以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
[1.第1の実施の形態]
[1−1.現金自動預払機の全体構成]
図1に外観を示すように、現金自動預払機1は、箱状の筐体2を中心に構成されており、例えば金融機関等に設置され、顧客との間で入金取引や出金取引等の現金に関する取引を行うようになされている。
筐体2は、その前側に顧客が対峙した状態で紙幣の投入やタッチパネルによる操作等をしやすい箇所、すなわち前面の上部から上面に渡る部分が斜めに切り落とされたような形状となっており、この部分に接客部3が設けられている。
接客部3は、顧客との間で現金や通帳等を直接やり取りすると共に、取引に関する情報の通知や操作指示の受付を行うようになされており、カード入出口4、入出金口5、操作表示部6、テンキー7、及びレシート発行口8が設けられている。
カード入出口4は、キャッシュカード等の各種カードが挿入または排出される部分である。カード入出口4の奥側には、各種カードに磁気記録された口座番号等の読み取りを行うカード処理部(図示せず)が設けられている。
入出金口5は、顧客が入金する紙幣が投入されると共に、顧客へ出金する紙幣が排出される部分である。また入出金口5は、シャッタを駆動することにより開放又は閉塞するようになされている。因みに紙幣は、例えば長方形の紙で構成されている。
操作表示部6は、取引に際して操作画面を表示するLCD(Liquid Crystal Display)と、取引の種類の選択、暗証番号や取引金額等を入力するタッチパネルとが一体化されている。
テンキー7は、「0」〜「9」の数字等の入力を受け付ける物理キーであり、暗証番号や取引金額等の入力操作時に用いられるようになされている。
レシート発行口8は、取引処理の終了時に取引内容等を印字したレシートを発行する部分である。因みにレシート発行口8の奥側には、レシートに取引内容等を印字するレシート処理部(図示せず)が設けられている。
以下では、現金自動預払機1のうち顧客が対峙する側を前側とし、その反対を後側とし、当該前側に対峙した顧客から見て左及び右をそれぞれ左側及び右側とし、さらに上側及び下側を定義して説明する。
因みに筐体2は、前面を覆う前扉2A及び後面を覆う後扉(図示せず)がそれぞれ開閉可能に構成されている。すなわち筐体2は、顧客との間で現金に関する取引を行う取引動作時には、前扉2A等を閉塞することにより、内部に保有している紙幣や硬貨等を保護する。一方筐体2は、金融機関の職員や作業者等が保守作業や紙幣の補充・回収作業等を行う作業時には、必要に応じて前扉2A等を開放することにより、内部の各部に対する作業を容易に行わせ得るようになされている。
筐体2内には、現金自動預払機1全体を統括制御する主制御部9や、紙幣に関する種々の処理を行う紙幣入出金機10等が設けられている。
主制御部9は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、図示しないROMやフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、入金取引や出金取引等の種々の処理を行うようになされている。
また主制御部9は、内部にRAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等でなる記憶部9Aを有しており、この記憶部9Aに種々の情報を記憶させるようになされている。
[1−2.紙幣入出金機の構成]
紙幣入出金機10は、図2に模式的な側面図を示すように、紙幣入出金機筐体11の内部に紙幣の入金処理や出金処理に関する種々の機構が設けられている。紙幣入出金機10の各部分は、紙幣制御部12により制御されるようになされている。
紙幣制御部12は、主制御部9と同様、図示しないCPUを中心に構成されており、図示しないROMやフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行し、また主制御部9などの他の制御部と連携することにより、紙幣の入金処理や出金処理等、紙幣に関する種々の処理を制御するようになされている。
また紙幣制御部12は、内部にRAM及びフラッシュメモリ等でなる記憶部(図示せず)を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させるようになされている。
例えば顧客が現金自動預払機1との間で入金取引を行う場合、紙幣制御部12は、主制御部9等と連携しながら、操作表示部6を介して所定の操作入力を受け付けた後、入出金口5(図1)のシャッタを開いて入出金部13内へ紙幣を投入させる。
入出金部13は、紙幣が投入されると、入出金口5のシャッタを閉じてから紙幣を1枚ずつ取り出し、搬送部14へ受け渡す。搬送部14は、紙幣入出金機10内で紙幣を各部へ搬送し得るようになされており、受け渡された紙幣を短辺方向に沿って進行させ、鑑別部15へ搬送する。
鑑別部15は、その内部で紙幣を搬送しながら当該紙幣の金種及び真偽、並びに損傷の程度等を鑑別し、その鑑別結果を紙幣制御部12へ通知する。これに応じて紙幣制御部12は、取得した鑑別結果に基づいていて当該紙幣の搬送先を決定する。
このとき搬送部14は、鑑別部15において正常と鑑別された紙幣(いわゆる正券)を一時保留部16へ搬送する等して一時的に保留させる一方、取引すべきでないと鑑別された紙幣(いわゆる損券や偽券等)を入出金部13へ搬送して顧客に返却する。
その後紙幣制御部12は、操作表示部6(図1)を介して顧客に入金金額を確定させ、一時保留部16に保留している紙幣を鑑別部15へ搬送させてその金種及び損傷の程度等を鑑別させ、その鑑別結果を取得する。
そして紙幣制御部12は、紙幣の損傷の程度が大きければ、これを再利用すべきでない紙幣としてリジェクト庫17へ搬送して収納させ、損傷の程度が小さければ、これを再利用すべき紙幣として紙幣収納ユニット18へ搬送させる。
紙幣収納ユニット18には、複数の収納カセット35が設けられている。この収納カセット35は、それぞれ対応する金種が予め定められている。このため紙幣収納ユニット18は、搬送されてきた紙幣をその金種に応じた収納カセット35に振り分けて収納させる。
また、例えば顧客が現金自動預払機1との間で出金取引を行う場合、紙幣制御部12は、主制御部9等と連携しながら、操作表示部6(図1)を介して所定の操作入力を受け付けた後、出金すべき金額に応じた紙幣を紙幣収納ユニット18の収納カセット35から繰り出させる。
続いて紙幣制御部12は、この紙幣を搬送部14により鑑別部15へ搬送して鑑別させた上で入出金部13へ搬送し、入出金口5(図1)のシャッタを開いてこの紙幣を顧客に取り出させる。
ここで紙幣制御部12は、入出金口5のシャッタを開いてから所定時間が経過してシャッタを閉じた後にも入出金部13に紙幣が残っていた場合、顧客が当該紙幣を取り忘れたものと見なし、この紙幣を搬送部14により取忘れ保管庫20へ搬送して、他の紙幣と区別できるように保管する。
ところで、紙幣入出金機筐体11の後側に設けられた補充回収庫21は、内部に多数の紙幣を収納できるよう構成されると共に、その真上に設置された補充入出金部22と連結されている。
また補充回収庫21は、筐体2(図1)の背面に設けられた後扉(図示せず)が開放されたときに、職員等の作業により、その内部に紙幣を収納し、またその内部から紙幣を取り出し得るようになされている。
紙幣制御部12は、補充回収庫21内に紙幣が収納された状態で所定の補充操作指示を受け付けると、補充回収庫21から紙幣収納ユニット18の収納カセット35への紙幣の補充処理を行う。
このとき紙幣制御部12は、補充入出金部22により補充回収庫21内から紙幣を順次繰り出させ、搬送部14を介して紙幣収納ユニット18へ搬送させて、指示された収納カセット35内に紙幣を順次集積させる。
また紙幣制御部12は、紙幣収納ユニット18の収納カセット35に紙幣が収納された状態で所定の回収操作指示を受け付けると、収納カセット35から補充回収庫21内への紙幣の回収処理を行う。
このとき紙幣制御部12は、当該収納カセット35から紙幣を順次繰り出させ、紙幣収納ユニット18から搬送部14を介して補充入出金部22へ搬送させ、当該補充入出金部22により補充回収庫21内に順次集積させる。
因みに紙幣制御部12は、各種取引処理等の合間に補充処理及び回収処理を適宜実行することにより、収納カセット35における紙幣の不足や飽和を未然に防止して、顧客に対する入金取引や出金取引の提供を極力継続させるようになされている。
このように紙幣入出金機10では、顧客から入金された紙幣を紙幣収納ユニット18の収納カセット35に収納し、また顧客へ出金すべき紙幣を予め収納カセット35に収納しておくようになされている。
[1−3.紙幣収納ユニットの構成]
紙幣収納ユニット18は、スライド筐体としての紙幣収納ユニット筐体31を中心に構成されている。紙幣収納ユニット筐体31は、全体として直方体状に構成され、前後方向に摺動するスライド機構(図示せず)を介して紙幣入出金機筐体11に取り付けられている。
このため紙幣収納ユニット筐体31は、このスライド機構を伸縮させることにより、本体部としての紙幣入出金機筐体11に対し前後方向へ移動するようになされている。すなわち紙幣収納ユニット筐体31は、図2に示したように紙幣入出金機筐体11の内部に収納され、又は図3に示すように紙幣入出金機筐体11の前方へ引き出される。
紙幣収納ユニット筐体31には、4個のカセット装着部32A、32B、32C及び32D(以下まとめてカセット装着部32と呼ぶ)が前後方向に整列するよう配置されている。
カセット装着部32A〜32Dは、図4(B)に示すように、いずれも同等の大きさでなり上下を長手方向とする直方体状に構成され、また中空に形成されると共に天板が省略されることにより、内部空間32SA〜32SDを上方へ向けて開放させた状態となっている。
カセット装着部32A、32B、32C及び32Dの左側面上部には、上辺の一部が下方へ向けて矩形状に切り欠かれることにより、溝状の嵌合部33A、33B、33C及び33D(以下まとめて嵌合部33と呼ぶ)が形成されている。
図5(B)に示すように、嵌合部33は、内側面底部から溝状部分の下端までの高さH1及び溝状部分の前後幅W1がそれぞれ同等となっているものの、内側前面からの距離L1A、L1B、L1C及びL1Dが互いに異なっている。すなわち嵌合部33A、33B、33C及び33Dは、カセット装着部32A、32B、32C及び32Dにおける前後方向の位置が互いに相違している。
またカセット装着部32A、32B、32C及び32Dの右側面上部(図4(A))には、嵌合部33A、33B、33C及び33Dとそれぞれ左右対称な嵌合部34A、34B、34C及び34D(以下まとめて嵌合部34と呼ぶ)が形成されている。すなわち嵌合部34A、34B、34C及び34Dもカセット装着部32A、32B、32C及び32Dにおける前後方向の位置が互いに相違している。
このように各カセット装着部32は、大きさ及び全体的な形状において互いに共通するものの、嵌合部33及び34の位置(すなわち溝の位置)が互いに相違した、いわば溝パターンが互いに相違した構成となっている。
一方、収納カセット35A、35B、35C及び35D(以下まとめて収納カセット35と呼ぶ)は、図4(A)に示すように、いずれも同等の大きさでなり上下を長手方向とする直方体状に構成されており、その内部に多数の紙幣を集積した状態で収納し得るようになされている。
また収納カセット35は、前後方向及び左右方向の長さが、カセット装着部32の内部空間における前後方向及び左右方向の長さよりもそれぞれ僅かに短くなっている。すなわち収納カセット35は、全体的な形状としては、カセット装着部32の内部空間に対し上方向から挿入し得るように構成されている。
収納カセット35A、35B、35C及び35Dの左側面上部には、周囲よりも左方向へ突出した標識部36A、36B、36C及び36D(以下まとめて標識部36と呼ぶ)が形成されている。
標識部36は、図5(A)に示すように、上下方向を長手方向とする小さな直方体状に形成されており、収納カセット35の底面から下端までの高さH2及び前後幅W2がそれぞれ同等となっている。
因みに標識部36の高さH2及び前後幅W2は、嵌合部33における高さH1及び前後幅W1よりもそれぞれ僅かに短くなっている。
しかしながら標識部36A、36B、36C及び36Dは、前側面からの距離L2A、L2B、L2C及びL2Dが互いに異なっている。すなわち標識部36A、36B、36C及び36Dは、収納カセット35A、35B、35C及び35Dにおける前後方向の位置が互いに相違している。
因みに距離L2A、L2B、L2C及びL2Dは、嵌合部33A、33B、33C及び33Dにおける各距離L1A、L1B、L1C及びL1Dよりもそれぞれ僅かに短くなっている。
また収納カセット35A、35B、35C及び35Dの右側面上部(図4(A))には、標識部36A、36B、36C及び36Dとそれぞれ左右対称な標識部37A、37B、37C及び37D(以下まとめて標識部37と呼ぶ)が形成されている。このため標識部37A、37B、37C及び37Dも収納カセット35A、35B、35C及び35Dにおける前後方向の位置が互いに相違している。
すなわち収納カセット35の標識部36及び37は、カセット装着部32の嵌合部33及び34とそれぞれ対応する形状に構成され、且つ嵌合部33及び34とそれぞれ対応する位置に設けられている。
因みに収納カセット35は、紙幣を収納するための空間を形成すると共に当該紙幣を1枚ずつ分離して繰り出すための機構が取り付けられた分離収納部と、当該分離収納部の外周を覆う外観カバーとの組み合わせにより構成されている。標識部36及び37は、この外観カバーに設けられている。
このように各収納カセット35は、大きさ及び全体的な形状において互いに共通するものの、標識部36及び37の位置が互いに相違した、いわば標識パターンが互いに相違した構成となっている。
[1−4.動作及び効果]
以上の構成において、第1の実施の形態による紙幣収納ユニット18は、紙幣入出金機筐体11の前側に紙幣収納ユニット筐体31が引き出された状態(図3)で、カセット装着部32に収納カセット35がそれぞれ装着される。
このとき収納カセット35Aは、対応するカセット装着部32Aに挿入された場合、図6(A)に示すように、左側面において、標識部36Aの位置が嵌合部33Aの位置とほぼ一致するため、干渉することなく嵌合する。
因みに図は省略するものの、右側面においても同様に、標識部37Aが嵌合部34Aに嵌合する。
このため収納カセット35Aは、対応するカセット装着部32A内に完全に収容され、正しく装着された状態となる。
これと同様に収納カセット35B〜35Dは、対応するカセット装着部32B〜32Dにそれぞれ挿入された場合、各標識部36及び37が各嵌合部33及び34にそれぞれ嵌合することにより、完全に収容され、正しく装着された状態となる。
一方、収納カセット35Aは、対応しないカセット装着部32Cに挿入された場合、図6(C)に示すように、左側面において、標識部36Aの位置が嵌合部33Cの位置と相違するため、途中まで挿入された段階で標識部36Aがカセット装着部32Cの左側面における上辺と干渉し、嵌合部33Cと嵌合しないため、装着が阻止される。以下、この状態を誤挿入と呼ぶ。
因みに図は省略するものの、右側面においても同様に、標識部37Aの位置が嵌合部34Cの位置と異なるため、標識部37Aが上辺と干渉し、嵌合部34Cと嵌合しない。
また収納カセット35Aは、対応しないカセット装着部32B及び32Dにおいても、同様に標識部36A及び37Aが左右側面の上辺とそれぞれ干渉し、嵌合部33又は34と嵌合しないため、装着が阻止される。これと同様に収納カセット35B〜35Dは、それぞれ対応しないカセット装着部32A〜32Dに挿入された場合、標識部36B〜36D及び37B〜37Dが左右側面の上辺とそれぞれ干渉し、嵌合部33又は34と嵌合しないため、装着が阻止される。
このように紙幣収納ユニット18では、各収納カセット35の標識部36及び37における前後方向の位置(標識パターン)を他の収納カセット35と相違させ、各カセット装着部32それぞれの嵌合部33及び34における溝パターン前後方向の位置(溝パターン)を、対応する収納カセット35の標識部36及び37に合わせた。
これにより紙幣収納ユニット18は、各収納カセット35に対しそれぞれ対応するカセット装着部32への装着を許容する一方、対応しないカセット装着部32に誤挿入されたときには、標識部36及び37と当該カセット装着部32との物理的干渉により装着を禁止することができる。
このとき紙幣収納ユニット18は、対応しないカセット装着部32について、収納カセット35を挿入途中で停止させ、標識部36及び37よりも上側部分をカセット装着部32の上方に突出させた状態に止め、装着を阻止する(図6(B))。
このため紙幣収納ユニット18は、挿入作業をしている作業員や職員等に対し、当該収納カセット35が誤挿入されていることを直ちに認識させることができ、さらにはその場で正しいカセット装着部32に挿入し直すよう促すことができる。
また紙幣収納ユニット18は、紙幣入出金機筐体11に対し紙幣収納ユニット筐体31がスライドする方向である前後方向と交差する上方向から、カセット装着部32に対し収納カセット35を下方向へ挿入させ、誤挿入されてその一部を上方に突出させた状態では、当該収納カセット35を紙幣入出金機筐体11の前側部分11Aと干渉させる。
このため紙幣収納ユニット18では、収納カセット35が対応しないカセット装着部32に挿入されて一部を上方に突出させている限り、物理的な干渉により、紙幣収納ユニット筐体31の紙幣入出金機筐体11内への収容を抑制することができる。
これにより、収納カセット35を対応しないカセット装着部32に挿入したまま、確認の不徹底や誤操作等により紙幣収納ユニット筐体31を誤って紙幣入出金機筐体11内に収容しようとした場合にも、物理的に収容できないため、収納カセット35の誤挿入を確実に認識させることができる。
さらに収納カセット35は、左右の両側面に、すなわち当該収納カセット35の重心を挟んだ2箇所にそれぞれ標識部36及び37を設けた。
これにより収納カセット35は、対応しないカセット装着部32に挿入され、標識部36及び37がカセット装着部32における左右側面の上辺とそれぞれ干渉して一部を上方に突出させた状態になったとしても、重心を挟んだ両側において当該カセット装着部32と当接することにより、容易にバランスを保持することができる。
また紙幣収納ユニット18では、収納カセット35の誤装着が原理的に生じないことになる。このため現金自動預払機1では、収納カセット35が誤装着された場合に必要となった、職員等による各カセット装着部32に対応付ける金種の設定変更作業を行わせずに済む。
さらに収納カセット35は、標識部36及び37の位置が互いに相違するため、慣れた職員が標識部36及び37を目視するだけで、当該収納カセット35に収納されている、又は収納されるべき紙幣の金種を判断することも可能となる。
以上の構成によれば、第1の実施の形態による紙幣収納ユニット18では、各収納カセット35の標識部36及び37における前後方向の位置(標識パターン)を他の収納カセット35と相違させ、各カセット装着部32それぞれの嵌合部33及び34における前後方向の位置(溝パターン)を、対応する収納カセット35の標識部36及び37に合わせた。これにより紙幣収納ユニット18は、カセット装着部32に挿入された収納カセット35が正しく対応するときには、標識部36及び37を嵌合部33及び34と嵌合させて適切に装着させる一方、正しく対応しない誤挿入であるときには、標識部36及び37を左右側面の上辺と干渉させて嵌合させず、その装着を禁止することができる。
[2.第2の実施の形態]
図6(A)と対応する図7に示すように、第2の実施の形態による紙幣収納ユニット118は、第1の実施の形態による紙幣収納ユニット18と比較して、カセット装着部32及び収納カセット35に代わるカセット装着部132及び収納カセット135を有する点が相違するものの、他の部分については同様に構成されている。
[2−1.収納カセットの構成]
収納カセット135は、第1の実施の形態と同様、互いに類似した形状でなる4個の収納カセット135A、135B、135C及び135Dにより構成されている。以下では、代表として収納カセット135Aを中心に説明する。
図8(A)に示すように、収納カセット135Aは、第1の実施の形態による収納カセット35Aと比較して、標識部36A及び37Aに代わる標識部136A及び137Aを有する点が相違している。
標識部136A及び137Aは、左右対称であるものの、基本的に同等に構成されている。以下では、標識部136Aを例に説明する。
標識部136Aは、収納カセット135Aと別体に構成された標識体141と、当該標識体141を当該収納カセット135Aに取り付けるための標識取付部142とにより構成されている。
標識体141は、図8(B)に示すように、上下に長い直方体状の本体部141Pと、当該本体部141Pの上下中央付近から前後方向へ短く延設された取付部141Qとにより構成されており、左右方向から見てT字状となっている。
本体部141Pにおける左右方向の一側面には、上側及び下側に位置決め突起141Rがそれぞれ突設されている。位置決め突起141Rは、左右方向に沿った中心軸を有する小さな円柱状に形成されている。また取付部141Qには、左右方向に貫通する取付孔141Sが穿設されている。
因みに図8(B)は、説明の都合上、標識体141を位置決め突起141Rが設けられている側面の側から見た状態を表している。
標識取付部142は、収納カセット135Aにおける左右の側面に穿設された取付ねじ孔142T、前位置決め孔142U及び後位置決め孔142Vにより構成されている。
取付ねじ孔142Tは、丸孔の内側面に螺旋状の溝が刻まれることにより、後述する取付ねじと螺合し得るようになされている。
前位置決め孔142Uは、取付ねじ孔142Tの前方における上下に離れた箇所に穿設されている。ここで取付ねじ孔142Tに対する前位置決め孔142Uの位置は、標識体141における取付孔141Sに対する位置決め突起141Rの位置と対応している。
また後位置決め孔142Vは、取付ねじ孔142Tの後方における上下に離れた箇所に穿設されている。ここで取付ねじ孔142Tに対する後位置決め孔142Vの位置は、やはり標識体141における取付孔141Sに対する位置決め突起141Rの位置と対応している。
ところで標識部136Aでは、図9(A)及び(B)に示すように、標識取付部142に対し標識体141を2通りの取付形態で取り付け得るようになされている。
図9(A)に示す取付形態では、取付孔141Sの前方に本体部141Pが位置し、当該取付孔141Sが取付ねじ孔142Tに重ねられると共に、2個の位置決め突起141Rが2箇所の前位置決め孔142Uにそれぞれ挿入されて契合されている。
また標識体141は、取付ねじ143が取付孔141Sを挿通し取付ねじ孔142Tと螺合するようねじ止めされることにより、標識取付部142に固定されている。
以下では、このように取付ねじ孔142Tの前方に標識体141の本体部141Pを位置させる取付形態を前標識形態と呼ぶ。
一方、図9(B)に示す取付形態では、取付孔141Sの後方に本体部141Pが位置し、当該取付孔141Sが取付ねじ孔142Tに重ねられると共に、2個の位置決め突起141Rが2箇所の後位置決め孔142Vにそれぞれ挿入されて契合されている。
また標識体141は、取付ねじ143が取付孔141Sを挿通し取付ねじ孔142Tと螺合するようねじ止めされることにより、標識取付部142に固定されている。
以下では、このように取付ねじ孔142Tの後方に標識体141の本体部141Pを位置させる取付形態を後標識形態と呼ぶ。
このように標識部136Aは、前標識形態(図9(A))又は後標識形態(図9(B))のいずれかの取付形態により、標識取付部142に標識体141を取り付けるようになされている。
これを換言すれば、標識部136Aは、取付ねじ孔142Tに対する本体部141Pの位置を、前標識形態であれば前方とし、後標識形態であれば後方とするよう、その取付形態ごとに相違させるようになされている。
また標識部137Aは、標識部136Aと左右対称であるものの、同様に取付孔141Sに対し本体部141Pを前方又は後方に位置させる前標識形態又は後標識形態のいずれかの取付形態により、標識体141を標識取付部142に取り付けるようになされている。
さらに収納カセット135B、135C及び135Dの標識部136B、136C及び136D並びに標識部137B、137C及び137Dも、それぞれ標識部136A及び137Aと同様に構成されており、それぞれ前標識形態又は後標識形態のいずれかの取付形態を採り得る。
ところで標識部136(136A、136B、136C及び136D)及び標識部137(137A、137B、137C及び137D)における取付形態の組み合わせとしては、それぞれを前標識形態又は後標識形態のいずれかとすることにより、2通りを2乗した4通りが選択可能となる。
そこで収納カセット135(135A、135B、135C及び135D)では、図9(C)に示すように、各標識部136及び137における取付形態の組み合わせを互いに相違させている。
具体的に収納カセット135A、135B、135C及び135Dでは、各標識部136及び137における取付形態の組み合わせが、「前標識形態・前標識形態」、「前標識形態・後標識形態」、「後標識形態・前標識形態」及び「後標識形態・後標識形態」となっている。以下、これらの組み合わせを標識パターンと呼ぶ。
因みに図9(C)では、説明の都合により前後方向を統一して表したため、標識部137を左方向から透視したときの形態を示している。
このように収納カセット135は、標識部136及び137において、標識取付部142に標識体141が前標識形態又は後標識形態となるようそれぞれ取り付けられており、且つ収納カセット135ごとに標識パターンを相違させるようになされている。
[2−2.カセット装着部の構成]
カセット装着部132は、第1の実施の形態と同様、互いに類似した形状でなる4個のカセット装着部132A、132B、132C及び132Dにより構成されている。
図10に示すように、カセット装着部132は、第1の実施の形態によるカセット装着部32と比較して、嵌合部33及び34に代わる嵌合部133(133A、133B、133C及び133D)及び134(134A、134B、134C及び134D)を有する点が相違している。
嵌合部133及び134は、嵌合部33及び34と同様に上辺の一部が下方へ向けて矩形状に切り欠かれることにより溝が形成されているものの、その位置及び形状が嵌合部33及び34とは異なっている。
すなわち嵌合部133及び134の各溝は、収納カセット135の標識部136及び137に取り付けられた標識体141と対応するよう、その位置及び形状が定められている。
例えば嵌合部133Aは、収納カセット135A(図8(A))の標識部136Aに前標識形態となるよう取り付けられた標識体141と対応している。
このため嵌合部133Aの溝は、比較的前寄りの箇所に形成されており、前後方向の幅が嵌合部33Aよりも広げられている。またこの溝の底部分は、前半部分よりも後半部分が高められて(浅くなって)おり、前半部分において標識体141の本体部141P(図8(B))と、後半部分において取付部141Qと、それぞれ対応するようになされている。以下、このような嵌合部133Aの形態を前溝形態と呼ぶ。
これと同様に、前標識形態である標識部136B、137A及び137Cとそれぞれ対応する嵌合部133B、134A及び134Cも、それぞれ前溝形態となっている。
一方、例えば嵌合部133Cは、収納カセット135Cの標識部136Cに後標識形態となるよう取り付けられた標識体141と対応している。
このため嵌合部133Cの溝は、比較的後寄りの箇所に形成されており、前後方向の幅が嵌合部33Cよりも広げられている。またこの溝の底部分は、後半部分よりも前半部分が高められて(浅くなって)おり、後半部分において標識体141の本体部141Pと、前半部分において取付部141Qと、それぞれ対応するようになされている。以下、このような嵌合部133Cの形態を後溝形態と呼ぶ。
これと同様に、後標識形態である標識部136D、137B及び137Dとそれぞれ対応する嵌合部133D、134B及び134Dも、それぞれ前溝形態となっている。
すなわちカセット装着部132A、132B、132C及び132Dでは、嵌合部133及び134における溝形態の組み合わせが、図9(C)と対応する図11に示すように、「前溝形態・前溝形態」、「前溝形態・後溝形態」、「後溝形態・前溝形態」及び「後溝形態・後溝形態」となっている。以下、これらの組み合わせを溝パターンと呼ぶ。
因みに図11では、図9(C)と同様、説明の都合により前後方向を統一して表したため、嵌合部134を左方向から(すなわち内部空間側から)見たときの形態を示している。
このようにカセット装着部132は、嵌合部133及び134において、収納カセット135の標識部136及び137により形成された標識パターンとそれぞれ対応するような溝が形成されている。換言すれば、カセット装着部132は、互いの溝パターンを相違させるようになされている。
[2−3.動作及び効果]
以上の構成において、第2の実施の形態による紙幣収納ユニット118は、第1の実施の形態と同様、カセット装着部132に収納カセット135がそれぞれ装着される。
このとき収納カセット135Aは、対応するカセット装着部132Aに挿入された場合、図7に示したように、左側面において、前標識形態である標識部136Aの位置及び形状が前溝形態である嵌合部133Aの位置及び形状とほぼ一致するため、干渉することなく嵌合する。
因みに図は省略するものの、右側面においても同様に、前標識形態である標識部137Aが前溝形態である嵌合部134Aに嵌合する。
このため収納カセット135Aは、対応するカセット装着部132A内に完全に収容され、正しく装着された状態となる。
これと同様に収納カセット135B〜135Dは、対応するカセット装着部132B〜132Dにそれぞれ挿入された場合、各標識部136及び137が各嵌合部133及び134にそれぞれ嵌合することにより、完全に収容され、正しく装着された状態となる。
一方、収納カセット135Aは、対応しないカセット装着部132Cに挿入された場合、右側面において、前標識形態である標識部137Aの位置及び形状、すなわち標識取付部142における標識体141の取付位置が、前溝形態である嵌合部134Cにおける溝の位置及び形状と対応するため、何ら干渉せず、そのまま嵌合しようとする。
しかしながら収納カセット135Aは、図12に示すように、左側面において、前標識形態である標識部136Aの位置及び形状、すなわち標識取付部142における標識体141の取付位置及び取付方向が、後溝形態である嵌合部133Cにおける溝の位置及び形状と対応しない。
このため収納カセット135Aは、途中まで挿入された段階で標識部136Aの標識体141がカセット装着部132Cの左側面における上辺と干渉して嵌合部133Cと嵌合せず、装着が阻止される。すなわち収納カセット135Aは、誤挿入された状態となる。
また収納カセット135Aは、対応しないカセット装着部132B及び132Dにおいても、標識部136A及び137Aの少なくとも一方において、標識体141が左右側面の上辺と干渉して嵌合部133又は134と嵌合しないため、装着が阻止される。
これと同様に収納カセット135B〜135Dは、それぞれ対応しないカセット装着部132A〜132Dに挿入された場合、標識部136B〜136D及び137B〜137Dの少なくとも一方において、標識体141が左右側面の上辺と干渉して嵌合部133又は134と嵌合しないため、装着が阻止される。
このように紙幣収納ユニット118では、各収納カセット135の標識部136及び137において、標識取付部142に対する標識体141の取付形態を前標識形態又は後標識形態として標識パターンを他の収納カセット135と相違させた。
また紙幣収納ユニット118では、各カセット装着部132の嵌合部133及び134における溝パターンを、対応する収納カセット135の標識部136及び137に合わせて構成した。
これにより紙幣収納ユニット118は、各収納カセット135に対し、それぞれ対応するカセット装着部132への装着を許容する一方、対応しないカセット装着部132への挿入(すなわち誤挿入)であるときには物理的干渉により装着を禁止することができる。
特に収納カセット135の標識部136及び137では、標識取付部142に対し別部品である標識体141を取り付けるようにした。
このため収納カセット135は、本体部分を同一の部品として共通化することにより製造等に要するコストの削減を図ることができ、また必要な標識パターンに合わせた取付位置及び取付方向で標識体141を取り付けるだけで、所望の収納カセット135を容易に構成することができる。
また標識部136及び137では、標識取付部142に対し標識体141を取り付ける際、2個の位置決め突起141Rを2箇所の前位置決め孔142Uにそれぞれ挿入して契合させ、取付ねじ143により取付孔141Sを介して取付ねじ孔142Tにねじ止めするようにした。
このため収納カセット135は、例えば3箇所をねじ止めする場合と比較して、取付ねじの数を削減して部品の費用を削減し、またねじ止めに要する作業工数も削減しながら、同等の位置決め精度を確保でき、且つ確実に固定することができる。
さらに収納カセット135は、標識部136及び137において、標識取付部142に取り付ける標識体141の方向(取付ねじ孔142Tに対する本体部141Pの位置)により、前標識形態又は後標識形態といった2通りの取付形態を採り得るようにした。
このため収納カセット135では、単一の標識体141のみを利用するだけで良く、複数種類の標識体を用意する必要がないため、製造等に必要なコストを低廉に抑えることができる。
そのうえ収納カセット135は、取付形態が前標識形態又は後標識形態といった2通りのみである標識体141及び標識取付部142を、標識部136及び137の2箇所においてそれぞれ用いたことにより、4通りの標識パターンを形成するようにした。
このため収納カセット135は、標識部136及び137において使用する標識体141を共通化することができるので、製造等に必要なコストをさらに低廉に抑えることができる。
また標識体141については、取り付けられたときの物理的形状(すなわち収納カセット135に対する本体部141Pの位置)が互いに異なるような取付形態を2通りのみ区別できれば良いため、比較的単純な形状とすることができ、製造コストの低減化や取付作業時における方向確認の容易化を図ることができる。
かかる構成により収納カセット135は、例えば金融機関等の現場において急に標識パターンを変更する必要が生じたとしても、取付ねじ143を緩めて標識体141を約半回転させて再び取付ねじ143を締めるだけで、容易に対応することが可能となり、臨機応変な運用を実現することもできる。
その他の点についても、第2の実施の形態による紙幣収納ユニット118は、第1の実施の形態による紙幣収納ユニット18と同様の作用効果を奏し得る。
以上の構成によれば、第2の実施の形態による紙幣収納ユニット118では、各収納カセット135の標識部136及び137において、標識取付部142に対する標識体141の取付形態を前標識形態又は後標識形態として標識パターンを他の収納カセット135と相違させると共に、各カセット装着部132の嵌合部133及び134における溝パターンを対応する収納カセット135の標識部136及び137に合わせた。これにより紙幣収納ユニット118は、カセット装着部132に挿入された収納カセット135が正しく対応するときには、標識部136及び137を嵌合部133及び134と嵌合させて適切に装着させる一方、正しく対応しない誤挿入であるときには、標識部136及び137を左右側面の上辺と干渉させて嵌合させず、その装着を禁止することができる。
[3.第3の実施の形態]
図7と対応する図13に示すように、第3の実施の形態による紙幣収納ユニット218は、第2の実施の形態による紙幣収納ユニット118と比較して、カセット装着部132に代わるカセット装着部232(232A、232B、232C及び232D)を有する点が相違するものの、収納カセット135を含めた他の部分については同様に構成されている。
[3−1.カセット装着部の構成]
カセット装着部232は、第2の実施の形態におけるカセット装着部132と比較して、嵌合部133及び134とそれぞれ対応する嵌合部233(233A、233B、233C及び233D)並びに234(234A、234B、234C及び234D)を有する点が相違するものの、他の部分については同様に構成されている。
嵌合部233及び234は、第2の実施の形態における嵌合部133及び134をその周辺部分と共に左右方向から見て略U字状に切り離したような形状でなる嵌合体251と、その残りの部分に形成される溝状の嵌合体取付部252との組み合わせにより構成されている。
すなわち図14に示すように、嵌合体取付部252は、第1の実施の形態における嵌合部33及び34にそれぞれ形成された溝を前後方向に大きく拡大すると共に上下方向にも僅かに拡大したような、大きな矩形状の溝となっている。
また各嵌合部233における嵌合体取付部252の位置及び形状は互いに同等となっており、各嵌合部234における嵌合体取付部252の位置及び形状も互いに同等となっている。さらに嵌合部233及び嵌合部234は、互いに左右対称となっている。
すなわち各カセット装着部232は、全て同様に、いずれも同等な形状の溝でなる嵌合体取付部252が左右の側面上部にそれぞれ形成されている。
一方、嵌合体251は、図15(A)及び(B)に示すように、全体的に直方体状でなり、その上辺から下方へ向けて、第2の実施の形態における嵌合部133及び134にそれぞれ形成されている溝と同形状の溝、すなわち底部分の約半分が深くその残りが浅い溝が形成されている。
また嵌合体251は、溝における浅い部分が前後方向のほぼ中央に位置しており、深い部分が前後の一方に偏っている。
すなわち嵌合体251は、図15(A)に示したように溝の深い部分が前方にある方向(以下これを前溝方向と呼ぶ)から水平に半回転させることにより、図15(B)に示したように溝の深い部分が後方にある状態(以下これを後溝方向と呼ぶ)とすることができる。
そして嵌合部233及び234は、それぞれにおいて、対応する収納カセット135の標識パターンに合わせて、嵌合体251が適宜前溝方向又は後溝方向として嵌合体取付部252に取り付けられることにより、第2の実施の形態における嵌合部133及び134と同等の溝が構成されている。
すなわちカセット装着部232A、232B、232C及び232Dでは、嵌合部233及び234における溝形態の組み合わせが、第2の実施の形態と同様、順に「前溝形態・前溝形態」、「前溝形態・後溝形態」、「後溝形態・前溝形態」及び「後溝形態・後溝形態」のような溝パターンとなっている(図11)。
因みに嵌合体251は、その外寸が嵌合体取付部252の内寸とほぼ同等となっている。このため嵌合部233及び234では、ある程度の外力によって嵌合体251を嵌合体取付部252に嵌め込むことにより取り付けることができ、またその状態を互いの摩擦力により維持できる。さらに嵌合部233及び234では、嵌合体251にある程度の外力が加えられることにより、嵌合体取付部252から当該嵌合体251を取り外すことも可能となっている。
このようにカセット装着部232は、嵌合部233及び234において、嵌合体251と嵌合体取付部252との組み合わせにより、収納カセット135の標識部136及び137により形成された標識パターンとそれぞれ対応するような溝パターンの溝が形成されている。
[3−2.動作及び効果]
以上の構成において、第3の実施の形態による紙幣収納ユニット218は、カセット装着部232に第2の実施の形態と同様の収納カセット135がそれぞれ装着される。
このとき収納カセット135は、対応するカセット装着部232に挿入された場合、すなわち標識パターンと溝パターンとが対応する場合、左右の両側面において、標識部136及び137における本体部141Pの位置及び形状が嵌合部233及び234における溝の深い部分の位置及び形状と対応するため、干渉することなく嵌合する。
このため収納カセット135は、対応するカセット装着部232内に完全に収容され、正しく装着された状態となる。
一方、収納カセット135は、対応しないカセット装着部232に挿入された場合、左右の少なくとも一方の側面において、標識部136及び137における本体部141Pの位置及び形状が、嵌合部233及び234における溝の深い部分の位置及び形状と対応しない。
このため収納カセット135は、途中まで挿入された段階で標識部136又は137の本体部141Pがカセット装着部232の嵌合部233及び234における嵌合体251の上辺部分等と干渉して嵌合せず、装着が阻止される。すなわち収納カセット135は、誤挿入された状態となる。
このように紙幣収納ユニット218では、第2の実施の形態と同様、各収納カセット135の標識部136及び137において、標識取付部142に対する標識体141の取付形態を前標識形態又は後標識形態として標識パターンを他の収納カセット135と相違させた。
また紙幣収納ユニット218では、各カセット装着部232の嵌合部233及び234において、対応する収納カセット135の標識パターンに合わせた溝パターンとなるよう、嵌合体251を前溝方向又は後溝方向として嵌合体取付部252に取り付けた。
これにより紙幣収納ユニット218は、各収納カセット135に対し、それぞれ対応するカセット装着部232への挿入及び装着を許容する一方、対応しないカセット装着部232への挿入(すなわち誤挿入)であるときには物理的干渉により装着を禁止することができる。
特にカセット装着部232では、全ての嵌合部233及び234において、共通形状の溝である嵌合体取付部252に対し別部品である嵌合体251を取り付けるようにした。
このためカセット装着部232は、第2の実施の形態における収納カセット135と同様、本体部分を同一の部品として共通化することによりコストの削減を図ることができ、また必要な溝パターンに合わせて嵌合体251を取り付けるだけで、所望のカセット装着部232を容易に構成することができる。
またカセット装着部232は、嵌合部233及び234において、嵌合体251の取付方向を前溝方向又は後溝方向として嵌合体取付部252に取り付けることにより、前溝形態又は後溝形態といった2通りの溝形態を採り得るようにした。
このためカセット装着部232では、単一の嵌合体251を利用するだけで良く、複数種類の嵌合体を用意する必要がないため、製造等に必要なコストを低廉に抑えることができる。
さらにカセット装着部232は、嵌合部233及び234において、嵌合体251を嵌合体取付部252に嵌め込むだけで容易に取り付けることができ、また外力を加えるだけで容易に取り外し得るようにした。
このためカセット装着部232は、例えば金融機関等の現場において急に溝パターンを変更する必要が生じたとしても、嵌合体取付部252から嵌合体251を取り外して方向を変更し再び嵌め込む、といった作業によって容易に対応することが可能となり、臨機応変な運用を実現することもできる。
その他の点についても、第3の実施の形態による紙幣収納ユニット218は、第1の実施の形態による紙幣収納ユニット18及び第2の実施の形態による紙幣収納ユニット118と同様の作用効果を奏し得る。
以上の構成によれば、第3の実施の形態による紙幣収納ユニット218では、各収納カセット135の標識部136及び137における標識パターンを他の収納カセット135と相違させると共に、各カセット装着部232の嵌合部233及び234において、対応する収納カセット135の標識パターンに合わせた溝パターンとなるよう嵌合体251を前溝方向又は後溝方向として嵌合体取付部252に取り付けた。これにより紙幣収納ユニット218は、カセット装着部232に挿入された収納カセット135が正しく対応するときには、標識部136及び137を嵌合部233及び234と嵌合させて適切に装着させる一方、正しく対応しない誤挿入であるときには、標識部136及び137を嵌合体251における溝以外の部分と干渉させて嵌合させず、その装着を禁止することができる。
[4.他の実施の形態]
なお上述した第1の実施の形態においては、標識部36及び37の形状を細長い直方体状とし、第2及び第3の実施の形態においては、標識体141の本体部141Pを細長い直方体状とし左右方向から見た全体形状をT字状とするようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、種々の立体形状でなる標識部又は標識体を用いるようにしても良く、或いは標識部又は標識体を溝形状とし、嵌合部をこれと対応する立体形状とするようにしても良い。この場合、要は収納カセットとカセット装着部とが対応する場合には標識部又は標識体を嵌合部と嵌合させて装着を許容する一方、対応しない場合には標識部又は標識体が他の部分と干渉して装着を禁止することができれば良い。
また上述した第1の実施の形態においては、収納カセット35及びカセット装着部32において標識部36及び37並びに嵌合部33及び34を設ける箇所を、左右両側面とするようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば左右のいずれか一方の側面のみとしても良く、若しくは前後両側面としても良く、或いは底面としても良く、さらには前面における右寄り及び左寄りにそれぞれ設けるようにする等、種々の箇所に設けるようにしても良い。要は、収納カセット35の外面における任意の箇所に標識部を設け、収納カセット35が対応するカセット装着部32に装着された際に標識部を嵌合部に嵌合させて装着を許容する一方、他のカセット装着部32に挿入された際に他の部分と物理的に干渉することにより装着を禁止できるような箇所であれば良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、収納カセット35における比較的上寄りの箇所に標識部36及び37を設けるようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、収納カセット35における中程や下寄りの箇所に標識部36及び37を設けるようにしても良い。この場合、収納カセット35を対応しないカセット装着部32に誤挿入した場合に、僅かに挿入した段階で標識部36及び37がカセット装着部32の側面等と直ちに干渉するため、深くまで挿入させることなく誤挿入であることを認識させ、無駄な作業を省くことができる。
さらに上述した第2の実施の形態においては、標識体141をT字状に構成し、標識取付部142に対する標識体141の取付形態を前標識形態又は後標識形態の2通りとするようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば全体的に三角形状でなり各辺に互いに異なる突起を形成した標識体を構成して取付形態を3通りとする等、種々の形状の標識体を用いることにより多数の取付形態を採り得るようにしても良い。第3の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第2の実施の形態においては、1種類の標識体141を取り替えることなく、標識取付部142に対する取付方向を変化させることにより、2通りの標識形態を表すようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば形状の異なる2種類の標識体を用意し、これらを取り替えることにより2通りの標識形態を表すようにしても良い。第3の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第2の実施の形態においては、収納カセット135の標識部136及び137において共通の標識体141を用いるようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、標識部136及び137において互いに異なる標識体を用いるようにしても良い。第3の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第2の実施の形態においては、標識取付部142に標識体141を取り付ける際、2個の位置決め突起141Rにより取付位置を定め、1個の取付孔141Sを介して1本の取付ねじ143によりねじ止めして取り付けるようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば位置決め突起141Rの数を1個又は3個以上としても良く、又は取付孔141Sを2個以上として2本以上の取付ねじ143によりねじ止めするようにしても良く、特にこの場合は位置決め突起141Rを省略しても良い。
また、標識取付部142に位置決め用の突起を立設し、標識体141にこれと対応する孔を穿設するようにしても良い。或いは、弾性変形する爪状の係合部を形成し、これにより標識取付部142に取り付けるようにしても良い。
すなわち本発明では、周知の種々の手法により、標識取付部142に対し所定の取付位置及び所定の取付方向となるように標識体141を取り付けるようにすることができる。この場合、標識取付部142に対し標識体141を確実に取り付けることにより誤挿入時の装着を確実に防止する一方、所定の取り外し作業により取り外すことができれば、標識形態の事後的な変更が可能となる。第3の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第2の実施の形態においては、2個の標識部136及び137を組み合わせることにより、4通りの標識パターンを形成するようにした場合について述べた(図9(C))。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば3個以上の標識部を組み合わせることにより、5通り以上の標識パターンを形成するようにしても良い。この場合、カセット装着部132については、標識部と対応するそれぞれの箇所に嵌合部を設ければ良い。第3の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第2の実施の形態においては、全ての標識部136及び137において標識取付部142に標識体141を必ず取り付けるようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば運用中に収納カセット135を複数のカセット装着部132間で頻繁に入れ替えるような場合に、標識取付部142に標識体141を取り付けないようにしても良い。第3の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第3の実施の形態においては、1種類の嵌合体251の取付方向を切り換えることにより2通りの溝形態を表すようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば溝形態ごとに異なる嵌合体を用意するようにしても良く、或いは1種類の嵌合体251により3通り以上の溝形態を表すようにしても良い。
さらに上述した第3の実施の形態においては、収納カセット135の標識部136及び137において、標識取付部142に標識体141を取り付けて各標識パターンを構成した場合に、カセット装着部232の嵌合部233及び234において嵌合体取付部252に嵌合体251を取り付けるようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば第1の実施の形態における収納カセット35のように標識部36及び37が固定的に取り付けられている場合にも、各嵌合部において嵌合体取付部252に嵌合体251を取り付けるようにしても良い。
さらに上述した第3の実施の形態においては、全ての嵌合部233及び234において嵌合体取付部252に嵌合体251を必ず取り付けるようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば運用中にカセット装着部232に挿入すべき収納カセット135を頻繁に入れ替えるような場合に、嵌合体取付部252に嵌合体251を取り付けないようにしても良い。
さらに上述した第1の実施の形態においては、カセット装着部32A〜32Dにおいて嵌合部33及び34の溝の位置を他のいずれとも相違させるようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えばカセット装着部32A及び32Bのいずれにおいても収納カセット35に同一種類の紙幣を収納させる場合に、両者の溝の位置を揃えると共に収納カセット35A及び35Bにおいても標識部36及び37の位置を揃える等、一部のカセット装着部及び収納カセットの間で嵌合部及び標識部の位置を揃えるようにしても良い。この場合、位置を揃えたカセット装着部32の間でのみ、収納カセット35に互換性を持たせることができる。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1実施の形態においては、カセット装着部32及び収納カセット35をそれぞれ4個とし、標識部36及び37並びに嵌合部33及び34の位置を4通りに相違させるようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、カセット装着部32及び収納カセット35をそれぞれ2個、3個又は5個以上とし、標識部36及び37並びに嵌合部33及び34の位置を2通り、3通り又は5通り以上に相違させるようにしても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、紙幣入出金機10の紙幣入出金機筐体11に対し紙幣収納ユニット18を前後方向へスライドするようにし、紙幣収納ユニット筐体31に設けられたカセット装着部32に対し収納カセット35を上から下へ向けて、すなわちスライドする前後方向と交差する下方向へ挿入するようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば紙幣収納ユニット筐体31に対しカセット装着部32の開放部分を左又は右に向けるよう取り付け、当該カセット装着部32の左側又は右側から収納カセット35を右方向又は左方向へ向けて挿入するようにしても良く、或いは紙幣収納ユニット筐体31に対しカセット装着部32の開放部分を前方に向けるよう取り付け、当該カセット装着部32の前側から後方へ向けて、すなわちスライドする前後方向と平行な後方向へ挿入するようにしても良い。この場合、紙幣収納ユニット筐体31は、紙幣入出金機筐体11に対し固定されスライドしない構成であっても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、金融機関等において顧客との間で現金に関する取引を行う現金自動預払機1の紙幣収納ユニット18において、カセット装着部32に装着された収納カセット35に媒体としての紙幣を収納するようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば金融機関等において職員が現金に関する各種処理を行うための出納システムに組み込まれるカセット装着部及び収納カセットに適用するようにしても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、紙幣の入金処理や出金処理等を行う紙幣入出金機10において、カセット装着部32に装着した収納カセット35に媒体としての紙幣を収納するようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば債権、証書、商品券、金券や入場券等のような紙葉状の媒体、或いは硬貨のような円板状の媒体等、種々の形状でなる媒体を取り扱う種々の装置において、特定の種類の媒体を収納した収納カセットを特定のカセット装着部に装着して運用するようにしても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
さらに上述した実施の形態においては、収納カセットとしての収納カセット35と、カセット装着部としてのカセット装着部32と、標識部としての標識部36及び37と、嵌合部としての嵌合部33及び34とによって媒体収納装置としての紙幣収納ユニット18
を構成する場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる収納カセットと、カセット装着部と、標識部と、嵌合部とによって媒体収納装置を構成するようにしても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。