以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。
各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組合せることも可能である。
本実施形態では、ヒートポンプサイクル(蒸気圧縮式の冷凍サイクル)10を車両用空調装置1に適用している。このヒートポンプサイクル10は、車両用空調装置1において、空調対象空間である車室内へ送風される送風空気を冷却あるいは加熱する機能を果たす。従って、本実施形態の熱交換対象流体は送風空気である。
また、本実施形態の車両用空調装置1は、車両走行用の駆動力を走行用電動モータから得る電気自動車に適用されている。この電気自動車では、車両停止時に外部電源(商用電源)から供給される電力を蓄電手段であるバッテリに充電し、車両走行時にバッテリに蓄えられた電力を走行用電動モータへ供給して走行する。
次に、図1を用いて車両用空調装置1の詳細構成を説明する。本実施形態の車両用空調装置1は、前述したヒートポンプサイクル10、ヒートポンプサイクル10によって温度調整された送風空気を車室内へ吹き出すための室内空調ユニット30、および車両用空調装置1の各種電動式の構成機器の作動を制御する空調制御装置100等を備えている。
まず、ヒートポンプサイクル10は、送風空気を冷却して車室内を冷房運転する冷房モード(冷却モード)の冷媒回路、送風空気を加熱して車室内を暖房する暖房モード(加熱モード)の冷媒回路、冷却して除湿した送風空気を再加熱して車室内を除湿暖房する除湿暖房モード、さらに、暖房モード時にヒートポンプサイクル10にて冷媒を蒸発させる蒸発器として機能する室外熱交換器16に着霜が生じた際に、これを除霜する除霜モードの冷媒回路を切替可能に構成されている。
なお、図1では、冷房モードにおける冷媒の流れを破線矢印で示し、暖房モードにおける冷媒の流れを実線矢印で示し、除湿暖房モードにおける冷媒の流れを二重破線矢印で示し、さらに、除霜モードにおける冷媒の流れを二重実線矢印で示している。
ヒートポンプサイクル10は、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機11、送風空気を加熱あるいは冷却する室内熱交換器としての室内凝縮器13および室内蒸発器18、冷媒を減圧膨張させる減圧手段としての暖房用固定絞り14および冷房用固定絞り17、並びに、冷媒回路切替え手段(切替弁)としての開閉弁15aおよび三方弁20等を備えている。
また、このヒートポンプサイクル10では、冷媒としてHFC系冷媒(具体的には、HFC134a)を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない蒸気圧縮式の亜臨界冷凍サイクルを構成している。もちろん、HFO系冷媒(例えば、R1234yf)等を採用してもよい。さらに、冷媒には圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されており、冷凍機油の一部は冷媒とともにサイクルを循環している。
圧縮機11は、車室外となる車両ボンネット内に配置され、ヒートポンプサイクル10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するもので、吐出容量が固定された固定容量型圧縮機構11aを電動モータ11bにて駆動する電動圧縮機として構成されている。固定容量型圧縮機構11aとしては、具体的に、スクロール型圧縮機構、ベーン型圧縮機構等の各種圧縮機構を採用できる。
電動モータ11bは、図示しないインバータから出力される交流電圧によって、その作動(回転数)が制御される交流モータである。また、インバータは、空調制御装置100から出力される制御信号に応じた周波数の交流電圧を出力する。そして、この周波数(回転数)制御によって、圧縮機11の冷媒吐出能力が変更される。従って、電動モータ11bは、圧縮機11の吐出能力変更手段を構成している。
圧縮機11の吐出口側には、室内凝縮器13の冷媒入口側が接続されている。室内凝縮器13は、室内空調ユニット30において車室内へ送風される送風空気の空気通路を形成するケーシング31内に配置されて、その内部を流通する冷媒と送風空気とを熱交換させることで送風空気を加熱する加熱用熱交換器である。
室内凝縮器13の冷媒出口側には、暖房モード時に冷媒を減圧させる暖房用固定絞り14を介して室外熱交換器16の冷媒入口側が接続されている。この暖房用固定絞り14としては、オリフィス、キャピラリチューブ等を採用できる。もちろん、暖房モード時に冷媒を減圧させる機能を発揮できれば、固定絞りに限定されることなく全開機能付き電気式膨張弁等の可変絞り機構を採用してもよい。
さらに、本実施形態では、室内凝縮器13から流出した冷媒を、暖房用固定絞り14を迂回させて室外熱交換器16の冷媒入口側へ導くバイパス通路15が設けられている。このバイパス通路15には、バイパス通路15を開閉する開閉弁15aが配置されている。
開閉弁15aは、冷房モードにおける冷媒回路、暖房モードにおける冷媒回路、除湿暖房モードにおける冷媒回路、および除霜モードにおける冷媒回路を切り替える冷媒回路切替え手段(切替弁)を構成するもので、空調制御装置100から出力される制御信号によって、その作動が制御される電磁弁である。具体的には、本実施形態の開閉弁15aは、冷房モード時および除霜モード時に開き、暖房モード時および除湿暖房モード時に閉じる。
なお、開閉弁15aが開いた状態で冷媒がバイパス通路15を通過する際に生じる圧力損失は、開閉弁15aが閉じた状態で冷媒が暖房用固定絞り14を通過する際に生じる圧力損失に対して極めて小さい。従って、開閉弁15aが開いた状態では、室外熱交換器16から流出した冷媒のほぼ全流量がバイパス通路15を介して室外熱交換器16側へ流れる。
室外熱交換器16は、車両ボンネット内に配置されて、内部を流通する室内凝縮器13下流側の冷媒と送風ファン16aから送風された車室外空気(外気)とを熱交換させるものである。送風ファン16aは、空調制御装置100から出力される制御電圧によって回転数(送風能力)が制御される電動式送風機である。
室外熱交換器16の冷媒出口側には、三方弁20が接続されている。この三方弁20は、開閉弁15aとともに上述した各運転モードにおける冷媒回路を切り替える冷媒回路切替え手段(切替弁)を構成しており、空調制御装置100から出力される制御信号によって、その作動が制御される電気式の三方弁である。
具体的には、三方弁20は、冷房モード時および除湿暖房モード時には図1の破線矢印あるいは二重破線矢印で示すように室外熱交換器16の冷媒出口側と冷房用固定絞り17とを接続する冷媒回路に切り替え、暖房モード時および除霜モード時には図1の実線矢印あるいは二重実線矢印で示すように室外熱交換器16の冷媒出口側と圧縮機11の吸入口側に配置されたアキュムレータ19の冷媒入口側とを接続する冷媒回路に切り替える。
この三方弁20は運転モードに応じて冷媒回路を完全に切り替えることができる。なお、冷媒回路を完全に切り替えることができるとは、具体的には、冷房モード時および除湿暖房モード時には室外熱交換器16から流出した冷媒の全流量を冷房用固定絞り17の冷媒入口側へ導く冷媒回路に切り替え、暖房モード時および除霜モード時には室外熱交換器16から流出した冷媒の全流量を冷房用固定絞り17および室内蒸発器18を迂回させて圧縮機11の吸入口側に配置されたアキュムレータ19の冷媒入口側へ導く冷媒回路に切り替えることを意味する。
冷房用固定絞り17の基本的構成は暖房用固定絞り14と同様であり、減圧手段を構成している。室内蒸発器18は、室内空調ユニット30のケーシング31内のうち、室内凝縮器13の送風空気流れ上流側に配置されて、その内部を流通する冷媒と送風空気とを熱交換させて送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。
室内蒸発器18の冷媒出口側には、アキュムレータ19の入口側が接続されている。アキュムレータ19は、内部に流入した冷媒の気液を分離して、サイクル内の余剰冷媒を蓄える気液分離器である。さらに、アキュムレータ19の気相冷媒出口には、圧縮機11の吸入口側が接続されている。
次に、室内空調ユニット30について説明する。室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置され、その外殻を形成するケーシング31内に送風機(ブロワ)32、前述の室内蒸発器18、室内凝縮器13、エアミックスドア34等を収容して構成されたものである。
ケーシング31は、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されており、その内部に車室内へ送風される送風空気の空気通路を形成している。このケーシング31の送風空気流れ最上流側には、ケーシング31内へ内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する内外気切替え手段としての内外気切替装置33が配置されている。
内外気切替装置33は、ケーシング31内へ内気を導入させる内気導入口および外気を導入させる外気導入口の開口面積を、内外気切替ドアによって連続的に調整して、内気の風量と外気の風量との風量割合を連続的に変化させるものである。内外気切替ドアは、内外気切替ドア用の電動アクチュエータによって駆動され、この電動アクチュエータは、空調制御装置100から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
内外気切替装置33の空気流れ下流側には、内外気切替装置33を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風機(ブロワ)32が配置されている。この送風機32は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置100から出力される制御電圧によって回転数(送風量)が制御される。
送風機32の空気流れ下流側には、前述の室内蒸発器18および室内凝縮器13が、送風空気の流れに対して、室内蒸発器18→室内凝縮器13の順に配置されている。換言すると、室内蒸発器18は、室内凝縮器13に対して、空気流れ上流側に配置されている。
また、ケーシング31内には、室内蒸発器18通過後の送風空気のうち、室内凝縮器13を通過させる風量と室内凝縮器13を通過させない風量との風量割合を調整するエアミックスドア34が配置されている。エアミックスドア34は、エアミックスドア駆動用の電動アクチュエータによって駆動され、この電動アクチュエータは、空調制御装置100から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
さらに、ケーシング31の空気流れ最下流部には、室内凝縮器13を通過した送風空気あるいは室内凝縮器13を迂回した送風空気を、空調対象空間である車室内へ吹き出すための開口穴が設けられている。この開口穴としては、具体的に、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ開口穴37a、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス開口穴37b、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット開口穴37cが設けられている。
これらのデフロスタ開口穴37a、フェイス開口穴37bおよびフット開口穴37cの空気流れ下流側は、それぞれ空気通路を形成するダクトを介して、車室内に設けられたフェイス吹出口、フット吹出口およびデフロスタ吹出口(いずれも図示せず)に接続されている。
従って、冷房モード時および除湿暖房モード時には、エアミックスドア34の開度が調整されることによって、室内蒸発器18にて冷却された送風空気のうち室内凝縮器13にて再加熱される温風と室内凝縮器13を迂回する冷風との風量割合が調整される。そして、この風量割合の調整によって、温風と冷風とを混合させた混合空気、すなわち車室内へ吹き出される送風空気の温度が調整される。なお、冷房モード時には、室内蒸発器18通過後の送風空気の全風量を室内凝縮器13を迂回させる位置に、エアミックスドア34を変位させるようにしてもよい。
また、デフロスタ開口穴37a、フェイス開口穴37bおよびフット開口穴37cの空気流れ上流側には、それぞれ、デフロスタ開口穴37aの開口面積を調整するデフロスタドア38a、フェイス開口穴37bの開口面積を調整するフェイスドア38b、フット開口穴37cの開口面積を調整するフットドア38cが配置されている。
これらのデフロスタドア38a、フェイスドア38bおよびフットドア38cは、吹出口モードを切替える吹出口モード切替え手段を構成するものであって、リンク機構等を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータに連結されて連動して回転操作される。なお、この電動アクチュエータも、空調制御装置100から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
また、吹出口モード切替え手段によって切り替えられる吹出口モードとしては、フェイス吹出口を全開してフェイス吹出口から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出すフェイスモード、フェイス吹出口とフット吹出口の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出すバイレベルモード、フット吹出口を全開するとともにデフロスタ吹出口を小開度だけ開口して、フット吹出口から主に空気を吹き出すフットモード、およびフット吹出口およびデフロスタ吹出口を同程度開口して、フット吹出口およびデフロスタ吹出口の双方から空気を吹き出すフットデフロスタモードがある。
さらに、乗員が操作パネルに設けられた吹出モード切替スイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタ吹出口を全開してデフロスタ吹出口から車両フロント窓ガラス内面に空気を吹き出すデフロスタモードとすることもできる。
次に、本実施形態の電気制御部について説明する。空調制御装置100を成す制御装置(制御手段)は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。そして、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、その出力側に接続された圧縮機11用のインバータ、冷媒回路切替え手段を構成する開閉弁15aおよび三方弁20、送風ファン16a、送風機32、前述した各種電動アクチュエータといった各種空調制御機器の作動を制御する。
また、空調制御装置100の入力側には、車室内温度(内気温)Trを検出する内気温検出手段としての内気センサ、車室外温度(外気温)Tamを検出する外気温検出手段としての外気温センサ101、車室内へ照射される日射量Tsを検出する日射量検出手段としての日射センサ、圧縮機11吐出冷媒の吐出冷媒温度Tdを検出する吐出温度センサ、圧縮機11吐出冷媒の吐出冷媒圧力Pdを検出する吐出圧力センサ、室内蒸発器18における冷媒蒸発温度(蒸発器温度)Teを検出する蒸発器温度センサ42、室外熱交換器16の室外器温度T16を検出する室外機交換器後流れ温度センサ43等の空調制御用のセンサ群の検出信号が入力される。なお、図1においては外気温Tamが検出される外気温センサ101を代表して図示している。
なお、本実施形態の吐出冷媒圧力Pdは、冷房モードでは、圧縮機11の冷媒吐出口側から冷房用固定絞り17入口側へ至るサイクルの高圧側冷媒圧力となり、暖房モードでは、圧縮機11の冷媒吐出口側から暖房用固定絞り14入口側へ至るサイクルの高圧側冷媒圧力となる。
さらに、空調制御装置100の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された図示を省略した操作パネルに設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。この操作パネルに設けられた各種空調操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置1の作動スイッチ、車両用空調装置1の自動制御を設定あるいは解除するオートスイッチ、運転モードを切り替える運転モード切替スイッチ、吹出口モードを切り替える吹出モード切替スイッチ、送風機32の風量設定スイッチ、車室内の目標温度Tsetを設定する目標温度設定手段としての車室内温度設定スイッチ等がある。
次に、上記構成における本実施形態の車両用空調装置1の作動を説明する。前述の如く、本実施形態の車両用空調装置1では、車室内を冷房する冷房モード、車室内を暖房する暖房モード、並びに、室外熱交換器16に着霜が生じた際にこれを除霜する除霜モードの運転を切り替えることができる。以下に、各運転モードにおける作動を説明する。
(a)冷房モード
冷房モードは、操作パネルのオートスイッチが投入(ON)された状態で、選択スイッチによって冷房モードが選択されると開始される。冷房モードでは、空調制御装置100が、開閉弁15aを開き、室外熱交換器16の冷媒出口側と冷房用固定絞り17の冷媒入口側とを接続するように三方弁20の作動を制御する。
これにより、図1の破線矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器13(→バイパス通路15)→室外熱交換器16(→三方弁20)→冷房用固定絞り17→室内蒸発器18→アキュムレータ19→圧縮機11の順に冷媒が循環する冷凍サイクルが構成される。つまり、室内凝縮器13および室外熱交換器16を冷媒に放熱させる放熱器として機能させ、室内蒸発器18を冷媒を蒸発させる蒸発器として機能させる冷凍サイクルが構成される。
なお、本実施形態の三方弁20は完全に冷媒回路を切り替えることができるので、冷房モードでは、室外熱交換器16から流出した冷媒の全流量が冷房用固定絞り17を介して室内蒸発器18へ流入する。
この冷媒回路の構成で、空調制御装置100が上述の空調制御用のセンサ群の検出信号および操作パネルの操作信号を読み込む。そして、検出信号および操作信号の値に基づいて車室内へ吹き出す空気の目標温度である目標吹出温度TAOを算出する。さらに、算出された目標吹出温度TAOおよびセンサ群の検出信号に基づいて、空調制御装置100の出力側に接続された各種空調制御機器の作動状態を決定する。
例えば、送風機32の送風量(すなわち、送風機32の電動モータに出力されるブロワモータ電圧)については、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置100のROM内に記憶された制御マップを参照して決定される。具体的には、本実施形態では、目標吹出温度TAOの極低温域(最大冷房域)および極高温域(最大暖房域)でブロワモータ電圧を最大値付近の高電圧にして、送風機32の送風量が最大風量に近づくように制御する。さらに、目標吹出温度TAOが極低温域あるいは極高温域から中間温度域に向かうに伴って、ブロワモータ電圧を減少させて送風量を減少させるように制御する。
また、エアミックスドア34の開度(すなわち、エアミックスドア駆動用の電動アクチュエータに出力される制御信号)は、室内へ送風される送風空気の温度が目標吹出温度TAOに近づくように決定される。
また、吹出口モード(すなわち、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータに出力される制御信号)は、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置100に記憶された制御マップを参照して決定される。本実施形態では、目標吹出温度TAOが低温域から高温域へと上昇するに伴って吹出口モードをフェイスモード→バイレベルモード→フットモードへと順次切り替える。
また、吸込口モード(すなわち、内外気切替装置33の電動アクチュエータに出力される制御信号)も、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置100に記憶された制御マップを参照して決定される。本実施形態では、基本的に外気を導入する外気モードが優先されるが、目標吹出温度TAOが極低温域となって高い冷房性能を得たい場合等には内気を導入する内気モードが選択される。
また、圧縮機11の冷媒吐出能力(すなわち、圧縮機11の電動モータ11bに接続されたインバータに出力される制御信号)については、目標吹出温度TAO等に基づいて、予め空調制御装置100に記憶されている制御マップを参照して、空調フィーリングを悪化させないように、蒸発器温度センサ42によって検出される冷媒蒸発温度Teの目標蒸発温度TEOを決定する。
さらに、この目標蒸発温度TEOと冷媒蒸発温度Teの偏差En(TEO−Te)を算出し、今回算出された偏差Enから前回算出された偏差En−1を減算した偏差変化率Edot(En−(En−1))とを用いて、予め空調制御装置100に記憶されたメンバシップ関数とルールとに基づいたファジー推論に基づいて、前回の圧縮機回転数fCn−1に対する回転数変化量ΔfCを求め、これに応じてインバータに出力される制御信号が決定される。
そして、上記の如く決定された制御信号等を各種空調制御機器へ出力する。その後、操作パネルによって車両用空調装置1の作動停止が要求されるまで、所定の制御周期毎に、検出信号および操作信号の読み込み→目標吹出温度TAOの算出→各種空調制御機器の作動状態決定→制御電圧および制御信号の出力といった制御ルーチンが繰り返される。なお、このような制御ルーチンの繰り返しは、他の運転時にも基本的に同様に行われる。
従って、冷房モード時のヒートポンプサイクル10では、圧縮機11にて圧縮された高圧高温冷媒が、室内凝縮器13にて室内蒸発器18通過後の送風空気の一部と熱交換して送風空気の一部が加熱される。さらに、室内凝縮器13から流出した冷媒は、バイパス通路15を介して室外熱交換器16へ流入し、室外熱交換器16にて送風ファン16aから送風された外気と熱交換して放熱する。
室外熱交換器16から流出した冷媒は、三方弁20を介して冷房用固定絞り17へ流入し、冷房用固定絞り17にて減圧膨張される。冷房用固定絞り17にて減圧された低圧冷媒は室内蒸発器18へ流入し、送風機32から送風された送風空気から吸熱して蒸発する。この冷媒の吸熱作用により、室内蒸発器18を通過する送風空気が冷却される。
そして、前述の如く、室内蒸発器18にて冷却された送風空気の一部が室内凝縮器13にて加熱されることによって、車室内へ送風される送風空気が目標吹出温度TAOに近づくように調整され、車室内の冷房が実現される。また、室内蒸発器18から流出した冷媒は、アキュムレータ19へ流入する。アキュムレータ19にて気液分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
(b)暖房モード
暖房モードは、操作パネルのオートスイッチが投入(ON)された状態で、選択スイッチによって暖房モードが選択されると開始される。暖房モードでは、空調制御装置100が、開閉弁15aを閉じ、室外熱交換器16の冷媒出口側とアキュムレータ19の冷媒入口側とを接続するように三方弁20の作動を制御する。さらに、空調制御装置100が、室内蒸発器18通過後の送風空気の全風量が室内凝縮器13へ流入するようにエアミックスドア34を変位させる。
これにより、図1の実線矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器13→暖房用固定絞り14→室外熱交換器16(→三方弁20)→アキュムレータ19→圧縮機11の順に冷媒が循環する冷凍サイクルが構成される。つまり、室内凝縮器13を放熱器として機能させ、室外熱交換器16を蒸発器として機能させる冷凍サイクルが構成される。
なお、本実施形態の三方弁20は完全に冷媒回路を切り替えることができるので、暖房モードでは、室外熱交換器16から流出した冷媒の全流量が圧縮機11の吸入口側に配置されたアキュムレータ19へ流入する。従って、僅かな流量の冷媒が冷房用固定絞り17を介して室内蒸発器18へ流れ込んでしまうことはない。
また、暖房モードでは、圧縮機11の冷媒吐出能力を以下のように決定する。暖房モードでは、目標吹出温度TAO等に基づいて、予め空調制御装置100に記憶されている制御マップを参照して、吐出圧力センサによって検出される吐出冷媒圧力(高圧側冷媒圧力)Pdの目標高圧PDOを決定する。
そして、この目標高圧PDOと吐出側冷媒圧力Pdの偏差Pn(PDO−Pd)を算出し、今回算出された偏差Pnから前回算出された偏差Pn−1を減算した偏差変化率Pdot(Pn−(Pn−1))とを用いて、予め空調制御装置100に記憶されたメンバシップ関数とルールとに基づいたファジー推論に基づいて、前回の圧縮機回転数fHn−1に対する回転数変化量ΔfHを求め、これに応じてインバータに出力される制御信号が決定される。
従って、暖房モード時のヒートポンプサイクル10では、圧縮機11にて圧縮された冷媒は、室内凝縮器13にて送風機32から送風された送風空気に放熱する。これにより、室内凝縮器13を通過する送風空気が加熱され、車室内の暖房が実現される。また、室内凝縮器13から流出した冷媒は、暖房用固定絞り14にて減圧されて室外熱交換器16へ流入する。
室外熱交換器16へ流入した冷媒は、送風ファン16aから送風された車室外空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器16から流出した冷媒は、三方弁20を介してアキュムレータ19へ流入する。アキュムレータ19にて気液分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
(c)除湿暖房モード
除湿暖房モードは、操作パネルのオートスイッチが投入(ON)された状態で、選択スイッチによって除湿暖房モードが選択されると開始される。除湿暖房モードでは、空調制御装置100が、開閉弁15aを閉じ、室外熱交換器16の冷媒出口側と冷房用固定絞り17の冷媒入口側とを接続するように三方弁20の作動を制御する。
これにより、図1の二重破線矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器13→暖房用固定絞り14→室外熱交換器16(→三方弁20)→冷房用固定絞り17→室内蒸発器18→アキュムレータ19→圧縮機11の順に冷媒が循環する冷凍サイクルが構成される。この除湿暖房モードにおいても、室内凝縮器13および室外熱交換器16を冷媒が放熱する放熱器として機能させ、室内蒸発器18を冷媒が蒸発する蒸発器として機能させる冷凍サイクルが構成される。
なお、本実施形態の三方弁20は完全に冷媒回路を切り替えることができるので、除湿暖房モードでは、室外熱交換器16から流出した冷媒の全流量が冷房用固定絞り17を介して室内蒸発器18へ流入する。
従って、除湿暖房モード時のヒートポンプサイクル10では、圧縮機11にて圧縮された高圧高温冷媒が、室内凝縮器13にて室内蒸発器18通過後の送風空気の一部と熱交換して送風空気の一部が加熱される。さらに、室内凝縮器13から流出した冷媒は、暖房用固定絞り14にて減圧されて室外熱交換器16へ流入する。室外熱交換器16へ流入した冷媒は送風ファン16aから送風された外気と熱交換して放熱する。
室外熱交換器16から流出した冷媒は、三方弁20を介して冷房用固定絞り17へ流入し、冷房用固定絞り17にて減圧膨張される。冷房用固定絞り17にて減圧された低圧冷媒は室内蒸発器18へ流入し、送風機32から送風された送風空気から吸熱して蒸発する。この冷媒の吸熱作用により、室内蒸発器18を通過する送風空気が冷却されて除湿される。以降の作動は冷房モードと同様である。
上記の如く、除湿暖房モードでは、冷房モードと同様に、室内蒸発器18にて冷却された送風空気を室内凝縮器13にて加熱して車室内へ吹き出すことで、車室内の除湿暖房を行うことができる。この際、除湿暖房モードでは、開閉弁15aを閉じるので、冷房モードよりも室外熱交換器16へ流入する冷媒の圧力および温度を低下させることができる。
従って、室外熱交換器16における冷媒の温度と外気温Tamとの温度差を縮小して、室外熱交換器16における冷媒の放熱量を低減できる。これにより、除湿暖房モードでは、室内凝縮器13における冷媒の放熱量を増加させて、冷房モードよりも室内凝縮器13における送風空気の加熱能力を向上させることができる。
(d)除霜モード
除霜モードは、暖房モード時に室外熱交換器16に着霜が生じていると判定されると開始される。このような着霜の判定は、様々な手法を採用できる。例えば、室外熱交換器後流温度センサ43によって検出された室外熱交換器後流温度T16が予め定めた基準温度(例えば、0℃)以下となった際に、室外熱交換器16に着霜が生じていると判定してもよい。
除霜モードでは、空調制御装置100が、開閉弁15aを開き、室外熱交換器16の冷媒出口側とアキュムレータ19の冷媒入口側とを接続するように三方弁20の作動を制御する。さらに、空調制御装置100が、室内蒸発器18通過後の送風空気の全風量が室内凝縮器13を迂回するようにエアミックスドア34を変位させる。
これにより、図1の二重実線矢印に示すように、圧縮機11(→室内凝縮器13→バイパス通路15)→室外熱交換器16(→三方弁20)→アキュムレータ19→圧縮機11の順に冷媒が循環するホットガスサイクルが構成される。なお、除霜モードでは、エアミックスドア34の作用によって、送風空気が室内凝縮器13へ流入しないので、室内凝縮器13では冷媒は殆ど放熱しない。
また、本実施形態の三方弁20は完全に冷媒回路を切り替えることができるので、除霜モードでは、室外熱交換器16から流出した冷媒の全流量が圧縮機11の吸入口側に配置されたアキュムレータ19へ流入する。従って、僅かな流量の冷媒が冷房用固定絞り17を介して室内蒸発器18へ流れ込んでしまうことはない。
従って、除霜モード時のヒートポンプサイクル10では、圧縮機11にて圧縮された高圧高温冷媒は、室外熱交換器16へ流入して放熱する。これにより、室外熱交換器16が加熱されて室外熱交換器16の除霜が実現される。室外熱交換器16から流出した冷媒は、三方弁20を介してアキュムレータ19へ流入する。アキュムレータ19にて気液分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入される。
本実施形態の車両用空調装置1は、以上の如く作動して、車室内の冷房、暖房および除湿暖房を実現することができるとともに、室外熱交換器16に着霜が生じた際に、除霜モードの運転を実行することで室外熱交換器16を除霜することもできる。
さらに、本実施形態のヒートポンプサイクル10では、冷媒回路切替え手段である三方弁20が、暖房モード時および除霜モード時に室外熱交換器16から流出した冷媒の全流量を室内蒸発器18を迂回させて圧縮機11の吸入口側へ導く冷媒回路に切り替えるので、僅かな流量の冷媒が室内蒸発器18へ流れ込むことを防止できる。従って、冷媒に混入している冷凍機油が室内蒸発器18内に滞留してしまう、いわゆる冷凍機油の寝込み現象が発生してしまうことを抑制できる。
その結果、圧縮機11へ供給される冷凍機油の量が減少してしまうことを抑制できるので、圧縮機11の保護を図ることができる。さらに、冷凍機油の寝込み現象によって室内蒸発器18の熱交換性能が低下してしまうことを抑制して、暖房モードあるいは除霜モードから冷房モードあるいは除湿暖房モードに切り替えた際に室内蒸発器18にて発揮される冷却能力が低下してしまうことを抑制できる。
また、本実施形態のヒートポンプサイクル10では、冷媒回路切替え手段として、室外熱交換器16の冷媒出口側と圧縮機11の吸入口側(具体的には、アキュムレータ19の入口側)とを接続する冷媒回路、および室外熱交換器16の冷媒出口側と冷房用固定絞り17の冷媒入口側とを接続する冷媒回路を切り替える三方弁20を採用している。
従って、極めて容易に、暖房モード時に室外熱交換器16 から流出した冷媒の全流量を圧縮機11の吸入口側へ導く冷媒回路を実現できる。さらに、冷媒回路切替え手段を複数の開閉弁を組み合わせて構成する場合に対して、冷凍サイクル全体を簡素化できるとともに、冷媒回路を切り替える際の制御の複雑化を抑制できる。
また、本実施形態のヒートポンプサイクル10では、暖房モード時のみならず、除霜モード時にも室外熱交換器16から流出した冷媒の全流量を圧縮機11の吸入口側へ導く冷媒回路に切り替えるので、より一層確実に、冷凍機油が室内蒸発器18内に滞留してしまうことを抑制できる。
また、41は高圧センサ、42は蒸発器温度センサ、43は室外熱交換器後流温度センサであり、夫々冷凍システムに既存のもの、つまり冷凍サイクルに必須のものである。上記実施形態においては、これら既存のセンサを利用しているので、新たにセンサを新設する必要がないと言う効果がある。
高圧センサ41は、通常の冷房のみを行うエアコンサイクルでも存在し、圧縮機保護のため、高圧が高くなりすぎたときに、圧縮機11を停止させるものである。同様の機器保護としてリリーフバルブがある。リリーフバルブによる機械的な保護は圧力が3.5MPaで作動し、高圧センサ41による制御装置100のプログラムを介しての保護は、圧力が3.04MPaで作動するようになっている。
蒸発器温度センサ(エバポレータ後センサ)42は、通常の冷房のみエアコンサイクルでも存在し、蒸発器18が凍結するのを防止する機器保護を行い、かつ凍結臭の臭いを防止する。室外熱交換器後流温度センサ43は、ヒートポンプサイクル特有のセンサであり、暖房時に室外熱交換器16が着霜しているか否かを判定するものである。
この構成において問題になるのは、高圧弁を成す開閉弁15aの開から閉への切り替えと三方弁20の流路の切り替えに伴う作動音の発生である。これらの弁は、流体が流れる一次側(上流側または高圧側)と二次側(下流側または低圧側)のそれぞれの圧力差(差圧)が大きいときに弁の作動を切替えると騒音が発生することが知られている。
従って、差圧をどのようにして計測または推定するかが重要である。差圧は、冷凍サイクル内に存在する冷媒量に関係する。この冷凍サイクルに注入された冷媒のうち、アキュムレータ19には主として液冷媒が蓄積されており残りの冷媒はアキュムレータ19外に存在する。アキュムレータ19の液冷媒量は、圧縮機11の回転数、外気温Tam、蒸発器吸込み温度、送風機32のブロア風量によって変わる。
また、差圧は、圧縮機11を停止することで時間の経過に従ってゼロに収束していく。また高圧側の圧力(高圧圧力)は、高圧センサ41で計測できる。この高圧圧力は、圧縮機11が停止した後に最終的に、冷媒が流れる配管周辺温度である外気温Tamに関係した値(外気温Tamでの冷媒飽和圧力)となる。低圧側の圧力も外気温Tamでの冷媒飽和圧力となり、最終的に差圧がゼロとなるのである。
従って、低圧側の圧力(低圧圧力)は、上述のようにアキュムレータ19の液冷媒量に関係するが、大略的には、外気温Tamの関数として決定されるとみなすことができ、高圧圧力と低圧圧力の圧力差である差圧の減少が算出可能となる。なお、圧縮機停止後、差圧が充分に小さくなっていく過程を均圧中と称することにする。
このように、外気温Tamの関数としての値まで低圧側の圧力が小さくなっていく。この第1実施形態においては、弁の切替えが判断された後、圧縮機11を完全に停止させて、差圧が所定の圧力より小さくなったときに弁(高圧弁となる開閉弁15aと三方弁20)を切替えることにより作動音を充分に小さくしている。この場合、冷房から暖房への切替え、暖房から冷房への切替えのいずれにおいても、同じ制御マップ(外気温と低圧圧力の変換マップ)から低圧圧力を演算する。
(第1実施形態の作動)
次に、フローチャートに基づいて、第1実施形態の作動を説明する。図2において、弁切替えロジックがスタートすると、ステップS01で、暖房または冷房等の現在の運転状態、外気温センサ101で計測した外気温Tam、蒸発器31のフィンの温度(蒸発器温度)、高圧センサ41で測定した高圧圧力、高圧弁(開閉弁)15aの開閉状態、三方弁20の切替え状態、圧縮機11の回転数(圧縮機回転数)、室外熱交換器16の冷媒後流側の室外熱交換器後流温度センサ43の値(室外熱交換器後流冷媒温度T16)を取得する。
次に、ステップS02において、ステップS01で検出した各種の値に基づいて、運転モード変化(運転モードを変化させるために電動圧縮機11を停止した直後)か、または、上記均圧中(均圧中のフラグが立っている)か否かを判定する。運転モード変化でも、均圧中でもないときは、ステップS03において通常作動に戻り、弁切替えロジックを終了する。なお、この弁切替えロジックは1秒間に一回くらいの割合で繰り返し実行される。
ステップS02において、運転モード変化、または、均圧中であると判断された場合は、ステップS04に進み、差圧ΔPREの減少が算出される。この差圧ΔPREの減少程度の算出にあたり、前述のように外気温Tamの関数として制御マップを用いて低圧圧力が先ず推定される。そして、計測された高圧圧力から、推定された低圧圧力が減算されて、差圧ΔPREが算出される。この差圧ΔPREの値は差圧としては正確ではないが、弁開閉時の騒音の有無を判断する、すなわち、差圧ΔPREの減少程度を把握するには有益である。
次に、ステップS05において、算出された差圧ΔPREが、所定の圧力より小さく充分に騒音を小さくできると判定されると、ステップS06で弁の切替えが許可される。推定された差圧ΔPREが、所定の圧力より小さくなければ、ステップS07において均圧中のフラグを立て、弁切替えロジックが終了する。
このように第1実施形態においては、ステップS04における差圧ΔPRE算出において、高圧圧力が高圧センサの値から決定され、低圧圧力が外気温Tamに基づいて制御マップから決定され、高圧圧力と低圧圧力の差圧が算出されるから、演算が簡単である。つまり、実際は圧縮機11の停止と共に上昇していく低圧圧力を、上昇しきった先の外気温Tamに基づく値として固定して演算している。従って、正確な差圧演算ではないが、差圧の減少を把握して騒音を低減するには有益である。
そして、上記実施形態においては、冷媒を圧縮する圧縮機11と、冷媒を気化させて室内に向かう空調風を冷却する蒸発器18と、冷媒の凝縮時の凝縮熱により発熱し空調風を加熱する凝縮器13と、冷媒に室外の外気から熱を吸収する吸熱器としてまたは冷媒の熱を室外に放出する放熱器として作動する室外熱交換器16と、外気の温度を検出する外気温検出手段101と、冷媒の流れを切替えて室外熱交換器16の作動を切替えに伴うヒートポンプの運転状態の切替えを制御する切替弁15a、20、20aと、室外熱交換器16の作動の切替えに伴うヒートポンプの運転状態の切替えを指示するともに、切替弁15a、20、20aの高圧側の圧力と低圧側の圧力との差である差圧が所定の圧力より小さくなったときに切替弁15a、20、20aの切替えを許可する制御手段100とを備え、制御手段100は、高圧側の圧力を冷媒が流れる高圧側に配置された高圧センサ41の値から求め、低圧側の圧力を外気温検出手段101からの値に基づいて求める。
これによれば、ヒートポンプの運転状態の切替えに伴う切替弁の切替えを、切替弁前後の圧力差が騒音なしと判断される圧力以下になった場合に行うため、騒音の発生を抑制できる。また、高圧側の圧力を高圧センサの値から求め、低圧側の圧力を外気温検出手段からの値に基づいて求めるから、運転状態の切替えが指示されてから、切替弁が切替わるまでの時間を短くすることができ、冷房または暖房等の効果が遅滞なく発揮される。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図1および図2を援用し、更に図3および図4を用いて説明する。なお、以降の各実施形態においては、上述した第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成および特徴について説明する。第2実施形態は、低圧側の圧力の推定が第1実施形態よりも複雑で精緻である。そして、運転切替えのために圧縮機11の停止指令が出て、圧縮機11が停止する直前の、あるいは停止した直後の低圧圧力の初期圧力(PREACM)を冷房時(これから暖房運転に切替わる時)には蒸発器31のフィン温度センサ42の値(蒸発器温度)から求める。また、運転切替えのために圧縮機11が停止する直前の低圧圧力の初期圧力(PREACM)を暖房時(これから冷房運転に切替わる時)には、室外熱交換器後流温度センサ43の温度から推定するものである。
以下詳細に説明する。前述の説明において、高圧圧力は、空調制御装置100から運転切替えのための弁切替え指示が出され圧縮機11が停止した後の経過時間(タイマーでカウントしている)と共に下降し、最終的に、冷媒が流れる配管周辺温度である外気温Tamに関係した値(外気温Tamでの冷媒飽和圧力)となる。一方、低圧圧力は、経過時間と共に上昇し外気温Tamでの冷媒飽和圧力となり、最終的に(後述する飽和時間Tim後に)差圧がゼロとなる。
図3(a)は、低圧圧力が経過時間ゼロの初期圧力(PREACMともいう)の状態から外気温Tamでの冷媒飽和圧力(PRETAMとも言う)に近付いていく状態を直線的に近似して表している。つまり、実際の低圧圧力の変化は、図3(a)のような折れ線上の変化でなく、指数関数的な変化であるが、直線的に近似して制御マップとして表している。
外気温Tamでの冷媒飽和圧力(PRETAM)は、外気温Tamに応じて制御マップで決定することができる。低圧側の経過時間ゼロのときの初期圧力(PREACM)は、蒸発器18のフィン温度を検出する蒸発器温度センサ42の値(蒸発器温度)から制御マップで求めることができる。この場合には、図4に示す冷媒の温度圧力変換マップを用いる。
また、図3(a)の飽和時間Timは、冷房モード時は図3(b)、冷房モード時以外は図3(c)に基づいて外気温Tamの関数として算出する。図3(b)は、冷凍サイクルの運転モードが冷房のときの外気温Tamと飽和時間Timとの関係を示す制御マップである。また図3(c)は、冷凍サイクルの運転モードが冷房以外のときの外気温Tamと飽和時間Timとの関係を示す制御マップである。外気温Tamの上昇につれて飽和時間Timが増加する。なお、冷房以外のときに用いる図3(c)のマップは、図3(b)の冷房時に用いるマップに比べて、同じ外気温であってもマップから演算される飽和時間Timが長くなるように設定されている。
次に、図4について説明する。冷媒の温度から冷媒の圧力を求めるには、図4(a)の温度圧力換算マップを使用する。冷媒の種類(HFC134a、1234yf)に応じて若干マップの値が異なる。または、図4(b)の温度圧力換算表の値(ポイント値)をメモリから読み出して、ポイント値とポイント値の間の値が直線補完により求められるようにしてもよい。
この第2実施形態における差圧ΔPREの算出について詳しく説明する。先ず、そのときの冷凍サイクルの運転モードが冷房か、冷房以外かを判定し、冷房のときは図3(b)の制御マップにより、冷房以外のときは図3(c)の制御マップにより、先ず、圧縮機11が運転切替えのために停止してから冷媒圧力が飽和するまでの最終的な経過時間である飽和時間Timを求める。
また、前述のように、図3(a)の外気温Tamでの冷媒飽和圧力(PRETAM)をマップに基づいて求める。また、低圧側の経過時間ゼロのときの初期圧力(PREACM)を蒸発器温度センサ42の値と制御マップとに基づいて求める。そして、図3(a)の圧縮機11が停止した後に経過時間ともに最終的に、外気温Tamでの冷媒飽和圧力に低圧圧力が変化していく状態を直線的(または曲線的)に近似した図3(a)の制御マップを完成する。
図2のステップS04における差圧ΔPREの算出においては、その算出のときの経過時間Tiから図3(a)の制御マップを用いて二点鎖線のように低圧圧力を求める。そして、そのときの高圧圧力と求めた低圧圧力の差を差圧ΔPREとする。
第2実施形態においては、空調制御装置(エアコンECU)100は、現在の運転状態(暖房、冷房等)を取得し、更に、外気温Tam、蒸発器温度(蒸発器フィン温度)、高圧圧力、高圧弁(開閉弁)15aのオンオフ状態、三方弁20の切替え状態、圧縮機11の回転数、室外熱交換器後流温度T16を取得する。
そして、モード切替え判定を行い、冷房から暖房、暖房から冷房、暖房から除湿等、弁の状態を切替えるモード変化かどうかを判定する。次に、差圧ΔPRE(高圧圧力−低圧圧力)を算出する。
なお、圧縮機11が停止した後、アキュムレータ19の液冷媒が蒸発し、低圧圧力は最終的に外気温Tamによる冷媒飽和圧に落ち着くが、この落ち着くまでの時間である飽和時間Timは、アキュムレータの液冷媒量およびアキュムレータ外に存在する冷媒量に関係する。従って、飽和時間Timは、厳密には外気温Tamのみでなく、圧縮機11の回転数、蒸発器18の吸込み空気温度、送風機32の風量等にも関係するが、主として外気温Tamに関係するとして簡略化して演算している。また、第2実施形態においては、飽和時間Timを図3(b)および図3(c)のように運転モード(冷房またはそれ以外)でわけて外気温Tamの関数として制御マップで演算している。
そして、援用する図2のステップS05での差圧判定は、弁の前後圧力差(差圧)が所定の圧力より小さく音か実質しないと予想されるか否かで判断する。また、弁の差圧が所定の圧力より小さくない場合は、ステップS07で均圧中と判定し均圧中フラグを立てる(均圧中フラグ=1)。弁の前後圧力差が所定の圧力より小さければ、均圧終了とし、ステップS06で、弁を切替ることを許可し、弁(三方弁52、高圧弁15a)の弁作動を切替える(均圧中フラグ=0とする)。
従来は、所定の遅延時間後にて弁を切替えていたので、その設定遅延時間が短すぎると音が大きく、ユーザに故障したと不安感を与える。また、設定遅延時間が長すぎると、切替え後の冷房、暖房が効果を発揮するまでの時間が長くなるため、冷える、暖まるまで相当の時間がかかるという問題があった。しかし、この第2実施形態によれば、差圧の演算と演算された差圧の判定により、充分に音がしないと判断されれば、直ちに弁を切替えることができるため、騒音の解消と共に、冷えるまたは暖まるまでの時間短縮を行うことができる。なお、図3(a)の温度勾配は直線近似とせずに、n次関数や指数関数を用いた曲線近似としてもよい。
また、上述のように、運転切替えのために圧縮機11が停止する直前の低圧圧力の初期圧力(PREACM)を蒸発器18のフィン温度センサ42の値(蒸発器温度)からマップを用いて求めたが、暖房運転のときのように、高圧弁(開閉弁)15aが閉じて暖房用固定絞り14が流路を絞っているときには、室外熱交換器後流温度センサ43の温度T16から運転切替えのために圧縮機11が停止する直前の低圧圧力の初期圧力(PREACM)を推定する。この場合も、図4の冷媒の温度圧力変換マップを用いる。
上記第2実施形態においては、制御手段100は、低圧側の圧力を外気温検出手段101からの値Tamと、運転状態の切替えに伴う圧縮機11の停止からの経過時間Tiと、更に圧縮機11の停止時における初期の低圧圧力である初期圧力PREACMとに基づいて差圧を求める。
これによれば、外気温(Tam)から冷媒飽和圧力(PRETAM)と飽和に至るまでの時間である飽和時間(Tim)を求め、更に、圧縮機停止からの経過時間と、圧縮機の停止時における初期の低圧圧力である初期圧力に基づいて求めるから、更に正確に低圧側の圧力ひいては差圧を正確に求めることができ、切替弁が切替わるまでの時間を一層短くすることができ、冷房または暖房等の効果が遅滞なく発揮される。
また、初期圧力PREACMは、蒸発器18の温度から温度圧力変換して求める。従って、低圧圧力センサが無くても、蒸発器の温度から、温度圧力変換して初期圧力を求めることができる。
あるいは、上記のようにして初期圧力PREACMが求められない運転状態においては、初期圧力PREACMは、室外熱交換器16を通過した後の冷媒の温度である室外熱交換器後流温度T16から温度圧力変換して求める。従って、低圧圧力センサが無くても、室外熱交換器後流温度から温度圧力変換して初期圧力を求めることができる。
更に、制御手段100は、外気温検出手段101からの値Tamと運転状態の切替えに伴う圧縮機11の停止からの経過時間Tiと、更に圧縮機11の停止時における初期の低圧圧力である初期圧力PREACMとに基づいて、低圧圧力が初期圧力PREACMから経過時間Tiと共に立ち上がり外気温検出手段101からの値に基づく冷媒飽和圧力PRETAMにいたる状態を示す制御マップを形成している。そして、該制御マップに基づいて、低圧側の圧力を求め、更に高圧側の圧力と低圧側の圧力との差である差圧を求める。
これによれば、経過時間と共に立ち上がり外気温検出手段からの値に基づく冷媒飽和圧力にいたる状態を示す制御マップに基づいて差圧を求めるから、更に正確に任意の経過時間での差圧を正確に求めることができ、切替弁が切替わるまでの時間を一層短くすることができ、冷房または暖房等の効果が遅滞なく発揮される。
なお、図3(a)の制御マップを使用しなくても、経過時間Tiに比例して低圧圧力が初期圧力PREACMから上昇し、飽和時間に達したとき(Tim=Ti)、低圧圧力が外気温Tamに基づく飽和圧力になるとして、比例計算で低圧圧力を求めることもできる。
(他の実施形態)
上述の実施形態では、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。上記実施形態の構造は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内での全ての変更を含むものである。
(1)上述の実施形態では、少なくとも暖房モード時に、室外熱交換器16から流出した冷媒の全流量を圧縮機11の吸入口側(具体的には、アキュムレータ19の入口側)へ導く冷媒回路に切り替える冷媒回路切替え手段として、三方弁20を採用した例を説明したが、冷媒回路切替え手段はこれに限定されない。
例えば、室外熱交換器16から圧縮機11の吸入側へ至る冷媒通路および室外熱交換器16から室内蒸発器18の冷媒入口側へ至る冷媒通路の双方に、開閉弁15aと同様の構成の複数の開閉弁を配置し、いずれか一方を開き、他方を閉じるようにしてもよい。また、図5に示すように三方弁20を廃止して、四方弁20aを採用してもよい。この場合は、4つの冷媒流入出口のうちの1つを閉塞させて用いればよい。
(2)上述の実施形態では、冷房モード、暖房モードおよび除霜モード等の冷媒回路を切替え可能に構成されたヒートポンプサイクル10を説明したが、もちろん、ヒートポンプサイクル10は、除霜モード等の冷媒回路への切替え機能を有することなく、冷房モードおよび暖房モードの2つの冷媒回路を択一的に切替え可能に構成されていてもよい。
(3)上述の実施形態では、圧縮機11として電動圧縮機を採用した例を説明したが、圧縮機11の形式はこれに限定されない。例えば、ベルトおよび電磁クラッチ等を介してエンジンから駆動力を得る圧縮機11を採用してもよい。従って、本発明の車両用空調装置1の適用は電気自動車に限定されることなく、内燃機関(エンジン)および走行用電動モータの双方から走行用の駆動力を得て走行するハイブリッド車両や、内燃機関から走行用の駆動力を得て走行する通常の車両に適用することができる。
(4)上述の実施形態では、本発明のヒートポンプサイクル10を車両用空調装置1に適用した例を説明したが、本発明のヒートポンプサイクル10の適用はこれに限定されない。例えば、据え置き型の空調装置に適用してもよい。さらに、飲料水等を加熱あるいは冷却する給水器等に適用してもよい。この場合は、熱交換対象流体は飲料水となる。