JP5926971B2

JP5926971B2 - セパレータを備えた旋回軸受

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Publication number: JP5926971B2
Application number: JP2012022910A
Authority: JP
Inventors: 俊亮菊地
Original assignee: Nippon Thompson Co Ltd
Current assignee: Nippon Thompson Co Ltd
Priority date: 2012-02-06
Filing date: 2012-02-06
Publication date: 2016-05-25
Anticipated expiration: 2032-02-06
Also published as: JP2013160309A; EP2623805A1; US20130223783A1; US8753019B2

Description

この発明は，例えば，各種の組立装置，工作機械，産業用ロボット，半導体製造装置等の旋回部分に使用されるセパレータを備えた旋回軸受に関する。

従来知られている複列ローラ軸受は，内周面の周方向に沿って２条の外側転走溝が形成された外輪と，外輪の外側転走溝と対向する２条の内側転走溝が外周面の周方向に沿って形成された内輪と，これらの外側転走溝及び内側転走溝が互いに対向して形成された転走路に配列され且つ内輪又は外輪の回転に伴って転走路で荷重を負荷しながら循環する多数のローラとから構成されている。外側転走溝及び内側転走溝は，ローラが転走する転走面とローラの軸方向端面と微小隙間を介して対向するスキュー規制面とが交わって断面略Ｖ字状に形成されており，また，外側転走溝のスキュー規制面には，ローラの自転軸に対向する部位を挟んで一対の環状溝が外輪の内周面の周方向に沿って形成されている。また，内側転走溝のスキュー規制面には，ローラの自転軸に対向する部位を挟んで一対の環状溝が内輪の外周面の周方向に沿って形成されている。更に，外輪には，外側転走溝の最深部から半径方向に貫通する潤滑油の排出通路が設けられている（例えば，特許文献１参照）。

従来，組み立て作業が容易で小形化が可能なアンギュラコンタクト円筒ころ軸受として，本出願人が先に開発した図１５及び図１６に示されるものが知られている。該アンギュラコンタクト円筒ころ軸受は，図１５に示すように，外輪５１と内輪５２との間に円筒ころ５３の軌道路６０が複列で形成されており，各軌道路６０内に配列された円筒ころ５３の自転軸が外輪５１及び内輪５２の回転軸に対して傾斜しているタイプである。外輪５１には，円筒ころ５３を軌道路６０に組み込むために組込孔５５が形成されており，組込孔５５は蓋部材６７で閉鎖されている。外輪５１の内周面５８は，外側軌道溝５６の外側も内側も同じレベルで段差は形成されていない。同様に，内輪５２の外周面５９は，内側軌道溝５７の外側も内側も同じレベルで段差は形成されていない。外側軌道溝５６及び内側軌道溝５７は，断面Ｖ型形状であって，ころ転動面６１を受ける転走面６３，６５と，ころ端面６２を受ける案内部６４，６６とは同じ形状に形成されている。また，該アンギュラコンタクト円筒ころ軸受は，軌道溝５６，５７間に配列した円筒ころ５３間にセパレータ５４が組み込まれている（図１６）。セパレータ５４は，図１６に示すように，円筒ころ５３が転動する軌道のそれぞれの転走面６３，６５に僅かな隙間で対向する対向面で成る上面６８と下面６９，上面６８と下面６９とを連設された柱部７０，及び円筒ころ５３の端面６２側に面する軌道のそれぞれの案内面に僅かな隙間で対向する端面を有している。また，セパレータ５４の両側には円筒ころ５３を嵌入する凹部が対称に形成され，更に，セパレータ５４の両側面の凹部は中央部に向かって漸次膨出する凸状の円弧形状に形成され，円筒ころ５３がセパレータ５４の凹部の凸状部分に接触して回転案内されるものである（例えば，特許文献２参照）。

また，図１７に示すような複列旋回軸受が知られている。該複列旋回軸受は，外輪７１と内輪７２との間に設けられた複数列の転走路７４にローラ等の転動体７３が装填されたものである。該複列旋回軸受は，内周に複数列の転走溝７５が設けられた外輪７１と，外輪７１の内側に配置され且つ外周には外輪７１の転走溝７５に対応する複数列の転走溝７６が設けられた内輪７２と，内外輪の転走溝間に形成される転走路７４に装填される多数の転動体７３とを備えている。外輪７１又は内輪７２には，その半径方向に貫通して転走路７４への転動体７３の挿入を可能にする挿入孔７７が転走路７４毎に個別に設けられている（例えば，特許文献３参照）。

ＷＯ２００９／０２００８７号公報特開２０００−３１４４１８号公報特開２００２−１３５４０号公報

ところで，上記のアンギュラコンタクト円筒ころ軸受では，外輪と内輪に複数条の軌道溝が形成され，転動体である複数の円筒ころを有して，各軌道溝間はアンギュラコンタクトの軌道になっており，円筒ころと円筒ころ間に介装される複数のセパレータを組み込むための組込孔が形成され，セパレータの両側には，円筒ころを嵌入する凹部が対称に形成されており，セパレータの両側面の凹部は中央部に向かって漸次膨出する凸状の円弧形状で，円筒ころがセパレータ凹部の凸状部分に接触して回転案内される。しかしながら，セパレータの凹部形状は，ローラを組み込む方向を一方向に限定する形状，言い換えれば，ローラのローラ転動面を受ける面が端面に一方向のみの形状に形成されていた。従って，軸受を組み立てるとき，軌道輪に形成された組込孔からローラとセパレータを投入するが，このときローラとローラの間に組み込むセパレータの姿勢を一方向になるように正しく姿勢調整するのに，手間がかかるという問題を有していた。

また，従来のセパレータ４４は，図１３に示すように，ローラ３のローラ転動面１１に対向して接触する凹部４５が一方向に延びているタイプである。セパレータ４４は，移動方向にローラ３を隔置するための幅を有した外周面４６が４つの辺４６Ｓから成る略四角形状に形成され，中心部に貫通孔４７が形成されている。セパレータ４４は，外周面４６の各辺４６Ｓに溝部４８が形成され，ローラ転動面１１側即ち軌道溝６，７の転走面１３，１５側には大きなサイズの溝部４８Ｌが形成され，ローラ端面１２側即ち軌道溝６，７の案内部１４，１６側には小さなサイズの溝部４８Ｓが形成されている。従って，セパレータ４４を組込孔を通じて軌道路に装填する場合には，セパレータ４４の姿勢を調整して組み込む必要があった。

更に，別の例として，図１４に示すようなセパレータ４９は，ローラ３のローラ転動面１１に対向して接触する凹部４５が，図１３に示す凹部と同様に，一方向に延びているタイプである。セパレータ４９は，移動方向にローラ３を隔置するための幅を有した外周面４６が４つの辺４６Ｓから成る略四角形状に形成され，中心部に貫通孔４７が形成されている。セパレータ４９は，外周面４６の各辺４６Ｓに溝部５０が形成され，ローラ転動面１１側即ち軌道溝６，７の転走面１３，１５側には大きなサイズの溝部５０Ｌが形成され，ローラ端面１２側即ち軌道溝６，７の案内部１４，１６側には小さなサイズの溝部５０Ｓが３個形成されている。従って，セパレータ４９は，セパレータ４４と同様な問題を有していた。

この発明の目的は，上記の課題を解決することであり，セパレータの両側に隣り合う円筒ころ即ちローラ同士の軸線が平行なアンギュラコンタクトの旋回軸受に限らず，ローラ軸線が互いに９０°ずつ交差しているクロスローラタイプの旋回軸受にも適用できるように構成されており，ローラの転動面を嵌入するセパレータの凹部が両端面にローラ軸線方向に対して平行方向と直交方向に十字状に形成されており，セパレータがローラに対して，９０°回転方向にセパレータを組込孔に装填してもローラに対して適正な姿勢で軌道路に組み込み可能になり，セパレータに対してローラを嵌入できる方向が２方向であるので，外輪又は内輪に形成された組込孔からのセパレータの軌道路への装填が極めて容易になり，ローラのサイズが小さくてもセパレータの組立性が良好になり，また，セパレータとローラが同じ位置に接触するように幅及びセパレータの両端面の凸部の先端部を平面に形成したことを特徴とするセパレータを備えた旋回軸受を提供することである。

この発明は，内周面に沿って外側軌道溝が形成された外輪，外周面に沿って前記外輪の前記外側軌道溝に対向する内側軌道溝が形成された内輪，前記外側軌道溝と前記内側軌道溝とで形成される軌道路に配設され且つ前記外輪と前記内輪の相対回転に伴って前記軌道路で荷重を負荷して循環する多数のローラ，前記ローラ間に位置して前記軌道路に配設された多数のセパレータ，及び前記内輪又は前記外輪に形成された前記ローラと前記セパレータとを組み込むための組込孔を閉鎖する蓋部材から構成された旋回軸受において，
前記セパレータは，前記外輪と前記内輪とに対向する外周面が移動方向の垂直断面形状が実質的に四角形に形成されており，
前記セパレータには，両端面に前記ローラのローラ転動面が嵌入される円弧状の凹部が前記ローラのローラ軸線方向に対して平行方向と直交方向とに互いに直交した２方向に対称の十字形状に形成されており，前記端面間の中央を貫通する貫通孔が形成されていると共に，前記ローラと点接触の接触状態を維持するために，それぞれの前記凹部の底位置での断面形状が円弧形状で前記貫通孔の周縁部に向けて漸次膨出する膨出部が四方に形成されており，
前記セパレータの前記両端面間の前記外周面には，各辺にそれぞれ同一の溝部が形成されており，前記溝部の断面形状が円弧形状に形成されており，
前記セパレータの前記両端面間に形成された前記貫通孔は，前記端面側の直径が中央部の直径より大きく段付きの断面形状にそれぞれ形成されており，
及び，前記セパレータの前記両端面のそれぞれの四隅は，凸部に形成されて前記凸部の先端形状が平面に形成されており，それぞれの前記セパレータと前記ローラとの接触位置を同一位置に接触可能に構成したことを特徴とするセパレータを備えた旋回軸受に関する。

また，前記円弧状の前記凹部の円弧面は，前記セパレータに対向する前記ローラの前記ローラ軸線方向の中央付近では狭く，前記ローラの端面側では前記セパレータの外形寸法に近づく広さに拡開して形成されている。

また，前記外輪の前記外側軌道溝と前記内輪の前記内側軌道溝とは，前記ローラ転動面が転動する転走面とローラ端面がガイドされる案内部とから成る二条列の断面略Ｖ字形状にそれぞれ形成されており，前記外輪の前記内周面は前記外側軌道溝を境に段差に形成されて前記外輪の前記転走面が前記外輪の前記案内部より長く形成されており，前記内輪の前記外周面は前記内側軌道溝を境に段差に形成されて前記内輪の前記転走面が前記内輪の前記案内部より幅寸法が長く形成されている。

この発明によるセパレータを備えた旋回軸受は，上記のように，セパレータを外周面を断面略四角形状に且つ両端面をローラのローラ転動面に対向する円弧状の凹部に十字状に対称に形成し，凹部の中央部即ち底部に向けて漸次膨出する円弧形状の膨出部に形成し，四角形状の外周面には潤滑剤の通路となる溝部を形成し，溝部の断面形状を円弧形状に形成し，凹部の中央位置に貫通孔を形成し，貫通孔を潤滑剤溜まり孔にするため，断面形状を段付きで両端側の直径を大きく形成したので，セパレータの姿勢調整することなく組込孔から軌道路にローラ転動面に対向する凹部が９０°の方向又は１８０°の方向に回転して組み込まれても，ローラ転動面に対する接触状態を良好な状態に装填でき，セパレータの組込孔からの軌道路への装填が極めて容易になる。セパレータは，凹部でローラ転動面の軸方向中央付近の狭い範囲に接触した状態でローラを回転案内する。セパレータの凹部は，２つの方向に対称に形成されているので，セパレータがどちら向きでもローラ転動面に対して同じ接触状態になる。セパレータの凹部の貫通孔部分には，潤滑剤が保持され，外周面に形成された溝部と貫通孔によって，軌道路において潤滑剤が流動しやすくなる。また，凹部に膨出部を形成することによってローラ転動面はセパレータの凹部において，面接触が防止され，ローラとセパレータとの相対的な傾斜接触状態で異なるが，点接触になって接触摩擦抵抗が低減される。従って，この旋回軸受は，セパレータの凹部とローラとの接触抵抗が小さくなり，軸受へのセパレータの組立性が向上し，潤滑剤はローラ間を移動しやすく，潤滑性能が向上する。また，ローラのローラ転動面に対向するセパレータの凹部は，互いに直交する円弧状の凹部が形成されており，ローラ転動面の接触面側のセパレータの四隅が凸部に形成されており，凸部の先端部が平面に形成され，凹部はローラの軸方向中央付近では狭く，ローラ端面側では外形寸法に近い広さに形成されているので，組込孔へのローラの組み込み方向が２方向になり，組込孔へのセパレータの組込自由度が高く，軸受の組立性が向上する。

この発明によるセパレータを備えた旋回軸受である一実施例の複列アンギュラローラベアリングを示す外観図である。図１の複列アンギュラローラベアリングのＡ−Ａ’断面位置を示す断面図である。図１の複列アンギュラローラベアリングのＢ−Ｏ−Ｃ断面位置に示し，２つの軌道溝に対して1 つの組込孔が形成されている実施形態を示す断面図である。図３の符号Ｄの領域を示す拡大断面図である。この発明による旋回軸受に組み込まれたセパレータの一実施例を示す斜視図である。図５のセパレータの端面を示す正面図である。図６のＨ−Ｈ断面位置におけるセパレータを示す拡大断面図である。ローラに接触するセパレータの端面を示す正面図である。図８のＪ−Ｊ断面におけるセパレータの貫通孔方向から見たローラとセパレータとの配列状態を示す説明図である。図４の符号Ｋの領域におけるローラと，外輪の内側軌道溝と内輪の外側軌道溝から成る軌道路とを示す拡大断面図である。図１０の符号Ｅの領域を拡大して示す説明図である。外輪の内側軌道溝と内輪の外側軌道溝との間の軌道路を転動するローラを示す斜視図である。ローラ間に位置する従来のセパレータの一例を示す斜視図である。図１３と同様な位置での従来のセパレータの別の例を示す斜視図である。外輪の内側軌道溝と内輪の外側軌道溝とから成る軌道路にローラを配設したたローラを従来の複列ローラ軸受を示す断面図である。図１５の複列ローラ軸受におけるローラ間に配設されたセパレータを示す斜視図である。転動体を組み込む挿入孔が軌道路毎に設けられた従来の複列旋回軸受を示す断面図である。

以下，図面を参照して，この発明によるセパレータを備えた旋回軸受の一実施例について説明する。この発明によるセパレータを備えた旋回軸受は，図１〜図４に示すように，概して，外輪１，内輪２，及びそれらの間に形成された軌道路１０に配設されたローラ３とローラ３間に配設されたセパレータ４（図５）から構成されている。外輪１又は内輪２のいずれか一方（実施例では外輪１）に，円筒ころのローラ３とセパレータ４を組み込むための組込孔５が形成されて，断面Ｖ溝状の軌道溝６，７を複数列（図では２条列）を有する複列のアンギュラコンタクト円筒ころ軸受である。外輪１には，内周面８に断面Ｖ溝状の外側軌道溝６が形成され，また，内輪２には，外周面９に断面Ｖ溝状の内側軌道溝７が形成されている。また，この実施例では，外側軌道溝６と内側軌道溝７との作用線Ｆと軸受半径方向との成す角，即ち，転動体荷重が負荷される方向と軸受の中心軸に垂直な平面とのなす角の接触角αは，図４に示されるように，４５°の角度に形成されている。従って，外側軌道溝６と内側軌道溝７の各条列から延びる作用線Ｆの延長線の交差する交差角βは，互いに直交して９０°の角度に形成されている。外輪１及び内輪２には，ベース，機器等の他の部材に取り付けて固定されるためにザグリ状の取付け用孔３０，３１が形成されている。このアンギュラコンタクト円筒ころ軸受の軌道溝６，７の配列は，背面配列構造又は正面配列構造に構成され，本実施例では，背面配列構造に構成されている。背面配列状態では，図４に示すように，外側軌道溝６の転走面１３の中央部間距離ａよりも，内側軌道溝７の転走面１５の中央部間距離ｂが大きくなっている。また，外側軌道溝６と内側軌道溝７とから成る軌道路１０を転動するローラ３のローラ荷重の作用線Ｆ同士は，ローラ３のピッチ円の外側で互いに交差している。背面配列状態は，ローラ荷重の作用点間の距離が大きく，モーメント荷重に対する負荷能力が高くなる。

このセパレータを備えた旋回軸受の仕様は，本実施例では，例えば，内輪２の内周面寸法，即ち内径寸法が１６０ｍｍ，外輪１の外周面３２の寸法，即ち外径寸法が２９５ｍｍ，外輪１と内輪２との幅寸法が３５ｍｍに形成されている。ローラ３は，例えば，直径Ｄａと長さＬｒの比率が略１：１に形成されているが，詳しくは，直径Ｄａの寸法はφ６ｍｍであり，長さＬｒは直径寸法よりも僅かに小さく形成されている。この旋回軸受は，その軸方向両端側には，防じん部品としてシールが設けられるように，外輪１と内輪２との間の端面側にシール溝４１が設けられている。外輪１には，油孔２４が形成されており，本実施例では，４箇所に形成されており，油孔２４同士は，例えば，互いに外輪１の周方向に９０°隔置するように形成されている。油孔２４は，例えば，直径φ２ｍｍの貫通孔であり，外輪１の外周面３２側に管用テーパ雌ねじが形成されている。この旋回軸受では，ローラ３及びセパレータ４の軌道路１０への組み込むための組込孔５は，本実施例では外輪１に１箇所形成され，油孔２４と干渉しない位置に形成されている。このセパレータを備えた旋回軸受では，組込孔５を通じて複数の転動体のローラ３及びローラ３間にセパレータ４が組み込まれる。また，組込孔５は，蓋部材２５で閉鎖される。蓋部材２５は，例えば，特開２０１０−２３００５３号公報に開示されているものを使用することができる。蓋部材２５の軌道溝６側の端部は，軌道溝６の形状に対応した形状に形成されている。蓋部材２５は，外周面に軸方向に形成されたスリット２８と，スリット２８の端部付近に周方向に形成されたスリットを有する。蓋部材２５の他方の端部にはねじ孔２９Ｈが形成されている。ねじ孔２９Ｈの口元は，対応した頭部形状の止めねじ２９を締め込むことによって，スリット２８が広がり蓋部材２５の外形が拡径して，組込孔５に対して蓋部材２５が外輪１に形成されたピン孔２７に挿通したピン２６で固定されるようになる。蓋部材２５の他方の端部は，外輪１の外周面３２よりも凹んだ位置になっている。

この発明によるセパレータを備えた旋回軸受に組み込まれたセパレータの一実施例を，図５〜図９を参照して説明する。このセパレータを備えた旋回軸受は，特に，セパレータ４の組込孔５からの組込性を向上させて容易に且つ確実に装填できるように構成したことに特徴を有している。セパレータ４は，特に，外輪１と内輪２とに対向する外周面３３が移動方向の垂直断面形状が実質的に四角形に形成されており，ローラ３のローラ転動面１１が嵌入されるセパレータ４には，両端面４Ｓに円弧状の凹部３５がローラ軸線方向に対して平行又は直交する方向に互いに直交した十字状にそれぞれ形成され，両端面４Ｓ間の中央を貫通する潤滑剤溜まり部のための貫通孔３７が形成されていることを特徴としている。また，セパレータ４の凹部３５の底位置での断面形状は，貫通孔３７の周縁部に向けて漸次膨出する円弧形状の膨出部３８が十字状に四方に形成されている。また，セパレータ４は，両端面４Ｓに形成された円弧状凹部３５間の外周面３３の各辺３３Ｓには溝部３４がそれぞれ形成され，溝部３４の断面形状が円弧形状に形成されている。更に，セパレータ４の両端面４Ｓ間に形成された貫通孔３７は，両端面４Ｓ側の直径が中央部の直径より大きく段付きの断面形状に形成されている。また，ローラ転動面１１を嵌入する円弧状の凹部３５は，ローラ軸線方向に対して平行又は直交する方向に形成されており，セパレータ４の両端面４Ｓの四隅には凸部３６が形成されており，凸部３６の先端形状が平面に形成されている。セパレータ４の貫通孔３７の縁部で，セパレータ４の中心と凸部３６とを結ぶ４箇所には，セパレータ４の軸方向に突出するローラ３と接触する接触凸部３９が形成されている。また，セパレータ４は，円弧状凹部３５がセパレータ４に対向するローラ３の軸方向中央付近では狭く，ローラ端面１２側では外形寸法に近い広さに形成され，しかも略四角形の４つの各辺３３Ｓに向けて末広がりに拡がっている。即ち，円弧状凹部３５の円弧面は，セパレータに対向するローラ３の軸線方向の中央付近では狭く，ローラ端面１２側では外形寸法に近づく広さに拡開して形成されている。

具体的には，セパレータ４は，外輪１の外側軌道溝６と内輪２の内側軌道溝７とで形成される軌道路１０に組込孔５から装填されてローラ３間に配設され，移動方向にローラ３を隔置するための幅を有した外周面３３が４つの辺３３Ｓから成る実質的に四角形状に形成され，中心部には貫通孔３７が形成されている。即ち，セパレータ４は, ローラ３のローラ転動面１１と対向する凹部３５側から見た形状は, 略四角形である。セパレータ４は，外周面３３の各辺３３Ｓに溝部３４が形成され，また，ローラ３に対向する面には，各辺３３Ｓ間であるローラ転動面方向に延び且つローラ３のローラ転動面１１に対応する断面円弧状の凹部３５が直交（９０°）して十字状に形成されており，４隅には平面の凸部３６が形成されている。セパレータ４の外周面３３は，外輪１と内輪２の軌道溝６，７の案内部１４，１６と転走面１３，１５に対向して軌道路１０に配設されている。言い換えれば，セパレータ４は，外周面３３の転走面１３，１５側同士の間に円弧状の凹部３５が形成されている。また，外側軌道溝６の転走面１３はテーパ面２１に，また，内側軌道溝７の転走面１５はテーパ面２２に形成されている。セパレータ４の凹部３５は，ローラ転動面１１に対応して断面が円弧状であり，特に，図６と図７に示すように，凹部３５でローラ３の軸方向中央付近の狭い範囲に接触した状態でローラ３を回転案内する。

また，セパレータ４の凹部３５は，図７に示すように柱部４０の中央に形成した貫通孔３７を中心に十字方向に対称に形成されており，セパレータ４がどちら向きに軌道路１０に装填されてもローラ３に対して同じ接触状態になるように形成されている（図６参照）。更に，セパレータ４の凹部３５には，その略中央付近に向けて円弧形状に漸次膨出する膨出部３８が形成されている。凹部３５における膨出部３８は，ローラ転動面１１に対するセパレータ４の当接状態，例えば，ローラ３とセパレータ４との相対的な傾斜接触状態で異なるが，ローラ３の周方向に点接触，軸方向に点接触する状態となって，面接触状態を避けることができ，接触摩擦抵抗を低減できる接触状態となる機能を有している。また，セパレータ４の外周面３３の各辺３３Ｓに形成された溝部３４の断面形状は，円弧形状に形成されている。セパレータ４に形成された貫通孔３７は，潤滑剤溜まり孔の機能を果たし，断面形状がザグリ孔状に段付きに端側の直径が大きく形成され，潤滑剤が保持される。それ故に，セパレータ４は，外周面３３に形成された溝部３４と貫通孔３７によって，潤滑剤が流動し易くなっている。ローラ転動面１１は，セパレータ４の凹部３５の貫通孔３７付近で接触するようになっている（図６，図７参照）。

セパレータ４のローラ嵌入面の凹部３５から見た正面形状は，例えば，略四角形の各辺３３Ｓが５. ９５ｍｍに形成されており，外周面３３に形成される4 つの円弧状溝部３４は同一の大きさであって，例えば，半径寸法が１. ５ｍｍに形成されている。ローラ３を嵌入する面である互いに直交する円弧状の凹部３５は，例えば，半径寸法が３. １ｍｍに形成されている。また，貫通孔３７は，段付き形状であって，例えば，中央部の直径がφ１．５ｍｍであって，周囲端部の直径がφ２. ５ｍｍに形成されている。また，セパレータ４の正面の４隅が凸部３６に形成され，凸部３６の先端は平面に形成され，円弧状の凹部３５が直交していることによって，凹部３５は，辺３３Ｓ側が長く且つ貫通孔３７側が短い略三角形状が4 つに形成される（図５，図６参照）。従って，セパレータ４の凹部３５の外周側がローラ転動面１１に対向する面が広く，ローラ転動面１１の中央位置よりもローラ端面１２側の位置で対向面積が広くなり，ローラ端面１２側ではセパレータ４との対向面寸法に近い広さに拡開して形成されている。

この旋回軸受において，ローラ転動面１１が嵌入するセパレータ４の凹部３５は，断面が円弧形状であって，凹部３５のローラ軸方向の形状がセパレータ４の略中央付近がローラ転動面１１に向かって円弧に膨らんだ膨出部３８に形成されている。旋回軸受のローラP.C.D.（ローラピッチ円直径）が変化したときや，ローラ３とセパレータ４の周方向の隙間の変化で，ローラ３に対するセパレータ４の姿勢や傾きが変化して，ローラ３とセパレータ４との接触位置が変化する。ローラ３との接触位置は，セパレータ４の凹部３５同士が交わる稜線に近い位置で，接触突部からセパレータ４の外周面３３に近い位置までの範囲で変化するが，ローラ３とセパレータ４の膨出部３８との接触形態は，点接触の状態を維持して変化しないものである。ローラ３とセパレータ４の間に周方向の隙間が生じる場合でも，接触形態は変化しないで点接触の状態を維持する。なお，セパレータ４の凹部３５が，ローラ軸線方向に平行になるような直線状の凹部構造の場合では，ローラ転動面１１が凹部３５の底の位置に線接触することになる。しかしながら，ローラP.C.D.が変化したときや，ローラ３とセパレータ４の間に周方向の隙間が生じると，ローラ３とセパレータ４の接触形態が変化して，線接触から点接触に変化する。また，セパレータ４とローラ３の中央に近い位置での接触は，セパレータ４とローラ３は，各部品の中央に近い位置で接触する。ローラ３の寸法が共通であれば，ローラP.C.D.が一定範囲内で変化しても同一のセパレータ４を流用できるので，寸法別に専用のセパレータ４を複数種類用意する必要がなくなることになる。実施形態の旋回軸受について，例えば，ローラ寸法は，φ６×５. ９３，ローラP.C.D.は，２２８. ９５ｍｍであり，ローラP.C.D.は，±１００ｍｍの範囲で変化しても，同じセパレータ４が流用可能になる。ローラ３とセパレータ４の接触形態が変化しないので，軸受回転中は安定した接触状態を維持できることになる。セパレータ４とローラ３が中央付近で接触しようとするので，ローラ３が進行方向に対して傾くスキュー現象を起こし難くなる。ローラ転動面１１とセパレータ４の凹部３５の滑り接触による摩擦抵抗が大きくなる線接触状態に比べて，接触面積の小さい点接触では，摩擦抵抗が小さくなる。

また，この旋回軸受は，特に，図４，図１０及び図１１に示すように，外輪１の内周面８に形成した外側軌道溝６を境に内周面８に段差を形成し，内輪２の外周面９に形成した内側軌道溝７を境に外周面９に段差を形成し，転走面１３，１５のローラ転動面１１との接触面積を大きく，案内部１４，１６のローラ端面１２との接触面積を小さく構成したことを特徴とするものである。外輪１の外側軌道溝６は，断面略Ｖ字形状の一面が転走面１３に形成され，他面が案内部１４に形成されている。案内部１４は，研削加工のための砥石（図示せず）用の逃がし溝１９と，ローラ端面１２をガイドする案内面１７とで構成されている。同様に，内輪２の内側軌道溝７は，断面Ｖ溝状の一面が転走面１５に形成され，他面が案内部１６に形成されている。案内部１６は，研削加工のための砥石（図示せず）用の逃がし溝２０と，ローラ端面１２をガイドする案内面１８とで構成されている。また，外輪１の外側軌道溝６は，外輪１の内側に位置してローラ転動面１１が転動する転走面１３と外輪１の外側に位置し且つ一方のローラ端面１２を旋回摺動する案内面１７を備えた案内部１４から構成されている。内輪２の内側軌道溝７は，内輪２の外側に位置してローラ転動面１１が転動する転走面１５と内輪２の内側に位置し且つ他方のローラ端面１２を旋回摺動する案内面１８を備えた案内部１６から構成されている。また，外側軌道溝６と内側軌道溝７との案内部１４，１６は，ローラ端面１２を案内し且つ外輪１の内周面８と内輪２の外周面９にそれぞれ形成された案内面１７，１８と，案内面１７，１８から外側軌道溝６と内側軌道溝７との底部まで延びる逃がし溝１９，２０とからそれぞれ構成されている。外輪１は，転走面１３をローラ転動面１１の有効接触長さより大きく形成して案内部１４を転走面１３より幅寸法を小さく形成するため，転走面１３側の内周面８が案内面１７側の内周面８より内径側に突出して内周面８が外側軌道溝６を境に段差に形成されている。また，内輪２は，転走面１５をローラ転動面１１の有効接触長さより大きく形成して案内部１６を転走面１５より幅寸法を小さく形成するため，転走面１５側の外周面９が案内面１８側の外周面９より外径側に突出して外周面９が内側軌道溝７を境に段差に形成されている。

この旋回軸受において，外輪１の内側の内周面８は，外輪１の外側の内周面８よりも，軌道溝６を転走するローラ３の中心Ｏ位置に接近している。また，内輪２の外側の外周面９は，内輪２の内側の外周面９よりも，軌道溝６を転走するローラ３の中心Ｏ位置に接近している。それ故に，外輪１の取付面側に位置する内周面８と２つの軌道溝６の内側に位置する内周面８では，半径方向にｔｏの段差が生じており，また，内輪２の取付面側に位置する外周面９と２つの軌道溝７の内側に位置する外周面９では，半径方向にｔｉの段差が生じている。また，外側軌道溝６と内側軌道溝７との転走面１３，１５の有効接触長さＬｔ１寸法は，ローラ３の有効接触長さＬｒ１よりも長く形成されている。軌道溝６，７の案内部１４，１６の幅寸法は，ローラ３の半径Ｄａ／２よりも長く，直径Ｄａよりも短く形成されている。しかも，外輪１と内輪２との案内部１４，１６における案内面１７，１８は，ローラ３のスキューを防止するに十分な長さであってローラ３の回転中心Ｏに跨がって，ローラの半径Ｄａ／２以下の幅寸法に形成され，ローラ３の回転中心Ｏに対して直角方向に傾斜したテーパ面４２に形成されている。

この旋回軸受は，軌道溝６，７や防じん部品の組込位置を除き，外輪１の内周面８と内輪２の外周面９との間の距離ｔは，外輪１と内輪２との幅方向において等しい長さに形成されている。外側軌道溝６と内側軌道溝７との逃がし溝１９，２０は，案内面１７，１８の転走面１３，１５側に周面全周に形成されている。逃がし溝１９，２０のローラ直径方向の幅寸法は，ローラ半径Ｄａ／２よりも小さく形成されている。ローラ３が軌道路１０に組み込まれている状態で，軸受半径方向の断面位置から見た時の逃がし溝１９，２０とローラ３のローラ転動面１１とで形成される断面形状は，くさび状に形成されている。逃がし溝１９，２０の傾斜面は，図１１に示すように，案内面１７，１８に対して，ローラ端面１２との間に角度θを成すように傾斜している。即ち，外輪１と内輪２との逃がし溝１９，２０は，案内部１４，１６と転走面１３，１５とを研削加工するために，案内部１４，１６の転走面１３，１５側に断面形状くさび状で転走面１３，１５との交点位置がＲ形状に且つ案内面１７，１８よりも大きく傾斜したテーパ面４３に形成されており，ローラ３の半径Ｄａ／２以下の幅寸法に形成されている。本実施例では，角度θは１２°である。逃がし溝１９，２０と転走面１３，１５との交差位置は，図１１に示すように，円弧形状で，半径寸法Ｒｎの最大値は０. ５ｍｍになっている。案内面１７，１８に対する逃がし溝１９，２０の深さは，ローラ直径Ｄａの１０％未満の７．５％であって，０. ４５ｍｍに形成されている。この旋回軸受は，別の実施例として，複数の軌道溝が正面合せ構造でも構成することができる。また，組込孔５の軌道路１０側の開口部５Ａ（図１０）は，外輪１の転走面１３の全域と案内部１４の逃がし溝１９とに開口して，開口部５Ａの縁部は逃がし溝１９の範囲内に形成され，案内面１７から外れるように偏倚しており，それによって，組込孔５に蓋部材２５が嵌入された場合に，蓋部材２５の軌道路１０側の先端部がローラ端面１２に当接することがなく，ローラ３は，開口部５Ａに落ち込んだり引っ掛かったりすることがなくスムーズに転動する。

この旋回軸受では，図１０及び図１１に示すように，転走面１３，１５の有効接触長さＬｔ１は，ローラ３の有効接触長さＬｒ１よりも長く形成されている。即ち，ローラ３の有効接触長さをＬｒ１，転走面１３，１５の有効接触長さをＬｔ１，ローラ３の面取部２３の軸方向長さをＬｒ２とすると，Ｌｒ１＜Ｌｔ１，Ｌｔ１＜Ｌｒ１＋２×Ｌｒ２になっている。また，転走面１３，１５の案内部１４，１６側における有効接触部分の端部位置ＲＥは，ローラ端部の面取り部２３の開始位置ＲＳよりもローラ端面１２側の位置にあって面取り部２３の寸法範囲内になっている。ローラ３の面取り部２３の形状の開始位置ＲＳから，転走面１３，１５の有効接触部の端部位置ＲＥまでの長さをＬｔ２とすると，Ｌｔ２＜Ｌｒ２になっている。即ち，外輪１と内輪２との転走面１３，１５は，逃がし溝１９，２０と連続して逃がし溝形状の転走面１３，１５側の始点である端部位置ＲＥがローラ３の面取り部２３の形状の開始位置ＲＳよりローラ端面１２側に位置してローラ端部の面取り部２３の寸法範囲内である。また，図１０及び図１２に示されるように，外輪１の外側軌道溝６に位置する外輪１側のローラ端面１２は，案内面１７に対して直径方向の両周端の２箇所の接触位置Ｔ１でほぼ点接触状態で接触ガイドされる。また，内輪２の内側軌道溝７に位置する内輪２側のローラ端面１２は，案内面１８に対してローラ回転中心Ｏを通る直径方向の１箇所の接触位置Ｔ２でほぼ線接触状態で接触ガイドされる。

この発明によるセパレータを備えた旋回軸受は，半導体製造装置，精密機械，測定・検査装置，医療機器，各種ロボット，各種組立装置，搬送機械，工作機械，マイクロマシーン等の各種装置における旋回部に組み込んで利用して好ましいものである。

１外輪
２内輪
３ローラ
４セパレータ
４Ｓセパレータの端面
５組込孔
６外側軌道溝
７内側軌道溝
８外輪の内周面
９内輪の外周面
１０軌道路
１１ローラ転動面
１２ローラ端面
１３，１５転走面
１４，１６案内部
２５蓋部材
３３セパレータの外周面
３４溝部
３５凹部
３６凸部
３７貫通孔
３８膨出部

Claims

内周面に沿って外側軌道溝が形成された外輪，外周面に沿って前記外輪の前記外側軌道溝に対向する内側軌道溝が形成された内輪，前記外側軌道溝と前記内側軌道溝とで形成される軌道路に配設され且つ前記外輪と前記内輪の相対回転に伴って前記軌道路で荷重を負荷して循環する多数のローラ，前記ローラ間に位置して前記軌道路に配設された多数のセパレータ，及び前記内輪又は前記外輪に形成された前記ローラと前記セパレータとを組み込むための組込孔を閉鎖する蓋部材から構成された旋回軸受において，
前記セパレータは，前記外輪と前記内輪とに対向する外周面が移動方向の垂直断面形状が実質的に四角形に形成されており，
前記セパレータには，両端面に前記ローラのローラ転動面が嵌入される円弧状の凹部が前記ローラのローラ軸線方向に対して平行方向と直交方向とに互いに直交した２方向に対称の十字形状に形成されており，前記端面間の中央を貫通する貫通孔が形成されていると共に，前記ローラと点接触の接触状態を維持するために，それぞれの前記凹部の底位置での断面形状が円弧形状で前記貫通孔の周縁部に向けて漸次膨出する膨出部が四方に形成されており，
前記セパレータの前記両端面間の前記外周面には，各辺にそれぞれ同一の溝部が形成されており，前記溝部の断面形状が円弧形状に形成されており，
前記セパレータの前記両端面間に形成された前記貫通孔は，前記端面側の直径が中央部の直径より大きく段付きの断面形状にそれぞれ形成されており，
及び，前記セパレータの前記両端面のそれぞれの四隅は，凸部に形成されて前記凸部の先端形状が平面に形成されており，それぞれの前記セパレータと前記ローラとの接触位置を同一位置に接触可能に構成したことを特徴とするセパレータを備えた旋回軸受。
前記円弧状の前記凹部の円弧面は，前記セパレータに対向する前記ローラの前記ローラ軸線方向の中央付近では狭く，前記ローラの端面側では前記セパレータの外形寸法に近づく広さに拡開して形成されていることを特徴とする請求項１に記載のセパレータを備えた旋回軸受。
前記外輪の前記外側軌道溝と前記内輪の前記内側軌道溝とは，前記ローラ転動面が転動する転走面とローラ端面がガイドされる案内部とから成る二条列の断面略Ｖ字形状にそれぞれ形成されており，前記外輪の前記内周面は前記外側軌道溝を境に段差に形成されて前記外輪の前記転走面が前記外輪の前記案内部より長く形成されており，前記内輪の前記外周面は前記内側軌道溝を境に段差に形成されて前記内輪の前記転走面が前記内輪の前記案内部より幅寸法が長く形成されていることを特徴とする請求項１又は２に記載のセパレータを備えた旋回軸受。