本発明の不織布は伸長性に優れるように、高捲縮性繊維を主体としている。高捲縮性繊維は捲縮数が多く、外力が作用した際には、その捲縮が伸びることができるため、高捲縮性繊維を主体とする不織布は伸長性に優れている。なお、高捲縮性繊維は伸長性を有するばかりでなく、外力を取り除いた場合には、捲縮を元の状態に戻そうとする力が働くため、伸縮性に優れている。そのため、屈曲部の動き及び/又は凹凸に追従できるという効果も奏する。
本発明の高捲縮性繊維とは50個/インチ以上の捲縮数を有する繊維をいい、このような高捲縮性繊維は、例えば、潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させることによって得ることができる。なお、捲縮数はJIS L1015:2010 8.12.1 けん縮数に規定する方法により得られる値である。
この潜在捲縮性繊維としては、例えば、熱収縮率の異なる複数の樹脂が複合された複合繊維、繊維の一部に特定の熱履歴を施した繊維を挙げることができる。より具体的には、複合繊維として、偏芯型芯鞘構造のもの、又はサイドバイサイド型構造のものを好適に用いることができる。熱収縮率の異なる樹脂の組み合わせとしては、例えば、ポリエステル−低融点ポリエステル、ポリアミド−低融点ポリアミド、ポリエステル−ポリアミド、ポリエステル−ポリプロピレン、ポリプロピレン−低融点ポリプロピレン、ポリプロピレン−ポリエチレンなど種々の合成樹脂を組み合わせたものが使用できる。特に、ポリエステル−低融点ポリエステル若しくはポリプロピレン−低融点ポリプロピレンの組み合わせからなる潜在捲縮性繊維は、化学的な耐性、伸長性及び伸縮性の点で優れているため好ましい。また、繊維の一部に特定の熱履歴を施した潜在捲縮性繊維としては、例えば、ポリエステル、ポリアミドなどの熱可塑性樹脂からなる繊維の一側面を熱刃などにあてながら通過させたものを使用できる。
特に、潜在捲縮性繊維として、面積収縮率が35%以上の優れた捲縮発現能を有する潜在捲縮性繊維を使用するのが好ましい。この面積収縮率が大きい程、捲縮発現能に優れ、繊維密度を高めることができるため、結果として、鮮明な圧着部であることができるためである。より好ましい面積収縮率は37%以上であり、更に好ましい面積収縮率は40%以上である。このような潜在捲縮繊維は、例えば、特開平7−54216号公報に開示の方法、特開2003−89928号に開示の方法により製造することができる。
なお、面積収縮率は次の方法により得られる値である。まず、潜在捲縮性繊維のみをカードに通して一方向性繊維ウエブを得た後、一方向性繊維ウエブの繊維配向方向とのなす鋭角が15°となるように切断して、2枚の繊維ウエブを調製した後、これら2枚の繊維ウエブの繊維配向方向が交差するように積層して、クロスレイ繊維ウエブ(繊維配向方向の交差する鋭角:30°)を形成する。そして、このクロスレイ繊維ウエブを90メッシュのポリエステル製綾織ネット(支持体)を用いて、5m/min.の速度で搬送しながら、順に、シャワー、シャワーした面に対して水圧3.0MPa、シャワーした面の反対面に水圧3.0MPaの水流で絡合し、80g/m2の水流絡合不織布を形成する。その後、水流絡合不織布を25cm角にカットして試験片を調製し、その試験片を温度160℃に設定したオーブンで30秒間熱処理し、潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させ、試験片を収縮させて、たてL(cm)、よこC(cm)の大きさの試験片となった時に、次の式から得られる値を面積収縮率Sa(%)という。
Sa=[(25×25−L×C)/(25×25)]×100
この潜在捲縮性繊維の平均繊度は特に限定するものではないが、繊維同士が絡みやすく、また、繊維同士の密着性が高くなりやすく、圧着部が小さい場合であっても、鮮明な圧着部を形成できるように、1.7dtex以下であるのが好ましく、1.6dtx以下であるのがより好ましく、1.5dtex以下であるのが更に好ましく、1.4dtx以下であるのが更に好ましく、1.3dtex以下であるのが更に好ましく、1.2dtx以下であるのが更に好ましく、1.1dtex以下であるのが更に好ましい。平均繊度の下限は特に限定するものではないが、乾式法により繊維ウエブを形成する場合には、均一な地合いの繊維ウエブを形成して、圧着部が小さい場合であっても、鮮明な圧着部を形成できるように、0.5dtex以上であるのが好ましく、0.8dtex以上であるのがより好ましい。
なお、本発明の不織布は1種類の潜在捲縮性繊維から構成されていても良いし、繊度の点で異なる2種類以上の潜在捲縮性繊維から構成されていても良い。このように繊度の点で異なる2種類以上の潜在捲縮性繊維を含んでいる場合、次の式により算出される平均繊度が前記範囲内にあるのが好ましい。繊度の点で異なる3種類以上の潜在捲縮性繊維から構成されている場合も、同様にして算出した値が前記範囲内にあるのが好ましい。
Fav=1/{(Pa/100)/Fa+(Pb/100)/Fb}
ここで、Favは平均繊度(単位:dtex)、Paは不織布に占める一方の潜在捲縮性繊維Aの質量割合(単位:mass%)、Faは潜在捲縮性繊維Aの繊度(単位:dtex)、Pbは不織布に占める他方の潜在捲縮性繊維Bの質量割合(単位:mass%)、Fbは潜在捲縮性繊維Bの繊度(単位:dtex)をそれぞれ意味する。なお、繊度はJIS L1015で規定する正量繊度をいう。
また、潜在捲縮性繊維の繊維長は特に限定するものではないが、均一な地合いの繊維ウエブを形成して、圧着部が小さい場合であっても鮮明な圧着部を形成できるように、110mm以下であるのが好ましく、64mm以下であるのがより好ましく、51mm以下であるのが更に好ましい。繊維長の下限は特に限定するものではないが、乾式法により繊維ウエブを形成する場合には、繊維同士が絡みやすいように、25mm以上であるのが好ましく、30mm以上であるのがより好ましい。
本発明の不織布は上述のような高捲縮性繊維を主体とするものであるが、本発明における「主体」とは、高捲縮性繊維を50mass%以上含むことを意味し、高捲縮性繊維が多ければ多いほど、伸長性及び伸縮性に優れ、また、高捲縮性繊維が絡みやすく、不織布使用中に擦れたとしても、繊維の絡合が解けにくく、圧着部による情報の鮮明性を維持できる傾向があるため、70mass%以上含むのがより好ましく、90mass%以上含むのが更に好ましく、100mass%高捲縮性繊維からなるのが最も好ましい。
なお、高捲縮性繊維以外の繊維は特に限定するものではないが、高捲縮性繊維が潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させたものである場合、不織布の伸長性及び伸縮性を損なわないように、潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させる際の熱の作用によって溶融しない繊維であるのが好ましく、例えば、ポリエステル系繊維(ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維など)、ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維など)、ポリアミド系繊維(6ナイロン繊維、66ナイロン繊維など)、ポリビニルアルコール繊維、アクリル繊維等の合成繊維、又はコットンやレーヨン等のセルロース系繊維を含むことができる。
本発明の不織布を構成する高捲縮性繊維等の繊維は白色であることができるが、白色以外に、高捲縮性繊維を構成する樹脂に有機系又は無機系顔料を練り込んだ高捲縮性原着繊維であることもできるし、白い高捲縮性繊維を染色した高捲縮性繊維であることもできるし、白い高捲縮性繊維を顔料で着色した高捲縮性繊維であることもできる。このように、着色又は染色した繊維を含んでいると、圧着部と非圧着部の色差が大きくなるため、より鮮明に圧着部を認識できるという効果を奏する。
本発明の不織布は繊維が融着していない圧着部を部分的に有し、前記圧着部における繊維密度Dpが、圧着していない非圧着部における繊維密度Dnよりも、0.20g/cm3以上大きいことによって、圧着部が小さい場合であっても、出所、薬効成分、デザイン等の情報を鮮明に、使用者等に提供できるものである。つまり、圧着部の繊維密度が非圧着部の繊維密度よりも0.20g/cm3以上大きいため、圧着部と非圧着部の明度差が大きく、出所、薬効成分、デザイン等の情報を鮮明に認識できるものである。特に、圧着部が小さい場合であっても、繊維密度差が大きいことによって、前記情報を鮮明に認識できる、優れた不織布である。
この繊維密度の差は大きい程、圧着部と非圧着部の明度差が大きくなり、出所、薬効成分、デザイン等の情報を鮮明に認識できるため、白色の不織布からなる場合、繊維密度差は0.22g/cm3以上であるのが好ましく、0.24g/cm3以上であるのがより好ましく、0.25g/cm3以上であるのが更に好ましく、0.26g/cm3以上であるのが更に好ましく、0.28g/cm3以上であるのが更に好ましく、0.30g/cm3以上であるのが更に好ましい。一方で、不織布が着色又は染色されている場合には、繊維密度差は0.22g/cm3以上であるのが好ましく、0.24g/cm3以上であるのがより好ましく、0.25g/cm3以上であるのが更に好ましく、0.26g/cm3以上であるのが更に好ましく、0.28g/cm3以上であるのが更に好ましい。なお、いずれの不織布の場合も繊維密度差の上限は特に限定するものではないが、0.50g/cm3以下であるのが現実的である。
本発明における「繊維密度(単位:g/cm3)」は、不織布の目付M(単位:g/cm2)を圧着部又は非圧着部の厚さT(単位:cm)で除して得られる値(=M/T)であり、目付Mは、JIS L 1085:1998 6.2 単位面積当たりの質量に規定する方法により得られる、1m2あたりの質量を、1cm2あたりの質量に換算した値であり、圧着部又は非圧着部の厚さTは、不織布の厚さ方向断面の電子顕微鏡写真を撮影し、この電子顕微鏡写真をもとに測定した、3点の厚さの平均値である。
なお、圧着部における繊維密度の範囲、及び非圧着部における繊維密度の範囲は、前述のような繊維密度差を有する限り、特に限定するものではないが、圧着部における繊維密度は0.20g/cm3を超え、0.70g/cm3以下であるのが好ましく、0.25g/cm3〜0.60g/cm3であるのがより好ましい。0.20g/cm3以下であると、圧着部が経時変化により回復する場合があり、また、圧着部の明確性も劣る傾向があるためであり、0.70g/cm3を超えると、圧着部が硬くなり、不織布の風合いを損ねる傾向があるためである。一方で、非圧着部における繊維密度は0.08g/cm3〜0.30g/cm3であるのが好ましく、0.10g/cm3〜0.20g/cm3であるのがより好ましい。0.08g/cm3未満であると、不織布全体が十分に絡合しておらず、圧着部の厚さが回復しやすい傾向にあるため、圧着部の鮮明性を維持できず、圧着部による情報を得にくくなる傾向があり、0.30g/cm3を超えると、伸長性が阻害される傾向があるためである。
また、圧着部における深さ、つまり、非圧着部の厚さと圧着部の厚さの差は陰影によっても圧着部を明確に認識できるように、0.15mm以上であるのが好ましく、0.20mm以上であるのがより好ましい。なお、厚さの差の上限は非圧着部の厚さ未満である。
本発明の不織布においては、圧着部は繊維密度が圧着していない非圧着部よりも大きいものの、繊維が融着していないため、圧着部の存在によって、不織布の伸長性や伸縮性が阻害されない。つまり、外力により不織布を伸長させた場合には、圧着部を構成する繊維(特に高捲縮性繊維)も伸長できるため、優れた伸長性や伸縮性を有する。そのため、圧着部を有する不織布と圧着部を形成する前の繊維ウエブとで、伸長性や伸縮性に大きな差はない。このように、「繊維が融着していない」とは、繊維同士が密着しているものの、繊維の一部が溶融し、固結して繊維同士が結合した状態になく、繊維の自由度が確保された状態をいう。
この個々の圧着部は目的によって、様々な形態を採ることができる。例えば、文字、図形、模様、記号、絵などの形態であることができ、形態の異なる圧着部が混在していても良い。
本発明の不織布はこのような圧着部を部分的に有することによって、様々な情報を認識することができるが、その配置状態は特に限定するものではない。例えば、規則正しく、不規則に配置していることができる。しかしながら、特開2002−235269号公報に開示されているように、(1)圧着部単位の中心軸(特開2002−235269号公報における識別凹部単位の中心軸、つまり、圧着部であることによって認識できる文字等の長尺状繰り返し単位を完全に囲むことのできる最も面積の小さい長方形の対角線の交点を通る、前記長方形の長辺と平行な直線)と一致する直線が、不織布のたて方向に平行な直線とよこ方向に平行な直線のいずれの直線とも交わるように配置している(図2(a)を参照、この図においては、圧着部単位の中心軸と一致する直線が不織布のよこ方向に平行な直線と交わる状態を示している、(2)任意の圧着部単位の中心(圧着部であることによって認識できる文字等の長尺状繰り返し単位を完全に囲むことのできる最も面積の小さい長方形の対角線の交点)と、この圧着部単位と不織布のよこ方向で最も近い圧着部単位の中心とを結ぶことによって形成される直線と、不織布のよこ方向に平行な直線とが交わるように配置している(図2(b)を参照)、(3)任意の圧着部単位の中心と、この圧着部単位と不織布のたて方向で最も近い圧着部単位の中心とを結ぶことによって形成される直線と、不織布のたて方向に平行な直線とが交わるように配置している(図2(c)を参照)、のが好ましい。これら(1)〜(3)の条件を2つ以上満たすのが好ましく、3つとも満たすのがより好ましい。
なお、不織布の主面における圧着部の総面積が広すぎると伸長性、伸縮性が阻害されやすくなるため、圧着部の総面積は不織布の主面の面積の40%以下であるのが好ましく、20%以下であるのがより好ましく、10%以下であるのが更に好ましい。他方、圧着部の総面積が狭すぎる、例えば、文字が小さすぎるような場合、目的とする出所、薬効成分、デザイン等の情報を明確に認識しにくくなるため、圧着部の総面積は不織布の主面の面積の5%以上であるのが好ましい。
本発明の不織布の目付は特に限定するものではないが、圧着部においては勿論のこと、圧着していない非圧着部においても、ある程度、繊維密度が高い状態であることができるように、30g/m2以上であるのが好ましく、40g/m2以上であるのがより好ましい。一方で、目付が高すぎると、繊維を十分に絡合させることが困難となり、使用中に鮮明な圧着部を維持することができなくなる傾向があるため、150g/m2以下であるのが好ましく、130g/m2以下であるのがより好ましく、110g/m2以下であるのが更に好ましい。
本発明の不織布の厚さ、つまり非圧着部の厚さは特に限定するものではないが、薄すぎると圧着部の深さが不十分となり、繊維密度差が生じにくい結果、鮮明な圧着部となりにくく、また、不織布の伸長性、伸縮性も損なわれる傾向があるため、厚さは0.3mm以上であるのが好ましく、0.4mm以上であるのがより好ましい。一方で、厚さが厚すぎると、使用しにくい場合があるため、例えば、不織布を皮膚貼付基布として使用した場合、衣服と皮膚貼付基布の端部が摩擦によって剥がれやすいため、1.5mm以下であるのが好ましく、1mm以下であるのがより好ましく、0.85mm以下であるのが更に好ましく、0.70mm以下であるのが更に好ましい。
本発明の不織布は前述の通り、高捲縮性繊維を主体としているが、たて方向、よこ方向のいずれの方向における引張り強さも25N/5cm幅以上であるのが好ましい。このような引張り強さであると、繊維同士が十分に絡んだ状態で、繊維密度が高い状態にあるため、使用当初、圧着部が鮮明であるばかりでなく、圧着部と非圧着部のいずれにおいても高捲縮性繊維同士が十分に絡んでおり、擦れたとしても、繊維の絡合が解けにくく、使用中においても圧着部の鮮明性を維持でき、出所、薬効成分、デザイン等の情報を明確に認識できる不織布であることができるためである。
なお、圧着部は繊維が融着しておらず、不織布の引張り強さの向上には寄与しないため、圧着部を形成する前の繊維ウエブは、たて方向、よこ方向のいずれの方向においても、25N/5cm幅以上の引張り強さを有するのが好ましい。圧着部を形成する前の繊維ウエブの段階で、このような引張り強さであると、既に繊維同士が十分に絡み、繊維密度が高い状態にある繊維ウエブに対して、圧着部を形成することになり、圧着部、非圧着部ともに繊維密度の高い状態とすることができ、使用当初は勿論のこと、使用中も鮮明な圧着部とできるためである。このように繊維密度の高い繊維ウエブは、例えば、水流などの流体流により形成できる。
不織布の引張り強さが強ければ強いほど、より繊維同士が十分に絡んだ状態で、繊維密度が高い状態であることを意味し、使用当初及び使用中、鮮明な圧着部であることができるため、引張り強さはたて方向、よこ方向のいずれの方向においても、25N/5cm幅以上であるのが好ましく、30N/5cm幅以上であるのがより好ましく、50N/5cm幅以上であるのが更に好ましい。
なお、不織布製造時に、繊維がたて方向に配向しやすいことから、たて方向の引張り強さが強くなる傾向があり、具体的には、たて方向の引張り強さは30N/5cm幅以上、好ましくは50N/5cm幅以上であり、より好ましくは70N/5cm幅以上である。なお、引張り強さの上限は特に限定するものではないが、たて方向、よこ方向ともに250N/5cm幅以下であるのが現実的である。
本発明における「引張り強さ」は、不織布から幅が50mm、長さが300mmの試料片を採取し、定速伸長型引張試験機(オリエンテック社製、テンシロン)を用い、試料片が破断するまでの最大荷重を測定する。この最大荷重の測定を3枚の試料片について行い、これら最大荷重を算術平均し、引張り強さとする。なお、測定はつかみ間隔200mm、引張速度500mm/分の条件で行う。また、本発明における「たて方向」とは不織布生産時の流れ方向であり、「よこ方向」とはたて方向に直交する方向をいう。
本発明の不織布は前述の通り、伸長しやすいものであるが、具体的には、伸び率がたて方向、よこ方向ともに70%以上であるのが好ましい。より好ましくは、たて方向、よこ方向ともに90%以上である。特に、不織布製造時に繊維がたて方向に配向しやすいことから、よこ方向に伸長しやすく、具体的には、よこ方向の伸び率は130%以上であるのが好ましく、140%以上であるのがより好ましく、150%以上であるのが更に好ましく、160%以上であるのが更に好ましい。この伸び率は前述の引張り強さの測定を行った時の、最大荷重時の試料片の伸び[=(最大荷重時の長さ、単位:mm)−(つかみ間隔=200mm)]のつかみ間隔(200mm)に対する百分率をいう。この測定を3回行い、前記百分率の算術平均値を伸び率とする。
本発明の不織布は伸長性に優れるように、よこ方向における50%モジュラス強度は12N/5cm幅以下であるのが好ましく、10N/5cm幅以下であるのがより好ましく、9N/5cm幅以下であるのが更に好ましく、8N/5cm幅以下であるのが更に好ましい。一方、たて方向における50%モジュラス強度は圧着部を安定して形成できるように、5N/5cm幅以上であるのが好ましい。
この50%モジュラス強度は、不織布から幅が50mm、長さが300mmの試料片を採取し、定速伸長型引張試験機(オリエンテック社製、テンシロン)を用い、試料片をつかみ間隔200mmで固定した後、100mm伸長(つかみ間隔:300mm)するまでの最大荷重を測定する。この最大荷重の測定を3枚の試料片について行い、これら最大荷重を算術平均し、50%モジュラス強度とする。なお、測定は引張速度500mm/分の条件で行う。
また、本発明の不織布は伸縮性に優れるものであるが、具体的には50%伸長時の回復率はたて方向、よこ方向ともに25%以上であるのが好ましい。より好ましくは30%以上である。特に、回復性に優れるよこ方向においては、50%以上であるのが好ましく、より好ましくは55%以上であり、更に好ましくは60%以上である。
この50%伸長時の回復率は、不織布から幅が50mm、長さが300mmの試料片を採取し、定速伸長型引張試験機(オリエンテック社製、テンシロン)を用い、試料片をつかみ間隔200mmで固定する。このつかみ間隔200mmの位置を始点とし、始点から100mmの位置、即ち50%伸長位置(L50=100mm)まで速度200mm/分で引っ張り、すぐに同速度で始点まで戻す。このとき試料片の引張応力がゼロになるときの始点からの距離(Ln)を測定する。この測定を3枚の試料片について行い、前記距離(Ln)を算術平均した後、次の式から算出される数値を50%伸長時の回復率とする。
50%伸長時の回復率(%)=[(L50−Ln)/L50]×100
=100−Ln
更に、本発明の不織布は圧着部を鮮明に認識できるように、繊維が均一に分散した地合いの優れるものであるのが好ましい。より具体的には、次に定義する平均地合指数が0.40以下であるのが好ましく、0.35以下であるのがより好ましく、0.30以下であるのが更に好ましい。
平均地合指数は特願平11−152139号に記載されている方法により得られる値であり、つまり、次のようにして得られる値である。
(1)光源から被測定物(不織布)の任意の箇所に対して光を照射し、照射された光のうち、被測定物の所定領域において反射された反射光を受光素子によって受光して輝度情報を取得する。
(2)被測定物の所定領域を画像サイズ3mm角、6mm角、12mm角、24mm角に等分割して、4つの分割パターンを取得する。
(3)得られた各分割パターン毎に等分割された各区画の輝度値を輝度情報に基づいて算出する。
(4)各区画の輝度値に基づいて、各分割パターン毎の輝度平均(X)を算出する。
(5)各分割パターン毎の標準偏差(σ)を求める。
(6)各分割パターン毎の変動係数(CV)を次の式により算出する。
変動係数(CV)=(σ/X)×100
ここで、σは各分割パターン毎の標準偏差を示し、Xは各分割パターン毎の輝度平均を示す。
(7)各画像サイズの対数をX座標、当該画像サイズに対応する変動係数をY座標とした結果得られる座標群を、最小二乗法により一次直線に回帰させ、その傾きを算出し、この傾きの絶対値を地合指数とする。
(8)この地合指数の測定を3回繰り返し行い、その平均値を平均地合指数とする。
本発明の不織布は換算曲げ剛性Bcが0.00070gf・cm2/cm/(g/m2)以下であるのが好ましい。この換算曲げ剛性Bcが0.00070gf・cm2/cm/(g/m2)よりも高いと、硬く感じられ、使用時の違和感が生じる場合があるためで、より好ましい換算曲げ剛性Bcは0.00065gf・cm2/cm/(g/m2)以下であり、更に好ましい換算曲げ剛性Bcは0.00060gf・cm2/cm/(g/m2)以下である。
この換算曲げ剛性は次の式から算出される値である。
Bc=Br/M
ここで、Brはたて方向の曲げ剛性とよこ方向の曲げ剛性の算術平均曲げ剛性(単位:gf・cm2/cm)を表し、Mは目付(単位:g/m2)を表す。この曲げ剛性は不織布を曲げた時の剛性であるが、不織布の目付が大きくなると、曲げ剛性も大きくなり、目付と曲げ剛性とは比例関係があるため、曲げ剛性の目付による影響を排除するために、算術平均曲げ剛性を目付で除している。
この算術平均曲げ剛性Brは純曲げ試験機(カトーテック(株)製、KES−FB2)を用いて、「風合い評価の標準化と解析第2版」(川端季雄ら著、風合い計量と規格化研究委員会編)の第27〜28頁に記載の方法により測定した値である。
即ち、試料の不織布を幅1cmの間隔で長さ20cmにわたってチャックに把持し、曲率K=−2.5〜2.5cm−1の範囲において、変形速度0.50cm−1/sec.で等速度曲率の純曲げを行い、この際の曲げモーメントを測定することにより、単位長さ当たりの曲げ剛性(gf・cm2/cm)を求める計測を、不織布のたて方向、よこ方向について、それぞれ3回づつ行い、その算術平均した値である。
本発明の不織布の製造方法は特に限定するものではないが、例えば、(1)潜在捲縮性繊維を主体とする繊維ウエブを形成する工程、(2)前記繊維ウエブに対して絡合作用を作用させて絡合繊維ウエブを形成する工程、(3)前記絡合繊維ウエブに対して熱を作用させることにより潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させ、高捲縮性繊維とする際に、絡合繊維ウエブを収縮させて収縮繊維ウエブを形成する工程、及び(4)収縮繊維ウエブに対して、繊維を融着させないようにエンボス処理をすることにより、繊維が融着していない圧着部を部分的に有し、圧着部における繊維密度Dpが、圧着していない非圧着部における繊維密度Dnよりも、0.20g/cm3以上大きい不織布を形成する工程、により製造することができる。
より具体的には、(1)潜在捲縮性繊維を主体(50mass%以上)とする繊維ウエブを形成する工程は、例えば、カード法、エアレイ法などの乾式法、湿式法、又はスパンボンド法などの直接法により形成できる。圧着部を部分的に有することによって情報を認識できるためには、ある程度の厚さがあるのが好ましいため、比較的嵩高な繊維ウエブを形成しやすい、乾式法、特にカード法により繊維ウエブを形成するのが好ましい。
この繊維ウエブは繊維が一方向に配向したパラレルウエブ、繊維が交差するように配向したクロスレイウエブ、又は繊維がランダムに配置したランダムウエブであることができる。また、これら繊維ウエブが積層した積層ウエブであっても良い。例えば、パラレルウエブとクロスレイウエブとを積層(つまり、クリスクロスウエブ)することができる。
なお、潜在捲縮性繊維としては、前述の潜在捲縮性繊維を使用できるが、面積収縮率が35%以上(好ましくは37%以上、更に好ましくは40%以上)の優れた捲縮発現能を有する、及び/又は平均繊度が1.7dtex(好ましくは1.6dtx以下、更に好ましくは1.5dtex以下、更に好ましくは1.4dtx以下、更に好ましくは1.3dtex以下、更に好ましくは1.2dtx以下、更に好ましくは1.1dtex以下)の潜在捲縮性繊維を使用すると繊維密度を高めやすく、また、地合いを高めることができ、結果として、明確な圧着部を有する不織布を製造できるため好適である。また、次の絡合工程における絡合作用によって、繊維ウエブの地合いが悪くならないように、また、繊維密度を高めることができるように、絡合前の繊維ウエブの目付は30g/m2以上であるのが好ましい。
次いで、(2)前記繊維ウエブに対して絡合作用を作用させて絡合繊維ウエブを形成する。絡合作用を作用させることによって、繊維同士が絡み、繊維密度が高い状態となるため、圧着部による情報を認識しやすい不織布を製造しやすい。なお、前記絡合作用としては、水流などによる流体流、ニードルパンチを挙げることができる。これらの中でも、繊維密度を高めやすく、また、地合いの優れる絡合繊維ウエブを製造しやすい、水流などによる流体流であるのが好ましい。
好適である流体流の絡合作用の場合、繊維密度を高めることができるように、流体圧は2.0MPa以上であるのが好ましく、3.0MPa以上であるのがより好ましく、4.0MPa以上であるのが更に好ましい。なお、流体圧が強すぎると、潜在捲縮性繊維の捲縮発現が不十分となり、伸長性、伸縮性が悪くなる傾向があるばかりでなく、絡合繊維ウエブの地合いが悪くなり、圧着部の鮮明性が悪くなる傾向があるため、流体圧は12MPa以下であるのが好ましい。
このような流体流の作用は1回ではなく、2回以上作用させるのが好ましい。流体流の作用回数が多くなると、繊維同士の絡合が進み、繊維密度が高い状態となりやすいためである。しかしながら、繊維同士の絡合が進み過ぎると、次工程における潜在捲縮性繊維の捲縮発現が不十分となる傾向があるため、流体流の作用は4回以下であるのが好ましい。このように2回以上、流体流を作用させる場合、少なくとも1回、圧力3.0MPaの流体を作用させるのが好ましいが、繊維密度が高い状態となりやすいように、2回以上、圧力3.0MPaの流体流を作用させるのがより好ましい。特に、2回以上、流体流を作用させる場合、繊維ウエブの両面に対して流体流を作用させ、繊維を十分に絡合するのが好ましく、繊維ウエブの両面に対して、圧力3.0MPaの流体流を作用させ、繊維を十分に絡合するのが更に好ましい。
なお、流体流を作用させて絡合することは、繊維を再配列することに他ならないため、絡合繊維ウエブの地合いが乱れる傾向がある。このように地合いが乱れると、結果として圧着部による情報を認識しにくくなる傾向があるため、流体流を作用させる前に、流体と繊維ウエブとの馴染みを良くするために、シャワー等により、繊維ウエブを湿らした後、段階的に流体圧を高くするのが好ましい。
更に、流体絡合の際に使用する繊維ウエブを支持する支持体は不織布の地合いを乱さないように、50〜100メッシュのプラスチック製又は金属製の平織り又は綾織りネット、或いはメッシュスクリーンを使用するのが好ましい。
続いて、(3)前記絡合繊維ウエブに対して熱を作用させることにより潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させ、高捲縮性繊維とする際に、絡合繊維ウエブを収縮させて収縮繊維ウエブを形成する。このように、潜在捲縮性繊維の捲縮発現力を利用し、絡合繊維ウエブを十分に収縮させることによって、より一層、伸長性、伸縮性等に優れるとともに、繊維同士が十分に絡み、繊維密度が高い状態となるため、当初はもちろんのこと、使用中においても、情報を認識しやすい圧着部を形成できる。そのため、絡合繊維ウエブの主面の面積を30%以上収縮させるのが好ましく、35%以上収縮させるのがより好ましく、40%以上収縮させるのが更に好ましい。この「絡合繊維ウエブの主面の面積を30%以上収縮させる」とは、例えば、1m2の絡合繊維ウエブに対して熱を作用させることによって、0.7m2以下の収縮繊維ウエブを形成することを意味する。このような収縮は、絡合繊維ウエブのたて方向(不織布生産時の流れ方向)にのみ収縮させることができるし、絡合繊維ウエブのよこ方向(たて方向と直交する方向)にのみ収縮させることができるし、絡合繊維ウエブのたて方向、よこ方向の両方向に収縮させることができるが、不織布の圧着部の鮮明性、引張り強さ、伸長性、伸縮性等を考慮すると、絡合繊維ウエブのたて方向、よこ方向の両方向に収縮させるのが好ましい。このように両方向に収縮させるためには、例えば、たて方向に関してはオーバーフィードし、よこ方向に関しては収縮を阻害しない状態で熱を作用させる。なお、絡合繊維ウエブを収縮させる熱は、コンベア等で絡合繊維ウエブを搬送しながら作用させることができる。
この絡合繊維ウエブに対して作用させる熱は潜在捲縮性繊維が50個/インチ以上の捲縮を発現できれば良く、潜在捲縮性繊維によってその温度は異なるため、特に限定するものではない。この温度は潜在捲縮性繊維に応じて、実験的に適宜設定できるものである。なお、加熱手段は特に限定するものではないが、例えば、熱風ドライヤー、赤外線ランプ、加熱ロールなどを挙げることができる。これらの中でも、潜在捲縮性繊維の捲縮が発現する際に、繊維同士の絡合作用を阻害しにくい、熱風ドライヤー、赤外線ランプなどの固体による強力な圧力がかからない加熱手段が好ましい。
なお、収縮繊維ウエブの厚さが薄いと、エンボス処理を実施しても、圧着部における繊維密度を非圧着部における繊維密度よりも0.20g/cm3以上大きくすることが困難になる傾向があるため、収縮繊維ウエブの厚さは0.40mm以上であるように調節するのが好ましく、0.45mm以上であるように調節するのがより好ましい。
そして、(4)収縮繊維ウエブに対して、繊維を融着させないようにエンボス処理をすることにより、繊維が融着していない圧着部を部分的に有し、圧着部における繊維密度Dpが、圧着していない非圧着部における繊維密度Dnよりも、0.20g/cm3以上大きい不織布を形成する。前述の絡合繊維ウエブ形成工程及び収縮繊維ウエブ形成工程において、繊維同士が絡み、繊維密度が高い状態の収縮繊維ウエブとした後に、圧着部を形成すると、圧着部の繊維密度が高くなりやすく、非圧着部との繊維密度差が生じ、圧着部による情報を鮮明に認識できる不織布を製造しやすい。
このエンボス処理は繊維を融着させないように実施することが重要である。繊維が融着してしまうと、高捲縮性繊維等が融着していることによって、十分な伸長性、伸縮性を発揮できなくなるためである。この繊維を融着させないためには、エンボス処理装置における温度を収縮繊維ウエブ構成繊維の中で最も低い融点をもつ樹脂成分の融点よりも低い温度、好ましくは融点よりも30℃以上低い温度、より好ましく融点よりも50℃以上低い温度とする。一方、圧着部の鮮明性、及び保管時、更には後加工時における熱によって、圧着部の嵩が回復して、圧着部の鮮明性が悪くならないように、収縮繊維ウエブ構成繊維の中で最も高いガラス転移温度をもつ樹脂成分のガラス転移温度より高い温度でエンボス処理を実施するのが好ましい。例えば、収縮繊維ウエブ構成繊維の中で最も高いガラス転移温度をもつ樹脂成分がポリエステル系樹脂の場合、100℃以上で実施するのが好ましく、120℃以上で実施するのがより好ましく、140℃以上で実施するのが更に好ましく、160℃以上で実施するのが更に好ましい。
このエンボス処理装置としては、例えば、平滑ロールとエンボスロールとの組合せ、同期した一対のエンボスロールの組合せなどを挙げることができる。なお、平滑ロールの素材として、スチール、コットン、ウール、耐熱性樹脂等が挙げられるが、圧着部を鮮明に形成するという観点及び異物混入の観点から、耐熱性樹脂からなる平滑ロールを使用するのが好ましい。この好適である耐熱性樹脂として、ポリアミド等を挙げることができ、ショアD硬さが80程度であるのが好ましい。一方でエンボスロールの素材として、金属、耐熱性素材が挙げられるが、圧着部を鮮明に形成するという観点から、金属からなるエンボスロールを使用するのが好ましい。したがって、耐熱性樹脂からなる平滑ロールと金属からなるエンボスロールとの組合せが特に好ましい。このエンボス処理装置によって部分的に圧着し、出所、薬効成分、デザイン等の情報を認識できる圧着部を形成するため、エンボスロール等においては、圧着部に対応する鏡像の凸部を有する。
なお、エンボス処理装置は、形成直後のまだ熱をもっている状態の収縮繊維ウエブに対して、エンボス処理装置を加熱することなく作用させることができるし、熱をもっていない安定した状態の収縮繊維ウエブに対して、エンボス処理装置を加熱して作用させることもできる。また、エンボス処理装置による収縮繊維ウエブに対して作用させる圧力は、エンボス処理装置の種類、処理テンポ、処理温度、圧着部の面積、収縮繊維ウエブの幅、収縮繊維ウエブの種類又は状態等によって異なるため、圧着部が鮮明であるように、適宜調整する。
以上は本発明の不織布の基本的な製造方法であるが、繊維として着色又は染色した繊維を含んでいない場合、絡合繊維ウエブ形成後、収縮繊維ウエブ形成後、又はエンボス処理後に、着色又は染色することによって、より鮮明な圧着部を有する不織布とすることができる。
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は次の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
ポリエステル/低融点ポリエステルの組み合わせでサイドバイサイド型に構成された潜在捲縮性繊維(繊度1.1dtex、繊維長44mm、面積収縮率:43%)を100mass%用いて、カード機にかけてパラレルウエブを形成した後、クロスラッパーによりクロスレイウエブ(目付:40g/m2)を形成した。
その後、90メッシュのポリエステル製綾織ネット(支持体)を用いて、前記クロスレイウエブを搬送しながら水流により絡合し、水流絡合繊維ウエブを形成した。なお、水流絡合の条件は次の通りとした。
1.シャワー:0.1MPa(片面「A面」とする、以下同様)
2.ノズル径0.13mm、ノズルピッチ0.6mmのノズルプレートから4.5MPa(A面)
3.ノズル径0.13mm、ノズルピッチ0.6mmのノズルプレートから5.0MPa(A面)
4.ノズル径0.13mm、ノズルピッチ0.6mmのノズルプレートから6.0MPa(A面の反対面、以下「B面」と表記)
次いで、水流絡合繊維ウエブを110℃で乾燥した後、よこ方向を規制することなく、たて方向にオーバーフィードしつつ、コンベアで搬送する水流絡合繊維ウエブに対して、熱風ドライヤーによる温度180℃での熱処理を行うことによって潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させ、高捲縮性繊維を形成する際に、水流絡合繊維ウエブの面積をたて方向及びよこ方向にトータルで53%収縮させた後、一対のロール間を通すことにより厚さ調整を行い、目付86g/m2、厚さ0.48mmの収縮繊維ウエブ[引張強さ:203N/5cm幅(たて方向)、131N/5cm幅(よこ方向)]を形成した。
そして、この熱をもっていない状態の収縮繊維ウエブを、耐熱性樹脂製平滑ロール(組成=ポリアミド、ショアD硬さ=83)と金属製エンボスロール(温度:160℃)とからなるエンボス処理装置(線圧:30kg/cm)間に供給し、部分的に圧着部を有する不織布を製造した。この不織布の圧着部は融着していなかった。なお、圧着部は次の通りであった(図1参照)。
圧着部単位:「ABCDEFGHIJ」及び「0123456789」
配置状態:
(1)圧着部単位の中心軸と一致する直線LCAが、不織布のよこ方向に平行な直線LCDとなす角度(α)(図2(a)参照):いずれの圧着部単位も27°
(2)圧着部単位の中心と、この圧着部単位と不織布のよこ方向で最も近い圧着部単位の中心とを結ぶことによって形成される直線LC−CDと、不織布のよこ方向に平行な直線LCDとなす角度(β)(図2(b)参照):いずれの組合せにおいても5°
(3)圧着部単位の中心と、この圧着部単位と不織布のたて方向で最も近い圧着部単位の中心とを結ぶことによって形成される直線LC−MDと、不織布のたて方向に平行な直線LMDとなす角度(γ)(図2(c)参照):いずれの組合せにおいても27°
圧着部の総面積:8%
(実施例2)
ポリエステル/低融点ポリエステルの組み合わせでサイドバイサイド型に構成された潜在捲縮性繊維(繊度1.7dtex、繊維長51mm、面積収縮率:40%)を100mass%用いて、カード機により開繊してランダムウエブ(目付:40g/m2)を形成したこと、水流絡合条件を下記の通りに変更したこと、及び潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させて高捲縮性繊維を形成する際の熱風ドライヤーの温度を175℃とし、水流絡合繊維ウエブの面積を53%収縮させたこと以外は、実施例1と同様にして不織布を製造した。この不織布の圧着部は融着していなかった。
記
1.シャワー:0.1MPa(A面)
2.ノズル径0.13mm、ノズルピッチ0.6mmのノズルプレートから3.0MPa(A面)
3.ノズル径0.13mm、ノズルピッチ0.6mmのノズルプレートから5.0MPa(A面)
4.ノズル径0.13mm、ノズルピッチ0.6mmのノズルプレートから6.0MPa(B面)
(実施例3)
実施例1の不織布をビームに巻き付けた後、ビーム染色機に収容し、次の条件で不織布を染色した。そして、水洗及び100℃で加圧後、急減圧して乾燥を行い、着色不織布を製造した。
(染色条件)
1.染液:
(1)青色分散染料「スミカロン Blue E−RPD」(住友化学(株)製、商品名)・・0.6%
(2)pH調整剤:酢酸・・0.25g/リットル、酢酸ナトリウム1.0g/リットル
2.染液の温度:105℃
3.染液の昇温速度:1.2℃/min.
4.染色時間:30分
5.染液の流量:2500L/min.
(比較例1)
ポリエステル/低融点ポリエステルの組み合わせでサイドバイサイド型に構成された潜在捲縮性繊維(繊度2.2dtex、繊維長51mm、面積収縮率:51%)を100mass%用いて、カード機により開繊し、パラレルウエブ(目付:30g/m2)を形成し、また、同様に形成したパラレルウエブをクロスラッパーによりクロスレイウエブ(目付:30g/m2)を形成し、前記パラレルウエブとクロスレイウエブとを積層したこと、水流絡合条件を下記の通りに変更したこと、及び潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させて高捲縮性繊維を形成する際の熱風ドライヤーの温度を175℃とし、水流絡合繊維ウエブの面積を40%収縮させたこと以外は、実施例1と同様にして比較用の不織布を製造した。この不織布の圧着部は融着していなかった。
記
1.シャワー:0.1MPa(A面)
2.ノズル径0.13mm、ノズルピッチ0.6mmのノズルプレートから5.5MPa(A面)
3.ノズル径0.13mm、ノズルピッチ0.6mmのノズルプレートから5.5MPa(B面)
(比較例2)
ポリエステル/低融点ポリエステルの組み合わせでサイドバイサイド型に構成された潜在捲縮性繊維(繊度1.1dtex、繊維長44mm、面積収縮率:34%)を100mass%用いて、カード機にかけてパラレルウエブを形成した後、クロスラッパーによりクロスレイウエブ(目付:50g/m2)を形成したこと、水流絡合条件を下記の通りに変更したこと、及び潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させて高捲縮性繊維を形成する際の熱風ドライヤーの温度を190℃とし、水流絡合繊維ウエブの面積を41%収縮させたこと以外は、実施例1と同様にして比較用の不織布を製造した。この不織布の圧着部は融着していなかった。
記
1.シャワー:0.1MPa(A面)
2.ノズル径0.13mm、ノズルピッチ0.6mmのノズルプレートから4.0MPa(A面)
3.ノズル径0.13mm、ノズルピッチ0.6mmのノズルプレートから4.0MPa(A面)
4.ノズル径0.13mm、ノズルピッチ0.6mmのノズルプレートから4.0MPa(B面)
(比較例3)
カード機により開繊し、パラレルウエブ(目付:20g/m2)を形成し、また、同様に形成したパラレルウエブをクロスラッパーによりクロスレイウエブ(目付:20g/m2)を形成し、前記パラレルウエブとクロスレイウエブとを積層したこと、水流絡合条件を下記の通りに変更したこと、及び潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させて高捲縮性繊維を形成する際の熱風ドライヤーの温度を182℃とし、水流絡合繊維ウエブの面積を48%収縮させたこと以外は、比較例1と同様にして比較用の不織布を製造した。この不織布の圧着部は融着していなかった。
記
1.シャワー:0.1MPa(A面)
2.ノズル径0.13mm、ノズルピッチ0.6mmのノズルプレートから7.0MPa(A面)
3.ノズル径0.13mm、ノズルピッチ0.6mmのノズルプレートから8.0MPa(B面)
(各種物性評価)
前述の手順に従って、引張り強さ、伸び率、50%モジュラス強度、50%伸長時の回復率、平均地合指数、換算曲げ剛性、圧着部及び非圧着部における繊維密度、圧着部と非圧着部との密度差、及び圧着部の深さを、それぞれの不織布について計測した。この結果は表1、2の通りであった。
(圧着部の鮮明性の評価)
各不織布の圧着部の鮮明性を次の手順により行った。この結果は表1、2に示す通りであった。
まず、各不織布を裁断して、たて方向に50cm、よこ方向に70cmの長方形状試料片を採取した。次いで、白紙の上に各試料片を配置して評価片を調製した。その後、試料片のたて方向が垂直方向となり、試料片のよこ方向が水平方向となるように、室内蛍光灯下、評価片を垂直状態に保った状態で、評価片から直角方向に50cm離れた地点から50cm上方の位置から、試料片を目視により確認し、次の基準により評価した。
(判定基準)
◎・・・全ての文字が判別できる
○・・・部分的に判別しにくい文字がある
△・・・判別しにくい文字が多い
×・・・文字を判別できない
表1、2から次のことがわかった。
1.実施例2と比較例2との比較から、非圧着部と圧着部との繊維密度差が0.20g/cm3以上であると、明度差が大きく、圧着部を鮮明に認識できること。
2.実施例1と比較例2との比較から、圧着部の深さが深いと繊維密度差が大きくなり、圧着部を鮮明に認識できること。
3.実施例1、3との比較から、染色等により着色すると鮮明性が向上すること。