト5bとの間に介在している。導体パターン2a、2b、6a及び6bは、遮光性である。導体パターン2a、2b、6a及び6bは、例えば、銅などの金属又は合金からなる。コア1並びにプリプレグ4a及び4bの各々には1つ以上の貫通孔が設けられており、導体パターン2a、2b、6a及び6bは、これら貫通孔を埋め込んだ接続用導体を介して互いに電気的に接続されている。
識別票100は、図1及び2に示されるように、例えばコア1とプリプレグ4aとの間に設けられる。図6には、識別票100の断面図が示される。識別票100は、基材33と、その上に設けられた印刷層3とを含む。識別票100の厚さは、例えば0.1mm以下、好ましくは0.05mm以下、より好ましくは0.03mm以下である。また、識別票100の厚さは、例えば0.02mm以上である。
基材33は、耐熱性を有している層である。耐熱性を有することで、プリント配線板の製造工程での熱の影響を低減することができる。基材33のガラス転移温度は、110℃以上、好ましくは190℃以上、さらに好ましくは270℃以上である。ガラス転移温度例えば、TMA法で測定した値を用いる。また、基材33は特定の電気的特性を有する。特定の電気的特性を有することで、プリント配線板の電気回路への影響を低減することができる。基材33は、例えば、IPC TM−650法の測定周波数1MHzで比誘電率が6.0以下、かつ誘電正接が0.04以下という電気的特性を示す。基材33の材料は、例えば図23および24に詳細が示されるような、コア1並びにプリプレグ4a、4b、4c、4dおよび4eと同じものとすることが応力緩和の観点で最善である。このため、基材33は、プリント配線板に形成される回路に対して与える影響が無いか又は低い。
基材33の材料は、例えば、樹脂含有基材又は樹脂製フィルムである。樹脂含有基材としては、例えば、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸したもの(ガラス転移温度:約120〜200℃)を使用できる。樹脂製フィルムとしては、例えば、ポリイミドフィルム(ガラス転移温度:約280℃以上)を使用できる。基材33は、例えば8μmから60μmの厚さを有する。特に、基材33としてガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸したものを使用する場合、基材33は例えば20から60μmの厚さを有する。また、基材33としてポリイミドフィルムを使用する場合、基材33は例えば8から50μmの厚さを有し、好ましくは12.5μmの厚さを有する。ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸したものに比べポリイミドフィルムの方が耐熱性の点では優れるものの、耐吸湿性の点ではポリイミドフィルムに比べガラスクロスにエポキシ樹脂の方が優れる。
印刷層3は、蛍光体を含んだ絶縁層である。印刷層3は、任意に、透明樹脂などのバインダを更に含むことができる。印刷層3は、例えばエポキシ系樹脂と蛍光顔料とを混合したものを材料とすることができる。印刷層3の厚さは、例えば5から10μmである。
印刷層3の蛍光体を光照射によって励起する場合は、励起光の波長(以下、第1波長という)が、少なくともプリプレグ4a及びソルダーレジスト5aが透過性を示す波長域内にあるものを使用する。また、蛍光体としては、蛍光発光の波長(以下、第2波長という)が、少なくともプリプレグ4a及びソルダーレジスト5aが透過性を示す波長域内にあるものを使用する。なお、第1波長は、第2波長と異なる波長であって、第2波長よりも短い。蛍光体としては、例えば、第1及び第2波長の双方が赤外域内にある赤外蛍光体を使用することができる。或いは、蛍光体として、第1及び第2波長の双方が紫外域内にある紫外蛍光体を使用してもよい。
印刷層3は、その少なくとも一部が、例えばコア1と導体パターン6aとの間に位置している。図5に示す構造では、プリプレグ4a上に形成された導体パターン6aの一部とコア1上に形成された印刷層3の一部とが重なり合っている。
図6に示されるように、印刷層3には、パターン31を設けることができる。パターン31は、例えば印刷層3を貫通する孔又は溝から成る。又は、パターン31は、印刷層3の表面に凹みとして形成された孔又は溝から成ってよい。或いは、パターン31は、例えばレーザー印字を用いて、印刷層3の表面の一部を炭化することにより形成された模様から成ってよい。さらに、パターン31は、そのような孔、溝及び模様を任意に組み合わせたものであってよい。
パターン31は、例えば、文字、記号、図形、又はそれらの組み合わせを含む。パターン31は、例えば、アルファベット、数字、又はそれらの組み合わせを含む。また、パターン31は、例えば、一次元コード、二次元コード、又はランダムパターンを含む。図1には、一例として、文字列「20110729」を表示するパターン31が描かれている。
パターン31は、例えば、プリント配線板10の主面に対して垂直な方向から見た場合に、導体パターン6aと重なり合わないように設ける。或いは、パターン31は、それが保持している情報を後で説明する方法によって読み取ることが可能であれば、プリント配線板10の主面に対して垂直な方向から見た場合に導体パターン6aと部分的に重なり合うように設けてもよい。例えば、パターン31が一次元コードを含んでいる場合、一次元コードを構成している各線条の長さ方向が導体パターン6aの縁に対して垂直になるようにパターン31と導体パターン6aとを重ね合わせれば、パターン31が保持している情報を読み取ることができる。
図7は、図1に示すプリント配線板における、パターン31と導体パターンとの位置関係を概略的に示す平面図である。図7には、コア1及びその上に設けられた識別票100が示されている。識別票100にはパターン31が形成されている。さらに、導体パターン6aが破線にて示されている。導体パターン6aの一部は、パターン31に含まれる文字間の領域と向き合っている。
このようなプリント配線板10に対して励起光を照射すると、識別票100に形成されるパターン31に対応した領域は、他の領域と比較してより低い輝度で発光するか又は発光しない。これは、パターン31が孔又は溝から成る場合には、その部分が他の部分と比較してより薄いか、又は厚さがゼロであるためであり、パターン31が炭化による模様から成る場合には、その模様が光を吸収するためである。従って、プリント配線板10に励起光を照射しながら、必要に応じて赤外線カメラ又は紫外線カメラで識別票100に対応した部分を撮影すると、この部分は、パターン31に対応した領域がより暗く、その他の領域がより明るい画像を表示する。従って、この画像を確認することにより、プリント配線板10が真正品であることを確認することができる。このことを、図7及び図8を参照しながら、更に詳しく説明する。
図8は、図7に示されるプリント配線板において、蛍光体を発光させながら識別票100と観察者との間に導体パターン6aが介在するように観察した場合に、識別票100の位置で表示する画像を示す図である。図8において、白色の領域は比較的高い強度で発光する領域であり、黒色の領域は発光しない領域である。なお、ここでは、パターン31の位置には、蛍光体は存在していないこととしている。
図8に示すように、コア1の識別票100が設けられていない部分及びパターン31に対応した領域は、蛍光体が存在しないため発光しない。そして、識別票100と導体パターン6aとが重なり合った領域は、識別票100が導体パターン6aによって隠れているため発光しない。従って、このプリント配線板10は、蛍光体を発光させると、識別票100の位置で、より明るい背景と、より暗い文字列「2011 07 29」とを含んだ画像を表示する。従って、この画像を確認することにより、プリント配線板10が真正品であることを確認することができる。
なお、パターン31は、省略してもよい。この場合、プリント配線板10に励起光を照射しながら、その識別票100に対応した部分と他の部分とを、必要に応じて赤外線カメラ又は紫外線カメラで撮影すると、プリント配線板10は、識別票100に対応した領域がより明るく、その他の領域がより暗い画像を表示する。従って、この画像を確認することにより、プリント配線板10が真正品であることを確認することができる。
また、蛍光体の発光強度は、励起光の波長に依存する。そして、蛍光体の発光特性は、その種類に応じて多様である。それ故、例えば、プリント配線板10のうち識別票100に対応した部分について、或る波長の光を励起光として使用した場合に得られる輝度L1と、他の波長の光を励起光として使用した場合に得られる輝度L2との関係を利用した真偽判定も可能である。即ち、真正品であるか否かが不明のプリント配線板について、上記の測定を行う。この測定によって得られた関係を、真正品について得られた関係と比較することにより、先のプリント配線板の真偽を判定することができる。
或いは、プリント配線板10のうち識別票100に対応した部分について、特定の波長の光を励起光として使用した場合に、或る波長域の光を選択的に透過させるフィルタを介して測定される輝度L3と、他の波長域の光を選択的に透過させるフィルタを介して測定される輝度L4との関係を利用した真偽判定も可能である。
蛍光体の種類に応じた発光特性の相違を真偽判定に利用する場合、真正品であるプリント配線板10から識別票100を取り除き、取り除いた識別票100を用いて偽造が行われる可能性について考慮しておくことが望ましい。
通常、識別票100において印刷層3自体は高い強度を有していないため、プリント配線板10から印刷層3のみを単独で取り出すことは難しい。また、印刷層3と基材33とを同時に取り出そうとしても、やはり印刷層3の形状を維持しながら取り出すことは困難である。上記のプリント配線板10では、識別票100と導体パターン6aとは少なくとも部分的に重なっているので、例えば、識別票100を導体パターン6aと共にプリント配線板10から取り除くには、導体パターン6aを切断する必要がある。特に、識別票100の少なくとも一部がコア1と導体パターン6aとの間に位置し、且つ、識別票100の先の部分又は他の部分がプリプレグ4aと導体パターン2aとの間に位置していている場合、識別票100をプリント配線板10から取り除くには、導体パターン2a及び6aの少なくとも一方を切断しなければならない。識別票100と切断した導体パターン2a又は6aとを含んだ小片を偽造品に組み入れた場合、導体パターン2a又は6aの切断面の位置で接続不良を生じる。
また、この接続不良を回避するには、小片を迂回するように導体パターンを設ける必要がある。このようにして得られるプリント配線板は、導体パターンの形状を確認することにより、容易に偽造品であることを判定することができる。
このように、上述したプリント配線板10は、偽造の防止に対して高い信頼性を有している。
また、プリント配線板10の内部に識別票100が設けられていることに起因して、プリント配線板10の表面に凸部が生じる可能性があるが、識別票100の厚さを調整することによって、このような凸部の発生を抑制することができる。詳細を以下に説明する。
図9及び10には、それぞれ内部に識別票100が設けられたプリント配線板10の具体的な一実施例を示す断面図が示される。
図9に示される例では、ソルダーレジスト5a、導体パターン6a、プリプレグ4a、導体パターン2a、コア1、導体パターン2b、プリプレグ4b、導体パターン6bおよびソルダーレジスト5bが順に積層されている。また、プリント配線板100がコア1の一主面に接触して設けられている。この例では、ソルダーレジスト5aおよび5bの厚さは、例えば0.015mmとされる。また、導体パターン6aおよび6bの材料としてはメッキした18μm銅箔が使用され、厚さは例えば0.053mmとされる。プリプレグ4aおよび4bとしてはガラスエポキシ系のプリプレグが使用され、厚さは例えば0.19mmとされる。導体パターン2aおよび2bの材料としては35μm銅箔が使用され、厚さは例えば0.033mmとされる。コア1としてはガラスエポキシ系のものが使用され、厚さは例えば1.1mmとされる。
図10に示される例では、ソルダーレジスト5a、導体パターン6a、コア1a、導体パターン2a、プリプレグ4、導体パターン2b、コア1b、導体パターン6bおよびソルダーレジスト5bが順に積層されている。また、プリント配線板100がコア1bの一主面に接触して設けられている。この例では、ソルダーレジスト5aおよび5bの厚さは、例えば0.015mmとされる。また、導体パターン6aおよび6bの材料としてはメッキした18μm銅箔が使用され、厚さは例えば0.053mmとされる。コア1aおよび1bとしてはガラスエポキシ系のものが使用され、厚さは例えば0.2mmとされる。導体パターン2aおよび2bの材料としては35μm銅箔が使用され、厚さは例えば0.033mmとされる。プリプレグ4としてはガラスエポキシ系のプリプレグが使用され、厚さは例えば0.4mmとされる。
なお、プリント配線板の厚さは、例えば約1.6mm又は1.0mmに設定される。また、プリプレグは、一般に、約0.1mm、約0.06mm及び約0.2mmの厚さのものを使用することもできる。
プリント配線板の製造過程において、プリプレグの材料として例えばガラスエポキシ樹脂が使用される。このガラスエポキシ樹脂は一定の流動性を有しているため、識別票に起因する凸部の発生はある程度緩和される。しかしながら、識別票が厚い場合、そのような緩和が生じたとしても、プリプレグ表面の凸部の発生が避けられない場合がある。したがって、識別票100の厚さを薄くすることで、効果的に凸部の発生を抑制することができる。例えば、識別票100の厚さは0.1mm以下とされる。また、識別票100の厚さをプリプレグの厚さの4分の1以下とすることで、より効果的に凸部の発生を抑制することができる。例えば、識別票100の厚さは0.05mm以下とされる。更には、略同一面にある銅箔と同じ厚さが望ましい。
また、プリント配線板10を製造する際、識別票100が設けられる平面において、識別票100と導体パターンとを、この平面に平行な方向に並べて設けることができる。図9及び10に示されるプリント配線板10は、このように製造されたプリント配線板の例である。仮に、識別票100と同一のコア表面に設けられている銅箔が存在せず、識別票100の厚さが厚い場合、プリント配線板の表面には識別票100に起因する凸部が形成される。一方、図9及び10のように、このような銅箔が存在する場合、凸部の発生は、識別票100の厚さから銅箔の厚さを差し引いたものに起因するため、識別票100の厚さが比較的厚かったとしても、凸部の発生を抑制することができる。例えば、導体パターンとして、約0.04mmという一般的な厚さを有する銅箔を使用する場合、識別票100の厚さを約0.09mm以下としても、凸部の発生を十分に抑制することができる。
なお、ここで説明したプリント配線板10は、4つの導体パターン2a、2b、6a及び6bを含んでいるが、プリント配線板10が含んでいる導体パターンの数は、3つ以下でもよい。例えば、プリント配線板10は、導体パターン6aのみを含んでいてもよく、導体パターン6a及び2aのみを含んでいてもよい。或いは、プリント配線板10は、導体パターンを5つ以上含んでもよい。この場合、導体パターン同士が接触しないように、導体パターン間にはプリプレグなどの絶縁層を介在させる。
識別票100は、接着層を更に含んでいてもよい。接着層は、接着層と印刷層3との間に基材33が位置するように設けることができる。接着層の材料は、例えばエポキシ系樹脂である。接着層の厚さは、例えば10から30μmである。
識別票100は、少なくとも1つの金属層34を更に含んでいてもよい。金属層34は、基材33及び印刷層3に向き合って設けられる。例えば、2つの金属層34が、基材33の2つ主面に対してそれぞれ設けられる。或いは、1つの金属層34が、基材33の2つの主面の何れかに対して設けられる。
図11には、2つの金属層34を含む識別票100の一例が示される。この識別票100では、基材33の一主面に対して印刷層3と金属層34aとが並べて設けられ、基材33の他主面に対して金属層34bが設けられている。すなわち、基材33の一主面には、印刷層3から成る領域と、金属層34aから成る領域とが面内方向に並んで設けられている。
図12には、2つの金属層34を含む識別票100の別の例が示される。この識別票100では、基材33の両主面に対し、金属層34cおよび金属34dがそれぞれ設けられており、金属層34cの、基材33に向き合う主面と反対の主面には、印刷層3が設けられている。印刷層3の、金属層34cに向き合う主面と反対の主面には、任意のパターンで炭化部37が形成されている。炭化部37は、例えば印刷層3の一部に対してレーザー印字することで形成される。
金属層34は、識別票100に対して一定の強度を付与する。すなわち、金属層34が設けられることにより、プリント配線板の製造において良好な作業性を達成するのに十分な腰、例えば、識別票100をその一端を摘んで支持した場合に、本来の形状が維持されるのに十分な強度が、識別票100に付与される。
以下に、プリント配線板10の変形例を説明する。
図13は、一変形例に係るプリント配線板を、一部の構成要素を省略して描いた平面図である。図14は、図13に示すプリント配線板を、他の一部の構成要素を省略して描いた平面図である。図15は、図13及び図14に示すプリント配線板を、一部の構成要素を省略して描いた分解断面図である。
図13では、プリプレグ4a及び導体パターン6a以外の構成要素を省略している。図14では、コア1、導体パターン2a及び識別票100以外の構成要素を省略している。また、図15に描いている断面は、図13に描いた構造のX−X線に沿った断面又は図14に描いた構造のX−X線に沿った断面に相当している。図15では、コア1、導体パターン2a、識別票100、プリプレグ4a及び導体パターン6a以外の構成要素を省略している。
この例では、識別票100の少なくとも一部がコア1と導体パターン6aとの間に位置している。識別票100のその他の一部は、プリプレグ4aと導体パターン2aとの間に位置している。即ち、識別票100の上下に導体パターン6a及び2aがそれぞれ存在している。
この構造を採用すると、プリント配線板10のどちらの面から識別票100を切り出しても、導体パターン2a及び6aの少なくとも一方を切断することになる。従って、この構造を採用すると、偽造の防止に対してより高い信頼性を達成できる。
図16は、他の変形例に係るプリント配線板を、一部の構成要素を省略して描いた平面図である。図17は、図16に示すプリント配線板を、他の一部の構成要素を省略して描いた平面図である。図18は、図16及び図17に示すプリント配線板を、一部の構成要素を省略して描いた分解断面図である。
図16では、プリプレグ4a及び導体パターン6a以外の構成要素を省略している。図17では、コア1、導体パターン2a及び識別票100以外の構成要素を省略している。また、図18に描いている断面は、図16に描いた構造のXIII−XIII線に沿った断面又は図17に描いた構造のXIII−XIII線に沿った断面に相当している。図18では、コア1、導体パターン2a、導体パターン2b、識別票100、プリプレグ4a及び導体パターン6a以外の構成要素を省略している。
この例では、識別票100の少なくとも一部がコア1と導体パターン6aとの間に位置している。識別票100のその他の一部は、プリプレグ4aと導体パターン2bとの間に位置している。即ち、識別票100の上下に導体パターン6a及び2bがそれぞれ存在している。
この構造を採用すると、プリント配線板10のどちらの面から識別票100を切り出しても、導体パターン2b及び6aの少なくとも一方を切断することになる。従って、この構造を採用した場合、図13乃至図15を参照しながら説明した構造を採用した場合と同様に、偽造の防止に対してより高い信頼性を達成できる。
このように、識別票100の上方と下方との各々に導体パターンが1つ以上存在していると、偽造の防止に対してより高い信頼性を達成できる。
図19は、さらに他の変形例に係るプリント配線板における、識別票100のパターン31と導体パターンとの位置関係を概略的に示す平面図である。図20は、図19に示す位置関係を採用したプリント配線板10が、蛍光体を発光させた場合に、識別票100の位置で表示する画像を示す図である。
図19では、コア1と、その上に形成された、パターン31を有した識別票100と、導体パターン6aとを描いている。図20は、図19の構造を採用したプリント配線板が、蛍光体を発光させて識別票100と観察者との間に導体パターン6aが介在するように観察した場合に、識別票100の位置で表示する画像を示す図である。
この例では、導体パターン6aの一部がパターン31の一部と重なっている。具体的には、導体パターン6aは、パターン31に含まれる1つの「−(ハイフン)」の上方を横切るように延びている。なお、図19には描いていないが、導体パターン2aは識別票100とは重なり合っておらず、導体パターン2b及び6bの各々は、識別票100と重なり合っていないか、又は、1つの「−」とは異なる位置で識別票100と重なり合っている。
この場合、図20に示されるように、識別票100と光源との間に導体パターン6aが介在するようにプリント配線板10に励起光を照射して光源側から観察したときに、プリント配線板10が識別票100の位置で表示する画像からは、導体パターン6aと重なる1つの「−」を視認することはできない。そして、導体パターン6aと光源との間に識別票100が介在するようにプリント配線板10に励起光を照射して光源側から観察したときに、プリント配線板10が識別票100の位置で表示する画像からは、導体パターン6aと重なる1つの「−」を視認することができる。このように、パターン31の一部を、印刷層3の片面でのみ導体パターンによって覆い隠すと、蛍光体を発光させた場合にプリント配線板10が印刷層3の位置で表示する画像は、プリント配線板10の一方の面を観察したときと、プリント配線板10のもう一方の面を観察したときとで異なることになる。それ故、これら画像を確認することによる真偽判定が可能である。
以下に、実施形態に係る識別票及びプリント配線板の製造方法について説明する。
図21は、識別票100の製造方法の一例を概略的に示す断面図である。
最初に、図21(a)に示されるように、基材33の両主面に対して、それぞれ金属層34aおよび金属層34bが形成された銅張積層板を用意する。
次に、図21(b)に示されるように、金属層34aを、例えばエッチングして、パターニングする。その後、金属層34aに対して粗化処理を行う。
次に、図21(c)に示されるように、パターニングされた金属層34aに対して、蛍光体を含んだ塗工液35を塗布する。
次に、図21(d)に示されるように、塗布した塗工液35が完全に固まる前に、余分な塗工液35を除去する。例えば、ドクターブレードを使用して、金属層34aの上方に存在する塗工液35を除去する。この除去により、金属層34aと塗工液35から成る印刷層3とが基材33上に形成される。
次に、図21(e)に示されるように、金属層34bに対して、接着剤36を塗布する。接着剤36としては、例えば半硬化タイプのものを使用できる。
最後に、図21(f)に示されるように、上述のように形成された積層体を一定の位置で切断して、複数の識別票100に分ける。
図22は、識別票100の製造方法の別の例を概略的に示す断面図である。
最初に、図22(a)に示されるように、基材33の両主面に対して、それぞれ金属層34cおよび金属層34dが形成された銅張積層板を用意する。
次に、図22(b)に示されるように、金属層34cに対して、蛍光体を含んだ塗工液35を塗布する。
次に、図22(c)に示されるように、塗工液35の一部に対してレーザービームを照射し、炭化部37を形成する。
次に、図22(d)に示されるように、金属層34dに対して、接着剤36を塗布する。接着剤36としては、例えば半硬化タイプのものを使用できる。
最後に、図22(e)に示されるように、上述のように形成された積層体を一定の位置で切断して、複数の識別票100に分ける。
図23は、実施形態に係るプリント配線板の製造方法の一例を概略的に示す断面図である。
最初に、図23(a)に示されるように、コア1の両主面に対し、導体材料を含む導体層9a及び9bをそれぞれが形成された銅張積層板を用意する。
次に、図23(b)に示されるように、導体層9a及び9bのそれぞれを、例えばエッチングしてパターニングする。これにより、導体層9a及び9bから、それぞれ導体パターン2a及び2bが形成される。この結果、コア1と導体パターン2a及び2bとから成る積層体が得られる。
次に、図23(c)に示されるように、この積層体に対して、プリプレグ、導体層及び識別票を設ける。具体的には、積層体の導体パターン2bが存在する面に対して、プリプレグ4b及び導体層9dを順に設ける。一方、導体パターン2aが存在する面に対して、プリプレグ4d、識別票100、プリプレグ4e及び導体層9cを順に設ける。このとき、識別票100は、導体パターン2aと重ならないように設ける。なお、この製造例では、接着層が設けられていない識別票100を使用する。
その後、図23(d)に示されるように、全ての層を重ね合わせた状態で圧着する。これにより、導体パターンから電気的に遮断された識別票100を含むプリント配線板が得られる。
なお、図23(a)から(d)の工程に続いて、導体層9c及び9dをパターニングし、さらにソルダーレジストで被覆することができる。
図24は、実施形態に係るプリント配線板の製造方法の他の例を概略的に示す断面図である。
最初に、図24(a)に示されるように、コア1の両主面に対し、導体材料を含む導体層9a及び9bをそれぞれが形成された銅張積層板を用意する。
次に、図24(b)に示されるように、導体層9a及び9bのそれぞれを、例えばエッチングしてパターニングする。これにより、導体層9a及び9bから、それぞれ導体パターン2a及び2bが形成される。この結果、コア1と導体パターン2a及び2bとから成る積層体が得られる。
次に、図24(c)に示されるように、この積層体に対して、プリプレグ、導体層及び識別票を設ける。具体的には、積層体の導体パターン2bが存在する面に対して、プリプレグ4b及び導体層9dを順に設ける。一方、導体パターン2aが存在する面に対して、識別票100、プリプレグ4a及び導体層9cを順に設ける。このとき、識別票100は、導体パターン2aと重ならないように設ける。なお、この製造例では、接着層が設けられている識別票100を使用し、重ね合わせる際に、識別票100をコア1に対して接着する。
その後、図24(d)に示されるように、全ての層を重ね合わせた状態で圧着する。これにより、導体パターンから電気的に遮断された識別票100を含むプリント配線板が得られる。
なお、図24(a)から(d)の工程に続いて、導体層9c及び9dをパターニングし、さらにソルダーレジストで被覆することができる。
この識別票を使用することで、プリント配線板に対して真正証明のための印刷層を容易に埋め込むことが可能となる。
このように、予め製造された識別票をプリント配線板の製造に使用することで、プリント配線板の製造時に印刷層を形成する場合と比較して、真正証明のための印刷層を含むプリント配線板の製造が容易となる。
また、プリント配線板の製造を他者に依頼して行う場合に、この識別票を提供して使用させることで、この他者によって勝手に製造されたプリント配線板と真正なプリント配線板とを容易に区別することができる。例えば、Aが、他者であるBにM枚のプリント配線板の製造を依頼した場合、Bは、M+N枚のプリント配線板を製造し、M枚をAに納品し、N枚を不正に流通させる可能性がある。プリント配線板の製造において、コア及びプリプレグの圧着工程の歩留まりは非常に高く、それ以降の工程の歩留まりも非常に高い。従って、Aは、BにM枚のプリント配線板の製造を依頼する際に、M+α個(αはMと比較して非常に小さな整数)の識別票をBに渡し、各プリント配線板に識別票を埋設するように指示すれば、上記の不正を抑制することができる。また、識別票を含んでいないプリント配線板は、不正に製造されたものであることを容易に判別することができる。
以下に、当初の特許請求の範囲に記載していた発明を付記する。
[1]プリント配線板又はプリント回路板の層間に設置され、それが真正品であることを確認するために使用する識別票であって、耐熱性を有する基材と、前記基材上に設けられた、蛍光体を含む印刷層とを含む識別票。
[2]前記耐熱性を有する基材のガラス転移温度は110℃以上である項1に記載の識別票。
[3]前記耐熱性を有する基材の比誘電率および誘電正接は、それぞれ6.0以下および0.04以下である項1または2に記載の識別票。
[4]0.02mmから0.1mmの厚さを有する項1から3の何れか1項に記載の識別票。
[5]前記基材は8μmから60μmの厚さを有する項1から4の何れか1項に記載の識別票。
[6]前記基材の材料は、エポキシ樹脂を含浸したガラスクロス又はポリイミドである項1から5の何れか1項に記載の識別票。
[7]前記印刷層は、炭化又は彫刻された部分から成るパターンを有する請求項1から6の何れか1項に記載の識別票。
[8]前記基材及び前記印刷層に向き合って設けられた少なくとも1つの金属層を更に含む項1から7の何れか1項に記載の識別票。
[9]前記少なくとも1つの金属層は、第1金属層と第2金属層とから成り、
前記基材の一主面には、前記第1金属層と前記印刷層とが並べて設けられており、前記基材の他主面には、前記第2金属層が設けられている項8に記載の識別票。
[10]前記少なくとも1つの金属層は、第1金属層と第2金属層とから成り、
前記基材は前記第1金属層と前記第2金属層との間に位置し、前記第1金属層は前記印刷層と前記基材との間に位置する項8に記載の識別票。
[11]前記識別票の最表面に、前記基材に向き合って設けられた接着層を更に含む項1から10の何れか1項に記載の識別票。