JP5943995B2 - 回転電機の電機子 - Google Patents

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Description

この発明は、回転電機の電機子に関するものである。
従来、回転電機の電機子におけるコイルの構成として、隣接する下層のコイルと上層のコイルがクロスしてコイルが巻き回される部分を、それぞれのティースが隣接するティースと対向する側面に設けるものが提案されている。
この構成では、隣接するティースの対向する側面上では、コイルが線径の1/2ピッチの送りで巻き回されてクロス部が形成されている。
このように、隣接するティースの側面と対向するティースの2側面上にクロス部を配しコイル形状をほぼ対称形状とすることで、組立作業上、外観上、高速巻線上の観点から優れたコイルが得られるとしている(例えば特許文献1)。
しかし、コイルのクロス部では導線が重なるためにコイルの占積率は良くない。
そこで、コイルのクロス部をティースの周方向の一方の面にまとめて配置するとともに、このティースに対向するティースの周方向側面ではコイルを整然と整列した状態で巻き回した電機子のコイルとして特許文献2のような構成が提案されている。
特許文献2では、コイルを順次螺旋状に巻き回してティースの径方向一端側から他端側に送りながら巻き回し、次いで、他端側から一端側に戻しながら巻き回すことを繰り返すことでクロス部を全てのティースの一方の側面にまとめて配置することにより、隣接するティース間において整然とコイルの導線が整列された面と、クロス部の存在によって積層の高さが増大した面とが対になり、お互いのスペースを補い合って高密度なコイルを形成している。
特許文献3では、ティースに装着されるコイルボビンが、コイルの導線を巻き回す巻き枠部とコイルボビンの角部の少なくともコーナ部に巻き枠部から突出した複数の突出部を有しているため、導線がその溝にはまり込んで巻き回される。
特許第3169314号公報(図1、図2、図3) 特許第3625185号公報(図3、図4、図5) 特開2009−153312号公報(図5)
特許文献2に示すコイルでは、1つのティース周方向の側面に整然と整列された面を設け、この面に対向する隣のティースの側面にコイルのクロス部を設けることにより、互いにスペースを補い合ってコイルの占積率の向上を図っている。
しかしながら、クロス部を有する面では、コイルを詰めて巻き回すことは難しく、その影響でコイルを整然と巻き回す側面においても導線の間に隙間が生じてコイルの中の無駄なスペースを排除できないという課題があった。
また、隣接するティースに巻き回される導線の向きが順巻きと逆巻きで交互になされる場合、隣接するティースの向かい合う2つの面が左右対称となる巻線方法では、コイルのクロス部が干渉してしまい、隣接するティースの対向する側面が、クロス部を有する面と整然とコイルの導線が整列された面と交互に配置することができないという課題があった。
また、クロス部を有する面においては、下層のコイルに対して逆方向斜めに巻き回されてクロス部を形成するため、丁寧に巻き回さなければコイルの占積率が低下するおそれがある。
特許文献3に示すコイルのクロス部の配置では、コイルの占積率向上が図れるものの、ティースの側面であって、電機子の軸方向の端面にクロス部を配置する巻線方法であるため、コイルの第1ターンを巻き回す際、クロス部を形成する側面に導線を巻き回す時間が、隣接するティースの対向する側面にクロス部を配置する巻線方法よりも短くなる。
よって、導線を巻き回してクロス部を形成する度に巻線速度を減速する必要があり、巻線速度を上げることができず巻線工程の生産性が低下するという課題があった。
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、コイルのクロス部を秩序だって形成し、さらにコイル巻線工程における生産性を低下させることなく、コイル全体の占積率を向上できる回転電機の電機子を提供することを目的とする。
この発明に係る回転電機の電機子は、
絶縁用インシュレータを備えた複数のティースを偶数個環状に配置し、前記ティースに導線を順巻き(当該ティースの外周側から回転軸方向に向かって右巻き)に集中巻したコイルと逆巻き(当該ティースの外周側から回転軸方向に向かって左巻き)に集中巻したコイルを交互に配置する回転電機の電機子において、
順巻き及び逆巻きした全ての前記コイルは、前記ティースを覆う前記インシュレータの側面であって、それぞれ隣接するティースと対向する2つの側面の内、第1側面(当該ティースの外周側から回転軸方向に向かって右側面)に巻き回した部分では、前記コイルの各層の前記導線が平行となる直線部形成され、第2側面(当該ティースの外周側から回転軸方向に向かって左側面)に巻き回した部分では、隣接する下層の前記導線の上で、上層の前記導線がクロスして巻き回されるクロス部形成され
順巻きされた前記コイルを巻装された前記ティースに備える前記インシュレータとしての右巻用インシュレータは、前記第2側面に巻き回す前記第1ターンの前記導線を、前記電機子の軸方向に対して斜めに、前記右巻用インシュレータの鍔の根本に沿って案内するクロスガイドを、前記第1ターンの前記第2側面上の巻き終わり端部に沿って有し、
逆巻きされた前記コイルを巻装された前記ティースに備える前記インシュレータとしての左巻用インシュレータは、前記第2側面に巻き回す前記第1ターンの前記導線を、前記電機子の軸方向に対して斜めに、前記左巻用インシュレータの鍔の根本に沿って案内するクロスガイドを、前記右巻用インシュレータのクロスガイドとは軸方向に反対の位置に、前記第1ターンの前記第2側面上の巻き終わり端部に沿って有するものである。
この発明に係る回転電機の電機子は、
絶縁用インシュレータを備えた複数のティースを偶数個環状に配置し、前記ティースに導線を順巻き(当該ティースの外周側から回転軸方向に向かって右巻き)に集中巻したコイルと逆巻き(当該ティースの外周側から回転軸方向に向かって左巻き)に集中巻したコイルを交互に配置する回転電機の電機子において、
順巻き及び逆巻きした全ての前記コイルは、前記ティースを覆う前記インシュレータの側面であって、それぞれ隣接するティースと対向する2つの側面の内、第1側面(当該ティースの外周側から回転軸方向に向かって右側面)に巻き回した部分では、前記コイルの各層の前記導線が平行となる直線部形成され、第2側面(当該ティースの外周側から回転軸方向に向かって左側面)に巻き回した部分では、隣接する下層の前記導線の上で、上層の前記導線がクロスして巻き回されるクロス部形成され
順巻きされた前記コイルを巻装された前記ティースに備える前記インシュレータとしての右巻用インシュレータは、前記第2側面に巻き回す前記第1ターンの前記導線を、前記電機子の軸方向に対して斜めに、前記右巻用インシュレータの鍔の根本に沿って案内するクロスガイドを、前記第1ターンの前記第2側面上の巻き終わり端部に沿って有し、
逆巻きされた前記コイルを巻装された前記ティースに備える前記インシュレータとしての左巻用インシュレータは、前記第2側面に巻き回す前記第1ターンの前記導線を、前記電機子の軸方向に対して斜めに、前記左巻用インシュレータの鍔の根本に沿って案内するクロスガイドを、前記右巻用インシュレータのクロスガイドとは軸方向に反対の位置に、前記第1ターンの前記第2側面上の巻き終わり端部に沿って有するものなので、
各コイルの第1ターンを精度良く巻き回すことができ、その後の各ターンを精度良く整列させて巻き回すことができる。
この発明の実施の形態1に係る回転電機の電機子の正面図である。 この発明の実施の形態1に係る回転電機の電機子のティースアッセンブリの正面図、断面図、背面図である。 この発明の実施の形態1に係る回転電機の電機子のティースアッセンブリの正面図である。 この発明の実施の形態1に係る回転電機の電機子の鉄心のティースに装着した右巻用インシュレータを2方向から見た斜視図である。 に示す右巻用インシュレータを装着した鉄心のティース中央部を切断した断面図である。 この発明の実施の形態1に係る回転電機の電機子の鉄心のティースに装着した左巻用インシュレータを2方向から見た斜視図である。 図6に示す左巻用インシュレータを装着した鉄心のティース中央部を切断した断面図である。 図4に示す右巻用インシュレータを装着した鉄心の左右の側面図とコイルの巻き回し状態を示す図である。 図6に示す左巻用インシュレータを装着した鉄心の左右の側面図とコイルの1層目の巻き回し状態を示す図である。 この発明の実施の形態2に係る回転電機の電機子の鉄心のティースに装着した右巻用インシュレータの左側面の要部を示す図である。 この発明の実施の形態3に係る回転電機の電機子の正面図である。 この発明の実施の形態4に係るコイル巻回装置の構成を示す図である。 この発明の実施の形態4に係るティースの断面図である。 この発明の実施の形態5の係るコイル巻回装置の構成を示す図である。 図8に示すコイルの2層目の巻き回し状態の拡大図である。
実施の形態1.
以下、本願発明の実施の形態1に係る回転電機の電機子とそのインシュレータを、図を用いて説明する。
図1は、回転電機の電機子100の正面図である。
図2(a)は、電機子100のティースアッセンブリ101の正面図である。
図2(b)は、電機子100のティースアッセンブリ101の断面図である。
図2(c)は、電機子100のティースアッセンブリ101の背面図である。
図3は、図2(a)の拡大図である。
図4は、鉄心1のティースに装着した右巻用インシュレータ2aを2方向から見た斜視図である。
図6は、鉄心1のティースに装着した左巻用インシュレータ2bを2方向から見た斜視図である。
図3に示すように、回転子である電機子100のティースアッセンブリ101は、鉄心1の環状に配置した各ティースに、右巻用インシュレータ2aと、左巻用インシュレータ2bを交互に装着して構成されている。
右巻用インシュレータ2a、左巻用インシュレータ2bは、いずれも絶縁性の樹脂で形成されている。
これらの各インシュレータの上から集中巻によって整列したコイル3a、3bを形成して、図1に示す電機子100を得る。
右巻用インシュレータ2aを装着したティースには、図4に示すように回転軸方向に向かって右巻き(特許請求の範囲における順巻きに相当)に導線を巻き回す。
左巻用インシュレータ2bを装着したティースには、図6に示すように回転軸方向に向かって左巻き(特許請求の範囲における逆巻きに相当)に導線を巻き回す。
右巻用インシュレータ2aのティースを覆う部分の内、外周側から回転軸方向に向かって右側を右側面21a(特許請求の範囲の第1側面に相当)、左側を左側面22a(特許請求の範囲の第2側面に相当)という。
同様に、左巻用インシュレータ2bのティースを覆う部分の内、外周側から回転軸方向に向かって右側を右側面21b(特許請求の範囲の第1側面に相当)、左側を左側面22b(特許請求の範囲の第2側面に相当)という。
次に右巻用インシュレータ2a及び左巻用インシュレータ2bの構成と、それぞれのインシュレータを備えたティースに導線を巻き回してコイル3a、コイル3bを形成する工程を説明する。
図8(a)は、右巻用インシュレータ2aを装着した鉄心の左右の側面図である。
図8(b)は、右巻用インシュレータ2aを装着した鉄心のティースにコイル3aの1層目を巻き回す状態を示す図である。
図8(c)は、右巻用インシュレータ2aを装着した鉄心のティースにコイル3aの2層目を巻き回す状態を示す図である。
図15は、図8(c)の拡大図である。
図5は、右巻用インシュレータ2aをティース11の中央部で切断した断面図である。
図9(a)は、左巻用インシュレータ2bを装着した鉄心の左右の側面図である。
図9(b)は、左巻用インシュレータ2bを装着した鉄心のティースにコイル3bの1層目を巻き回す状態を示す図である。
図7は、左巻用インシュレータ2bをティース11の中央部で切断した断面図である。
以下、説明の都合上、単に「上方」、「上部」、「下方」、「下部」等というときは、特に指定しない限り各図におけるそれぞれの方向、場所を指すものとする。
図4に示す右巻用インシュレータ2aの内鍔23aの上方右端部には、この右巻用インシュレータ2aを装着したティース11に巻き回す導線4を外部から導入する導入口24aを設けている。
また、左側面22aの回転軸方向内側上端部、すなわち内鍔23aの根本に相当する部分の上側端部には、右巻用インシュレータ2aと一体成形された、導線4の外径と同じ幅のクロスガイド25aを備えている。
クロスガイド25aは、右巻用インシュレータ2aに巻き回すコイル3aの最初の1ターン目の導線4を斜めに案内するためのものである。
クロスガイド25aの上方端部から、右巻用インシュレータ2aのティース部の上端面における内鍔23aの根本には、コイル3aの最初の1ターン目の導線4と、内鍔23aとの間の隙間を埋める、ダミーガイド26aを設けている。
次に、実際に右巻用インシュレータ2aにコイルを巻き回す手順を説明する。
まず、内鍔23aの導入口24aを通して導線4を電機子100の回転軸側から導入する。
そして内鍔23aの根本に沿って、図5に示す右方向に導線4の最初の1ターン目を巻き回す。
このとき、図8(b)に示すように、右側面21aから、内鍔23aにぴったりと沿って1ターン目の導線4が巻き回される。
そして、左側面22aの下部まで、内鍔23aに沿って巻き回された導線4は、左側面22aの下端部から、内鍔23aの根本を離れて斜めに、図8(b)におけるクロスガイド25aの右側に沿うように案内される。
その後、導線4はダミーガイド26aに沿って巻き回される。
2ターン目以降は、その前に巻き回した導線4に案内されて整列したコイル3aの1層目が形成される。
このようにして巻き回されたコイル3aの第1層目は、右側面21aにおいては内鍔23aに平行に、すべてのターンがまっすぐに右巻用インシュレータ2aの外鍔27aの根本まで巻き回される。
そして、外鍔27aの根本で折り返した導線4は、右側面21aにおいては第1層のコイル3aの間に俵積みされてコイル3aの第2層目を形成する。
このように、右側面21aにおいては、コイル3aのすべてのターンが内鍔23a及び外鍔27aに対して平行に整列して整然と巻き回されて、図8(c)に示すように、コイル3aの直線部Sを形成する。
一方、左側面22aにおいては、コイル3aの第1層目は、内鍔23aに対して斜めに巻き回された第1ターンの導線4に沿ってすべてのターンが斜めに外鍔27aの根本まで巻き回される。
そして、外鍔27aの根本で折り返した導線4は、図8(c)に示すように、左側面22aにおいては第1層のコイル3aに対して逆方向に斜めに上層で積み重なって交差するクロス部Cを形成しながらコイル3aの第2層目を形成する。
このように、左側面22aにおいては、コイル3aのすべてのターンが内鍔23a及び外鍔27aに対して斜めに、上下に隣接する層で交差しながら整列して巻き回される。
次に左巻用インシュレータ2bについて説明する。
図6に示す左巻用インシュレータ2bの内鍔23bの上方左端部には、この左巻用インシュレータ2bを装着したティース11に巻き回す導線4を外部から導入する導入口24bを設けている。
また、左側面22bの回転軸方向内側下端部、すなわち内鍔23bの根本に相当する部分の下側端部には、左巻用インシュレータ2bと一体成形された、クロスガイド25bを備えている。
クロスガイド25bは、左巻用インシュレータ2bに巻き回すコイル3bの最初の1ターン目の導線4を斜めに案内するためのものである。
クロスガイド25bの下方端部から、左側面22bを除く左巻用インシュレータ2bの内鍔23bの根本に沿って、コイル3bの最初の1ターン目の導線4と、内鍔23bとの間の隙間を埋めるため、導線4の外径と同じ幅のダミーガイド26bを設けている。
次に、左巻用インシュレータ2bにコイルを巻き回す手順を図6、7、9を用いて説明する。
まず、内鍔23bの導入口24bを通して導線4を電機子の回転軸側から導入する。
そして内鍔23bの根本に沿って、図7に示す左方向に導線4の最初の1ターン目を巻き回す。
このとき、図9(b)に示すように、左側面22b上部の内鍔23bにぴったりと接触する位置から1ターン目の導線4が、内鍔23bの根本を離れて斜めに、図9(b)におけるクロスガイド25bの右側に沿うように案内される。
そして、左側面22bの下部まで巻き回された導線4は、クロスガイド25bと同じ幅を有し、クロスガイド25bの下端部から、内鍔23bの根本に沿ってティース下端面、右側面21b、ティース上面の導入口24bまでの間に設けられたダミーガイド26bに沿うように、内鍔23bと平行に巻き回される。
2ターン目以降は、その前に巻き回した導線4に案内されて整列したコイル3bの1層目が形成される。
このようにして巻き回されたコイル3bの第1層目は、右側面21bにおいては内鍔23bに平行に、すべてのターンがまっすぐに左巻用インシュレータ2bの外鍔27bの根本まで巻き回される。
そして、外鍔27bの根本で折り返した導線4は、右側面21bにおいては第1層のコイル3bの間に俵積みされてコイル3bの第2層目を形成する。
このように、右側面21bにおいては、コイル3bのすべてのターンが内鍔23b及び外鍔27bに対して平行に整列して整然と巻き回されてコイル3bの直線部Sを形成する。
一方、左側面22bにおいては、コイル3bの第1層目は、内鍔23bに対して斜めに巻き回された第1ターンの導線4に沿ってすべてのターンが斜めに、外鍔27bの根本まで巻き回される。
そして、外鍔27bの根本で折り返した導線4は、左側面22bにおいては第1層のコイル3bに対して逆方向に斜めに上層で積み重なって交差するクロス部Cを形成しながらコイル3bの第2層目を形成する。
このように、左側面22bにおいては、コイル3bのすべてのターンが内鍔23b及び外鍔27bに対して斜めに、上下に隣接する層で交差しながら整列して巻き回される。
以上のように、図1に示す電機子100は、交互に反対方向に集中巻で整列して巻き回されたコイル3a、3bを備え、いずれのコイル3a、3bも、電機子100の外周から中心軸に向かってティースの周方向の左側面22a、22b側にクロス部Cを有し、右側面21a、21bは整然と平行に巻き回された直線部Sを有していることとなる。
俵積み状に1/2ピッチで整然と整列させた巻線コイルは、そのコイル径をφdとするとn層目までの積層高さH1は、H1=d+(n−1)×0.866dで表されるのに対し、クロス部の積層高さH2はH2=n×dで表される。このようにクロス部では、巻線密度が低くなる。
そこで、電機子100の各コイルの構成を、隣接するコイル3a、3bの直線部とクロス部が対向するように構成することにより、巻線スペースの有効利用が可能となり、コイル3a、3bの巻数を増やしたり、コイル外径サイズを大きくしたりすることができる。
これにより、バランス良く各コイル3a、3bを巻き回すことができる。
本発明の実施の形態1にかかる電機子とそのインシュレータによれば、各コイルの第1ターンを精度良く巻き回されるので、その後の各ターンを精度良く整列させて巻き回すことができる。
特に、クロスガイドを設けることにより、クロス部を形成するティースの側面のコイルを精度良く斜めに巻けるので、クロス部における巻き乱れを防止し、占積率の高いコイルを得ることができる。
また、クロスガイドに接続した、ダミーガイドを設けることにより、クロス部を形成するティースの側面からコイルの第1ターンを巻き始める場合でも、その反対面に形成する直線部を精度良くインシュレータの内鍔、外鍔に対して平行に、まっすぐに巻き回すことができる。
なお、本発明の効果を得るためには、コイルの右巻き・左巻きの組み合わせと、クロス部、直線部の配置側面の組み合わせは逆であってもよい。
実施の形態2.
以下、本発明の実施の形態2に係る回転電機の電機子のインシュレータに設けたクロスガイドを、図を用いて説明する。
図10は、この発明の実施の形態2に係る回転電機の電機子の鉄心のティースに装着した右巻用インシュレータ202aの左側面222aの要部を示す図である。
実施の形態1では、クロスガイド25a、25bは、導線4の外径と同じ幅のものを用いた。
本実施の形態では、クロスガイド225aを、斜めに巻き回す導線4と内鍔223aの間の空間を埋めるように、最もティースの上面に近い左側面の端部においては導線4の外径と同じ幅とし、下側に次第に細くなる形状としている。
斜めに巻き回すコイルの第1ターンを高精度にクロスガイド225aに沿わせることにより、すべてのターンを順次直前ターンに倣わせて精度良くコイルを巻き回すことができる。
なお、クロスガイド225aは、左側面の上下方向に全体に渡って設けても良いし、一部としても良い。
実施の形態3.
以下、本発明の実施の形態3に係る回転電機の電機子300を、図を用いて説明する。
図11は、固定子である電機子300の正面図である。
本発明の構成は、クロス部を精度良く構成するコイルに有効であり、このことは電機子の種類が回転子であろうと固定子であろうと異なるものではない。
固定子の場合は、コイルの第1ターンが、ティースの外周側から始まる点を除いて、他は実施の形態1と同じである。
なお、図1および図11に示すように、本発明は、電機子の回転子もしくは固定子に適用できる。
特に、ティースを偶数個備え、ティースに導線を順巻きに集中巻したコイルと逆巻きに集中巻したコイルとを交互に配置した回転子又は固定子は、それぞれ隣接するティースの対向する一方の側面がクロス部Cを形成する面で、他方の側面が直線部Sを形成する面となる。
よって、隣接するティースの対向する側面が、クロス部Cを形成する面と直線部Sを形成する面と交互に配置される。
また、回転子および固定子の鉄心は、一体鉄心であっても分割鉄心であっても良い。
本実施の形態においても、隣接するティースに巻き回されたコイルが対向する部分では一方のコイルのクロス部と他方のコイルの直線部が対向することとなり、占積率の高いコイルを精度良く巻き回すことができる。
また、隣接するティースの対向する側面が、クロス部を形成する面と直線部を形成する面と交互に配置されることにより、コイルの占積率向上効果を最大限に活かすことができ、高速に巻線することで生産性をも確保することができる。
実施の形態4.
以下、本発明の実施の形態4に係るコイル巻回装置400を、図を用いて説明する。
図12は、コイル巻回装置400の構成を示す図である。
コイル巻回装置400は、右巻用インシュレータ又は左巻用インシュレータを装着したティース11に導線4を巻き回してコイルを形成する装置である。
コイル巻回装置400は、テンショナ部44とフライヤ位置制御部43とフライヤ部42とホルダ部41で構成される。
テンショナ部44は、導線4を弛ませないように調整する。
フライヤ位置制御部43は、ティース11の中心軸方向に移動可能であり、フライヤ部42のティース11に対する位置を制御する。
フライヤ部42の位置の制御の詳細は、後述する。
フライヤ部42はティース11の周囲を回動し、ティース11の側面に導線4を巻き回す。
ホルダ部41は、ティース11を固定する。
次に、コイル巻回装置400が右巻用インシュレータ2aを装着したティース11に導線4を巻き回す動作について、図4、図5、図8、図12を用いて説明する。
コイルの巻き始めにおいては、ボビンに巻き回された導線4は、テンショナ部44を通過した後、フライヤ位置制御部43を通って、インシュレータの内鍔23aの導入口24aの外側に係止されている。
フライヤ位置制御部43は、ノズルの先端が導線4が最初の1ターン目を巻き始める位置(図4のインシュレータの内鍔23aの導入口24a)にくるようにフライヤ部42の位置を調整する。
次に、フライヤ部42は、ティース11の周方向(図5に示す右方向)に右側面21a上部から回転し始め、右側面21aに導線4を巻き始める。
フライヤ部が左側面22aの下部まで回転するに従って、図8(b)に示すように、右側面21aにおいては、内鍔23aにぴったりと沿って導線4が巻き回される。
さらに、フライヤ部42が、左側面22a下部から右巻用インシュレータ2aのティース部の上端面(以下、ティース部の上端面という)まで回転するに従って、導線4は、クロスガイド25a、ダミーガイド26aに倣って巻き回される。
2ターン目以降は、導線4は、その前に巻き回された導線4に倣って巻き回され、外鍔27aまで巻き回されるとコイル3aの1層目が形成される。
次に、コイル3aの第2層目における導線4を巻き回す動作について説明する。
コイル3aの第1層目の最後のターンは、導線4が左側面22a下端部の角まで巻き回されると、フライヤ部42が左側面22a下端部の角から回転して第2層目を巻き回す直前に、フライヤ位置制御部43がフライヤ部42の位置をティースの中心軸方向に所定の幅だけ前進移動させる。
そして、フライヤ部42がティース部の上端部の角まで回転するに従って、図8(c)に示すように、導線4は、第1層のコイル3aの上を逆方向斜めにクロスして巻き回される。
そして、フライヤ部42がさらに右側面21aの下部まで回転するに従って、導線4は、第1層目のコイル3aの間に巻き回される。
以上のように右側面21aでは、俵積みされたコイル3aの第2層目が形成され、左側面22aでは、第1層のコイル3aに対して逆方向に斜めに上層で積み重なって交差するクロス部Cを形成しながらコイル3aの2層目が形成される。
このようにして2層目以降についても同様に巻き回され、コイル3aが形成される。
また、コイル巻回装置400が左巻用インシュレータ2bを装着したティース11に導線4を巻き回す動作について、図6、図7を用いて説明する。
右巻用インシュレータ2aを装着した場合とは、クロスガイド25bとダミーガイド26bの位置とフライヤ部42の回転方向が図7に示す左方向になる点と導線4をクロス部を形成する面から巻き回す点が異なる。
上記の点が異なっていても、フライヤ部42が図7に示す左方向に回転すると、導線4は左側面22bでは、クロスガイド25b、ダミーガイド26bに倣って巻き回され、さらに回転すると、右側面21bでは、内鍔23bにぴったりと沿って導線4が巻き回される点は同じである。
また、第2層目の左側面22bのクロス部を形成する際のフライヤ位置制御部43の動作も、フライヤ部42がティース部の上端面から回転して第2層目を巻き回す直前に、フライヤ位置制御部43がフライヤ部42の位置をティース中心軸方向に所定の幅だけ前進移動させる点も同じである。
また、電機子が固定子の場合であっても、1ターンがティースの外周側からはじまる点を除いて同じである。
次に、ティースの側面であって、電機子の軸方向の端面にクロス部Cを設けた場合と、隣接するティースの対向する側面にクロス部Cを設けた場合との導線4を巻き回す時間について説明する。
図13は、ティース11の電機子の径方向に垂直な断面図である。
ティースの側面であって、電機子の軸方向の端面を上端面28aとする。
図13において、ティース11の2つの対角線がなす角度に注目する。
上端面28aに対向するティース11の2つの対角線がなす角度を角度Hとする。
左側面22aに対向するティース11の2つの対角線がなす角度を角度Iとする。
ティース11の側面に導線4を巻き回す時間は、その側面に対向する角度の大きさに比例するので、角度が大きいほどその側面に導線4を巻き回している時間が長くなる。
そうすると、角度Iは、角度Hよりも大きいので、同じ回転速度で導線4を巻き回すとすると、左側面22aにクロス部Cを設けた場合は、上端面28aにクロス部Cを設けた場合よりも長い時間をかけてクロス部Cを形成することができる。
よって、クロス部Cを形成する度に導線4を巻き回す速度を減速する必要はなく、フライヤ部42の回転速度を一定にできる。
これにより、巻線工程の生産性が向上する。
以上のように、本発明の実施の形態4に係るコイル巻回装置400によれば、導線をクロスして巻き回す直前に、フライヤ位置制御部がフライヤ部の位置をティースの中心軸方向に移動させることによって、クロス部の位置決めを正確にできる。
また、導線同士の干渉や導線とガイドとの過度な干渉も抑制することが可能となり、導線を整然と巻き回して、コイルの品質を向上させることができる。
また、クロスガイド、ダミーガイドをインシュレータに備えているので、フライヤ部が回転すると導線がそれらのガイドに倣って巻き回され、さらに導線を整然と巻き回すことができる。
また、クロス部を隣接するティースの対向する側面に設けているため、フライヤ部がティースの周囲を高速に回動することができ、高密度に整列巻きするとともに、コイルの生産性も向上させることができる。
実施の形態5.
以下、本発明の実施の形態5に係るコイル巻回装置500を、図を用いて実施の形態4と異なる部分について説明する。
図14は、コイル巻回装置500の構成を示す図である。
コイル巻回装置500は、右巻用インシュレータ又は左巻用インシュレータを装着したティース11に導線4を巻き回してコイルを形成する装置である。
コイル巻回装置500は、テンショナ部44と巻線位置制御部51とホルダ部52で構成される。
テンショナ部44は、導線4を弛ませないように調整する。
巻線位置制御部51は、ティース11の中心軸方向に移動可能であり、導線4をティース11に巻き回す際の巻線の位置を制御する。
巻線の位置の制御の詳細は、後述する。
ホルダ部52は、ティース11を回転させ、導線4をティース11の側面に巻き回す。
次に、コイル巻回装置500が導線4をティース11に巻き回す動作を、実施の形態4と異なる部分について図4、図8を用いて説明する。
実施の形態4では、フライヤ部42がティース11の周囲を回動することにより、ティース11の側面に導線4を巻き回している。
本実施の形態では、ホルダ部52が、ティース11を回転させることにより、ティース11の側面に導線4を巻き回している。
実施の形態4のフライヤ位置制御部43に相当するのが巻線位置制御部51である。
図4に示す左側面22aにおいて、巻線位置制御部51は、ホルダ部52が回転して導線4を巻き回す直前に、ティース11の中心軸方向に所定の幅だけ移動する。
そして、ホルダ部52が回転すると、図8(c)に示すように、導線4が第1層のコイル3aの上を逆方向斜めにクロスして巻き回される。
以上のように、本発明の実施の形態5に係るコイル巻回装置500によれば、実施の形態4と同様の効果を奏するとともに、導線をクロスして巻き回す直前に、巻線位置制御装置が導線をティースに巻き回す際の巻線の位置をティースの中心軸方向に移動させることによって、クロス部の位置決めを正確にできる。
また、導線同士の干渉や導線とガイドとの過度な干渉も抑制することが可能となり、導線を整然と巻き回して、コイルの品質を向上させることができる。
また、クロスガイド、ダミーガイドをインシュレータに備えているので、ホルダ部が回転すると導線がそれらのガイドに倣って巻き回され、さらに導線を整然と巻き回すことができる。
尚、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。

Claims (5)

  1. 絶縁用インシュレータを備えた複数のティースを偶数個環状に配置し、前記ティースに導線を順巻き(当該ティースの外周側から回転軸方向に向かって右巻き)に集中巻したコイルと逆巻き(当該ティースの外周側から回転軸方向に向かって左巻き)に集中巻したコイルを交互に配置する回転電機の電機子において、
    順巻き及び逆巻きした全ての前記コイルは、前記ティースを覆う前記インシュレータの側面であって、それぞれ隣接するティースと対向する2つの側面の内、第1側面(当該ティースの外周側から回転軸方向に向かって右側面)に巻き回した部分では、前記コイルの各層の前記導線が平行となる直線部形成され、第2側面(当該ティースの外周側から回転軸方向に向かって左側面)に巻き回した部分では、隣接する下層の前記導線の上で、上層の前記導線がクロスして巻き回されるクロス部形成され
    順巻きされた前記コイルを巻装された前記ティースに備える前記インシュレータとしての右巻用インシュレータは、前記第2側面に巻き回す前記第1ターンの前記導線を、前記電機子の軸方向に対して斜めに、前記右巻用インシュレータの鍔の根本に沿って案内するクロスガイドを、前記第1ターンの前記第2側面上の巻き終わり端部に沿って有し、
    逆巻きされた前記コイルを巻装された前記ティースに備える前記インシュレータとしての左巻用インシュレータは、前記第2側面に巻き回す前記第1ターンの前記導線を、前記電機子の軸方向に対して斜めに、前記左巻用インシュレータの鍔の根本に沿って案内するクロスガイドを、前記右巻用インシュレータのクロスガイドとは軸方向に反対の位置に、前記第1ターンの前記第2側面上の巻き終わり端部に沿って有する回転電機の電機子。
  2. 前記ティースの、前記電機子の軸方向の長さは、前記ティースの、前記電機子の周方向の長さよりも長く形成されている請求項1に記載の回転電機の電機子。
  3. 記クロスガイドに接続され、前記ティースの前記第2側面以外の面の少なくとも一部に、前記導線を前記インシュレータの鍔に平行に案内するダミーガイドを備えた請求項又は請求項に記載の回転電機の電機子。
  4. 前記ダミーガイドは、前記第1ターンの前記導線と前記インシュレータとの間の隙間の少なくとも一部を埋め合わせる形状をしている請求項3に記載の回転電機の電機子。
  5. 前記インシュレータの前記鍔は、前記電機子が回転子の場合は、内鍔であり、前記電機子が固定子の場合は、外鍔である請求項1から請求項のいずれか1項に記載の回転電機の電機子。
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