以下、本発明に係る画像形成装置の実施形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
また、以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
[第1実施形態]
図1は本発明の第1実施形態に係るインクジェット印刷装置の概略構成図、図2は図1のインクジェット印刷装置の制御系の構成を示すブロック図、図3は図1の搬送ベルトおよびプラテンプレートの部分拡大断面図、図4は図1のヘッドブロックの配置を示す説明図、図5はヘッドブロックの概略構成図である。
以下の説明において、図1の紙面表方向を前方とする。また、図1に示すように、紙面の上下左右を上下左右方向とする。また、図1において破線で示す経路が、記録媒体である用紙PAが搬送される搬送経路Rである。以下の説明における上流、下流は、搬送経路Rにおける上流、下流を意味する。
図1、図2に示すように、インクジェット印刷装置1は、給紙部2と、搬送部3と、印刷部4と、制御部5、読取部6とを備える。
給紙部2は、用紙PAの給紙を行う。給紙部2は、給紙台11と、給紙ローラ12と、レジストローラ13とを備える。給紙台11は、印刷に用いられる用紙PAが積載されるものである。
給紙ローラ12は、給紙台11に積載された用紙PAを1枚ずつピックアップしてレジストローラ13に向けて搬送する。給紙ローラ12は、給紙台11の上側に配置されている。給紙ローラ12は、図示しないモータにより回転駆動される。
レジストローラ13は、給紙ローラ12により搬送されてきた用紙PAを一旦止めた後、搬送部3に向けて搬送する。レジストローラ13は、給紙ローラ12の下流側に配置されている。レジストローラ13は、図示しないモータにより回転駆動される。
搬送部3は、レジストローラ13から搬送されてきた用紙PAを搬送する。搬送部3は、搬送ベルト21と、駆動ローラ22と、従動ローラ23〜25と、ベルト駆動モータ26と、プラテンプレート27と、ファン28とを備える。
搬送ベルト21は、駆動ローラ22および従動ローラ23〜25に掛け渡される環状のベルトである。搬送ベルト21には、図3に示すように、用紙PAを吸着保持するための貫通穴であるベルト穴21aが多数形成されている。搬送ベルト21は、ファン28の駆動によりベルト穴21aに発生する吸着力により、用紙PAを用紙保持面(請求項の媒体保持面に相当)21b上に吸着保持する。用紙保持面21bは、駆動ローラ22と従動ローラ23との間で略水平となる搬送ベルト21の上面である。
搬送ベルト21は、駆動ローラ22の回転駆動により、図1における時計回り方向に回転する。これにより、搬送ベルト21は、無端移動することで、用紙保持面21b上に吸着保持した用紙PAを右方向へ搬送する。
駆動ローラ22および従動ローラ23〜25は、搬送ベルト21が掛け渡されるものである。駆動ローラ22は、ベルト駆動モータ26により回転駆動され、搬送ベルト21を回転させる。従動ローラ23〜25は、搬送ベルト21を介して駆動ローラ22に従動する。従動ローラ23は、駆動ローラ22と略同じ高さで、駆動ローラ22から左右方向に所定間隔だけ離間して配置されている。従動ローラ24,25は、駆動ローラ22および従動ローラ23の下方において、互いに左右方向に所定間隔だけ離間して、略同じ高さに配置されている。ベルト駆動モータ26は、駆動ローラ22を回転駆動させる。
プラテンプレート27は、駆動ローラ22と従動ローラ23との間において搬送ベルト21の下側に配置され、搬送ベルト21の下面を摺動可能に支持する。プラテンプレート27は、ベルト穴21aが通過する箇所において上面から下面に向かって掘り下げられた複数の凹部27aと、凹部27aの底面の一部からプラテンプレート27の下面に貫通する複数の吸引穴27bとを有する。
ファン28は、下方向への気流を生じさせる。これにより、ファン28は、プラテンプレート27の吸引穴27b、凹部27a、および搬送ベルト21のベルト穴21aを介して空気を吸引してベルト穴21aに負圧を発生させ、用紙PAを用紙保持面21b上に吸着させる。ファン28は、プラテンプレート27の下方に配置されている。
印刷部4は、搬送部3により搬送される用紙PAに印刷を行う。印刷部4は、搬送部3の上側に設けられている。印刷部4は、インクジェット印刷装置1の筐体(図示せず)内に固定されている。印刷部4は、インクジェットヘッド31C,31K,31M,31Yと、ヘッドホルダ32と、ヘッドギャップ調整ユニット(請求項のヘッドギャップ調整手段に相当)33とを備える。なお、色の区別が必要ない場合等に、符号における色を示すアルファベットの添え字(C,K,M,Y)を省略することがある。
インクジェットヘッド31C,31K,31M,31Yは、それぞれ、シアン(C)、ブラック(K)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインクを吐出する。インクジェットヘッド31C,31K,31M,31Yは、搬送部3の上方において、左右方向に並列して配置されている。インクジェットヘッド31C,31K,31M,31Yは、ライン型のインクジェットヘッドであり、図4に示すように、それぞれ6個のヘッドブロック35を有する。
各インクジェットヘッド31C,31K,31M,31Yにおいて、6個のヘッドブロック35は、千鳥配置されている。具体的には、6個のヘッドブロック35は、前後方向(主走査方向)に配列され、かつ、1つおきに左右方向(副走査方向)における位置をずらして配置されている。
ヘッドホルダ32は、図1に示すように、搬送部3の上方において、インクジェットヘッド31のヘッドブロック35を保持する。ヘッドホルダ32は、中空状の略直方体形状に形成されている。
各ヘッドブロック35は、図4、図5に示すように、用紙PAの搬送方向における上流側(左側)のヘッドモジュール36Uと、下流側(右側)のヘッドモジュール36Dとを貼り合わせて構成されている。
ヘッドモジュール36U,36Dは、図5に示すように、それぞれ下面である吐出面36aにノズル列37U,37Dを有する。したがって、ヘッドブロック35において、2つのノズル列37U,37Dが、左右方向に並列して配置されている。なお、図5は、ヘッドブロック35を下側から見た図である。
ノズル列37U,37Dは、副走査方向における同じライン上の、主走査方向において位置が異なるドットにインクを吐出するものである。すなわち、同じラインに対して、下流側のノズル列37Dからのインクの吐出は、上流側のノズル列37Uからのインクの吐出より後のタイミングで行われる。
ノズル列37U,37Dは、主走査方向(前後方向)に配列された複数のノズル38からなる。各ノズル列37U,37Dにおいて、ノズル38は、主走査方向に所定のピッチPで等間隔に配置されている。そして、ノズル列37Uのノズル38とノズル列37Dのノズル38とが、主走査方向に半ピッチ(P/2)分だけずれるように配置されている。これにより、主走査方向の解像度を高めている。
ヘッドモジュール36U,36Dは、1つのノズル38から1つの画素に対して吐出するインクの液滴数(ドロップ数)を変えることができ、液滴数(例えば、1〜7ドロップ)により濃度を表現する階調印刷を行う。
ヘッドギャップ調整ユニット33は、ヘッドギャップHを調整する。ヘッドギャップHは、図3に示すように、搬送ベルト21の用紙保持面21bとインクジェットヘッド31の吐出面36aとの間の距離である。ヘッドギャップ調整ユニット33は、ヘッドギャップ調整機構41と、昇降モータ42と、接続部材43とを備える。
ヘッドギャップ調整機構41は、インクジェットヘッド31に対して搬送部3を昇降させるものである。ヘッドギャップ調整機構41は、前後方向に離間して2つ設けられている。ヘッドギャップ調整機構41は、1対のプーリ46,47と、シャフト48と、ワイヤ49,50とを備える。
プーリ46,47は、それぞれワイヤ49,50の巻き取りおよび繰り出しを行う。プーリ46,47は、互いに左右方向に離間して、ヘッドホルダ32内に回転可能に支持されている。
シャフト48は、1対のプーリ46,47を互いに接続するものである。シャフト48は、左右方向に延びる長尺状の部材からなり、一端がプーリ46に固定され、他端がプーリ47に固定されている。これにより、1対のプーリ46,47が同期して回転される。
ワイヤ49,50は、搬送部3を吊り下げ支持する。ワイヤ49,50の一端は、搬送部3に接続され、他端側は、プーリ46,47に巻き付けられている。ワイヤ49,50がプーリ46,47の回転により巻き取られたり繰り出されたりすることで、搬送部3が昇降し、ヘッドギャップHが変化する。
昇降モータ42は、プーリ46,47を回転駆動させる。接続部材43は、ヘッドホルダ32と搬送部3とを接続する部材である。接続部材43は、ヘッドギャップHに応じて上下方向の長さが調整可能に構成されている。
読取部6は、原稿のフィード装置と原稿画像の読み取り装置(いずれも図示せず)とを有しており、フィード装置のトレイにセットした原稿を搬送しながら読み取り装置により画像を読み取ってデータ化する。
以上に説明した構成を有する本実施形態のインクジェット印刷装置1では、6個のヘッドブロック35を千鳥配置して各色のインクジェットヘッド31C,31K,31M,31Yを構成している。このため、6個のヘッドブロック35のノズル38が吐出するインクにより主走査方向の1ライン分のドットが用紙PAに形成されるように、ヘッドブロック35どうしが主走査方向において重なる部分において、インクの吐出量調整を制御部5が行う。
ここで、ヘッドブロック35どうしが主走査方向において重なる部分において制御部5が行う、ノズル38によるインクの吐出量の調整内容について、図6及び図7を参照して説明する。なお、図6及び図7では、図面の見やすさのために、各ヘッドブロック35のノズル38を1つのノズル列37に簡略化して示している。
まず、図6に示すように、主走査方向において隣り合うヘッドブロック35どうしが重なる部分、つまり、つなぎ目b2においては、本来、双方のヘッドブロック35,35が、それぞれのノズル38どうしの主走査方向の位置が一致するように配置される。その上で、一方のノズル38から通常通りのインクを吐出させ、他方のノズル38からはインクを吐出させないようにして、2つのノズル38,38による吐出量の合計が、1つのノズル38による通常の吐出量と同等になるようにする。
しかしながら、実際には公差範囲内の位置ずれにより、図7に示すように、つなぎ目b2において、双方のヘッドブロック35,35が、それぞれのノズル38どうしの主走査方向の位置がずれて配置されることがある。この状態で各ノズル38からインクを吐出させると、その吐出インクで形成されたドットと隣のドットとの間が短くなったりたり長くなったりする。ドット間隔が短くなると黒スジが発生し、ドット間隔が長くなると白スジが発生し、いずれも印刷品質を低下させてしまう。
そこで、図7に示すように、片方又は両方のヘッドブロック35,35のつなぎ目b2に位置するノズル38によるインクの吐出量を制御部5により調整して(つなぎ目補正)、黒スジや白スジの発生を抑制するようにしている。
また、本実施形態のインクジェット印刷装置1による印刷時には、図8に示すように、インクジェットヘッド31のヘッドブロック35からインクの液滴52が吐出されることで、ヘッドブロック35から用紙PAへ向かう自己気流W1が発生する。また、搬送部3による用紙PAの搬送およびファン28による空気の吸引により、搬送方向の気流である搬送気流W2が発生する。
上述した自己気流W1は、主走査方向において連続する複数のノズル38がインクをそれぞれ吐出していると、より強い流れとなる。また、自己気流W1は、同じノズル38が連続する複数ラインのドットに対してインクの吐出を繰り返す場合にも高くなる。即ち、ノズル38が用紙PAに対して吐出するインクの単位面積当たりの密度(吐出密度)が高い高吐出密度領域が存在すると、インクの吐出により発生する自己気流W1の度合いが強くなる。
自己気流W1の度合いを示す自己気流度が高まると、用紙PAの搬送に伴い搬送方向の上流側から下流側に向かって発生する搬送気流W2が、自己気流W1によって行く手を阻まれるようになる。
この場合には、図9に示すように、各ノズル38に対応して主走査方向に連続して発生した複数の自己気流W1が、搬送気流W2を遮るインク壁53を形成する。このインク壁53により、上述した自己気流度に応じた度合いで回り込み気流が発生する。そのため、搬送気流W2は自己気流W1を迂回して搬送方向の下流側に流れる回り込み気流W3となる。この回り込み気流W3は、インク壁53の両端から中央に向けて主走査方向に流れる。
そして、本実施形態のインクジェット印刷装置1では、図4、図5に示すように、各ヘッドブロック35に、用紙PAの搬送方向における上流側のヘッドモジュール36Uと下流側のヘッドモジュール36Dとが設けられている。したがって、上流側のヘッドモジュール36Uと用紙PAとの間で上述した自己気流W1が発生すると、下流側のヘッドモジュール36Dと用紙PAとの間では、上述した回り込み気流W3が主走査方向に流れるようになる。
このような回り込み気流W3が下流側のヘッドモジュール36Dにおいて発生すると、ヘッドモジュール36Dのノズル列37Dのノズル38から吐出されたインク液滴(図8参照)が回り込み気流W3によって、主走査方向に流されるようになる。これにより、下流側のノズル列37Dから吐出されるインクの液滴の飛翔軌道が中央側へと曲げられる。
図10は、上流側のノズル列37Uによる高吐出密度領域において、連続する複数のノズル38から各ラインに対してインクが吐出されることで、インク壁53に起因して、下流側のノズル列37Dから吐出されたインクの着弾ずれが生じる様子を示している。
図10に示すように、下流側のノズル列37Dのノズル38から吐出されたインクの液滴による着弾ドット61dが、主走査方向において理想的な着弾位置からずれる。ここで、着弾ドット61uは、上流側のノズル列37Uのノズル38から吐出されたインクの液滴による着弾ドットである。
なお、各ノズル38が副走査方向の各ラインのドットに対してインクを吐出し始めた直後の図10における左側の領域では、まだ自己気流W1が安定して確立していないため、インク壁53が形成されず、回り込み気流W3も発生しないので、それに起因する着弾ずれは発生しない。
また、上流側のノズル列37Uにおいて、主走査方向に連続する複数のノズル38の一部からしかインクが吐出されず、図11に示すように、上流側のノズル列37Uによる着弾ドット61uの密度が小さい場合は、自己気流W1が安定して発生しないのでインク壁53は形成されない。このため、インク壁53に起因する下流側のノズル列37Dによる着弾ドット61dの着弾ずれは生じない。
このように、主走査方向において連続する複数のノズル38がインクをそれぞれ吐出し、かつ、各ノズル38が副走査方向において連続する複数ラインのドットに対してインクを吐出して、用紙PA上に高吐出密度領域が存在するようになると、自己気流W1の自己気流度が高くなり、回り込み気流W3が顕著に発生するようになる。
回り込み気流W3の発生により下流側のノズル列37Dのノズル38から吐出されたインクが主走査方向に着弾ずれすると、図6を参照して先に説明した、主走査方向において隣り合うヘッドブロック35どうしが重なるつなぎ目b2部分のノズル38によるインクの吐出量を、つなぎ目補正によって調整しても、白スジや黒スジの発生を適切に抑制できなくなる可能性がある。
そこで、本実施形態のインクジェット印刷装置1では、高吐出密度領域のドットに対して図4の下流側のヘッドモジュール36Dのつなぎ目b2部分(図6参照)に位置するノズル38が吐出するインク液滴52の吐出量を、図2の制御部5によって制御するようにしている。この制御によって、図9に示す回り込み気流W3による着弾ずれを抑制する。制御部5が行う制御の手順については後述する。
図2の制御部5は、インクジェット印刷装置1の各部の動作を制御する。制御部5は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えて構成される。
制御部5は、主走査方向において隣り合うヘッドブロック35どうしが重なるつなぎ目b2部分(図6参照)のノズル38からのインクの吐出量を調整するために、つなぎ目補正テーブルを予め記憶している。
このつなぎ目補正テーブルは、各ヘッドブロック35のつなぎ目b2部分のノズル38からそれぞれ吐出させるインク量の補正内容を係数によって規定したテーブルである。例えば、補正前の吐出量と同じ吐出量とする場合の補正係数は1となる。
図12(a)に示す配置の例では、搬送方向の上流側のヘッドブロック35(図12(a)中の「ヘッド2」)と、下流側のヘッドブロック35(図12(a)中の「ヘッド1」)とのそれぞれが、上流側のヘッドモジュール36Uと下流側のヘッドモジュール36Dを有している。そして、上流側のヘッドモジュール36Uのノズル38には奇数の番号が付与され、下流側のヘッドモジュール36Dのノズル38には偶数の番号が付与されている。
そして、図12(a)に示す例では、搬送方向の上流側のヘッドブロック35の4番(#4)のノズル38と、下流側のヘッドブロック35の297番(#297)のノズル38とが、つなぎ目b2(図6参照)に位置するインク吐出量の補正対象のノズルとなる。これら補正対象のノズル38には、制御部5の例えばハードディスクに記憶されたつなぎ目補正テーブルの補正内容が適用される。
図12(b)に示すつなぎ目補正テーブルの例では、上流側のヘッドブロック35の4番(#4)のノズル38と、下流側のヘッドブロック35の297番(#297)のノズル38とに対して、いずれも、0.5という補正係数が規定されている。
なお、図12(a)に示す配置の例では、上流側のヘッドブロック35の1〜3番(#1〜#3)のノズル38と、下流側のヘッドブロック35の298〜300番(#298〜#300)のノズル38は、主走査方向において位置が重複するノズルがつなぎ目b2において重なった相手方のヘッドブロック35に存在する。このため、いずれもインクを吐出しないように制御される。
また、図2の制御部5は、高吐出密度領域のドットに対して下流側のヘッドモジュール36Dのつなぎ目b2部分(図6参照)に位置するノズル38が吐出するインク液滴52の吐出量を調整するために、回り込み気流補正テーブルを予め記憶している。
この回り込み気流補正テーブルは、上述したつなぎ目補正テーブルで規定されたインク吐出量の補正内容に追加する補正内容を、回り込み気流W3の発生度合いに応じたものとなるように、これに影響する自己気流度を左右するインクの吐出密度に応じて規定したテーブルである。
ここで、インクの吐出密度は、例えば、用紙PAの印字可能領域に対する実際に印字された領域の面積比を示す印字率によって表すことができる。そして、印字率は、主走査方向におけるインクの連続吐出ドット数と副走査方向におけるインクの連続吐出ドット数との一方又は両方によって、一次元又は二次元の範囲で定義することができる。
そして、本実施形態の制御部5は、主走査及び副走査の両方向におけるインクの連続吐出ドット数により二次元の範囲で定義した印字率に応じて、つなぎ目補正テーブルで規定された補正内容に追加するインク吐出量の補正内容を区分して規定した回り込み気流補正テーブルを、制御部5に記憶させて使用する。
なお、回り込み気流W3の発生要因となるインクの吐出密度によって左右される自己気流度は、同じノズル38が同じドットに対してインクの吐出を繰り返した場合にも高くなる。そこで、同じノズル38が同じドットに吐出するインクのドロップ数を加味したインクの吐出密度(印字率)に応じて、つなぎ目補正テーブルで規定する補正内容を区分してもよい。
図13(a)に示す配置の例では、上流側のヘッドブロック35(図13(a)中の「ヘッド2」)と下流側のヘッドブロック35(図13(a)中の「ヘッド1」)のそれぞれ下流側のヘッドモジュール36Dが吐出するインクが、回り込み気流W3によってヘッドブロック35の主走査方向の中央寄りに流されて、インクの着弾ずれが発生する。
特に、上述した図12(b)のつなぎ目補正テーブルの補正内容(補正係数=0.5)によりインクの吐出量が半分に補正される、下流側のヘッドブロック35の297番(#297)のノズル38からの吐出インクには、他のノズル38からの吐出インクに比べて大きな着弾ずれが発生する。
この着弾ずれによって、つなぎ目補正により同様に吐出量が半分に補正される上流側のヘッドブロック35の4番(#4)のノズル38からの吐出インクとの間の余白が大きくなり、このままでは、つなぎ目補正で解消するはずの白スジが発生してしまう。そこで、つなぎ目補正の対象となる上流側のヘッドブロック35の4番(#4)のノズル38と、下流側のヘッドブロック35の297番(#297)のノズル38には、制御部5の例えばハードディスクに記憶された回り込み気流補正テーブルの補正内容が適用される。
図13(b)に示す回り込み気流補正テーブルの例では、上流側のヘッドブロック35の4番(#4)のノズル38と、下流側のヘッドブロック35の297番(#297)のノズル38とに対して、それぞれの印字率に応じて3つに区分した補正内容が規定されている。具体的には、「〜0.5(0.5未満)」の印字率に対して、追加の補正内容として補正係数0が規定されている。同様に、「0.5〜0.7(0.5以上0.7未満)」の印字率に対して、追加の補正内容として補正係数+0.25が規定され、「0.7〜1.0(0.7以上1.0以下)」の印字率に対して、追加の補正内容として補正係数+0.5が規定されている。
なお、対象のノズル38がインクを吐出する度に、回り込み気流補正テーブルを用いて各ノズル38にどのような補正内容を適用するかを、その指標となる印字率によって決定する際に、ノズル38の印字率は、例えば、次のようにして決定することができる。
即ち、上流側及び下流側の各ヘッドブロック35において、それぞれの下流側のヘッドモジュール36Dにある補正対象のノズル38とその主走査方向において隣接する上流側のヘッドモジュール36Uにあるノズル38とが、過去所定ライン(例えば30ライン)に亘ってドットに吐出したインクの吐出パターン(主走査方向、副走査方向、同一ドット)に基づいて決定することができる。もちろん、印字率を決定するのにインクの吐出パターンを参照するノズル38の対象を、主走査方向にさらに拡げてもよい。
また、印字率に応じた各区分の補正内容は、例えば、インクジェット印刷装置1で印刷した印字率(インクの吐出密度)別のテストパターンから、回り込み気流W3によるインクの主走査方向における着弾ずれの度合いを把握して、それに基づいて決定することができる。使用するテストパターンは、例えば、図14の説明図に示すように、各色別に、主走査方向及び副走査方向の双方におけるドット密度を大、中、小の3パターンとした画像とすることができる。
次に、図13(b)の回り込み気流補正テーブルの補正内容を決定する際のインクジェット印刷装置1の動作について説明する。
図15は、回り込み気流補正テーブルの補正内容を決定する際のインクジェット印刷装置1の動作を説明するためのフローチャートである。図15のフローチャートの処理は、インクジェット印刷装置1に図14のテストパターンの画像データが入力されることにより開始となる。
図15のステップS1において、制御部5は、例えばハードディスクから読み出されたテストパターン(ドット密度大、中、小の画像部分を含む)を印刷部4で印刷する。なお、このとき制御部5は、既にハードディスクに記憶されている図12(b)のつなぎ目補正テーブルを用いて、各色のヘッドブロック35のつなぎ目部分b2(図6参照)のノズル38によるインクの吐出量をつなぎ目補正する。
テストパターンが用紙PAに印刷されたならば、印刷された用紙PA上のテストパターン画像を読取部6の読み取り装置により読み取って取り込む(ステップS3)。さらに、制御部5は、取り込んだテストパターン画像から、各色のヘッドブロック35のつなぎ目部分b2(図6参照)のノズル38が吐出したインクによるドット間の距離を、各ドット密度毎に算出する(ステップS5)。
そして、制御部5は、算出したドット間の距離から、回り込み気流補正テーブルの補正内容を、各色の各ドット密度毎(言い換えると印字率毎、つまり、インクの吐出密度毎)に算出する(ステップS7)。算出した補正内容は、回り込み気流補正テーブルとしてハードディスク等に記憶させた後(ステップS9)、処理を終了する。
なお、以上の処理のうち、テストパターン印刷以降の処理を、ユーザがテストパターンの印刷結果を見ながら、インクジェット印刷装置1に対する各種の入力操作を伴いつつマニュアルで行うことで、回り込み気流補正テーブルの補正内容を決定するようにしてもよい。
続いて、図13(b)の回り込み気流補正テーブルの補正内容を適用してつなぎ目部分のノズル38のインク吐出量を補正する際のインクジェット印刷装置1の動作について説明する。
図16は、回り込み気流補正テーブルの補正内容を適用してつなぎ目部分のノズルのインク吐出量を補正する際のインクジェット印刷装置1の動作を説明するためのフローチャートである。図16のフローチャートの処理は、インクジェット印刷装置1に印刷対象の画像データが入力されて、制御部5によりRGB形式の画像データから、インクジェットヘッド31による印刷に対応する形式の画像データであるドロップデータが生成されることにより開始となる。
図16のステップS11において、制御部5は、各色毎に、ドロップデータの各画素を注目画素とした場合に、その画素と周辺(主走査方向両側及び副走査方向上流側)の画素とのドロップデータから、注目画素のドット密度が大、中、小のいずれに属するかを判断する。
次に、制御部5は、注目画素にインクを吐出するノズル38が、下流側のヘッドモジュール36Dのつなぎ目部分b2(図6参照)に位置するノズル38であるか否かを確認する(ステップS13)。つなぎ目部分b2のノズル38である場合は(ステップS13でYES)、そのノズル38のインク吐出量に対するつなぎ目補正の補正内容を切り替える(ステップS15)。
具体的には、つなぎ目部分b2のノズル38によるインクの吐出先である注目画素の、ステップS11で判断したドット密度(大、中、小)、つまり印字率に対応する補正内容を、図13(b)の回り込み気流補正テーブルにより決定する。そして、注目画素に対応するノズル38のインク吐出量に対して制御部5が行うつなぎ目補正の内容を、図12(b)に示すつなぎ目補正テーブルで規定された補正内容から、決定した補正内容を追加した内容に切り替える。
したがって、制御部5は、切り替えた後の補正内容に応じて、つなぎ目部分b2のノズル38によるインクの吐出量を、ドロップデータの変更により調整制御し(ステップS17)、処理を終了する。
なお、注目画素にインクを吐出するノズル38が、下流側のヘッドモジュール36Dのつなぎ目部分b2(図6参照)に位置するノズル38でない場合は(ステップS13でNO)、そのノズル38のインク吐出量に対する補正を行わずに(ステップS19)、処理を終了する。
以上の説明からも明らかなように、本実施形態では、制御部5が請求項中のつなぎ目補正手段が制御部5によって構成されている。
これにより、つなぎ目部分b2のノズル38から吐出された、つなぎ目補正による吐出量制御後のインクが、回り込み気流W3によって主走査方向に流されて、図13(a)に示すようにインクの着弾ずれが発生するのを抑制することができる。よって、回り込み気流W3による主走査方向への着弾ずれがないときの図7に示す着弾状態に近づけて、白スジや黒スジの発生を抑えた良好な画像を形成することができる。
ちなみに、着弾ずれ量は、用紙PAと吐出面36aとの間の距離が大きいほど、大きくなる。用紙PAと吐出面36aとの間の距離は、ヘッドギャップHから用紙PAの厚さを除いた距離に相当する。同じ種類の(厚さが同じ)用紙PAであれば、ヘッドギャップHが大きいほど、用紙PAと吐出面36aとの間の距離が大きくなる。
しかし、例えば、厚さが異なる複数種類の用紙PAが、印刷に用いる用紙PA中に混在する場合等には、ヘッドギャップHが、厚手の用紙PAの厚さに合わせた寸法に維持される。したがって、薄手の用紙PAが吐出面36aの直下を通過する際には、用紙PAと吐出面36aとの距離が大きくなることがある。
ここで、着弾ずれ量と、用紙PAと吐出面36aとの間の距離との関係を示す実験結果を図17に示す。図17(a)において、この実験でインクを吐出した隣接する複数のノズル38を黒で塗りつぶして示している。また、上流側のノズル列37Uのノズル38a,38b,38cにおける主走査方向の着弾ずれ量と、用紙PAと吐出面36aとの間の距離との関係、および、下流側のノズル列37Dのノズル38d,38e,38fにおける主走査方向の着弾ずれ量と、用紙PAと吐出面36aとの間の距離の関係を図17(b)に示す。
ノズル38aは、上流側のノズル列37Uにおいてインクを吐出した複数のノズル38のうちの中央部のノズル38であり、ノズル38b,38cは、両端部のノズル38である。ノズル38dは、下流側のノズル列37Dにおいてインクを吐出した複数のノズル38のうちの中央部のノズル38であり、ノズル38e,38fは、両端部のノズル38である。図17(b)における着弾ずれ量は、上流側のノズル列37Uからのインク吐出によりインク壁53が形成された定常状態における主走査方向の着弾ずれ量である。
図17(b)に示すように、下流側のノズル列37Dのノズル38eとノズル38fとで、互いに逆方向の、中央側への着弾ずれが確認された。また、用紙PAと吐出面36aとの間の距離が大きいほど、着弾ずれ量が大きくなっている。
なお、図17(c)には、インク壁53が形成された定常状態における、上流側のノズル列37Uの各ノズル38における副走査方向の着弾ずれ量の平均値と、用紙PAと吐出面36aとの間の距離との関係、および、下流側のノズル列37Dの各ノズル38における副走査方向の着弾ずれ量の平均値と、用紙PAと吐出面36aとの間の距離との関係を示している。
図17(c)に示すように、副走査方向では、上流側のノズル列37Uと下流側のノズル列37Dとで、ほぼ同様の着弾ずれ量が発生している。したがって、回り込み気流W3はインク液滴52に対して、副走査方向におけるインクの着弾ずれ量を変化させるような影響を与えていないものと考えられる。
そこで、図13(b)の回り込み気流補正テーブルで規定するインク吐出量の補正内容を、ヘッドギャップHの大きさによってさらに区分し、ヘッドギャップHが大きいほど、つなぎ目補正の補正内容に追加する補正内容(の補正係数)が大きくなるようにしてもよい。
また、各ヘッドブロック35の下流側のヘッドモジュール36Dにおいて用紙PAと吐出面36aとの間を通過する回り込み気流W3は、搬送気流W2の風速が速いほど強くなる。搬送気流W2の風速は搬送部3による用紙PAの搬送速度が高いほど高くなるので、図13(b)の回り込み気流補正テーブルで規定するインク吐出量の補正内容を、搬送部3による用紙PAの搬送速度によってさらに区分し、搬送速度が速いほど、つなぎ目補正の補正内容に追加する補正内容(の補正係数)が大きくなるようにしてもよい。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係るインクジェット印刷装置について説明する。なお、第2実施形態のインクジェット印刷装置の構造は、第1実施形態のインクジェット印刷装置1と同じである。
そして、第1実施形態のインクジェット印刷装置1では、ヘッドブロック35どうしのつなぎ目部分b2(図6参照)に位置する下流側のヘッドモジュール36Dのノズル38に対する、インク吐出量のつなぎ目補正の補正内容を、回り込み気流W3により発生するインクの主走査方向における着弾ずれ量に応じて追加補正した。
これに対し、第2実施形態のインクジェット印刷装置1では、下流側のヘッドモジュール36D中の、主走査方向における端部に配置されたノズル38に対する、用紙PA上での濃度ムラを解消するためのインク吐出量の補正内容を、回り込み気流W3により発生するインクの主走査方向における着弾ずれ量に応じて追加補正する。
そこで、下流側のヘッドモジュール36D中の主走査方向における端部に配置されたノズル38が吐出するインクによって、用紙PA上で濃度ムラが発生することについて、以下に説明する。
各ヘッドブロック35の上流側及び下流側の各ヘッドモジュール36U,36Dの内部には、各ノズル38とそれぞれ連通する複数のインク室(図示せず)が設けられている。そして、制御部5の制御により各インク室の容積を変化させることで、対応するノズルからインク室内のインクが吐出される。
このようなシェアモード型のヘッドモジュール36U,36Dでは、主走査方向の中央寄りのインク室で発生した容積の変化による振動が主走査方向の端部寄りのインク室に伝達される。そして、主走査方向の端部のインク室ほど、他のインク室から伝達された振動が累積されて、インクの吐出量の特性に影響を及ぼす。
図18(a)に示す配置の例では、上流側及び下流側の各ヘッドモジュール36U,36Dの各ノズル38がそれぞれ同じ吐出量で吐出するインクによるドット径が、主走査方向における中央よりも端部に近づくほど大きくなり、それによって画像の濃度が周辺よりも高くなる濃度ムラが発生している。
これは、主走査方向の中央から端部に向けて、不図示の各インク室の容積変化により発生した振動が順次伝達され、伝達された振動により最端部に近いインク室ほど、実際のインク吐出量に応じた容積変化以上の容積変化を起こして、図中のグラフに示すようにインク吐出量が増加することで生じる現象である。
そこで、他のインク室から伝達、累積された振動による濃度ムラの発生を解消するために、制御部5は、例えばハードディスクに記憶させた配置別補正テーブルにおいて、主走査方向におけるノズル38の配置に応じて規定された補正内容で、上流側及び下流側の各ヘッドモジュール36U,36Dの各ノズル38によるインクの吐出量をそれぞれ補正する。
図18(b)に示す配置別補正テーブルの例では、ヘッドブロック35の主走査方向における両端部からそれぞれ5つ目までのノズル38に対して、補正係数が規定されている。そして、インク吐出量が最も増える最端部の、上流側の1番(#1)と下流側の300番(#300)のノズル38に対して、いずれも、0.9という補正係数が規定されている。また、その他のノズル38(#2〜#5,#296〜#299)に対しても、それぞれ、主走査方向の端部に近いほど低い0.92〜0.97の各補正係数が規定されている。
ところで、上述した配置別補正テーブルで規定された補正内容による制御部5の補正では、上流側のヘッドモジュール36Uのノズル38によるインクの吐出で発生した自己気流W1と、用紙PAの搬送部3による搬送で発生した搬送気流W2とにより、下流側のヘッドモジュール36Dにおいて発生する回り込み気流が考慮されていない。
このため、制御部5が、配置別補正テーブルで規定された補正内容をさらに、回り込み気流W3の発生度合い、つまり、下流側のヘッドモジュール36Dのノズル38による印字率(用紙PA上でのドット密度)に基づいて補正する。そのために、制御部5は、回り込み気流補正テーブルを予め記憶している。
この回り込み気流補正テーブルは、上述した配置別補正テーブルで規定されたインク吐出量の補正内容に追加する補正内容を、回り込み気流W3の発生度合いに応じたものとなるように規定したテーブルである。なお、本実施形態の回り込み気流補正テーブルでも、回り込み気流W3の発生度合いに影響する自己気流度を左右するインクの吐出密度として、印字率によりインク吐出量の補正内容を区分して規定している。
なお、印字率は第1実施形態と同様に、主走査方向におけるインクの連続吐出ドット数と副走査方向におけるインクの連続吐出ドット数とにより二次元の範囲で定義している。しかし、どちらか片方のみで一次元の範囲で印字率を定義してもよく、同じノズル38が同じドットに吐出するインクのドロップ数を加味したインクの吐出密度(印字率)に応じて、つなぎ目補正テーブルで規定する補正内容を区分してもよい。
図19(a)に示す配置の例では、下流側のヘッドモジュール36Dが吐出するインクが、回り込み気流W3によってヘッドブロック35の主走査方向の中央寄りに流されて、インクの着弾ずれが発生する。
この着弾ずれによって、上流側のヘッドブロック35の各ノズル38から吐出されたインクとの間隔が、主走査方向の両端部に近づくほど不等間隔となり、このままでは、白スジと黒スジが交互に発生してしまう。そこで、配置別補正の対象となる各ヘッドブロック35の主走査方向における両端部寄りのノズル38(#1〜#5,#296〜#300)には、制御部5の例えばハードディスクに記憶された回り込み気流補正テーブルの補正内容が適用される。
図19(b)に示す回り込み気流補正テーブルの例では、各ヘッドブロック35の主走査方向における両端部寄りのノズル38(#1〜#5,#296〜#300)に対して、それぞれの印字率に応じて3つに区分した補正内容が規定されている。具体的には、「〜0.5(0.5未満)」の印字率に対して、追加後の補正内容として補正係数0.9〜0.97が規定されている。同様に、「0.5〜0.7(0.5以上0.7未満)」の印字率に対して、追加後の補正内容として補正係数0.87〜0.97が規定され、「0.7〜1.0(0.7以上1.0以下)」の印字率に対して、追加後の補正内容として補正係数0.85〜0.97が規定されている。
また、印字率に応じた各区分の補正内容は、本実施形態においても、例えば、インクジェット印刷装置1で印刷した印字率(インクの吐出密度)別のテストパターンから、回り込み気流W3によるインクの主走査方向における着弾ずれの度合いを把握して、それに基づいて決定することができる。
なお、本実施形態では、特に、ヘッドブロック35の主走査方向における両端部寄りのノズル38について、印字率に応じた補正内容を決定する。このため、印字率に応じた各区分の補正内容を決定する際にインクジェット印刷装置1で印刷するテストパターンとしては、両端部寄りのノズル38を含むノズル38が、主走査方向と副走査方向とにおいてそれぞれ異なる印字率(吐出密度)でインクを吐出したパターンを、数多く含んでいるのが好ましい。
そこで、図20の説明図に示すテストパターンを用いてもよい。このテストパターンには、主走査方向において隣り合う2つのヘッドブロック35について、インクを吐出させるノズル38の主走査方向における両端部からの連続数を大、中、小(図中の「幅広」、「幅中」、「幅狭」)とした3つのグループが存在する。そして、各グループには、副走査方向における各ノズル38からのインクの連続吐出数を大、中、小とした3つのパターンがそれぞれ存在する。
このように、主走査及び副走査の各方向についてドット密度を大、中、小の3つに異ならせたパターンを含むテストパターンを用いることで、主走査及び副走査の両方向を含む二次元の印字率(ドット密度)別に、回り込み気流W3によるインクの主走査方向における着弾ずれの度合いを把握して、それに基づいて補正内容を決定することができる。
次に、図19(b)の回り込み気流補正テーブルの補正内容を決定する際の手順について説明する。
図21は、回り込み気流補正テーブルの補正内容を決定する際のインクジェット印刷装置1の動作を説明するためのフローチャートである。図21のフローチャートの処理は、インクジェット印刷装置1に図20のテストパターンの画像データが入力されることにより開始となる。
図21のステップS21において、制御部5は、例えばハードディスクから読み出されたテストパターン(ドット密度大、中、小の画像部分を含む)を印刷部4で印刷する。なお、このとき制御部5は、既にハードディスクに記憶されている図18(b)の配置別補正テーブルを用いて、各色のヘッドブロック35の主走査方向における両端部からそれぞれ5つ目までのノズル38によるインクの吐出量を配置別補正する。
テストパターンが用紙PAに印刷されたならば、印刷された用紙PA上のテストパターン画像上で、ヘッドブロック35の主走査方向における両端部寄りのノズル38による吐出インクの部分に、濃度ムラが生じているか否かを確認する(ステップS23)。
濃度ムラが生じている場合は(ステップS23でYES)、不図示の操作パネルのユーザによる操作等によって、濃度ムラを解消するための補正パラメータをインクジェット印刷装置1に更新入力する(ステップS25)。そして、更新入力した補正パラメータから、配置別補正テーブルの補正内容を、各色の各ドット密度毎(言い換えると印字率毎、つまり、インクの吐出密度毎)にインクジェット印刷装置1により算出し、その補正内容を制御部5の不図示のハードディスク等に仮に記憶させ(ステップS27)、ステップS21にリターンする。
また、ステップS23において濃度ムラが生じていない場合(NO)は、現在ハードディスク等に仮記憶されている配置別補正テーブルの補正内容を、回り込み気流補正テーブルの補正内容としてハードディスク等に改めて本記憶させた後(ステップS29)、手順を終了する。
なお、テストパターン画像を読取部6の読み取り装置により読み取らせて制御部5が濃度ムラの有無を判別し、その結果に基づいて補正パラメータの更新入力を制御部5が行うようにして、テストパターンの印刷及び画像の読み取りを繰り返しつつ、回り込み気流補正テーブルの補正内容を制御部5が、ユーザの入力操作等を伴わずに決定するようにしてもよい。
続いて、図19(b)の回り込み気流補正テーブルの補正内容を適用してヘッドブロック35の主走査方向における両端部寄りのノズル38のインク吐出量を補正する際のインクジェット印刷装置1の動作について説明する。
図22は、回り込み気流補正テーブルの補正内容を適用してつなぎ目部分のノズルのインク吐出量を補正する際のインクジェット印刷装置1の動作を説明するためのフローチャートである。図22のフローチャートの処理は、インクジェット印刷装置1に印刷対象の画像データが入力されて、制御部5によりRGB形式の画像データから、インクジェットヘッド31による印刷に対応する形式の画像データであるドロップデータが生成されることにより開始となる。
図22のステップS31において、制御部5は、各色毎に、ドロップデータの、ヘッドブロック35の下流側のヘッドモジュール36Dにある主走査方向における両端部寄りのノズル38に対応する画素を注目画素とした場合に、その画素と周辺(主走査方向両側及び副走査方向上流側)の画素とのドロップデータから、注目画素のドット密度が大、中、小のいずれに属するかを判断する。
次に、制御部5は、注目画素の、ステップS31で判断したドット密度(大、中、小)、つまり印字率に対応する補正内容を、図19(b)の回り込み気流補正テーブルにより決定する。そして、注目画素に対応する下流側のヘッドモジュール36Dのノズル38のインク吐出量に対して制御部5が行う配置別補正の内容を、図18(b)に示す配置別補正テーブルで規定された補正内容から、決定した補正内容を追加した内容に切り替える(ステップS33)。
以上の説明からも明らかなように、本実施形態では、制御部5が請求項中の配置別補正手段が制御部5によって構成されている。
したがって、制御部5は、切り替えた後の補正内容に応じて、下流側のヘッドモジュール36Dにおける主走査方向の両端部寄りのノズル38によるインクの吐出量を、ドロップデータの変更により調整制御する(ステップS35)。
これにより、下流側のヘッドモジュール36Dにおける主走査方向の両端部寄りのノズル38から吐出された、配置別補正による吐出量制御後のインクが、回り込み気流W3によって主走査方向に流されて、図19(a)に示すようにインクの着弾ずれが発生するのを抑制することができる。よって、回り込み気流W3による主走査方向への着弾ずれがないときの着弾状態に近づけて、白スジや黒スジの発生を抑えた良好な画像を形成することができる。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係るインクジェット印刷装置について説明する。なお、第3実施形態のインクジェット印刷装置の構造は、第1及び第2実施形態のインクジェット印刷装置1と同じである。
そして、第1実施形態のインクジェット印刷装置1では、ヘッドブロック35どうしのつなぎ目部分b2(図6参照)に位置する下流側のヘッドモジュール36Dのノズル38に対する、インク吐出量のつなぎ目補正の補正内容を、回り込み気流W3により発生するインクの主走査方向における着弾ずれ量に応じて追加補正した。
これに対し、第3実施形態のインクジェット印刷装置1では、下流側のヘッドモジュール36Dの各ノズル38の個体差(特性差)に起因する、用紙PA上での濃度ムラを解消するためのインク吐出量の補正内容を、回り込み気流W3により発生するインクの主走査方向における着弾ずれ量に応じて追加補正する。
そこで、下流側のヘッドモジュール36Dの各ノズル38の個体差(特性差)に起因して、用紙PA上で濃度ムラが発生することについて、以下に説明する。
第2実施形態においても説明したように、各ヘッドブロック35の上流側及び下流側の各ヘッドモジュール36U,36Dの内部には、各ノズル38とそれぞれ連通する複数のインク室(図示せず)が設けられている。そして、制御部5の制御により各インク室の容積を変化させることで、対応するノズルからインク室内のインクが吐出される。
このようなシェアモード型のヘッドモジュール36U,36Dでは、各インク室の容積を変化させるための要素(例えば、各インク室の隔壁を構成する圧電部材)の個体差(特性差)によって、インクの吐出量の特性にばらつきが生じる。
図23(a)に示す配置の例では、上流側及び下流側の各ヘッドモジュール36U,36Dの各ノズル38がそれぞれ同じ吐出量で吐出するインクによるドット径が各ノズル38毎にばらつき、それによって画像に濃度ムラが発生している。
そこで、このような濃度ムラの発生を解消するために、制御部5は、例えばハードディスクに記憶させたオフセット補正テーブルにおいて、図23(b)に示す配置別補正テーブルの例のように、各ノズル38に応じて規定された補正内容で、上流側及び下流側の各ヘッドモジュール36U,36Dの各ノズル38によるインクの吐出量をそれぞれ補正する。
ところで、上述したオフセット補正テーブルで規定された補正内容による制御部5の補正では、上流側のヘッドモジュール36Uのノズル38によるインクの吐出で発生した自己気流W1と、用紙PAの搬送部3による搬送で発生した搬送気流W2とにより、下流側のヘッドモジュール36Dにおいて発生する回り込み気流が考慮されていない。
このため、制御部5が、オフセット補正テーブルで規定された補正内容をさらに、回り込み気流W3の発生度合い、つまり、下流側のヘッドモジュール36Dのノズル38による印字率(用紙PA上でのドット密度)に基づいて補正する。そのために、制御部5は、回り込み気流補正テーブルを予め記憶している。
この回り込み気流補正テーブルは、上述したオフセット補正テーブルで規定されたインク吐出量の補正内容に追加する補正内容を、回り込み気流W3の発生度合いに応じたものとなるように規定したテーブルである。なお、本実施形態の回り込み気流補正テーブルでも、回り込み気流W3の発生度合いに影響する自己気流度を左右するインクの吐出密度として、印字率によりインク吐出量の補正内容を区分して規定している。
なお、印字率は第1及び第2実施形態と同様に、主走査方向におけるインクの連続吐出ドット数と副走査方向におけるインクの連続吐出ドット数とにより二次元の範囲で定義してもよい。あるいは、どちらか片方のみで一次元の範囲で印字率を定義してもよい。
しかし、本実施形態では、主走査及び副走査の両方向におけるインクの連続吐出ドット数に加え、同じノズル38が同じドットに吐出するインクのドロップ数を加味したインクの吐出密度(印字率)に応じて、つなぎ目補正テーブルで規定する補正内容を区分している。
即ち、本実施形態の場合でも、第2実施形態において参照した図19(a)に示す配置の例のように、下流側のヘッドモジュール36Dが吐出するインクが、回り込み気流W3によってヘッドブロック35の主走査方向の中央寄りに流されて、インクの着弾ずれが発生する。
この着弾ずれによって、上流側のヘッドブロック35の各ノズル38から吐出されたインクとの間隔が不等間隔となり、このままでは、白スジや黒スジが発生してしまう。そこで、オフセット補正の対象となる各ノズル38のうち、下流側のヘッドモジュール36Dのノズル38には、制御部5の例えばハードディスクに記憶された回り込み気流補正テーブルの補正内容が適用される。
図24に示す回り込み気流補正テーブルの例では、下流側のヘッドモジュール36Dのノズル38に対して、それぞれの印字率に応じて3つに区分した補正内容が規定されている。具体的には、「〜0.5(0.5未満)」の印字率に対して、追加の補正内容として補正係数0が規定されている。同様に、「0.5〜0.7(0.5以上0.7未満)」の印字率に対して、追加の補正内容として補正係数+0.01〜+0.03が規定され、「0.7〜1.0(0.7以上1.0以下」の印字率に対して、追加の補正内容として補正係数+0.01〜+0.03が規定されている。
また、印字率に応じた各区分の補正内容は、本実施形態においても、例えば、インクジェット印刷装置1で印刷した印字率(インクの吐出密度)別のテストパターンから、回り込み気流W3によるインクの主走査方向における着弾ずれの度合いを把握して、それに基づいて決定することができる。
なお、本実施形態では、各ノズル38について印字率に応じた補正内容を決定する。このため、印字率に応じた各区分の補正内容を決定する際にインクジェット印刷装置1で印刷するテストパターンとしては、全ノズル38が、主走査方向と副走査方向とにおいてそれぞれ異なる印字率(吐出密度)でインクを吐出したパターンを、数多く含んでいるのが好ましい。
また、本実施形態では、同じノズル38が同じドットに吐出するインクのドロップ数を印字率(吐出密度)に加味しているので、同一ドットに吐出するインクのドロップ数を異ならせたパターンを含んでいるのが好ましい。
そこで、図25の説明図に示すテストパターンを用いてもよい。このテストパターンには、インクを吐出させるノズル38の主走査方向における連続数を大、中、小(図中の「幅広」、「幅中」、「幅狭」)とした3つのグループが存在する。そして、各グループには、副走査方向における各ノズル38からのインクの連続吐出数を大、中、小とした3つのパターンがそれぞれ存在する。そして、このような3つのグループを含むテストパターンを、同一ドットに吐出するインクのドロップ数をNドロップとしたものと、N+1ドロップとしたものと、2通り設けている。
このようなテストパターンを用いることで、主走査及び副走査の両方向を含む二次元の印字率(ドット密度)に、同一ドットに吐出するインクのドロップ数を加味した印字率別に、回り込み気流W3によるインクの主走査方向における着弾ずれの度合いを把握して、それに基づいて補正内容を決定することができる。
なお、図24の回り込み気流補正テーブルの補正内容を決定する際の手順や、決定した回り込み気流補正テーブルの補正内容を適用してヘッドブロック35の主走査方向における両端部寄りのノズル38のインク吐出量を補正する際のインクジェット印刷装置1の動作は、基本的には、図21及び図22のフローチャートを参照して説明した第2実施形態の内容と同じである。但し、補正の適用対象のノズル38は、第2実施形態の場合と異なる。
以上の説明からも明らかなように、本実施形態では、制御部5が請求項中のオフセット補正手段が制御部5によって構成されている。
そして、本実施形態でも、下流側のヘッドモジュール36Dの各ノズル38から吐出された、オフセット補正による吐出量制御後のインクが、回り込み気流W3によって主走査方向に流されて、インクの着弾ずれが発生するのを抑制することができる。よって、回り込み気流W3による主走査方向への着弾ずれがないときの着弾状態に近づけて、白スジや黒スジの発生を抑えた良好な画像を形成することができる。
なお、上述した第2及び第3実施形態においても、図19(b)や図24の回り込み気流補正テーブルで規定するインク吐出量の補正内容を、ヘッドギャップHの大きさによってさらに区分し、ヘッドギャップHが大きいほど、つなぎ目補正の補正内容に追加する補正内容(の補正係数)が大きくなるようにしてもよい。
また、上述した第2及び第3実施形態においても、図19(b)や図24の回り込み気流補正テーブルで規定するインク吐出量の補正内容を、搬送部3による用紙PAの搬送速度によってさらに区分し、搬送速度が速いほど、配置別補正の補正内容に追加する補正内容(の補正係数)が大きくなるようにしてもよい。
そして、上述した第1乃至第3実施形態では、回り込み気流W3による主走査方向での着弾ずれを考慮して、それとは異なる要因の解消に用いられるインク吐出量の補正内容を、追加で変更する場合について説明した。しかし、本発明は、インクの吐出密度に基づき、回り込み気流W3の発生度合い(回り込み気流度)に応じてインクの吐出量を制御する場合に、広く適用可能である。
さらに、上述した第1乃至第3実施形態では、インクジェットヘッド31が、複数(6個)のヘッドブロック35を主走査方向に千鳥状に配置して構成され、各ヘッドブロック35に上流側及び下流側のノズル列37U,37Dが、搬送部3による用紙PAの搬送方向(副走査方向)に位置をずらして配置されている場合について説明した。
しかし、本発明の特に第2及び第3実施形態は、主走査方向における印字幅をカバーする上流側及び下流側のノズル列が単一部材のインクジェットヘッド31に設けられている場合にも適用可能である。
さらに、本発明は、インクジェットヘッド31が、搬送部3による用紙PAの搬送方向(副走査方向)に位置をずらして配置された3つ以上のノズル列を有するインクジェット印刷装置にも適用可能である。この場合、制御部5は、最下流のノズル列以外の少なくとも1つのノズル列による吐出対象の画素の密度を用いて、そのノズル列より上流側のノズル列でインク壁が形成されるか否かを判断すればよい。例えば、最下流のノズル列以外のすべてのノズル列をまとめて上記実施形態における上流側のノズル列37Uとみなし、高吐出密度領域の有無を判断することで、インク壁が形成されるか否かを判断すればよい。また、この場合においても、下流のノズル列以外の少なくとも1つのノズル列による吐出対象の画素の密度に加えて、吐出対象の画素に対するインク液適数を用いて、インク壁が形成されるか否かを判断してもよい。
本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。