JP5916799B2 - チョウザメの卵からの抽出液 - Google Patents
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Description
本発明の態様1は、チョウザメの卵から、「30℃で水に任意の割合では相溶しない有機溶媒」(A1)を用いてその有機溶媒に可溶な成分を実質的に除いた後、「水又は30℃で水に任意の割合で相溶する有機溶媒」(B1)で抽出してなるチョウザメの卵抽出液である。
一方で、「水又は30℃で水に任意の割合で相溶する有機溶媒」(B2)を用いてその溶媒に可溶な成分を実質的に除いた後、「30℃で水に任意の割合では相溶しない有機溶媒」(A2)で抽出することも好ましい。「実質的に除く」操作とは、用いる溶媒(B2)で、チョウザメの卵を洗浄、浸漬等により可溶な成分を実質的に除く操作をいうが、その操作により溶媒(B2)に可溶な成分を実質的に全て除くことが好ましい。それによって、後述する有機溶媒(A2)に対する不溶分が除かれる。操作としては、前記した態様1における有機溶媒(A1)による可溶分除去操作と同様の操作が挙げられる。
オリブ油、アボカド油、サフラワー油、パーシック油、アルモンド油、ゴマ油、コメヌカ油、サフラワー油、トウモロコシ油、ナタネ油等の植物油;
牛脂、馬油等の動物油;
ホホバ油、ラノリン等のロウ類;
スクワラン、流動パラフィン等の炭化水素類;
ブタノール、ベンジルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等のアルコール類;
バチルアルコール、キミルアルコール、セラキルアルコール、イソステアリルグリセルエーテル等のアスキルグリセリルエーテル類;
ミリスチン酸イソプロピル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリカプリル酸グリセリル、オレイン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル等のエステル類
等が挙げられる。このうち、好ましくは植物油であり、特に好ましくは、オリブ油、サフラワー油、サフラワー油又はトウモロコシ油である。
(態様1)
ベステル種のチョウザメから取り出したばかりの排卵卵1kgを0.9質量%の生理食塩水で洗浄処理をした後、n−ヘキサン5kgに20℃で1週間浸漬した後、濾別し油溶性成分を除いた。次いで、濾過残渣に残留したn−ヘキサンを留去した後、濾過残渣を、「30質量%の1,3−ブチレングリコールと70質量%の水からなる混合溶媒」10kgに、20℃で2週間浸漬させて抽出後、濾過を行い、チョウザメの卵抽出液9kgを得た。これを「チョウザメの卵抽出液(1b)」とする。
(態様2)
ベステル種のチョウザメから取り出したばかりの排卵卵1kgを0.9質量%の生理食塩水で洗浄処理をした後、水10kgに4℃で1日間浸漬した後、濾別し水溶性成分を除いた。次いで、濾過残渣に残留した水分を除去した後、オリブ油10kgに浸漬し、20℃で1週間抽出した後、濾過を行い、チョウザメの卵抽出液9kgを得た。これを「チョウザメの卵抽出液(2a)」とする。
(態様1の比較例)
ベステル種のチョウザメから取り出したばかりの排卵卵1kgを0.9質量%の生理食塩水で洗浄処理をした後、「30質量%の1,3−ブチレングリコールと70質量%の水からなる混合溶媒」10kgに、20℃で2週間浸漬させて抽出後、濾過を行い、チョウザメの卵抽出液9kgを得た。これを「チョウザメの卵抽出液(1b’)」とする。
(態様2の比較例)
ベステル種のチョウザメから取り出したばかりの排卵卵1kgを0.9質量%の生理食塩水で洗浄処理をした後、オリブ油10kgに浸漬し、20℃で1週間抽出した後、濾過を行い、チョウザメの卵抽出液9kgを得た。これを「チョウザメの卵抽出液(2a’)」とする。
(取出してから塩漬け処理をした場合)
ベステル種のチョウザメから、取り出したばかりの排卵卵1kgを0.9質量%の生理食塩水で洗浄処理をした後、取出しから30分後に塩漬け処理をし、そのまま14日間、−20℃で保存した卵を用いた以外は、製造例1と同様に、チョウザメの卵抽出液を得た。これを「チョウザメの卵抽出液(1b”)」とする。
製造例1〜3で製造したチョウザメの卵抽出液(1b)、(2a)及び(1b”)について、その臭いを、5人により官能評価したところ、チョウザメの卵抽出液(1b)及び(2a)は何れも生臭さが全くなく、化粧料に極めて好適に配合できるものであった。また、チョウザメの卵抽出液(1b”)は、やや生臭さはあったが化粧料に配合できるものであった。
比較製造例1及び比較製造例2で得たチョウザメの卵抽出液(1b’)、(2a’)について、その「臭い」を、評価例1と同様に評価したところ生臭さが感じられた。
製造例1〜3で製造したチョウザメの卵抽出液(1b)、(2a)及び(1b”)について、その「透明度」を、目視により評価したところ、何れも濁りがなく化粧料に極めて好適に配合できるものであった。
比較製造例1及び比較製造例2で得たチョウザメの卵抽出液(1b’)、(2a’)について、その「透明度」を、評価例3と同様に目視で評価したところ、チョウザメの卵抽出液(1b’)では、経時的に沈殿が認められ、チョウザメの卵抽出液(2a’)では、白濁が顕著であった。
上記で得られたチョウザメの卵抽出液が得られる工程における抽出効率等を比較検討した。製造例1及び比較製造例1において、何れも「30質量%の1,3−ブチレングリコールと70質量%の水からなる混合溶媒」に2週間浸漬したが、製造例1の方が、可溶性成分量が多く抽出効率が良かった。製造例1では、予めn−ヘキサンによって油溶性成分を除いたためと考えられる。また、製造例2及び比較製造例2においては、何れもオリブ油に1週間浸漬したが、製造例2の方が、可溶性成分量が多く抽出効率が良かった。製造例2では、予め水によって水溶性成分を除いたためと考えられる。
(化粧水)
下記の配合成分を常法に従って配合して調製した。
[配合成分] [質量%]
チョウザメの卵抽出液(1b) 1.00
濃グリセリン 2.00
1,3−ブチレングリコール 10.00
キサンタンガム 0.05
ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
防腐剤 適量
精製水 全量が100.00となる量
(乳液)
下記の配合成分を常法に従って配合して調製した。
[配合成分] [質量%]
トリオクタン酸グリセリル 3.00
ホホバ油 1.00
オリブ油 1.00
メチルポリシロキサン 0.10
天然ビタミンE 0.10
POE(20)ソルビタンモノオレエート 1.50
ソルビタンモノオレエート 0.50
チョウザメの卵抽出液(1b) 3.00
L−アルギニン 2.00
L−セリン 0.50
ピロリドンカルボン酸ナトリウム 0.10
ポリビニルピロリドン 0.05
防腐剤 適量
精製水 全量が100.00となる量
(クリーム)
下記の配合成分を常法に従って配合して調製した。
[配合成分] [質量%]
ベヘニルアルコール 2.00
トリオクタン酸グリセリル 3.00
ホホバ油 1.00
オリブ油 1.00
メチルポリシロキサン 0.10
天然ビタミンE 0.10
POE(20)ソルビタンモノステアレート 2.50
POE(80)硬化ヒマシ油 0.50
チョウザメの卵抽出液(2a) 0.50
L−アルギニン 2.00
L−セリン 0.50
ピロリドンカルボン酸ナトリウム 0.10
カルボキシビニルポリマー 0.05
水酸化カリウム 0.01
防腐剤 適量
精製水 全量が100.00となる量
(美容液)
下記の配合成分を常法に従って配合して調製した。
[配合成分] [質量%]
カルボキシビニルポリマー(2%水溶液) 10.00
カルボキシエチルセルロース 3.00
グリセリン 10.00
植物抽出液 0.50
トリエタノールアミン 0.15
メチルパラベン 0.10
クインシード液(1%水溶液) 10.00
ヒアルロン酸ナトリウム液(1%水溶液) 4.00
チョウザメの卵抽出液(1b) 5.00
L−アルギニン 2.00
精製水 全量が100.00となる量
(パック)
下記の配合成分を常法に従って配合して調製した。
[配合成分] [質量%]
ヒドロキシエトキシセルロース 3.00
カルボキシビニルポリマー(2%水溶液) 10.00
ポリオキシエチレンオレイルエーテル(15EO) 1.00
チョウザメの卵抽出液(1b) 1.50
L−アルギニン 2.00
エタノール 5.00
防腐剤 適量
精製水 全量が100.00となる量
(洗顔クリーム)
下記の配合成分を常法に従って配合して調製した。
[配合成分] [質量%]
ステアリン酸 4.00
ヤシ油脂肪酸 8.00
水酸化カリウム 0.20
1,3−ブチレングリコール 3.00
濃グリセリン 5.00
チョウザメの卵抽出液(1b) 2.50
ジステアリン酸ジエチレングリコール 1.00
L−アルギニン 2.00
エデト酸二ナトリウム 0.05
安息香酸ナトリウム 0.10
精製水 全量が100.00となる量
(液状ファンデーション)
下記の配合成分を常法に従って配合して調製した。
[配合成分] [質量%]
ステアリン酸 4.50
スクワラン 8.00
ミリスチン酸イソプロピル 6.00
プロピルパラベン 0.10
トリエタノールアミン 1.00
グリセリン 2.50
メチルパラベン 0.10
酸化チタン 10.00
タルク 4.00
シリカ 1.00
チョウザメの卵抽出液(2a) 0.50
L−アルギニン 2.00
顔料 適量
精製水 全量が100.00となる量
(粉白粉)
下記の配合成分を常法に従って配合して調製した。
[配合成分] [質量%]
酸化チタン 15.00
酸化亜鉛 20.00
セリサイト 4.00
シリカ 4.00
ステアリン酸亜鉛 8.00
チョウザメの卵抽出液(1b) 0.50
着色剤 適量
タルク 全量が100.00となる量
(浴剤)
下記の配合成分を常法に従って配合して調製した。
[配合成分] [質量%]
無水硫酸ナトリウム 45.00
炭酸水素ナトリウム 50.00
ホウ酸ナトリウム 3.00
チョウザメの卵抽出液(1b) 0.10
L−アルギニン 2.00
(比較化粧水)
実施例1において、チョウザメの卵抽出液(1b)の代わりにチョウザメの卵抽出液(1b’)を使用した以外は実施例1と同様にして比較化粧水を調製した。
(比較クリーム)
実施例3において、チョウザメの卵抽出液(2a)の代わりにチョウザメの卵抽出液(2a’)を使用した以外は実施例3と同様にして比較クリームを調製した。
(比較浴剤)
実施例9において、チョウザメの卵抽出液(1b)の代わりにチョウザメの卵抽出液(b’)を使用した以外は実施例9と同様にして比較浴剤を調製した。
実施例1〜9の化粧料について、その「臭い」を、女性被験者5名により官能評価したところ、何れも生臭さが全くなく、化粧料として問題がなかった。
比較例1〜3の化粧料について、その「臭い」を、評価例6と同様に評価したところ、生臭さが強く感じられ、化粧料として使用不可能であった。
(保湿作用の評価)
実施例(1)と比較例(1)を女性被験者15名の左右前腕内側に0.5mLずつ毎日朝夕30日間塗擦し、30日経過後の角質水分量を水分計で計測して比較した。結果を表1に示す。ここで角質水分量は、インテグラル社(Integral Co.)製のコルネオメーター(商品名)を用いて、常法に従って測定したときの値である。
(肌状態改善作用の評価)
肌に衰えを訴えた40〜50歳台の10名の女性被験者に対して、顔全体に、実施例1の化粧水、実施例3のクリーム、比較例1の比較化粧水、及び比較例2の比較クリームについて、朝晩2回塗布してもらい、以下の判定基準に基づいて、(a)肌のうるおい感、(b)肌のつや、(c)肌のハリ、(d)肌のキメについて使用前後の肌状態について、使用開始1ヵ月後に官能評価を行った。なお、本試験期間を通して皮膚に異常を訴えた者はいなかった。
A 極めて改善した
B 顕著に改善した
C わずかに改善した
D 変化を認めなかった
E 増悪を感じた
(肌状態改善作用の評価)
40〜50歳台の10名の女性被験者に対して、実施例9の浴剤、比較例3の比較浴剤について、200Lの湯に対して浴剤50グラムを溶解し、1日1回入浴使用してもらい、(a)肌のうるおい感、(b)肌のつや、(c)肌のハリ、(d)肌のキメについて使用前後の肌状態について、使用開始1ヵ月後に官能評価を行った。なお、本試験期間を通して皮膚に異常を訴えた者はいなかった。
Claims (11)
- チョウザメの卵抽出液からなる化粧料用原料の製造方法であって、
チョウザメの卵から、「水又は30℃で水に任意の割合で相溶する有機溶媒」(B2)である、水、炭素数1〜3の1価アルコール及び多価アルコールからなる群より選ばれた1種又は2種以上の溶媒を用いて、その溶媒に可溶な成分である、アミノ酸、ミネラル、糖又は低分子量タンパク質を、溶解させて抽出して実質的に除いた後、
その残渣から、「30℃で水に任意の割合では相溶しない有機溶媒」(A2)である植物油で抽出することを特徴とする化粧料用原料の製造方法。 - 上記「水又は30℃で水に任意の割合で相溶する有機溶媒」(B2)が、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、ペンタンジオール及びグリセリンからなる群より選ばれた1種又は2種以上の溶媒である請求項1に記載の化粧料用原料の製造方法。
- 上記「水又は30℃で水に任意の割合で相溶する有機溶媒」(B2)が、水、エタノール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、ペンタンジオール及びグリセリンからなる群より選ばれた1種又は2種以上の溶媒である請求項1に記載の化粧料用原料の製造方法。
- 上記「水又は30℃で水に任意の割合で相溶する有機溶媒」(B2)が、水又は生理食塩水である請求項1に記載の化粧料用原料の製造方法。
- 上記植物油が、オリブ油、アボカド油、サフラワー油、パーシック油、アルモンド油、ゴマ油、コメヌカ油、トウモロコシ油及びナタネ油からなる群より選ばれた1種又は2種以上の植物油である請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載の化粧料用原料の製造方法。
- 上記植物油が、オリブ油、サフラワー油及びトウモロコシ油からなる群より選ばれた1種又は2種以上の植物油である請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載の化粧料用原料の製造方法。
- 該チョウザメの卵が塩漬け処理されていないものである請求項1ないし請求項6の何れかの請求項に記載の化粧料用原料の製造方法。
- 該チョウザメの卵が排卵卵である請求項1ないし請求項7の何れかの請求項に記載の化粧料用原料の製造方法。
- 該チョウザメの卵が、アムールチョウザメ、シロチョウザメ、シベリアチョウザメ、コチョウザメ又はベステルチョウザメの卵である請求項1ないし請求項8の何れかの請求項に記載の化粧料用原料の製造方法。
- 請求項1ないし請求項9の何れかの請求項に記載の化粧料用原料の製造方法を使用することを特徴とする化粧料の製造方法。
- 上記化粧料が皮膚又は頭髪の老化防止用である請求項10に記載の化粧料の製造方法。
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