以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明や各図において、同一要素または同一機能を有する要素には同一の符号を付して示し、重複する説明は省略する。
[給紙装置]
図1は、本発明の実施の形態に係る給紙装置の要部を示す斜視図であり、図2は、本発明の実施の形態に係る給紙装置の給紙方向に沿った断面図である。
本実施の形態に係る給紙装置10は、給紙トレイ11の上に積載された用紙P間に用紙端面からエアーを吹き付けることによって用紙Pを1枚ずつ分離しつつ給紙するエアー吹き付け方式の給紙装置である。以下に、エアー吹き付け方式の給紙装置10の具体的な構成について図1および図2を用いて説明する。
図1および図2において、用紙Pが積載された給紙トレイ11は、図示しない昇降機構によって昇降可能となっている。すなわち、用紙Pは給紙トレイ11上に昇降可能に収容されている。給紙トレイ11上に積載された用紙Pの側方には、側部規制部材12A,12Bが配置されている。側部規制部材12A,12Bは、用紙Pの幅方向(矢印Y方向)に移動自在に設けられており、給紙トレイ11上に積載された用紙Pの用紙幅に対応して、用紙Pの両側から軽く押圧することによって用紙Pの両側位置を規制する。
側部規制部材12A,12Bは、基本的に、同じ構成となっている。したがって、ここでは、側部規制部材12Aを例にとって、その構成について説明する。側部規制部材12Aは、頂部に段差があり、用紙Pの搬送方向(矢印X方向)における上流側の上面121が相対的に高く、下流側の上面122が相対的に低くなっている。
上流側の上面121には、図示しないが、側部規制部材12Aの上端を支持する支持部材が取り付けられる。下流側の上面122は、後述する吸着搬送部13と、用紙Pの搬送方向において重なっている。そして、給紙時に給紙トレイ11を図1の矢印Y方向に引き出したとき、下流側の上面122が吸着搬送部13の下を通過できるようにしている。
給紙トレイ11上に積載された用紙Pの搬送方向(矢印X方向)の先端側には先端規制部材14が配置され、後端側には後端規制部材15が配置されている。先端規制部材14は、用紙Pの搬送方向の先端位置を規制している。後端規制部材15は、用紙Pの搬送方向において移動自在になっており、用紙Pの後端側から軽く押圧することによって用紙Pの搬送方向の後端位置を規制している。
また、図2に示すように、後端規制部材15には、最上部の用紙Pの高さを検知する高さ検知センサ16が配置されている。
給紙トレイ11上に積載された用紙束の高さが、エアーの吹き付けおよび用紙Pの捌きを行うのに最適な高さを維持するために、後述する制御部30(図4参照)が、高さ検知センサ16の検知結果に基づいて、図示しない昇降モータを駆動しつつ、給紙トレイ11を上昇させる制御を行う。
用紙Pの搬送方向(矢印X方向)の先端部の近傍には、吸着搬送部13が配置されている。吸着搬送部13は、駆動源に接続する大ローラ131と、大ローラ131に対して所定の距離だけ離間して設けられた2個の小ローラ132A,132Bと、大ローラ131および小ローラ132A,132Bに巻回されて回動するループ状の吸着ベルト133とを有する。
吸着ベルト133には多数の小径の貫通孔134が穿設されている。ループ状の吸着ベルト133の内方には吸引装置135が配置されている。吸引装置135は、吸着ベルト133に穿設された貫通孔134を介して用紙Pを吸引する。すなわち、吸着搬送部13は、用紙Pを吸引装置135によって吸着ベルト133に吸着させつつ当該吸着ベルト133によって搬送し、図2に示す給紙ローラ17へと送る構成となっている。
吸引装置135は、用紙Pの搬送方向(矢印X方向)に沿って2つの吸引ダクト135A,135Bに分割されており、吸引ダクト135Aのみで用紙Pを吸引する場合と、吸引ダクト135A,135Bの双方で用紙Pを吸引する場合とに切り換え可能な構成となっている。
給紙トレイ11上に積載された用紙Pの給紙先側の近傍には、先端送風部18が配置されている。先端送風部18は、送風ファン181やエアーダクト182等によって構成され、給紙装置本体19に固定されている。先端送風部18は、送風ファン181から上向きに吹き付けられるエアーを、エアーダクト182によって向きを変えつつ、積載された用紙Pの上部の先端部端面に吹き付ける。
先端送風部18は、後述する制御部30(図4参照)により、用紙Pの種類に応じて駆動が制御される。より具体的には、制御部30による制御の下に、OHPフィルム、トレース用紙、表面が平滑な塗工紙、ミシン目や筋押し等の加工が施された用紙、打ち粉が塗布されているオフセット印刷済みの用紙など、用紙Pの種類に応じて送風ファン181から送風されるエアーの風量が制御される。先端送風部18の詳細については後述する。
さらに、給紙トレイ11上に積載された用紙Pの両側面側には、側方送風部20A,20Bが配置されている。側方送風部20A,20Bは、用紙Pの搬送方向(矢印X方向)に直交する方向の両側方から、積載された用紙Pの束の上部に用紙端面からエアーを吹き付ける。
より具体的には、側方送風部20A,20Bは、送風ファン201と、当該送風ファン201から送風されるエアーを用紙Pの上部に吹き付ける送風口202とを有する。送風口202は、側部規制部材12A,12Bの下流側の上面122にあって、用紙Pの搬送方向において吸着搬送部13と少なくとも一部が重なるように配置されている。すなわち、図2に示すように、送風口202の先端側の部分は、吸着ベルト133の下に位置している。
側方送風部20A,20Bは、側部規制部材12A,12B内に設けられている。したがって、用紙Pのサイズが変更された場合でも、側部規制部材12A,12Bを移動することによって、側方送風部20A,20Bも一緒に移動できることになる。なお、本例では、側方送風部20A,20Bを用紙Pの両側に設ける構成を採っているが、片側だけに側方送風部20A/20Bを設ける構成を採るようにしてもよい。
側方送風部20A,20Bにおいて、送風ファン201が駆動され、送風口202から吸着搬送部13の下部にエアーが吹き出されるとともに、積載された用紙Pの上部のある数枚にエアーが吹き付けられる。エアーは用紙Pの一方の端部から用紙間を通り抜けて他方の端部に向けて吹き付けられる。このエアーの吹き付けによって用紙Pが捌かれ、上部数枚が1枚ずつに分離される。吸着搬送部13は、こうして分離された用紙Pから一番上の用紙Pだけを吸着する。
側方送風部20A,20Bの吸気口は、開閉自在な遮蔽部材203によって選択的に遮蔽可能となっている。より具体的には、板状のシャッタからなる遮蔽部材203は軸204により回動可能に軸支され、ソレノイド205による駆動によって開閉される。後述する制御部30は、遮蔽部材203の開閉を制御して側方送風部20A,20Bによるエアーの吹き付けを、オン(吹き付け)とオフ(停止)とに切り換える。
図2において、吸着ベルト133の吸着面の近傍には、吸着検知センサ21が配置されている。吸着検知センサ21は、用紙Pが吸着ベルト133に吸着されたことを検知する。吸着検知センサ21の検知結果を受けて、後述する制御部30による制御の下に、吸着ベルト133は回動を開始し、用紙Pを搬送し始める。
また、吸着ベルト133の搬送方向における下流側の近傍には、フィードセンサ22が配置されている。フィードセンサ22は、吸着ベルト133によって搬送される用紙Pの通過を検知する。吸着ベルト133が用紙Pを吸引しながら回動を続けると、用紙束の最上層の用紙Pが図示の矢印Xの方向に進み、給紙ローラ17にニップされ、給紙先へ送り出される。
図3は、先端送風部18の詳細についての説明図である。先述したように、先端送風部18は、送風ファン181やエアーダクト182等によって構成され、送風ファン181から送風されたエアーを、エアーダクト182を通して、積載された用紙束の上部の先端部に吹き付ける。
エアーダクト182の出口には、用紙先端シャッタ183が設けられている。用紙先端シャッタ183は、後述する制御部30による制御の下に、ソレノイド184によって駆動されることにより、エアーダクト182から吹き付けるエアーの吹き付け角度を制御する。
より具体的には、ソレノイド184がオフのときは、用紙先端シャッタ183は、実線で示す吹き付け角度をとり、エアーを用紙Pの上方に吹き付けることによって最上層の用紙Pを分離する。ソレノイド184がオンのときは、用紙先端シャッタ183は、破線で示す吹き付け角度をとり、先端側の用紙端面から用紙Pにエアーを吹き付けることによって用紙Pの束の上部を浮上させる。
上記構成の給紙装置10は、給紙トレイ11上に積載された用紙P間に用紙端面から、送風部としての先端送風部18および側方送風部20A,20Bからエアーを吹き付けることによって用紙Pを捌いて1枚ずつ分離しつつ給紙するエアー吹き付け方式の給紙装置である。ここで、用紙Pを捌いて1枚ずつ分離するに当たっては、一例として、先端送風部18を主の送風手段、側方送風部20A,20Bを副(補助)の送風手段という位置付けで用いるようにすることができる。
このエアー吹き付け方式の給紙装置10において、本実施の形態では、エアーが吹き付けられる用紙Pの近傍の音量を測定し、その測定した音量に基づいて、用紙Pに吹き付けるエアーの風量を制御するようにしている。このとき、エアーの風量制御の対象となる送風部としては、主の送風手段となる先端送風部18単独であってもよいし、先端送風部18および側方送風部20A,20Bの双方であってもよい。
以下では、先端送風部18をエアーの風量制御の対象となる送風手段とする場合を例に挙げて説明する。
図2および図3に示すように、先端送風部18からエアーが吹き付けられる用紙Pの近傍に、当該近傍の音量を測定する測定部として音量検知センサ23が設けられている。音量検知センサ23としては、周知のマイクロホン、例えば単一指向性のマイクロホン、好ましくは、より指向特性が鋭い狭指向性、鋭指向性あるいは超指向性のマイクロホンを例示することができる。
前にも述べたように、エアー吹き付け方式の給紙装置10においては、例えば先端送風部18からエアーを送風し、給紙トレイ11上に積載された用紙P間に用紙端面からエアーを吹き付けると、風切り音や用紙のばたつき音が発生する場合がある。音量検知センサ23は、エアーが吹き付けられる用紙Pの近傍の音量、換言すれば、風切り音や用紙のばたつき音そのものの音量を検知(測定)することになる。
この音量検知センサ23が測定した風切り音や用紙のばたつき音の音量そのものに基づいて、用紙Pに吹き付けるエアーの風量の制御が行われる訳であるが、当該風量の制御は図4に示す制御部(制御手段)30による制御の下に実行される。
図4は、本実施の形態に係る給紙装置10の制御系の構成例を示すブロック図である。図4において、制御部30は、例えばマイクロコンピュータによって構成することができる。ただし、制御部30については、マイクロコンピュータからなる構成に限られるものではなく、ハードウェアからなる構成とすることも可能である。
制御部30には、情報提供部40から、給紙開始の情報および用紙Pのサイズや種類などの情報(データ)が入力される。用紙Pのサイズとしては、A4サイズ、B5サイズ、B4サイズ、A3サイズなどを例示することができる。用紙Pの種類としては、普通紙、上質紙、表面が平滑な塗工紙、OHPフィルム、トレース用紙、厚手紙、光沢紙などを例示することができる。情報提供部40は、用紙Pのサイズや種類を自動的に判別するセンサや、ユーザが任意に指定操作する操作部などからなる。
制御部30は、先述した高さ検知センサ16、吸着検知センサ21およびフィードセンサ22に対してon/off制御を行う。そして、高さ検知センサ16、吸着検知センサ21およびフィードセンサ22からこれらセンサ16,21,22が検知したオン/オフ情報が、制御部30に入力される。また、音量検知センサ23から当該センサ23が測定した音量情報が制御部30に入力される。制御部30は、これらの入力情報に基づいて、先述した吸着搬送部13、先端送風部18および側方送風部20A,20B等の制御を行う。
具体的には、前にも述べたように、制御部30は、高さ検知センサ16が検知したオン/オフ情報に基づいて、図示しない昇降モータを駆動しつつ、給紙トレイ11を上昇させる制御を行う。また、制御部30は、吸着検知センサ21が検知したオン/オフ情報に基づいて、吸着搬送部13を駆動し、用紙Pの搬送を開始する制御を行う。また、制御部30は、フィードセンサ22が検知したオン/オフ情報に基づいて、吸着搬送部13による用紙Pの搬送を停止する制御を行う。
また、制御部30は、情報提供部40から与えられる用紙Pの種類の情報に基づいて、先端送風部18や側方送風部20A,20Bから送風されるエアーの風量の制御を行う。制御部30はさらに、音量検知センサ23が測定した、風切り音や用紙のばたつき音の音量に基づいて、例えば先端送風部18から送風されるエアーの風量の制御を行う。この風切り音や用紙のばたつき音の音量に基づく風量の制御は、本実施の形態の特徴とするところであり、その詳細については後述する。
次に、制御部30による制御の下に実行される給紙装置10の動作の一例について、図5のタイミングチャートに基づいて説明する。
給紙トレイ11内に用紙束がセットされ、ユーザによるプリントスタートボタンのオンにより、給紙開始情報が制御部30に入力される。すると、制御部30は時刻t1で、側方送風部20A,20Bの送風ファン201をオン状態にするとともに、先端送風部18の送風ファン181および用紙先端シャッタ183用のソレノイド184をオン状態にする。これにより、送風ファン201および送風ファン181が送風を開始するとともに、送風ファン181から送風されるエアーが浮上モードとなる。この浮上モードでは、エアーが用紙端面(先端)から用紙Pに吹き付けることによって用紙束の上部の数枚が吹き上げられる。
次に、制御部30は時刻t2で、用紙先端シャッタ183用のソレノイド184をオフ状態にすると同時に、側方送風部20A,20Bの遮蔽部材203用のソレノイド205および吸着検知センサ21をオン状態にする。用紙先端シャッタ183用のソレノイド184がオフすることで、送風ファン181から送風されるエアーが浮上モードから、エアーを用紙束の上部を上方に吹き付ける分離モードに切り替わる。
また、側方送風部20A,20Bの遮蔽部材203用のソレノイド205がオンすることで、側方送風部20A,20Bの吸気口が遮蔽部材203によって遮蔽されるため、側方送風部20A,20Bからのエアーの送風が停止される。そして、分離モードに入ることによって用紙束の最上部の用紙Pが分離され、この分離された用紙Pを吸着搬送部13の吸着ベルト133が吸着する。このとき、制御部30は、吸引装置135に対して、用紙Pの大きさに応じて吸引ダクト135Aのみか、吸引ダクト135A,135Bの双方のいずれかで吸引するかの制御を行う。
次に、時刻t3で吸着ベルト133が用紙Pを吸着したことを吸着検知センサ21が検知すると、当該吸着検知センサ21の検知結果を受けて制御部30は、吸着搬送部13における図示しない給紙クラッチをオン状態にする。そして、給紙クラッチがオンすることで、吸着ベルト133による用紙Pの搬送、即ち給紙が開始される。
次に、時刻t4でフィードセンサ22が吸着ベルト133によって搬送される用紙Pの通過を検知し、当該フィードセンサ22の検知結果を受けて制御部30は時刻t5で給紙クラッチをオフ状態にする。これにより、吸着ベルト133による1枚目の用紙Pの搬送が終了する。この1枚目の用紙Pは、給紙ローラ17によって給紙先に給紙される。
次に、制御部30は、2枚目の用紙の給紙Pを行うべく時刻t6で給紙クラッチをオン状態にする。次いで、制御部30は時刻t7で、用紙先端シャッタ183用のソレノイド184をオン状態にすると同時に、側方送風部20A,20Bの遮蔽部材203用のソレノイド205および吸着検知センサ21をオフ状態にする。
用紙先端シャッタ183用のソレノイド184をオンすることで、先端送風部18から送風されるエアーが浮上モードとなる。また、側方送風部20A,20Bの遮蔽部材203用のソレノイド205がオフすることで、側方送風部20A,20Bからエアーの送風が行われる。
そして、先端送風部18および側方送風部20A,20Bからのエアーの送風により、用紙束の上部の数枚が吹き上げられる。この浮上モードにおいて、制御部30は時刻t8で、給紙クラッチをオフ状態にする。ここで給紙クラッチをオフ状態にするのは、用紙Pの重走(ダブルフィード)を防止するためである。
次に、制御部30は時刻t9で、用紙先端シャッタ183用のソレノイド184をオフ状態にすると同時に、側方送風部20A,20Bの遮蔽部材203用のソレノイド205および吸着検知センサ21をオン状態にする。用紙先端シャッタ183用のソレノイド184がオフすることで、送風ファン181から送風されるエアーが浮上モードから、エアーを用紙束の上部を上方に吹き付ける分離モードに切り替わる。
また、側方送風部20A,20Bの遮蔽部材203用のソレノイド205がオンすることで、側方送風部20A,20Bの吸気口が遮蔽部材203によって遮蔽されるため、側方送風部20A,20Bからのエアーの送風が停止される。そして、分離モードに入ることによって用紙束の最上部の用紙P、即ち、2枚目の用紙Pが分離され、この分離された用紙Pを吸着搬送部13の吸着ベルト133が吸着する。
次に、時刻t9で吸着ベルト133が用紙Pを吸着したことを吸着検知センサ21が検知すると、当該吸着検知センサ21の検知結果を受けて制御部30は、給紙クラッチをオン状態にする。そして、給紙クラッチがオンすることで、吸着ベルト133による2枚目の用紙Pの搬送が開始される。
次に、時刻t11でフィードセンサ22が吸着ベルト133によって搬送される2枚目の用紙Pの通過を検知し、当該フィードセンサ22の検知結果を受けて制御部30は時刻t12で給紙クラッチをオフ状態にする。これにより、吸着ベルト133による2枚目の用紙Pの搬送が終了する。この2枚目の用紙Pは、給紙ローラ17によって1枚目の用紙Pに続いて給紙先に給紙される。
3枚目以降の用紙Pについても、上述した一連の動作と同様の動作によって給紙が行われる。なお、上述した一連の動作のタイミングは標準的なタイミングであり、用紙Pのサイズや用紙Pの種類(紙質)に応じて最適なタイミングを求めて記憶部50に記憶しておき、制御部30は記憶部50の記憶内容に基づいて最適な動作の制御を行うようにすることが望ましい。
先端送風部18の送風ファン181および側方送風部20A,20Bの送風ファン201は、制御部30による制御の下にファンの回転数を制御する回転制御が可能であり、用紙Pのサイズ、紙質、坪量等で風量を制御し、最適な風量を吹き付けることができるようになっている。そして、ある特定の用紙とそれに最適な風量等の情報は、一連の動作のタイミングと同様に記憶部50に記憶されている。因みに、給紙トレイ11内に収容された用紙Pのサイズや紙質等は操作部で入力することで記憶させることができる。このようにすることで、制御部30は、常に紙質に合ったエアーの吹き付けができる設定が可能となる。
次に、本実施の形態の特徴とするところの、例えば先端送風部18についての風切り音や用紙のばたつき音の音量に基づくエアーの風量の制御手順の詳細について、図6のフローチャートを用いて説明する。この制御の一連の処理は、制御部30による制御の下に実行される。
先ず、制御部30は、記憶部50にあらかじめ記憶されている設定値を読み込む処理を行う(ステップS1)。設定値としては、先端送風部18の送風ファン181および側方送風部20A,20Bの送風ファン201から、用紙Pを捌くために送風される捌きエアーの風量の初期値A0が記憶されている。この捌きエアーの風量の初期値A0は、用紙Pの種類(紙種)や坪量などに対応して設定される風量テーブルとして記憶部50に記憶されている。
捌きエアーの風量テーブルの一例を図7に示す。図7には、用紙の長さ(送り方向の長さ)に対応する風量テーブルを示している。ここでは、用紙の長さが160mm未満の場合、160mm以上B5(182mm)以下の場合、B5(182mm)より長く、A4S(297mm)以下の場合の3種類の風量テーブル(A),(B),(C)を例に挙げて示している。
また、3種類の風量テーブル(A),(B),(C)には、用紙の種類および坪量に対応する先端送風部18の風量(先端風量)および側方送風部20A,20Bの風量(サイド風量)を示している。なお、ここでは、用紙の種類として、塗工紙、追い刷り紙、上質紙/普通紙、書籍用紙/ラフ紙の4種類を例に挙げている。ただし、用紙の種類としては、これら4種類に限られるものではない。また、図7に示す、坪量の数値および風量の数値は一例にすぎず、これらの数値に限られるものではない。
設定値としてはさらに、設定可能最低値(エアー捌き設定下限値)AL、最大音量設定値S01および最小音量設定値S02が記憶部50に記憶されている。ここで、設定可能最低値ALは、用紙Pの束の捌きが可能となる最低限の捌きエアーの風量の値である。また、最大音量設定値S01は、給紙装置から発せられる音量として許容可能な最大値であり、最小音量設定値S02は、給紙装置から発せられる音量として許容可能な最小値である。
設定値の読み込みが終わったら、次に制御部30は、現風量(現在の風量)A1として捌きエアーの初期値A0を設定し(ステップS2)、次いで、用紙Pのエアーによる捌き時であるか否かを判断する(ステップS3)。用紙Pの捌き時であるか否かは、先述した動作タイミングから判断可能である。
用紙Pの捌き時であると判断した場合、制御部30は、音量検知センサ23によってエアーが吹き付けられる用紙Pの近傍の音量を収集し(ステップS4)、次いで、収集音量S00が最大音量設定値S01を超えるか否かを判断する(ステップS5)。そして、収集音量S00が最大音量設定値S01を超えると判断した場合、制御部30は次に、ステップS2で捌きエアーの初期値A0に設定された現風量A1が設定可能最低値ALを超えるか否かを判断する(ステップS6)。
ここで、現風量A1が設定可能最低値ALを超えると判断した場合、制御部30は、現風量A1を減らす処理を行う(ステップS7)。この現風量A1を減らす処理において、減らす量は、固定ステップ(固定値で段階的に減らす)でも可能であるが、S00−S01の値に応じて可変とするのが好ましい。ただし、常にA1≧ALの条件を満足する必要がある。
現風量A1を減じる処理を行った後、制御部30は、あらかじめ定められた一定時間が経過するまで待機する(ステップS8)。ここで定められる一定時間は、現風量A1を調整(変更)してから、給紙トレイ11内の風量や用紙Pの姿勢が安定するまでに要するであろうと一般的に判断される時間である。したがって、ステップS8では、現風量A1を減じる処理を行った後、風量や用紙Pの姿勢が安定するまで待機することになる。そして、一定時間待機した後、制御部30はステップS3に処理を戻す。
一方、ステップS5での判断結果が、収集音量S00が最大音量設定値S01以下であれば、制御部30は、収集音量S00が最小音量設定値S02を下回るか否かを判断する(ステップS9)。そして、収集音量S00が最小音量設定値S02を下回ると判断した場合、制御部30は、現風量A1を増やす処理を行う(ステップS10)。この現風量A1を増やす処理において、増やす量は、固定ステップ(固定値で段階的に増やす)でも可能であるが、S02−S00の値に応じて可変とするのが好ましい。
現風量A1を増やす処理を行った後、制御部30は、ステップS8に処理を移行する。すなわち、現風量A1を増やす処理を行った後、風量や用紙Pの姿勢が安定するまで待機する。
また、ステップS3での判断結果が用紙Pの捌き時でない場合、制御部30は、給紙トレイ11の挿抜があったか否かを判断する(ステップS11)。給紙トレイ11の挿抜については、図示しない挿抜検知スイッチの検知結果から判断可能である。制御部30は、給紙トレイ11の挿抜無しの場合はステップS3に処理を戻し、給紙トレイ11の挿抜有りの場合はステップS1に処理を戻す。ステップS1に処理を戻すことで、調整(変更)した風量を元の値に戻す制御が行われる。
また、ステップS6での判断結果が、現風量A1が設定可能最低値AL以下である場合には、制御部30は、ステップS11で給紙トレイ11の挿抜があったと判断するまでA1=ALとし(ステップS12)、上述した一連の処理を終了する。
ところで、通常、捌きエアーの初期値A0については、本給紙装置10が設置される環境や、使用する用紙Pの種類等の条件において最も捌き性能の高い値に設定することになる。しかしながら、使用する用紙Pの紙質のバラツキ等により、捌きエアーの初期値A0は常に最適な値ということはできない。そこで、捌き風量(捌きエアーの風量)と捌き性能との関係を概念的に示す図8において、実線で示す初期値A0に対して、実際に使用する用紙Pの紙質等に合わせて、破線で示すようにシステムエンジニア/サービスエンジニアやユーザが風量の設定値を調整することになる(調整後の風量をA1とする)。
また、捌き風量に対する風切り音や用紙のばたつき音の音量は、用紙Pの種類や本給紙装置10が設置される環境だけでなく、その時々のわずかな状態の違いで変化する。そのため、取り得る音量の幅を適切な範囲にすることが難しく、従来は、設定の初期値A0で音が大きいとのクレームがユーザからあった場合は、捌き風量を小さくするなど個別の対応でしか対処できなかった(変更後の風量をA1とする)。
これに対して、本実施の形態に係る給紙装置10では、用紙端面からの捌きエアーの吹き付けに起因して発生する風切り音や用紙のばたつき音の音量を測定し、その音量に基づいて捌きエアーの風量を自動的に制御するようにしているため、上記の問題を解決することができる。捌き風量と音量との関係を概念的に示す図9から明らかなように、最大音量設定値S01との比較による自動制御下では、クレームがあったときには最大音量設定値S01を小さく再設定することにより、最大の音量を規制することができる。
ここで、エアーの吹き付けによる用紙Pの捌きとしての最低限確保すべき性能があることから、設定可能最低値(エアー捌き下限値)ALを設定することになる。また、いくら設定可能最低値ALを捌き基準で設定していても、ユーザ先でさらなる静音化が要求される場合もある。そのときは、自動設定の可能な最低値ALをシステムエンジニア/サービスエンジニアが変更することも可能とする構成を採るのが好ましい。
最大音量設定値S01は、捌きエアーの吹き付けに起因して発生する風切り音や用紙のばたつき音がユーザにとって大きいか否かについて自動制御を行う指標としてあらかじめ設定される。最大音量設定値S01は、捌き性能と音量との適度なバランスが取れた値とするのがよい。そして、機械の動作音などを判断材料として最大音量設定値S01の値を設定することになる。
また、最大音量設定値S01については、本給紙装置10が設置される環境により、元の設定値を変更可能な構成とするのがよい。さらに、用紙Pの捌きが行われていないときに音量検知センサ23で収集した音量を基に最大音量設定値S01を設定するようにすればなおよい。
以上説明したように、本実施の形態に係る給紙装置10によれば、捌きエアーの吹き付けに起因して発生する風切り音や用紙のばたつき音の音量そのものを検知して捌きエアーの風量の制御に反映させるようにしているため、風切り音や用紙のばたつき音をより確実に抑制することが可能となる。
その結果、用紙の捌き部分での不快な騒音を低減できるために、給紙装置10としての静粛性の向上、それに伴う給紙性能の向上を図ることができる。また、風切り音や用紙のばたつき音の音量そのものを検知しての自動制御であるために、未知の用紙への対応が可能となる。さらに、マイクロホンなどの安価な測定手段(音量検知センサ23)で風切り音や用紙のばたつき音の音量を測定できるために、エアー捌き状態を安価な構成にて検知できる。
[変形例]
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形、改変が可能である。
例えば、上記の実施の形態では、音量検知センサ23で測定した音量に基づいて、先端送風部18から送風される捌きエアーの風量の制御を行う場合を例に挙げて説明したが、側方送風部20A,20Bから送風される捌きエアーについても同様に風量制御を行う構成とすることができる。
また、上記の実施の形態では、捌きエアーの風量があらかじめ設定されている用紙に対する制御の場合について説明したが、捌きエアーの風量が未設定の用紙については、音量の増大が風量の過大を示す比例関係にあることから、音量によりエアー風量を設定する調整モードを設ける構成とすることもできる。
調整モードでは、実際の捌きの音量に基づいてエアー風量を設定する制御が行われることになる。この調整モードを活用することにより、給紙トレイ11に積載された用紙捌きエアーの風量を最適に設定するのに応用することができる。また、この場合、通紙しない状態でエアー吸着やエアー捌きを行うモードとすると、所謂ヤレ紙(損紙)が発生せず、無駄を省くことができる。
あるいは、調整モードでは、音量検知センサ23の出力信号の周波数や振幅の解析により音質の変化を検知し、音質の変化したときは捌きエアーの風量を大きくすることを停止する制御を行うようにすることもできる。
また、上記の実施の形態では、最大音量設定値S01および最小音量設定値S02をあらかじめ設定しておくとしたが、エアー捌き時以外の音量を測定し、この測定した音量を基に最大音量設定値S01および最小音量設定値S02を設定する構成とすることもできる。さらに、風量の設定可能最低値ALについては、本給紙装置10の設置環境を鑑みて変更可能な構成とすることもできる。
また、上記の実施の形態では、音量検知センサ23が検知した音をそのまま風切り音や用紙のばたつき音であるとして捌きエアーの風量制御を行うとしたが、音量検知センサ23が検知した音の波形を解析し、その解析結果から風切り音や用紙のばたつき音であることを判別する構成とすることもできる。さらに、音の検知や比較するタイミングを制御することにより、エアー捌き時以外では風量制御を行わないようにするマスク処理等も可能となる。
[画像形成装置]
上述した本実施の形態に係る給紙装置10は、画像形成装置へ用紙を供給する給紙装置として用いて好適なものである。本実施の形態に係る給紙装置10を用いる画像形成装置として、複写機、プリンタ装置、ファクシミリ装置、印刷機、複合機等を例示することができる。以下に、本実施の形態に係る給紙装置10を用いる画像形成装置(本発明の画像形成装置)が例えば複写機の場合を例に挙げて説明する。
図10は、本実施の形態に係る給紙装置10を用いる画像形成装置の一例を示す全体構成図である。図10に示すように、本例に係る画像形成装置100は、画像形成装置本体200、画像読取装置300、自動原稿送り装置400、および給紙装置500を有する構成となっている。
画像形成装置本体200は、画像形成部210、定着部220および用紙搬送部230を有する。この画像形成装置本体200において、画像形成部210は、感光体211、帯電部212、露光部213、現像部214、転写部215、およびクリーニング部216等から構成されている。
感光体211は、像担持体であり、図示しない駆動源による駆動によって回転する。帯電部212は、感光体211に電荷を与えることによって当該感光体211の表面を一様に帯電する。露光部213は、原稿dから読み取られた画像データ等に基づいて、感光体211の表面に対して露光を行うことにより、感光体211上に静電潜像を形成する。
現像部214は、トナーとキャリアからなる2成分現像剤を用いて、感光体211上に形成された静電潜像を現像してトナー像とする。転写部215は、感光体211上のトナー像を、用紙搬送部230によって搬送される用紙Pに転写する。クリーニング部216は、感光体211上の残留しているトナーを除去する、即ち、感光体211の表面をクリーニングする。
用紙搬送部230は、給紙カセット231、第1給紙部232、第2給紙部233、排紙部234、搬送路切換部235、循環再給紙部236、および反転排紙部237から構成されている。
自動原稿送り装置400の原稿台上に載置された原稿dは、給紙部410によって画像読取装置300へ搬送される。画像読取装置300へ搬送された原稿dは、その片面又は両面の画像が光学系により露光され、イメージセンサ420によって読み取られる。イメージセンサ420により光電変換されたアナログ信号は、画像処理部430において、アナログ処理、A/D変換処理、シェーデインク補正処理、画像圧縮処理等の各種の処理が行われる。そして、各種の信号処理が行われた画像信号は、画像処理部430から露光装置213に送られる。
画像形成部210においては、感光体211の表面が帯電部212により帯電され、露光部213からのレーザ光の照射により静電潜像が形成され、現像部214により静電潜像が顕像化されてトナー像となる。次いで、給紙カセット231に収容された用紙Pが第1給紙部232によって搬送される。用紙Pは、レジストローラから成る第2給紙部233でトナー像との同期がとられて搬送される。その後、用紙Pは、転写部215でトナー像が転写され、しかる後定着部220により定着される。
定着後の用紙Pは、排紙部234によって画像形成装置本体200外に排出される。一方、クリーニング部216により感光体211上の転写残りのトナーの除去処理が行われる。なお、両面コピーの場合は、第1面に画像形成された用紙Pは、循環再給紙部236に送り込まれて反転され、再び画像形成部210において第2面に画像形成後、排紙部234によって画像形成装置本体200外に排出される。反転排紙の場合は、通常の排紙通路から分岐した用紙Pは、反転排紙部237においてスイッチバックして表裏反転された後、排紙部234によって画像形成装置本体200外に排出される。
給紙装置500は、画像形成装置本体200に接続されており、当該画像形成装置本体200に対してエアーの吹き付けによって用紙Pを1枚ずつ分離しつつ給紙するエアー吹き付け方式の給紙装置である。
本例に係る給紙装置500は、例えば3つの給紙トレイ510を有する3段の給紙部500A,500B,500Cからなり、大量の用紙Pを収容可能な大容量の給紙装置である。3段の給紙部500A,500B,500Cは、基本的に、同じ構成となっている。したがって、ここでは、最上段の給紙部500Aの構成の概略について説明する。
給紙部500Aは、給紙トレイ510の他、先端送風部520、側方送風部530、吸着搬送部540、先端規制部材550、後端規制部材560、およびガイドレール570等を有する構成となっている。そして、給紙トレイ31は、ガイドレール570により給紙装置500から引き出し可能に構成されている。
上記構成の画像形成装置100において、給紙装置500、より具体的には給紙装置500の各給紙部500A,500B,500Cとして、先述した実施の形態に係る給紙装置10を用いることができる。図10と図1および図2との主な構成要素の対応関係において、先端送風部520が先端送風部18に対応し、側方送風部530が側方送風部20A,20Bに対応し、吸着搬送部540が吸着搬送部13に対応することになる。
このように、給紙装置を備える複写機など画像形成装置100において、給紙装置として先述した実施の形態に係る給紙装置10を用いることで、当該給紙装置10がエアー捌きに起因する風切り音や用紙のばたつき音をより確実に抑制可能であるため、画像形成装置100としての静粛性の向上を図ることができる。
なお、ここでは、先述した実施の形態に係る給紙装置10を用いる画像形成装置100として複写機を例に挙げたが、この適用例に限られるものではない。すなわち、プリンタ装置、ファクシミリ装置、印刷機、複合機など、エアー吹き付け方式の給紙装置を備える画像形成装置全般に対して適用可能である。