≪ブラックカラムスペーサ用感光性樹脂組成物≫
本発明に係るブラックカラムスペーサ用感光性樹脂組成物(以下、単に「感光性樹脂組成物」という。)は、アルカリ可溶性樹脂、光重合性モノマー、光重合開始剤、及び遮光剤を含有し、上記アルカリ可溶性樹脂は、カルド構造を有する樹脂とアクリル系樹脂とを含む。以下、本発明に係る感光性樹脂組成物に含有される各成分について説明する。
アルカリ可溶性樹脂とは、樹脂濃度20質量%の樹脂溶液(溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)により、膜厚1μmの樹脂膜を基板上に形成し、濃度0.05質量%のKOH水溶液に1分間浸漬した際に、膜厚0.01μm以上溶解するものをいう。
<(A)アルカリ可溶性樹脂>
本発明に係る感光性樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性樹脂として、(A1)カルド構造を有する樹脂と(A2)アクリル系樹脂とを含有する。(A1)カルド構造を有する樹脂と(A2)アクリル系樹脂との両方を含有することにより、ハーフトーンマスクを介して露光を行う場合に、十分に高さの差があるブラックカラムスペーサを形成できる。より具体的には、係る(A)アルカリ可溶性樹脂を用いることによって、感光性樹脂組成物からなる膜厚3μmの感光性樹脂層を50mJ/cm2の露光量で露光したときに得られるブラックカラムスペーサの膜厚HFTと10mJ/cm2の露光量で露光したときに得られるブラックカラムスペーサの膜厚HHTとの差ΔH(=HFT−HHT)が7000〜8000Åとなるような、感光性樹脂組成物を調製することができる。
(A1)カルド構造を有する樹脂としては、特に限定されるものではなく、従来公知の樹脂を用いることができる。その中でも、下記式(a−1)で表される樹脂が好ましい。
上記式(a−1)中、Xaは、下記式(a−2)で表される基を示す。
上記式(a−2)中、Ra1は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6の炭化水素基、又はハロゲン原子を示し、Ra2は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、Waは、単結合又は下記式(a−3)で表される基を示す。
また、上記式(a−1)中、Yaは、ジカルボン酸無水物から酸無水物基(−CO−O−CO−)を除いた残基を示す。ジカルボン酸無水物の例としては、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水クロレンド酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水グルタル酸等が挙げられる。
また、上記式(a−1)中、Zaは、テトラカルボン酸二無水物から2個の酸無水物基を除いた残基を示す。テトラカルボン酸二無水物の例としては、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
また、上記式(a−1)中、mは、0〜20の整数を示す。
(A1)カルド構造を有する樹脂の質量平均分子量は、1000〜40000であることが好ましく、2000〜30000であることがより好ましい。上記の範囲とすることにより、良好な現像性を得ながら、十分な耐熱性、膜強度を得ることができる。
(A2)アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位、及び/又は(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を含むものを用いる。(メタ)アクリル酸は、アクリル酸、又はメタアクリル酸である。(メタ)アクリル酸エステルは、下記式(a−4)で表されるものであって、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されない。
上記式(a−4)中、Ra3は、水素原子又はメチル基であり、Ra4は、エチレン性又はアセチレン性不飽和結合を含まない一価の有機基である。この有機基は、該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。
Ra4の有機基中の炭化水素基以外の置換基としては、本発明の効果が損なわれない限り特に限定されず、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボキシル基、カルボキシラート基、アシル基、アシルオキシ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、ヒドロキシイミノ基、アルキルエーテル基、アルキルチオエーテル基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アミノ基(−NH2、−NHR、−NRR’:R及びR’はそれぞれ独立に炭化水素基を示す)等が挙げられる。上記置換基に含まれる水素原子は、炭化水素基によって置換されていてもよい。また、上記置換基に含まれる炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれでもよい。
Ra4としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基、又は複素環基が好ましく、これらの基は、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、又は複素環基で置換されていてもよい。また、これらの基がアルキレン部分を含む場合、アルキレン部分は、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合により中断されていてもよい。
アルキル基が、直鎖状又は分岐鎖状のものである場合、その炭素数は、1〜20が好ましく、1〜15がより好ましく、1〜10が特に好ましい。好適なアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、n−デシル基、イソデシル基等が挙げられる。
アルキル基が、脂環式基、又は脂環式基を含む基である場合、アルキル基に含まれる好適な脂環式基としてはとしては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等単環の脂環式基や、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロノニル基、トリシクロデシル基、及びテトラシクロドデシル基等の多環の脂環式基が挙げられる。
アルキル基が、脂環式基、又は脂環式基である、(メタ)アクリル酸エステルの好適な例としては、例えば下記式(a4−1)〜(a4−7)で表される化合物が挙げられる。これらの中では、現像性に優れる感光性樹脂組成物を得やすいことから、下記式(a4−3)〜(a4−8)で表される化合物が好ましく、下記式(a4−3)、又は(a4−4)で表される化合物がより好ましい。
上記式(a4−1)〜(a4−8)中、Ra3は水素原子又はメチル基を示し、Ra5は単結合又は炭素数1〜6の2価の脂肪族飽和炭化水素基を示し、Ra6は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。Ra5としては、単結合、直鎖状又は分枝鎖状のアルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が好ましい。Ra6としては、例えばメチル基、エチル基が好ましい。
Ra4におけるアリール基としては、炭素数6〜20のものが好ましく、炭素数6〜10のものがより好ましい。好適なアリール基の具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられる。
Ra4におけるアラルキル基としては、炭素数7〜20のものが好ましく、炭素数7〜12のものがより好ましい。アラルキル基の例としては、ベンジル基、α−メチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、フェニルエチル基、フェニルエテニル基等が挙げられる。
Ra4における複素環基としては、窒素原子、硫黄原子、及び酸素原子の少なくとも1つの原子を含む5員環以上、好ましくは5〜7員環の複素環基が挙げられる。この複素環基には縮合環が含まれていてもよい。複素環基の例としては、ピロリル基、ピリジル基、ピリミジル基、フリル基、チエニル基等が挙げられる。
また、(A2)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸、及び(メタ)アクリル酸エステル以外の他の化合物をさらに重合させたものであってもよい。このような他の化合物としては、(メタ)アクリルアミド類、不飽和カルボン酸類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、スチレン類等が挙げられる。これらの化合物は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
(メタ)アクリルアミド類としては、(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N−アリール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−アリール(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
不飽和カルボン酸類としては、クロトン酸等のモノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等のジカルボン酸;これらジカルボン酸の無水物;等が挙げられる。
アリル化合物としては、酢酸アリル、カプロン酸アリル、カプリル酸アリル、ラウリン酸アリル、パルミチン酸アリル、ステアリン酸アリル、安息香酸アリル、アセト酢酸アリル、乳酸アリル等のアリルエステル類;アリルオキシエタノール;等が挙げられる。
ビニルエーテル類としては、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、1−メチル−2,2−ジメチルプロピルビニルエーテル、2−エチルブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ブチルアミノエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;ビニルフェニルエーテル、ビニルトリルエーテル、ビニルクロルフェニルエーテル、ビニル−2,4−ジクロルフェニルエーテル、ビニルナフチルエーテル、ビニルアントラニルエーテル等のビニルアリールエーテル;等が挙げられる。
ビニルエステル類としては、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルトリメチルアセテート、ビニルジエチルアセテート、ビニルバレート、ビニルカプロエート、ビニルクロルアセテート、ビニルジクロルアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルブトキシアセテート、ビニルフエニルアセテート、ビニルアセトアセテート、ビニルラクテート、ビニル−β−フェニルブチレート、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、クロル安息香酸ビニル、テトラクロル安息香酸ビニル、ナフトエ酸ビニル等が挙げられる。
スチレン類としては、スチレン;メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、シクロヘキシルスチレン、デシルスチレン、ベンジルスチレン、クロルメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン等のアルキルスチレン;メトキシスチレン、4−メトキシ−3−メチルスチレン、ジメトキシスチレン等のアルコキシスチレン;クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレン、テトラクロロスチレン、ペンタクロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、トリフルオロスチレン、2−ブロモ−4−トリフルオロメチルスチレン、4−フルオロ−3−トリフルオロメチルスチレン等のハロスチレン;等が挙げられる。
(A2)アクリル系樹脂における、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位の量と、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の量とは、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。(A2)アクリル系樹脂における、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位の量は、アクリル系樹脂の質量に対して、5〜50質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましい。また、(A2)アクリル系樹脂における、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の量は、アクリル系樹脂の質量に対して、10〜95質量%が好ましく、30〜90質量%がより好ましい。
(A2)アクリル系樹脂における、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位の量と、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の量との合計は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、(A2)アクリル系樹脂の質量に対して、5〜100質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましい。(A2)アクリル系樹脂が、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位と、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位とを、かかる範囲の量で含有することにより、ハーフトーン特性に優れた感光性樹脂組成物を得やすい。感光性樹脂組成物がハーフトーン特性に優れる場合、ハーフトーンマスクを介して露光することによって、光線透過率に応じて十分に高さに差があるブラックカルムスペーサを形成しやすい。
(A2)アクリル系樹脂としては、不飽和結合を有するものを用いることもできる。不飽和結合を有するアクリル系樹脂を調製する方法は特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位と、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位とを含む樹脂の等のカルボキシル基を含むアクリル系樹脂のカルボキシル基の少なくとも一部と、エポキシ基含有不飽和化合物とを反応させる方法が挙げられる。
エポキシ基含有不飽和化合物は、不飽和結合と、エポキシ基とを含有する化合物であれば特に限定されないが、脂環式基を有さない(a−5)エポキシ基含有不飽和化合物、又は(a−6)脂環式エポキシ基含有不飽和化合物が好ましい。
脂環式基を有さない(a−6)エポキシ基含有不飽和化合物としては、グリシジル(メタ)アクリレート、2−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート、6,7−エポキシヘプチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エポキシアルキルエステル類;α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸6,7−エポキシヘプチル等のα−アルキルアクリル酸エポキシアルキルエステル類;等が挙げられる。これらの中でも、グリシジル(メタ)アクリレート、2−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、及び6,7−エポキシヘプチル(メタ)アクリレートが好ましい。これらの(a−6)エポキシ基含有不飽和化合物は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
(a−6)脂環式エポキシ基含有不飽和化合物において、脂環式エポキシ基を構成する脂環式基は、単環であっても多環であってもよい。単環の脂環式基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。また、多環の脂環式基としては、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロノニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等が挙げられる。これらの(a−6)脂環式エポキシ基含有不飽和化合物は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
具体的に、(a−6)脂環式エポキシ基含有不飽和化合物としては、例えば下記式(a−6−1)〜(a−6−16)で表される化合物が挙げられる。これらの中でも、感光性樹脂組成物の現像性を適度なものするためには、下記式(a−6−1)〜(a−6−6)で表される化合物が好ましく、下記式(a−6−1)〜(a−6−4)で表される化合物がより好ましい。
上記式中、Ra3は水素原子又はメチル基を示し、Ra8は炭素数1〜6の2価の脂肪族飽和炭化水素基を示し、Ra9は水素原子又はメチル基を示し、Ra10は炭素数1〜10の2価の炭化水素基を示し、nは0〜10の整数を示す。Ra8としては、直鎖状又は分枝鎖状のアルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が好ましい。R13としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、フェニレン基、シクロヘキシレン基、−CH2−Ph−CH2−(Phはフェニレン基を示す)が好ましい。
(A2)アクリル系樹脂が不飽和結合を有するものである場合、アクリル系樹脂における、不飽和結合を有する構成単位の量は、(A2)アクリル系樹脂の質量に対して、1〜20質量%が好ましく、1〜10質量%であるのがより好ましい。かかる範囲の量の不飽和結合を有する構成単位を含むアクリル系樹脂を(A2)アクリル系樹脂として用いる場合、ハーフトーン特性に優れる感光性樹脂組成物を得やすい。
(A2)アクリル系樹脂の質量平均分子量は、2000〜200000であることが好ましく、5000〜30000であることがより好ましい。上記の範囲とすることにより、感光性樹脂組成物の膜形成能、露光後の現像性のバランスがとりやすい傾向がある。
なお、(A)アルカリ可溶性樹脂は、上記(A1)カルド構造を有する樹脂、上記(A2)アクリル系樹脂のほかに、従来公知の他のアルカリ可溶性樹脂を含んでいてもよい。ただし、(A)アルカリ可溶性樹脂に占める、上記(A1)カルド構造を有する樹脂と上記(A2)アクリル系樹脂との合計割合は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
上記(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部中、上記(A1)カルド構造を有する樹脂の割合は、10〜90質量部であることが好ましく、20〜70質量部であることがより好ましい。一方、上記(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部中、上記(A2)アクリル系樹脂の割合は、10〜90質量部であることが好ましく、20〜70質量部であることがより好ましい。
また、上記(A1)カルド構造を有する樹脂と上記(A2)アクリル系樹脂との比は、質量基準で99:1〜1:99であることが好ましく、95:5〜40:60であることがより好ましく、90:10〜45:55であることがさらに好ましく、85:15〜50:50であることが特に好ましく、80:20〜60:40であることが最も好ましい。上記範囲とすることにより、ハーフトーン特性の良好な感光性樹脂組成物を得やすい。
(A)アルカリ可溶性樹脂の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分に対して20〜85質量%であることが好ましく、30〜75質量%であることがより好ましい。上記の範囲とすることにより、現像性のバランスをとりやすい傾向がある。
<(B)光重合性モノマー>
光重合性モノマーには、単官能モノマーと多官能モノマーとがある。
単官能モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、クロトン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、tert−ブチルアクリルアミドスルホン酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、フタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単官能モノマーは、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
一方、多官能モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、グリセリントリアクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート(すなわち、トリレンジイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応物、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドメチレンエーテル、多価アルコールとN−メチロール(メタ)アクリルアミドとの縮合物等の多官能モノマーや、トリアクリルホルマール等が挙げられる。これらの多官能モノマーは、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
(B)光重合性モノマーの含有量は、感光性樹脂組成物の固形分に対して1〜30質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましい。上記の範囲とすることにより、感度、現像性、解像性のバランスがとりやすい傾向がある。
<(C)光重合開始剤>
光重合開始剤としては、特に限定されず、従来公知の光重合開始剤を用いることができる。
光重合開始剤として具体的には、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、4−ベンゾイル−4’−メチルジメチルスルフィド、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸ブチル、4−ジメチルアミノ−2−エチルヘキシル安息香酸、4−ジメチルアミノ−2−イソアミル安息香酸、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール、ベンジルジメチルケタール、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、チオキサンテン、2−クロロチオキサンテン、2,4−ジエチルチオキサンテン、2−メチルチオキサンテン、2−イソプロピルチオキサンテン、2−エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、クメンパーオキシド、2−メルカプトベンゾイミダール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン(すなわち、ミヒラーズケトン)、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン(すなわち、エチルミヒラーズケトン)、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、3,3−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、α,α−ジクロロ−4−フェノキシアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジベンゾスベロン、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス−(9−アクリジニル)ヘプタン、1,5−ビス−(9−アクリジニル)ペンタン、1,3−ビス−(9−アクリジニル)プロパン、p−メトキシトリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(フラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−n−ブトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(2−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(2−ブロモ−4−メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジン、「IRGACURE OXE02」、「IRGACURE OXE01」、「IRGACURE 369」、「IRGACURE 651」、「IRGACURE 907」(商品名:BASF製)、「NCI−831」(商品名:ADEKA製)等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、オキシム系光重合開始剤を用いることが感度の面で特に好ましく、カルバゾール骨格を有するオキシム系光重合開始剤を用いることが特に好ましい。
オキシム系光重合開始剤の好ましい例としては、下記式(c−1)で表される光重合開始剤が挙げられる。
上記式(c−1)中、Rc1は、置換基を有していてもよい、複素環基、縮合環式芳香族基、又は芳香族基を示す。Rc2〜Rc4はそれぞれ独立に1価の有機基を示す。
Rc1における複素環基としては、窒素原子、硫黄原子、及び酸素原子の少なくとも1つの原子を含む5員環以上、好ましくは5員環又は6員環の複素環基が挙げられる。複素環基の例としては、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基等の含窒素5員環基;ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジル基、ピリダジニル基等の含窒素6員環基;チアゾリル基、イソチアゾリル基等の含窒素含硫黄基;オキサゾリル基、イソオキサゾリル基等の含窒素含酸素基;チエニル基、チオピラニル基等の含硫黄基;フリル基、ピラニル基等の含酸素基;等が挙げられる。この中でも、窒素原子又は硫黄原子を1つ含むものが好ましい。この複素環には縮合環が含まれていてもよい。縮合環が含まれる複素環基の例としてはベンゾチエニル基等が挙げられる。
Rc1における縮合環式芳香族基としては、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられる。また、Rc1における芳香族基としては、フェニル基が挙げられる。
複素環基、縮合環式芳香族基、又は芳香族基は、置換基を有していてもよい。特にRc1が芳香族基である場合には、置換基を有していることが好ましい。このような置換基としては、−NO2、−CN、−SO2Rc5、−CORc5、−NRc6Rc7、−Rc8、−ORc8、−O−Rc9−O−Rc10等が挙げられる。
Rc5は、それぞれ独立にアルキル基を示し、これらはハロゲン原子で置換されていてもよく、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合により中断されていてもよい。Rc5におけるアルキル基は、炭素数1〜5であることが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。
Rc6及びRc7は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、又はアルコキシ基を示し、これらはハロゲン原子で置換されていてもよく、これらのうちアルキル基及びアルコキシ基のアルキレン部分は、エーテル結合、チオエーテル結合、又はエステル結合により中断されていてもよい。また、Rc6とRc7とが結合して環構造を形成していてもよい。Rc6及びRc7におけるアルキル基又はアルコキシ基は、炭素数1〜5であることが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。
Rc6とRc7とが結合して形成し得る環構造としては、複素環が挙げられる。この複素環としては、少なくとも窒素原子を含む5員環以上、好ましくは5〜7員環の複素環が挙げられる。この複素環には縮合環が含まれていてもよい。複素環の例としては、ピペリジン環、モルホリン環、チオモルホリン環等が挙げられる。これらの中でも、モルホリン環が好ましい。
Rc8は、水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基を示す。Rc8におけるアルキル基は、炭素数1〜6であることが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。
Rc9及びRc10は、それぞれ独立にアルキル基を表し、これらはハロゲン原子で置換されていてもよく、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合により中断されていてもよい。好ましい炭素数やその具体例は、上記Rc1の説明と同様である。
これらの中でも、Rc1としては、ピロリル基、ピリジル基、チエニル基、チオピラリル基、ベンゾチエニル基、ナフチル基、置換基を有するフェニル基が好ましい例として挙げられる。
上記式(c−1)中、Rc2は、一価の有機基を示す。この有機基としては、−Rc11、−ORc11、−CORc11、−SRc11、−NRc11Rc12で表される基が好ましい。Rc11及びRc12は、それぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、又は複素環基を示し、これらはハロゲン原子、アルキル基、又は複素環基で置換されていてもよく、これらのうちアルキル基及びアラルキル基のアルキレン部分は、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合により中断されていてもよい。また、Rc11とRc12とが結合して窒素原子とともに環構造を形成していてもよい。
Rc11及びRc12におけるアルキル基としては、炭素数1〜20のものが好ましく、炭素数1〜5のものがより好ましい。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、n−デシル基、イソデシル基等の直鎖状又は分枝鎖状の基が挙げられる。また、このアルキル基は置換基を有していてもよい。置換基を有するものの例としては、メトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、プロピロキシエトキシエチル基、メトキシプロピル基等が挙げられる。
Rc11及びRc12におけるアルケニル基としては、炭素数1〜20のものが好ましく、炭素数1〜5のものがより好ましい。アルケニル基の例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、エテニル基、プロピニル基等の直鎖状又は分枝鎖状の基が挙げられる。また、このアルケニル基は置換基を有していてもよい。置換基を有するものの例としては、2−(ベンゾオキサゾール−2−イル)エテニル基等が挙げられる。
Rc11及びRc12におけるアリール基としては、炭素数6〜20のものが好ましく、炭素数6〜10のものがより好ましい。アリール基の例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられる。
Rc11及びRc12におけるアラルキル基としては、炭素数7〜20のものが好ましく、炭素数7〜12のものがより好ましい。アラルキル基の例としては、ベンジル基、α−メチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、フェニルエチル基、フェニルエテニル基等が挙げられる。
Rc11及びRc12における複素環基としては、窒素原子、硫黄原子、及び酸素原子の少なくとも1つの原子を含む5員環以上、好ましくは5〜7員環の複素環基が挙げられる。この複素環基には縮合環が含まれていてもよい。複素環基の例としては、ピロリル基、ピリジル基、ピリミジル基、フリル基、チエニル基等が挙げられる。
これらのRc11及びRc12のうち、アルキル基及びアラルキル基のアルキレン部分は、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合により中断されていてもよい。
また、Rc11とRc12とが結合して形成し得る環構造としては、複素環が挙げられる。この複素環としては、少なくとも窒素原子を含む5員環以上、好ましくは5〜7員環の複素環が挙げられる。この複素環には縮合環が含まれていてもよい。複素環の例としては、ピペリジン環、モルホリン環、チオモルホリン環等が挙げられる。
これらの中でも、Rc2としては、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基であることが最も好ましい。
上記式(c−1)中、Rc3は、1価の有機基を示す。この有機基としては、炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜12のアリール基、下記式(c−2)で表される基、又は置換基を有していてもよい複素環基が好ましい。置換基としては、上記Rc1の場合と同様の基が挙げられる。炭素数6〜12のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられる。
上記式(c−2)中、Rc13は、酸素原子で中断されていてもよい炭素数1〜5のアルキレン基を示す。このようなアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、n−ペンチレン基、イソペンチレン基、sec−ペンチレン基等の直鎖状又は分枝鎖状の基が挙げられる。これらの中でも、Rc13はイソプロピレン基であることが最も好ましい。
上記式(c−2)中、Rc14は、−NRc15Rc16で表される1価の有機基を示す(Rc15及びRc16は、それぞれ独立に1価の有機基を示す)。そのような有機基の中でも、Rc14の構造が下記式(c−3)で表されるものであれば、光重合開始剤の溶解性を向上することができる点で好ましい。
上記式(c−3)中、Rc17及びRc18は、それぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基を示す。このようなアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基等が挙げられる。これらの中でも、Rc17及びRc18はメチル基であることが最も好ましい。
Rc3における複素環基としては、窒素原子、硫黄原子、及び酸素原子の少なくとも1つの原子を含む5員環以上、好ましくは5員環又は6員環の複素環基が挙げられる。複素環基の例としては、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基等の含窒素5員環基;ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジル基、ピリダジニル基等の含窒素6員環基;チアゾリル基、イソチアゾリル基等の含窒素含硫黄基;オキサゾリル基、イソオキサゾリル基等の含窒素含酸素基;チエニル基、チオピラニル基等の含硫黄基;フリル基、ピラニル基等の含酸素基;等が挙げられる。この中でも、窒素原子又は硫黄原子を1つ含むものが好ましい。この複素環には縮合環が含まれていてもよい。縮合環が含まれる複素環基の例としてはベンゾチエニル基等が挙げられる。
また、複素環基は置換基を有していてもよい。置換基としては、上記Rc1の場合と同様の基が挙げられる。
上記式(c−1)中、Rc4は、1価の有機基を示す。この中でも、炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましい。このようなアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基等が挙げられる。これらの中でも、Rc4はメチル基であることが最も好ましい。
また、オキシム系光重合開始剤の好ましい他の例としては、特開2010−15025号公報で提案されている下記式(c−4)で表される光重合開始剤が挙げられる。
上記式(c−4)中、Rc21及びRc22は、それぞれ独立に、Rc31、ORc31、CORc31、SRc31、CONRc32Rc33、又はCNを示す。
Rc31、Rc32、及びRc33は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、又は炭素数2〜20の複素環基を示す。アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、及び複素環基の水素原子は、さらにORc41、CORc41、SRc41、NRc42Rc43、CONRc42Rc43、−NRc42−ORc43、−NCORc42−OCORc43、−C(=N−ORc41)−Rc42、−C(=N−OCORc41)−Rc42、CN、ハロゲン原子、−CRc41=CRc42Rc43、−CO−CRc41=CRc42Rc43、カルボキシル基、又はエポキシ基で置換されていてもよい。Rc41、Rc42、及びRc43は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、又は炭素数2〜20の複素環基を示す。
上記Rc31、Rc32、Rc33、Rc41、Rc42、及びRc43における置換基のアルキレン部分のメチレン基は、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、アミド結合、又はウレタン結合により1〜5回中断されていてもよく、上記置換基のアルキル部分は分岐鎖があってもよく、環状アルキルであってもよく、上記置換基のアルキル末端は不飽和結合であってもよく、また、Rc32とRc33、及びRc42とRc43はそれぞれ結合して環構造を形成していてもよい。
上記式(c−4)中、Rc23及びRc24は、それぞれ独立に、Rc31、ORc31、CORc31、SRc31、CONRc32Rc33、NRc31CORc32、OCORc31、COORc31、SCORc31、OCSRc31、COSRc31、CSORc31、CN、ハロゲン原子、又は水酸基を示す。a及びbは、それぞれ独立に0〜4の整数を示す。
Rc23は、−Xc2−を介して隣接するベンゼン環の炭素原子の1つと結合して環構造を形成していてもよく、Rc23とRc24とが結合して環構造を形成していてもよい。
上記式(c−4)中、Xc1は、単結合又はCOを示す。
上記式(c−4)中、Xc2は、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、CRc51Rc52、CO、NRc53、又はPRc54を示す。Rc51、Rc52、Rc53、及びRc54は、それぞれ独立に、Rc31、ORc31、CORc31、SRc31、CONRc32Rc33、又はCNを示す。Rc51、Rc53、及びRc54は、それぞれ独立に、隣接するどちらかのベンゼン環と一緒になって環構造を形成していてもよい。
上記式(c−4)中、Rc31、Rc32、Rc33、Rc41、Rc42、及びRc43におけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基等が挙げられる。
上記式(c−4)中、Rc31、Rc32、Rc33、Rc41、Rc42、及びRc43におけるアリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、クロロフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスレニル基等が挙げられる。
上記式(c−4)中、Rc31、Rc32、Rc33、Rc41、Rc42、及びRc43におけるアリールアルキル基としては、ベンジル基、クロロベンジル基、α−メチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、フェニルエチル基、フェニルエテニル基等が挙げられる。
上記式(c−4)中、Rc31、Rc32、Rc33、Rc41、Rc42、及びRc43における複素環基としては、ピリジル基、ピリミジル基、フリル基、チエニル基、テトラヒドロフリル基、ジオキソラニル基、ベンゾオキサゾール−2−イル基、テトラヒドロピラニル基、ピロリジル基、イミダゾリジル基、ピラゾリジル基、チアゾリジル基、イソチアゾリジル基、オキサゾリジル基、イソオキサゾリジル基、ピペリジル基、ピペラジル基、モルホリニル基等の5〜7員環が好ましく挙げられる。
上記式(c−4)中、Rc32とRc33とが結合して形成し得る環、Rc42とRc43とが結合して形成し得る環、及びRc23が隣接するベンゼン環と一緒になって形成し得る環としては、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロペンテン環、ベンゼン環、ピペリジン環、モルホリン環、ラクトン環、ラクタム環等の5〜7員環が挙げられる。
なお、Xc2がNRc53であり、Rc23が隣接するベンゼン環の炭素原子の1つと結合して、Xc2とともに5員環構造を形成する場合、光重合開始剤はカルバゾール骨格を有することになる。
上記式(c−4)中、Rc31、Rc32、Rc33、Rc41、Rc42、及びRc43を置換してもよいハロゲン原子、及びRc24、Rc25におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
上記置換基のアルキレン部分のメチレン基は、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、アミド結合、又はウレタン結合により1〜5回中断されていてもよい。この場合、中断する結合基は1種又は2種以上の基でもよく、連続して中断し得る基の場合は2つ以上連続して中断してもよい。また、上記置換基のアルキル部分は分岐鎖があってもよく、環状アルキルであってもよく、上記置換基のアルキル末端は不飽和結合であってもよい。
(C)光重合開始剤の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分100質量部に対して0.5〜20質量部であることが好ましい。上記の範囲とすることにより、十分な耐熱性、耐薬品性を得ることができ、また塗膜形成能を向上させ、硬化不良を抑制することができる。
<(D)遮光剤>
本発明に係る感光性樹脂組成物は、遮光剤を含有する。遮光剤としては黒色顔料を用いることが好ましい。遮光剤として使用される黒色顔料としては、カーボンブラック、ペリレン系顔料、銀錫合金、チタンブラック、銅、鉄、マンガン、コバルト、クロム、ニッケル、亜鉛、カルシウム、銀等の金属酸化物、複合酸化物、金属硫化物、金属硫酸塩又は金属炭酸塩等、有機物、無機物を問わず各種の顔料を挙げることができる。これらの黒色顔料は2種以上を組み合わせて用いることができる。
(D)遮光剤としては、感光性樹脂組成物を用いて形成されるブラックカラムスペーサの基板との密着性を良好なものとしやすいことから、ペリレン系顔料を含むものが好ましい。(D)遮光剤におけるペリレン系顔料の含有量は、(D)遮光剤の全質量に対して、85質量%以上が好ましく、90質量%以上が好ましく、100質量%以上であるのが特に好ましい。
ペリレン系顔料の具体例としては、下記一般式(d−1)で表されるペリレン系顔料、及び下記一般式(d−2)で表されるペリレン系顔料が挙げられる。また市販品ではBASF社製の製品名K0084、及びK0086や、ピグメントブラック21、30、31、32、33、及び34等を好ましく用いることができる。
(式(d−1)中、R
d1、R
d2は、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキレン基を表し、R
d3、R
d4は、それぞれ独立に水素原子、水酸基、メトキシ基又はアセチル基を表す。)
(式(d−2)中、R
d5、R
d6は、それぞれ独立して炭素数1〜7のアルキレン基を表す。)
前記一般式(d−1)で表される化合物、及び一般式(d−2)で表される化合物は、例えば特開昭62−1753号公報、特公昭63−26784号公報に記載の方法を用いて合成することができる。すなわち、ペリレン−3,5,9,10−テトラカルボン酸又はその二無水物とアミン類とを原料とし、水又は有機溶媒中で加熱反応を行う。そして、得られた粗製物を硫酸中で再沈殿させるか、又は、水、有機溶媒あるいはこれらの混合溶媒中で再結晶させることによって目的物を得ることができる。
また、感光性樹脂組成物中においてペリレン系顔料を良好に分散させるためには、ペリレン系顔料の平均粒径が10〜1000nmであることが好ましい。
また(D)遮光剤は、色調の調整の目的等で、黒色顔料と、赤、青、緑、黄、紫等の色相の色素とを併用することができる。黒色顔料以外の他の色相の色素は、公知の色素から適宜選択して用いることができる。黒色顔料以外の他の色相の色素は他の色素の使用量は、(D)遮光剤の全質量に対して、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
感光性樹脂組成物における(D)遮光剤の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で適宜選択でき、典型的には、感光性樹脂組成物の固形分に対して、5〜50質量%が好ましい。かかる範囲の量の遮光剤を用いることにより、感光性樹脂組成物を用いて得られるブラックカラムスペーサの遮光性を良好なものとしつつ、感光性樹脂組成物を露光する際の露光不良や硬化不良を抑制しやすい。
<(E)光吸収剤>
本発明に係る感光性樹脂組成物は、光吸収剤を含有することが好ましい。
光吸収剤としては、特に限定されず、露光光を吸収することができるものを用いることができるが、特に、200〜450nmの波長領域の光を吸収するものが好ましい。例えば、ナフタレン化合物、ジナフタレン化合物、アントラセン化合物、フェナントロリン化合物、染料等が挙げられる。
具体的には、桂皮酸2−エチルヘキシル、パラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル、メトキシケイ皮酸イソプロピル、メトキシケイ皮酸イソアミル等の桂皮酸誘導体;α−ナフトール、β−ナフトール、α−ナフトールメチルエーテル、α−ナフトールエチルエーテル、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等のナフタレン誘導体;アントラセン、9,10−ジヒドロキシアントラセン等のアントラセン及びその誘導体;アゾ系染料、ベンゾフェノン系染料、アミノケトン系染料、キノリン系染料、アントラキノン系染料、ジフェニルシアノアクリレート系染料、トリアジン系染料、p−アミノ安息香酸系染料等の染料;等が挙げられる。これらの中でも、桂皮酸誘導体、ナフタレン誘導体を用いることが好ましく、桂皮酸誘導体を用いることが特に好ましい。これらの光吸収剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
(E)光吸収剤の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分100質量部に対して0.5〜20質量部であることが好ましい。上記の範囲とすることにより、硬化後の破壊強度を良好に保ちながら、露光量を変化させたときの膜厚変化の割合を大きくすることができる。
<(S)有機溶剤>
本発明に係る感光性樹脂組成物は、希釈のための有機溶剤を含有することが好ましい。有機溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン類;2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチル部炭酸メチル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、蟻酸n−ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸n−ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n−プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。
これらの中でも、アルキレングリコールモノアルキルエーテル類、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、上述した他のエーテル類、乳酸アルキルエステル類、上述した他のエステル類が好ましく、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、上述した他のエーテル類、上述した他のエステル類がより好ましい。これらの溶剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
(S)有機溶剤の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分濃度が1〜50質量%となる量が好ましく、5〜30質量%となる量がより好ましい。
<その他の成分>
本発明に係る感光性樹脂組成物は、必要に応じて、各種の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、増感剤、硬化促進剤、充填剤、密着促進剤、酸化防止剤、凝集防止剤、熱重合禁止剤、消泡剤、界面活性剤等が挙げられる。
<感光性樹脂組成物の調製方法>
本発明に係る感光性樹脂組成物は、上記の各成分を撹拌機で混合することにより調製される。なお、調製された感光性樹脂組成物が均一なものとなるよう、メンブランフィルタ等を用いて濾過してもよい。
≪スペーサ、表示装置、ブラックカラムスペーサの形成方法≫
本発明に係るブラックカラムスペーサは、本発明に係る感光性樹脂組成物から形成されたことを除き、従来のブラックカラムスペーサと同様である。また、本発明に係る表示装置は、本発明に係る感光性樹脂組成物から形成されたスペーサを備えることを除き、従来の表示装置と同様である。以下では、ブラックカラムスペーサの形成方法についてのみ説明する。
本発明に係るブラックカラムスペーサの形成方法は、本発明に係る感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、感光性樹脂層を形成する塗布工程と、感光性樹脂層を所定のブラックカラムスペーサのパターンに応じて露光する露光工程と、露光後の感光性樹脂層を現像して、ブラックカラムスペーサのパターンを形成する現像工程と、を含む。
まず、塗布工程では、ブラックカラムスペーサが形成されるべき基板上に、ロールコーター、リバースコーター、バーコーター等の接触転写型塗布装置やスピンナー(回転式塗布装置)、カーテンフローコーター等の非接触型塗布装置を用いて本発明に係る感光性樹脂組成物を塗布し、必要に応じて、乾燥により溶媒を除去して、感光性樹脂層を形成する。
次いで、露光工程では、ネガ型のマスクを介して、感光性樹脂層に紫外線、エキシマレーザー光等の活性エネルギー線を照射し、感光性樹脂層をブラックカラムスペーサのパターンに応じて部分的に露光する。露光には、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、カーボンアーク灯等の紫外線を発する光源を用いることができる。露光量は感光性樹脂組成物の組成によっても異なるが、例えば10〜600mJ/cm2程度が好ましい。
なお、基板がTFT基板等の、基板上に素子が形成されたものである場合、素子上又は、素子が形成された基板と対になる基板の素子と対向する個所にブラックカラムスペーサを形成する必要がある場合がある。かかる場合、素子の高さを考慮して、素子が形成された個所と、その他の個所とで、ブラックカラムスペーサの高さを変える必要がある。そこで、このような場合には、ハーフトーンマスクを介して露光を行うのが好ましい。本発明に係る感光性樹脂組成物を用いれば、ハーフトーンマスクを介して露光を行うことにより、高さの異なるブラックカラムスペーサを容易に形成できる。
次いで、現像工程では、露光後の感光性樹脂層を現像液で現像することにより、ブラックカラムスペーサを形成する。現像方法は特に限定されず、浸漬法、スプレー法等を用いることができる。現像液の具体例としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機系のものや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア、4級アンモニウム塩等の水溶液が挙げられる。
その後、現像後のブラックカラムスペーサにポストベークを施して加熱硬化する。ポストベークは、150〜250℃で15〜60分間が好ましい。
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1、実施例2、及び比較例1〜3>
下記表1に示す各成分を混合し、固形分含有量が20質量%となるように溶剤に溶解して感光性樹脂組成物を調製した。なお、溶剤としては、溶剤全体中、メトキシブチルアセテートが65質量%、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PM)10質量%、シクロヘキサノン25質量%となるように調整した。
表1中、各略号はそれぞれ以下のものを示し、括弧内の数値は感光性樹脂組成物中の固形分の部数(質量部)である。
(アルカリ可溶性樹脂)
A−1:下記製造方法により得られた樹脂(固形分55%、溶剤:3−メトキシブチルアセテート)
A−2:下記構成単位からなるアクリル系樹脂(各構成単位の右下の数字は、アクリル系樹脂を構成する全構成単位における、各構成単位のモル比率である。)樹脂A−2の質量平均分子量は8000である。
A−3:下記構成単位からなる不飽和結合を有するアクリル系樹脂(各構成単位の右下の数字は、アクリル系樹脂を構成する全構成単位における、各構成単位のモル比率である。)樹脂A−3の質量平均分子量は8000である。
(光重合性モノマー)
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(光重合開始剤)
OXE02:エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾル−3−イル],1−(O−アセチルオキシム)(BASF製「IRGACURE OXE02」)
(遮光剤)
下記構造のペリレン系顔料の分散液(固形分含有量:20質量%、溶剤:3−メトキシブチルアセテート)を用いた。
なお、上記樹脂(A−1)の合成法は下記のとおりである。
まず、500ml四つ口フラスコ中に、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂(エポキシ当量235)235g、テトラメチルアンモニウムクロライド110mg、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール100mg、及びアクリル酸72.0gを仕込み、これに25ml/分の速度で空気を吹き込みながら90〜100℃で加熱溶解した。次に、溶液が白濁した状態のまま徐々に昇温し、120℃に加熱して完全溶解させた。この際、溶液は次第に透明粘稠になったが、そのまま撹拌を継続した。この間、酸価を測定し、1.0mgKOH/g未満になるまで加熱撹拌を続けた。酸価が目標値に達するまで12時間を要した。そして室温まで冷却し、無色透明で固体状の下記式(a−7)で表されるビスフェノールフルオレン型エポキシアクリレートを得た。
次いで、このようにして得られた上記のビスフェノールフルオレン型エポキシアクリレート307.0gに3−メトキシブチルアセテート600gを加えて溶解した後、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物80.5g及び臭化テトラエチルアンモニウム1gを混合し、徐々に昇温して110〜115℃で4時間反応させた。酸無水物基の消失を確認した後、1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸38.0gを混合し、90℃で6時間反応させ、樹脂(A−1)を得た。酸無水物基の消失はIRスペクトルにより確認した。
なお、この樹脂(A−1)は、上記式(a−1)で表される樹脂に相当する。
[OD値の評価]
6インチのガラス基板(ダウ・コーニング製、1737ガラス)上に、実施例1、実施例2、及び比較例1〜3の感光性樹脂組成物を塗布した後、90℃で60秒間乾燥して感光性樹脂層を形成した。次いで、この感光性樹脂層に60mJ/cm2の露光量でghi線を照射した。そして、230℃で20分間、ホットプレート上でポストベークを行った。形成された遮光膜の膜厚は0.8μm、1.0μm、1.2μmの3水準であった。この遮光膜について、D200−II(Macbeth製)を用いて各膜厚におけるOD値を測定し、近似曲線にて1μmあたりのOD値を算出した。結果を表2に示す。
[形状の評価]
6インチのガラス基板(ダウ・コーニング製、1737ガラス)上に、実施例1、実施例2、及び比較例1〜3の感光性樹脂組成物を塗布した後、90℃で60秒間乾燥して、膜厚3.0μmの感光性樹脂層を形成した。次いで、この感光性樹脂層に、マスクサイズ30μmのネガマスクを介して、50mJ/cm2の露光量でghi線を選択的に照射し、0.05質量%のKOH水溶液を用いて23℃で70秒間、スプレー現像することにより、ブラックカラムスペーサを形成した。その後、230℃で20分間、ホットプレート上でポストベークを行った。
そして、ポストベーク後のブラックカラムスペーサの最下部における径Bと、最上部近傍(最下部から95%の膜厚部分)における径Tとを測定し、下記式によりT/B比を算出した。T/B比50超を「○」と判定し、50以下を「×」と判定した。結果を表2に示す。
T/B比=(T/B)×100
[比誘電率の評価]
6インチシリコンウエハ上に、実施例1、実施例2、及び比較例1〜3の感光性樹脂組成物を塗布した後、90℃で60秒間乾燥して感光性樹脂層を形成した。次いで、この感光性樹脂層に60mJ/cm2の露光量でghi線を照射した。そして、230℃で20分間、ホットプレート上でポストベークを行った。形成された遮光膜の膜厚は1.0μmであった。この遮光膜について、誘電率測定装置SSM495(日本SSM製)を用いて、遮光膜の膜厚方向の真空に対する比誘電率(1kHzにおけるもの)を測定した。結果を表2に示す。
[ハーフトーン(HT)特性の評価]
6インチのガラス基板(ダウ・コーニング製、1737ガラス)上に、実施例1、実施例2、及び比較例1〜3の感光性樹脂組成物を塗布した後、90℃で60秒間乾燥して、膜厚3.0μmの感光性樹脂層を形成した。次いで、この感光性樹脂層に、マスクサイズ30μmのネガマスクを介して、ghi線を選択的に照射した。露光量は5〜50mJ/cm2とした。次いで、0.05質量%のKOH水溶液を用いて23℃で70秒間、スプレー現像することにより、ブラックカラムスペーサを形成した。その後、230℃で20分間、ホットプレート上でポストベークを行った。
そして、露光量5mJ/cm2の場合と50mJ/cm2の場合とにおけるポストベーク後のブラックカラムスペーサの高さの差を求めることにより、ハーフトーン特性(ΔH)の指標とした。結果を表2に示す。
[密着性の評価]
6インチのガラス基板(ダウ・コーニング製、1737ガラス)上に、実施例1、実施例2、及び比較例1〜3の感光性樹脂組成物を塗布した後、90℃で60秒間乾燥して、膜厚3.0μmの感光性樹脂層を形成した。次いで、この感光性樹脂層に、マスクサイズ30μmのネガマスクを介して、50mJ/cm2の露光量でghi線を選択的に照射し、0.05質量%のKOH水溶液を用いて23℃で70秒間スプレー現像することにより、ブラックカラムスペーサを形成した。現像時間は、未露光部が完全に溶解されるまでの時間(BP:ブレイクポイント)を基準として、BPの約1.5倍とした。その後、230℃で20分間、ホットプレート上でポストベークを行った。
そして、露光量50mJ/cm2にてブラックカラムスペーサを形成可能な最小マスク寸法を調べ、密着性の指標とした。結果を表2に示す。
表2から分かるように、カルド構造を有する樹脂とアクリル系樹脂とを含む実施例1及び2の感光性樹脂組成物を用いる場合、感光性樹脂組成物からなる膜厚3μmの感光性樹脂層を50mJ/cm2の露光量で露光したときに得られるブラックカラムスペーサの膜厚HFTと10mJ/cm2の露光量で露光したときに得られるブラックカラムスペーサの膜厚HHTとの差ΔH(=HFT−HHT)が7000〜8000Åと大きくなることが分かる。
つまり、表2によれば、実施例1及び2の感光性樹脂組成物を用いる場合、ハーフトーンマスクを介して露光することにより、高さの差の大きなブラックカラムスペーサを容易に形成できることが分かる。
一方、カルド構造を有する樹脂のみをアルカリ可溶性樹脂として含有する、比較例1の感光性樹脂組成物は、ΔHが7000Å未満で有り、ハーフトーン特性に劣るものであった。
また、比較例2、及び3によれば、アクリル系樹脂のみをアルカリ可溶性樹脂として用いた感光性樹脂組成物では、形成されるブラックカラムスペーサの基板への密着性が大きく損なわれることが分かる。このため、比較例2、及び3のブラックカラムスペーサの基板からの剥離のため、ハーフトーン特性を評価することが出来なかった。