JP5921839B2 - 非接触給電トランス - Google Patents
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Description
下記特許文献1には、このシステムに用いる非接触給電トランスを、図13のように構成することが提案されている。この非接触給電トランスの送電コイル及び受電コイルは、平板状のフェライト磁心13の表面に扁平に巻回された渦巻き状のコイル7を有し、その表面がモールド樹脂17で被覆されている。この形態のコイルを「片側巻コイル」と称する。
しかし、片側巻コイルを用いる非接触給電トランスは、車両の停車位置がずれて送電コイルと受電コイルとが正対しなかったり、送電コイルと受電コイルとのギャップが変動したりすると、給電効率が大幅に低下する。こうした位置ずれやギャップ変動に対する許容量を大きくしようとすると、送電コイル及び受電コイルのサイズが大きくなる。
この非接触給電トランスでは、フェライトコア61、63の磁極部を通って巡回する主磁束67が発生する。それとともに、コイル62、64の非対向面側に迂回する漏洩磁束68、69が生じる。この漏洩磁束68、69が車体の床の鉄板等に侵入すると、誘導電流が流れて鉄板が加熱され、給電効率が低下する。これを避けるため、両側巻コイルを用いる非接触給電トランスでは、コイル62、64の背面にアルミ板等の非磁性の良導体65、66を配置して漏洩磁束68、69を磁気遮蔽する必要がある。
また、下記特許文献2では、両側巻コイルの一層の小型軽量化を図るため、フェライトコア61、63をH字型に構成し、H字の両側の平行する部分を磁極部とし、H字の横棒に相当する部分(磁極部間を繋ぐ部分)にコイルを巻回する構造を提案している。
図15及び図16は、両側巻コイルを用いた非接触給電トランスで連続給電試験を行い、そのときの温度上昇について測定した結果を示している。非接触給電トランスは、図15(a)及び図16(a)の断面図に示すように、フェライトコア131に巻線132を巻回して両側巻コイルを形成し、この両側巻コイルを樹脂製ケース133に収容して一次側コイル(送電コイル)及び二次側コイル(受電コイル)を構成している。また、二次側コイルの樹脂製ケース133の背面に接してアルミ板134を配置している。
この結果から、1.5kWの連続給電(図15)では、二次側巻線及び二次側フェライトコアの飽和温度が約60℃であり、連続給電が可能なレベルであるが、ただし、送電コイルが屋外に設置され、直射日光の照射で気温が高くなるような状況では、連続給電が困難になる。
3kWの連続給電(図16)は、一次側コイル及び二次側コイルを1.5kWの連続給電の時と同じ状態にし、電源電圧を100Vから200Vに上げて行った。90分後に二次巻線の温度が100℃を越えて上昇し続けたため、連続運転が不可能になった。
3kW給電時の給電効率は、1.5kWのときと同じ95%であり、全損失が2倍(150W)になり温度が上昇している。
この非接触給電トランスでは、アルミ等の非磁性導電金属材から成る固定板が、漏洩磁束のシールド材としての機能と、熱の放熱材としての機能とを果たしている。巻線抵抗損による熱は、固定板に伝導して固定板から放熱されるため、非接触給電トランスの温度上昇が抑えられる。
この場合、巻線抵抗損による熱は、高い熱伝導率を有するシリコン系樹脂等の高熱伝導性絶縁樹脂を経由して固定板に伝導し、固定板から放熱されるため、放熱特性が大幅に向上する。
この場合、コアで発生する鉄損の熱も高熱伝導性絶縁樹脂を経由して固定板に伝導し、固定板から放熱されるため、放熱特性が向上する。
この場合、コアで発生する鉄損の熱や、巻線で発生するジュール熱が高熱伝導性絶縁樹脂から成る巻線用ボビンを経由して固定板に伝導し、固定板から放熱される。
この場合、巻線の抵抗損による熱及びコアの鉄損による熱が、冷却用絶縁油を介して固定板に伝導し、固定板から放熱されるため、放熱特性が向上する。
そのため、小型で軽量な非接触給電トランスにより、大電力の連続給電を行うことができる。
本発明の第1の実施形態に係る非接触給電トランスは、図1に示すように、樹脂カバー31と、樹脂カバー31に固定される固定板32とを有し、この樹脂カバー31及び固定板32が両側巻コイルの筐体を構成している。
両側巻コイルのコア40は、電線(不図示)が巻回される被巻回部401と、被巻回部401の両端から被巻回部401と直交する方向に平行に延びる2つの磁極部402、403とを有し、全体形状がH字状を成している。
樹脂カバー31は、升のように一面だけが開口しており、この開口の周囲に、固定板32を嵌め込んで固定するための段差部311が形成されている。
固定板32は、非磁性導電金属材のアルミ板で形成されており、両側巻コイルの漏洩磁束を磁気シールドする機能と、通電時の両側巻コイルから発生する熱を放熱する機能とを有している。
図3に示すように、H型コア40に巻線(不図示)が巻回された両側巻コイルを樹脂カバー31に収納し(図3(a))、樹脂カバー31の開口に固定板32を固定して非接触給電トランスが製造される(図3(c))。この非接触給電トランスは、筐体の樹脂カバー31の側がギャップを隔てて他の両側巻コイルに対向するように、筐体の固定板32の側が車両の床などに固定される。
図4は、この非接触給電トランスを用いて3kWの連続給電試験を行ったときの各部の温度変化を示している。図4(a)は、この非接触給電トランスの断面図を示し、図4(b)は、横軸に時間(分)、左縦軸に温度(℃)を取り、一次側コア(1)、二次側コア(2)、一次側巻線(3)、二次側巻線(4)、二次側コイル筐体のAl固定板(5)、一次側コイル筐体のAl固定板(6)及び室温(7)の温度変化を示している。また、図4(b)では、右縦軸に給電効率を目盛り、給電効率の時間的変化を黒点で示している。
図4(b)と図16(b)とを比較して明らかなように、従来の樹脂ケースを筐体とする非接触給電トランスでは、3kWの連続給電を行うと、二次巻線の温度が100℃以上になっても上昇し続けたが、筐体にAl固定板32を有する非接触給電トランスでは、二次巻線の温度が約100℃で平衡飽和状態になる。この非接触給電トランスの給電効率は、94%以上であり、Al固定板32が漏洩磁束シールド材として作用していることが分かる。
なお、ここでは、非磁性導電金属材としてアルミを使用したが、銅などの金属を用いても良い。
本発明の第2の実施形態に係る非接触給電トランスは、高熱伝導性絶縁樹脂を用いて放熱特性の向上を図っている。
使用する高熱伝導性絶縁樹脂は、絶縁性樹脂であって、0.9W/mk以上の熱伝導率を有することが望ましい。こうした性能を有する樹脂は、広く市販されており、例えば、Si系樹脂のSE4486、SE4430(いずれも東レ・ダウケミカル社製)などを用いることができる。
図5は、この非接触給電トランスの製造過程を示している。両側巻コイルを筐体に収容したときに、両側巻コイルが接する固定板32の面に高熱伝導性絶縁樹脂50を予め塗布し(図5(a))、その上に両側巻コイルを配置する(図5(b))。この固定板32を、両側巻コイルを内側にして樹脂カバー31の開口に嵌合し、非接触給電トランスを製造する(図5(c))。
図6は、実際の製造過程を示している。図6(a)は、固定板32の面に高熱伝導性絶縁樹脂50を塗布した状態を示し、図6(b)は、その上に両側巻コイルを配置した状態を示している。図6(c)は、図6(b)の楕円で囲んだ箇所の拡大図であり、高熱伝導性絶縁樹脂50に一部が埋まった巻線を示している。
この非接触給電トランスでは、両側巻コイルの巻線の抵抗損による熱が、高熱伝導性絶縁樹脂50を通じて効率的に固定板32に伝導し、固定板32から放熱されるため、非接触給電トランスの温度上昇が効果的に抑えられる。
図7(b)と図4(b)とを比較して明らかなように、巻線404と固定板32との間が高熱伝導性絶縁樹脂50で充填されていない場合は、巻線404の平衡飽和温度が100℃であったが、その間を高熱伝導性絶縁樹脂50で充填すると、巻線404の平衡飽和温度が60℃に低下している。また、この非接触給電トランスの給電効率は、94%以上で安定しており、Al固定板32が漏洩磁束シールド材として安定的に作用していることが分かる。
このように、第2の実施形態の非接触給電トランスは、高熱伝導性絶縁樹脂50を用いることで、第1の実施形態の非接触給電トランスの放熱性能(冷却性能)を飛躍的に向上させることができる。
この場合、コア40で発生する鉄損の熱も高熱伝導性絶縁樹脂50を経由して効率的に固定板32に伝導し、固定板32から放熱されるため、放熱特性がさらに向上する。
また、コア40の被巻回部401が巻線用ボビンで覆われ、巻線404が巻線用ボビンに巻回される場合には、この巻線用ボビンを高熱伝導性絶縁樹脂で成形するようにしても良い。
こうすることで、コアで発生する鉄損の熱や巻線で発生する抵抗損の熱が、高熱伝導性絶縁樹脂から成る巻線用ボビンを通じて効率的に固定板に伝導される。
本発明の第3の実施形態に係る非接触給電トランスは、冷却用絶縁油を用いて放熱特性の向上を図っている。
冷却用絶縁油には、ナフテン系絶縁油やパラフィン系絶縁油などの鉱油系絶縁油、あるいは、シリコン油やアルキルベンゼンなどの合成油が使用できる。
この非接触給電トランスでは、冷却用絶縁油を筐体に封入する。筐体内の冷却用絶縁油は、筐体内で自然対流し、コアで発生する鉄損の熱や巻線で発生する抵抗損の熱を非磁性導電金属材から成る固定板32に導き、これらの熱が固定板32から放熱される。
ただ、固定板32に突起322を設けると、両側巻コイルからの漏洩磁束で固定板32に生じる渦電流損失が増大する可能性があるため、この損失が小さい範囲に収まるように、突起322の高さや面積を設定する必要がある。
また、図11は、この非接触給電トランスの構造図を示している。
このように、冷却用絶縁油を用いることで非接触給電トランスの放熱効果(冷却効果)を高めることができる。
なお、各実施形態では、固定板32の面積が樹脂ケース31の開口の面積に等しい場合について説明したが、樹脂ケース31の開口面に固定した固定板32の周縁が樹脂ケース31から食み出るような大きさに固定板を設定しても良い。
20 二次側コイル(受電コイル)
31 樹脂カバー
32 固定板
40 コア
50 高熱伝導性絶縁樹脂
61 フェライトコア
62 コイル
63 フェライトコア
64 コイル
65 非磁性良導体
66 非磁性良導体
67 主磁束
68 漏洩磁束
69 漏洩磁束
83 仮想中央線
131 フェライトコア
132 巻線
133 樹脂製ケース
134 アルミ板
311 段差部
321 巻線導出孔
322 突起
401 被巻回部
402 磁極部
403 磁極部
404 巻線
Claims (7)
- コアの磁極部間の被巻回部に巻線が巻回され、2つの磁極部が前記被巻回部と直交する方向に平行に延び、全体形状がH字状を成している両側巻コイルと、該両側巻コイルを収納する筐体とを備え、収容した前記両側巻コイルが他の両側巻コイルと対向するように前記筐体が取り付けられる非接触給電トランスであって、
前記筐体が、
前記両側巻コイルを収容する空間を有し、他の両側巻コイルと対向する面の反対側の面が開口している樹脂カバーと、
前記樹脂カバーの前記開口を塞ぐように前記樹脂カバーに外周が嵌め込まれて該樹脂カバーに固定される非磁性導電金属材から成る固定板と、
を備え、
前記固定板は、前記両側巻コイルの被巻回部に巻回される巻線の端部を導出するための導出孔を有し、
前記導出孔が、二つの前記磁極部の各々を通って該磁極部の延びる方向に延びる2本の平行線の間隔の中間位置であって、前記被巻回部に巻回された前記巻線から距離を置いた位置に設けられている
ことを特徴とする非接触給電トランス。 - 請求項1に記載の非接触給電トランスであって、前記固定板と前記コアの被巻回部に巻回された巻線との間に高熱伝導性絶縁樹脂が介在することを特徴とする非接触給電トランス。
- 請求項2に記載の非接触給電トランスであって、前記コアの被巻回部に巻線が多層に巻回され、前記高熱伝導性絶縁樹脂の厚さが、少なくとも前記巻線の一つの層が前記高熱伝導性絶縁樹脂に埋まる厚さに設定されていることを特徴とする非接触給電トランス。
- 請求項2または3に記載の非接触給電トランスであって、前記固定板と前記被巻回部以外のコア部分との間にも高熱伝導性絶縁樹脂が介在することを特徴とする非接触給電トランス。
- 請求項1から4のいずれかに記載の非接触給電トランスであって、前記両側巻コイルの巻線が、前記コアの被巻回部を覆う巻線用ボビンに巻回され、前記巻線用ボビンが高熱伝導性絶縁樹脂から成ることを特徴とする非接触給電トランス。
- 請求項1から5のいずれかに記載の非接触給電トランスであって、前記筐体に冷却用絶縁油が封入され、前記固定板の前記冷却用絶縁油との接触面に、前記冷却用絶縁油との接触面積を拡大するための突起が設けられていることを特徴とする非接触給電トランス。
- 請求項6に記載の非接触給電トランスであって、前記突起は、前記両側巻コイルからの漏洩磁束で前記固定板に生じる渦電流損失が、所定の大きさを超えない範囲で設けられていることを特徴とする非接触給電トランス。
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