JP5931465B2 - グロメットの取付構造 - Google Patents

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Description

本発明は、グロメットの取付構造に関し、特に、自動車等に設けられたパネルに装着されるグロメットの取付構造に関する。
従来から、自動車等の車両におけるエンジンルーム側の室外と室内側との隔壁をなすパネル(被取付体)に、複数本の電線からなるワイヤハーネスを挿通させる場合、パネルに形成されるパネル孔(開口部)にグロメットを介してワイヤハーネスを挿通させることによって、室外と室内とのシール性能(防水性能)が維持されている。
一般的に、この種のグロメットは、テープで結束された複数本のワイヤハーネスを覆う小径筒部と、小径筒部の先端に設けられてパネル孔の縁部を覆うようにパネルに密着する大径筒部とを備えている。そして、テープで結束された複数本のワイヤハーネスの一部を小径筒部とともに締付金具で締め付け、小径筒部内におけるワイヤハーネスの電線群の間に液状硬化性の止水剤が充填されている(例えば、特許文献1参照)。これにより、グロメット内に水分が進入し難くなり、確実にシール性能を向上させることができる。
特開平10−243533号公報
しなしながら、上述した従来のグロメットでは、シール性能を向上させるために、小径筒部の内部に止水剤を充填する必要があるため、止水剤の充填作業が煩雑であった。このため、生産性向上が難しく、製造コストの増大を招くという問題があった。
そこで、本発明は、製造コストを低減させつつ、シール性能を向上させることができるグロメットの取付構造の提供を目的とする。
上述した課題を解決するため、本発明は、次のような特徴を有している。まず、本発明の第1の特徴は、室外と室内側との隔壁をなす被取付体(パネル20)の開口部(パネル孔21)に挿通されるワイヤハーネス(ワイヤハーネスW)を覆う小径筒部(小径筒部110)と、前記小径筒部の端部に設けられて前記開口部の縁部を覆うように前記被取付体に密着する大径筒部(大径筒部120)とを備えるグロメットの取付構造(グロメット100の取付構造)であって、前記グロメットが前記被取付体に取り付けられている際、前記小径筒部が前記室内側に配置され、前記ワイヤハーネス及び前記小径筒部が上方に向けて傾斜し、前記大径筒部における前記小径筒部と逆側には、前記車外に配置され前記ワイヤハーネスの外周を覆う被覆部が設けられ、前記被覆部が下方に向けて傾斜する要旨とする。
かかる特徴によれば、グロメットが被取付体に取り付けられている際、小径筒部が室内側に配置され、ワイヤハーネス及び小径筒部が上方に向けて傾斜する。これにより、ワイヤハーネス及び小径筒部が水平な状態である場合と比較して、グロメット内に水分が進入し難くなり、シール性能を向上させることができる。この結果、シール性能を向上させるために、従来のような止水剤を用いることないため、生産性向上を実現でき、製造コストを低減させることができる。
本発明の第2の特徴は、本発明の第1の特徴に係るグロメットの取付構造であって、前記ワイヤハーネスは、複数設けられており、複数の前記ワイヤハーネスは、少なくとも前記グロメット内において非結束状態であることを要旨とする。
かかる特徴によれば、複数のワイヤハーネスは、少なくともグロメット内において非結束状態である。つまり、複数のワイヤハーネスは、少なくとも前記グロメット内においてそれぞれ独立している。これにより、それぞれのワイヤハーネス同士をテープ等によって結束させる必要がなくなり、製造コストをより低減させることができる。加えて、グロメット内において複数のワイヤハーネスが広がる(ばらける)ため、毛細管現象による水分の進入をも抑制することができる。
本発明の第3の特徴は、本発明の第1又は第2の特徴に係るグロメットであって、前記被取付体に接した前記大径筒部の中心から前記小径筒部先端の中心までを結ぶ仮想線(仮想線IL)と水平線(水平線HL)との角度(グロメット角度θ)は、15〜65度であることを要旨とする。
かかる特徴によれば、仮想線と水平線との角度は、15〜65度である。これにより、グロメット100内を水分がより進入し難くなり、シール性能を確実に向上させることができる。
本発明の特徴によれば、製造コストを低減させつつ、シール性能を向上させることができるグロメットの取付構造を提供することができる。
図1は、本実施形態に係るグロメット100が装着される車両1を示す模式図である。 図2は、本実施形態に係るグロメット100が車両1に取り付けられた状態を示す断面図である。 図3(a)は、本実施形態に係るグロメット100を示す正面図であり、図3(b)は、本実施形態に係るグロメット100を示す長手方向断面図である。 図4は、グロメット100の高さ(H)[縦軸]とグロメット角度θ[横軸]との関係を示すグラフである。
次に、本発明に係るグロメットの取付構造の実施形態について、図面を参照しながら説明する。具体的には、(1)車両の概略構成、(2)グロメットの構成、(3)グロメットの取付構造、(4)評価結果、(5)作用・効果、(6)その他の実施形態について説明する。
なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
(1)車両の概略構成
まず、本実施形態に係るグロメット100が装着される車両1の概略構成について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係るグロメット100が装着される車両1を示す模式図である。図2は、本実施形態に係るグロメット100が車両1に取り付けられた状態を示す断面図である。
図1及び図2に示すように、車両1では、カウルパネル10から下方に向かって延びるパネル20(被取付体)によって、エンジンルーム側の室外と室内側とが仕切られている。つまり、パネル20は、車両1におけるエンジンルーム側の室外と室内側との隔壁をなしている。パネル20には、パネル20を貫通するパネル孔21(図2参照)が形成されており、パネル孔21には、グロメット100を介して複数本の電線(不図示)からなる複数のワイヤハーネスWが挿通されている。
図2に示すように、複数のワイヤハーネスWは、少なくともグロメット100内において非結束状態であり、それぞれ独立している。なお、複数のワイヤハーネスWは、グロメット100内において非結束状態であればよく、例えば、グロメット100外においてテープや締付金具等によって結束されていてもよい。
ここで、本実施形態では、パネル20は、水平線HLに対する直交線CLに対して傾斜した状態で設けられている(図1参照)。
(2)グロメットの構成
次に、上述したグロメット100の構成について、図2及び図3を参照しながら説明する。図3(a)は、本実施形態に係るグロメット100を示す正面図であり、図3(b)は、本実施形態に係るグロメット100を示す長手方向断面図である。
図2及び図3に示すように、グロメット100は、ゴム等の弾性変形可能な材料によって形成されている。このグロメット100は、パネル孔21に挿通されるワイヤハーネスWを覆う小径筒部110と、小径筒部110の端部に設けられてパネル孔21の縁部を覆うようにパネル20に密着する大径筒部120とを備えている。
小径筒部110は、室内側に配置される。小径筒部110は、大径筒部120よりも小径をなしており、長尺のチューブ状に形成されている。この小径筒部110は、大径筒部120に連結される長尺状の小径本体部111と、小径本体部111に連結されるとともに、小径本体部111よりも小径な小径先端部112とによって構成されている。
大径筒部120は、小径筒部110と一体に形成されており、パネル20に取り付けられる。この大径筒部120の外部には、パネル孔21に対して嵌合される嵌合溝121が形成されている。嵌合溝121の小径筒部110側には、弾性変形可能な複数の弾性片部122が設けられている。弾性片部122は、グロメット100がパネル20に取り付けられる際、大径筒部120の内部に設けられる空間123内へ撓むようになっている。なお、大径筒部120における小径筒部110と逆側には、ワイヤハーネスWの外周を覆う被覆部124が設けられている。
ここで、嵌合溝121から小径筒部110(小径先端部112)の先端までの長さ(以下、グロメット長さL)は、適宜設定することができ、例えば、100mm〜150mmに設定される。
(3)グロメットの取付構造
次に、上述したグロメット100をパネル20に取り付けるグロメット100の取付構造について、図1及び図2を参照しながら説明する。
図1及び図2に示すように、小径先端部112及び小径本体部111の順に、ワイヤハーネスWが挿通されたグロメット100をパネル孔21に挿入する。すると、弾性片部122は、パネル孔21の縁部に当接し、大径筒部120の内部に設けられた空間123内へ撓む。そして、パネル孔21に対して嵌合溝121が嵌合されると、弾性片部122が復元して大径筒部120がパネル20に密着し、グロメット100がパネル20に取り付けられる。
このグロメット100がパネル20に取り付けられている際、小径筒部110が室内側に配置され、ワイヤハーネスW及び小径筒部110が車両1の上方に向けて傾斜している。具体的には、図2に示すように、パネル20に接した大径筒部120の中心から小径筒部110の先端(小径先端部112の端縁)の中心までを結ぶ仮想線ILと水平線HLとの角度(以下、グロメット角度θ)は、15〜65度であることが好ましい。なお、本実施形態では、パネル20が水平線HLに対して傾斜した状態で設けられるため、ワイヤハーネスW及び小径筒部110に加えて、大径筒部120についても傾斜している。
(4)比較評価
次に、グロメット長さLと水分の吸い上げる高さとの関係について、図4を用いて説明する。図4は、グロメット100の最も下方から最も上方までのグロメット100の高さ(H)[縦軸]と、グロメット角度θ[横軸]との関係を示すグラフである。
本評価では、グロメット長さLを変えたものを2種類(125mm,150)用意し、同一条件で水分の吸い上げる高さについて評価した。
この結果、図4に示すように、グロメット長さLが125mmの場合、グロメット角度θが15〜55度であることが好ましいことが分かる。一方、グロメット長さLが150mmの場合、グロメット角度θが15〜65度以上であることが好ましいことが分かる。
このように、グロメット長さLによってグロメット角度θの好ましい範囲が若干変わると想定できるものの、グロメット角度θが15〜65度であることによって水分が吸い上げ難くなることが分かる。なお、水分の吸い上げる高さがグロメット長さLをあまりにも上回ってしまうと、グロメット100内を水分が進入して、シール性能が低下してしまうことが想定される。
(5)作用・効果
以上説明した本実施形態では、グロメット100がパネル20に取り付けられている際、小径筒部110が室内側に配置され、ワイヤハーネスW及び小径筒部110が上方に向けて傾斜する。これにより、ワイヤハーネスW及び小径筒部110が水平な状態である場合と比較して、グロメット100内に水分が進入し難くなり、シール性能を向上させることができる。この結果、シール性能を向上させるために、従来のような止水剤を用いることないため、生産性向上を実現でき、製造コストを低減させることができる。
本実施形態では、複数のワイヤハーネスWは、少なくともグロメット100内において非結束状態である。つまり、複数のワイヤハーネスWは、少なくともグロメット100内においてそれぞれ独立している。これにより、それぞれのワイヤハーネスW同士をテープ等によって結束させる必要がなくなり、製造コストをより低減させることができる。加えて、グロメット100内において複数のワイヤハーネスWが広がる(ばらける)ため、毛細管現象による水分の進入をも抑制することができる。
本実施形態では、グロメット角度θは、15〜65度である。これにより、グロメット100内を水分がより進入し難くなり、シール性能を確実に向上させることができる。
(6)その他の実施形態
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
例えば、本発明の実施形態は、次のように変更することができる。具体的には、グロメット100は、自動車に使用されるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、その他の車両等に設けられていてもよく、各種産業機器や住宅等において電線(長尺状の部材)が挿通される仕切壁などに取り付けられるものであってもよい。
また、グロメット100の形状や構成については、実施形態で説明したものに限定されるものではない。例えば、グロメット100は、大径筒部120内に設けられるインナー部材を介してパネル20に取り付けられる構成であってもよい。また、小径筒部110及び大径筒部120が別体に設けられていてもよく、小径筒部110が必ずしも長尺のチューブ状に形成されている必要もない。
また、ワイヤハーネスWは、複数設けられており、複数のワイヤハーネスWは、少なくともグロメット100内において非結束状態であるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、それぞれのワイヤハーネス同士をテープ等によって結束してもよく、また、1本のワイヤハーネスWであってもよいことは勿論である。さらに、このようなワイヤハーネスWは、特に毛細管現象による水分の進入を抑制するために、グロメット100外において屈曲されていてもよい。
また、パネル20は、直交線CLに対して傾斜した状態で設けられているものとして説明したが、これに限定されるものではなく、ワイヤハーネスW及び小径筒部110が車両1の上方に向けて傾斜した状態であれば、直交線CLに沿った状態で設けられていてもよい。なお、ワイヤハーネスW及び小径筒部110が車両1の上方に向けて傾斜していればよく、小径筒部110が大径筒部120から予め傾斜した状態で連結されていてもよい。
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められる。
1…車両
20…パネル(被取付体)
21…パネル孔(開口部)
100…グロメット
110…小径筒部
120…大径筒部
W…電線
HL…水平線
CL…直交線
IL…仮想線

Claims (3)

  1. 室外と室内側との隔壁をなす被取付体の開口部に挿通されるワイヤハーネスを覆う小径筒部と、前記小径筒部の端部に設けられて前記開口部の縁部を覆うように前記被取付体に密着する大径筒部とを備えるグロメットの取付構造であって、
    前記グロメットが前記被取付体に取り付けられている際、前記小径筒部が前記室内側に配置され、前記ワイヤハーネス及び前記小径筒部が上方に向けて傾斜し、
    前記大径筒部における前記小径筒部と逆側には、前記車外に配置され前記ワイヤハーネスの外周を覆う被覆部が設けられ、前記被覆部が下方に向けて傾斜することを特徴とするグロメットの取付構造。
  2. 請求項1に記載のグロメットの取付構造であって、
    前記ワイヤハーネスは、複数設けられており、
    複数の前記ワイヤハーネスは、少なくとも前記グロメット内において非結束状態であることを特徴とするグロメットの取付構造。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のグロメットの取付構造であって、
    前記被取付体に接した前記大径筒部の中心から前記小径筒部先端の中心までを結ぶ仮想線と水平線との角度(θ)は、15〜65度であることを特徴とするグロメットの取付構造。
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