JP3805022B2 - 皮膚外用剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた活性酸素種の消去作用を有し、且つ抗菌活性及び美白作用を合わせて発揮することができ、皮膚の老化症状や炎症の防止,改善、清浄化及び色素沈着症状の防止,改善に有用で、安定性及び安全性に優れる皮膚外用剤に関する。さらに詳しくは、生薬「山慈姑」の抽出物、或いはその基原植物であるサイハイラン(Cremastra appendiculata Makino)、ドクサンラン(Pleione bulbocodioides)、又はアマナ(Tulipa edulis Baker)の各抽出物の1種又は2種以上を含有して成る皮膚外用剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
皮膚は、熱,紫外線,種々の化学物質等、環境中に存在する種々のストレスにさらされている。その結果、皮膚においては紅斑,浮腫といった炎症反応や、アレルギー反応、メラニン生成による黒化といった反応が生じ、さらに長期間にわたりかかるストレスにさらされた結果、皮膚のしわやしみの発生,弾力の低下といった老化症状が進行することが明らかにされてきている。また、皮膚上には種々の常在細菌が存在し、それらが皮脂や老廃物を資化して異常に増殖したり、菌叢が変化することが、尋常性ざ瘡やふけ発生の一因であることも知られている。
【0003】
従って、上記の炎症等を防止し、皮膚の黒化や老化を防止したり、皮膚の殺菌,清浄化を行うような有効成分の探求が行われ、それらを含有する皮膚外用剤の提供が試みられてきた。たとえば、抗炎症剤としてはβ-グリチルレチン酸,グリチルリチン酸,それらの塩及び誘導体、アラントイン及びその誘導体、アズレン,ε-アミノカプロン酸,ハイドロコルチゾン等、アレルギー症状の緩和には、塩酸ジフェンヒドラミン,マレイン酸クロルフェニラミン等の抗ヒスタミン剤が用いられ、美白剤としては、アスコルビン酸及びその誘導体,コウジ酸及びその誘導体,アルブチン等のハイドロキノン誘導体等、皮膚の殺菌,清浄化剤としては、ヒノキチオール,ジンクピリチオン,感光素等が用いられている。また近年、酸化ストレスによる皮膚の老化がクローズアップされ、ビタミンEやスーパーオキシドディスムターゼ等、活性酸素種の消去剤の配合も行われている。
【0004】
しかしながら、従来用いられていた上記の成分には、光や熱等に対して不安定なものが多く、また作用,効果が不十分で、外用剤基剤に配合して十分な効果を得るには、かなりの多量を配合する必要があった。さらに、皮膚の老化防止,美白及び皮膚の殺菌,清浄化と、すべての効果を合わせて発揮し得る成分は少なく、これらの効果をまんべんなく発揮させるには、多種類の成分を併用する必要があり、併用する成分によっては、それぞれの安定性及び作用の低減を来すこともあった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記のような問題点の解消を図り、少量,少種類の有効成分を含有するのみで、老化防止,美白及び皮膚の殺菌,清浄化の各効果を合わせ持ち、且つ安定性及び安全性に優れる皮膚外用剤を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため種々検討したところ、生薬として用いられる山慈姑の抽出物や、その基原植物であるサイハイラン(Cremastra appendiculata Makino)、ドクサンラン(Pleione bulbocodioides)、及びアマナ(Tulipa edulis Baker)の各抽出物に強い老化防止効果,美白効果及び抗菌作用があり、さらにこれらを皮膚外用剤基剤に添加したとき、前記作用,効果が基剤成分の影響を受けることなく、また保存安定性にも優れることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
従って本発明においては、生薬である山慈姑の抽出物、又はサイハイラン(Cremastra appendiculata Makino)の抽出物、ドクサンラン(Pleione bulbocodioides)の抽出物、及びアマナ(Tulipa edulis Baker)の抽出物より選ばれる1種又は2種以上を皮膚外用剤基剤に含有させる。
【0008】
抽出溶媒としては、水の他、メタノール,エタノール,プロパノール,イソプロパノール,1,3-ブチレングリコール,プロピレングリコール等のアルコール類、酢酸エチル,アセトン等の極性の高い有機溶媒より1種又は2種以上を用いることができる。
【0009】
抽出に供する生薬の山慈姑は、サイハイランの球茎又はドクサンランの仮鱗茎、或いはアマナの鱗茎を乾燥したものである。これらの他に、サイハイラン,ドクサンラン及びアマナの花,茎,葉等の部位、又は全草をも抽出に用いることができる。抽出は生植物のまま行ってもよく、細切或いは乾燥,粉砕等の処理を行った後に行ってもよい。
【0010】
また、抽出物はそのままでも外用剤基剤に添加できるが、水,アルコール等の溶媒で希釈したり、濃縮,乾固したものをアルコール等の極性溶媒に再度溶解したり、或いは脱色,脱臭等の処理を行った後に添加してもよい。皮膚外用剤への配合量としては、山慈姑或いはその基原植物を十分浸漬し得る量の溶媒にて抽出して得た粗抽出物の状態で、0.001〜10.0重量%程度とするのが好ましい。
【0011】
なお本発明においては、山慈姑等の抽出物に加えて、他の活性酸素種消去剤や抗炎症剤、美白剤、殺菌剤の他、油類,保湿剤,紫外線吸収剤,香料,防腐剤等、一般的な外用剤及び化粧料用原料をも含有させることができる。
【0012】
【作用】
本発明による皮膚外用剤は、優れた活性酸素種消去作用及び抗炎症作用等に基づく皮膚の老化防止作用、チロシナーゼ阻害作用等に基づく美白作用、及び殺菌,抗菌作用を合わせ持つ。
【0013】
従って、本発明に係る皮膚外用剤は、主に酸化的ストレスに起因する皮膚の老化症状の改善及び防止、肌荒れ等の皮膚における炎症の治療及び防止、しみ,そばかすをはじめ太田母斑等の色素沈着症や日焼けによる黒化の改善及び防止、及び尋常性ざ瘡,ふけ症等の皮膚常在菌の異常に起因する症状の緩和及び防止において、優れた作用,効果を示す。
【0014】
加えて、優れた殺菌,抗菌作用により、細菌,真菌等の微生物による汚染を良好に防ぐことができ、製剤の安定性を向上させることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明は、ローション剤,乳剤,ゲル剤,クリーム,軟膏等の剤型の皮膚外用剤として提供することができる。また、化粧水,乳液,クリーム等の皮膚用化粧料、メイクアップベースローション,メイクアップベースクリーム,液状又はクリーム状或いは軟膏型のファンデーション,アイカラー,チークカラーといったメイクアップ化粧料、シャンプー,リンス,ヘアートリートメント等の毛髪用化粧料、ハンドクリーム,レッグクリーム,ボディローション等の身体用化粧料などとしても提供され得る。
【0016】
【実施例】
さらに本発明について、実施例により詳細に説明する。
【0017】
[実施例1] 皮膚用ローション剤
(1)エタノール 10.0(重量%)
(2)ヒドロキシエチルセルロース 1.0
(3)サイハイラン全草のエタノール抽出物 5.0
(4)精製水 84.0
製法:(1)〜(4)を混合し均一とする。
【0018】
[実施例2] 皮膚用乳剤
(1)ステアリン酸 0.2(重量%)
(2)セタノール 1.5
(3)ワセリン 3.0
(4)流動パラフィン 7.0
(5)ポリオキシエチレン(10E.O.)モノオレイン酸 1.5
エステル
(6)酢酸トコフェロール 5.0
(7)グリセリン 5.0
(8)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(9)トリエタノールアミン 1.0
(10)精製水 71.7
(11)サイハイラン全草のメタノール抽出物 2.0
(12)ドクサンラン全草の酢酸エチル抽出物 2.0
製法:(1)〜(6)の油相成分を混合,加熱して均一に溶解し、70℃に保つ。一方、(7)〜(10)の水相成分を混合,加熱して均一とし、70℃とする。この水相成分に前記油相成分を攪拌しながら徐々に添加して乳化し、冷却した後40℃にて(11),(12)を添加する。
【0019】
[実施例3] 皮膚用ゲル剤
(1)ジプロピレングリコール 10.0(重量%)
(2)カルボキシビニルポリマー 0.5
(3)水酸化カリウム 0.1
(4)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(5)精製水 84.3
(6)アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム塩 4.0
(7)山慈姑酢酸エチル抽出物のエタノール溶液 1.0
製法:(5)に(2)を均一に溶解させた後、(1)に(4)を溶解させて添加し、次いで(3)を加えて増粘させ、(6),(7)を添加する。
【0020】
[実施例4] 皮膚用クリーム
(1)ミツロウ 6.0(重量%)
(2)セタノール 5.0
(3)還元ラノリン 8.0
(4)スクワラン 27.5
(5)グリセリル脂肪酸エステル 4.0
(6)親油型グリセリルモノステアリン酸エステル 2.0
(7)ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタン 5.0
モノラウリン酸エステル
(8)プロピレングリコール 5.0
(9)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(10)精製水 30.4
(11)レチノールパルミチン酸エステル 1.0
(12)サイハイラン全草の50重量%プロピレン 3.0
グリコール抽出物
(13)アマナ全草の50重量%1,3-ブチレングリコール 3.0
抽出物
製法:(1)〜(7)の油相成分を混合,溶解して75℃に加熱する。一方、(8)〜(10)の水相成分を混合,溶解して75℃に加熱する。次いで、上記水相成分に油相成分を添加して予備乳化した後、ホモミキサーにて均一に乳化し、冷却後40℃にて(11)〜(13)を添加する。
【0021】
[実施例5] 水中油型乳剤性軟膏
(1)白色ワセリン 25.0(重量%)
(2)ステアリルアルコール 25.0
(3)グリセリン 12.0
(4)ラウリル硫酸ナトリウム 1.0
(5)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(6)精製水 33.9
(7)レチノイン酸 0.5
(8)サイハイラン全草の50重量%プロパノール 1.5
抽出物
(9)ドクサンラン全草の60重量%エタノール抽出物 0.5
(10)アマナ全草の60重量%エタノール抽出物 0.5
製法:(1)〜(4)の油相成分を混合,溶解して均一とし、75℃に加熱する。一方、(5)及び(6)の水相成分を混合,溶解して75℃に加熱し、これに前記油相成分を添加して乳化し、冷却後40℃にて(7)〜(10)を添加,混合する。
【0022】
[実施例6] 化粧水
(1)エタノール 10.0(重量%)
(2)1,3-ブチレングリコール 5.0
(3)サイハイラン花のエタノール抽出物 0.5
(4)香料 0.1
(5)精製水 84.4
製法:(1)〜(4)を順次(5)に添加して均一に混合,溶解する。
【0023】
[実施例7] エモリエントクリーム(油中水型)
(1)流動パラフィン 30.0(重量%)
(2)マイクロクリスタリンワックス 2.0
(3)ワセリン 5.0
(4)ジグリセリルジオレイン酸エステル 5.0
(5)L-グルタミン酸ナトリウム 1.6
(6)L-セリン 0.4
(7)プロピレングリコール 3.0
(8)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(9)精製水 52.4
(10)ドクサンラン茎,葉の50重量%プロピレン 0.2
グリコール抽出物
(11)アマナ茎,葉,花の1,3-ブチレングリコール 0.2
抽出物
(12)香料 0.1
製法:(5),(6)を(9)の一部に溶解して50℃とし、50℃に加熱した(4)に攪拌しながら徐々に添加する。これをあらかじめ混合し70℃に加熱溶解した(1)〜(3)に均一に分散し、これに(7),(8)を(9)の残部に溶解して70℃に加熱したものを攪拌しながら添加し、ホモミキサーにて乳化する。冷却後、40℃にて(10)〜(12)を添加,混合する。
【0024】
[実施例8] メイクアップベースクリーム
(1)ステアリン酸 12.00(重量%)
(2)セタノール 2.00
(3)グリセリルトリ2-エチルヘキサン酸エステル 2.50
(4)自己乳化型グリセリルモノステアリン酸エステル 2.00
(5)プロピレングリコール 10.00
(6)水酸化カリウム 0.30
(7)パラオキシ安息香酸メチル 0.10
(8)精製水 69.49
(9)二酸化チタン 1.00
(10)ベンガラ 0.10
(11)黄酸化鉄 0.40
(12)香料 0.10
(13)山慈姑のエタノール抽出物 0.01
製法:(1)〜(4)の油相成分を混合し、75℃に加熱して均一とする。一方(5)〜(8)の水相成分を混合し、75℃に加熱,溶解して均一とし、これに(9)〜(11)の顔料を添加し、ホモミキサーにて均一に分散させる。この水相成分に前記油相成分を添加し、ホモミキサーにて乳化した後冷却し、40℃にて(12),(13)を添加,混合する。
【0025】
[実施例9] 液状ファンデーション
(1)ステアリン酸 2.00(重量%)
(2)スクワラン 5.00
(3)ミリスチン酸オクチルドデシル 5.00
(4)セタノール 1.00
(5)ポリグリセリルモノイソパルミチン酸エステル 9.00
(6)1,3-ブチレングリコール 6.00
(7)水酸化カリウム 0.10
(8)パラオキシ安息香酸メチル 0.10
(9)精製水 53.35
(10)酸化チタン 9.00
(11)タルク 7.40
(12)ベンガラ 0.50
(13)黄酸化鉄 1.10
(14)黒酸化鉄 0.10
(15)香料 0.15
(16)山慈姑の1,3-ブチレングリコール抽出物 0.20
製法:(1)〜(5)の油相成分を混合し、75℃に加熱して均一とする。一方(6)〜(9)の水相成分を混合し、75℃に加熱,溶解して均一とし、これに(10)〜(14)の顔料を添加し、ホモミキサーにて均一に分散させる。この水相成分に前記油相成分を添加し、ホモミキサーにて乳化した後冷却し、40℃にて(15),(16)を添加,混合する。
【0026】
[実施例10] シャンプー
(1)アルキルエーテル硫酸ナトリウム 18.000(重量%)
(2)ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 2.000
(3)プロピレングリコール 2.000
(4)サイハイラン全草のエタノール抽出物 2.000
(5)黄色4号 0.001
(6)香料 0.200
(7)精製水 75.799
製法:(1)〜(6)を順次(7)に添加して均一とする。
【0027】
[実施例11] ヘアーリンス
(1)セタノール 3.000(重量%)
(2)塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 0.700
(3)グリセリン 3.000
(4)N-ココイル-L-アルギニンエチルエステル 0.100
-DL-ピロリドンカルボン酸塩
(5)緑色3号 0.002
(6)精製水 90.098
(7)香料 0.100
(8)ドクサンラン全草のグリセリン抽出物 1.500
(9)アマナ全草のグリセリン抽出物 1.500
製法:(3)〜(6)の水相成分を混合,溶解し、70℃に加熱する。一方、(1),(2)の油相成分を混合,溶解し、70℃に加熱する。この油相を攪拌しながら前記水相に徐々に添加して予備乳化し、ホモミキサーにより均一とした後冷却し、40℃にて(7)〜(9)を添加,混合する。
【0028】
[実施例12] 液体ボディ洗浄料
(1)N-ラウロイル-L-グルタミン酸トリエタノール 20.0(重量%)
アミン(30.0重量%水溶液)
(2)N-ラウリルメチルタウリンナトリウム 10.0
(30.0重量%水溶液)
(3)ラウリン酸トリエタノールアミン 10.0
(4)ミリスチン酸トリエタノールアミン 10.0
(5)ラウリルイミダゾリニウムベタイン 5.0
(6)ラウロイルジエタノールアミド 5.0
(7)プロピレングリコール 7.0
(8)精製水 28.4
(9)香料 0.1
(10)サイハイラン全草のエタノール抽出物 1.5
(11)ドクサンラン全草のエタノール抽出物 1.5
(12)アマナ全草のエタノール抽出物 1.5
製法:(1)〜(12)の各成分を順次添加混合して均一とする。
【0029】
上記実施例のうち、実施例1〜実施例5について、老化防止効果,肌荒れ改善効果及び美白効果を評価した。その際、各実施例において、サイハイラン,ドクサンラン及びアマナの全草抽出物を各抽出溶媒に、また山慈姑の酢酸エチル抽出物のエタノール溶液をエタノールに代替して比較例1〜比較例5とし、同様に評価を行った。
【0030】
まず、皮膚の老化防止効果は、ヘアレスマウスにおけるしわの発生に対する効果の評価により行った。前記評価は、ヘアレスマウス5匹を1群とし、各群について実施例及び比較例をそれぞれ1日1回背部に塗布し、1J/cm2/週の長波長紫外線(UVA)を50週間照射し、ヘアレスマウス背部皮膚におけるしわの発生状況を観察し、表1に示す判定基準に従って点数化して行った。この際、精製水のみを塗布した群を対照とした。結果は、各群の平均値を算出し、UVA照射日数との関係により表2に示した。
【表1】
【0031】
次に肌荒れに対する改善効果は、顕著な肌荒れ症状を有する女性パネラー20名を1群とし、各群に実施例及び比較例のそれぞれを1日2回、ブラインドにて1カ月間連続使用させ、1カ月後の皮膚の症状を観察して、使用開始前と比較して行った。皮膚の肌荒れ症状は表3に示す判定基準に従って点数化し、20名の平均値を算出し、表4に示した。
【表3】
【0032】
続いて色素沈着症状の改善効果は、顕著なシミ,ソバカス等の色素沈着症状を有する女性パネラー20名を1群とし、各群に実施例及び比較例をそれぞれブラインドにて1日2回ずつ1カ月間使用させ、1カ月後の皮膚の色素沈着の状態を観察して使用前と比較して行った。色素沈着の状況は表5に示す判定基準に従って評価し、20名の平均値を算出し、表4にまとめて示した。
【表5】
【0033】
【表2】
表2において、対照群では50週後にはほとんどのヘアレスマウスに深いしわの発生が認められているが、本発明の実施例塗布群では、いずれにおいてもしわの発生は顕著に抑制されており、50週後に微小なしわ又は軽微なしわの発生を認めたのみであった。特に、山慈姑の抽出物の溶液を添加した実施例3塗布群では、良好なしわ防止効果が認められていた。これに対し、比較例1塗布群ではほとんどしわの発生の抑制は認められておらず、老化防止効果を有するビタミン類である酢酸トコフェロール等を含有する比較例2〜比較例5塗布群においても、十分なしわの発生抑制は認められていなかった。
【0034】
【表4】
次に表4より、本発明の実施例使用群においてはいずれも良好な肌荒れ症状の改善が認められ、ほぼ良好な皮膚状態にまで回復していることが示されている。これに対し、比較例1使用群では肌荒れの改善はあまり認められておらず、比較例2〜比較例5使用群でも、皮膚状態の回復は不十分であった。
【0035】
また色素沈着症状についても、実施例使用群では良好な改善が認められ、使用試験終了時には、ほとんどのパネラーでわずかな色素沈着が見られる程度であった。一方比較例使用群では、比較例1及び比較例2使用群においてはほとんど改善が認められておらず、比較例3〜比較例5使用群においては、使用試験終了時に依然として中程度の色素沈着の認められるパネラーが多く見られた。
【0036】
続いて実施例6〜実施例12については、抗菌活性及び保存安定性の評価を行った。なお、各実施例において、山慈姑等の抽出物を各抽出溶媒に代替したものをそれぞれ比較例とし、同時に評価を行った。
【0037】
抗菌活性は、試験菌として大腸菌(Escherichia coli),黄色ブドウ状球菌(Staphylococcus aureus),緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa),アクネ菌(Propyonibacterium acnes),黒カビ(Aspergillus niger )及びふけ菌(Pityrosporum ovale )を用い、これらをそれぞれ各実施例及び各比較例に106個/g植菌し、細菌類は37℃、真菌類は25℃で培養し、2週間後の生菌数を計測して評価した。結果は、2週間後の生菌数が細菌については0個、真菌については103個/g以下となっている場合を合格として、表6に示した。
【0038】
保存安定性は、実施例及び比較例のそれぞれを25℃で3カ月間保存し、変色,変臭,相分離や含有成分の析出といった外観の変化や変質の有無を観察して評価した。評価は「○;良好」,「△;やや悪い」,「×;悪い」として表し、表6にまとめて示した。
【0039】
【表6】
本発明の実施例6〜実施例12は、防腐剤を全く含有しないか、或いは低濃度含有するのみであるが、表6において、いずれについても良好な抗菌活性と保存安定性が認められている。特に、表中には示していないが、毛髪用組成物である実施例10及び実施例11では、ふけ菌が2週間後にすべて死滅しており、抗ふけ効果の高いことが予測された。これに対し、比較例では特に緑膿菌,黒カビ及びふけ菌に対する抗菌活性が低く、保存安定性も良くなかった。
【0040】
次に、実施例6〜実施例9及び比較例6〜比較例9について、使用時の不快感の有無を調査した。女性パネラー20名を1群とし、各群に実施例及び比較例のそれぞれをブラインドにて使用させ、皮膚に塗布した後30秒から1分後の間に感じる刺すような痛み,ヒリヒリ感,チクチク感といった不快感について評価させた。評価結果は、「非常に強く感じる;5点」,「やや強く感じる;4点」,「明確に感じる;3点」,「少し感じる;2点」,「微妙に感じる;1点」,「感じない;0点」として点数化して表し、20名の平均値を表7に示した。
【0041】
【表7】
表7において、本発明の実施例使用群では、いずれもそれぞれ対応する比較例使用群に比べて、皮膚に塗布した際に感じる不快感は著しく低減されており、使用時の感触に優れることが示されている。
【0042】
続いて、界面活性剤含量の高い実施例10〜実施例12及び比較例10〜比較例12について、皮膚刺激性の評価を行った。各実施例及び比較例の1.0重量%水溶液を試料とし、男性パネラー30名を用いて、背部皮膚にて48時間の閉塞貼付試験を行い、表8に示す判定基準により皮膚刺激指数を求め、30名の平均値を求めた。結果は表9に示した。
【表8】
【0043】
【表9】
表9において、比較例についてはいずれも高い皮膚刺激指数が認められ、特に比較例12については、著しい紅斑及び浮腫の発生を認めていた。これに対し、本発明の実施例では、顕著な皮膚刺激指数の低減が見られた。
【0044】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明により、皮膚の老化症状や炎症の防止,改善効果、皮膚の清浄化及び美白効果に優れ、且つ良好な抗菌活性を有し、安定性及び安全性に優れる皮膚外用剤を得ることができた。
Claims (4)
- 生薬「山慈姑」の抽出物を有効成分とする色素沈着改善剤。
- 生薬「山慈姑」の抽出物を有効成分とする抗菌剤。
- サイハイラン(Cremastra appendiculata Makino)の抽出物、ドクサンラン(Pleione bulbocodioides)の抽出物、及びアマナ(Tulipa edulis Baker)の抽出物より選ばれる1種又は2種以上を有効成分とする色素沈着改善剤。
- サイハイラン(Cremastra appendiculata Makino)の抽出物、ドクサンラン(Pleione bulbocodioides)の抽出物、及びアマナ(Tulipa edulis Baker)の抽出物より選ばれる1種又は2種以上を有効成分とする抗菌剤。
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