JP5915649B2 - 改良型ニトリルヒドラターゼ - Google Patents

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Description

本発明は、改良型(変異型)のニトリルヒドラターゼ、及びその製造方法に関する。さらには、当該酵素をコードする遺伝子DNA、当該遺伝子DNAを含む組換えベクター、及び当該組換えベクターを有する形質転換体、並びにアミド化合物の製造方法に関する。
近年、ニトリル基を水和しアミド基に変換するニトリル水和活性を有する酵素であるニトリルヒドラターゼが発見され、当該酵素又は当該酵素を含有する微生物菌体等を用いてニトリル化合物より対応するアミド化合物を製造する方法が開示されている。この製造方法は、従来の化学合成法と比較し、ニトリル化合物から対応するアミド化合物への転化率及び選択率が高いことで知られている。
ニトリルヒドラターゼを生産する微生物としては、例えば、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属、リゾビウム(Rhizobium)属、クレビシエラ(Klebsiella)属、シュードノカルディア(Pseudonocardia)属等に属する微生物を挙げることができる。中でもロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)J1株はアクリルアミドの工業的生産に使用されており、有用性が実証されている。また、その菌株が産生するニトリルヒドラターゼをコードする遺伝子も明らかとなっている(特許文献1参照)。
一方、自然界に存在する微生物から単離したニトリルヒドラターゼやその遺伝子を利用するのみならず、ニトリルヒドラターゼに対して、活性、基質特異性、Vmax、Km、熱安定性、基質に対する安定性、生成物に対する安定性等を変化させる目的でニトリルヒドラターゼに変異を導入することが試みられており(特許文献2参照)、本発明者らによって耐熱性又はアミド化合物耐性を共に向上させたニトリルヒドラターゼ遺伝子が取得されている(特許文献3及び4参照)。
しかし、さらなる耐熱性及びアミド化合物耐性の向上、又は高温での反応が可能なニトリルヒドラターゼを開発し、アミド化合物の製造に用いることは、触媒コスト等の生産コストの観点などから非常に有用であり、その様な性能を有する酵素の取得は、反応時の酵素量の削減及びコスト削減等の観点から開発が望まれている。
特許第3162091号公報 国際公開第2004/056990号パンフレット 国際公開第2005/116206号パンフレット 特開2007−143409号公報
そこで、本発明の目的は、ニトリルヒドラターゼの改良により、耐熱性、アミド化合物耐性及び高温蓄積性がさらに向上したニトリルヒドラターゼ活性を有するタンパク質を提供することである。また、本発明の目的は、当該タンパク質をコードする遺伝子DNA、当該遺伝子DNAを含む組換えベクター、当該組換えベクターを含む形質転換体、当該形質転換体の培養物から採取されるニトリルヒドラターゼ及びその製造方法を提供することにある。さらに、本発明の目的は、当該培養物又は当該培養物の処理物を用いたアミド化合物の製造方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った。その結果、野生型ニトリルヒドラターゼのアミノ酸配列のうち、特定のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換したタンパク質が、ニトリルヒドラターゼ活性を有するとともに、耐熱性、アミド化合物耐性及び高温蓄積性が向上したものであることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)以下の(A)又は(B)のタンパク質;
(A)野生型ニトリルヒドラターゼのアミノ酸配列において、下記(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換され、さらに、下記(f)〜(q)からなる群より選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含み、かつ、ニトリルヒドラターゼ活性を有することを特徴とするタンパク質、
(a)βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端のアミノ酸残基から数えて167残基下流のアミノ酸残基、
(b)βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端のアミノ酸残基から数えて219残基下流のアミノ酸残基、
(c)βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端のアミノ酸残基から数えて57残基下流のアミノ酸残基、
(d)βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端のアミノ酸残基から数えて114残基下流のアミノ酸残基、
(e)βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端のアミノ酸残基から数えて107残基下流のアミノ酸残基、
(f)βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端のアミノ酸残基から数えて218残基下流のアミノ酸残基、
(g)βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端のアミノ酸残基から数えて190残基下流のアミノ酸残基、
(h)βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端のアミノ酸残基から数えて168残基下流のアミノ酸残基、
(i)βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端のアミノ酸残基から数えて144残基下流のアミノ酸残基、
(j)βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端のアミノ酸残基から数えて133残基下流のアミノ酸残基、
(k)βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端のアミノ酸残基から数えて112残基下流のアミノ酸残基、
(l)βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端のアミノ酸残基から数えて105残基下流のアミノ酸残基、
(m)βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端のアミノ酸残基から数えて95残基下流のアミノ酸残基、
(n)βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端のアミノ酸残基から数えて17残基下流のアミノ酸残基、
(o)βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端のアミノ酸残基から数えて15残基下流のアミノ酸残基、
(p)αサブユニットのアミノ酸配列において、補欠分子結合領域を構成するアミノ酸配列C(S/T)LCSCの最も下流側のC残基より67残基下流のアミノ酸残基、
(q)αサブユニットのアミノ酸配列において、補欠分子結合領域を構成するアミノ酸配列C(S/T)LCSCの最も下流側のC残基より17残基下流のアミノ酸残基。
(B)(A)のタンパク質のアミノ酸配列において、前記置換後のアミノ酸残基を除き、1又は数個のアミノ酸残基が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、ニトリルヒドラターゼ活性を有することを特徴とするタンパク質。
(2) (1)に記載のタンパク質をコードするDNA。
(3) (2)に記載の遺伝子DNAを含む組換えベクター。
(4) (3)に記載の組換えベクターを含む形質転換体。
(5) (4)に記載の形質転換体を培養して得られる培養物から採取されるニトリルヒドラターゼ。
(6) (4)に記載の形質転換体を培養し、得られる培養物からニトリルヒドラターゼを採取することを特徴とする、ニトリルヒドラターゼの製造方法。
(7) (1)に記載のタンパク質又は(4)に記載の形質転換体を培養して得られる培養物若しくは当該培養物の処理物をニトリル化合物に接触させることを特徴とする、アミド化合物の製造方法。
本発明によれば、耐熱性、アミド化合物耐性及び高温蓄積性が向上した新規な改良型(変異型)ニトリルヒドラターゼを提供することができる。耐熱性、アミド化合物耐性及び高温蓄積性がいずれもより向上した当該改良型ニトリルヒドラターゼは、アミド化合物の製造効率が高くなるので非常に有用である。
プラスミドpER855Aの構成図である。 各種微生物由来の野生型ニトリルヒドラターゼのβサブユニットのアミノ酸配列を示す図である。 各種微生物由来の野生型ニトリルヒドラターゼのβサブユニットのアミノ酸配列を示す図である(図2−1の続き)。 各種微生物由来の野生型ニトリルヒドラターゼのαサブユニットのアミノ酸配列を示す図である。 各種微生物由来の野生型ニトリルヒドラターゼのαサブユニットのアミノ酸配列を示す図である(図3−1の続き)。
以下に、本発明を詳細に説明する。
なお本明細書においては、特記した場合を除き、「上流」及び「上流側」とは、アミノ酸配列に関しては「N末端側」を意味し、塩基配列に関しては「5’末端側」を意味する。
また、「下流」及び「下流側」とは、アミノ酸配列に関しては「C末端側」を意味し、塩基配列に関しては「3」を意味する。
1.改良型ニトリルヒドラターゼ
(a)野生型ニトリルヒドラターゼ
本発明の改良型ニトリルヒドラターゼは、野生型ニトリルヒドラターゼの改良型であり、その由来は特に限定されるものではない。ここで、「野生型ニトリルヒドラターゼ」とは、自然界の生物(例えば、土壌細菌等の微生物)より分離され得るニトリルヒドラターゼを指し、当該酵素を構成するアミノ酸配列、及び当該酵素をコードする遺伝子の塩基配列が、人為的に欠失又は挿入せず、あるいは、他のアミノ酸又は塩基で置換されておらず、天然由来の特性を保持したままのニトリルヒドラターゼを意味する。
また、既知の微生物由来のニトリルヒドラターゼのみならず、生物の由来が特定されないDNA配列のみから特定されたニトリルヒドラターゼも、上記「野生型ニトリルヒドラターゼ」に含まれる。
「野生型ニトリルヒドラターゼ」は、αサブユニット及びβサブユニットのドメインが集合してなる高次構造をとり、補欠分子として非ヘム鉄原子、又は非コリン核コバルト原子を有している。これらのニトリルヒドラターゼは、それぞれ鉄型ニトリルヒドラターゼ及びコバルト型ニトリルヒドラターゼという呼称で区別されている。
鉄型ニトリルヒドラターゼとしては、ロドコッカス属N−771株由来のものをその代表例として挙げることができる。この鉄型ニトリルヒドラターゼは、X線結晶構造解析がなされ、その立体構造が明らかになっている。その結果、当該酵素は、活性中心を形成するαサブユニットのシステインクラスター(:配列番号61)中の4つのアミノ酸残基を介して非へム鉄と結合している。
コバルト型ニトリルヒドラターゼとしては、ロドコッカス・ロドクロウスJ1株(以下「J1菌」と称する場合がある)由来のもの、又はシュードノカルディア・サーモフィラ(Pseudonocardia thermophila)由来のものを代表例として挙げることができる。J1菌由来のコバルト型ニトリルヒドラターゼは、活性中心を形成するαサブユニットのシステインクラスター(:配列番号62)で示される領域を介してコバルト原子と結合している。なお、シュードノカルディア・サーモフィラ由来のコバルト型ニトリルヒドラターゼのシステインクラスターは、上記J1菌由来のシステインクラスターにおける上流側(N末端側)から第4番目のシステイン(Cys)がシステインスルフィン酸(Csi)であり、最も下流側(C末端側)の第6番目のシステイン(Cys)がシステインスルフェン酸(Cse)である。
上述の通り、補欠分子は、αサブユニット中のシステインクラスター「C(S/T)LCSC」(配列番号61および62)で表される領域と結合している。このような補欠分子結合領域を含むニトリルヒドラターゼとしては、例えば、ロドコッカス・ロドクロウスJ1(FERM BP−1478)、ロドコッカス・ロドクロウスM8(SU1731814)、ロドコッカス・ロドクロウスM33(VKM Ac−1515D)、ロドコッカス・ロドクロウスATCC39484(特開2001−292772)、バチルス・スミシ(Bacillus smithii)(特開平9−248188)、シュードノカルディア・サーモフィラ(特開平9−275978) 又はジオバチルス・サーモグルコシダシアス(Geobacillus thermoglucosidasius)由来のアミノ酸配列を有するニトリルヒドラターゼ及び遺伝子配列でコードされるニトリルヒドラターゼが挙げられる。
各種微生物由来の野生型ニトリルヒドラターゼのαサブユニットのアミノ酸(一文字表記)配列のアライメントを、図3−1および図3−2に示した。なお、図3−1、3−2のそれぞれにおいて、上のアミノ酸配列から順に、配列番号4、及び49〜60を示す。
一方、βサブユニットの機能については構造の安定性に関与していると考えられている。各種微生物由来の野生型ニトリルヒドラターゼのβサブユニットのアミノ酸(一文字表記)配列のアライメントを、図2−1および図2−2に示した。なお、図2−1、2−2のそれぞれにおいて、上のアミノ酸配列から順に、配列番号2、及び35〜48を示す。
(b)改良型ニトリルヒドラターゼ
本発明は、野生型ニトリルヒドラターゼにアミノ酸置換を施した改良型(変異型)ニトリルヒドラターゼである。置換を施す対象となる野生型ニトリルヒドラターゼのアミノ酸配列はGenBank(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)等のNCBIのデータベースに公表されている。
例えば、ロドコッカス・ロドクロウスJ1(FERM BP−1478)由来のαサブユニットは、アミノ酸配列が配列番号4で示され、塩基配列が配列番号3で示される。また、βサブユニットはアミノ酸配列が配列番号2で示され、塩基配列が配列番号1で示され、アクセッション番号は「P21220」である。また、ロドコッカス・ロドクロウスM8(SU1731814)由来のαサブユニットのアクセッション番号は「ATT79340」であり、βサブユニットのアクセッション番号は「AAT79339」である。さらに、シュードノカルデァ・サーモフィラ(Pseudonocardia thermophila)JCM3095由来のαサブユニットのアクセッション番号は「1IRE A」であり、βサブユニットのアクセッション番号は「1IRE B」である。
また、特定のアミノ酸残基が置換されたアミノ酸配列において、1個又は数個(例えば1個〜10個程度、好ましくは1個〜5個程度)のアミノ酸残基(但し、上記置換後のアミノ酸残基を除く)が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ニトリルヒドラターゼ活性を有する改良型ニトリルヒドラターゼも本発明の範囲である。
本発明における「改良型ニトリルヒドラターゼ」としては、野生型ニトリルヒドラターゼのアミノ酸配列において下記(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換され、さらに、下記(f)〜(q)からなる群より選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含み、かつ、ニトリルヒドラターゼ活性を有することを特徴とするタンパク質が挙げられる。なお、下記(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)、(j)、(k)、(l)、(m)、(n)、(o)、(p)及び(q)のアミノ酸残基は、それぞれ、各種野生型ニトリルヒドラターゼの中でもロドコッカス・ロドクロウス種に属する細菌由来の野生型ニトリルヒドラターゼのアミノ酸配列中のアミノ酸残基であることが好ましい。
(a)βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端のアミノ酸残基から数えて167残基下流のアミノ酸残基。
(b)βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端のアミノ酸残基から数えて219残基下流のアミノ酸残基。
(c)βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端のアミノ酸残基から数えて57残基下流のアミノ酸残基。
(d)βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端のアミノ酸残基から数えて114残基下流のアミノ酸残基。
(e)βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端のアミノ酸残基から数えて107残基下流のアミノ酸残基。
(f)βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端のアミノ酸残基から数えて218残基下流のアミノ酸残基。
(g)βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端のアミノ酸残基から数えて190残基下流のアミノ酸残基。
(h)βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端のアミノ酸残基から数えて168残基下流のアミノ酸残基。
(i)βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端のアミノ酸残基から数えて144残基下流のアミノ酸残基。
(j)βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端のアミノ酸残基から数えて133残基下流のアミノ酸残基。
(k)βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端のアミノ酸残基から数えて112残基下流のアミノ酸残基。
(l)βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端のアミノ酸残基から数えて105残基下流のアミノ酸残基。
(m)βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端のアミノ酸残基から数えて95残基下流のアミノ酸残基。
(n)βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端のアミノ酸残基から数えて17残基下流のアミノ酸残基。
(o)βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端のアミノ酸残基から数えて15残基下流のアミノ酸残基。
(p)αサブユニットのアミノ酸配列において補欠分子結合領域を構成するアミノ酸配列C(S/T)LCSCの最も下流側のC残基より67残基下流のアミノ酸残基。
(q)αサブユニットのアミノ酸配列において補欠分子結合領域を構成するアミノ酸配列C(S/T)LCSCの最も下流側のC残基より17残基下流のアミノ酸残基。
また、本発明の改良型ニトリルヒドラターゼとしては、上記タンパク質の中でも、置換されるアミノ酸残基が以下に列挙するアミノ酸残基であるものが好ましく挙げられる。
(1)上記(a)〜(e)、及び(n)のアミノ酸残基。
(2)上記(a)〜(e)、及び(n)のアミノ酸残基、並びに、上記(g)〜(j)、(l)、(m)、(o)及び(q)からなる群より選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基。
(3)上記(a)〜(e)、(n)、(i)、及び(p)のアミノ酸残基。
(4)上記(a)〜(e)、(n)、(p)、及び(f)のアミノ酸残基。
(5)上記(a)〜(e)、(n)、(i)、(p)のアミノ酸残基、並びに、上記(f)、(k)及び(m)からなる群より選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基。
本発明の改良型ニトリルヒドラターゼの一例としては、J1菌由来の野生型ニトリルヒドラターゼのβサブユニットのアミノ酸配列においてN末端側から第167番目のアミノ酸残基(アスパラギン)、βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端側から第219番目のアミノ酸(バリン)、βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端側から第57番目のアミノ酸(セリン)、βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端側から第114番目のアミノ酸(リジン)、βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端側から第107番目のアミノ酸(スレオニン)、及びβサブユニットのアミノ酸配列においてN末端側から第17番目のアミノ酸(プロリン)を含み、かつ、ニトリルヒドラターゼ活性を有する酵素タンパク質が好ましく挙げられる。このようなアミノ酸置換の態様の表記例としては、「Nβ167S,Vβ219A,Sβ57R、Kβ114Y、Tβ107K、Pβ17D」等が挙げられる。
なお、アミノ酸のアルファベット表記は通常の1文字で表すことができ、置換箇所までのアミノ酸残基数を表す数字(例えば「26」)の左側に表示したアルファベットは、置換前のアミノ酸の1文字表記を示し、右側に表示したアルファベットは置換後のアミノ酸の1文字表記を示している。
具体的には、配列番号2に示すβサブユニットのアミノ酸配列に関して、「Nβ167S」と表記した場合は、βサブユニットのアミノ酸配列(配列番号2)のうちN末端のアミノ酸残基から数えて(当該N末端のアミノ酸残基を含めて数えて)167番目のアスパラギン(N)がセリン(S)に置換された改良型ニトリルヒドラターゼにおけるアミノ酸置換の態様を意味する。
ここで、「α↓」という表記は、置換位置がCTLCSC領域の最も下流側のC残基よりも下流にある(当該C残基を含めずに数えてC末端側にある)ことを意味する。
さらに、本発明の改良型ニトリルヒドラターゼとしては、上記タンパク質の中でも置換されるアミノ酸残基が表1に列挙するアミノ酸残基であるものがより好ましく挙げられる。

これらの中でも、上記の置換番号13〜29の態様でアミノ酸置換が施された改良型ニトリルヒドラターゼがさらに好ましく、上記の置換番号26〜29の態様でアミノ酸置換が施された改良型ニトリルヒドラターゼが特に好ましい。
上記アミノ酸置換を生じさせるための塩基置換としては、以下の表2の態様が好ましく挙げられる。
尚、本発明のアミノ酸置換の場所は、配列番号2のJ1菌由来のニトリルヒドラターゼβサブユニットとのアライメントで、167番目、219番目、57番目、114番目、107番目、218番目、190番目、168番目、144番目、133番目、112番目、105番目、95番目、17番目、及び15番目のアミノ酸残基に相当する場所も含まれる。一例として、シュードノカルデァ・サーモフィラで相当するアミノ酸配列としてはそれぞれ、164番目、216番目、57番目、114番目、107番目、215番目、187番目、165番目、141番目、129番目、108番目、102番目、92番目、17番目、及び15番目に相当する。さらに、本発明のアミノ酸置換の場所は、配列番号4のJ1菌ニトリルヒドラターゼαサブユニットとのアライメントで124番目、及び174番目に相当する場所も含まれ、シュードノカルデァ・サーモフィラにおいては、それぞれ130番目と180番目に相当する。
アミノ酸配剤のアラインメントの手段として、それに用いる手段は特に限定されないが、GENETXY(日本ゼネティクス社)、DNASIS(日立ソフト社)やフリーソフトのCLUSTALWやBLAST等の遺伝子配列解析ソフトが挙げられる。アライメントの一例である図2−1、図2−2、図3−1、図3−2は、GENETXY Ver.7(日本ゼネティクス社、デフォルト設定)を使用した結果である。
本発明の改良型ニトリルヒドラターゼの活性は、天然由来の特性を保持したままの野生型ニトリルヒドラターゼの活性に対して耐熱性、アミド化合物耐性及び高温蓄積性が向上している。
ここで、「ニトリルヒドラターゼ活性」とは、ニトリル化合物を、対応するアミド化合物に変換する水和反応(RCN+HO→RCONH)を触媒する酵素である。活性測定は、基質であるニトリル化合物をニトリルヒドラターゼと接触させ、対応するアミド化合物に変換した後、当該アミド化合物を定量することにより算出することができる。基質としては、ニトリルヒドラターゼが反応すればいかなるニトリル化合物でも使用できるが、アクリロニトリルが好ましい。
反応条件としては、基質濃度は2.5%、反応温度は10℃から30℃、反応時間は10分から30分の範囲で行う。酵素反応はリン酸を添加して停止させる。その後、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)により、生成したアクリルアミドを分析することでアミド化合物の定量を行うことができる。
また、ニトリルヒドラターゼ活性の有無は活性染色法によって簡便に調べることができる。例えば、基質にアントラニロニトリル(anthranilonitrile)を使用すれば、ニトリルヒドラターゼによって変換されたアントラニルアミド(anthranilamide)は蛍光を有するので高感度に簡便に検出することができる(Antonie Van Leeuwenhoek 80(2):169−183,2001参照)。
「耐熱性の向上」とは、加熱処理した改良株の残存活性が、同じ処理を行った比較例の残存活性より10%以上高いことを意味する。加熱処理の方法としては、培養液、又は集菌・洗浄した培養菌体を容器に入れた後、当該容器をウォーターバスやインキュベーター等の加熱装置に入れ一定時間保温すればよい。この時、酵素の安定性を高める為、ニトリル化合物やアミド化合物を添加して加熱処理を実施することもできる。加熱処理の条件としては処理温度と処理時間を適宜検討し、比較株の活性が加熱処理前に対して50%以下に低下する条件を設定するのが好ましい。具体的には50℃から70℃の範囲で、5分から60分加熱処理を行う。残存活性とは、加熱処理した菌体を用いて活性測定したアミド化合物の生成量と、同量の無処理の菌体を用いて活性測定したアミド化合物の生成量との比を示す。無処理の菌体は、培養液、又は集菌・洗浄した培養菌体を4℃で保冷しておいたものを用いる。ここで、本発明における比較例としては、pER855Aが導入された形質転換体を意味し、残存活性が比較株より10%以上高いニトリルヒドラターゼを耐熱性が向上したと評価することができる。
「アミド化合物耐性」とは、アミド化合物存在下でもニトリルヒドラターゼ活性を維持することができることを意味する。改良型ニトリルヒドラターゼを有する形質転換体の培養物又は当該形質転換体から単離した改良型ニトリルヒドラターゼを、アクリルアミド等のアミド化合物(例えば、30〜50%の高濃度)の存在下で、基質であるアクリロニトリル等のニトリル化合物の消費量又は消費速度を分析する。比較例に対し、消費量又は消費速度が1.01倍を超えたニトリルヒドラターゼをアミド化合物耐性であると評価することができる。
「高温蓄積性」とは、20℃より高い反応温度で、35%を超える高濃度のアクリルアミドを生産することができる事を意味する。改良型ニトリルヒドラターゼを有する形質転換体の培養物又は当該形質転換体から単離した改良型ニトリルヒドラターゼを、アクリロニトリルを添加しながら酵素反応を継続し、生成したアクリルアミド濃度を分析する。アクリロニトリルの添加方法は、反応溶液内のアクリロニトリル濃度を制御しながら添加しても良いし、逐次添加しながら反応させても良い。本発明における高温とは20℃以上の反応温度を示す。生成したアクリルアミド濃度が比較例を超えたニトリルヒドラターゼは高温蓄積性が向上したと評価することができる。
アミド化合物としては、例えば、下記一般式(1):
R−CONH (1)
(ここで、Rは、置換されていてもよい炭素数1〜10の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基又はアルケニル基、置換されていてもよい炭素数3〜18のシクロアルキル基又はアリール基、あるいは、置換されていてもよい飽和又は不飽和複素環基である。)
で表されるアミド化合物が挙げられる。特に、式中、Rが「CH2=CH−」であるアクリルアミドが好ましい。
上記の改良型ニトリルヒドラターゼは、野生型ニトリルヒドラターゼをアミノ酸置換することで得られるものであり、例えば、ロドコッカス・ロドクロウスJ1株由来のニトリルヒドラターゼのアミノ酸配列(配列番号2及び/又は4)を改変し、耐熱性及び/又はアミド化合物耐性の向上したニトリルヒドラターゼを選択することにより得られる。
なお、ロドコッカス・ロドクロウスJ1株は、FERM BP−1478として独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に昭和62(1987)年9月18日付けで国際寄託されている。
J1菌以外のニトリルヒドラターゼにおいてもアミノ酸ホモロジーが高い酵素は上述の変異によって耐熱性及び/又はアミド化合物耐性が向上すると考えられる。
その様な菌としては、バチルス・スミシ(Bacillus smithii)(特開平09−248188)、シュードノカルディア・サーモフィラ(特開平09−275978)、ジオバチルス・サーモグルコシダシアス(特許番号)等が挙げられ、アミノ酸ホモロジーが90%を超える(高ホモロジー酵素を羅列)ロドコッカス・ロドクロウスM8(SU1731814)、ロドコッカス・ロドクロウスM33(VKM Ac−1515D)がさらに好ましい。なお、ロドコッカス・ロドクロウスM33(VKM Ac−1515D)は、上記M8菌(SU1731814)から自然突然変異によって構成的にニトリルヒドラターゼを発現する株として選抜された菌株である。そのニトリルヒドラターゼ自体のアミノ酸配列及び遺伝子配列に変異はない(米国特許第5,827,699号)。
野生型ニトリルヒドラターゼをアミノ酸置換する方法としては、ニトリルヒドラターゼ活性を有する微生物にハイドロキシルアミンや亜硝酸等の変異源となる薬剤を接触・作用させる方法、紫外線照射により変異を誘発する方法、ニトリルヒドラターゼをコードする遺伝子にPCRを用いてランダムに変異を導入するError prone PCRやSite−directed Mutagenesis等の方法を採用することができる。
(b−1)ランダム変異導入法
変異体を用いたタンパク質の機能、性質を研究する方法の一つに、ランダム変異導入法がある。ランダム変異導入法とは、特定のタンパク質をコードする遺伝子に対してランダムな変異を導入し、変異体を作製する方法である。PCRによるランダム変異導入法では、DNA増幅時に厳密度(ストリンジェンシー)の低い条件を設定して、塩基の変異を導入する(Error prone PCR)ことができる。
このError prone PCRでは、増幅されるDNAの全域に対して任意の部位に変異が導入される。そうすると、得られた任意の部位に変異が導入された変異体の機能を検討することによって、タンパク質固有の機能に重要なアミノ酸やドメインの情報を得ることができる。
Error prone PCRの鋳型となるニトリルヒドラターゼは、野生株由来のニトリルヒドラターゼ遺伝子、Error prone PCRによる増幅産物であるDNAを用いることができる。
Error prone PCRの反応条件としては、例えば、反応液中のdNTP(dGTP、dCTP、dATP又はdTTP)のいずれか1種、2種又は3種の配合割合を他のdNTPに比べて減らした組成とする条件が挙げられる。これにより、DNA合成の際、配合割合を減らしたdNTPが必要な箇所においては、誤って他のdNTPが用いられる可能性が高くなり、変異が導入される。また、他の反応条件としては、反応液中のMgCl及び/又はMnCl量を増やした組成とする条件も好ましく挙げられる。
(b−2)ロドコッカス・ロドクロウスJ1株由来改良型ニトリルヒドラターゼ及びその遺伝子
本発明の改良型ニトリルヒドラターゼには、表1に示す変異を導入したタンパク質をコードした遺伝子が含まれる。
このような改良型ニトリルヒドラターゼをコードするDNAは、野生型ニトリルヒドラターゼ遺伝子を基に、Molecular Cloning,A Laboratory Manual 2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons(1987−1997)等に記載の部位特異的変位誘発法に従って調製することができる。DNAに変異を導入するには、Kunkel法やGapped duplex法等の公知手法により、部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット、例えばQuickChangeTM XL Site−Directed Mutagenesis Kit(ストラタジーン社製)、GeneTailorTM Site−Directed Mutagenesis System(インビトロジェン社製)、TaKaRa Site−Directed Mutagenesis System(Mutan−K、Mutan−Super Express Km等:タカラバイオ社製)等を用いて行うことができる。
また、本発明の遺伝子としては、当該遺伝子の塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ニトリルヒドラターゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAも含まれる。
このような改良型ニトリルヒドラターゼ遺伝子は、上記の通り野性型遺伝子に変異を導入することにより得ることができるが、当該遺伝子配列若しくはその相補配列、又はこれらの断片をプローブとして、コロニーハイブリダイゼーション、プラークハイブリダイゼーション、サザンブロット等の公知のハイブリダイゼーション法により、cDNAライブラリー及びゲノムライブラリーから得ることもできる。ライブラリーは、公知の方法で作製されたものを利用することが可能であり、市販のcDNAライブラリー及びゲノムライブラリーを利用することも可能である。
「ストリンジェントな条件」とは、ハイブリダイゼーション後の洗浄時の条件であって塩濃度が300〜2000mM、温度が40〜75℃、好ましくは塩濃度が600〜900mM、温度が65℃の条件を意味する。例えば、2×SSCで50℃等の条件を挙げることができる。当業者であれば、このようなバッファーの塩濃度、温度等の条件に加えて、その他のプローブ濃度、プローブの長さ、反応時間等の諸条件を加味し、本発明のニトリルヒドラターゼをコードするDNAを得るための条件を適宜設定することができる。
ハイブリダイゼーション法の詳細な手順については、Molecular Cloning,A Laboratory Manual 2nd ed.(Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989))等を参照することができる。ハイブリダイズするDNAとしては、本発明の遺伝子DNAに対して少なくとも40%以上、好ましくは60%、さらに好ましくは90%以上の同一性を有する塩基配列を含むDNA又はその部分断片が挙げられる。
野性型ニトリルヒドラターゼのアミノ酸配列のうちの特定のアミノ酸残基を置換するアミノ酸(置換後のアミノ酸)の種類は、いずれも、置換後のアミノ酸を含むポリペプチド(タンパク質)がニトリルヒドラターゼ活性を有する範囲で適宜選択することができ、限定はされない。
(c)組換えベクター、形質転換体
ニトリルヒドラターゼ遺伝子は、形質転換される宿主生物において発現可能なように、ベクターに組み込むことが必要である。例えば、ベクターとしてはプラスミドDNA、バクテリオファージDNA、レトロトランスポゾンDNA、人工染色体DNAなどが挙げられる。
また、本発明において使用し得る宿主は、上記組換えベクターが導入された後、目的のニトリルヒドラターゼを発現することができる限り特に限定されるものではない。例えば、大腸菌及び枯草菌等の細菌、酵母、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞等を用いることができる。大腸菌を宿主とする場合、発現効率の高い発現ベクター、例えばtrcプロモーターを有する発現ベクターpkk233−2(アマシャムバイオサイエンス社製)又はpTrc99A(アマシャムバイオサイエンス社製)などを用いることが好ましい。
ベクターには、ニトリルヒドラターゼ遺伝子のほか、プロモーター、ターミネーター、エンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、リボソーム結合配列(SD配列)等を連結することができる。なお、選択マーカーとしては、例えばカナマイシン耐性遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子等が挙げられる。
細菌を宿主とする場合、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)が挙げられ、ロドコッカス菌としては、例えばロドコッカス・ロドクロウスATCC12674、ロドコッカス・ロドクロウスATCC17895、ロドコッカス・ロドクロウスATCC19140等が挙げられる。これらのATCC株はアメリカンタイプカルチャーコレクションから入手できる。
ニトリルヒドラターゼを発現する形質転換体の作製に際し、宿主に大腸菌を使用した場合、発現した大部分のニトリルヒドラターゼがインクルージョンボディーとなり不溶化するため、菌体活性の低い形質転換体が得られる。一方、ロドコッカス菌を宿主として使用した場合、ニトリルヒドラターゼは可溶性画分に存在するため、高活性な形質転換体が得られる。これらの形質転換体は目的に応じて選択すれば良いが、厳しい条件で改良型酵素を選抜する場合は高活性なロドコッカス菌の形質転換体を用いるのが好ましい。
細菌への組換えベクターの導入方法としては、細菌にDNAを導入する方法であれば特に限定されるものではない。例えばカルシウムイオンを用いる方法、エレクトロポレーション法等が挙げられる。
酵母を宿主とする場合は、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ピヒア・パストリス(Pichia pastoris)等が用いられる。酵母への組換えベクターの導入方法としては、酵母にDNAを導入する方法であれば特に限定されず、例えばエレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、酢酸リチウム法等が挙げられる。
動物細胞を宿主とする場合は、サル細胞COS−7、Vero、CHO細胞、マウスL細胞、ラットGH3、ヒトFL細胞等が用いられる。動物細胞への組換えベクターの導入方法としては、例えばエレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等が挙げられる。
昆虫細胞を宿主とする場合は、Sf9細胞、Sf21細胞等が用いられる。昆虫細胞への組換えベクターの導入方法としては、例えばリン酸カルシウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法等が用いられる。
植物細胞を宿主とする場合は、タバコBY−2細胞等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。植物細胞への組換えベクターの導入方法としては、例えばアグロバクテリウム法、パーティクルガン法、PEG法、エレクトロポレーション法等が用いられる。
(d)培養物及び改良型ニトリルヒドラターゼの製造方法
本発明において、改良型ニトリルヒドラターゼは、上記形質転換体を培養し、得られる培養物から採取することにより製造することができる。
本発明は当該培養物から改良型ニトリルヒドラターゼを採取することを特徴とする、改良型ニトリルヒドラターゼの製造方法をも含む。
本発明において、「培養物」とは、培養上清、培養細胞、培養菌体、又は細胞若しくは菌体の破砕物のいずれをも意味するものである。本発明の形質転換体を培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行われる。目的の改良型ニトリルヒドラターゼは、上記培養物中に蓄積される。
本発明の形質転換体を培養する培地は、宿主菌が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。炭素源としては、グルコース、ガラクトース、フラクトース、スクロース、ラフィノース及びデンプン等の炭水化物、酢酸及びプロピオン酸等の有機酸、エタノール及びプロパノール等のアルコール類が挙げられる。窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム及びリン酸アンモニウム等の無機酸、若しくは有機酸のアンモニウム塩、又はその他の含窒素化合物が挙げられる。
その他、ペプトン、酵母エキス、肉エキス、コーンスティープリカー、各種アミノ酸等を用いてもよい。無機物としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、硫酸銅、炭酸カルシウム等が挙げられる。また、必要に応じ、培養中の発泡を防ぐために消泡剤を添加してもよい。さらに、培地にはニトリルヒドラターゼの補欠分子であるコバルトイオンや鉄イオンを添加し、酵素の誘導剤となるニトリル類やアミド類を添加してもよい。
培養中、ベクター及び目的遺伝子の脱落を防ぐために選択圧を掛けた状態で培養してもよい。すなわち、選択マーカーが薬剤耐性遺伝子である場合に相当する薬剤を培地に添加したり、選択マーカーが栄養要求性相補遺伝子である場合に相当する栄養因子を培地から除いたりしてもよい。
また、選択マーカーが資化性付与遺伝子である場合は、相当する資化因子を必要に応じて唯一因子として添加することができる。例えば、アンピシリン耐性遺伝子を含むベクターで形質転換した大腸菌を培養する場合、培養中、必要に応じてアンピシリンを添加してもよい。
プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した形質転換体を培養する場合は、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、イソプロピル−β−D−チオガラクトシド(IPTG)で誘導可能なプロモーターを有する発現ベクターで形質転換した形質転換体を培養するときには、IPTG等を培地に添加することができる。また、インドール酢酸(IAA)で誘導可能なtrpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した形質転換体を培養するときには、IAA等を培地に添加することができる。
形質転換体の培養条件は、目的の改良型ニトリルヒドラターゼの生産性及び宿主の生育が妨げられない条件であれば特段限定されるものではないが、通常、10℃〜40℃、好ましくは20℃〜37℃で5〜100時間行う。pHの調製は、無機又は有機酸、アルカリ溶液等を用いて行い、例えば大腸菌であれば6〜9に調製する。
培養方法としては、固体培養、静置培養、振盪培養、通気攪拌培養などが挙げられるが、特に大腸菌形質転換体を培養する場合には、振盪培養又は通気攪拌培養(ジャーファーメンター)により好気的条件下で培養することが好ましい。
上記培養条件で培養すると、高収率で本発明の改良型ニトリルヒドラターゼを上記培養物中、すなわち、培養上清、培養細胞、培養菌体、又は細胞若しくは菌体の破砕物の少なくともいずれかに蓄積することができる。
培養後、改良型ニトリルヒドラターゼが菌体内又は細胞内に生産される場合には、菌体又は細胞を破砕することにより、目的の改良型ニトリルヒドラターゼを採取することができる。菌体又は細胞の破砕方法としては、フレンチプレス又はホモジナイザーによる高圧処理、超音波処理、ガラスビーズ等による磨砕処理、リゾチーム、セルラーゼ又はペクチナーゼ等を用いる酵素処理、凍結融解処理、低張液処理、ファージによる溶菌誘導処理等を利用することができる。
破砕後、必要に応じて菌体又は細胞の破砕残渣(細胞抽出液不溶性画分を含む)を除くことができる。残渣を除去する方法としては、例えば、遠心分離やろ過などが挙げられ、必要に応じて、凝集剤やろ過助剤等を使用して残渣除去効率を上げることもできる。残渣を除去した後に得られた上清は、細胞抽出液可溶性画分であり、粗精製した改良型ニトリルヒドラターゼ溶液とすることができる。
また、改良型ニトリルヒドラターゼが菌体内又は細胞内に生産される場合、菌体や細胞そのものを遠心分離、膜分離等で回収して、未破砕のまま使用することも可能である。
改良型ニトリルヒドラターゼが菌体外又は細胞外に生産される場合には、培養液をそのまま使用するか、遠心分離やろ過等により菌体又は細胞を除去する。その後、必要に応じて硫安沈澱による抽出等により前記培養物中から改良型ニトリルヒドラターゼを採取し、さらに必要に応じて透析、各種クロマトグラフィー(ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー等)を用いて単離精製することもできる。
形質転換体を培養して得られたニトリルヒドラターゼの生産収率は、例えば、培養液あたり、菌体湿重量又は乾燥重量あたり、粗酵素液タンパク質あたりなどの単位で、SDS−PAGE(ポリアクリルアミドゲル電気泳動)やニトリルヒドラターゼ活性測定などにより確認することができるが、特段限定されるものではない。SDS−PAGEは当業者であれば公知の方法を用いて行うことができる。また、ニトリルヒドラターゼ活性は、上述した活性の値を適用することができる。
また、本発明においては、生細胞を全く使用することなく、無細胞タンパク質合成系を採用して改良型ニトリルヒドラターゼを産生することが可能である。
無細胞タンパク質合成系とは、細胞抽出液を用いて試験管等の人工容器内でタンパク質を合成する系である。なお、本発明において使用される無細胞タンパク質合成系には、DNAを鋳型としてRNAを合成する無細胞転写系も含まれる。
この場合、上記の宿主に対応する生物は、下記の細胞抽出液の由来する生物に相当する。ここで、上記細胞抽出液は、真核細胞由来又は原核細胞由来の抽出液、例えば、小麦胚芽、大腸菌などの抽出液を使用することができる。なお、これらの細胞抽出液は濃縮されたものであっても濃縮されていないものであってもよい。
細胞抽出液は、例えば限外濾過、透析、ポリエチレングリコール(PEG)沈殿等によって得ることができる。さらに本発明において、無細胞タンパク質合成は、市販のキットを用いて行うこともできる。そのようなキットとしては、例えば試薬キットPROTEIOSTM(東洋紡)、TNTTM System(プロメガ)、合成装置のPG−MateTM(東洋紡)、RTS(ロシュ・ダイアグノスティクス)などが挙げられる。
上記のように無細胞タンパク質合成によって得られる改良型ニトリルヒドラターゼは、前述のように適宜クロマトグラフィーを選択して、精製することができる。
2.アミド化合物の製造方法
上述のように製造された改良型ニトリルヒドラターゼは、酵素触媒として物質生産に利用することができる。例えば、ニトリル化合物に、上記改良型ニトリルヒドラターゼを接触させることにより、アミド化合物を生成する。そして、接触により生成されるアミド化合物を採取する。これにより、アミド化合物を製造することができる。
酵素触媒としては、前述のように分離精製されたニトリルヒドラターゼを使用することができる。また、前述のように適当な宿主内で改良型ニトリルヒドラターゼ遺伝子が発現するように遺伝子導入を行い、宿主を培養した後の培養物、又は当該培養物の処理物を利用することができる。処理物としては、例えば、培養後の細胞をアクリルアミド等のゲルで包含したもの、グルタルアルデヒドで処理したもの、アルミナ、シリカ、ゼオライト及び珪藻土等の無機担体に担持したもの等が挙げられる。
ここで、「接触」とは、改良型ニトリルヒドラターゼとニトリル化合物を同一の反応系又は培養系に存在させることを意味し、例えば、分離精製した改良型ニトリルヒドラターゼとニトリル化合物を混合すること、改良型ニトリルヒドラターゼ遺伝子を発現する細胞の培養容器にニトリル化合物を添加すること、当該細胞をニトリル化合物の存在下で培養すること、当該細胞の抽出液をニトリル化合物と混合することなどが含まれる。
基質として使用されるニトリル化合物は、酵素の基質特異性、酵素の基質に対する安定性等を考慮して選択される。ニトリル化合物としては、アクリロニトリルが好ましい。反応方法、及び反応終了後のアミド化合物の採取方法は、基質及び酵素触媒の特性により適宜選択される。
酵素触媒は、その活性が失活しない限り、リサイクル使用することが好ましい。失活の防止やリサイクルを容易にすることに鑑み、酵素触媒は処理物の形態で使用されることが好ましい。
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
改良型ニトリルヒドラターゼ遺伝子の取得と評価(1)
(1)変異遺伝子ライブラリーの構築
鋳型としたプラスミドとしては、βサブユニットのアミノ酸配列(配列番号2)のN末端のアミノ酸残基から数えて167残基下流のアミノ酸残基がアスパラギン(N)からセリン(S)に変異し、かつ、上記N末端のアミノ酸残基から数えて219残基下流のアミノ酸残基がバリン(V)からアラニン(A)に変異し、かつ、上記N末端のアミノ酸残基から数えて57残基下流のアミノ酸残基がセリン(S)からメチオニン(M)に変異し、かつ、上記N末端のアミノ酸残基から数えて114残基下流のアミノ酸残基がリジン(K)からチオrシン(Y)に変異し、かつ、上記N末端のアミノ酸残基から数えて107残基下流のアミノ酸残基がスレオニン(T)からリジン(K)に変異したプラスミドpER855(特開2010−172295参照)の改変物であるpER855A(図1)を用いた。
ベクターとして用いたpSJ034はロドコッカス菌においてニトリルヒドラターゼを発現するプラスミドであり、pSJ023より特開平10−337185号公報に示す方法で作製した。なお、pSJ023は形質転換体「R.rhodochrous ATCC12674/pSJ023」であり、受託番号FERM BP−6232として独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に平成9(1997)年3月4日付けで国際寄託されている。
先ず、ニトリルヒドラターゼ遺伝子への変異導入を下記の手法で行った。
<PCR反応液組成>
滅菌水 20μl
pER855A (1ng/ml) 1μl
Forward Primer (10mM) 2μl
Reverse Primer (10mM) 2μl
PrimeSTAR MAX (2×) 25μl
50μl
<PCR反応条件>
(98℃ 10秒、55℃ 5秒、72℃で90秒)×30サイクル
<プライマー>β17の飽和変異プライマー
β17RM−F ggatacggaccggtcNNStatcagaaggacgag (配列番号5)
β17RM−R ctcgtccttctgataSNNgaccggtccgtatcc (配列番号6)
<反応条件>
(94℃で30秒、65℃で30秒、72℃で3分)×30サイクル
PCR終了後、反応液5μlを0.7%アガロースゲル電気泳動に供し、11kbの増幅断片を確認し、1μlのDpnI(キットに付属)をPCR反応液に添加して37℃で1時間反応させ、鋳型プラスミドの除去を行った。反応終了液をWizard SV Gel and PCR Clean−Up Syste(プロメガ株式会社)で精製し、精製したPCR反応物を用いてJM109に形質転換した。得られたコロニー数千個をプレートから回収し、QIAprep Spin Miniprep Kit(キアゲン社)を用いてプラスミドDNAを抽出、変異遺伝子ライブラリーとした。
(2)ロドコッカス菌形質転換体の作製
ロドコッカス・ロドクロウス ATCC12674株の対数増殖期の細胞を遠心分離器により集菌し、氷冷した滅菌水にて3回洗浄し、滅菌水に懸濁した。上記(1)で調製したプラスミド1μlと菌体懸濁液10μlを混合して氷冷し、キュベットにプラスミドDNAと菌体の懸濁液を入れ、遺伝子導入装置 Gene Pulser II(BIO RAD)により2.0KV、200 OHMSで電気パルス処理を行った。
電気パルス処理液の入ったキュベットを氷冷下10分間静置し、37℃で10分間ヒートショクを行った。その後、キュベットにMYK培地(0.5%ポリペプトン、0.3%バクトイーストエキス、0.3%バクトモルトエキス、0.2%KHPO、0.2%KHPO)500μlを加え、30℃、5時間静置した後、50μg/mlカナマイシン入りMYK寒天培地に塗布した。30℃、3日間培養後のコロニーを形質転換体とした。同様に比較株としてpER855Aの形質転換体を作製した。
(3)ロドコッカス菌形質転換体のアミド処理
スクリーニングには、上記(2)で得られたニトリルヒドラターゼ遺伝子を含むロドコッカス菌形質転換体、及び比較株であるATCC12674/pER855Aを使用した。GGPK培地(1.5%グルコース、1%グルタミン酸ナトリウム、0.1%酵母エキス、0.05%KHPO、0.05%KHPO、0.05%MgSO・7HO、1%CoCl、0.1%尿素、50μg/mlカナマイシン、pH7.2)を1mlずつ入れた96穴ディープウェルプレートに上記菌株を各々接種し、30℃で3日間液体培養した。
次に、得られた培養液の30μlを96穴プレートに分注し、遠心分離によって培地を除き、最後に50%アクリルアミド溶液を40μl添加し、菌を懸濁した。高濃度アクリルアミド溶液に懸濁した形質転換体をインキュベーター中に置き、50℃の温度下、30分間の加熱処理で比較となる比較株を完全に失活させた。残存ニトリルヒドラターゼ活性は下記の方法で測定した。
先ず、アクリルアミド処理をした形質転換体を50mMリン酸緩衝液(pH7.0)で洗浄し、以下の方法で活性測定を行った。試験管に洗浄した形質転換体と50mM リン酸緩衝液(pH7.0)を添加し、30℃で10分間プレインキュベートし、等量の5%アクリロニトリル溶液(pH7.0)を添加して10分間反応させ、1Mリン酸を1/10量添加することにより反応を停止させた。次に停止させた反応液から遠心分離によって形質転換体を除き、適当な濃度に希釈してHPLCにより分析した(WAKOSIL 5C8(和光純薬社)250mm、5mMリン酸を含んだ10%アセトニトリル、移動相の流速1ml/min及び紫外吸収検出器波長260nm)。尚、比較対照としてアクリルアミド処理を行わない各々の無処理菌を用いて活性測定を行い、得られた活性値を基準として、アクリルアミド処理後の残存活性を求めた。
上記の方法で変異導入したニトリルヒドラターゼ遺伝子を有する数百個の形質転換体の中から、表3に示す高濃度アクリルアミドに耐性を有する変異酵素を4株選抜した。
(4)塩基配列の確認
ニトリルヒドラターゼ遺伝子の塩基配列の確認をするため、得られた選抜株からプラスミドを回収した。ロドコッカス形質転換体を、10mlのMYK培地(ポリペプトン0.5%、バクトイーストエキス0.3%、マルツエキス0.3%、グルコース1%、カナマイシン50μg/ml)に植菌した。24時間培養した後に終濃度2%となるように滅菌した20%グリシン溶液を添加し、さらに24時間培養した。その後、遠心分離により菌体を回収し、菌体をTES(10mMTris−HCl(pH8)−10mMNaCl−1mMEDTA)緩衝液で洗浄後、2mlの50mMTris−HCl(pH8)−12.5%シュークロース−100mMNaCl−1mg/mlリゾチームに懸濁し、37℃にて3時間振盪した。これに0.4mlの10%SDSを加え室温で穏やかに1時間振盪し、さらに2.1mlの5M酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.2)を添加し氷中で1時間静置した。その後、4℃にて10,000xg、1時間遠心し上清を得た。これに5倍量のエタノールを加え、−20℃で30分静置した後、10,000xg、20分間遠心した。沈澱物を10mlの70%エタノールで洗浄した後、100μlのTE緩衝液に溶解しDNA溶液を得た。
次に、ニトリルヒドラターゼを含む配列をPCR法で増幅した。
<PCR反応液組成>
鋳型プラスミド 1μl
10× PCR Buffer(NEB社製) 10μl
プライマーNH−19(50μM) 1μl
プライマーNH−20(50μM) 1μl
2.5mM dNTPmix 8μl
滅菌水 79μl
Taq DNAポリメラーゼ(NEB社製) 1μl
<プライマー>
NH−19 GCCTCTAGATATCGCCATTCCGTTGCCGG(配列番号7)
NH−20 ACCCTGCAGGCTCGGCGCACCGGATGCCCAC(配列番号8)
<反応条件>
(94℃で30秒、65℃で30秒、72℃で3分)×30サイクル。
PCR終了後、反応液5μlを0.7%アガロースゲル電気泳動に供し、2.5kbのPCR増幅産物の検出を行った。PCR反応液はExo−SAP処理(アマシャムファルマシア)後、サイクルシークエンシング法により配列解析用サンプルを調製し、Beckman CEQ−2000XLで解析を行った。結果を表4に示す。

(5)アミド化合物耐性の評価
(4)で取得した改良型ニトリルヒドラターゼのアミド化合物耐性を以下の手法で実施した。
ATCC12674/pER855Aと、上記(2)の工程で得られた各形質転換体を10mlのMYK培地(50μg/mlカナマイシン)にそれぞれ接種し、30℃にて2日間振盪培養し、100mlのGGPK培地(1.5%グルコース、1%グルタミン酸ナトリウム、0.1%酵母エキス、0.05%KHPO、0.05%KHPO、0.05%MgSO・7HO、1%CoCl、0.1%尿素、50μg/mlカナマイシン、pH7.2)に1%植菌を行った。30℃で3日間振盪培養し、遠心分離により集菌した。
得られた培養菌体の酵素活性は下記の方法で行った。菌体液0.2mlと50mMリン酸緩衝液(pH7.0)4.8mlとを混合し、さらに5.0%(w/v)のアクリロニトリルを含む50mMリン酸緩衝液(pH7.0)5mlを混合液に加えて、10℃で10分間振盪しながら反応させた。次いで、菌体を濾別して、ガスクロマトグラフィーを用いて生成したアクリルアミドの量を定量した。
<分析条件>
分析機器: ガスクロマトグラフGC−14B(島津製作所製)
検出器: FID(検出200℃)
カラム: ポラパックPS(ウォーターズ社製カラム充填剤)を充填した1mガラスカラム
カラム温度: 190℃
アクリルアミドの量からニトリルヒドラターゼ活性を換算した。ここで、ニトリルヒドラターゼ活性は、1分間に1μmolのアクリルアミドを生成する酵素量を1Uと定義する。
次に、下記反応液組成及び反応条件で実験を行った。なお、反応に用いる各菌体懸濁液は、事前に測定した酵素活性から同一の活性量になるように100mMリン酸緩衝液(pH7.0)で適宜希釈した。比較対照として、比較株であるATCC12674/ pER855Aを使用した。
<反応液組成>
50%アクリルアミド溶液 94g
アクリロニトリル 4g
1Mリン酸緩衝液 1g
菌液(同一の酵素活性単位(U)量)
<反応条件>
攪拌しながら5時間反応(30℃)
反応開始前(0時間)、5時間後にそれぞれ反応液1mlをサンプリングし、0.45μmのフィルターを用いて濾過し、得られた濾液をガスクロマトグラフィーに供した。残存するアクリロニトリルの割合(%)の分析結果を表5に示した。
上記結果より全ての改良型ニトリルヒドラターゼは、比較例であるpER855Aよりもアクリロニトリルの消費率が103%を超えていた。よって、改良型ニトリルヒドラターゼは、高濃度のアクリルアミド存在下でもニトリルヒドラターゼ活性が維持されていることから、アクリルアミドに対する耐性が向上していると言える。
改良型ニトリルヒドラターゼ遺伝子の取得と評価(2)
(1)ニトリルヒドラターゼへの変異導入と選抜
実施例1で取得したpFR005を鋳型として、さらにアクリルアミド耐性の向上した改良型ニトリルヒドラターゼの取得を試みた。使用したプライマーのみを変更し、実施例1と同様の手法(変異導入、ロドコッカス形質転換体の作成、ロドコッカス菌形質転換体のアミド処理方法、塩基配列の確認)を実施し、表6に選抜された変異酵素を取得した。
<プライマー>
β15の飽和変異プライマー
β15RM−F:atgaccggatacggaNNSgtcccctatcagaag(配列9)
β15RM−R:cttctgataggggacSNNtccgtatccggtcat(配列10)

β95の飽和変異プライマー
β95RM−F:accgaagaagagcgaNNScaccgtgtgcaagag(配列11)
β95RM−R:ctcttgcacacggtgSNNtcgctcttcttcggt(配列12)

β105の飽和変異プライマー
β105RM−F:GAGATCCTTGAGGGTNNSTACACGGACAGG(配列13)
β105RM−R:CCTGTCCGTGTASNNACCCTCAAGGATCTC(配列14)

β133の飽和変異プライマー
β133RM−F:cacgagccccactccNNSgcgcttccaggagcg(配列15)
β133RM−R:cgctcctggaagcgcSNNggagtggggctcgtg(配列16)

β144の飽和変異プライマー
β144RM‐F:ggagccgagtttctctNNSggtgacaagatc(配列17)
β144RM‐R:gatcttgtcaccSNNagagaaactcggctcc(配列18)

β168の飽和変異プライマー
β168RM−FcgaaatatgtgcggagcNNSatcggggaaatcg(配列19)
β168RM−RcgatttccccgatSNNgctccgcacatatttcg(配列20)

β190の飽和変異プライマー
β190RM−F:gagcagctccgccggcctcNNSgacgatcctcg(配列21)
β190RM−R:cgaggatcgtcSNNgaggccggcggagctgctc(配列22)

α124の飽和変異プライマー
α124RM−F:gtacaagagcatgNNStaccggtcccgagtgg(配列23)
α124RM−R:ccactcgggaccggtaSNNcatgctcttgtac(配列24)
(2)性能評価
取得した改良型ニトリルヒドラターゼの性能評価を実施例1(5)と同様の手法で実施した。
上記結果より、全ての改良型ニトリルヒドラターゼは、比較例であるpER855Aよりもアクリロニトリルの消費率が117%を超えていた。よって、改良型ニトリルヒドラターゼは、高濃度のアクリルアミド存在下でもニトリルヒドラターゼ活性が維持されていることから、アクリルアミドに対する耐性が向上していると言える。
改良型ニトリルヒドラターゼ遺伝子の取得と評価(3)
(1)ニトリルヒドラターゼへの変異導入と選抜
実施例2で取得したpFR108Aを鋳型として、さらにアクリルアミド耐性の向上した改良型ニトリルヒドラターゼの取得を試みた。使用したプライマーのみを変更し、実施例1と同様の手法(変異導入、ロドコッカス形質転換体の作成、ロドコッカス菌形質転換体のアミド処理方法、塩基配列の確認)を実施し、表8に選抜された変異酵素を取得した。尚、改良型ニトリルヒドラターゼを有する形質転換体の選抜は、55℃の温度下、60分間の熱処理を行い、それ以外は実施例1と同様の方法で行なった。
<プライマー>
α174の飽和変異プライマー
α174RM−F:gccggcaccgacNNStggtccgaggag(配列25)
α174RM−R:ctcctcggaccaSNNgtcggtgccggc(配列26)
(2)性能評価
取得した改良型ニトリルヒドラターゼの性能評価を実施例1(5)と同様の手法で実施した。
上記結果より、全ての改良型ニトリルヒドラターゼは、比較例であるpER855Aよりもアクリロニトリルの消費率が124%を超えていた。よって、改良型ニトリルヒドラターゼは、高濃度のアクリルアミド存在下でもニトリルヒドラターゼ活性が維持されていることから、アクリルアミドに対する耐性が向上していると言える。
(1)ニトリルヒドラターゼへの変異導入と選抜
実施例2で取得したpFR211を鋳型として、さらにアクリルアミド耐性の向上した改良型ニトリルヒドラターゼの取得を試みた。使用したプライマーのみを変更し、実施例3と同様の手法(変異導入、ロドコッカス形質転換体の作成、ロドコッカス菌形質転換体のアミド処理方法、塩基配列の確認)を実施し、表10に選抜された変異酵素を取得した。
<プライマー>
β95の飽和変異プライマー
β95RM−F:accgaagaagagcgaNNScaccgtgtgcaagag(配列27)
β95RM−R:ctcttgcacacggtgSNNtcgctcttcttcggt(配列28)

β112の飽和変異プライマー
β112RM−F:GACAGGAAGCCGNNSCGGAAGTTCGATCCG(配列29)
β112RM−R:CGGATCGAACTTCCGSNNCGGCTTCCTGTC(配列30)

β218の飽和変異プライマー
β218RM−F:gggaaagacgtagtgNNSgccgatctctgggaa(配列31)
β218RM−R:ttcccagagatcggcSNNcactacgtctttccc(配列32)
(2)性能評価
取得した改良型ニトリルヒドラターゼの性能評価を実施例1(5)と同様の手法で実施した。結果を表11に示す。
上記結果より、全ての改良型ニトリルヒドラターゼは、比較例であるpER855Aよりもアクリロニトリルの消費率が125%を超えていた。よって、改良型ニトリルヒドラターゼは、高濃度のアクリルアミド存在下でもニトリルヒドラターゼ活性が維持されていることから、アクリルアミドに対する耐性が向上していた。
(1)pFR306Aの作製
実施例4で取得したpFR306を鋳型として、Lβ144Sを野生型アミノ酸に置換した改良型ニトリルヒドラターゼを作製した。方法としては、下記のプライマーを使用し、実施例1と同様の方法でロドコッカス形質転換体を作製した。
<プライマー>
β144の変異を野生型に戻す
F_Sβ144L−F:TTCTCTCTCGGTGACAAGATCAAAGTG(配列33)
F_Sβ144L−R:GTCACCGAGAGAGAAACTCGGCTCCGC(配列34)
(2)耐熱性の評価
本発明で取得した改良型ニトリルヒドラターゼの性能評価を下記の手法で実施した。
表13に示す変異ニトリルヒドラターゼ遺伝子を含む形質転換体を実施例1(5)の方法で培養し、耐熱性の評価に用いた。得られた培養物を50mMリン酸緩衝液で適宜希釈し、70℃のウォーターバスで10分間熱処理に供した後、残存ニトリルヒドラターゼ活性の測定を行った。活性測定は実施例1(5)記載の方法に従った。比較対照として熱処理を行わず4℃で保冷したものをそれぞれの無処理菌として残存活性を求めた。
比較例のpER855Aの残活性を1(11%)とした時、改良型ニトリルヒドラターゼの残活性はいずれも3倍(30%)を超えていた。よって、改良型ニトリルヒドラターゼの耐熱性は向上していた。
実施例5で得た下記の形質転換体を用いて、高温反応時のアクリルアミド蓄積性を評価した。
フタ付きのプラスチックチューブに10mlの50mMリン酸緩衝液と、仕込み活性量を併せて形質転換体を添加し、40℃のウォーターバス中で振とうしながら10分間プレインキュベートを行った。次にアクリロニトリルを各反応液に1ml添加して反応をスタートし、以後は所定の時間(20分、40分、時間、1時間30分、2時間)に1mlずつアクリロニトリを逐次添加しながら反応を継続し、反応3時間後の反応液をフィルターろ過し、ろ過液のアクリルアミド濃度をガスクロマトグラフィーで測定した。
実験の結果、比較例のpER855Aは32%のアクリルアミドが蓄積したのに対し、何れの改良型ニトリルヒドラターゼも40%を超えるアクリルアミドが蓄積した。よって、改良型ニトリルヒドラターゼは高温蓄積性が向上していた。
本発明により、改良型ニトリルヒドラターゼが提供される。本発明の改良型ニトリルヒドラターゼは、耐熱性、アミド化合物耐性及び高温蓄積性が向上している。このため、本発明の改良型ニトリルヒドラターゼを用いることで、ニトリル化合物からアミド化合物を効率良く製造することができる。
[配列表の説明]
配列番号1:J1菌由来のニトリルヒドラターゼβサブユニットの塩基配列
配列番号2:J1菌由来のニトリルヒドラターゼβサブユニットのアミノ酸配列
配列番号3:J1菌由来のニトリルヒドラターゼαサブユニットの塩基配列
配列番号4:J1菌由来のニトリルヒドラターゼαサブユニットのアミノ酸配列
配列番号5:β17の飽和変異プライマー
配列番号6:β17の飽和変異プライマー
配列番号7:NH−19プライマー
配列番号8:NH−20プライマー
配列番号9:β15の飽和変異プライマー
配列番号10:β15の飽和変異プライマー
配列番号11:β95の飽和変異プライマー
配列番号12:β95の飽和変異プライマー
配列番号13:β105の飽和変異プライマー
配列番号14:β105の飽和変異プライマー
配列番号15:β133の飽和変異プライマー
配列番号16:β133の飽和変異プライマー
配列番号17:β144の飽和変異プライマー
配列番号18:β144の飽和変異プライマー
配列番号19:β168の飽和変異プライマー
配列番号20:β168の飽和変異プライマー
配列番号21:β190の飽和変異プライマー
配列番号22:β190の飽和変異プライマー
配列番号23:α124の飽和変異プライマー
配列番号24:α124の飽和変異プライマー
配列番号25:α174の飽和変異プライマー
配列番号26:α174の飽和変異プライマー
配列番号27:β95の飽和変異プライマー
配列番号28:β95の飽和変異プライマー
配列番号29:β112の飽和変異プライマー
配列番号30:β112の飽和変異プライマー
配列番号31:β218の飽和変異プライマー
配列番号32:β218の飽和変異プライマー
配列番号33:β144の変異を野生型に戻すプライマー
配列番号34:β144の変異を野生型に戻すプライマー
配列番号35:Rhodococcus M8のβサブユニット
配列番号36:Rhodococcus ruber THのβサブユニット
配列番号37:R.pyridinovorans MW3のβサブユニット
配列番号38:R.pyridinovorans S85−2のβサブユニット
配列番号39:R.pyridinovorans MS−38のβサブユニット
配列番号40:Nocardia sp JBRsのβサブユニット
配列番号41:Nocardia YS−2002のβサブユニット
配列番号42:R.rhodocrous ATCC39384のβサブユニット
配列番号43:uncultured bacterium SP1のβサブユニット
配列番号44:uncultured bacterium BD2のβサブユニット
配列番号45:Comamonas testosteroniのβサブユニット
配列番号46:G.thermoglucosidasius Q6のβサブユニット
配列番号47:P.thermophila JCM3095のβサブユニット
配列番号48:R.rhodocrous Cr4 のβサブユニット
配列番号49:Rhodococcus M8のαサブユニット
配列番号50:Rhodococcus ruber TH αサブユニット
配列番号51:R.pyridinovorans MW3のαサブユニット
配列番号52:R.pyridinovorans S85−2のαサブユニット
配列番号53:Nocardia sp JBRsのαサブユニット
配列番号54:Nocardia YS−2002のαサブユニット
配列番号55:uncultured bacterium BD2のαサブユニット
配列番号56:uncultured bacterium SP1のαサブユニット
配列番号57:R.rhodocrou ATCC39484のαサブユニット
配列番号58:Sinorhizobium medicae WSM419のαサブユニット
配列番号59:P.thermophila JCM3095のαサブユニット
配列番号60:R.rhodocrous Cr4 のαサブユニット
配列番号61:ロドコッカス属N−771株由来の鉄型ニトリルヒドラターゼαサブユニットのシステインクラスター
配列番号62:J1菌由来のコバルト型ニトリルヒドラターゼαサブユニットのシステインクラスター

Claims (7)

  1. 以下の(A)又は(B)のタンパク質;
    (A)野生型ニトリルヒドラターゼのアミノ酸配列において、下記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)及び(n)の置換を含み、さらに、下記(f)〜(m)及び(o)〜(q)からなる群より選ばれる少なくとも1つの置換を含かつ、野生型より高い耐熱性及びアミド化合物耐性を有するニトリルヒドラターゼ活性を有することを特徴とするタンパク質、
    (a)βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端のアミノ酸残基から数えて167残基下流のアミノ酸残基のセリンへの置換
    (b)βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端のアミノ酸残基から数えて219残基下流のアミノ酸残基のアラニンへの置換
    (c)βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端のアミノ酸残基から数えて57残基下流のアミノ酸残基のメチオニンへの置換
    (d)βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端のアミノ酸残基から数えて114残基下流のアミノ酸残基のチロシンへの置換
    (e)βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端のアミノ酸残基から数えて107残基下流のアミノ酸残基のリシンへの置換
    (f)βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端のアミノ酸残基から数えて218残基下流のアミノ酸残基のヒスチジンへの置換
    (g)βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端のアミノ酸残基から数えて190残基下流のアミノ酸残基のヒスチジンへの置換
    (h)βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端のアミノ酸残基から数えて168残基下流のアミノ酸残基のアルギニンへの置換
    (i)βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端のアミノ酸残基から数えて144残基下流のアミノ酸残基のアルギニン又はセリンへの置換
    (j)βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端のアミノ酸残基から数えて133残基下流のアミノ酸残基のアスパラギン又はアルギニンへの置換
    (k)βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端のアミノ酸残基から数えて112残基下流のアミノ酸残基のトレオニンへの置換
    (l)βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端のアミノ酸残基から数えて105残基下流のアミノ酸残基のトリプトファンへの置換
    (m)βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端のアミノ酸残基から数えて95残基下流のアミノ酸残基のバリンへの置換
    (n)βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端のアミノ酸残基から数えて17残基下流のアミノ酸残基のアスパラギン酸、ヒスチジン、グリシン、又はセリンへの置換
    (o)βサブユニットのアミノ酸配列においてN末端のアミノ酸残基から数えて15残基下流のアミノ酸残基のセリンへの置換
    (p)αサブユニットのアミノ酸配列において、補欠分子結合領域を構成するアミノ酸配列C(S/T)LCSCの最も下流側のC残基より67残基下流のアミノ酸残基のロイシン又はバリンへの置換
    (q)αサブユニットのアミノ酸配列において、補欠分子結合領域を構成するアミノ酸配列C(S/T)LCSCの最も下流側のC残基より17残基下流のアミノ酸残基のセリンへの置換、
    但し、野生型ニトリルヒドラターゼのα及びβサブユニットは、それぞれ配列番号4及び2で示される
    (B)(A)のタンパク質のアミノ酸配列において、前記置換後のアミノ酸残基を除き、1〜10個のアミノ酸残基が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、野生型より高い耐熱性及びアミド化合物耐性を有するニトリルヒドラターゼ活性を有することを特徴とするタンパク質。
  2. 請求項1に記載のタンパク質をコードするDNA。
  3. 請求項に記載のDNAを含む組換えベクター。
  4. 請求項に記載の組換えベクターを含む形質転換体。
  5. 請求項に記載の形質転換体を培養して得られる培養物から採取されるニトリルヒドラターゼ。
  6. 請求項に記載の形質転換体を培養し、得られる培養物からニトリルヒドラターゼを採取することを特徴とする、ニトリルヒドラターゼの製造方法。
  7. 請求項1に記載のタンパク質又は請求項に記載の形質転換体を培養して得られる培養物若しくは当該培養物の処理物をニトリル化合物に接触させることを特徴とする、アミド化合物の製造方法。
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